特許第5735906号(P5735906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5735906-麺類製造用アルコール製剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735906
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】麺類製造用アルコール製剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/16 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A23L1/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-290715(P2011-290715)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138653(P2013-138653A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2013年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591135200
【氏名又は名称】八藤 眞
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(73)【特許権者】
【識別番号】597126309
【氏名又は名称】信和アルコール産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八藤 眞
【審査官】 菅原 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−008239(JP,A)
【文献】 特公昭45−014102(JP,B1)
【文献】 特開平06−277002(JP,A)
【文献】 特開昭56−158063(JP,A)
【文献】 特開昭63−157948(JP,A)
【文献】 特開2005−041851(JP,A)
【文献】 特開平06−311862(JP,A)
【文献】 特開平10−313803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/16−1/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、これに浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過することにより得られた醗酵熟成液からなるイオン化ミネラル0.01重量%〜2.0重量%と、保湿性タンパク質および/またはアミノ酸0.10重量%〜2.00重量%と、残部のエタノールからなる麺類製造用アルコール製剤。
【請求項2】
保湿性タンパク質としてヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン、ケラチンを単独でまたはこれらの混合物を使用することからなる請求項1に記載の麺類製造用アルコール製剤。
【請求項3】
アミノ酸としてアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェルニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを単独でまたはこれらの混合物を使用することからなる請求項1に記載の麺類製造用アルコール製剤。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のアルコール製剤を3.0重量%〜15.0重量%含むことを特徴とする麺類製造用の溶き水。
【請求項5】
請求項に記載の溶き水を使用して常法により製造された麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルコール製剤に関するものであり、一層詳細には、麺類を製造する際に好適に使用することができ、その品質向上も図ることのできる麺類製造用のアルコール製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルコールは、水に溶けやすく、目的に応じて適宜の濃度に調節され使用されているが、水との関係が極めて密接で風味は勿論、その分子構造までが変わってしまうことが知られている。
また、アルコールは、その殺菌力と防腐性の向上により、例えば、反応原料、用材、調合・抽出、化粧品や液体洗剤の可溶化、コンドロイチン製剤の精製・ジアスターゼの沈殿などの精製・再結晶、殺菌、洗浄、食品の保存用、食品原料用、外食産業の食品サニテーション、燃料用、飲料用など種々の用途に広範に使用されており、ほかの薬剤にくらべても安全性の高い液体として評価されている。
このようなアルコールは炭化水素の水素を水酸基で置換した構造の化合物の総称であり、一般的にはエタノール(ethanol)[エチルアルコール(ethyl alcohol)]を単にアルコールと略称することが多い。
【0003】
一方、蕎麦、うどん、中華麺などの麺類は、日本人の食生活において、近年、欠くことができないほど大きな地位を有するようになってきており、消費者の間では本格的な味覚を堪能する傾向も高まってきている。
