特許第5735819号(P5735819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735819
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20150528BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150528BHJP
   H05B 33/06 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H05B33/26 Z
   H05B33/14 A
   H05B33/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-35905(P2011-35905)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-174517(P2012-174517A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年10月7日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、業務委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清
(74)【代理人】
【識別番号】100155745
【弁理士】
【氏名又は名称】水尻 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100155756
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 武
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】白井 健雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 芳春
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 仁路
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−045674(JP,A)
【文献】 特開2007−026862(JP,A)
【文献】 特開2008−258317(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/126269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
H05B 33/06
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜からなる第1電極と、前記第1電極の厚み方向において前記第1電極から離間して配置され前記第1電極よりもシート抵抗が小さな第2電極とを備え、前記第1電極と前記第2電極との間に有機材料からなる発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第1電極と前記発光層と前記第2電極とが重なる発光部の側方に配置され前記第1電極に電気的に接続された第1端子部と、前記発光部における前記第1端子部側とは反対側で前記発光部の側方に配置され前記第2電極に電気的に接続された第2端子部と、前記第1電極よりも比抵抗の小さな材料からなり前記発光部の側方で前記第1電極に積層されて前記第1端子部に電気的に接続された補助電極とを備え、前記補助電極は、前記発光部の周方向に沿って配置され、前記周方向において前記第1端子部から遠ざかるにつれてシート抵抗が大きくなるように厚さを変化させてあることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記補助電極は、少なくとも2層の補助電極層の積層構造を有し、前記第1電極の厚み方向において前記第1電極から遠い前記補助電極層ほど前記第1端子部側の一端から前記第2端子部側の他端までの距離を短くすることで前記厚さを変化させてあることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子を高輝度で点灯させるためには、より大きな電流を流す必要がある。しかしながら、有機EL素子は、一般的に、ITO薄膜からなる陽極のシート抵抗が、金属膜、合金膜、金属化合物膜などからなる陰極のシート抵抗に比べて高いため、陽極での電位勾配が大きくなって、輝度の面内ばらつきが大きくなってしまう。
【0003】
これに対して、従来から、図3に示すように、透明基板100上に形成したITO薄膜からなる陽極102と、陽極102上に形成した有機発光層103と、陽極102上で有機発光層103から一定の距離を隔てて有機発光層103の外側に形成された補助電極105と、有機発光層103上に形成した陰極104とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献1)。この有機エレクトロルミネッセンス素子では、陽極102と陰極104との間に電圧を印加することによって有機発光層103で発光した光が、陽極102および透明基板100を通して出射される。
【0004】
特許文献1に開示された有機エレクトロルミネッセンス素子では、補助電極105を設けたことにより、陽極102での電圧降下や発熱を抑制することが可能となり、高効率化および高輝度化を図ることが可能となる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−45674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された有機エレクトロルミネッセンス素子では、補助電極105に起因して非発光部の面積が大きくなり、透明基板100と陽極102と有機発光層103と陰極104とが重なる発光部の面積が小さくなってしまう。言い換えれば、特許文献1に開示された有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光部以外の非発光部の面積が大きくなってしまう。また、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子では、補助電極105の幅が一定なので、補助電極105の長手方向において陽極102の端子部(図3における陽極102の左端部)に近い部分で流れる電流が大きくなる(補助電極105を通る電流量は陽極102の端子部から離れるにつれて少なくなる)。