【文献】
J.Liu, et al.,"Multiple Echo 3D Hybrid Radial SSFP: Initial Applications in a Single Breath-hold Cardiac Imaging",Proc.Intl.Soc.Mag.Reson.Med.14,2006年 5月 6日,p3376
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非直交系サンプリング法に基づいて、計測空間の部分領域に対応する1以上のエコー信号の収集を行う撮影シーケンスを用いたショットを、所定の繰り返し時間間隔で、前記部分領域を異ならせて、繰り返す撮影制御部と、
被検体の周期的な生体信号を受信する生体信号受信部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記生体信号受信部は、前記撮影制御部が撮影シーケンスを実行している間に、生体信号を受信する毎に、当該受信時刻を生体信号受信時刻として記憶し、
前記撮影制御部は、前記生体信号受信部が生体信号を受信後、所定のディレイ時間後に前記撮影シーケンスを開始し、前記繰り返し時間間隔を維持して前記撮影シーケンスを繰り返す際に、前記ショット毎に、当該ショットの開始時刻と、各生体信号受信時刻から前記ディレイ時間経過後のディレイ時刻との間の時間の最小値を時間差として算出すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
まず、本実施形態のMRI装置について説明する。
図1は、本実施形態のMRI装置10の一例の全体構成を示すブロック図である。本図に示すように、本実施形態のMRI装置10は、NMR現象を利用して被検体1の断層画像を得るもので、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、シーケンサ4と、送信系5と、受信系6と、情報処理系7と、生体信号検出部8と、を備える。
【0020】
静磁場発生系2は、被検体1の周りの空間にその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、被検体1の周りに配置される永久磁石方式または常電導方式あるいは超電導方式の磁場発生手段により構成される。
【0021】
傾斜磁場発生系3は、X、Y、Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル31と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源32とから成り、後述のシ-ケンサ4からの命令に従ってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源32を駆動することにより、X、Y、Zの3軸方向の成分を有する傾斜磁場パルスを被検体1に印加する。例えば、X、Y、Zのいずれかの1方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、残り2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gf)を印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0022】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために高周波磁場(RF)パルスを照射するもので、高周波発振器52と変調器53と高周波増幅器54と送信側の高周波コイル(送信コイル)51とを備える。高周波発振器53から出力された高周波パルスは、シーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器53により振幅変調され、高周波増幅器54で増幅された後、被検体1に近接して配置された送信コイル51に供給され、被検体1にRFパルスとして照射される。
【0023】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるNMR信号(エコー信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)61と増幅器62と直交位相検波器63とA/D変換器64とを備える。送信コイル51から照射されたRFパルスによって誘起される被検体1の応答のエコー信号は、被検体1に近接して配置された受信コイル61で検出され、増幅器62で増幅された後、シーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器63により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器64でディジタル量に変換されて、受信信号として情報処理系7に送られる。
【0024】
シーケンサ4は、RFパルスの照射と傾斜磁場パルスの印加とを所定の撮影シーケンスに従って繰り返し行う制御手段で、情報処理系7の制御で動作し、被検体1の断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0025】
撮影シーケンスは、計測の目的に従って予め作成され、プログラムおよびデータとして情報処理系7内の後述する記憶装置72等に格納される。
【0026】
情報処理系7は、MRI装置10全体の動作の制御、信号処理、画像再構成処理等を行うもので、CPU71、ROM、RAMなどの記憶装置72、光ディスク、磁気ディスク等の外部記憶装置73と、ディスプレイ等の表示装置74と、マウス、トラックボール、キーボード等の入力装置75とを備える。受信系6から受信信号が入力されると、情報処理系7は、信号処理を行い、計測空間を充填し、画像を再構成する。また、再構成された被検体1の断層画像を表示装置74に表示すると共に、記憶装置72または外部記憶装置73に記録する。さらに、情報処理系7は、予め記憶装置72等に格納されている撮影シーケンスに従って、シーケンサ4に指令を与える。情報処理系7のこれらの処理は、予め記憶装置72等に格納されたプログラムをCPU71がメモリにロードして実行することにより実現する。
【0027】
なお、撮影シーケンスは、情報所理系7により、操作者から入力された撮影パラメータと予め保持するパルスシーケンスを用いて生成され、記憶装置72等に保持される。
【0028】
生体信号検出部8は、被検体に取り付ける心電センサ、脈波センサ、呼吸センサなどのデバイスと、これらのデバイスで検出した生体信号から、パルス波を生成するパルス波生成部とを備える。パルス波生成部で生成したパルス波は、情報処理系7に送信される。情報処理系7は、パルス波に同期して、撮影シーケンスに従った指示をシーケンサ4に出力する。なお、本発明では、心電センサ又は脈波センサから得たパルス波を心電波形、呼吸センサから得たパルス波を呼吸波形と呼ぶ。
【0029】
なお、
