特許第5735825号(P5735825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5735825発光素子駆動用のスイッチング電源の制御回路およびそれらを用いた発光装置および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735825
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】発光素子駆動用のスイッチング電源の制御回路およびそれらを用いた発光装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20150528BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20150528BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20150528BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   H02M3/155 B
   H01L33/00 J
   G02F1/13357
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-50735(P2011-50735)
(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-190559(P2012-190559A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 弘基
(72)【発明者】
【氏名】印 正男
(72)【発明者】
【氏名】安 民基
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−205036(JP,A)
【文献】 特開2008−253051(JP,A)
【文献】 特開平07−104711(JP,A)
【文献】 特開2010−153599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
G02F 1/13357
H01L 33/00
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流源により定電流駆動される発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源の制御回路であって、
前記スイッチング電源の出力電圧に応じた検出電圧が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづき前記スイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、
スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、前記スイッチング素子のスイッチングを停止し、その後、所定時間経過後に、前記制御回路および前記電流源をシャットダウンするスタンバイ制御部と、
その出力端子にキャパシタが接続され、動作状態においてその出力端子に生ずる電圧を所定レベルに安定化し、前記ドライバに供給する内部電源と、
を備え、
前記スタンバイ制御部は、
前記スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、前記内部電源を停止状態とするロジック部と、
前記内部電源の前記出力端子に接続された放電回路と、
前記内部電源の前記出力端子の電位を所定のしきい値電圧と比較するコンパレータと、
を含み、前記コンパレータの出力に応じて、前記制御回路の少なくとも一部の回路ブロックをシャットダウンすることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
定電流駆動される発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源の制御回路であって、
前記スイッチング電源の出力電圧に応じた検出電圧が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号にもとづき、前記スイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、
前記発光素子の前記一端と接地端子の間に設けられた放電経路を含み、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると前記放電経路が導通するよう構成された放電回路と、
スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、前記制御回路をシャットダウンするスタンバイ制御部と、
その出力端子にキャパシタが接続され、動作状態においてその出力端子に生ずる電圧を所定レベルに安定化し、前記ドライバに供給する内部電源と、
を備え、
前記放電回路は、
前記発光素子の前記一端と接地端子の間の前記放電経路上に設けられた第1トランジスタと、
