特許第5735780号(P5735780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5735780-エンジン駆動型発電機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735780
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】エンジン駆動型発電機
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/08 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   H02P9/08 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-255845(P2010-255845)
(22)【出願日】2010年11月16日
(65)【公開番号】特開2012-110098(P2012-110098A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2013年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】水上 貞光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
(72)【発明者】
【氏名】北崎 建生
(72)【発明者】
【氏名】米田 和弘
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−039099(JP,U)
【文献】 実開平04−010600(JP,U)
【文献】 特開平04−075500(JP,A)
【文献】 実開平03−080700(JP,U)
【文献】 特開2006−141145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された一定の回転速度で運転されるエンジンと,前記エンジンによって駆動されて所定電圧,所定の商用周波数の出力を行う発電機本体を備えたエンジン駆動型発電機において,
前記発電機本体で発生した電力を同時に取り出し可能な複数の端子台を設け,
前記複数の端子台が,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように設定されたインバータ装置を介して前記発電機本体に接続された少なくとも1つの三相出力端子台と,前記発電機本体が出力した周波数や電圧を変動することなく出力する端子台を備え,
前記インバータ装置に出力の開始を指令する始動指令手段を設けたことを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【請求項2】
前記設定周波数を可変と成す,周波数設定手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項3】
前記発電機本体に接続された三相出力線を分岐して,該分岐された三相出力線のいずれかに前記インバータ装置を介して前記三相出力端子台を接続すると共に,分岐された他の三相出力線に他の三相出力端子台を接続したことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項4】
前記複数の端子台が,単相出力端子台を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項5】
前記インバータ装置と前記発電機本体との間に,両者間の接続の確立及び解除を行うブレーカを設けたことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のエンジン駆動型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,屋外等において電気機器の電源として使用されるエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場やイベント会場等,特に屋外において電源の確保が必要となる場合には,エンジンと,このエンジンによって駆動される発電機本体とを例えば共通のパッケージ内に収容する等して移動可能としたエンジン駆動型発電機が使用されている。
【0003】
このようなエンジン駆動型発電機において,電力の供給対象とする機器の型式に拘わらず,各種の機器に対して電力を供給することができるようにするために,一例として,三相200V又は三相400Vを出力する三相端子台と,単相100Vを出力する単相端子台をいずれも備えたエンジン駆動型発電機も提案されており,このようなエンジン駆動型発電機にあっては,三相及び単相の各端子台に,それぞれ同時に別の機器を接続して使用することができるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−87242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