【0004】
これら様々な麺類のうち、蕎麦は、中央アジア原産といわれ、当初は野生であったものがしだいに進化し、今日では世界中で広く栽培されている。
【0005】
タデ科に属する一年生の草木である蕎麦は、畑地で栽培され、種実の性質と用途が穀類とよく似ているため、日本では、便宜上、穀類として取り扱われている。
ふつうは秋まきの秋蕎麦が主流であるが、種まきから収穫までの期間が約90日と短く、米の作柄状態をみてからでも充分間に合うことから夏まきも広く行われており、収穫された蕎麦実は適度に乾燥(水分14%〜16%程度)されたのち製粉される。
【0006】
蕎麦実の製粉は、石臼挽きと機械ロール挽きとあるが、機械ロール挽きに比べると石臼挽きのほうが粒子が細かくて熱変性が少なく、よりよい蕎麦粉を得ることができる。
蕎麦の澱粉は、米の澱粉によく似ているが型はやや大きくその直径は4〜15μ程度で糖化もしやすいため、食してもすぐに空腹になると言われている。
【0007】
また、蕎麦粉にはグルテンが少ないことから、通常は、適量の小麦粉、山芋粉などのつなぎ材を混合し、これに溶き水を加えてよく捏ねることにより蕎麦玉(麺体)を形成し、さらにこの蕎麦玉を薄く延ばした蕎麦板を端から切って麺線に加工したのち、生蕎麦、半生蕎麦、乾蕎麦などとして調製され、様々な態様で食される。
【0008】
ところで、このようにして得られる蕎麦麺のうち、生蕎麦などを調製するに際しては、例えば、アルコールにクエン酸あるいは乳酸を加えたアルコール製剤を使用することにより保存性の向上を図っているが、これらのアルコール製剤は一定の期間が経過するとアルコール成分が放散して微生物が急激に増殖してしまうため保存期間が短く、しかも保水性も損なわれてしまうなどの問題が指摘されていた。
また、蕎麦粉自体にアルコール分解酵素が含まれているため、アルコール製剤を使用するとアルデヒドが生成してしまいこのアルデヒド臭が微妙な蕎麦の香りを阻害するため使用が躊躇されていた。
さらには、アルコール製剤を使用すると、麺体にしたとき、結合タンパクを凝固してしまうことから、ひび割れが生じて纏まりが悪く、良い蕎麦玉(麺体)を得ることができず、これを蕎麦板にして切るとき途中で切れてしまうことがあり麺線に加工しにくいなどの問題点が指摘されていた。
【0009】
しかしながら、生蕎麦、半生蕎麦については、このような状態であっても菌の抑制、黴防止などの有用性からアルコール製剤を使用したいという要望が強いのが現状であるが、その要望に充分答えられるアルコール製剤はなかった。
【0010】
また、前述の蕎麦以外の麺においては、例えば、有機酸を用いるpH調整法、アルコール、グリシン、乳化剤等による殺菌法、蒸気加熱殺菌法の単独又は組合せるなどの方法(特許文献1および2)により保存性の向上を図っているが、いずれも有機酸、アルコール、抗菌性添加物の使用による酸味やアルコール臭などによって、麺本来の風味、食感が損なわれたり、あるいは、高温、長時間殺菌による食味の低下、さらには微生物による腐敗、特に発黴による腐敗などが生じてしまうなどの解決すべき種々の問題点が指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】 特開昭59−25654号公報
【特許文献2】 特公昭45−14102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような事情から、本発明は、麺類を製造する際にその品質の向上を図ることのできる麺類製造用のアルコール製剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ところで、発明者は、わが国で古くから実施され安全性についても折り紙つきの味噌、醤油の類の発酵技術に着目し、澱粉および/または穀類と種子と卵殻などの原材料を粉砕混合したのち加水しこれを醗酵熟成することにより、原材料中に含まれているミネラル成分をイオン化(解離)して効率よく抽出する方法を開発し、この方法によって得られたイオン化ミネラル含有液は、通常の水あるいは対象となる材料にほんの少量添加するだけで水の分子集団が細分化され、その結果、水分子の単集団がミネラルイオンを取り囲んで分散し、細分化された水とともにカルシウムやマグネシウムなどのミネラルイオンの吸収性が飛躍的に高まるだけでなくイオン化ミネラルを蒸留酒などに少量滴下すると短時間のうちに味がまろやかになるこも確認されている。
【0014】
そこで、本発明では麺類製造用のアルコール製剤を、イオン化ミネラル0.01重量%〜2.0重量%と、保湿性タンパク質および/またはアミノ酸0.10重量%〜重量%〜2.00重量%と、残部のエタノールで調製することにより所期の目的を達成しようとするものである。
【0015】
この場合、イオン化ミネラルは、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、次いでこの粉砕原料に浄化水と麹菌を加えて醗酵熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離させたのち濾過することにより得られた醗酵熟成液を使用するのが好適である。
【0016】
また、保湿性タンパク質としてヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン、ケラチンを単独でまたはこれらの混合物を使用するのが好ましい。
