(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る臨床検査システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
[1.全体構成]
図1に示すように、臨床検査システム1は、臨床検査装置2と、臨床検査装置2に対してネットワーク3を介して接続されたメンテナンス用管理装置4と、を備えている。
【0024】
[2.臨床検査装置]
臨床検査装置2は、患者から採取された臨床検体としての血液検体を測定し、測定して得られたデータを分析して、分析結果を生成/出力するための血液分析装置である。より詳細には、この臨床検査装置2は、血液検体に含まれる赤血球、白血球、血小板等の血球成分を計数する血球計数装置である。
臨床検査装置2は、血液検体の分析を行うため、血液検体の分析に関連した複数のユニットを備えている。臨床検査装置2が備えるユニットとしては、血液検体の測定を行う測定ユニット2a、測定ユニット2aが備える空圧機器を動作させるための空圧源ユニット2b、血液検体と混合される試薬を加温する加温ユニット2c、その他、様々なものがある。
【0025】
測定ユニット2aは、血液検体と試薬とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、調製された測定試料に電圧を印加して測定試料の電気特性を測定する電気式測定部と、レーザダイオードによって測定試料に光を照射して測定試料の光学特性を測定する光学式測定部を備えている。測定試料は、測定が終了したのち廃液チャンバに貯留される。廃液チャンバは、一定量の廃液が貯留されると廃液を装置外部に排出する。
【0026】
空圧源ユニット2bは、圧縮空気を吐出するコンプレッサ21と、コンプレッサ21から吐出された空気の圧力を所望の圧力に調整するためのレギュレータ22と、を備えている。レギュレータ22の出力側(測定ユニット2a側)の空気流路には、圧力センサ23が設けられている。レギュレータ22から出力された空気は、血液検体や試薬等の液体を装置内部で移動させるための陽圧または陰圧として用いられる。
【0027】
加温ユニット2cは、試薬を保持するための容器24と、その容器24を加温することで、加温対象物である試薬を所望の温度にまで加温するヒータ25と、を備えている。ヒータ25の近傍には、試薬の温度を測定するための第1温度センサ26が設けられている。また、臨床検査装置2の内部であって、ヒータ25から十分に離れた位置には、環境温度(臨床検査装置2内の雰囲気温度)を測定するための第2温度センサ27が設けられている。
【0028】
圧力センサ23、第1温度センサ26、及び第2温度センサ27は、それぞれ処理部28と接続されている。処理部28には、各センサ23,26,27の測定結果が与えられる。
【0029】
処理部28は、所定の測定タイミング毎に、各センサ23,26,27の測定値を取得する。処理部28は、取得した測定値に基づいて、各ユニット2b,2cの劣化パラメータ(ユニットの劣化に応じて値が変化するパラメータ)を生成する。
【0030】
処理部28は、空圧源ユニット2bの劣化パラメータとして、空圧源ユニット2bが起動してから、レギュレータ22の出力が所定の状態(規定圧)になるまでの時間(規定圧到達時間)を求める。なお、所定の圧力は、測定ユニット2aの動作のために必要とされる圧力である。つまり、臨床検査装置2が分析対象物である血液を測定可能となるには、レギュレータ22の出力が規定圧に到達する必要がある。
【0031】
コンプレッサ21が起動すると、コンプレッサ21からレギュレータ22へ圧縮空気が供給され、レギュレータ22の出力が徐々に増加し、規定圧に達する。しかし、コンプレッサ21が劣化すると、空気の流量が低下するため、起動してから規定圧に到達するまでの時間が長くなる。このような劣化は、コンプレッサ21が完全に故障する前において発生し、時間の経過によって徐々に大きくなり、規定圧到達時間が徐々に増大していく。
【0032】