前記スタンバイ信号に応じて前記第1トランジスタのオンオフを切りきりかえるゲート制御回路と、
を含み、
前記ゲート制御回路は、
前記第1トランジスタの制御端子と接地端子の間に、並列に設けられた第1抵抗およびダイオードと、
前記内部電源の出力端子と接地端子の間に順に直列に設けられた第2抵抗および第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの制御端子と、前記第2抵抗と前記第2トランジスタの接続ノードとの間に設けられたキャパシタと、
を含み、前記スタンバイ信号は、前記第2トランジスタの制御端子に入力されることを特徴とする制御回路。
【請求項3】
前記放電回路は、前記パルス変調器および前記スタンバイ制御が形成される半導体基板に外付けされることを特徴とする請求項に記載の制御回路。
【請求項4】
発光素子と、
前記発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、
前記発光素子の他端に接続され、前記発光素子に目標輝度に応じた駆動電流を供給する電流駆動回路と、
を備え、前記スイッチング電源は、
スイッチング素子を含む出力回路と、
前記スイッチング素子を駆動する請求項1からのいずれかに記載の制御回路と、
を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項5】
液晶パネルと、
前記液晶パネルのバックライトとして設けられた請求項に記載の発光装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルのバックライトや照明機器として、LED(発光ダイオード)をはじめとする発光素子を利用した発光装置が利用される。図1は、本発明者が検討した発光装置の構成例を示す回路図である。ここで説明される発光装置1003およびその動作は、本出願人が従来技術と認めるものではない。発光装置1003は、LEDストリング6と、スイッチング電源1004と、電流駆動回路1008を備える。
【0003】
LEDストリング6は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源1004は、入力電圧VINを昇圧してLEDストリング6のアノード側の一端に駆動電圧VOUTを供給する。
【0004】
電流駆動回路1008は、アナログ調光およびバースト調光(PWM調光ともいう)を併用して、LEDストリング6の輝度を調節する。電流源CSは、LEDストリング6のカソード側の一端に接続され、LEDストリング6に、目標輝度に応じた駆動電流ILEDを供給する。駆動電流ILEDの大きさにもとづく調光をアナログ調光という。
【0005】
PWMコントローラ1009は、バースト調光に応じたデューティ比で電流源CSを間欠的にオンさせる。これにより、デューティ比に応じたオン期間TONにのみ、LEDストリング6に駆動電流ILEDが流れることになり、駆動電流ILEDの時間平均が制御され、輝度が調節される。
【0006】
スイッチング電源1004は、出力回路1102と、制御IC1100を備える。出力回路1102は、インダクタL1、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、出力キャパシタC1を含む。制御IC1100は、スイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を制御することにより、駆動電圧VOUTを調節する。
【0007】
制御IC1100は、電流源CSの両端間の電圧、つまりLEDストリング6のカソード側の一端の電位(検出電圧という)VLEDが、所定の基準電圧VREFと一致するように、駆動電圧VOUTを安定化させる。誤差増幅器22は、検出電圧VLEDと基準電圧VREFの誤差を増幅し、フィードバック電圧VFBを生成する。パルス幅変調器PWMは、フィードバック電圧VFBに応じたデューティ比を有するパルス信号SPWMを生成する。ドライバDRは、パルス信号SPWMにもとづきスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0008】
駆動電圧VOUTは、抵抗Ro1、Ro2によって分圧され、制御IC1100に入力される。制御IC1100は、分圧された駆動電圧VOUT(以下、OVP電圧VOVPという)によって過電圧状態などを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−114324号公報
【特許文献2】特開2008−300208号公報
【特許文献3】特開2006−339298号公報
【特許文献4】特開2008−064477号公報
【特許文献5】特開2008−258428号公報
【特許文献6】特開2007−158083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