さらに、アミノ酸としてはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェルニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを単独でまたはこれらの混合物を好適に使用することができる。
【0017】
そして前述のようなアルコール製剤を実際に使用して麺類を製造するに際してはこのアルコール製剤を水で希釈して調製した溶き水を使用するが、溶き水としてアルコール製剤を3.0重量%〜15.0重量%含むものが好適であり。この場合、アルコール製剤の希釈水としては浄化水を使用することは言うまでもない。
【0018】
さらに、本発明はこのように調製した溶き水を使用して常法により製造された麺類を包含するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る麺類製造用アルコール製剤によれば、蕎麦麺などの各種麺類を製造する際に好適に使用することができるだけでなく少量の添加で製品の品質向上とともに日持ちの向上も図ることのできる。
また、このアルコール製剤で調製した溶き水によれば、アルデヒドの生成やアルコール臭が低減されるので微妙な蕎麦の香りを阻害することがなく、麺生地のまとまりも向上し、タンパク凝固および離水を最小に抑えることができるので、ひび割れが生じにくく良い蕎麦玉(麺体)を得ることができ、蕎麦板にして麺線に加工した際も切れなども極めて少なく良好な麺腺を調製することができる。さらには菌の抑制、発黴抑制なども好適に達成することができるので日持ちも向上する等の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る麺類製造用アルコール製剤の好適な実施の形態の概略製造手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る麺類製造用アルコール製剤の好適な実施の形態およびこのアルコール製剤で調製した麺類製造用の溶き水による麺類の製造につき以下詳細に説明する。
図1において、本発明に係る麺類製造用アルコール製剤の原料アルコール(エタノール)10としては、醸造用の醗酵アルコールを使用する。合成アルコールは製造後3〜4ヶ月程度ではアルコール臭やタンパク凝固性が強いため、好ましくは、ある程度は熟成したものを使用するのが好ましいが特に限定されるものではない。
容器に用意した所定量の原料アルコール10には、イオン化ミネラル12を0.01重量%〜2.0重量%添加して混合する。
【0022】
イオン化ミネラル12としては、澱粉および/もしくは穀類と種子と卵殻とを所定の割合で混合した原料を粉砕し、これに、例えば、水道水から予め塩素や鉄分などの不純物を可及的に除去した浄化水と麹菌を加えて醗酵させたのちこの発酵物に酢酸、乳酸などのカルボキシル基を有する有機酸を所定量加えて熟成することにより原料中に含まれているカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどのミネラルを解離し、さらに濾過することにより得られた醗酵熟成液を使用する。
【0023】
このように、原料アルコール10にイオン化ミネラル12が添加されると、ミネラルが原料アルコールの水分子集団を細分化するとともに下記のような反応式によってアルコキシド(アルコラート=アルコールとアルカリ金属の結合塩)をつくり、さらにはアルコール分解物である有機酸とも同居するので水分子だけでなくカルシウム、マグネシウムなどイオンの活性化が促進される。
なお、カルシウムなどの2価のイオンは、1つのカルシウムが2個のアルコールを結びつけ、水の分子集団を最小集団にすると同時にアルコール分子の集団も最小にしておたがいの融和と水和を短時間で行うのでアルコールの刺激臭を和らげまろやかさを醸し出すことになる。
【0024】
2C−OH+2Na→2C−ONa+H↑→HO(ナトリウムエトキシド)
2C−OH+2K→2C−OK+H↑→HO(カリウムエトキシド)
2C−OH+Ca→2(CO)Ca+H↑(カルシウムエトキシド)
2C−OH+Mg→2(CO)Mg+H↑(マグネシウムエトキシド)
2C−OH+Zn→2(CO)Zn+H↑(亜鉛エトキシド)
【0025】
なお、原料アルコール10に加えるイオン化ミネラル12が0.01重量%以下になるとアルコラートの生成量が少なくなるため滑らかさが低下し刺激が生じてしまい、2.0重量%以上加えると酸臭が生じてしまう。
【0026】
このようにイオン化ミネラル12を加えた原料アルコール10には、保湿性タンパク質および/またはアミノ酸14を0.05重量%〜2.00重量%添加混合する。
この保湿性タンパク質としては、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン、ケラチンを単独でまたはこれらの混合物を使用し、アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェルニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンを単独でまたはこれらの混合物を使用する。
【0027】