規定圧到達時間は、コンプレッサ21が起動してから圧力センサ23の出力が規定圧に到達するまでの時間として、処理部28によって求められる。この規定圧到達時間は、空圧源ユニット2bのコンプレッサ21の劣化に応じて値が変化(増加)する劣化パラメータである。なお、コンプレッサ21の起動は、次のようにして行われる。臨床検査装置2には、図示しない電源ボタンが設けられており、電源ボタンがユーザによって押下されると臨床検査装置2の電源がオンされる。電源がオンされると、これに伴ってコンプレッサ21が起動し、圧縮空気の吐出が開始する。したがって、コンプレッサ21が起動した時刻とは、臨床検査装置2の電源がオンされた時刻である。
【0033】
そして、送信部29は、処理部28が得た規定圧到達時間を、規定圧到達時間の測定毎に、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置4へ送信する。
【0034】
送信部29は、劣化パラメータである規定圧到達時間を送信する場合、臨床検査装置2の識別情報(装置ID)及び/又は機種コードと関連付けて送信する。
【0035】
さらに、処理部28は、加温ユニット2cの劣化パラメータとして、加温ユニット2c(ヒータ25)が起動(通電開始)してから、加温対象物である試薬が所定の温度(例えば、41℃)になるまでの時間(温調時間)を求める。分析対象物である血液と試薬を、人体の温度と同じ温度で反応させるため、試薬は、体内温度程度まで加温されている必要がある。つまり、臨床検査装置2が分析対象物である血液を測定可能となるには、試薬が、所定の温度に到達する必要がある。
【0036】
ヒータ25は、通電が開始されると温度が上昇していくが、ヒータ25の性能が劣化すると、加温効率が下がり、温度が上昇しにくくなり、所定の温度に至るまでの時間が長くなる。このような劣化は、ヒータ25が完全に故障する前に発生し、時間の経過によって徐々に大きくなり、所定の温度に至るまでの時間が長くなる。
【0037】
所定の温度に至るまでの時間は、処理部28が、ヒータ25が起動してから、第1温度センサ26から所定の温度を示す出力が得られるまでの時間を温調時間として求める。
【0038】
ただし、温調時間は、環境温度(臨床検査装置2内の雰囲気温度)の高低に依存するため、劣化状況を正確に把握するには、環境温度が必要である。
そこで、処理部28は、温調時間の測定時における環境温度を、第2温度センサ27から取得する。この温調時間及び環境温度が、加温ユニット2cのヒータ25の劣化に応じて値が変化(増加)する劣化パラメータである。
【0039】
処理部28は、ヒータ25が起動される毎に、温調時間及び環境温度を測定する。
そして、送信部29は、処理部28が得た温調時間及び環境温度を、温調時間及び環境温度の測定毎に、ネットワークを介して、メンテナンス用管理装置4へ送信する。
【0040】
送信部29は、劣化パラメータである温調時間及び環境温度を送信する場合、臨床検査装置2の識別情報(装置ID)及び機種コードと関連付けて送信する。
【0041】
[3.メンテナンス用管理装置]
図1に示すように、メンテナンス用管理装置4は、臨床検査装置2から送信された情報を受信する受信部41と、情報を保存するデータベース(記憶部)42、データベース42に保存されている情報(劣化パラメータ等)の解析を行う解析部43と、情報の表示のための処理を行うWWWサーバ(表示処理部)44と、を備えている。
データベース42は、圧力生データベース42a、圧力解析データベース42b、温調生データベース42c、温調解析データベース42dを備えている。
圧力生データベース42a及び温調生データベース42cには、管理装置4によって管理される複数の臨床検査装置2から送信されてきた情報(劣化パラメータ等)が、順次、追加的に蓄積される。
つまり、これらのデータベース42a,42cには、複数の臨床検査装置2から送信されてきた過去の情報が蓄積されている。
WWWサーバ44は、端末装置からの表示要求に応じて、データベース42からデータを抽出し、抽出されたデータから表示用画面を生成して端末装置に送信する。
【0042】
なお、メンテナンス用管理装置(以下、「管理装置」という)4の各処理機能は、コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されることによって発揮されるものである。コンピュータプログラムは、管理装置4を構成するコンピュータの図示しない記憶装置(記憶媒体)に保存されている。
