特許第5735926号(P5735926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735926
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   B25J19/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-551428(P2011-551428)
(86)(22)【出願日】2010年2月3日
(65)【公表番号】特表2012-519081(P2012-519081A)
(43)【公表日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】EP2010000634
(87)【国際公開番号】WO2010097159
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2012年12月10日
(31)【優先権主張番号】102009010953.6
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504389784
【氏名又は名称】デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】コールマー、アンドレアス
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−238428(JP,A)
【文献】 特開2007−229874(JP,A)
【文献】 特開2008−073833(JP,A)
【文献】 特表2009−531188(JP,A)
【文献】 実開平07−018489(JP,U)
【文献】 特開2006−095614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00− 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位ロボット要素(4)、中位ロボット要素(5)、及び遠位ロボット要素(6)、並びに、前記近位ロボット要素(4)から前記遠位ロボット要素(6)に誘導される少なくとも1つの曲げ可能な供給管路(10)を備えるロボット(1)であって、
前記近位ロボット要素(4)、前記中位ロボット要素(5)、及び前記遠位ロボット要素(6)は、一本の可動椀を形成するように互いに接続されており、
前記近位ロボット要素(4)前記中位ロボット要素(5)の一端部に、及び前記遠位ロボット要素(6)は前記中位ロボット要素(5)の他端部にそれぞれ、共通の旋回面内で旋回可能に接続され
記中位ロボット要素(5)は、前記近位ロボット要素(4)及び前記遠位ロボット要素(6)の間をつなぐ中間領域を空けるよう、前記共通の旋回面から側方にそれて配置されており、
前記近位ロボット要素(4)では、前記供給管路(10)は、前記供給管路(10)が前記ロボット(1)の旋回運動中に前記供給管路(10)の長手方向軸に対して軸方向の補正運動を行えるように、前記軸方向に移動可能であり、
前記供給管路(10)は前記中間領域内を走り、
前記供給管路(10)は補正ループ(12)を含み、
前記補正ループ(12)は前記近位ロボット要素(4)に垂直に配置され、
前記補正ループ(12)は、前記ロボット(1)の旋回運動中に、前記中間領域内での前記供給管路(10)の軸方向の補正運動を、前記補正ループ(12)の垂直運動に変換することを特徴とするロボット(1)。
【請求項2】
a)前記近位ロボット要素(4)、前記中位ロボット要素(5)、及び前記遠位ロボット要素(6)は関節により相互に旋回可能に接続され、
b)前記供給管路(10)は前記関節を通過している、請求項1に記載のロボット(1)。
【請求項3】
軸方向に近接して配列された復元力を前記供給管路(10)に与える機械的張力調節要素(13)を備える、請求項1または2に記載のロボット(1)。
【請求項4】
a)前記張力調節要素(13)はスプリングロッドであり、かつ/または、
b)前記張力調節要素(13)は前記近位ロボット要素(4)に対して固定して配置され、かつ/または、
c)前記張力調節要素(13)は前記近位ロボット要素(4)で復元力を発生し、かつ/または、
d)前記張力調節要素(13)は、渦巻きばねが前記供給管路(10)と同じように長さが変化してこれに応じた軸方向の復元力を発生するように、前記供給管路(10)の壁面に内側もしくは外側で固定して接続された渦巻きばねを備え、かつ/または、