制御IC1100には、図示しないマイコン等から、スタンバイ信号STBが入力される。制御IC1100は、スタンバイ信号STBが第1レベル(たとえばハイレベル)のときに、上述の動作によってLEDストリング6を点灯し、スタンバイ信号STBが第2レベル(たとえばローレベル)のときに、スイッチングトランジスタM1を停止するとともに電流源CSをオフし、LEDストリング6を消灯する。
【0011】
本発明者らは、図1の発光装置について検討を行った結果、以下の課題を認識するに至った。
【0012】
図2は、図1の発光装置1003の動作を示す波形図である。時刻t1以前、スタンバイ信号STBがハイレベルとなっている。このとき、出力電圧VOUTは所定レベルに安定化され、LEDストリング6には駆動電流ILEDが流れる。またフィードバック電圧VFBも、ある電圧レベルVa付近に保たれている。VLED>VREFのときに、フィードバック電圧VFBは低くなり、スイッチングトランジスタM1のオン期間は短くなり、駆動電圧VOUTが低下する方向にフィードバックがかかる。反対にVLED<VREFのときにはフィードバック電圧VFBが高くなり、スイッチングトランジスタM1のオン時間が短くなる方向にフィードバックがかかる。
【0013】
時刻t1にスタンバイ信号STBがローレベルに遷移する。これにより、制御IC1100の内部の回路ブロック(20、22、28)がシャットダウンし、スイッチングトランジスタM1のスイッチングが停止する。またスタンバイ信号STBがローレベルとなると電流源CSも停止する。
【0014】
スイッチングトランジスタM1のスイッチングが停止すると、出力キャパシタC1の電荷が、抵抗Ro1、Ro2を介して放電され、駆動電圧VOUTは緩やかに低下する。また、誤差増幅器22の出力電圧VFBは、誤差増幅器22のシャットダウンにより実質的に接地電圧0Vまで低下する。
【0015】
時刻t2にスタンバイ信号STBがハイレベルに遷移する。これにより制御IC1100がスタンバイ状態から復帰し、その内部の回路ブロックの動作が再開する。スタンバイ期間TSTBがそれほど長くなければ、時刻t2において駆動電圧VOUTは十分に高いレベルを維持しているため、LEDストリング6には駆動電流ILEDが流れ、発光する。
【0016】
時刻t2において、駆動電圧VOUTは目標値より低く、検出電圧VLEDは基準電圧VREFよりも低い。したがって、検出電圧VLEDを上昇させるためには、スイッチングトランジスタM1のオン時間が長くなるようにフィードバックをかける必要がある。ところが、フィードバック電圧VFBは0Vに低下しているため、検出電圧VLEDが基準電圧VREFより低いにもかかわらず、スイッチングトランジスタM1のオン時間が短くなり、検出電圧VLEDがさらに低下する方向にフィードバックがかかってしまう。これにより、駆動電流ILEDが低下する。その後、フィードバック電圧VFBがもとの電圧レベルVaに近づいていき、駆動電圧VLEDも元のレベルに復帰する。
【0017】
このように図1の発光装置1003では、スタンバイ状態からの復帰時に、LEDストリング6が発光し、その後発光強度が低下した後に、目標の強度で発光する。これはLEDストリング6のちらつき(フリッカー)として現れるため好ましくない。
【0018】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、スタンバイ状態からの復帰時におけるちらつきの抑制にある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のある態様は、電流源により定電流駆動される発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源の制御回路に関する。制御回路は、スイッチング電源の出力電圧に応じた検出電圧が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづきスイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、スイッチング素子のスイッチングを停止し、その後、所定時間経過後に、制御回路および電流源をシャットダウンするスタンバイ制御部と、を備える。
【0020】
スタンバイ状態への遷移後、所定時間の経過までの期間、スイッチングトランジスタは停止する一方、発光素子に接続される電流源は動作し続ける。その結果、発光素子を介してスイッチング電源の出力キャパシタの電荷が放出され、出力電圧を低下させることができる。これにより、次にスタンバイ状態から動作状態へ遷移直後に、発光素子が一旦発光するのを抑制できる。
【0021】
ある態様の制御回路は、内部電源をさらに備えてもよい。内部電源は、その出力端子にキャパシタが接続され、動作状態において出力端子に生ずる電圧を所定レベルに安定化し、ドライバに供給する。スタンバイ制御部は、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、内部電源を停止状態とするロジック部と、内部電源の出力端子に接続された放電回路と、内部電源の出力端子の電位を所定のしきい値電圧と比較するコンパレータと、を含む。制御回路は、コンパレータの出力に応じてシャットダウンしてもよい。
この態様によれば、内部電源を、所定時間を測定するためのタイマー回路として利用できる。