河川等における工事現場では,一例として作業場所に対して河川等の水が入り込むことを防止するために鋼矢板を打設して作業場所を囲い込む等して河川等から隔絶し,この鋼矢板で囲まれた部分に溜まった水を,水中ポンプで汲み出しながら作業を行う場合がある。
【0006】
そして,このような作業現場では,鋼矢板に囲まれた作業場所における明るさと安全性とを確保するために,作業場所に照明器具を設置して照明することも行われる。
【0007】
そのため,このような作業現場において前述したエンジン駆動型発電機を使用する場合,このエンジン駆動型発電機の三相出力端子台には水中ポンプを,単相出力端子台には照明器具をそれぞれ接続して,水中ポンプと照明器具の双方に対する電源として使用することとなる。
【0008】
しかし,このように1台のエンジン駆動型発電機に複数の機器を接続して使用する場合において,このうちの1つが水中ポンプのように三相誘導電動機を備えた機器(以下,このような機器を「モータ機器」という。)である場合には,このモータ機器の動作状態の変化が,その他の機器(上記の例では「照明器具」)の動作に対して大きく影響を与える場合がある。
【0009】
すなわち,前述した水中ポンプ等の駆動源として使用される三相誘導電動機は,一例として起動電流を定格電流の4〜6倍(若しくはそれ以上)とするために,モータ機器が起動する際には三相出力端子台の電圧が降下し,また,エンジンの回転速度の低下と,これに伴う出力周波数の低下等が生じ,供給する電力が不安定となる。
【0010】
その結果,モータ機器と共にエンジン駆動型発電機に接続されている機器が一例として前述の照明器具である場合には,照明のちらつき,明るさの低下,場合によっては一時的に消灯してしまう等,その動作に異常を来す場合がある。
【0011】
なお,前述のモータ機器は,起動後に回転速度を増して運転状態が安定すると,三相出力端子台の出力周波数に対応した略一定の回転速度で運転されるが,一例として前述した河川工事の例において,河川側から作業場所に対する水の浸入量が少ない場合に,この浸入量を大きく超えた排水量を発生する回転速度で水中ポンプを駆動すると,やがて作業場所の水が無くなって水中ポンプが空回りを開始し,ポンプが冷却されずに過熱してそのまま運転を継続すれば水中ポンプが破損してしまう等といった問題も生じ得る。
【0012】
そのため,エンジン駆動型発電機の三相出力端子台の出力周波数を可変とし,河川側より浸入する水の量等とバランスさせた回転速度で水中ポンプを駆動することができれば便利である。
【0013】
しかし,従来のエンジン駆動型発電機において出力周波数を変更しようとすればエンジンの回転速度を変更して発電機本体の回転速度を変更することとなるため,この場合には三相出力端子台に接続されているモータ機器のみならず,エンジン駆動型発電機に接続されている他の全ての機器に対する出力周波数についても変化させてしまうこととなり,好ましくない。
【0014】
そのため,モータ機器が接続された三相出力端子台からの出力のみ,周波数を可変とすることができれば便利である。
【0015】
さらに,三相誘導電動機の起動電流は前述したように定格電流の4〜6倍(又はそれ以上)となることから,従来,25kVAクラスのエンジン駆動型発電機では,最大7.5kWのモータ機器までしか起動できない。
【0016】
そのため,一旦モータ機器が起動すると共に,モータの回転速度が増加して電流が定格電流に近付くように低下した通常運転に移行した後の状態のみを見れば,7.5kWの水中ポンプに対する電源として25kVAクラスのエンジン駆動型発電機は過剰性能となっており,同クラスのエンジン駆動型発電機によって更に大型のモータ機器を起動することができれば,エンジン駆動型発電機の負荷率(負荷容量/エンジン駆動型発電機の定格出力)を高くすることができ,且つ,燃料消費率〔(燃料消費量/負荷容量)/時間〕を低下させることで効率が改善され,これによりコストの低下が図れるだけでなく環境に対する負荷についても軽減することができる。
【0017】
しかも,このようにより大型のモータ機器を起動することが可能であれば,モータ機器の電源として使用する場合,従来選択していたエンジン駆動型発電機に比較して小型のものを選択することができ,エンジン駆動型発電機を購入する際の経済的な負担も軽減され,且つ,運搬,設置,保管等の際のコストや労力についても低減することが可能となる。
【0018】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点に鑑みて成されたものであり,前述したモータ機器と,その他の機器のいずれ共に同一のエンジン駆動型発電機に接続した場合であっても,モータ機器の起動によって他の機器が影響を受けることを防止でき,且つ,前述したモータ機器に対する出力周波数のみを可変とすることができると共に,従来のものに比較して,より大型のモータ機器であっても起動することのできるエンジン駆動型発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0020】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機1は,設定された一定の回転速度(一例として1500min-1又は1800min-1)で運転されるエンジン3と,前記エンジン3によって駆動されて所定電圧,所定の商用周波数(50Hz又は60Hz)の出力を行う発電機本体4を備えたエンジン駆動型発電機1において,
