特許第5735744号(P5735744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735744
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】キャップ及びこのキャップを備えた容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20150528BHJP
   B65D 49/12 20060101ALI20150528BHJP
   B65D 53/00 20060101ALI20150528BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B65D41/34
   B65D49/12
   B65D53/00 Z
   B65D77/20 B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2009-551369(P2009-551369)
(86)(22)【出願日】2008年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2008051514
(87)【国際公開番号】WO2009096019
(87)【国際公開日】20090806
【審査請求日】2010年8月20日
【審判番号】不服2014-6052(P2014-6052/J1)
【審判請求日】2014年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】住宮 克明
(72)【発明者】
【氏名】浜名 洋
【合議体】
【審判長】 栗林 敏彦
【審判官】 渡邊 真
【審判官】 千葉 成就
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−151407(JP,A)
【文献】 特開2003− 63550(JP,A)
【文献】 特開2006−160290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D35/44−35/54
B65D39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天壁及びこの天壁の外周部から垂下するスカート壁を有し、容器口部の雄ねじに螺合する雌ねじが前記スカート壁に形成されたキャップ本体と、前記容器口部を密封する合成樹脂製のパッキンとを備え、
前記パッキンは、前記容器口部の先端部分に当接してこれを覆う天板と、この天板から垂下し、前記容器口部の内周面に密着する環状の中足とを備え、また、前記天板の外周縁に、天板に対して下方へ折れ曲がり、その内周面が容器口部の外側寸胴面をも覆う環状の折曲部が連設され、
さらに、前記キャップ本体は、閉栓状態において前記パッキンの折曲部の外周面を付勢する付勢部を有し、前記付勢部は、前記天壁の下面からスカート壁の内面にかけて設けられたキャップ本体の内側に突出する突出部分であり、前記付勢を受けた折曲部は弾性変形して容器口部の外周面に押し付けられるように構成してあるとともに、
前記中足の内周面の最上端が、前記パッキンにおいて前記中足と前記折曲部との間にあり前記容器口部の先端部分に密着するフランジ部分の下面と同一高さに位置する前記中足の外周面の最上端よりも下方に位置していることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記パッキンの折曲部の外周面は下方に向かって外広がりに傾斜しているとともに、前記キャップ本体の付勢部は、閉栓状態において折曲部を下向きに付勢する請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記折曲部の下端が、前記中足の外周面に形成された膨出部分において該中足の上部に位置する起伏開始点からその下方にある最大径部までの間に位置するように構成してある請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記パッキンの天板の上面が、その中央部に設けられた凹入部を除いて面一となっている請求項1〜3のいずれかに記載のキャップ。
【請求項5】
キャップ本体が合成樹脂製であり、
前記スカート壁の下部に破断可能なブリッジを介してタンパーエビデンスバンドを連結してあるとともに、
前記タンパーエビデンスバンドの下部から内向き上方に向かって延びる係止片をタンパーエビデンスバンドに連設してあり、