【0022】
本発明の別の態様もまた、定電流駆動される発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源の制御回路に関する。この制御回路は、スイッチング電源の出力電圧に応じた検出電圧が所定の基準電圧と一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号にもとづきスイッチング電源のスイッチング素子を駆動するドライバと、発光素子の一端と接地端子の間に設けられ、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると導通する放電回路と、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると制御回路をシャットダウンするスタンバイ制御部と、を備える。
【0023】
この態様によるとスタンバイ状態への遷移後、放電回路を介してスイッチング電源の出力キャパシタの電荷が放出され、出力電圧を低下させることができる。これにより、次にスタンバイ状態から動作状態へ遷移直後に、発光素子が一旦発光するのを抑制できる。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、発光装置である。この発光装置は、発光素子と、発光素子の一端に駆動電圧を供給するスイッチング電源と、発光素子の他端に接続され、発光素子に目標輝度に応じた駆動電流を供給する電流駆動回路と、を備える。スイッチング電源は、スイッチング素子を含む出力回路と、スイッチング素子を駆動する上述のいずれかの態様の制御回路と、を含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、液晶パネルと、液晶パネルのバックライトとして設けられた上述の発光装置と、を備える。
【0026】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0027】
本発明のある態様によれば、スタンバイ状態からの復帰時におけるちらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明者が検討した発光装置の構成例を示す回路図である。
図2図1の発光装置の動作を示す波形図である。
図3】第1の実施の形態に係るスイッチング電源を備える電子機器の構成を示す回路図である。
図4図3の発光装置の動作を示すタイムチャートである。
図5】第2の実施の形態に係る発光装置の構成を示す回路図である。
図6図5の発光装置の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係るスイッチング電源を備える電子機器の構成を示す回路図である。
【0032】
電子機器2は、ノートPC、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電池駆動型の機器であり、発光装置3とLCD(Liquid Crystal Display)パネル5を備える。発光装置3はLCDパネル5のバックライトとして設けられる。
【0033】
発光装置3は、発光素子であるLEDストリング6_1〜6_nと、電流駆動回路8と、スイッチング電源4と、を備える。
【0034】
各LEDストリング6は、直列に接続された複数のLEDを含む。スイッチング電源4は、昇圧型のDC/DCコンバータであり、入力端子P1に入力された入力電圧(たとえば電池電圧)VINを昇圧して、出力端子P2に接続される出力ラインに、出力電圧(駆動電圧)VOUTを発生させる。複数のLEDストリング6_1〜6_nそれぞれの一端(アノード)は、出力ラインに共通に接続される。
【0035】
スイッチング電源4は、制御IC100および出力回路102を備える。出力回路102は、インダクタL1、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、出力キャパシタC1を含む。出力回路102のトポロジーは一般的であるため、説明を省略する。またそのトポロジーにさまざまな変形があることが当業者には理解され、本発明において限定されるものではない。
【0036】
制御IC100のスイッチング端子P4は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続される。制御IC100は、LEDストリング6の点灯に必要な出力電圧VOUTが得られるように、フィードバックによりスイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比を調節する。なおスイッチングトランジスタM1は制御IC100に内蔵されてもよい。
【0037】