前記発電機本体4で発生した電力を同時に取り出し可能な複数の端子台6(61〜63)を設け,
前記複数の端子台6(61〜63)が,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように設定されたインバータ装置2を介して前記発電機本体4に接続された少なくとも1つの三相出力端子台61と,前記発電機本体4が出力した周波数や電圧を変動することなく出力する三相及び/又は単相の端子台(62,63)を備え,
前記インバータ装置2に出力の開始を指令する始動指令手段(始動停止スイッチ22)を設けたことを特徴とする(請求項1)。
【0021】
上記構成のエンジン駆動型発電機1には,更に,前記設定周波数を可変と成す,周波数設定手段21を設けることができる(請求項2)。
【0022】
また,前記発電機本体4に接続された三相出力線51を分岐して,該分岐された三相出力線のいずれか51aに前記インバータ装置2を介して前記三相出力端子台61を接続すると共に,分岐された他の三相出力線51bに他方の三相出力端子台62を接続した構成とすることもできる(請求項3)。
【0023】
更に,前記複数の端子台61〜63には,単相出力端子台63を含めても良い(請求項4)。
【0024】
また,前記インバータ装置2と前記発電機本体4との間には,両者間の接続の確立及び解除を行うブレーカ91を設けることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した本発明の構成により,本発明のエンジン駆動型発電機1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0026】
複数ある出力端子台6(61〜63)中に,前述したインバータ装置2を介して発電機本体4に接続された三相出力端子台61を設けたことにより,この三相出力端子台61に,例えば水中モータ等の三相誘導電動機を備えた機器(モータ機器)を接続して使用することにより,モータ機器の起動電流の上昇を抑えることができた。
【0027】
その結果,このモータ機器の起動が,共通のエンジン駆動型発電機1の他の出力端子台62,63に接続された他の機器の動作に影響を与えること,例えば,前述した例のように,他の機器が照明器具である場合には,照明のちらつき,明るさの低下,消灯等の問題が生じることを防止できた。
【0028】
また,前述したように,モータ機器の起動電流の上昇が抑えられたことにより,従来のエンジン駆動型発電機に比較して,より大型のモータ機器の起動が可能となった。
【0029】
その結果,エンジン駆動型発電機の負荷率を高くすることができ,且つ,燃料消費率を低下させて効率を改善でき,発電時のコストの低下と環境負荷の低減が図れると共に,従来のものに比較して小型のエンジン駆動型発電機を選択することで,エンジン駆動型発電機の購入費用を低減でき,運搬,設置,保管の際の労力を大幅に低減することができた。
【0030】
インバータ装置2が出力する設定周波数を可変と成す周波数設定手段21を設けた構成にあっては,通常運転の際のモータ機器の回転速度を可変とすることができ,一例としてモータ機器が水中ポンプである場合,作業場所に浸入する水の量とバランスした排水量を発生させる回転速度で水中ポンプを駆動する等,状況に応じたモータ機器の運転状態を選択することができた。
【0031】
さらに,前記発電機本体に接続された三相出力線51を分岐して,該分岐された三相出力線のいずれか51aに前記三相出力端子台61を接続すると共に,分岐された他の三相出力線51bに他方の三相出力端子台62を接続した構成にあっては,インバータ装置2によって出力制御がされた三相出力端子台61の他に,インバータ装置2を介さずに発電機本体4からの出力を取り出すことのできる三相出力端子台62を備えることから,インバータ装置2によって制御された出力を必要としない機器に対しては,従来通り他の三相出力端子台62を介して電力の供給を行うことができた。
【0032】
更に,エンジン駆動型発電機1に単相出力端子台63を設けることにより,三相交流電源によって駆動される機器のみならず,単相交流電源によって駆動される機器についても同時に接続することができた。
【0033】
更に,前記インバータ装置2と前記発電機本体4との間に,両者間の接続の確立及び解除を行うブレーカ91を設けた構成にあっては,インバータ装置2を介した出力を行わない際には,このブレーカ91の操作によってインバータ装置2と発電機本体4間の連通を遮断しておくことにより,インバータ装置2内のコンデンサに対する充電が行われなくなり,インバータ装置2の寿命を伸ばすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明のエンジン駆動型発電機の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のエンジン駆動型発電機について説明する。