図1において、送信コイル51と受信コイル61と傾斜磁場コイル9とは、被検体1の周りの空間に配置された静磁場発生系2の静磁場空間内に設置されている。また、ここでは、送信コイル51と受信コイル61とを別個に設ける場合を例示しているが、これに限られない。例えば、1の高周波コイルで、両機能を兼用させるよう構成してもよい。
【0030】
以上の構成を有するMRI装置10は、撮影対象スピン種の密度の空間分布や、励起状態の緩和現象の空間分布を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮影する。なお、現在臨床で普及している撮影対象スピン種は、被検体の主たる構成物質であるプロトンである。
【0031】
次に、MRI装置10で取得する画像のコントラストについて説明する。受信系6から情報処理系7に送られてきた受信信号の信号強度Iは、以下の式(1)で示される。
【0032】
【数1】
ここで、kは定数、ρはスピン密度(プロトン密度)、T1、T2は、それぞれ、組織の縦緩和時間および横緩和時間、TRはパルスシーケンスの繰り返し時間、TEはエコー時間である。
【0033】
組織毎に、この両緩和時間T1、T2が異なり、その差が画像コントラストになる。臨床診断上は、単一のコントラストの画像のみを用いるのではなく、同一部位において複数のコントラストの画像を取得し、それぞれの関係を考慮して病変部を診断する。コントラストの種類としては、T1強調、T2強調、プロトン密度強調などがある。
【0034】
式(1)から明らかなように、画像のコントラストは、TR、TEといった撮影時に設定される撮影パラメータに依存して変化する。T1強調画像を得る撮影では、TEによる寄与を少なくするためTEを短く設定し、かつ、TRによる緩和時間の差を出すためにTRを短めに設定する。例えば、1.5
TのMRI装置では、TEを10msec程度、TRを500〜600msec程度に設定する。一方、T2強調画像を得る撮影では、TRによる寄与を少なくするためにTRを長く設定し、かつ、TEによる緩和時間の差を出すためにTEを長めに設定する。例えば、1.5
TのMRI装置では、TEを120msec程度、TRを6000msec程度に設定する。
【0035】
次に、本実施形態のパルスシーケンスの説明に先立ち、直交系サンプリング法を適用するFSE法のパルスシーケンス(直交系FSEシーケンス)を説明する。
図2は、直交系FSEシーケンス200のパルスシーケンス図である。本図において、RF、Gs、Gp、Gf、AD、Echoはそれぞれ、RFパルス、スライス傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、周波数エンコード傾斜磁場、A/D変換、エコー信号の軸を表す。なお、これらは、本明細書の各パルスシーケンス図において同様である。また、ここでは、一例として、1回の励起RFパルス毎に、6個のエコー信号群を収集する場合を例にあげて説明する。
【0036】
直交系FSEシーケンス200では、まず、撮影面内のスピンに高周波磁場を与える励起RFパルス201とともに、スライス選択傾斜磁場パルス202を印加する。スライス選択傾斜磁場パルス202の印加直後に、スライス選択傾斜磁場パルス202により拡散したスピンの位相を戻すためのスライスリフェーズパルス203と、エコー信号を生成させるために予めスピンの位相を分散させる周波数ディフェーズ傾斜磁場パルス204とを印加する。その後、スピンをスライス面内で反転するための反転RFパルス205を繰り返し印加する。そして、反転RFパルス205の印加毎に、スライスを選択するスライス選択傾斜磁場パルス206、位相エンコード傾斜磁場パルス207、および周波数エンコード傾斜磁場パルス208を印加し、サンプリングウインド209のタイミングで、エコー信号210を収集する。ここでは、上述のように、1回の励起RFパルス201毎に6個のエコー信号210群を収集する例であるため、反転RFパルス205を6回印加する。なお、エコー信号210は、通常、各サンプリングウインド209のタイミングで、それぞれ、128、256、512、1024個のいずれかのサンプリングデータからなる時系列信号として収集される。
【0037】
一般にFSEシーケンスでは、励起RFパルスの印加から所定数(上記例では6)のエコー信号の収集までを単位計測(ショット)と呼ぶ。直交系FSEシーケンス200を用いる撮影では、ショットを、時間間隔(TR)211毎に位相エンコード傾斜磁場パルス207群の面積を変えながら繰り返し、時間間隔212毎に画像に必要な全てのエコー信号210群を収集する。収集するエコー信号210の数は、通常、1枚の画像あたり、64、128、256、512等の値が選ばれる。
【0038】
図2に示す直交系FSEシーケンス200で収集したエコー信号210群を計測空間221に配置した様子を
図3に示す。本図において、矢印は1つのエコー信号210に対応し、矢印の向きがエコー信号210を走査した方向を示す。また、矢印の太さがエコー信号210の信号強度に対応する。ここでは、1ショットを8回繰返し、エコー信号210群を収集する場合を例示する。すなわち、1回の励起RFパルス201で6個のエコー信号210群を収集するショットを8回繰り返すマルチショット直交系FSEシーケンスにより計測空間221を充填する場合を例示する。
【0039】
直交系FSEシーケンス200では、1回のショットで、エコー信号210群を上から下に(すなわち、-Kyから+Kyに向って)各ブロック222に1つずつシーケンシャルオーダで配置するよう位相エンコード傾斜磁場パルス207群を制御する。さらに、直交系FSEシーケンス200を繰り返す毎に、同じブロック222内の異なるラインに同じエコー時間に収集したエコー信号が配置されるよう位相エンコード傾斜磁場パルス207群を制御する。
図3の各ブロック222の添え字は、そのブロック222内に配置される各ショットにおけるエコー信号210のエコー番号に対応する。エコー番号は、直交系FSEシーケンス200の各ショットで収集する各エコー信号210に、収集する時間順に付与したものである。すなわち、エコー番号が大きくなるほどエコー時間が長いエコー信号である。なお、計測空間221の充填順は、位相エンコード傾斜磁場パルス群207の強度の変更法を変えることによって、変更することができる。
【0040】
次に、FSE法に非直交系サンプリング法を適用する場合のパルスシーケンスについて説明する。ここでは、非直交系サンプリング法として、ハイブリッドラディアル法を適用する場合を例にあげて説明する。以下、このパルスシーケンスをハイブリッドラディアルFSEシーケンスと呼ぶ。ここでは、1回の励起で得られるエコー信号群で、各ブロック(ブレード)を充填する。
【0041】
図4は、ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300のパルスシーケンス図である。また、