電流駆動回路8は、複数のLEDストリング6_1〜6_nの他端(カソード)と接続される。電流駆動回路8は、LEDストリング6_1〜6_nそれぞれに、目標輝度に応じた間欠的な、あるいは直流の駆動電流ILED1〜ILEDnを供給する。具体的には電流駆動回路8は、LEDストリング6_1〜6_nごとに設けられた複数の電流源CS〜CSと、PWMコントローラ9を備える。i番目の電流源CSは、対応するi番目のLEDストリング6_iのカソードと接続されている。電流源CSは、PWMコントローラ9から出力される制御信号PWMに応じて、駆動電流ILEDiを出力する動作(アクティブ)状態φONと、駆動電流ILEDiを停止する停止状態φOFFが切りかえ可能に構成される。PWMコントローラ9は、目標輝度に応じたデューティ比を有する制御信号PWM〜PWMを生成し、電流源CS〜CSに出力する。制御信号PWMがアサート(たとえばハイレベル)される期間(点灯期間TON)、対応する電流源CSは動作状態φONとなり、LEDストリング6_iは点灯する。制御信号PWMがネゲート(たとえばローレベル)される期間(消灯期間TOFF)、対応する電流源CSは停止状態φOFFとなり、LEDストリング6_iは消灯する。点灯期間TONと消灯期間TOFFの時間比率を制御することにより、LEDストリング6_iに流れる駆動電流ILEDの実効値(時間平均値)が制御され、輝度を調節することができる。電流駆動回路8によるPWM駆動の周波数は数十〜数百Hzである。
【0038】
制御IC100と電流駆動回路8は、図3のように別々のチップに集積化される。それらは、単一のパッケージ(モジュール)を構成してもよいし、別々のパッケージを構成してもよい。あるいは、制御IC100と電流駆動回路8を単一のチップに集積化してもよい。
【0039】
以上が発光装置3全体の構成である。続いて制御IC100の構成を説明する。制御IC100は、LEDストリング6_1〜6_nごとに設けられたLED端子LED〜LEDを備える。各LED端子LEDは、対応するLEDストリング6_iのカソード端子と接続される。なお、LEDストリングは複数である必要はなく、1個であってもよい。
【0040】
制御IC100は、主としてパルス生成部19、ドライバ28、内部電源30、スタンバイ制御部50、過電圧保護(OVP: Over Voltage Protection)回路70を備える。
【0041】
パルス生成部19は、LEDストリング6の点灯期間TONにおいて、出力電圧VOUTに応じた検出電圧が所定の基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号SPWMを生成する。図3において、検出電圧は、LEDストリング6のカソード端子に生ずる電圧(LED端子電圧)VLED1〜VLEDnのうち、最も低いひとつであり、以下ではVLEDと記す。なお別の実施の形態において、検出電圧として別の電圧、たとえば出力電圧VOUTを分圧した電圧VOVPを用いてもよい。
【0042】
ドライバ28は、パルス信号SPWMにもとづき、スイッチングトランジスタM1を駆動する。内部電源30は、動作状態において出力端子P5に生ずる電圧VREGを所定レベル(たとえば5V)に安定化し、ドライバ28に供給する。ドライバ28は、パルス信号SPWMが第1レベル(たとえばハイレベル)のときスイッチングトランジスタM1のゲートに電圧VREGを、パルス信号SPWMが第2レベル(たとえばローレベル)のときスイッチングトランジスタM1のゲートに接地電圧VSSを印加する。
【0043】
点灯期間TONにおいて制御IC100は、スイッチング電源4の出力電圧VOUTを、LEDストリング6_1〜6_nの駆動に最適な電圧レベルに調節する。消灯期間TOFFにおいては、LEDストリング6_1〜6_nに供給される駆動電流ILED1〜ILEDnがゼロ、すなわちスイッチング電源4が無負荷状態となるため、制御IC100はスイッチングトランジスタM1をオフ状態としてもよい。
【0044】
続いてパルス生成部19の構成例を説明する。
パルス生成部19は、誤差増幅器22、パルス変調器20を備える。誤差増幅器22は、LEDストリング6の点灯期間において、検出電圧VLEDと基準電圧VREFの誤差を増幅し、誤差に応じたフィードバック電圧VFBを生成する。
【0045】
具体的には誤差増幅器22は、複数の反転入力端子(−)と、ひとつの非反転入力端子(+)を有する。複数の反転入力端子にはそれぞれ、LED端子電圧VLED1〜VLEDnが入力され、非反転入力端子には基準電圧VREFが入力される。誤差増幅器22は、最も低いLED端子電圧(検出電圧)VLEDと基準電圧VREFの誤差に応じたフィードバック電圧VFBを生成する。
【0046】
パルス変調器20は、たとえばパルス幅変調器であり、フィードバック電圧VFBに応じたデューティ比を有し、かつ固定された周期を有するパルス信号SPWMを生成する。具体的にはフィードバック電圧VFBが高いほどパルス信号SPWMのデューティ比は大きくなる。
【0047】
たとえばパルス変調器20は、オシレータ24、PWMコンパレータ26を含む。オシレータ24は、三角波もしくはのこぎり波の周期電圧VOSCを生成する。PWMコンパレータ26はフィードバック電圧VFBを周期電圧VOSCと比較し、比較結果に応じたレベルを有するPWM信号SPWMを生成する。なお、パルス変調器20としてパルス周波数変調器などを用いてもよい。PWM信号SPWMの周波数は、電流駆動回路8によるPWM駆動の周波数に比べて十分に高く、数百kHz(たとえば600kHz)である。