また、前記容器口部における前記雄ねじの下側に、容器口部に対する装着時に前記係止片が弾性変形して乗り越え装着後は弾性復帰した係止片が係止するストッパを設けてあり、
さらに、前記中足の外周面に膨出部分が形成され、
前記容器口部の内周面において閉栓状態時に前記膨出部分が最も強く当接する位置が、容器口部の先端から2.0〜2.5mm下側に存在するように構成してある請求項1〜4のいずれかに記載のキャップ。
【請求項6】
前記パッキンが、亜硫酸ナトリウムを含有する請求項1〜5のいずれかに記載のキャップ。
【請求項7】
前記キャップ本体の天壁の肉厚が、1.0mm以上である請求項1〜7のいずれかに記載のキャップ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のキャップが口部に装着された容器。
【請求項9】
炭酸飲料を収容する請求項8に記載の容器。
【請求項10】
ガスバリア層を設けてある請求項8または9に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、種々の飲料(炭酸ガスの有無、アルコールの有無等を問わない)を収容する容器の口部に対して取り付けられ、キャップ本体とパッキンとを備えたツーピース構造のキャップ及びこのキャップを備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のツーピース構造のキャップとして、例えば特許文献1に開示されたものがあり、これを図7に示す。すなわち、このキャップは、キャップ本体4とパッキン5とからなる。そして、キャップ本体4は、天壁6及びこの天壁6の外周部から垂下するスカート壁7を有し、容器口部3の雄ねじ10に螺合する雌ねじ9が前記スカート壁7に形成されたキャップ本体4と、前記容器口部3を密封する合成樹脂製のパッキン5と、前記スカート壁7の下部に破断可能なブリッジ12を介して連結されたタンパーエビデンスバンド13とを備えている。
【0003】
また、前記パッキン5は、前記容器口部3の先端部分3aに当接してこれを覆う天板17と、この天板17から垂下し、前記容器口部3の内周面3bに密着する環状の中足18とを備えている。さらに、前記天板17の外周縁に、天板17に対して下方へ折れ曲がり、その外周面が外広がりに傾斜した環状の折曲部19が連設されている。
【0004】
上記キャップでは、容器が低温(例えば4〜5℃)で保管されていた場合でも、ドーミング現象に起因する容器内部の気密漏れを防止することができる。これは、ドーミング現象が生じた場合に、キャップ本体4の周壁の上端部が中心に向かって収縮するので、パッキン5の外周縁に容器口部3の中心方向に向かう押圧力が加わり、この押圧力によってパッキン5の折曲部19が容器口部3の外周面3cに押し付けられるためである。
【0005】
【特許文献1】特許第3936487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のキャップでは、例えばキャップ本体4の天壁6の肉厚が大きくドーミング現象が発生しない場合には、折曲部19が容器口部3の外周面3cに押し付けられず、容器2の内圧によっては前記気密漏れが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、容器の密封性の向上を図ることができ、例えば容器の内容物が炭酸飲料であるなど容器の内圧が高くなる場合に用いて好適なキャップ及びこのキャップを備えた容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るキャップは、天壁及びこの天壁の外周部から垂下するスカート壁を有し、容器口部の雄ねじに螺合する雌ねじが前記スカート壁に形成されたキャップ本体と、前記容器口部を密封する合成樹脂製のパッキンとを備え、
前記パッキンは、前記容器口部の先端部分に当接してこれを覆う天板と、この天板から垂下し、前記容器口部の内周面に密着する環状の中足とを備え、また、前記天板の外周縁に、天板に対して下方へ折れ曲がり、その内周面が容器口部の外側寸胴面をも覆う環状の折曲部が連設され、
さらに、前記キャップ本体は、閉栓状態において前記パッキンの折曲部の外周面を付勢する付勢部を有し、前記付勢部は、前記天壁の下面からスカート壁の内面にかけて設けられたキャップ本体の内側に突出する突出部分であり、前記付勢を受けた折曲部は弾性変形して容器口部の外周面に押し付けられるように構成してあるとともに、