図5は、ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300により収集したエコー信号群を計測空間321に配置した様子を示す図である。ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300が直交系FSEシーケンス200と異なる点は、位相エンコード傾斜磁場軸Gpと周波数エンコード傾斜磁場軸Gfとの区別が無いことである。なお、
図4では便宜上、G1、G2軸として示す。また、ここでは、直交系FSEシーケンス200と同様、1回のショットで6個のエコー信号群を収集する場合を例にあげて説明する。
【0042】
一般に、ハイブリッドラディアル法による撮影では、計測空間を複数のブレード(単位領域)に分割し、各ブレードを異なる計測空間の回転角で計測する。一つのブレードは各々が一つのエコー信号に対応する互いに並行な複数の軌跡を有して成る。ここで、計測空間の回転角とは、計測空間の所定の軸(本明細書ではkx軸)と各ブレード内の計測空間の中心を通る軌跡との成す角度である。また、ブレード内で計測されるエコー信号に位相エンコードを付与する。
【0043】
ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300では、1回の励起RFパルスで収集するエコー信号群で各ブレード322を充填する。従って、1ショット分のパルスシーケンスの基本的な構成は直交系FSEシーケンス200と同様である。
【0044】
まず、撮影面内のスピンに高周波磁場を与える励起RFパルス201とともに、スライス選択傾斜磁場パルス202を印加する。スライス選択傾斜磁場パルス202の印加直後に、スライス選択傾斜磁場パルス202により拡散したスピンの位相を戻すためのスライスリフェーズパルス203と、エコー信号を生成させるために予めスピンの位相を分散させる読み出しディフェーズ傾斜磁場パルス301および読み出しディフェーズ傾斜磁場パルス302とを印加する。その後、スピンをスライス面内で反転するための反転RFパルス205を繰り返し印加する。そして、反転RFパルス205の印加毎に、スライスを選択するスライス選択傾斜磁場パルス206、読み出し傾斜磁場パルス307、および読み出し傾斜磁場パルス308を印加し、サンプリングウインド209のタイミングで、エコー信号310を収集する。ここでは、上述のように、1回の励起RFパルス201毎に6個のエコー信号310群を収集する例であるため、反転RFパルス205を6回印加する。
【0045】
このとき、読み出しディフェーズ傾斜磁場パルス301および読み出し傾斜磁場パルス307はG1軸に、読み出しディフェーズ傾斜磁場パルス302および読み出し傾斜磁場パルス308はG2軸に印加される。読み出し傾斜磁場パルス307と読み出し傾斜磁場パルス308とは、ブレード322内の読み出し方向と位相エンコード方向とをそれぞれKx’およびKy’とすると、エコー信号310が、-Ky’からKy’に向かって収集されるよう制御される。
図5(a)は、ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300の1ショットを用いて取得した1つのブレード322のエコー信号310の配置を説明するための図である。ここでは、矢印は1つのエコー信号310に対応し、矢印の向きがエコー信号310を走査した方向を示す。また、矢印の太さがエコー信号310の信号強度と対応し、添え字がエコー番号に対応する。エコー番号は、ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300の各ショットで収集する各エコー信号310に、収集する時間順に付与したものである。
【0046】
さらに、各ブレード322を計測空間321の異なる回転角で計測するため、時間間隔311毎にスライス面内の2軸(G1、G2軸)に印加する読み出しディフェーズ傾斜磁場パルス301および302、読み出し傾斜磁場パルス307および308の振幅を変えながらハイブリッドラディアルFSEシーケンス300を繰り返し実行し、時間間隔312で画像に必要な全てのエコー信号310群を収集する。このように制御することで、各ブレード322を、計測空間321の略一点を中心として放射状に回転させる。
【0047】
図4に示すハイブリッドラディアルFSEシーケンス300を繰り返し、収集したエコー信号310群を計測空間321に配置した様子を
図5(b)に示す。同一ショットで収集されたエコー信号310群は同一ブレード322に配置される。322の添え字は、時間間隔311毎のFSEシーケンス300の繰り返し回数に対応する番号(ショット番号)である。本図は、反時計回りに半周だけ回転し、8回の繰り返しで計測空間321を走査するようにFSEシーケンス300を制御した場合の例である。また、各ブレード322内で、矢印は1つのエコー信号310に対応し、矢印の向きがエコー信号310を走査した方向を示し、矢印の太さがエコー信号310の信号強度に対応する。また、本図に示すように、ショット番号毎に異なる回転角のブレードを計測する。
【0048】
次に、同期撮影法を
図6を用いて説明する。ここでは、一例として心電同期法を示す。
図6(a)に示すように、401は生体信号検出部8が取得した心電波形であり、時間間隔402は心電波形401の間隔である(一般にR-R間隔と呼ばれる)。同期撮影法では、心電波形401を検出後、時間間隔403(以下、ディレイ時間)だけ空けて撮影シーケンスを開始し、時間間隔404内でエコー信号群405を収集する。各心電波形401検出後、同様のタイミングでエコー信号を収集し、心電波形401に同期して、画像を再構成するために必要なデータを得る。なお、R-R間隔は心周期とも呼ばれ、ハイフン以下の付番は、n番目の心電波形401-n後の心周期内での処理であることを示す。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない限り、ハイフン以下の付番は省略する。また、心電同期では心電波形401と呼ぶが、一般に、生体信号401またはトリガ信号401と呼ぶ。
【0049】
図6(b)に、このようにして収集したエコー信号群405を計測空間422に配置した例を示す。ここでは、直交系サンプリング法でエコー信号を収集する例を示す。エコー信号405毎に位相エンコード量を変えて、心周期毎の時間間隔404内で収集可能な数のエコー信号405を収集し、計測空間421に配置する。これを、計測空間421を全て充填するまで繰り返す。
図6(b)では、第1回目の心周期内で収集したエコー信号405-1から、Ky軸方向上から順に計測空間421を充填していく例を示す。
【0050】
例えば、この心電同期法に、ハイブリッドラディアルFSEシーケンス300を組み合わせる場合、一般に、各ショットを各心周期内の時間間隔404内で実行し、エコー信号310を収集する。従って、TR311を、R-R間隔402に合わせる必要がある。しかし、R-R間隔は必ずしも一定ではない。たとえ略一定であったとしても、一般に、所望のコントラストの画像で設定するTRは、R-R間隔に一致しない。
【0051】
そこで、本実施形態では、非直交系サンプリング法を生体信号に同期させるにあたり、TR毎ではなく、撮影シーケンス全体で同期させる。すなわち、撮影開始時のみ心電波形401に同期させ、その後の各ショットは、通常どおり、TR間隔で実行する。まず、