【0036】
図1において,符号1は,本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,防音箱8内に,エンジン3,前記エンジン3によって駆動される発電機本体4,この発電機本体4によって発電された電力を取り出すための出力線5(51,52)等の必要な機器が収容されていると共に,前記出力線5(51,52)を介して発電機本体4に接続された出力端子台6(61,62,63)や,エンジン3,発電機本体4,後述するインバータ装置2等の動作を制御するためのスイッチ類や計器類を備えた制御盤7等が,例えば防音箱8の外側から操作可能な位置に取り付けられている。
【0037】
エンジン駆動型発電機の主要な構成部材の一つである前述の発電機本体4は,既知の各種型式のものを使用可能であり,本実施形態にあっては,一例として励磁機42を備えた自励式の三相交流発電機を発電機本体4として使用している。
【0038】
この発電機本体4は,本実施形態にあっては,三相交流出力(三相200V)と,単相交流出力(単相100V)が同時に得られる巻線を備えており,三相出力端子台61,62と,単相出力端子台63に接続された電気機器に対して同時に電力を供給することができるようになっている。
【0039】
前述したように,本実施形態において使用した発電機本体4は,励磁機42を備えたもので,主発電機41から出力される電圧が設定値となるように,自動電圧調整器(AVR)43によって出力電圧の増減に応じて励磁機42へ供給する励磁電流を制御している。
【0040】
以上のように構成されたエンジン駆動型発電機1には,発電機本体4で発生した電力を取り出すための出力線5(51,52)が設けられており,前述したように本実施形態にあっては,発電機本体4として三相交流出力(三相200V)と単相交流出力(単相100V)とを同時に発生し得るものを使用していることから,この出力線5(51,52)として,三相出力線51と単相出力線52の2種類を設けている。
【0041】
そして,これらの出力線のうち,単相出力線52は,例えば電力を供給又は遮断するブレーカ93を介して単相出力端子台63に接続し,この単相出力端子台63に設けた端子に,単相交流電源によって駆動する機器,例えば照明機器等を接続することで,これを作動させることができるようになっている。
【0042】
また,発電機本体4に接続された出力線のうち,前述の三相出力線51は,図1に示すようにこれを分岐し,分岐された一方の三相出力線51aを,電力を供給又は遮断するブレーカ91及びインバータ装置2を介して一方の三相出力端子台61に接続すると共に,分岐された他方の三相出力線51bを,同様のブレーカ92を介して前述した三相出力端子台61とは別に設けた三相出力端子台62に接続している。
【0043】
発電機本体4を駆動する前述のエンジン3は,発電機本体4において所定の商用周波数(50Hz又は60Hz)が得られるように一定の回転速度で運転できるように構成されており,一例として,本実施形態の構成において,エンジン3の回転速度を1500min-1に設定した場合,発電機本体4からは50Hzの周波数の出力が得られるようになっていると共に,エンジン3の回転数を1800min-1に設定する場合には,発電機本体4からは60Hzの周波数の出力が得られるようになっている。
【0044】
前述したインバータ装置2は,入力した電力を直流に変換するコンバータ部と,コンバータ部で得た直流を所定の周波数と電圧の交流に変換するインバータ部を有しており,例えば既知のPWM(パルス幅変調)方式等によって,周波数設定手段21によって設定された任意周波数の交流出力を発生することができるように構成されていると共に,出力周波数が比較的低いときには出力電圧が低く,出力周波数が比較的高いときには出力電圧が高くなるように,周波数の増減にあわせて出力電圧も変化するように設定されている。
【0045】
このインバータ装置2は,インバータ装置2に対して始動を指令する始動指令手段,図示の実施形態にあっては制御盤7に設けた始動停止スイッチ22の操作により発生した電気信号に基づいて出力の開始及び出力の停止を行うように構成されていると共に,出力の開始時,出力周波数を所定の低周波数,本実施形態にあってはゼロ周波数から徐々に設定周波数となる迄上げていくと共に,前記設定周波数となったとき,この設定周波数での出力を維持するように構成されている。
【0046】
前述の設定周波数は,周波数設定手段21を操作することにより調整可能に構成されており,エンジン駆動型発電機の用途や,接続する機器との関係において各種の値を取り得るように構成されている。
【0047】
この設定周波数は,商用周波数(50Hz又は60Hz)に対して高く,又は低く設定できるようにしても良く,本実施形態にあっては,一例としてエンジンの回転速度を一定とした状態で設定周波数を30〜60Hzの範囲で可変できるように設定した。
【0048】