【0043】
図2は、管理装置4によって実行される処理の手順を示している。
管理装置4は、劣化パラメータである圧力データ(規定圧到達時間)を受信すると(ステップS1)、当該圧力データの受信処理を行う(ステップS2)。
また、管理装置4は、劣化パラメータである温調データ(温調時間)及び環境温度を受信すると(ステップS2)、当該温調データ及び環境温度の受信処理を行う。
【0044】
また、管理装置4は、管理装置4に対してネットワーク3を介して接続された端末装置(図示省略)から、表示要求を受けると(ステップS5)、データベース42に保存されている情報の表示処理を行う(ステップS6)。
【0045】
さらに、管理装置4は、所定時刻(例えば、AM6:00)になると(ステップS7)、データベース42の情報が閾値を超過していないか否かを確認する閾値超過チェック処理を行う(ステップS8)。
【0046】
図3に示すように、圧力データ受信処理(ステップS2)では、受信部41は、劣化パラメータである圧力データ(規定圧到達時間)の生データを、送信元の臨床検査装置2の識別情報等とともに受信すると、その生データを圧力生データベース42aに格納する(ステップS2−1)。
【0047】
図4は、圧力生データベース42aにおける生データテーブル構造を示している。この圧力生データベース42aには、管理装置4によって管理される複数の臨床検査装置2から送信されてきた圧力生データ(規定圧到達時間)が蓄積される。なお、圧力生データベース42aには、複数の臨床検査装置から送信されてきたデータが順次、追加的に蓄積される。
図4に示す生データテーブル構造は、受付番号、受付日、受付時刻、機種コード、装置ID、及び規定圧到達時間の項目を有する。
【0048】
生データテーブル構造における受付番号は、管理装置4で受け付けた情報それぞれ区別するための識別子であり、受信部41によって割り当てられる。受付日及び受付時刻は、それぞれ、管理装置4が圧力生データを受信した日及び時刻である。受付日時を特定する情報(受付日及び受付時刻)を圧力生データに関連付けて保存することで、保存された情報を時系列データとして取り扱うことが可能となる。なお、管理装置4が受信した受付日時を特定する情報に代えて、臨床検査装置2が圧力生データを取得した日時、又は臨床検査装置の送信部29が情報を送信した時刻であってもよい。
【0049】
生データテーブル構造における機種コード及び装置ID(識別情報)は、臨床検査装置2から、圧力生データとともに、送信されたものである。装置ID(識別情報)を圧力生データに関連付けて保存することで、データベース42aに保存されている複数の臨床検査装置2のデータの中から、特定の臨床検査装置2のデータだけを抽出して解析又は表示することができる。
【0050】
生データテーブル構造における規定圧到達時間は、臨床検査装置2から送信されたものである。
【0051】
圧力生データ(規定圧到達時間)が圧力生データベース42aに格納されると(ステップS2−1)、解析部43は、当該圧力生データ(規定圧到達時間)に基づいて、第1の解析データとして日差変動データを作成する(ステップS2−2)。
また、解析部43は、当該圧力生データ(規定圧到達時間)に基づいて、第2の解析データとして移動平均データを作成する(ステップS2−3)。
作成された第1及び第2の解析データは、圧力解析データベース42bに格納される(ステップS2−4)。
【0052】
図5(a)は、特定の臨床検査装置(装置ID:470842)の規定圧到達時間に関する解析データ(日差変動データ及び移動平均データ)のデータテーブル構造を示している。なお、このような解析データは、解析部43によって、複数の臨床検査装置ごとに作成される。つまり、圧力解析データベース42bでは、臨床検査装置2ごとに解析データが保存されている。
【0053】