図7を用いて、本実施形態の同期撮影法の概要を説明する。ここでは、心電同期法を例にあげて説明する。
【0052】
図7の心電同期を説明する構成について、
図6と同じものには、同じ番号を付す。また、撮影の全ショット数をN(Nは自然数)、501-n(nは1≦n≦Nを満たす自然数)は、ショット番号がnのショット(以下、第nショット)を示す。また、502-nは、第nショットのショット開始時刻503-nの、最寄りのディレイ時間403経過時刻406(ディレイ時刻406)との時間差を示す。本図に示すように、本実施形態では、第1ショット501-1のみ、心電波形401から、予め定めたディレイ時間403経過後に実行し、残りのショット(501-2、501-3・・・501-N)は、通常のTR間隔で実行する。
【0053】
本実施形態では、情報処理系7が、同期撮影制御部を備え、上記制御を実現する。また、情報処理系7は、同期撮影制御部による制御とは独立に、生体信号検出部8からパルス波を受信し、同期撮影制御部に通知する生体信号受信部を備える。情報処理系7のこれらの機能は、予め記憶装置72等に格納されたプログラムをCPU71がメモリにロードして実行することにより実現する。以下、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理について説明する。
図8は、本実施形態の撮影処理の処理フローである。
【0054】
同期撮影制御部は、操作者から撮影パラメータの入力を受け付けると、予め保持するパルスシーケンスを用い、撮影シーケンス(実行するシーケンスの基本的な形状)を生成する(ステップS1201)。また、実行するショットのショット番号をカウントするカウンタcnを1とする(ステップS1202)。同期撮影制御部は、操作者から開始の指示を受け付けると、パルス波の受信を待つ。生体信号受信部からパルス波を受信した旨の通知を受けると(ステップS1203)、撮影パラメータとして入力されたディレイ時間経過後(ステップS1204)、撮影シーケンスに従って、第cnショットを実行する(ステップS1205)。このとき、ショットの開始時刻を、カウンタcnの値に対応づけて記憶する。
【0055】
ショット終了後、同期撮影制御部は、予め定められた全ショットを実行したか、すなわち、撮影シーケンスを完了したか否かを判別する(ステップS1206)。具体的には、撮影を構成する全ショット数をNとすると、cn=Nか否かを判別する。そして、全ショットを実行している場合は、処理を終了する。一方、未実行のショットがある場合は、cnを1インクリメントし(ステップS1207)、前回のショット開始時刻からTR時間の経過を待って、ステップS1205へ戻り、第cnショットを実行する。
【0056】
本実施形態の同期撮影制御部は、以上のように撮影処理を行い、本実施形態の同期撮影を実現し、エコー信号を計測空間に充填する。なお、同期撮影法は、心電同期に限られない。
【0057】
なお、ディレイ時間403は、撮影パラメータとして操作者により他の撮影パラメータとともに設定される。最適なディレイ時間403は、撮影対象部位および採用する生体信号の種別によって決められる。例えば、生体信号が心拍の場合、一般に、拡張期の方が被検体1の動きが少なくて良質な画像を得ることができる。従って、拡張期に撮影を開始するようディレイ時間403を決定する。一方、生体信号が呼吸の場合、呼期に合わせると、被検体1の動きがなだらかで、アーチファクトが発生しにくい。従って、呼期に撮影が開始されるようディレイ時間403を決定する。
【0058】
同期撮影法を用いないと、撮影は、生体の体動周期に対してランダムに開始される。例えば、血管撮影等の場合、心臓の動きの変化量が最も大きくなる収縮期と、変化量が最も小さくなる拡張期とで血管内を流れる血流の状態が変わる。このため、体動周期に対する開始タイミングによって、撮影毎に血管の描出が変化することがある。特に、撮影シーケンスの繰返し時間TRが生体の体動周期の倍数(1/2倍、1/3倍等も含める)に近い場合は、撮影毎に同期撮影に近い結果が得られ、得られる画像が体動周期の所定の時相に近くなるため、開始タイミングによる描出の差が顕著に現れる。従って、撮影毎に結果の画像の描出が変わる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、所定の生体信号に同期し、トリガ信号(
図7では、心電波形)401から撮影パラメータで設定されたディレイ時間403経過後に撮影シーケンスを開始する。従って、周期的な動きの影響が大きい部位の撮影を繰り返す場合であっても、各撮影開始時の、撮影対象部位の周期的な動きに対する状態が略同じとなり、撮影間で、周期的な体動の影響は略同じになる。このため、撮影毎に撮影対象の描出が変化することなく、安定した画像を得ることができる。一方、撮影を構成する各ショットは、通常どおりTR間隔で実行する。従って、所望のコントラストを得ることができる。また、非直交系サンプリング法を用いているため、体動アーチファクトは低減できる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、体動アーチファクトを低減可能な非直交系サンプリング法の長所を維持しつつ、撮影毎に一定の状態を描出でき、かつ、所望のコントラストを得ることができる。従って、生体の周期的な動きに影響を受けやすい部位を含め、撮影対象部位によらず、コントラストを犠牲にすることなく、撮影毎に安定した高い品質の画像を得ることができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、ハイブリッドラディアル法のブロック内のエコー数およびブロック数は説明を簡単にするため、それぞれ6および8の場合を例示しているが、これに限られない。ブロック数およびブロック内のエコー数は任意に設定可能である。
【0062】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明を適用する第二の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。第一の実施形態では、一旦撮影を開始した場合、その後は、全てのショットをTR間隔で順に1回ずつ実行する。一方、本実施形態では、各ショット開始時間のディレイ時刻からの時間によって、結果の採否を決定し、採用されない場合、採用されるまで繰返し実行する。以下、本実施形態の撮影処理について、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0063】
まず、本実施形態の同期撮影法の概要を説明する。ここでは、第一の実施形態と同様に、心電同期法を例にあげて、
図7を用いて説明する。本実施形態では、ショット501毎に、その終了後に、当該ショット501の開始時刻503と最寄りのディレイ時刻406との間の時間の絶対値として時間差502を計算する。そして、時間差502が予め定められた閾値以上であれば、当該ショット501で収集したエコー信号は画像再構成に使用せず、同条件で再度エコー信号を収集する。