e)前記張力調節要素(13)は、前記供給管路(10)に対して内側および/もしくは外側に配置されたバネ要素を備える、請求項3に記載のロボット(1)。
【請求項5】
前記補正ループ(12)は2つの管路脚部を備えており、このとき、前記補正ループ(12)の近位の前記管路脚部または遠位の前記管路脚部に張力調節要素が係合する、請求項1から4のいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項6】
前記供給管路(10)はホース誘導面(14)を走る、請求項1からのいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項7】
a)移動用レール上で移動可能なまたは固定された別のロボット要素(3)、
b)前記別のロボット要素(3)に回転可能に取り付けられている前記近位ロボット要素(4)、
c)前記遠位ロボット要素(6)に取り付けられたロボット手根部(7)、および、
d)前記ロボット手根部(7)に取り付けられた道具(8)、
を備える、請求項1からのいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項8】
a)前記近位ロボット要素(4)の回転軸(A1)は実質的に垂直に伸び、および/または、
b)前記中位ロボット要素(5)と前記遠位ロボット要素(6)は平行な旋回軸(A2,A3)を有し、および/または、
c)前記中位ロボット要素(5)の旋回軸(A2,A3)と前記遠位ロボット要素(6)とは、実質的に水平に並んでおり、および/または、
d)前記供給管路(10)は前記遠位ロボット要素(6)で軸方向に移動可能であり、および/または、
e)前記供給管路(10)は前記別のロボット要素(3)と前記近位ロボット要素(4)との間の回転関節で軸方向に移動可能であり、および/または、
f)前記供給管路(10)は前記近位ロボット要素(4)と前記中位ロボット要素(5)との間の旋回関節で軸方向に移動可能であり、および/または、
g)前記供給管路(10)は前記中位ロボット要素(5)と前記遠位ロボット要素(6)との間の旋回関節で軸方向に移動可能である、請求項に記載のロボット(1)。
【請求項9】
a)前記中位ロボット要素(5)はある外形を有し、
b)前記供給管路(10)は前記中位ロボット要素(5)の旋回面(14)上の前記ロボット(1)の位置に関わらず前記中位ロボット要素(5)の外形からはみ出さず、および/または、
c)張力調節要素(13)は、前記供給管路(10)が前記中位ロボット要素(5)の旋回面(14)に対して前記中位ロボット要素(5)の外形内に収まり定位置に前記ロボット(1)の位置に関わらず前記供給管路(10)が維持されるような大きさの復元力を前記供給管路(10)に与える、請求項又はに記載のロボット(1)。
【請求項10】
a)前記供給管路(10)は前記中位ロボット要素(5)の外側を走り、および/または、
b)前記供給管路(10)は前記遠位ロボット要素(6)の内側を走り、および/または、
c)前記供給管路(10)は前記近位ロボット要素(4)の内側を走り、および/または、
d)前記供給管路(10)は前記別のロボット要素(3)の少なくとも一部の内側を走る、請求項からのいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項11】
a)前記供給管路(10)は前記遠位ロボット要素(6)までその中にピッグを通すことが可能であり、および/または、
b)前記供給管路(10)は複数のホース管路を備えるホース集合物からなる、請求項1から10のいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項12】
前記供給管路(10)は、
a)回転式噴霧器向けの駆動用空気、
b)特に塗装に用いる塗装材料、
c)塗装材料用の溶剤、
d)パルス状空気、または、
e)静電塗装作業用高圧電、
を誘導する、請求項1から11のいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項13】
前記遠位ロボット要素(6)上または内に色切替器(9)が取り付けられている、請求項から12のいずれか1項に記載のロボット(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のロボット(1)を備えた自動車の車体部品を塗装するための塗装プラント。