前記中足の内周面の最上端が、前記パッキンにおいて前記中足と前記折曲部との間にあり前記容器口部の先端部分に密着するフランジ部分の下面と同一高さに位置する前記中足の外周面の最上端よりも下方に位置していることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
また、上記キャップにおいて、前記パッキンの折曲部の外周面は下方に向かって外広がりに傾斜しているとともに、前記キャップ本体の付勢部は、閉栓状態において折曲部を下向きに付勢するように構成してあってもよい(請求項2)。
【0010】
ここで、前記折曲部の下端が、前記中足の外周面に形成された膨出部分において該中足の上部に位置する起伏開始点からその下方にある最大径部までの間に位置するように構成してあってもよい(請求項3)。
【0011】
【0012】
また、前記パッキンの天板の上面が、その中央部に設けられた凹入部を除いて面一となっていてもよい(請求項)。
【0013】
また、キャップ本体が合成樹脂製であり、
前記スカート壁の下部に破断可能なブリッジを介してタンパーエビデンスバンドを連結してあるとともに、
前記タンパーエビデンスバンドの下部から内向き上方に向かって延びる係止片をタンパーエビデンスバンドに連設してあり、
また、前記容器口部における前記雄ねじの下側に、容器口部に対する装着時に前記係止片が弾性変形して乗り越え装着後は弾性復帰した係止片が係止するストッパを設けてあり、
さらに、前記中足の外周面に膨出部分が形成され、
前記容器口部の内周面において閉栓状態時に前記膨出部分が最も強く当接する位置が、容器口部の先端から2.0〜2.5mm下側に存在するように構成してあってもよい(請求項)。
【0014】
また、前記パッキンが、亜硫酸ナトリウムを含有していてもよい(請求項)。
【0015】
また、前記キャップ本体の天壁の肉厚が、1.0mm以上であってもよい(請求項)。
【0016】
一方、本発明の容器は、請求項1〜のいずれかに記載のキャップが口部に装着されたものである(請求項)。
【0017】
そして、上記容器に、炭酸飲料を収容することができる(請求項)。
【0018】
また、上記容器の全体にわたってガスバリア層を設けてもよい(請求項10)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜10に係る発明では、容器の密封性の向上を図ることができ、例えば容器の内容物が炭酸飲料であるなど容器の内圧が高くなる場合に用いて好適なキャップ及びこのキャップを備えた容器が得られる。
【0020】
すなわち、請求項1、2に係る発明では、キャップ本体の付勢部によって付勢を受けた折曲部は弾性変形して容器口部の外側寸胴面をも含む外周面に押し付けられ、容器口部に対する折曲部の嵌合を大いに強めることができるので、密封性の向上を図ることができる。
【0021】
また、請求項3に係る発明では、容器口部に対するパッキンの嵌着具合を好適化することが容易となる。これは、折曲部が短く、折曲部の下端が膨出部分の基端(起伏開始点)に達しないほどであると、容器口部に対するパッキンの着脱はスムーズに行えても閉栓状態における容器の密封性が不十分となり、逆に、折曲部が長く、折曲部の下端が膨出部分の最大径部を越えるほどであると、閉栓状態における容器の密封性は十分となっても容器口部に対するパッキンの着脱がスムーズに行えなくなるおそれがあるからである。
【0022】
請求項に係る発明では、付勢部の構造がシンプルであり、従来のキャップ本体の構造を若干変更するだけでよいので、本発明のキャップを安価かつ容易に得ることができる。
【0023】
また、請求項に係る発明では、以下のような効果が得られる。すなわち、図7に示す従来のキャップでは、前記パッキン5の天板17に環状凹入部50や薄肉部51が設けられているので、開栓時にタンパーエビデンスバンド13のブリッジ12が破断した際の衝撃がパッキン5に伝わり難くなっている。そのため、前記衝撃によって容器口部3からのパッキン5の離脱が促されず、容器口部3にパッキン5が残留し、このパッキン5からキャップ本体4の天壁6が開栓操作によって離れた後、容器2の内圧によってパッキン5が吹き飛ばされると、吹き飛ばされたパッキン5がキャップ本体4に衝突して異音を生じさせてしまい、開栓を行っている者を不快、不安にさせるおそれがある。
【0024】
しかし、請求項に係る発明のキャップでは、天板上面を略面一としたことにより、上記衝撃を利用して容器口部からのパッキンの離脱を促すことができ、開栓時の異音の発生を防止することができる。
【0025】