【0064】
ここで、計算する時間差502は、例えば、第2ショット501-2では、その終了時にトリガ信号401-1しか受信していない。従って、ディレイ時刻406-1と開始時刻503-2との間の時間を時間差502とする。一方、第3ショット501-3では、本ショット終了時には、トリガ信号401-1と401-2とを受信している。従って、ディレイ時刻406-1と406-2とを知ることがでる。両ディレイ時刻406-1、406-2それぞれと、開始時刻503-3との差の絶対値502-3-1、502-3-2を算出し、小さい方を時間差502とする。第4ショット501-4も同様で、開始時刻とディレイ時刻との差502-4-1および502-4-2を算出し、小さい方を時間差502とする。
【0065】
第一の実施形態で説明したように、ディレイ時間403として、撮影対象部位毎に最適なものが撮影パラメータとして設定される。従って、トリガ信号401からディレイ時間403経過後のディレイ時刻406から離れれば離れるほど、周期的体動の影響が入りやすく、計測時の状態の変動が大きい。本実施形態では、時間差502に閾値を設け、このような状態で収集したエコー信号を画像再構成に用いることを避ける。
【0066】
これを実現するため、本実施形態では、第一の実施形態が備える同期撮影制御部は、各ショットの終了後、当該ショットの開始時刻から最寄りのディレイ時刻まで時間の絶対値を時間差として算出する時間差算出部と、時間差算出部の算出結果に基づき当該ショットで得たエコー信号の採否を決定する採否決定部とをさらに備える。また、生体信号受信部は、生体信号検出部8からパルス波を受信した旨通知を受けた時刻をトリガ受信時刻として記憶するトリガ信号記憶部を備える。情報処理系7のこれらの機能は、予め記憶装置72等に格納されたプログラムをCPU71がメモリにロードして実行することにより実現する。
【0067】
以下、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理について説明する。
図9は、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理の処理フローである。なお、以下の処理の間、トリガ信号記憶部は、パルス波を受信する毎に、撮影処理とは独立してトリガ受信時刻を記憶する。
【0068】
同期撮影制御部は、操作者から撮影パラメータの入力を受け付けると、予め保持するパルスシーケンスを用い、撮影シーケンスを生成する(ステップS1101)。また、実行するショットのショット番号をカウントするカウンタcnを1とする(ステップS1102)。同期撮影制御部は、操作者から開始の指示を受け付けると、パルス波の受信を待つ。パルス波を受信すると(ステップS1103)、撮影パラメータとして入力されたディレイ時間経過後(ステップS1104)、撮影シーケンスに従って、第cnショットを実行する(ステップS1105)。このとき、ショットの開始時刻を、カウンタの値cnに対応づけて記憶する。
【0069】
ショット終了後、同期撮影制御部は、予め定められた全ショットを実行したか、すなわち、撮影シーケンスが完了したか否かを判別する(ステップS1106)。具体的には、撮影を構成する全ショット数をNとすると、cn=Nか否かを判別する。そして、全ショットを実行している場合は、処理を終了する。
【0070】
一方、未実行のショットがある場合、同期撮影制御部は、時間差算出部に、第cnショットの開始時刻503と最寄りのディレイ時刻406との時間差scnを計算させる(ステップS1107)。具体的には、最新のトリガ受信時刻401からディレイ時間403経過後のディレイ時刻406との時間差(第一の時間差)および最新より1回前のトリガ受信時刻があれば、当該トリガ受信時刻401に対するディレイ時刻406との時間差(第二の時間差)を計算する。そして、第一の時間差および第二の時間差の小さい方を時間差scnとする。
【0071】
そして、同期撮影制御部は、採否決定部に、当該ショットで得たエコー信号の採否を判別させる(ステップS1108)。すなわち、時間差scnが、予め定められた閾値Smax以内であるか否かを判別させる。採否決定部は、scnとSmaxとを比較した結果、scnがSmax以下であれば、ステップS1105で実行された第cnショットで得られたエコー信号は採用可能と判別する。採用可能と判別された場合、同期撮影制御部は、cnを1インクリメントし(ステップS1109)、前回のショット開始時刻からTR時間の経過を待って(ステップS1110)、ステップS1105へ移行する。
【0072】
一方、ステップS1108で、時間差scnが閾値Smaxより大きい場合は、採否決定部は、当該ショットで得られたエコー信号は採用不可と判別する。採用不可と判別された場合、同期撮影制御部は、再度第cnショットを実行するため、cnをインクリメントせずに前回のショット開始時刻からTR時間の経過を待って(ステップS1110)、ステップS1105へ移行する。なお、ステップS1105において、同じカウンタの値cnに対応付けられた開始時刻が記憶されている場合、新たな開始時刻に更新する。
【0073】
以上のように、本実施形態の同期撮影制御部は撮影の制御を行い、本実施形態の同期撮影を実現し、採用可能と判別されたエコー信号で計測空間を充填する。
【0074】
本実施形態によれば、第一の実施形態同様、非直交系サンプリング法を適用した撮影シーケンスにおいて同期撮影法を用いつつも、TR時間は維持するため、第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、ショットの開始時刻がディレイ時刻406から大きく離れた場合、TR間隔をおいて、同じショット番号のショットを再実行する。従って、ディレイ時刻406から大きく離れて周期的な動きによる被検体の状態が大きく異なるタイミングで収集したエコー信号を画像再構成に用いないため、画像の質がさらに向上する。
【0075】
なお、判別に用いるSmaxの値は、撮影効率が低下せず、かつ、動きの影響が目立たないような値を予め設定する。例えば、呼吸同期法の場合は1秒程度、心電同期法の場合は数百ミリ程度に設定する。
【0076】
なお、上記実施形態では、所定のショット(例えば、第nショット)で取得したエコー信号を不採用と判別した場合、次の時間間隔TRで当該ショット(第nショット)を実行し直しているが、これに限られない。例えば、全ショットを第一の実施形態と同様にショット番号順に順次実行し、全ショット実行後に不採用と判別したショット(第nショット)を行うよう構成してもよい。
【0077】
<<第三の実施形態>>
次に、本発明を適用する第三の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に第一及び第二の実施形態と同様の構成を有する。第二の実施形態では、各ショットの時間差によって、収集したエコー信号の採否を決定している。本実施形態では、ショット毎の時間差によって、収集したエコー信号に重み付けをする。以下、本実施形態の計測シーケンスについて、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0078】