【請求項15】
自動車の車体部品を塗装するための塗装プラントにおいて請求項1から13のいずれか1項に記載のロボット(1)を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項に記載のロボットに関し、特に、車両の車体部品の塗装用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗装用ロボットは相互に旋回及び回転可能な複数のロボット要素を備えており、これらロボット要素は、相互に運動学的に配置されて、塗布装置として、回転式噴霧器、例えば、塗料、洗浄剤、駆動用空気、及び、高圧電力などを複数の供給管路から供給される回転式噴霧器、を誘導する。この構成では、ロボットの位置が変わると供給管路の長さもそれに応じて変わるため、個々のロボット要素の供給管路の誘導に問題がある。そのため、周知の塗装用ロボットでは、供給管路は、スイベルジョイントにより、スイベルジョイントの前後でストレインリリーフによって軸方向に運動学的に固定された一つの束として誘導される。そして、ロボットの位置の変化により必要となった長さの補正は、専ら、ストレインリリーフの間に設けられた目に見える方の補正ループにより行われる。
【0003】
上述した塗装用ロボット向けの従来の管路誘導では、何よりも先ず、ロボットの動きに応じて必要となる長さの補正を行うために、ストレインリリーフの間に補正ループを設ける必要があるため、費用、重量、塗料の損失、及び、空気制御の時間に関して不利であるにもかかわらず、供給管路を不必要に長くする必要があるという欠点がある。
【0004】
さらに、長さの補正に必要な補正ループには、多要素ロボットアームの外形から通常はみ出し塗装用ロボットの移動の自由を制限するほどの比較的広い空間を補正に必要とするという欠点がある。
【0005】
また、上述した従来の塗装用ロボットの製造費用及び組立時間は、軸方向のストレインリリーフが供給管路毎に無数に必要であり、また、このストレインリリーフの組み込みに多くの時間とコストを掛ける必要があるため、比較的かさむものとなる。
【0006】
さらに、塗装用ロボット向けの従来の供給管路誘導では、塗装用ロボットが、通常、ほぼ垂直な回転軸に対して回転運動が可能であるため、これにより、供給管路がねじれてしまうという欠点がある。また、軸方向のストレインリリーフは、生じたねじれ負荷を吸収するような自由に動く供給管路のホースの長さを減じる。そのため、従来の管路誘導で用いられる軸方向のストレインリリーフは、ねじれによる負荷の増大を招くので、生じたねじれ負荷を吸収するようにホースの長さを余分に維持する必要がある。
【0007】
さらに、塗装用ロボット向けの従来の管路誘導では、ホースを誘導する平面内で供給管路を誘導できないため、ピッグを通すことができる供給ホースの使用が妨げられるという欠点があった。
【0008】
さらに、欠点として、用いられる供給ホースやこれに付随するねじ込み式接続による余分な機械的負荷、及び、ホースの取付や交換に伴う組立や分解に必要とされる時間や費用の増加が挙げられる。また、通常、特別な装置が必要とされる点も、従来の管路誘導の欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、以上の問題点を解決する改善された供給管路の管路誘導を備えた塗装用ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、主請求項に記載の塗装用ロボットにより達成される。
【0011】
本発明に係るロボットは、相互に旋回または回転可能なロボット要素(例えば、ロボット腕部)を備える。また、本発明に係るロボットは、近位のロボット要素(例えば、固定式または移動式のロボット基底部)から遠位のロボット要素(例えば、ロボット腕部)によって誘導される曲げ可能な供給管路を少なくとも1つ備える。本発明に係るロボットは、供給管路が、ロボットの旋回動作中の運動を相殺できるように、近位のロボット要素において該供給管路の長手方向軸に対して軸方向に可動であることを特徴とする。
【0012】
上記の特徴は、ロボットの供給管路の必要長がロボットの位置に応じて変動し、この変動する必要長を供給管路の軸方向の補正運動で相殺できるため、有利である。
【0013】
