(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の装置の中で立ち上げ期間の長いグループA(光源等)に着目すると、その立ち上げ期間は特に短縮されていないことが判る。そこで、光源等の立ち上げ期間の短縮を図るため、分析を行わない不使用期間も少量の電源供給を続けるという使用方法も今までに提案されていた。立ち上げを開始する際、光源への電源供給を零から始めるよりも、ある程度の電源供給を維持した状態から始める方が、光源の立ち上げ期間が短縮する。つまり、不使用期間に電源供給を省電力モードに移行させておくのである。例えば、省電力モードスイッチを押すという使用者の操作によって、省電力モードへの移行やその解除を行う赤外分光光度計も知られている。
【0006】
しかし、分析完了後に省電力モードに移行させるために使用者のスイッチ操作が必要な場合、スイッチ操作を忘れると省電力モードの機能が発揮されないし、分析開始の際にも、省電力モードを解除するスイッチ操作が必要となることから、使い勝手の改善が要求されてきた。
【0007】
また、節電効果を高めるには、省電力モードでの給電率(電源供給率)をできる限り小さく設定したい。しかし、光源を早く立ち上げるためには省電力モードでの給電率はできる限り大きく設定する必要もある。このように、節電効果と待ち時間の短縮化を同時に実現するのは困難と考えられてきた。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、省電力モードへの移行・解除動作の自動化を図ることが可能で、かつ、節電効果と光源の立ち上げ期間の短縮を同時に達成できる光学分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、分析装置内のCPU等が有するスケジュール機能を用いて、所定時刻になれば自動的に省電力モードが低い供給率から高い供給率に切り換わるようにすることで、節電効果と光源の立ち上がり時間の短縮化とを同時に実現できることに着目した。
【0010】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明にかかる光学分析装置は、光源および光源以外の機器を有し、該光源からの光を用いて試料の光学的な分析を行う光学分析手段と、
前記光源および前記光源以外の機器へ電源を供給する電源供給手段と、前記電源供給手段を制御する制御手段と、を含んで構成され、試料の光学的分析を可能とする。
ここで、前記電源供給手段は、電源回路と、該電源回路から分岐して前記光源および前記光源以外の機器まで延びる供給ラインに設けられた光源用スイッチおよび機器用スイッチと、を有する。
また、前記制御手段は、分析スケジュールに応じて設定された複数の予定時刻を記憶するメモリーと、現在時刻を出力するタイマーと、前記光源用スイッチおよび機器用スイッチのオン・オフ切換えを指令する切換指令部と、を有する。また、前記光源用スイッチは、オン・オフ切換えに加えて、給電率が0%を超え100%未満である複数の省電力モードへの切換えが自在となるように設けられている。
そして、前記切換指令部は、現在時刻が前記予定時刻のうちのモード切換え時刻T
1に達するまでは、前記光源用スイッチを低いレベルの省電力モードS
1に維持し、前記モード切換え時刻T
1に達したら、前記光源用スイッチを高いレベルの省電力モードS
2へ切換えて、その後、前記予定時刻のうちの立ち上げ開始時刻T
2に達したら、前記光源用スイッチを給電率が100%であるオン状態に切換えることを特徴とする。
【0011】
ここで、光学分析手段の「光源」とは分析に用いる光の発生源を意味し、「光源以外の機器」とは光検出器など複数の機器を意味する。例えば、赤外分光光度計の場合、光源以外の機器には、赤外光の分光器に設ける移動鏡の駆動装置や、その移動鏡の移動距離を測定するためのレーザーなどが含まれる。これに応じて、電源回路から分岐して各機器まで延びる供給ライン上の機器用スイッチも装置全体では複数個になる。
【0012】
本発明の適用にふさわしい光源を分析装置の種類と併せて以下に例示する。これらの光源は、点灯中に供給電力を下げても点灯を継続できる光源である。
赤外分光光度計 :高輝度セラミック光源またはハロゲンランプ等
振動円偏光二色性分光光度計:高輝度セラミック光源等
レーザラマン分光光度計 :YAGレーザー等
紫外可視分光光度計 :ハロゲンランプ等
これらの分光光度計以外にも、光学分析装置には旋光計等が含まれる。
旋光計 :ハロゲンランプ等
【0013】