第一の実施形態で説明したように、ディレイ時間403は、撮影対象部位毎に最適なものが選択される。従って、ショットの開始時刻がディレイ時刻406から離れれば離れるほど、すなわち、時間差502が大きくなればなるほど、収集されるエコー信号の質は低下する。本実施形態では、時間差502に依存して単調減少する関数を重み係数算出関数C(s)として導入し、ショット毎に、得られる値を重み係数として収集したエコー信号に乗算する。このようにすることで、時間差502の大きい状態で収集したエコー信号の、再構成画像への影響を抑制する。
【0079】
これを実現するため、本実施形態では、第一の実施形態が備える同期撮影制御部は、各ショットの終了後、当該ショットの開始時刻から最寄りのディレイ時刻までの時間の絶対値を時間差として算出する時間差算出部と、時間差算出部の算出結果に基づき当該ショットで得たエコー信号に重み係数を乗算し、信号強度を補正する信号強度補正部をさらに備える。また、生体信号受信部は、生体信号検出部8からパルス波を受信した旨通知を受けた時刻をトリガ受信時刻として記憶するトリガ信号記憶部を備える。情報処理系7のこれらの機能は、予め記憶装置72等に格納されたプログラムをCPU71がメモリにロードして実行することにより実現する。本実施形態においても、トリガ信号記憶部は、同期撮影制御部による撮影処理の間、パルス波を受信する毎に、独立してトリガ受信時刻を記憶する。
【0080】
図10は、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理の処理フローである。本図に示すように、同期撮影制御部は、操作者から撮影パラメータの入力を受け付けると、予め保持するパルスシーケンスを用い、撮影シーケンスを生成する(ステップS1301)。また、実行するショットのショット番号をカウントするカウンタcnを1とする(ステップS1302)。同期撮影制御部は、操作者から開始の指示を受け付けると、パルス波の受信を待つ。パルス波を受信すると(ステップS1303)、撮影パラメータとして入力されたディレイ時間経過後(ステップS1304)、撮影シーケンスに従って、第cnショットを実行する(ステップS1305)。このとき、ショットの開始時刻を、カウンタの値cnに対応づけて記憶する。
【0081】
ショット終了後、同期撮影制御部は、予め定められた全ショットを実行したか、すなわち、撮影シーケンスが完了したか否かを判別する(ステップS1306)。具体的には、撮影を構成する全ショット数をNとすると、cn=Nか否かを判別する。そして、全ショットを実行している場合は、処理を終了する。
【0082】
一方、未実行のショットがある場合、同期撮影制御部は、時間差算出部に、第cnショットの開始時刻503と最寄りのディレイ時刻406との時間差scnを計算させる(ステップS1307)。具体的には、最新のトリガ受信時刻401からディレイ時間403経過後のディレイ時刻406との時間差(第一の時間差)および最新より1回前のトリガ受信時刻があれば、当該トリガ受信時刻401に対するディレイ時刻406との時間差(第二の時間差)を計算する。そして、第一の時間差および第二の時間差の小さい方を時間差scnとする。
【0083】
そして、同期撮影制御部は、信号補正部に、当該ショットで得たエコー信号の信号強度を補正させる(ステップS1308)。補正は、ステップS1307で算出した時間差scnから得た重み係数C(scn)をエコー信号に乗算することにより行う。補正後、同期撮影制御部は、cnを1インクリメントし(ステップS1309)、前回のショット開始時刻からTR時間の経過を待って(ステップS1310)、ステップS1305へ移行する。
【0084】
なお、上記撮影処理では、ショット終了毎に、時間差scnを算出してエコー信号の信号強度を補正しているが、これに限られない。例えば、各ショットのショット番号cnに対応付けて時間差scnを記憶しておき、画像再構成前に補正するよう構成してもよい。
【0085】
次に、信号強度補正部が用いる重み係数算出関数C(s)の一例を説明する。
図11は、本実施形態の重み係数算出関数C(s)601の一例である。なお、実行する撮影シーケンスは、
図4および
図7に示すものとする。本図に示す重み係数算出関数C(s)601は、時間差sが0の時に1であり、時間差sが増加するにつれて1から線形に減少し、時間差sがSmax以上では0となる。図の横軸は、
図7の各ショット501の時間差502を示す。この重み係数算出関数C(s)601は以下の式(2)で表される。
【0086】
【数2】
なお、上記の重み係数算出関数C(s)は、予め設定され、記憶装置72等に保持される。また、Smaxは、第二の実施形態と同様に設定される。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によれば、信号強度補正部が、各ショットの時間差sに応じて、重み係数算出関数C(s)で算出される重み係数を用いて得られたエコー信号の強度を補正する。このため、計測空間において、時間差sが大きいタイミングで実行されたショットで収集したエコー信号の値の貢献度が低下する。従って、このように計測空間に充填されたエコー信号から画像を再構成するため、本実施形態によれば、動きの影響をさらに抑えることができるため、第一の実施形態で得られる効果に加え、さらに画像の質が向上する。
【0088】
なお、上記実施形態では、1ショット内で収集したエコー信号には、同じ重み係数を乗算する。しかし、例えば、
図4および
図5で説明したように、ハイブリッドラディアル法では、ブレード322ごとに計測空間321の中心部である低空間周波数領域を計測する。このため、計測空間321の中心部はデータが過剰に存在する。一方、画像のエッジ等の微細な構造部の情報が含まれる高空間周波数領域のデータは少ない。これを補うため、上記補正後の各ショットのエコー信号に対し、計測空間の配置位置に応じて、さらに重み係数を乗算するよう構成してもよい。このとき、重み係数は、原点からの距離が遠ければ遠いほど、貢献度が高くなるよう決定する。
【0089】
図11(b)は、
図5に示す1つのブレード322を示す。ハイブリッドラディアル法では、1つのブレード322は、位相エンコード方向(Ky)と読み出し方向(Kx)とにより規定される2次元空間である。ブレード322内の各点P(kx,ky)804の原点からの距離R(kx,ky)602は以下の式(3)で計算される。
【0090】
【数3】
重み係数は、第cnショットで取得したエコー信号が配置されるブレードの場合、初期値C(scn)から、距離Rの増加に伴って増加する単調増加関数である重み係数算出関数B(R)から算出する。この重み係数算出関数B(R)の例を