請求項に係る発明では、リーク角度(未開封状態のキャップの開栓開始時からリーク時までのキャップ本体の回転量)が170°〜250°となり、ブリッジブレーク角度(未開封状態のキャップの開栓開始時からブリッジの破断時までのキャップ本体の回転量)は通常百数十度であるので、高いタンパーエビデンス性能が得られる。
【0026】
請求項に係る発明では、亜硫酸ナトリウムの酸素吸収効果によって、密封後の容器内に残存する酸素を速やかに吸収し、容器の内容物の保存状態を長期間良好に保つことができる。
【0027】
請求項に係る発明では、キャップ本体の天壁を厚肉化したことにより、ドーミング現象を防止することができる。
【0028】
請求項8、9に係る発明では、上記種々の効果を奏する容器が得られる。
【0029】
請求項10に係る発明では、ガスロスの極めて少ない容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)及び(B)は本発明の一実施の形態に係るキャップ及びこれを備えた容器の要部の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】前記キャップの構成を概略的に示す半縦断面図である。
図3】前記キャップのパッキンの構成を概略的に示す半縦断面図である。
図4】(A)〜(C)は溶存酸素測定方法を概略的に示す説明図である。
図5】前記溶存酸素測定の結果を概略的に示すグラフである。
図6】硫酸イオン濃度測定の結果を概略的に示すグラフである。
図7】従来のキャップの構成を概略的に示す半縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 キャップ
2 容器
3 容器口部
4 キャップ本体
5 パッキン
6 天壁
7 スカート壁
9 雌ねじ
10 雄ねじ
12 ブリッジ
13 タンパーエビデンスバンド
14 係止片
17 天板
18 中足
19 折曲部
21 付勢部
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ここで、図1(A)及び(B)は本発明の一実施の形態に係るキャップ1及びこれを備えた容器2の要部の構成を概略的に示す斜視図、図2は前記キャップ1の構成を概略的に示す半縦断面図(略左右対称となる縦断面の左半分を示す図)、図3は前記キャップ1のパッキン5の構成を概略的に示す半縦断面図(左右対称となる縦断面の左半分を示す図)である。
【0033】
この実施の形態に係るキャップ1は、図1(A)及び(B)に示すように、キャップ1とは別に製造される容器(例えばペットボトル)2の口部3に装着されるものであり、インジェクション成形またはコンプレッション成形により成形してある。また、キャップ1は、未開封(開栓が一度もされていないこと)を証明する機能を有するピルファープルーフキャップである。
【0034】
一方、前記容器2内に収容する内容物は、ビールである。しかし、内容物はビールに限らず、その他のアルコール飲料(例えばワイン、スパークリングワイン)や炭酸飲料、清涼飲料水等であってもよい。
【0035】
そして、図2に示すように、前記キャップ1はキャップ本体4と前記容器口部3を密封する合成樹脂製のパッキン5とを備えている。ここで、キャップ本体4、パッキン5の素材には、柔軟性に優れるとともに摩擦抵抗が小さい合成樹脂を採用してあり、例えばポリプロピレン(ホモ、ブロック、ランダム等)又はポリエチレン(HD(高密度)、LL(Linear Low Density)、LD(低密度)等)からなるベース樹脂を採用している。
【0036】
前記キャップ本体4は、図1(A)及び図2に示すように、平面視において円形状の天壁6と、この天壁6の外周部から垂下するスカート壁7とを備えている。ここで、スカート壁7の外周面にはローレット溝8を、内周面には雌ねじ9(図2参照)を設けてあり、この雌ねじ9は前記容器口部3の雄ねじ10に螺合する。尚、雌ねじ9、雄ねじ10のそれぞれ適宜の位置(両者9,10の螺着、螺脱操作に支障を来すことのない位置)には縦断溝11を設けてある。
【0037】
また、スカート壁7の下部には、図1(A)及び図2に示すように、周方向に所定間隔をおいて設けた破断可能な複数のブリッジ12(図2参照)を介してタンパーエビデンスバンド(以下、単に「バンド」という)13を連設してあり、このバンド13の内側には、図2に示すように、バンド13の下部から内向き上方に向かって延びる複数の係止片14を設けてある。
【0038】