このため、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子では、補助電極105の単位長さ当たりでの電圧降下が、陽極102の端子部に近い部分ほど大きく、端子部から遠いほど小さくなり、輝度むらが生じる。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、輝度むらの低減を図りながらも非発光部の面積を低減することが可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明導電膜からなる第1電極と、前記第1電極の厚み方向において前記第1電極から離間して配置され前記第1電極よりもシート抵抗が小さな第2電極とを備え、前記第1電極と前記第2電極との間に有機材料からなる発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第1電極と前記発光層と前記第2電極とが重なる発光部の側方に配置され前記第1電極に電気的に接続された第1端子部と、前記発光部における前記第1端子部側とは反対側で前記発光部の側方に配置され前記第2電極に電気的に接続された第2端子部と、前記第1電極よりも比抵抗の小さな材料からなり前記発光部の側方で前記第1電極に積層されて前記第1端子部に電気的に接続された補助電極とを備え、前記補助電極は、前記発光部の周方向に沿って配置され、前記周方向において前記第1端子部から遠ざかるにつれてシート抵抗が大きくなるように厚さを変化させてあることを特徴とする。
【0009】
この有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記補助電極は、少なくとも2層の補助電極層の積層構造を有し、前記第1電極の厚み方向において前記第1電極から遠い前記補助電極層ほど前記第1端子部側の一端から前記第2端子部側の他端までの距離を短くすることで前記厚さを変化させてあることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子においては、輝度むらの低減を図りながらも非発光部の面積を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の有機エレクトロルミネッセンス素子を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図、(c)は(a)のB−B’概略断面図である。
図2】実施形態2の有機エレクトロルミネッセンス素子を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図、(c)は(a)のB−B’概略断面図である。
図3】従来例の有機エレクトロルミネッセンス素子を示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本実施形態の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する)について、図1に基づいて説明する。
【0013】
本実施形態の有機EL素子は、透明導電膜からなる第1電極12と、第1電極12の厚み方向において第1電極12から離間して配置され第1電極12よりもシート抵抗が小さな第2電極14とを備え、第1電極12と第2電極14との間に有機材料からなる発光層(図示せず)を有する有機EL層13が設けられている。
【0014】
また、有機EL素子は、第1電極12と発光層と第2電極14とが重なる発光部11の側方に形成され第1電極12に電気的に接続された第1端子部22と、発光部11における第1端子部22側とは反対側で発光部11の側方に形成され第2電極14に電気的に接続された第2端子部24とを備えている。また、有機EL素子は、第1電極12よりも比抵抗の小さな材料からなり発光部11の側方で第1電極12に積層されて第1端子部22に電気的に接続された補助電極15を備えている。
【0015】
また、有機EL素子は、第1電極12を基板10の一表面側に積層してあり、第1電極12における基板10側とは反対側で、第2電極14が第1電極12に対向している。基板10としては、透光性基板を用いている。したがって、有機EL素子は、基板10の他表面側から光を出射させることができる。なお、本実施形態の有機EL素子では、第2電極14を発光層からの光を反射する電極により構成してある。また、本実施形態の有機EL素子は、基板10の上記他表面のうち、第1電極12、有機EL層13、第2電極14の3つが重複して投影される領域が発光面となる。
【0016】
以下、有機EL素子の各構成要素について詳細に説明する。
【0017】
基板10は、平面視形状を矩形状としてある。ここで、基板10は、矩形状に限らず、例えば、矩形状以外の多角形状、円形状などでもよい。
【0018】
基板10としては、ガラス基板を用いているが、これに限らず、例えば、プラスチック基板を用いてもよい。ガラス基板としては、例えば、無アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板などを用いることができる。また、プラスチック基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエーテルサルフォン(PES)基板、ポリカーボネート(PC)基板などを用いてもよい。
【0019】
基板10としてガラス基板を用いる場合には、基板10の上記一表面の凹凸が有機EL素子のリーク電流などの発生原因となることがある(有機EL素子の劣化原因となることがある)。このため、基板10としてガラス基板を用いる場合には、上記一表面の表面粗さが小さくなるように高精度に研磨された素子形成用のガラス基板を用意する必要がある。基板10の上記一表面の表面粗さについては、JIS B 0601−2001(ISO 4287−1997)で規定されている算術平均粗さRaを、数nm以下にすることが好ましい。これに対して、基板10としてプラスチック基板を用いる場合には、特に高精度な研磨を行わなくても、上記一表面の算術平均粗さRaが数nm以下のものを低コストで得ることができる。
【0020】
有機EL素子は、第1電極12が陽極、第2電極14が陰極を構成している。そして、有機EL素子は、第1電極12と第2電極14との間に介在する有機EL層13が、第1電極12側から順に、ホール輸送層、上述の発光層、電子輸送層、電子注入層を備えている。
【0021】
有機EL素子は、基板10の厚み方向において当該基板10と第1電極12と上述の発光層と第2電極14とが重なる領域が、発光部11を構成しており、発光部11以外の領域が、非発光部となる。