図11(c)に示す。重み係数算出関数B(R)603は、各ショット毎に初期値C(scn)が異なり、この初期値C(scn)から、距離Rの増加に従って線形に減少し、距離Rが所定の値Rmax以上では1となる。図の横軸は、エコー信号の各サンプリングポイントの原点からの距離Rを示す。重み係数算出関数B(R)は、以下の式(4)で表される。
【0091】
【数4】
上記の重み係数算出関数B(R)は、予め設定され、記憶装置72等に保持される。また、Rmaxは、例えば、読み出し方向のサンプリング点数をPntとすると、その半分などに設定する。また、重み係数算出関数B(R)から算出した重み係数による信号強度の補正は、信号強度補正部が、上記時間差sによる信号強度補正を行った後に行う。
【0092】
このように構成することで、時間差sの値で重み付けされた各エコー信号群に対し、さらに、中心からの距離Rに応じて重み付けがなされる。このとき、画像のエッジ等の微細な構造部の情報が含まれる高空間周波数領域の重みを大きく(ここでは、1.0)設定する。このように計測空間に充填されたエコー信号から画像を再構成するため、動きの影響を抑えた画像において、ボケの影響も少なくでき、さらに画像の品質を高めることができる。
【0093】
本実施形態では、第一の実施形態を基礎として、時間差sが最大Smaxを超えた場合の重み係数を0.0とする例を示した。しかし、第二の実施形態に本実施形態の手法を組み合わせて、時間差sがSmaxを超えた場合、エコー信号を再取得するよう構成してもよい。この場合、同期撮影制御部は、第二の実施形態の構成に加え、信号強度補正部を備えればよい。
【0094】
また、本実施形態では、
図11(a)で重み係数を算出するための関数として、1次関数を用いたが、2次関数により更に、変数に応じて重みの掛かり方を変えるよう構成してもよい。あるいは、時間差sを判定する閾値により領域を分割し、重み係数を設定してもよい。これは、
図11(c)の距離Rに応じた重み係数についても同様である。
【0095】
<<第四の実施形態>>
次に、本発明を適用する第四の実施形態を説明する。本実施形態のMRI装置は基本的に上記第一から第三の実施形態のいずれかと同様の構成を有する。ただし、本実施形態では、本撮影の撮影シーケンスに3次元計測を行うものを用いる。以下、本実施形態の計測シーケンスについて、上記各実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0096】
非直交系サンプリング法による3次元計測では、ショット毎にG1軸およびG2軸に印加する傾斜磁場パルスに加え、スライスエンコード傾斜磁場パルス印加軸(スライス軸)方向の印加量も変える。
【0097】
本実施形態では、時間差sに応じてスライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅を変更する。上記各実施形態で述べたように、ディレイ時間403は、撮影対象部位毎に最適なものが選択される。従って、ショットの開始時刻がディレイ時刻406から離れれば離れるほど、すなわち、時間差502が大きくなればなるほど、収集されるエコー信号の質は低下する。本実施形態では、時間差502が小さいショットで収集したエコー信号ほど、計測空間のスライス方向の中心部のエコー信号を収集するよう、スライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅を決定する。振幅は、時間差s2に応じて単調増加する関数をスライス位置決定関数Kz(s2)として導入し、この結果を用いてショット毎に決定する。
【0098】
これを実現するため、本実施形態では、第一の実施形態が備える同期
撮影制御部は、各ショット終了後、最新のディレイ時刻406から次のショットの開始時刻503までの時間を第二時間差として算出する第二時間差算出部と、第二時間差算出部の算出結果に基づき、スライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅を決定する振幅決定部とを供える。また、生体信号受信部は、生体信号検出部8からパルス波を受信した旨通知を受けた時刻をトリガ受信時刻として記憶するトリガ信号記憶部を備える。情報処理系7のこれらの機能は、予め記憶装置72等に格納されたプログラムをCPU71がメモリにロードして実行することにより実現する。
【0099】
以下、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理について説明する。
図12は、本実施形態の同期撮影制御部による撮影処理の処理フローである。なお、以下の処理の間、トリガ信号記憶部は、パルス波を受信する毎に、撮影処理とは独立してトリガ受信時刻を記憶する。
【0100】
同期撮影制御部は、操作者から撮影パラメータの入力を受け付けると、予め保持するパルスシーケンスを用い、撮影シーケンスを生成する(ステップS1401)。また、実行するショットのショット番号をカウントするカウンタcnを1とする(ステップS1402)。同期撮影制御部は、操作者から開始の指示を受け付けると、パルス波の受信を待つ。パルス波を受信すると(ステップS1403)、撮影パラメータとして入力されたディレイ時間経過後(ステップS1404)、撮影シーケンスに従って、第cnショットを実行する(ステップS1405)。なお、第1ショットは、最新のディレイ時刻との時間差が0であるため、スライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅は0とする。また、このとき、ショットの開始時刻ts(cn)を、カウンタの値に対応づけて記憶する。
【0101】
ショット終了後、同期撮影制御部は、予め定められた全ショットを実行したか、すなわち、撮影シーケンスを完了したか否かを判別する(ステップS1406)。具体的には、撮影を構成する全ショット数をNとすると、cn=Nか否かを判別する。そして、全ショットを実行している場合は、処理を終了する。一方、未実行のショットがある場合は、同期撮影制御部は、カウンタcnを1インクリメントする(ステップS1407)。
【0102】
その後、同期撮影制御部は、次ショット(ここでは、第cnショット)の第二時間差s2(cn)を算出させる。具体的には、第二時間差算出部は、まず、次ショットの開始時間ts(cn)を計算する(ステップS1408)。これは、前回のショット(ここでは、第(cn-1)ショット)の開始時刻ts(cn-1)にTRを足すことにより、得る。また、算出した開始時刻ts(cn)は、カウンタの値cnに対応づけて記憶する。そして、最新のトリガ受信時刻401からディレイ時間403経過後のディレイ時刻406を最新のディレイ時刻とし、次ショットの開始時刻ts(cn)から最新のディレイ時刻を減算し、第二の時間差s2(cn)を算出する(ステップS1409)。
【0103】
そして、同期撮影制御部は、振幅決定部に、次ショット(ここでは、第cnショット)のスライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅を決定させる。ここでは、振幅決定部は、まず、次ショットのスライスエンコード傾斜磁場パルスのスライス値を、スライス位置関数Kz(s2)から算出する(ステップS1410)。そして、当該スライス値を得る振幅を、スライス値と振幅とを対応付けた関数A(Kz)から決定する(ステップS1411)。