本発明にかかる光学分析装置では、前記切換指令部は、分析が行われていない状態で、現在時刻が前記予定時刻のうちの省電力モード移行時刻T
4に達した場合に、前記光源用スイッチを低いレベルの省電力モードS
1に切換えることが好ましい。
【0014】
また、本発明にかかる光学分析装置では、前記電源回路は、主スイッチを介して外部電源に接続されており、前記切換指令部は、前記主スイッチがオフの状態で、現在時刻が前記予定時刻のうちのオン時刻T
0に達したら、前記主スイッチをオンに切換えるとともに、前記光源用スイッチを低いレベルの省電力モードS
1に維持することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明にかかる光学分析装置では、前記光源用スイッチが前記複数の省電力モードのいずれかに維持されている間の前記機器用スイッチのオン・オフ切換えが、前記光源以外の機器ごとに設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学分析装置を用いれば、使用者は、所望する分析スケジュールに応じた予定時刻として少なくともモード切換え時刻T
1と立ち上げ開始時刻T
2を設定すれば、制御手段のスケジュール機能により、光学分析装置を自動的に立ち上げて、従来よりも早く分析可能な状態にすることができる。
具体的には、モード切換え時刻T
1が立ち上げ開始時刻T
2より早い時刻に設定されているので、立ち上げ開始時刻T
2に達する前に、先ず省電力モードが低レベルのモードS
1から高レベルのモードS
2に引き上げられる。モード切換え時刻T
1までは低レベルの電源が光源に供給されるが、高レベルの省電力モードS
2へ切換わった後は、立ち上げ開始時刻T
2まで高レベルの電源が光源に供給されることになる。従って、立ち上げ開始時刻T
2には、光源は比較的安定状態に近い状態に達しており、時刻T
2で光源用スイッチがオンに切換わった後、すみやかに光源が安定状態になり、立ち上げ期間が短縮される。
一方、モード切換え時刻T
1までは低レベルの電源が光源に供給されているので、この省電力モードS
2の期間は、比較的大きな節電効果が得られる。
このように高・低レベルの省電力モードを設けて、設定したモード切換え時刻T
1に低レベルから高レベルへ自動的に切換えるようにしたので、節電効果と、立ち上げ期間の短縮化という2つの効果を同時に得ることができ、光学分析装置の使い勝手も改善される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の光学分析装置について説明する。
図1のブロック図のように、光学分析装置は、光学分析手段1、電源供給手段2、制御手段3、制御用電源回路4および入力手段5に大別される。まず、光学分析手段1は、光源11、光検出器等の光源以外の複数の機器12からなり、光源11からの光を用いて試料の光学的分析を行う。
【0019】
電源供給手段2は、光学分析手段1の各機器へ電源を供給するためのものであり、主スイッチ21を介して外部電源6に接続された機器用電源回路22と、この機器用電源回路22から分岐して光源11および光源以外の機器12まで延びる供給ラインに設けられた光源用スイッチ23および機器用スイッチ24と、を有する。
【0020】
各スイッチ21、23、24のオン・オフ切換えは制御手段3により行われる。この内の光源用スイッチ23については、オン・オフ切換えに加えて、省電力モードへの切換えも行われる。省電力モードとして2つのモード(S
1、S
2)があり、各モードでの光源11への給電率は、0%を超え100%未満の範囲になるように設定されている。つまり、1つの光源用スイッチ23により、省電力モードを複数レベルの給電率から適宜選択できるようになっている。
【0021】
複数レベルの省電力モードのうち、給電率の高いモードを省電力モードS
1とし、給電率の低いモードを省電力モードS
2とする。例えば、高い方の省電力モードS
1の給電率を、0%を超え30%以下の率に設定し、低い方の省電力モードS
2の給電率を、70%を超え100%未満の値に設定しても良い。以下の説明ではモードS
1の給電率を30%とし、モードS
2の給電率を70%とする。
【0022】
制御手段3は、メモリー31と、現在時刻を出力するタイマー32と、CPUからなる演算部33とを有し、機器用電源回路22から独立した制御用電源回路4に常に接続されている。また、演算部33には入力手段5が接続されており、入力手段5を介して予定時刻等の設定データが取り込まれてメモリー31に記憶される。予定時刻データは、使用者が予め分析スケジュールに応じて設定したものであり、具体的な設定項目として主スイッチのオン予定時刻T
