(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸油マットの吸油量が多くなると重量増により外装袋が破れる恐れがある。又、特許文献2記載の廃油処理袋のようなプラスチックフィルムは透油性がない吸油材の保管袋であり、漏油に投入して吸着するマットとして使用することはできない。
一方、近年、老年人口の増大と共に、紙おむつや吸収パッド等の吸水性物品が普及している。この吸水性物品は、フラッフパルプと吸水性ポリマーからなる芯材を、疎水性の合成樹脂の不織布からなる表面材で覆った構成となっている。ところが、この吸水性物品の製造工程で、表面材の端材や廃材が大量に発生するという問題がある。
すなわち、本発明は、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材を有効に再利用すると共に、吸油性に優れ、高強度で使い勝手も良い吸油マットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の吸油マットは、坪量15 g/m
2以上40g/m
2以下、密度0.1〜0.3g/cm
3で、MD及びCDの引張強度がW×10/102(N/25mm)以上(W:下記吸油マットの全重量(g))、かつJIS K2219のギヤー油規格ISO VG100に相当し動粘度90mm
2/s以上110mm
2/s以下のギヤー油の通油速度が300秒以下の合成繊維不織布からなる外装袋と、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材であって合成樹脂の不織布を主体と
し、該吸水性物品に由来するパルプの混入割合が15質量%以下である吸油材と、を備え、前記吸油材を解繊せずに前記外装袋に
該吸油材の密度が0.04〜0.1 g/cm3となるようにそのまま袋詰めしてなる。
【0006】
前記外装袋の表面と裏面とが、200〜500cm
2の表面積あたり0.1〜1cm
2の面積で熱シール又は超音波シールにより接合固定されていると好ましい。
前記吸油材中の、前記吸水性物品に由来する吸水性ポリマーの混入割合が0.1質量%以下であると好ましい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材を有効に再利用すると共に、吸油性に優れ、高強度で使い勝手も良い吸油マットが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る吸油マット10の平面図を示す。吸油マット10は、合成繊維不織布からなる外装袋4と、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材からなる吸油材2(
図2参照)とを備え、吸油材2を解繊及び圧縮せずに外装袋4に袋詰めしてなる。断面
図2に示すように、吸油材2はシート状のものを、適宜丸めて外装袋4に袋詰めされ、吸油材2が外装袋4内で動かないよう、適宜外装袋4の表裏の所定位置のボンド部4bを超音波シール等によって互いに接着し、座布団状に構成している。又、吸油材2を袋詰めした後、外装袋4の開口部分が熱シールや超音波シール等によってシールされてシール部4aが形成されている。ボンド部4bは例えば、0.1〜1cm
2程度の円形とすることができる。また、ボンドの面積率は、吸油マット10の平面200〜500cm
2につき、1個の割合とするとよい。
シート状の端材や廃材を丸めたり折って袋詰めすることで、吸油材2が嵩高くなり、吸油マットを持ち易くなるので、漏油の拭き取りがし易くなる。又、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材はシート状のままでも吸油量が多いため、これら端材や廃材を解繊(粉砕、破砕して繊維状にすること)する必要がなく、生産性が向上する。
【0010】
<吸油材>
吸油材は、吸水性物品の表面材の端材及び/又は廃材であり、これら端材や廃材は合成樹脂の不織布を主体とする。吸水性物品は、フラッフパルプと吸水性ポリマーからなる芯材を、疎水性の合成樹脂の不織布からなる表面材(トップシート)やバックシートで覆った構成となっていて、製造工程で最終製品の寸法等に裁断したり、不良品が生じた際、表面材(トップシート)の端材や廃材が大量に発生する。本発明は、この端材や廃材を有効に再利用するものである。端材や廃材はシート状の不織布であり、その寸法は特に限定されないが、例えば1〜300cm
2程度のものが例示される。
又、これら端材や廃材を構成する合成樹脂の不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、又はこれら繊維の混合繊維からなるものが例示される。
吸油材の密度は0.04〜0.1 g/cm
3とすることが好ましい。密度が0.04 g/cm
3未満の場合、吸油材が嵩張りすぎて、吸油性能(吸油量と吸油速度)が低下する傾向にある。密度を0.1 g/cm