この場合、保湿性タンパク質としては、イオン化ミネラルを添加した保湿性タンパク質原料(ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン、ケラチン)を麹発酵させ、ついでこれに有機酸を混合して熟成することにより金属塩結合型(低分子量化)にしたヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン、ケラチンを単独でまたはこれらの混合物を使用するのが好適であり、また、同様にアラニンほかの各アミノ酸もイオン化ミネラルを添加した状態で麹発酵させ、ついでこれに有機酸を混合して熟成することにより前記と同様に金属塩結合型にしたアミノ酸を単独でまたはこれらの混合物を使用するのが好適である。
【0028】
なお、原料アルコール10に加えるこのような保湿性タンパク質および/またはアミノ酸が0.10重量%以下になると、麺体の調製に使用したときなめらかさに欠け、麺線を形成する際に切れてしまうことが多くなり、添加量が2.00重量%を超えるとアミノ酸や保湿性タンパク質の凝固が生じるなどの不都合が生じてしまう。
【0029】
そして、このように原料アルコール10にイオン化ミネラル12、保湿性タンパク質および/またはアミノ酸14を添加して所定期間静置することにより本発明に係る麺類製造用アルコール製剤16を調製する。
そして得られた麺類製造用アルコール製剤16を具体的な麺類の製造に使用するに際しては、このアルコール製剤16を、好ましくは、水道水から予め塩素や鉄分などの不純物を可及的に除去した浄化水18に3.0重量%〜15.0重量%加えて調製した溶き水20を使用する。
【実験例】
【0030】
蕎麦麺の調製
まず、篩いにかけた蕎麦粉と小麦粉(つなぎ材)を夫々用意し、蕎麦粉80gと小麦粉20gをよく混ぜた蕎麦原料粉100gを複数用意する。
つぎに、浄化水95ccに本発明に係る麺類製造用アルコール製剤16を5cc添加した溶き水20を調製し、蕎麦原料粉100gにこの溶き水20を複数回に分けて加え染ませながら練り込んで蕎麦玉(麺体)を形成する。次いで蕎麦玉をボールに入れて濡れ布巾などで覆って所定時間ねかせたのち、蕎麦玉をつぶして徐々に延ばし、これにうち粉を打ちながら麺うち棒で延展して麺板を形成し、さらにこの麺板を包丁で端から切断して蕎麦切りを行なって麺線を作り、この麺線をまとめて蕎麦麺(生蕎麦麺)Aを調製した。
一方、麺類製造用アルコール製剤16を加えない浄化水100ccを用意し、この浄化水を溶き水として蕎麦原料粉100gに複数回に分けて加え、前記と同様の手順に沿って蕎麦麺(生蕎麦麺)Bを調製した。
【0031】
蕎麦麺の比較
上記のように本発明に係る麺類製造用アルコール製剤で調製した溶き水20を使用して得られた蕎麦麺Aと、浄化水のみからなる溶き水を使用して得られた蕎麦麺Bとを比較した。
▲1▼保存テスト(1)
所定数の蕎麦麺A、蕎麦麺Bを夫々透明の袋に密封して10℃で保存し、検査日ごとに1袋を開封して、EC培地発酵管法により大腸菌最確数をカウントしたところ、次の結果を得た。
【0032】
▲2▼保存テスト(2)
蕎麦麺A、蕎麦麺Bを夫々透明の袋に密封して10℃で保存し、48時間後の状態とこれを茹でた状態を観察した。
蕎麦麺A 未開封 袋内での水分発生はなく、麺の蕩け、べた付きもない。
開 封 麺のくっつき、べた付き、麺切れ、蕩け全て無し。
アルコール臭なく蕎麦の香りたち有り。
スムーズにほぐれ、麺切れも無し。
沸騰水で45秒茹でざる蕎麦にしたが蕎麦の香りに満ちていた。
蕎麦麺B 未開封 袋内での水分発生が多く、麺の蕩け、べた付きが有り。
開 封 麺のくっつき、べた付き、蕩け、変色が有り。
アルコール臭があり蕎麦の香りは殆どしない。
ほぐすと麺切れが多い。
沸騰水で45秒茹でざる蕎麦にすると麺切れのため短いものが多 く、蕎麦の香りもしなかった。
【0033】
評価と考察
本発明に係る麺類製造用アルコール製剤で調製した溶き水を使用して調製した蕎麦麺Aは、浄化水のみからなる従来の溶き水を使用して得られた蕎麦麺Bに比較すると、菌の抑制を好適に達成することができるので日持ちも向上させることができ、またアルコール臭も可及的に低減されるので微妙な蕎麦の香りを阻害することがなく、麺生地のまとまりも向上し、タンパク凝固を最小に抑えて離水も抑えることができるので、ひび割れが生じにくく良い蕎麦玉(麺体)を得ることができ、蕎麦板にして麺線に加工した際も切れなども極めて少なく良好な麺線を調製することができることが確認された。
これは、原料アルコール(エタノール)にカルシウムをはじめとする2価以上のミネラルを作用させてアルコラートを作り、さらに保湿性タンパク質および/またはアミノ酸を加えて調製した本発明に係る麺類製造用アルコール製剤によって、2価以上のミネラルが蕎麦たんぱくを切断しないでイオン結合させるのでたんぱく変性が起こらず、しかも練り込まれた水分も極めて離水しにくくなるからである。
【0034】
なお、上記実験例においては蕎麦麺について記載したが、うどん、中華そば、スパゲティなどその他の麺類であっても同様の比較試験の結果、麺本来の風味や食感が損なわれたり、あるいは、従来のような高温、殺菌による食味の低下、微生物による腐敗、特に発黴による腐敗などを好適に阻止することができるなどの効果を奏することが確認された。
【符号の説明】
【0035】
10・・原料アルコール
12・・イオン化ミネラル
14・・保湿性タンパク質および/またはアミノ酸
16・・麺製造用アルコール製剤
18・・浄化水
20・・麺製造用溶き水
図1