これに対して、前記容器口部3には、図1(B)に示すように、容器口部3に対するキャップ1の装着時に前記バンド13が乗り越え、かつその後はバンド13の係止片14が係止してバンド13の抜けを防止するストッパ15と、このストッパ15の下方に位置し、ストッパ15を乗り越えたバンド13をストッパ15とで保持するフランジ16とを設けてある。
【0039】
一方、前記パッキン5は、図2及び図3に示すように、前記容器口部3の先端部分3aに当接してこれを覆う略円板状の天板17と、この天板17から垂下し、前記容器口部3の内周面に密着する環状(略円筒状)の中足18とを同心状に備えている。また、図2に示すように、前記天板17の外周縁には、天板17に対して下方へ折れ曲がり、その内周面が容器口部3の外側寸胴面をも含む外周面3cを覆う環状の折曲部19が連設されている。
【0040】
また、前記パッキン5は、図2に示すように、キャップ本体4の上部の内部に嵌め込まれている。すなわち、パッキン5の外径は、キャップ本体4の雌ねじ9の山部の内径よりも大きく、谷部の内径よりも小さくなっていて、パッキン5の周縁部がキャップ本体4の雌ねじ9の上部に係止するように構成してある。
【0041】
そして、本実施形態では、前記容器口部2に対してキャップ1を装着するために、キャップ本体4の雌ねじ9(図2参照)を容器口部3の雄ねじ10(図1(B)及び図2参照)に螺合させた上で、キャップ本体4に図1(A)の矢印T方向の回転力を加える。この際、キャップ本体4は図1(A)において下向きに螺進し、やがてバンド13の各係止片14(図2参照)は、容器口部3の雄ねじ10の下方のストッパ15(図1(B)及び図2参照)に当接し、ストッパ15により拡径方向に弾性変形するようにガイドされることによりストッパ15を乗り越え、その後、係止片14は初期の状態に弾性復帰する。以上により、キャップ1の装着は完了する。
【0042】
この装着状態(閉栓状態)においては、パッキン5の中足18は容器口部3の内周面3b(図2参照)に密着し、パッキン5の中足18と折曲部19との間にあるフランジ部分20(図2及び図3参照)は容器口部3の先端部分(先端面)3aに密着し、パッキン5の折曲部19は容器口部3の外側寸胴面をも含む外周面3c(図1(B)及び図2参照)に密着する。尚、図2では、容器口部3に未装着時のキャップ1を実線で示し、このキャップ1を装着する容器2の一部を仮想線(二点鎖線)で示してある。ここで、容器口部3に装着した状態のキャップ1は、容器口部3の内周面によって内向きに付勢された中足18が弾性変形して縮径した状態となる(図示していない)。
【0043】
そして、容器口部3に装着したキャップ1のキャップ本体4に対して図1(A)の矢印L方向の回転力を加えることにより開栓することができ、このとき、容器口部3のストッパ15に係止する係止片14を有するバンド13は容器口部3に残留し、キャップ1においてバンド13を除く部位(パッキン5も含む)のみが前記矢印L方向の回転力により容器口部3から螺脱する。したがって、最初の開栓時に前記バンド13とスカート壁7をつなぐブリッジ12が全て破断することになる。
【0044】
次に、本実施形態の特徴的構成について述べる。
【0045】
まず、前記キャップ本体4は、閉栓状態(雄ねじ10に対する雌ねじ9の螺着を完了した状態)において前記パッキン5の折曲部19の外周面を付勢する付勢部21を有し、前記付勢を受けた折曲部19は弾性変形して容器口部3の外側寸胴面をも含む外周面3cに押し付けられるように構成してある。そのため、容器口部3に対する折曲部19の嵌合を一層強めることができるので、密封性の向上を図ることができる。
【0046】
ここで、前記付勢部21は、図2に示すように、キャップ本体4の前記天壁6の下面からスカート壁7の内面にかけて設けられたキャップ本体4の内側に突出する突出部分である。そして、この実施形態では、前記パッキン5の折曲部19の外周面が下方に向かって外広がりに傾斜しているので、キャップ本体4の付勢部21は、閉栓状態において折曲部19を下向きに付勢することになり、この付勢力は上述のように折曲部19を容器口部3の外周面3cに押し付ける力に変換されることになる。
【0047】
尚、前記折曲部19は、前記付勢部21に付勢されていない状態(開栓状態)で前記容器口部3の外周面3cに当接していなくてもよいし、当接していてもよい。前者の場合には、容器口部3に対するパッキン5の嵌め込み及び離脱がスムーズに行われるので、閉栓状態の密封性を高く維持しながら、キャップ1の良好な開閉をも実現することができる。また、後者の場合には、容器口部3に対してパッキン5が強力に嵌め込まれるので、キャップ1によって極めて高い密封性が得られることになる。