図5(a)のデータテーブル構造において、横軸の項目は、日(受付日)を示している。縦軸の項目のうち「1st」、「2nd」、「3rd」には、当該日において1回目、2回目、3回目に受信した圧力生データがそれぞれ格納される。縦軸の項目のうち「Avr.」には、当該日における1又は複数の圧力生データの平均値(日内平均)が格納され、日差変動データとなる。縦軸の項目のうち「M.Avr.」には、過去5日の移動平均データ(単純移動平均データ)が格納される。
なお、
図5(a)においてデータの無い空欄箇所は、管理装置4において、データの受信がなかったことを意味し、斜線部分は、異常値であるため、平均及び移動平均の算出に用いられなかった値を示す(
図8(a)についても同様)。
【0054】
受信部が受信した圧力データ(規定圧到達時間)の生データは、圧力生データベース42aに格納される(ステップS2−1)ほか、圧力解析データベース42bにおいて、当該生データに関連つけられた識別情報(装置ID)によって特定される臨床検査装置用の圧力解析データベースの「1st」、「2nd」、「3rd」のいずれかに登録される。
【0055】
なお、当該日の最初の生データは、「1st」に登録され、2番目の生データは、「2nd」に登録され、3番目の生データは、「3rd」に登録される。
【0056】
解析部43は、日差変動データの作成処理(ステップS2−2)として、当該日の1又は複数の圧力生データ(規定圧到達時間)に基づいて、当該日の平均値(加重平均値)を算出する。
【0057】
また、解析部43は、移動平均データの作成処理(ステップS2−3)として、当該日を含む前5日分の平均値から、移動平均データを作成する。
【0058】
ステップS2−2で作成された平均値は、識別情報(装置ID)によって特定される臨床検査装置用の圧力解析データベース42bの「Avr.」に登録される。ステップS2−3で作成された移動平均値は、識別情報(装置ID)によって特定される臨床検査装置用の圧力解析データベース42bの「M.Avr.」に登録される。
【0059】
なお、
図5(a)において、空欄はデータの受信がなかったことを示している。斜線箇所は、異常データであり、日差変動データや移動平均データ作成には用いられない(
図8(a)においても同様)。異常データは、予め設定されている下限閾値を下回ったデータである。臨床検査装置は、1日に複数回起動されることがあるが、再起動の場合には、シャットダウンから次の起動までの時間が短い。この場合、コンプレッサ21の圧力が下がりきらないうちに次の起動が行われることになり、異常に短い規定圧到達時間が取得されることがある。このような異常データが統計に用いられることがないよう、管理装置4は、統計処理の対象から、自動的にこのような異常データを除外して統計処理を行う。
【0060】
図6に示すように、温調データ受信処理(ステップS4)では、受信部41は、劣化パラメータである温調データ(温調時間)の生データを、送信元の臨床検査装置2の識別情報等とともに受信すると、その生データを温調生データベース42cに格納する(ステップS4−1)。
【0061】
図7は、温調生データベース42cにおける生データテーブル構造を示している。この温調生データベース42cには、管理装置4によって管理される複数の臨床検査装置2から送信されてきた温調生データ(温調時間)が蓄積される。なお、温調生データベース42cには、複数の臨床検査装置から送信されてきたデータが順次、追加的に蓄積される。
【0062】
図7に示す生データテーブル構造において、受付番号、受付日、受付時刻、機種コード、装置IDの項目は、
図4と同様である。
図7では、環境温度と温調時間の項目が設けられている。これらの環境温度と温調時間は、臨床検査装置2から送信されたものである。
【0063】
温調生データが温調生データベース42cに格納されると(ステップS4−1)、解析部43は、温調時間と環境温度とから、加温対象物を1°上昇させるために要した時間を求める(ステップS4−2)。当該時間は、温調時間を、「温調温度(41℃)−環境温度」で除することで得られる。
【0064】
さらに、解析部43は、ステップS4−2で求めた時間に基づいて、解析データとして日差変動データを作成する(ステップS4−2)。
作成された解析データは、温調解析データベース42dに格納される(ステップS4−3)。
【0065】