3より大きくする場合は、ある程度吸油材を圧縮することが必要になるので、密度を0.1 g/cm
3以下として圧縮を不要とすればその設備と手間が省略でき、生産性が向上する。
【0011】
吸油材となる吸水性物品の表面材(不織布の廃材)による吸油量は、ポリオレフィン系・ポリエステル系不織布の場合、実験により廃材1gに対し油10g程度であることが判明している。
この実験は、吸油材(吸水性物品の表面材の廃材)として使用される不織布(日本製紙クレシア株式会社製の製品名「アクティはけるパンツ」)を用いて行った。なお、この吸水性物品の表面材は素材、密度等を変更したものが用いられており、表1に示すように、それぞれ種類の異なる廃材を用いて実験を行った。この不織布を10cm×10cmの試験片に切断して20℃の機械油(ISO VG100相当ギヤー油)に浮かべて10分静置した。その後、試験片を金網(7mmメッシュ、直径1mmの針金を編んだもの)の上に5分間放置した後の重量を測定し、試験片1gあたりの吸油量gを算定した。吸油量測定結果を表1に示す。
【0013】
表1より、吸油材の自重の約10倍の吸油量を有することが判明している。なお、吸水性物品の表面材(不織布)はPP、PE、PET等であり、いずれの吸水性物品の表面材を用いても自重の約10倍の吸油量を有すると考えられる。
【0014】
吸収性物品の不良品を解体、分別して不織布部分のみを吸油材として利用する場合を想定すると、吸油材中の、吸水性物品に由来するパルプの混入割合が15質量%以下であることが好ましい。これは、例えば水面の薄い油膜を吸収するために本発明の吸油マット10を水面に投入した場合、吸油材中のパルプの混入割合が15質量%を超えると、パルプが水を吸収して吸油マット10の比重が1を超え、水中に沈む恐れがあるためである(油の比重0.85-0.9 g/cm
3、吸油材の比重0.91 g/cm
3(ポリプロピレンの場合)、パルプの比重1.5 g/cm
3、水の比重1.0 g/cm
3として計算)。
なお、
図3に示すように、吸水性物品(紙おむつ)の構造体20は、尿等の液状物を吸収するコア部24と、コア部24を包む吸水紙23と、吸水紙23の表側(使用者側)を覆う表面材(不織布シート)21と、吸水紙23の裏側を覆うバックシート22と、使用者側にあって尿等の漏れを防止する立体ギャザー26とを備えている。コア部24は、綿状パルプ(フラッフパルプ)24aと高吸水性ポリマー24bとの混合体であり、吸収性物品の不良品を解体する際、誤ってフラッフパルプ24aや吸水紙23が不織布部分に付着混入する可能性がある。
【0015】
又、吸油材中の、吸水性物品に由来する吸水性ポリマーの混入割合が0.1質量%以下であることが好ましい。吸水性ポリマーは自重の数十倍から数百倍の吸水能があり、吸油材の吸油性能を著しく低下させたり、上述の理由により吸油マット10が水没する可能性があるからである。
【0016】
<外装袋>
外装袋は、坪量15 g/m
2以上40g/m
2以下、密度0.1〜0.3g/cm
3で、MD及びCDの引張強度がW×10/102(N/25mm)以上(W:下記吸油マットの全重量(g))、かつJIS K2219のギヤー油規格ISO VG100に相当し動粘度90mm
2/s以上110mm
2/s以下のギヤー油の通油速度が300秒以下の合成繊維不織布からなり、この不織布シートを適宜シールして袋状に構成する。
外装袋を構成する合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系繊維;ナイロン繊維、などの疎水性繊維が挙げられ、これらの繊維を単体又は混合してスパンポンド、スパンレース、エアースルー等の方法で不織布とすることができる。
ここで、本発明においては、上記したように吸油材の吸油量が多く、吸油材の自重の約10倍の吸油量を有することが判明している。そこで、安全度を考え、吸油マットの自重の10倍の重量を吸油した後、吸油マットを吊り下げても外装袋が破れない引張強度(吸油後の自重を支える強度)として、引張強度がW×10/102(N/25mm)以上を設定する。外装袋の強度は、吸油後、指でつまんで吊り下げた場合に、袋が破れないことを条件とし、12.5mm巾×2(袋の表・裏)=25mm巾での縦横強度で下限値を求めたため、引張強度の単位をN/25mmとする。なお、25mm幅の外装袋の試験片を引張試験したとき、実際の吸油後の外装袋を吊り下げたときの破れの有無の結果と対応した。外装袋のMD及びCDの引張強度がW×10/102(N/25mm)以上であれば、吸油後の重量増により外装袋が破れることを防止できる。なお、数値102は、引張強度の単位をkgfからPaに換算するときの値である。
【0017】
外装袋の坪量は、外装袋の強度と正の相関があり、通油性と負の相関がある。吸油後の全重量が3Kg程度までであれば外装袋の坪量15〜40g/m
2のものが良い。坪量が40g/m
2を超えると通油性が著しく低下し、拭き取り作業への併用には支障がある。
又、外装袋の密度を0.1〜0.3g/cm