0、モード切換え時刻T
1、立ち上げ開始時刻T
2、立ち上がり完了予定時刻T
3、省電力モード移行時刻T
4およびオフ予定時刻T
5等を含む。
【0023】
図2、
図3を参照して、各予定時刻について説明する。
オン予定時刻T
0は、主スイッチ21をオンに切換える時刻である。
モード切換え時刻T
1は、光源用スイッチ23を低いレベルの省電力モードS
1から高いレベルの省電力モードS
2へ切換えるタイミングとして設定される。
立ち上げ開始時刻T
2は、モード切換え時刻T
1よりも遅い時刻に設定され、光源11の立ち上げを開始するタイミングとして設定される。
立ち上がり完了予定時刻T
3は、2つの省電力モードS
1、S
2で光源11を立ち上げた場合に予想される立ち上がり完了時刻である。この時刻T
3の設定の要否は任意である。
省電力モード移行時刻T
4は、
図3のように、分析の終了後に電源供給を省電力モードS
1へ移行するタイミングとして設定される。なお、図示しないが、オフ予定時刻T
5は、主スイッチ21をオフに切換える時刻である。
【0024】
演算部33は、主スイッチ21と機器用スイッチ24についてはオン・オフ切換えを指令し、光源用スイッチ23についてはオン・オフおよび省電力モードS
1、S
2への切換えを指令する。そして、タイマー32の現在時刻が、メモリー31に記憶された予定時刻に達したかどうかを演算部33が判断し、その予定時刻に対応するスイッチの切換えを指令する。つまり、演算部33は本発明の切換指令部として機能する。
【0025】
メモリー31には各予定時刻に対応する各スイッチ21、23、24の切換え動作を示すプログラムが記憶されている。このプログラムとタイマー32からの現在時刻データに基づいて、演算部33が各スイッチの切換え指令を出すようになっている。メモリー31のプログラムは書き換え可能であり、使用者は、入力手段5を使って各予定時刻のデータや切換え動作を行う機器の選択などを適宜行うことができる。
【0026】
<立ち上げのタイムチャート>
図2に基づいて、光学分析装置の主スイッチ21をオンして省電力モードS
1へ移行された後、自動で立ち上げる際のタイムチャートについて説明する。
【0027】
まず、オン時刻T
0に主スイッチ21が自動的に入り、機器用電源回路22が立ち上がる。光源用スイッチ23および機器用スイッチ24はオフに維持される。主スイッチ21のオン後、これと同時もしくは一定時間経過後に光源用スイッチ23が給電率30%の省電力モードS
1に切換わり、装置が省電力モードに自動的に移行する。省電力モードS
1では節電効果が高く、給電率をさらに低く設定することで、主スイッチ21のオフ状態と略同レベルの消費電力量とすることができる。
【0028】
例えば、勤務時間中にだけ分析を実施するという使用条件であれば、主スイッチ21のオン時刻T
0を出勤時刻に設定し、オフ予定時刻T
5を退勤時刻に設定してもよい。勤務時間中は、分析装置が少なくとも低レベルの省電力モードS
1で維持され、勤務時間外は主スイッチがオフで維持されるので、消費電力を考慮した電源管理が容易となる。また、主スイッチ21の投入後、自動的に省電力モードS
1に移行するので、分析を開始する際、光源11への電源供給を零の状態から立ち上げる場合に比べて、光源11の立ち上げ期間を短縮することができる。
【0029】
続いて、モード切換え時刻T
1に光源用スイッチ23が省電力モードS
1から給電率70%の省電力モードS
2に自動的に切換わる。省電力モードS
2にすると節電効果は小さくなるが、給電率が高いため短時間で光源が比較的安定状態に近い状態になる。従って、立ち上げ開始時刻T
2に光源用スイッチ23がオン状態に切換わると、分析装置の立ち上げが開始されて、光源11が素早く安定状態になる。そして、立ち上がり完了予定時刻T
3には分析可能な状態になっている。
【0030】
このように、省電力モードを複数レベルに設定し、省電力モードの進行中に給電率のレベルを低い状態から高い状態に切換えることで、先行する省電力モードS
1では比較的大きな節電効果が得られる。また、立ち上げ直前の省電力モードS
2では、高い給電率で電源が光源11に供給されるため、立ち上げ開始時刻T
2には光源が比較的安定状態に近い状態に達している。そうすると、時刻T
2で光源用スイッチをオンに切換えた後、すみやかに光源11が安定状態に達することができ、立ち上げ期間が短縮される。
【0031】
本実施形態では、モード切換え時刻T
1までは低電力モードS
1とし、時刻T
1から立ち上げ開始時刻T
2までの期間を高電力モードS