図8(a)は、特定の臨床検査装置(装置ID:567891)の温調データに関する解析データ(日差変動データ)のデータテーブル構造を示している。なお、このような解析データは、解析部43によって、複数の臨床検査装置ごとに作成される。つまり、温調解析データベース42dでは、臨床検査装置2ごとに解析データが保存されている。
【0066】
図8(a)のデータテーブル構造において、横軸の項目は、日(受付日)を示している。縦軸の項目のうち「1st」、「2nd」は、それぞれ、当該日において1回目に受信した「温調生データ及び環境温度」、2回目に受信した「温調生データ及び環境温度」を格納するためのものである。
また、「1st」、「2nd」それぞれにおける「Time」は温調温度の生データであり、「Temp」は環境温度である。
縦軸の項目のうち「Avr.」には、当該日における1又は複数の温調生データの平均値(日内平均)が格納される。
【0067】
受信部が受信した温調データ及び環境温度の生データは、温調生データベース42cに格納される(ステップS4−1)ほか、温調解析データベース42dにおいて、当該生データに関連つけられた識別情報(装置ID)によって特定される臨床検査装置用の温調解析データベースの「1st」、「2nd」のいずれかに登録される。
【0068】
なお、当該日の最初の生データは、「1st」に登録され、2番目の生データは、「2nd」に登録される。
【0069】
解析部43は、日差変動データの作成処理(ステップS4−3)として、ステップS4−2で求めた時間に基づいて、当該日の平均値(加重平均値)を算出する。ステップS4−3で作成された平均値は、識別情報(装置ID)によって特定される臨床検査装置用の温調解析データベース42dの「Avr.」に登録される。
【0070】
管理装置4のWWWサーバ44は、ネットワーク3を介して接続された端末装置から、特定の臨床検査装置のユニット状態情報の表示要求(ステップS5)を受けると、表示処理(ステップS6)として、
図5(a)(b)(c)及び/又は
図8(a)(b)に示すグラフを端末装置に表示させる。なお、表示は、管理装置4が有する表示装置で行われても良い。
【0071】
管理装置4が受け付ける表示要求には、ユニット状態情報を表示したい臨床検査装置の識別情報(装置ID)が含まれる。さらに、表示要求には、ユニットの種類(空圧源ユニット、加温ユニット)を示す情報が含まれる。
【0072】
管理装置4の表示処理部44は、表示要求を受信すると、表示要求によって指定されているユニットの種類が空圧源ユニットであれば、表示要求に含まれる識別情報に基づいて、圧力解析データベース42bを検索し、識別情報によって特定される臨床検査装置における日差平均データAvr.及び移動平均データMAvr.を抽出する。表示処理部44は、表示要求によって指定されているユニットの種類が加温ユニットであれば、表示要求に含まれる識別情報に基づいて、温調解析データベース42dを検索し、識別情報によって特定される臨床検査装置における日差平均データAvr.を抽出する。
表示処理部44は、抽出したデータを時系列に沿ってプロットすることによりグラフを生成し、表示要求を送信した端末装置に送信する。
【0073】
図5(b)(c)は、識別情報(装置ID)=470842の空圧源ユニット2bのユニット状態情報を時系列のグラフで表示したものである。
図5(b)は、圧力解析データベース42bの「Avr.」に蓄積された日差変動データを縦軸の値としてグラフ表示したものであり、
図5(c)は、同データベース42bの「M.Avr.」に蓄積された移動平均データを縦軸の値としてグラフ表示したものである。
図8(b)は、識別情報(装置ID)=567891の加温ユニット2cのユニット状態情報を時系列のグラフで表示したものである。
図8(b)は、温調解析データベース42dの「Avr.」に蓄積された日差変動データを縦軸の値としてグラフ表示したものである。
【0074】
図5(b)(c)及び
図8(b)のグラフでは、解析データベース42b,42dにおいて、解析データの存在しない日を省略した時系列データとして表示される。
また、
図5(b)(c)及び
図8(b)のグラフでは、各日の解析データが、所定の閾値を超えている場合には、×印で強調表示される。