【0022】
上述の有機EL層13の積層構造は、上述の例に限らず、例えば、発光層の単層構造や、ホール輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造や、ホール輸送層と発光層との積層構造や、発光層と電子輸送層との積層構造などでもよい。また、第1電極12とホール輸送層との間にホール注入層を介在させてもよい。また、発光層は、単層構造でも多層構造でもよい。例えば、所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、第1電極12と第2電極14とで挟んで電圧を印加すれば発光する機能を有する有機EL層13を1つの発光ユニットとして、複数の発光ユニットを光透過性および導電性を有する中間層を介して積層して電気的に直列接続したマルチユニット構造(つまり、1つの第1電極12と1つの第2電極14との間に、厚み方向に重なる複数の発光ユニットを備えた構造)を採用してもよい。
【0023】
陽極を構成する第1電極12は、発光層中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が4eV以上6eV以下のものを用いるのが好ましい。第1電極12の電極材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、IZO(Indium ZincOxide)、ヨウ化銅など、PEDOT、ポリアニリンなどの導電性高分子および任意のアクセプタなどでドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。ここにおいて、第1電極12は、基板10の上記一表面側に、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、塗布法などによって薄膜として形成すればよい。
【0024】
なお、第1電極12のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下がよい。ここで、第1電極12の膜厚は、第1電極12の光透過率、シート抵抗などにより異なるが、500nm以下、好ましくは10nm〜200nmの範囲で設定するのがよい。
【0025】
また、陰極を構成する第2電極14は、発光層中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位との差が大きくなりすぎないように仕事関数が1.9eV以上5eV以下のものを用いるのが好ましい。第2電極14の電極材料としては、例えば、アルミニウム、銀、マグネシウム、金、銅、クロム、モリブデン、パラジウム、錫など、およびこれらと他の金属との合金、例えばマグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金を例として挙げることができる。また、金属、金属酸化物など、およびこれらと他の金属との混合物、例えば、酸化アルミニウムからなる極薄膜(ここでは、トンネル注入により電子を流すことが可能な1nm以下の薄膜)とアルミニウムからなる薄膜との積層膜なども使用可能である。
【0026】
発光層の材料としては、有機EL素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体および各種蛍光色素など、上述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、上記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる発光層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法など、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0027】
上述のホール注入層に用いられる材料は、ホール注入性の有機材料、金属酸化物、いわゆるアクセプタ系の有機材料あるいは無機材料、p−ドープ層などを用いて形成することができる。ホール注入性の有機材料とは、ホール輸送性を有し、また仕事関数が5.0〜6.0eV程度であり、第1電極12との強固な密着性を示す材料などがその例であり、例えば、CuPc、スターバーストアミンなどがその例である。また、ホール注入性の金属酸化物とは、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物である。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、上記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。また、これらの材料からなるホール注入層は、蒸着法、転写法などの乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などの湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
【0028】
また、ホール輸送層に用いる材料は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
【0029】
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体などのヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
【0030】
また、電子注入層の材料は、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどに代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛、シリコンなどの各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、窒化アルミニウム、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、窒化ホウ素などの絶縁物となるものや、SiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などから任意に選択して用いることができる。これらの材料は、真空蒸着法やスパッタ法などにより形成することで薄膜状に形成することができる。
【0031】