2としたので、節電効果と立ち上げ期間の短縮化という2つの効果を同時に達成することができる。
【0032】
次に、
図3に基づいて、分析終了後に電源供給を自動的に省電力モードS
1へ移行する際のタイムチャートについて説明する。一つ目の方法は、現在時刻が省電力モード移行時刻T
4に達したら、自動的に光源用スイッチ23を省電力モードS
1に切換えるという方法である。例えば、次の分析予定まで装置を使用しない期間や、昼の休憩時間に省電力モードに移行させたければ、その期間の開始時刻に時刻T
4を設定しておけばよい。二つ目の方法は、分析終了後、分析装置に入力信号が無い状態が一定時間続いたら、タイマー機能により自動的に光源用スイッチ23を省電力モードS
1に切換えるという方法である。
なお、省電力モードS
1への移行後、再び、自動で立ち上げる際のタイムチャートについては、前述で説明した通りである。時刻T
4で省電力モードS
1への移行後、次の時刻T
1で省電力モードS
2への切換えを行えば、次の分析のための立ち上げの際に光源11をすばやく復帰させることができる。
【0033】
<モード切換え時刻T
1の設定>
モード切換え時刻T
1を、立ち上げ開始時刻T
2よりも、どの程度早い時刻に設定するかを、使用者が任意に決めることができるようにしてもよい。光源11の立ち上げ期間を更に短くしたければ、時刻T
1を可能な限り早い時刻に設定すればよい。逆に、節電効果を更に高めたければ、時刻T
1を可能な限り遅い時刻に設定すればよい。
【0034】
<給電率の設定>
また、省電力モードの給電率を何%に設定するかを、使用者が任意に設定できるようにしてもよい。諸々の条件に相関する給電率データをメモリーに記憶させておき、制御部が分析を行う条件に応じて最適な給電率を選択するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、2段階の省電力モードを用いた場合を説明したが、省電力モードを3段階以上設けて、室温などに応じて適切なレベルのモードへ切換わるようにしてもよい。また、3段階以上の省電力モードを順次切換えた後、立ち上げを開始するようにしてもよい。
【0035】
(実施例)
図4、
図5に基づき、本発明をフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)に適用した場合の実施例を説明する。
図4において、フーリエ変換赤外分光光度計(以下、分光光度計100と呼ぶ。)は、前述の実施形態の光学分析装置と共通する構成を有し、該当するものには100を加えた符号が付されている。
【0036】
分光光度計100は、光学分析手段として、赤外光源111、レーザー112、移動鏡113および検出器114を有する。赤外光源111には、高輝度セラミック光源やハロゲンランプ等を用いる。移動鏡113は、赤外光の分光器に設けられる移動式のミラーであり、駆動装置を持っている。レーザー112は、移動鏡113の移動距離を測定するためのものである。検出器114は、試料からの光を検出するもので、MCT検出器、InSb検出器またはSiボロメータなどが用いられる。
本実施例では、光源以外の機器が複数個存在するので、システム電源122から分岐する供給ライン上の機器用スイッチ(125、126、127)は装置全体で複数個になる。
【0037】
システム電源回路122は、主スイッチ121を介して外部電源(AC電源またはバッテリー)400に接続されている。外部電源400がAC電源の場合、システム電源回路122にて電源がAC/DC変換される。
【0038】
赤外光源111への電源供給については、システム電源回路122から光源用スイッチ123を介して、先ず、光源電源回路124にDC電源が供給される。光源電源回路124で、電源がDC/AC変換される。本実施例では、光源電源回路124として、FETトランジスタ等のスイッチング素子を有する電源回路を採用し、CPU133からのオン・デューティ信号に基づいてスイッチング素子を高い周波数でオン・オフ制御する。これにより、DC電源が所望の大きさに電力変換される。そして、光源電源回路124により、赤外光源111に流れる電流を所定の周期で交番させることで、赤外光源111にAC電源を供給することができる。
【0039】
CPU133は、光源用スイッチ123へオン・オフ切換え指令を出す。また、光源電源回路124へオン・デューティ信号を出力する。このオン・デューティ信号の値を変化させることにより、赤外光源111へ向けて複数レベルの電源を供給することができる。また、CPU133は、主スイッチ121、レーザー用スイッチ125、移動鏡用スイッチ126および検出器用スイッチ127に対して、それぞれのオン・オフ切換え指令を出す。なお、移動鏡113への電源供給は、移動鏡113の駆動装置の駆動用である。