上記の従来の塗装用ロボットと比較して、本発明に係るロボットの供給管路は、軸方向に固定されておらず、軸方向のストレインリリーフを通常省くことができる。しかし、本発明は、供給管路に軸方向のストレインリリーフを有しないロボットに限定されるものではない。むしろ、本発明は、軸方向のストレインリリーフを、例えば、遠位のロボット要素に備えるロボットも網羅するものである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、ロボットは、供給管路に軸方向かつ近位に揃った牽引力を与えるような機械的張力調節要素を備える。この張力調節要素は、ロボットの運動によって供給管路の必要長が減少すると、供給管路を近位方向に引っ張る。そして、ロボットの運動によって供給管路の必要長が増加すると、供給管路は、ロボットの運動によって、張力調節要素の牽引力に逆らって、遠位方向に引っ張られる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、張力調節要素は、先行技術で周知のスプリングロッドであり、供給管路の曲げ負荷によりそれに応じた復元力が生ずる。こうしたスプリングロッドとして、バネ鋼製で、供給管路の一部を螺旋状に囲むものを使用することができる。また、こうしたスプリングロッドの代わりに、供給管路の中に設けられるものを用いてもよい。このように、張力調節要素は、通常、供給管路の中と外とのいずれか一方に又は両方に設けられてもよいバネ要素を備える。
【0016】
スプリングロッドの復元力は最初放射方向に働くが、この復元力は管路誘導に応じて軸方向に働く復元力に変換される。
【0017】
本発明の枠組みの範疇において、スプリングロッドの代わりに他の種類の張力調節要素を用いることもできる。例えば、弾性ケーブルウィンチ、渦巻きばね、GRPロッドなどが挙げられる。これらは、供給管路を囲み、一端では筐体に固定された対向軸受に、他端では供給管路に取り付けられた管路フランジに係合するように設けられ、この渦巻きばねにより筐体に固定された対向軸受から管路フランジと供給管路とは共に軸方向に押しやられる。
【0018】
本発明の枠組みの範疇において用いることができる張力調節要素のさらなる一例としては、IGUS GmbH社からTriflex(登録商標)の商品名で販売されている管路ガイドがある。
【0019】
独国実用新案第20221807号明細書に記載の張力調節要素を用いることもできる。
【0020】
このように、張力調節要素は、軸方向の復元力を直接に生ずるもの、即ち、放射方向の復元力から変換する必要のないものを用いることもできる。こうしたものとして、例えば、張力調節要素は、供給管路の外側または内側を囲み、供給管路の壁面に接続される渦巻きばねとして設けられてもよい。この場合、供給管路は、対応する渦巻きばねの伸長と連動して、軸方向に伸長するため、軸方向の復元力が生ずる。
【0021】
また、張力調節要素についてさらに述べると、好ましいものとして、近位のロボット要素に対して固定して配置され、近位のロボット要素で復元力を発生させる張力調節要素が挙げられる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、配給管路は補正ループを備え、この補正ループは、好ましくは、上記のようにロボットの運動を配給管路の運動で軸方向に相殺することを可能にするように、近位のロボット要素に設けられる。そのため、補正ループの長さは、好ましくは、少なくとも、ロボットの動作中の供給管路の長さの変動の最大値よりも大きい。
【0023】
この場合、補正ループは、好ましくは、2つの管路脚部を備えており、この補正ループの近位の管路脚部または遠位の管路脚部にスプリングロッドの形態の張力調節要素が係合する。
【0024】
更なる点を挙げれば、好ましい実施形態では、供給管路は、顕著なことに、ロボットの位置に依存せず実質的にホース誘導面上を動く。これは、ロボットの位置変化によって供給管路に曲げ負荷は掛かるもののねじれ負荷は掛からず、ピッグを通すことのできるホースの配管を単純化できるという利点を有する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、ロボットは、随意に先行技術で周知の移動用レール上に移動可能に又は固定して設けてもよい第1のロボット要素(例えば、ロボット基底部)を備える。
【0026】
さらに、好ましくは、第1のロボット要素に対して回転可能に取り付けられる第2のロボット要素が設けられる。このとき、第2のロボット要素の回転軸は、好ましくは、垂直である。