【0048】
OVP回路70は、出力電圧VOUTに応じたOVP電圧VOVPを受け、過電圧しきい値電圧より高くなると、所定の過電圧保護を行う。
【0049】
スタンバイ制御部50には、スタンバイ信号STBを受ける。スタンバイ制御部50は、スタンバイ信号STBがスタンバイ状態を指示するレベル(たとえばローレベル)に遷移すると、スイッチングトランジスタM1のスイッチングを停止し、その後、所定時間τ経過後に、制御回路100をシャットダウンするとともに、電流駆動回路8をシャットダウンする。
【0050】
スタンバイ制御部50は、所定時間τを計測するタイマー回路を含んでもよい。たとえばタイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを充電し、および/または放電する充放電回路と、キャパシタの電圧をしきい値電圧と比較するコンパレータと、で構成できる。
【0051】
図3において、内部電源30の出力端子P5に接続されるキャパシタCREGと、放電回路52、コンパレータ54が、タイマー回路を形成する。
放電回路52は、内部電源30の出力端子P5、言い換えればキャパシタCREGに接続され、キャパシタCREGから電荷を引き抜く。放電回路52は電流源であってもよいし、抵抗であってもよい。ロジック部56は、スタンバイ信号STBがローレベルに遷移すると、内部電源30を停止状態とする。スタンバイ状態では、スイッチングトランジスタM1のスイッチングは停止されるため、内部電源30が停止状態となっても支障はない。コンパレータ54は、内部電源30の出力端子P5の電位VREGを所定のしきい値電圧VTHと比較する。
【0052】
このタイマー回路によれば、スタンバイ信号STBがハイレベルからローレベルに遷移してから、式(1)で与えられる所定時間τ経過後に、コンパレータ54の出力S3が変化する。Icは、放電回路52が発生する電流値である。つまり、出力端子P5に接続するキャパシタCREGの容量値に応じて、時間τを調節することができる。
τ=CREG×(VREG−VTH)/Ic …(1)
【0053】
ロジック部56は、コンパレータ54の出力に応じて、制御回路100をシャットダウンするとともに、電流駆動回路8をシャットダウンする。
【0054】
以上が制御IC100の構成である。
続いて発光装置3の動作を説明する。図4は、図3の発光装置3の動作を示すタイムチャートである。
時刻t1以前、スタンバイ信号STBがハイレベルとなっている。このとき、出力電圧VOUTは所定レベルに安定化され、LEDストリング6には駆動電流ILEDが流れる。LEDストリング6の電圧降下(順方向電圧)をVとするとき、VOUT=V+VREFが成り立つ。
【0055】
時刻t1にスタンバイ信号STBがローレベルに遷移する。これを契機としてスタンバイ制御部50は、制御信号S1を出力し、ドライバ28が出力するスイッチングトランジスタM1のゲート電圧をローレベルに固定させる。また、ロジック部56は、内部電源30に対して制御信号S2を出力し、内部電源30を停止状態(シャットダウン)とする。
【0056】
内部電源30が停止状態となると、キャパシタCREGに対する電荷の供給が停止し、その出力電圧VREGは放電回路52による放電により時間とともに低下する。そして所定時間τ経過後の時刻t2に、出力電圧VREGがしきい値電圧VTHに低下し、コンパレータ54の出力S3が変化する。ロジック部56は、コンパレータ54の出力S3が変化すると、制御信号S4を出力し、制御IC100の内部電源30以外の残りの回路ブロック19、50、70をシャットダウンするとともに、制御信号S5を出力し、電流駆動回路8をシャットダウンする。
【0057】
LEDストリング6を介して駆動電流ILEDが流れることにより、スイッチング電源4の出力電圧VOUTは徐々に低下していく。また出力電圧VOUTの低下にともない駆動電流ILEDも低下していく。出力電圧VOUTはやがて0Vとなる。
【0058】
時刻t3にスタンバイ信号STBがハイレベルに戻り、スタンバイ状態から通常の動作状態への復帰が指示される。このとき、出力電圧VOUTはゼロであるため、LEDストリング6は発光しない。制御IC100は、所定のソフトスタートシーケンスにしたがい出力電圧VOUTを徐々に上昇させる。出力電圧VOUTの上昇にともない、駆動電流ILEDも増加していく。
【0059】
以上が発光装置3の動作である。この発光装置3によれば、スタンバイ状態からの復帰時に、出力電圧VOUTはLEDストリング6が発光しない電圧レベルまで低下しているため、図2で説明したようなちらつきを好適に防止することができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る発光装置3aの構成を示す回路図である。制御IC100aの基本構成は、図1あるいは図3のそれと同様であり、スイッチング電源4aの出力電圧VOUTに応じた検出電圧VLEDが所定の基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節されるパルス信号SPWMを生成するパルス生成部19と、パルス信号SPWMにもとづきスイッチングトランジスタM1を駆動するドライバ28と、を備える。放電回路60は、制御IC100aに外付けされ、制御IC100aとともに制御回路を形成する。