【0040】
制御手段として、CPU133の他に、メモリー131、タイマー132を有する。CPU133への電源は、CPU電源回路104を介して、外部電源400から供給される。つまり、外部電源400は、システム電源122の電源およびCPU電源104の電源の両方に用いられる。CPU133には、入力手段105およびパワーセーブスイッチ106が接続されている。パワーセーブスイッチ106は、使用者が強制的に省電力モードへの切換、およびその解除を行う際に用いられるスイッチである。
CPU133には、分光光度計100の筺体温度を検出する温度センサー107からの信号が入力される。温度センサー107は分光光度計100の筺体に取り付けられている。また、分光光度計100は、外部PC200や顕微鏡等の外部機器300にも接続されている。
【0041】
以上の構成の分光光度計100を用いて本発明の省電力モードをどのように機能させるかについて、
図5により説明する。同図は、時刻T
0で分光光度計100の主スイッチ121をオンして省電力モードS
1へ移行された後、分析装置を自動で立ち上げる際のタイムチャートである。赤外光源111への電源供給については、前述の実施形態と共通する。光源以外の機器であるレーザー112に対しては、省電力モード(S
1およびS
2)の期間中、スイッチ125をオフにして電源供給を停止している。そして、立ち上げ開始時刻T
2で電源供給を開始する。このように時刻T
2でレーザー112に電源を投入しても、光源111が安定状態に達する前に、レーザー112の立ち上がりが完了する。
また、移動鏡113と検出器114に対しては、省電力モード(S
1およびS
2)の期間だけでなく、立ち上げ期間中も、スイッチ126、127をオフにして電源供給を停止している。そして、光源111の立ち上がり完了予定時刻T
3で電源供給を開始する。移動鏡113と検出器114に関しては、電源投入と同時に立ち上がりが完了するため、立ち上がり完了予定時刻T
3で電源を投入しても支障が無い。
【0042】
以上の実施例では、光源以外の機器の一部について、省電力モード期間や立ち上げ期間中に、電源供給を停止させて、節電効果が最大限に発揮されるようにした。分析装置に用いられる光源以外の機器の中には、省電力モード期間に電源供給を完全にオフにしても、立ち上げ開始により短時間で立ち上がる機器が多いからである。環境条件に応じて、光源以外の機器であっても、省電力モード期間に少量の電源を供給し続けるようにしても構わない。このように光源以外の機器についても、省電力モード中の給電率などを機器ごとにきめ細かくカスタマイズしておけば、使用状況・設置環境に応じた最適な省電力モードを構築することができ、その結果、どのような使用状況・設置環境においても、いつも所望の時刻に装置を分析可能な状態にすることができる。
【0043】
最適な省電力モードを構築するために、例えば、分析装置の温度をモニターする温度センサー107を用いると良い。筺体温度の検出信号に基づき、装置が安定した状態での筐体温度を収集する。そして、この安定状態での筐体温度と現在の筐体温度との差から、現在の分析装置がどの程度安定状態に達したかを数値的に捕らえることができる。よって、この温度差を安定指数として、前述の
図2における時刻T
2(立ち上げ開始)以降の安定指数を記録すれば、立ち上げ完了までの最適な時間が判る。この時間に基づいて時刻T
2から時刻T
3までの時間間隔を補正すれば、筐体温度に基づく最適な省電力モードを構築することができる。この手法は、例えば分析室のエアコンの設定温度が変更される可能性があるなど、分析装置の設置環境温度が季節や昼夜などの条件で変更される場合に、有効である。
【0044】
また、上記の温度センサー107からの筺体温度の検出信号に基づいて、光源111に対する給電率を定期的に書き換えるようにしてもよい。あるいは、筺体温度の検出信号に基づいて、CPU133から出力されるオン・デューティ信号の値を変化させてもよい。
【0045】
また、分光光度計100には、外部PC200および顕微鏡等の外部機器300が接続されているので、外部PCからの信号で省電力モードへの移行・解除を行うことができる。その場合、顕微鏡等の外部機器300の状況を外部PCが監視して、外部機器の状況に応じて分光光度計100の予定時刻を設定するようにしてもよい。外部PCを用いて、分析装置の電源供給管理および分析スケジュール管理を行ってもよい。