図5(c)の例では、閾値として9000(mSec)が設定されており、9000mSecを超えるプロットが強調表示されている。
図8(b)の例では、閾値として30Secが設定されており、30Secを超えるプロットが強調表示されている。なお、閾値の超過のチェック(ステップS8)については、後述する。
【0075】
本実施形態では、
図5(a)(b)(c)に示すように、空圧源ユニット2bの過去のユニット状態情報(規定圧到達時間)が時系列で表示されるため、臨床検査装置を管理する管理者や臨床検査装置を保守点検するサービスマンは、最近の空圧源ユニット2bの劣化の傾向を視覚的に把握できる。また、
図8(a)(b)に示すように、加温ユニット2cの過去のユニット状態情報(加温効率)が時系列で表示されるため、管理者又はサービスマンは、最近の加温ユニット2cの劣化の傾向を視覚的に把握できる。管理者又はサービスマンは、値が徐々に上昇するといった劣化傾向を視覚的に把握でき、故障に至る前の劣化状況を把握できる。したがって、管理者又はサービスマンは、劣化傾向に基づいて、ユニットの一部を修理したり調整することで解消できる劣化であるか、ユニットを交換しなければ解消できない劣化であるのかを推測することができる。そして、管理者又はサービスマンは、ユニットの劣化を解消すべく、部品交換の計画や、臨床検査装置2が設置されている施設を訪問して行う点検の計画などを立てることができる。これにより、臨床検査装置2が実際に故障することを未然に防止でき、ダウンタイムを軽減することが可能となる。
【0076】
また、表示処理においては、データベース42a,42cに蓄積されている生データ(パラメータ)を表示してもよいが、生データ(パラメータ)に基づいて生成された解析データ(平均、移動平均)を表示することで、ノイズ的な変動を除去して、比較的長期間のパラメータ変動を示すことができる。
【0077】
また、日差変動データ(第1情報)では、日毎の突発的な異常を把握するのに適しており、移動平均データ(第2情報)では、比較的長期間におけるデータ変動の傾向を把握するのに適している。このように、表示処理において、生データ(パラメータ)を複数の異なる方法で処理(統計処理)した結果を表示することで、管理者又はサービスマンが、ユニットのユニット状態情報を把握し易くなる。
【0078】
管理装置4の解析部43は、所定時刻(例えば、AM6:00)になると、閾値超過チェック(ステップS8)として、
図9に示す処理を行う。閾値超過チェックでは、まず、前日の解析データを解析データベース42b,42dから抽出する(ステップS8−1)。
まず、解析部43は、解析データのうち、前日の日差変動データについて、所定の閾値Aを超えているか否かをチェックする(ステップS8−2)。日差変動データが、閾値Aを超えていれば、日差平均に異常が生じている旨の通知を行う(ステップS8−3)。
【0079】
続いて、解析部43は、前日の移動平均データが、所定の閾値Bを超えているか否かをチェックする(ステップS8−4)。移動平均データが閾値Bを超えていれば、さらに、閾値Bを超える移動平均データが5日連続して出たか否かを判断する(ステップS8−5)。ステップS8−5において、閾値Bを超える移動平均データが5日連続して出たと判断された場合、移動平均に異常が生じている旨の通知を行う(ステップS8−4)。
【0080】
ステップS8−3,S8−6の通知は、管理装置4が、顧客管理システム5に対して、メールを送信することによって行われる。当該メールには、臨床検査装置が設置されている施設名、当該臨床検査装置のサービス担当者、装置ID、機種名、異常が検出されたユニット名、異常種別(日差平均異常又は移動平均異常)などが含まれる。
【0081】
顧客管理システム5では、
図10に示すように、管理装置4からのメールを受信すると(ステップS10−1)、受信したデータを、顧客管理システム5のデータベースに登録する(ステップS10−2)。メール受信によって得られた新規データは、顧客管理システム5のモニター画面に追加表示される(ステップS10−3)。これにより、顧客管理システム5の担当者は、異常が通知された臨床検査装置のサービス担当者に連絡をとることができる。連絡を受けたサービス担当者は、端末装置から、メンテナンス用管理装置4(のWWWサーバ44)にアクセスして、