【0048】
また、前記パッキン5の天板17の上面は、その中央部に設けられた凹入部(空気溜まり部)22を除いて面一となっており、天板17の肉厚の可能な限りの均一化を図っている。したがって、図7に示す従来のキャップでは、前記パッキン5の天板17に環状凹入部50や薄肉部51が設けられているので、開栓時にバンド13のブリッジ12が破断した際の衝撃がパッキン5に伝わり難いため、その衝撃によって容器口部3からのパッキン5の離脱が促されず、容器口部3にパッキン5が残留し、このパッキン5からキャップ本体4の天壁6が開栓操作によって離れた後に容器2の内圧によってパッキン5が吹き飛ばされると、吹き飛ばされたパッキン5がキャップ本体4に衝突して異音を生じさせてしまい、開栓を行っている者を不快、不安にさせるおそれがある。しかし、本実施形態では、天板17上面を面一として天板17の肉厚の均一化を図ったことにより、上記衝撃によって容器口部3からのパッキン5の離脱を促すことができ、開栓時の異音の発生を防止することができる。
【0049】
さらに、前記中足18の外周面に膨出部分23が形成され、前記容器口部3の内周面において閉栓状態時に前記膨出部分23が最も強く当接する位置(シールポイント)が、容器口部3の先端から2.0〜2.5mm下側に存在するように構成してある。すなわち、図3に示すように、前記中足18の外周面において、鉛直方向に延びる基端部18aの下(先端)側に前記膨出部分23を設けてある。ここで、この膨出部分23は、その基端(起伏開始点)23aからその下方(先端側)にある最大径部(外径が最大となる部分)23bに向かって外径が大きくなり、この最大径部23bからその下方(先端側)にある先端(起伏終了点)23cに向かって外径が小さくなるように構成してある。そして、上記のようにシールポイントを設定することにより、リーク角度(未開封状態のキャップ1の開栓開始時からリーク時までのキャップ本体4の回転量(開栓角度))が170°〜250°となり、ブリッジブレーク角度(未開封状態のキャップ1の開栓開始時からブリッジ12の破断時までのキャップ本体4の回転量)は通常百数十度であるので、高いタンパーエビデンス性能が得られる。これは、原則として、タンパーエビデンス性能は、開栓の際のリークがブリッジの切断と同時かそれよりも後に生じることによって担保されるものであり、特に、リークの発生前にブリッジ12が切断されればタンパーエビデンス性能が高いと評価することができるからである。すなわち、LB角度(リーク角度−ブリッジブレーク角度)が0°以上となればタンパーエビデンス性能が優れていると評価することができるので、そのようなLB角度が得られるようにシールポイントの位置を設定すればよい。
【0050】
これに対して、前記折曲部19は、その下端が、中足18の外周面に形成された膨出部分23の基端(起伏開始点)23aからその下方にある最大径部23bまでの間に位置するように構成してある(図2図3参照)。そして、この構成により、容器口部3に対するパッキン5の嵌着具合を好適化することが容易となる。これは、折曲部19が短く、折曲部19の下端が膨出部分23の基端(起伏開始点)23aに達しないほどであると、容器口部3に対するパッキン5の着脱はスムーズに行えても閉栓状態における容器の密封性が不十分となり、逆に、折曲部19が長く、折曲部19の下端が膨出部分23の最大径部23bを越えるほどであると、閉栓状態における容器の密封性は十分となっても容器口部3に対するパッキン5の着脱がスムーズに行えなくなるおそれがあるからである。
【0051】
また、前記キャップ本体4の天壁6の肉厚t(図2参照)は1.0mm以上とすることが望ましく、本実施形態では、天壁6の肉厚tを1.6mmとしてある。すなわち、天壁6の肉厚tを大きくすることにより、容器2の内圧によって天壁6にドーミング現象が生じることを確実に防止することができる。
【0052】
また、前記パッキン5には、酸素吸収剤として1〜10重量%の亜硫酸ナトリウムを含有させてある。これにより、密封後の容器2内に残存する酸素を速やかに吸収し、容器2の内容物の保存状態を長期間良好に保つことができる。
【0053】