前述の所定の低周波数とは,商用周波数(50Hz又は60Hz)及び前記設定周波数の下限設定値(本実施形態にあっては30Hz)に対して十分に低い周波数であって,ゼロ周波数であることが好ましい。
【0049】
以上のように構成されたエンジン駆動型発電機1において,インバータ装置2を介して発電機本体4に接続された一方の三相出力端子台61に対しては,水中ポンプ等の三相誘導電動機を備えた機器(モータ機器)を接続する。
【0050】
そして,その他の三相出力端子台62及び/又は単相出力端子台63には,前述したモータ機器以外の電気機器を接続し,前述した例では,単相出力端子台63に対して照明器具を接続する。
【0051】
この状態で,エンジン駆動型発電機1のエンジン3を始動して,エンジン3の回転速度が定格回転速度に達した後,ブレーカ92及び/又は93を操作して前述したモータ機器以外の電気機器,例えば照明器具へ電力を供給し,その後,ブレーカ91を操作してインバータ装置2へ電力を供給し,始動停止スイッチ22を操作してインバータ装置2に対して出力の開始を指令すると,インバータ装置2は,一方の三相出力端子台61を介してモータ機器に対する出力を開始する。
【0052】
インバータ装置2は,出力開始指令に従った出力開始から所定の期間,予め設定された法則に従ってゼロ周波数から所定の設定周波数となる迄,周波数を徐々に上昇し,また,この周波数の上昇に対応して出力電圧を徐々に上昇させる。
【0053】
これにより,モータ機器の回転速度の上昇にあわせて同期速度が上昇することから,起動電流の過度な上昇を抑制することができ,また,インバータ装置2のトリップやエンジン3の回転数低下,発電機本体4の出力電圧低下が防止される。
【0054】
また,このようにモータ機器が接続された一方の三相出力端子台61に対する出力についてはインバータ装置2による制御が行われているものの,その他の端子台62,63より出力される周波数や電圧は変動しないことから,前述したように例えば単相出力端子台63に照明器具を接続した場合であっても,この照明器具がモータ機器の起動に際してちらついたり,明るさの低下や消灯してしまう等といった問題は生じない。
【0055】
更に,周波数設定手段21でインバータ装置2に接続された三相出力端子台61から出力される設定周波数を商用周波数(50Hz又は60Hz)よりも低く,又は高く設定したとしても,その他の端子台62,63より出力される周波数や電圧は,エンジン3の回転数に従って設定された所定の周波数及び電圧となっているために,他の出力端子台62,63に接続された機器に対する影響はない。
【0056】
そして,このように,商用周波数(50Hz又は60Hz)よりも低く,乃至は高く設定できるように設定周波数を可変としたことで,本発明のエンジン駆動型発電機を前述した河川工事の例において水中ポンプの電源として使用する場合,水中ポンプの回転速度を,例えば鋼矢板で仕切った空間内に浸入する水量等に対応させて可変とすることで,水中ポンプが空運転することによる破損等も好適に防止することができる。
【0057】
なお,前述したようにインバータ装置2によって周波数を徐々に増大させながらモータ機器の起動を行うことで,モータ機器の起動電流を低く抑えることができることから,従来のエンジン駆動型発電機に比較して,より大型のモータ機器を起動することができるものとなっている。
【0058】
一例として,従来25kVAクラスのエンジン駆動型発電機で駆動できる水中ポンプは最大で7.5kW程であったが,本発明のエンジン駆動型発電機1では,同様の25kVAクラスのもので,従来の2倍の15kWの水中ポンプまで起動できるものとなり,エンジン駆動型発電機の運転時の負荷率が高くなり,また,燃料消費量が低下して効率が改善した。
【0059】
なお,インバータ装置2の一次側にブレーカ91を設けた構成にあっては,インバータ装置2を介した出力が不要な時には,インバータ装置2に対する通電を遮断することで,インバータ装置2内のコンデンサが充電されなくなり,高価なインバータ装置の寿命を伸ばすことができると共に,同様にブレーカ91,92,93の操作により使用していない端子台61,62,63に対する通電を遮断することで,端子台に対する接触による事故(感電)等も防止することができる。
【0060】
さらに,本願発明では,発電機本体4の出力をそのままモータ機器に供給する場合に比較して,インバータ装置2を介して供給することで,モータ機器を駆動する誘導電動機の力率が改善され,発電機本体4に流れる無効電流値を小さくでき,発熱を少なくすることもできた。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン駆動型発電機
2 インバータ装置
21 周波数設定手段
22 始動停止スイッチ(始動指令手段)
3 エンジン
4 発電機本体
41 主発電機
42 励磁機
43 自動電圧調整器(AVR)
5 出力線
51 三相出力線
51a 三相出力線(分岐された一方)
51b 三相出力線(分岐された他方)
52 単相出力線
6 出力端子台
61 三相出力端子台(一方)
62 三相出力端子台(他方)
63 単相出力端子台
7 制御盤
8 防音箱
91,92,93 ブレーカ
図1