【0104】
次に、同期撮影制御部は、前回のショット開始時刻からTR時間の経過を待って(ステップS1412)、ステップS1405に移行し、第cnショットを実行する。このとき、振幅決定部がステップS1411で決定した振幅A(Kz)を用いる。
【0105】
以上の手順で本実施形態の同期撮影制御部は撮影処理を行い、同期撮影を実現し、計測空間を充填する。次に、振幅決定部が用いるスライス位置決定関数Kz(s2)を説明する。
図13は、第二時間差s2に応じて計測空間でのスライス方向の位置を決定するスライス値決定関数Kz(s2)701の一例である。ここに示す関数は、第二時間差s2が有効な範囲(0≦s≦Smax)で、時間差sに応じて0から線形に増加する関数である。図の横軸は、
図7の各ショット501のエコー信号を収集する際の第二時間差を示す。
【0106】
スライス値Kz(s2)が定まると、当該スライス値のスライスを計測するようスライスエンコード傾斜磁場パルスの振幅A(Kz)を決定する。
【0107】
なお、
図13に示すスライス値決定関数Kz(s2)は以下の式(5)で表される。
【0108】
【数5】
ここで、Smaxは、上記各実施形態同様、予め定められた閾値である。また、Kmaxは、第二時間差s2がSmaxである時のKz(s2)の値である。このように、本実施形態のスライス値決定関数Kz(s2)では、第二時間差s2がSmaxを超えた場合は、当該ショットで得られたエコー信号を画像の再構成には用いない。
【0109】
なお、このスライス値決定関数Kz(s)は、予め設定され、記憶装置72等に保持される。また、式(5)で算出されるKz(s2)は正の値のみであるが、計測空間においては、同等であるため、Kz(s2)および-Kz(s2)のいずれの値を用いてもよい。また、先にKz(s2)を、次に、同じ第二時間差s2を得た場合、-Kz(s2)を用いるよう構成してもよい。また、ショット毎に、交互に正負の値を割り当てるよう構成してもよい。
【0110】
以上説明したように、本実施形態によれば、ディレイ時刻からの第二時間差に応じてスライスエンコード傾斜磁場の振幅を決定するため、より品質のよいエコー信号を計測空間のスライス方向の低空間周波数領域に配置することができる。従って、3次元計測であっても、第一の実施形態と同様に、高品質で安定した画像を、所望のコントラストで得ることができる。
【0111】
なお、本実施形態の手法によれば、第二時間差s2が同じショットであれば、同じスライス値Kz(s2)が得られる。従って、同じスライス値Kz(s2)が繰り返し得る場合がある。振幅決定部がこの様な場合も考慮して振幅を決定するよう構成してもよい。この場合の、振幅決定処理について
図14を用いて説明する。なお、振幅決定処理は、上記処理のステップS1408からS1411の処理である。ここでは、決定され、計測が実行された各振幅A(Kz)に対応するスライス値Kz(s2)は、実行済スライス値として保持するよう構成する。
【0112】
上記ステップS1408および1409の手法で、第二時間差s2を算出する(ステップS1501)。ここでは、算出した第二時間差s2をs2cnとする。そして、スライス値決定関数Kz(s2)により、スライス値Kz(s2cn)を算出する(ステップS1502)。算出したスライス値Kz(s2cn)のスライスが取得されているか否かを判別する(ステップS1503)。判別は、実行済スライス値として算出したKz(s2cn)が保持されているか否かで行い、保持されていれば、実行済みと判別する。
【0113】
実行されていない場合、算出した振幅Kz(s2cn)を実行済スライス値として保持するとともに、Kz(s2cn)に対応する振幅A(Kz)を振幅として決定する(ステップS1504)。そして、振幅決定処理を終える。一方、実行されている場合は、算出された振幅Kz(s2cn)の負の値である-Kz(s2cn)のスライスが取得されているか否かを判別する(ステップS1505)。実行されていない場合、-Kz(s2cn)を実行済スライス値として保持するとともに、対応する振幅A(Kz)を振幅として決定する(ステップS1506)。そして、振幅決定処理を終える。
【0114】
-Kz(s2cn)も実行されている場合は、第二時間差s2として得た値s2cnを以下の式(6)で表されるΔsだけ増加させる(s2cn=s2cn+Δs)(ステップS1407)。
【0115】
【数6】
そして、増加後の第二時間差s2cnが、予め定めた閾値Slimitを越えたか否かを判別する(ステップS1408)。超えていない場合は、ステップS1402に戻り、処理を続ける。超えている場合は、当初のKz(s)に対応するA(s)を振幅とするとともに、既に実行済みであることを示すフラグとともに出力し、振幅決定処理を終了する。
【0116】
なお、Slimitは、撮影効率が低下せず、かつ、動きの影響が目立たないよう設定する。例えば、第二時間差s2の関数としてもよい。この場合、第二時間差s2が小さい場合は、得られるエコー信号の品質が高いため、Slimitを大きくし、スライスを取得する可能性を広げ、大きい場合は、Slimitを小さくし、取得スライス範囲を狭める。
【0117】
なお、本振幅決定処理で、既に実行済みであることを示すフラグとともに振幅が決定された場合、同期撮影部は、撮影シーケンスは実行するが、エコー信号を収集しない。または、撮影シーケンスを実行してエコー信号を収集するが、画像再構成には使用しない。
【0118】
このように振幅決定処理を構成することにより、同じ振幅でのエコー信号収集の繰り返しを避けることができる。また、エコー信号を取得する必要が無い場合でもシーケンスは繰り返し時間を保ったまま実行することにより、画像のコントラストを保つことができる。
【0119】
なお、上記本実施形態では、スライス方向以外の撮影処理は、第一の実施形態の撮影処理を用いる場合を例にあげて説明しているが、第二の実施形態および第三の実施形態のいずれであってもよい。また、スライス方向のエコー信号に対し、第三の実施形態同様、重み係数を適用するよう構成してもよい。スライス方向にも重み係数を適用することで、さらに画質が向上する。
【0120】
また、上記第一から第三の実施形態では、2次元計測を例に挙げて説明しているが、3次元計測であってもよい。
【0121】
さらに、上記実施形態では、非直交系サンプリング法として、ハイブリッドラディアルサンプリング法を用いる場合を例にあげて説明したが、非直交系サンプリング法はこれに限られない。例えば、ラディアルサンプリング法であってもよい。更に、計測空間を渦巻状にサンプリングするスパイラル法でも良い。
【0122】
以上が、本発明を適用する具体的な実施形態である。しかし、本発明は、以上の各実施形態で開示された内容にとどまらず、本発明の趣旨を踏まえた上で各種形態を取り得る。