一方、容器2には、全体にわたってガスバリア層を設けてある(図示していない)。具体的には、例えば容器2の内側あるいは外側にDLC(ダイアモンドライクカーボン)の層を形成(コーティング)することや、PET(ポリエチレンテレフタレート)とナイロンを積層した多層構造とすることによってガスバリア層を設けることができ、前者の場合にはDLC層、後者の場合にはナイロン層がガスバリア層となる。そして、このような構成によって、容器2のガスバリア性が極めて良好となるのであり、例えば、常温で保管した場合のガスロスは、標準で3GV(ガスボリューム)で行った場合、1%以下/月となる。
【0054】
次に、本キャップ1及び容器2の性能について述べる。
【0055】
まず、酸素吸収剤として亜硫酸ナトリウムを添加したパッキン5による酸素吸収性能をみるために、溶存酸素測定を行った。すなわち、この測定は、図4(A)に示すように、低溶存酸素水生成器30によって生成した低溶存酸素水を外部容器31に満たし、この外部容器31内に容器2を収容して前記低溶存酸素水を容器2に充填し、この充填後直ちに図4(B)に示すようにキャップを装着(キャッピング)し、図4(C)に示すように、得られたサンプルSを所定の温度(22℃)で保管して、各サンプルSの内容物である水の溶存酸素量を4週間にわたって測定した。尚、容器2に装着するキャップとしては、パッキン5に酸素吸収剤として亜硫酸ナトリウムを5%添加して得られた本キャップ1と、前記酸素吸収剤を添加していない点でのみ本キャップ1と異なる従来キャップ1’とを用いた。上記測定の結果を図5に示す。ここで、図5のグラフは、縦軸に溶存酸素量(ppm)、横軸に保管期間(週)をとったものであり、本キャップ1を装着したサンプルSの結果を「5%添加」、従来キャップ1’を装着したサンプルSの結果を「ナチュラル」として示している。
【0056】
図5から明らかなように、従来キャップ1’を装着した場合では4週目の溶存酸素量が0.38ppmだったのに対して、本キャップ1を装着した場合では4週目の溶存酸素量が0.2ppmだったのであり、この差がパッキン5に含有させた亜硫酸ナトリウムの酸素吸収効果を示している。
【0057】
続いて、パッキン5に亜硫酸ナトリウムを含有させた本キャップ1から内容物中に溶出した亜硫酸ナトリウムの影響を調べるため、以下の測定を行った。すなわち、内容物(内容物としては酸性飲料、乳製品、発酵乳製品等が挙げられるが、本測定では酸性飲料)を充填した容器2としての280mL用ペットボトルに、亜硫酸ナトリウムを7%配合したパッキン5を有するキャップ1を装着した高配合サンプルと、5%配合したパッキン5を有するキャップ1を装着した標準配合サンプルとを用意し、それらを20℃で保管して各サンプルの酸性飲料中の硫酸イオン濃度(SO2 換算値)を12週間にわたって測定した。その結果を図6に示す。ここで、図6のグラフは、縦軸にSO2 換算による硫酸イオン濃度(ppm)、横軸に保管期間(週)をとったものであり、亜硫酸ナトリウムを7%配合したパッキン5を有するサンプルの結果を「高配合」、亜硫酸ナトリウムを5%配合したパッキン5を有するサンプルの結果を「標準配合」として示している。
【0058】
図6から明らかなように、標準配合サンプルでは12週目の硫酸イオン濃度が3.9ppm、高配合サンプルでも12週目の硫酸イオン濃度が6.8ppmだったのであり、食品衛生規格では硫酸イオン濃度(SO2 換算値)が30ppm以下であることを求められていることを鑑みれば、本実施形態の亜硫酸ナトリウムが食品衛生面で問題が無いことが認められる。尚、亜硫酸ナトリウムは硫酸ナトリウムと同じく食品添加物であり、例えばビールやワインにも通常添加されているものであって、この点からもパッキン5に添加した亜硫酸ナトリウムは食品衛生面で問題が無いことは明らかである。
【0059】
尚、本発明は上記実施形態に限らず、種々に変形して実施することができる。
【0060】
例えば、上記実施形態では、前記折曲部19の外周面が下方に向かって外広がりに傾斜しているとともに、付勢部21が閉栓状態においてこの折曲部19を下方に付勢するが、斯かる構成に限らず、折曲部19の外周面を鉛直方向に延びる面とし、折曲部19が閉栓状態においてこの折曲部19を容器口部3の外周面3cに押し付けるように構成してあってもよい。
【0061】
また、酸素吸収剤としての亜硫酸ナトリウムは、パッキン5のみではなく、キャップ本体1、容器2に含有させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るキャップ及びこれを備えた容器は、高い密封性を備えているので、種々の飲料の収容に用いるキャップ及び容器に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7