図5(b)(c)又は
図8(b)のデータを閲覧し、必要に応じて施設を訪問し、修理・改修を行うことができる。
なお、サービス担当者は、異常通知がなくても、随時、メンテナンス用管理装置4にアクセスできる。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0083】
上記実施形態では、臨床検査装置として血液分析装置を例示したが、これに限られない。例えば、臨床検体として血漿又は血清を分析する凝固時間測定装置、免疫分析装置、生化学分析装置であってもよいし、臨床検体として尿を分析する尿分析装置等であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、空圧源ユニット2bの特にコンプレッサ21の劣化に伴って変化するパラメータとして、規定圧到達時間を用いた例を示したが、これに限られない。例えば、空圧源ユニット2bの劣化パラメータとして、測定ユニット2aの測定中における、レギュレータ22の出力の変動幅(圧力変動幅)を用いてもよい。
【0085】
空圧源ユニット2bのレギュレータ22が劣化すると、測定動作中の圧力変動幅が大きくなる。このような劣化は、レギュレータ22が完全に故障する前に前に発生し、時間の経過によって徐々に大きくなり、圧力変動幅が徐々に増大していく。そこで、圧力変動幅を用いることによっても、空圧源ユニット2bの劣化状態を監視することができる。
【0086】
臨床検査装置2の処理部28には、圧力センサ23からの圧力値が常時入力されている。処理部28は、空圧源ユニット2bが起動してレギュレータ22からの出力が規定圧になってから圧力値の監視を開始する。具体的には、処理部28は、規定圧到達後に圧力センサ23から入力された圧力値のうち、規定圧を基準として最も高い又は低い圧力値と、規定圧との差を圧力変動幅として記憶しておく。そして、臨床検査装置2がシャットダウンするとき、処理部28は、記憶されている圧力変動幅を送信部29から管理装置4に送信する。その後の管理装置4によるデータ処理は、上記実施形態の規定圧到達時間のデータ処理と同様である。
【0087】
このように構成すれば、コンプレッサ21の異常の傾向だけでなく、レギュレータ22の異常の傾向をも監視することができる。
【0088】
圧力データとして圧力変動幅を用いる形態は、規定圧到達時間を用いる形態と併用する構成であってもよい。二つのパラメータを併用することにより、空圧源ユニット2bの異常をより多面的に監視することができる。
【0089】
ユニットの劣化に応じて変化するパラメータとしては、他にも、廃液チャンバからの廃液時間、測定ユニットにおけるレーザダイオードの発光量、測定ユニットにおける測定データの異常検知フラグの発生頻度などであってもよい。廃液ユニットの廃液チューブは、徐々につまりが発生し、つまりが発生すると廃液時間が次第に長くなる。また、レーザダイオードは劣化すると発光量が減少する。また、測定ユニットの流体系部品が汚れると、測定データが異常値となり、異常検知フラグが発生する頻度が上昇する。
【0090】
上記実施形態では、臨床検査装置と管理装置とをネットワークで接続したシステムに本発明を適用した例を示したが、これに限られず、スタンドアロンタイプの臨床検査装置に本発明を適用してもよい。具体的には、臨床検査装置2が管理装置4のデータベース42に相当する構成を備えており、ユーザが臨床検査装置2に対して表示要求を行うと、臨床検査装置2がデータベース42を参照して、ユニット状態情報を経時的に表示する構成であってもよい。
【0091】
上記実施形態では、臨床検査装置2が、劣化パラメータを取得する毎に管理装置4に送信する例を示したが、送信のタイミングはこれに限られない。例えば、臨床検査装置2が劣化パラメータを記憶しておき、所定時刻になると記憶しておいた劣化パラメータを一括して管理装置4に送信する形態であってもよい。あるいは、管理装置4が表示要求を受け付けたときに、管理装置4が臨床検査装置2にデータ要求を送信し、データ要求に応じて臨床検査装置2が劣化パラメータを送信する形態であってもよい。