【0061】
放電回路60は、LEDストリング6の一端(アノード)と接地端子の間に設けられた放電経路62を含み、スタンバイ信号がスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、放電経路62が導通するように構成される。放電経路62は、抵抗R1および第1トランジスタM2を含む。第1トランジスタM2のオンが、放電経路62の導通に対応する。
【0062】
第1抵抗R2、第2抵抗R3、ダイオードD2、キャパシタC2、第2トランジスタM3は、スタンバイ信号STBにもとづき、第1トランジスタM2のオン、オフを切りかえるゲート制御回路64を構成する。スタンバイ信号STBがハイレベルのとき、第2トランジスタM3がオンとなり、第1トランジスタM2の制御端子(ゲート)の電圧がローレベルとなって、放電経路62は遮断する。反対にスタンバイ信号STBがローレベルのとき第2トランジスタM3がオフとなり、第1トランジスタM2のゲートには、第1トランジスタM2のゲートソース間しきい値電圧より高い電圧が印加され、第1トランジスタM2がオンし、放電経路62が導通する。
【0063】
制御IC100aのスタンバイ制御部50aは、スタンバイ信号STBがスタンバイ状態を指示するレベルに遷移すると、制御IC100aおよび電流駆動回路8をシャットダウンする。
【0064】
以上が発光装置3aの構成である。続いてその動作を説明する。図6は、図5の発光装置3aの動作を示すタイムチャートである。時刻t1にスタンバイ信号STBがローレベルとなり、スタンバイ状態への遷移が指示される。これを受けて、スタンバイ制御部50aは制御信号S4、S5をローレベルとし、制御IC100aのパルス生成部19および電流駆動回路8をシャットダウンする。
【0065】
またスタンバイ信号STBがローレベルとなると第1トランジスタM2がオンし、放電経路62を介して出力キャパシタC1が放電され、出力電圧VOUTが低下する。
【0066】
時刻t3にスタンバイ信号STBがハイレベルに戻り、スタンバイ状態から通常の動作状態への復帰が指示される。このとき、出力電圧VOUTはゼロであるため、LEDストリング6は発光しない。制御IC100aは、所定のソフトスタートシーケンスにしたがい出力電圧VOUTを徐々に上昇させる。出力電圧VOUTの上昇にともない、駆動電流ILEDも増加していく。
【0067】
以上が発光装置3aの動作である。この発光装置3aによれば、スタンバイ状態からの復帰時に、出力電圧VOUTはLEDストリング6が発光しない電圧レベルまで低下しているため、図2で説明したようなちらつきを好適に防止することができる。
【0068】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセス、それらの組み合わせには、さまざまな変形例が存在しうる。以下、こうした変形例について説明する。
【0069】
タイマー回路の構成は、図3のそれに限定されず、その他の構成を用いてもよい。たとえば、キャパシタCREGおよび内部電源30とは別に、タイマー回路専用のキャパシタと、キャパシタを初期電圧VINITに充電する電圧源(充電回路)を設けてもよい。この場合、初期電位VINITを任意に選ぶことができるため、初期電圧VINITとキャパシタの容量値に応じて、所定時間τを設定することができる。
【0070】
タイマー回路としては、キャパシタの充放電を利用するものの他、デジタルカウンタを用いることもできる。
【0071】
実施の形態ではインダクタを用いた非絶縁型のスイッチング電源を説明したが、本発明はトランスを用いた絶縁型のスイッチング電源にも適用可能である。
【0072】
実施の形態では、発光装置3のアプリケーションとして電子機器を説明したが、用途は特に限定されず、照明などにも利用できる。
【0073】
また、本実施の形態において、各信号のハイレベル、ローレベルの論理信号の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0074】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0075】
2…電子機器、3…発光装置、4…スイッチング電源、5…LCDパネル、6…LEDストリング、8…電流駆動回路、9…PWMコントローラ、100…制御IC、102…出力回路、19…パルス生成部、20…パルス変調器、22…誤差増幅器、24…オシレータ、26…PWMコンパレータ、28…ドライバ、30…内部電源、50…スタンバイ制御部、52…放電回路、54…コンパレータ、56…ロジック部、60…放電回路、62…放電経路、64…ゲート制御回路、70…OVP回路、L1…インダクタ、C1…出力キャパシタ、D1…整流ダイオード、M1…スイッチングトランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6