3とした理由は、密度が0.1g/cm
3未満であると外装袋の強度が低下し、0.3g/cm
3を超えると透油性が低下し吸油速度が低下するからである。
外装袋の上記通油速度を300秒以下とした理由は、通油速度が300秒を超えるものは、外装袋の坪量や密度が上記範囲未満となって外装袋の強度が低下し、拭き取り用途に使用するのが困難なためである。特に、通油速度が200秒以下であることが好ましい。但し、一般に通油速度が50秒未満であると、外装袋の坪量及び強度が低く拭き取り作業時に破れる場合がある。
なお、通油速度の測定方法は、
図4に示すようにして行う。まず、直径30mmの2つの底無しシリンダー100、101を用意し、これらシリンダー100、101を軸方向に並べ、その間に外装袋の試験片Sを挟む。次に、試験片の上のシリンダーに機械油100mlを注ぎ入れ、全量が試験片を通過する時間を測定する。又、上記機械油は、JIS K2219のギヤー油規格ISO VG100に相当し、動粘度90mm
2/s以上110mm
2/s以下のものを用いる。このギヤー油としては、JX日鉱日石エネルギー社製のタービン油(型番FBK-100)が挙げられる。
外装袋の伸び率は40%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、
図5に示すように、ボンド部4bを3個以上設けてもよい。
【実施例1】
【0019】
外装袋Aとして、PETスパンボンド不織布(ユニチカ社製)を2つ折りして2辺を超音波シールしたものを作製した。又、外装袋Bとして、PETエアースルー不織布(レンゴー社製)を2つ折りして2辺を超音波シールしたものを作製した。外装袋A,Bの特性を表2に示す。
吸油材として、製品名「フリーダム アクティ大人用パンツ(Lサイズ・Mサイズ)」(日本製紙クレシア株式会社製の紙おむつ)の表面材の不織布部分の端材を用いた。この端材は、PPスパンポンド不織布からなる。そして、外装袋A,Bの開口からそれぞれ上記吸油材を充填し、袋の開口を超音波シールして吸油マットを作製した。吸油マット中の上記吸油材の充填量や吸油マットの寸法等を表2に示す。
なお、比較例3として、PPスパンポンド不織布からなる上記端材を88質量%、上記おむつに由来するフラッフパルプを12質量%混合したものを外装袋Bに充填した。
【0020】
<評価>
外装袋A,Bを構成する不織布を幅25mmの短冊状に切断し、引張試験機を用いてMD及びCDの引張強度を測定した。
直径30mmの底無しシリンダーを2つ用意し、これらシリンダーを軸方向に並べ、その間に外装袋A,Bを構成する不織布の試験片を挟んだ。次に、試験片の上のシリンダーに機械油(JX日鉱日石エネルギー社製のタービン油(型番FBK-100))100mlを注ぎ入れ、全量が試験片を通過する時間を測定し、通油速度とした。
60Lのポリバケツに水30L、及び上記機械油15L入れ、これに各吸油マットを浮かべて90秒浸漬した後、油切りせずに吸油マットの重量差から初期吸油量を求めた。
同様に、上記ポリバケツに各吸油マットを浮かべて10分浸漬した後、金網(7mmメッシュ、直径1mmの針金を編んだもの)上で5分油切り後の吸油マットの重量差から全吸油量を求めた。
又、上記ポリバケツに各吸油マットを浮かべて10分浸漬した後、上記金網上で5分油切り後、外装袋の1隅に針金を挿通して吊るした後5分以内の外装袋の破れの有無を目視判定した。
得られた結果を表1に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
表2から明らかなように、MD(タテ)及びCD(ヨコ)の引張強度がW×10/102(N/25mm)以上、通油速度300秒以下の合成繊維不織布からなる外装袋を用いた各実施例の場合、初期吸油量、全吸油量がいずれも多く、全吸油量が吸油マットの重量の9倍を超えた。又、吸油量が多いにも関わらず、吊り下げ後も外装袋の破れが生じなかった。
なお、他の実施例より吸油材の量がやや少ない実施例2の場合、吸油マットの密度がやや低く、全吸油量もやや少なかったが実用上は問題ない。
又、他の実施例より外装袋の坪量を多くした実施例5の場合、通油速度がやや遅いので、初期吸油量が低かったが全吸油量は他の実施例と同等であり、実用上は問題ない。
【0023】
一方、外装袋のCD引張強度がW×10/102(N/25mm)未満である比較例1及び比較例3の場合、吸油させて吊り下げ後に外装袋の破れが生じた。なお、比較例1の場合、外装袋の坪量が15 g/m
2未満であるため、通油速度は大きく、初期吸油量は多かった。
外装袋の坪量が40 g/m
2を超え、通油速度が300秒を超えた比較例2の場合、実施例に比べて初期吸油が低くなった。
なお、比較例3の場合、エアースルー不織布であるために、外装袋の坪量が15 g/m
2以上であるにも関わらず強度が低いと考えられる。又、比較例3の場合、パルプ分に水が含まれた為に重くなり、上記した浸漬試験で吸油マット本体のほとんどが沈みかけていた。