第1端子部22の材料としては、第1電極12よりも比抵抗の小さな材料が好ましく、例えば、金、銀、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などが好ましい。また、第1端子部22は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。
【0032】
第2端子部24の材料としては、第2電極14と同じ材料を採用している。本実施形態では、第2電極14のうち基板10上まで延設された延設部を第2端子部24としているが、これに限らず、当該延設部上に、第2端子部24を形成してもよい。この場合、第2端子部24の材料としては、第1端子部22と同様の材料を採用することができる。
【0033】
補助電極15の材料としては、第1電極12に比べて、比抵抗のより小さい材料が好ましい。補助電極15の材料としては、例えば、金、銀、銅、クロム、モリブデン、アルミニウム、パラジウム、スズ、鉛、マグネシウムなどの金属や、これら金属の少なくとも1種を含む合金などを採用すればよい。また、補助電極15は、単層構造に限らず、多層構造を採用してもよい。なお、補助電極15の材料と第1端子部22の材料とを同じ材料とすれば、補助電極15と第1端子部22とを同時に形成することが可能となり、低コスト化を図れる。
【0034】
ところで、本実施形態の有機EL素子では、第1電極12の平面形状が矩形状であり、発光部11の周方向が第1電極12の周方向に並行している。ここにおいて、補助電極15は、発光部11の周方向に沿って配置されている。具体的には、第1端子部22が、矩形状の第1電極12の周部において、第1電極12の1辺に沿って配置され、補助電極15が、第1電極12の周部において、第1電極12の上記1辺に隣り合う2辺それぞれに沿って1つずつ配置されている。なお、第1端子部22と各補助電極15とを連続した形状としてもよい。
【0035】
補助電極15は、幅寸法を一定としてあり、発光部11の周方向において第1端子部22から遠ざかるにつれてシート抵抗が大きくなるように厚さを変化させてある。なお、図1に示した例では、補助電極15の厚さを1段のステップ状に変化させている。ただし、補助電極15の厚さの変化のさせ方は、これに限らず、複数段のステップ状に変化させてもよいし、線形に変化させてもよい。補助電極15は、例えば、スパッタ法や、めっき法や、蒸着法などにより形成すればよい。
【0036】
以上説明した本実施形態の有機EL素子では、補助電極15について、幅寸法を一定としてあり、発光部11の周方向において第1端子部22から遠ざかるにつれてシート抵抗が大きくなるように厚さを変化させてあるので、補助電極15の厚さが一定である場合に比べて、補助電極15において第1端子部22に近い側での単位長さ(例えば、1cm)当たりの電圧降下を小さくする一方で第1端子部22から遠い側での単位長さ当たりの電圧降下を大きくすることが可能となる。これにより、本実施形態の有機EL素子では、補助電極15の幅寸法の縮小化を図りながらも輝度むらを低減することが可能となる。言い換えれば、本実施形態の有機EL素子では、輝度むらの低減を図りながらも非発光部の面積を低減することが可能となる。なお、有機EL素子の輝度は、流れる電流値に略比例する。
【0037】
また、本実施形態の有機EL素子では、上述の補助電極15を備えていることにより、駆動時において発光部11のうち第1端子部22に近い部位での電流集中を抑制することが可能となるから、より一層の長寿命化を図ることが可能となる。
【0038】
(実施形態2)
以下、本実施形態の有機EL素子について図2に基づいて説明する。
【0039】
本実施形態の有機EL素子の基本構成は実施形態1と略同じであり、補助電極15が、2層の補助電極層151,152の積層構造を有し、第1電極12の厚み方向において第1電極12から遠い補助電極層152について、第1端子部22側の一端から第2端子部24側の他端までの距離を短くすることで厚さを変化させてある点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
補助電極15は、少なくとも2層の補助電極層151,152の積層構造を有していればよく、第1電極12の厚み方向において第1電極12から遠い補助電極層15n(n≧2)ほど、第1端子部22側の一端から第2端子部24側の他端までの距離を短くすることで当該補助電極15の厚さを変化させてあればよい。
【0041】
各補助電極層151,152の材料は、実施形態1において説明した補助電極15の材料のうち互いに異なる材料を採用すればよい。
【0042】
また、本実施形態の有機EL素子では、第1端子部22が、2層の電極層221,222の積層構造を有している。そして、第1電極12の厚み方向において第1電極12に近い側の電極層221の材料と補助電極層151の材料とを同じ材料とし、第1電極12から遠い側の電極層222の材料と補助電極層152の材料とを同じ材料としてある。したがって、本実施形態の有機EL素子においても、実施形態1の有機EL素子と同様、第1端子部22と補助電極15とを同時に形成することが可能となる。
【0043】
以上説明した本実施形態の有機EL素子では、実施形態1の有機EL素子と同様に、輝度むらの低減を図りながらも非発光部の面積を低減することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の有機EL素子では、補助電極15が、少なくとも2層の補助電極層151,152の積層構造を有し、第1電極12の厚み方向において第1電極12から遠い補助電極層15n(n≧2)ほど第1端子部22側の一端から第2端子部24側の他端までの距離を短くすることで当該補助電極15の厚さを変化させてあるので、実施形態1に比べて、補助電極15の抵抗分布の設計が容易になる。
【0045】
実施形態1,2で説明した有機EL素子では、透明導電膜からなる第1電極12が陽極を構成し、第1電極12よりもシート抵抗が小さな第2電極14が陰極を構成しているが、第1電極12が陰極を構成し、第2電極14が陽極を構成してもよく、いずれにしても、透明導電膜からなる第1電極12を通して光を取り出すことが可能であればよい。
【0046】
また、実施形態1,2で説明した有機EL素子は、例えば、照明用の有機EL素子として好適に用いることができるが、照明用に限らず、他の用途に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
11 発光部
12 第1電極
13 有機EL層
14 第2電極
15 補助電極
151 補助電極層
152 補助電極層
22 第1端子部
24 第2端子部
図1
図2
図3