【0027】
第2のロボット要素は、好ましくは、第1のロボット要素の下に回転可能に取り付けられるが、代わりに、第2のロボット要素は、第1のロボット要素の上に又は側面に回転可能に取り付けられてもよい。
【0028】
さらに、好ましくは、第2のロボット要素に対して旋回可能に取り付けられるロボット腕部の形態の第3のロボット要素が設けられる。このとき、第3のロボット要素の旋回軸は、好ましくは、水平である。
【0029】
さらに、好ましくは、第3のロボット要素に対して旋回可能に取り付けられるロボット腕部の形態の第4のロボット要素が設けられる。このとき、第4のロボット要素の旋回軸も、好ましくは、水平である。
【0030】
第4のロボット要素は、好ましくは、多軸ロボット手根部を誘導する遠位のロボット腕部を形成する。これは、先行技術で周知のものであるので、本願明細書では詳細については記載しない。
【0031】
ロボット手根部は、最終的に、道具を誘導する。こうした道具としては、噴霧器、好ましくは、回転式噴霧器などが挙げられる。しかし、本発明は、他の道具を誘導する他種のロボットも網羅するものである。例えば、道具として、継ぎ目封止材を塗布するためのノズル先端部や液膜を塗布するための塗布先端部などが挙げられる。
【0032】
本願発明に記載のロボットの上記の構造では、供給管路は1つ以上の又は全てのロボット要素において軸方向に可動であってもよい。さらに、供給管路は、好ましくは、隣接するロボット要素の間の旋回または回転関節で軸方向に可動でもあり、これにより、上記のように、ロボットの位置の変化中に補正運動を行うことが可能となる。
【0033】
冒頭で述べたように、先行技術文献の記載では、長さの補正に必要な補正ループは、通常、ロボット椀部の外形からはみ出し、外形からはみ出した補正ループが塗装対象の自動車の本体部品や塗装室の隔壁に衝突することはいかなる場合も避ける必要があるために、ロボットの運動の自由を制限することになる。一方、本発明に係るロボットでは、管路誘導は、好ましくは、供給管路が、旋回面上にあるロボットの位置に関わらず、対応するロボット要素の外形からはみ出さないように設計される。これは、機械的張力調節要素が、該供給管路に、ロポットの位置に関わらず対応するロボット腕部の外形からはみ出さないような定位置に供給管路が維持されるような大きさの復元力を与えることにより達成される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、相互に運動学的にかつ相互に旋回可能に配置された3つのロボット要素が設けられる。このとき、運動学的に外側に配置されたロボット要素は実質的に共通の旋回面に配置される。一方、それらのロボット要素の間に運動学的に配置されたロボット要素は該旋回面から側方に離れて配置されるので、供給管路のための空間が残される。ここで、供給管路は、運動学的に外側に配置されたロボット要素の間の中間領域をつなぎ、この中間領域の中を、好ましくは、運動学的に中央に側方に外れて配置されたロボット要素の外側を通るように、走っている。この配置には、供給管路がその全長にわたってホース誘導面内を走るため、供給管路にピッグを通すことが簡単になるという利点がある。この種の管路誘導では実質的に供給管路の曲げを回避することができる。
【0035】
本発明の枠組みの中で用いられる供給管路という用語は、好ましくは、複数のホース管路を含むホースの集合体を指し、個々のホース管路は、例えば、回転式噴霧器の駆動用空気、塗装材料(例えば、塗料)、塗装材料の溶剤、及び、噴霧器の電気塗装動作用の高電圧及び/又はバルス状空気などを運ぶ。即ち、供給管路は、液体又は電気の管路を扱いうる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に係るロボットは、また、構造的に組み込まれた色切替器を備える。該色切替器は、好ましくは、遠位のロボット腕部に又はその中に取り付けられる。このとき、液体の供給管路は、好ましくは、色切替器に到るまでピッグを通すことが可能である。
【0037】
さらに挙げれば、本発明は、上記のような単一装置としてロボットに限定されるものではなく、少なくとも1つの塗装用ロボットを備え付けられた一式の塗装プラントも含むものである。
【0038】
本発明は、最終的に、自動車の本体部品を塗装するための塗装プラントにおけるこうしたロボットの新しい使用法をも包含するものである。
【0039】
本発明のさらなる好ましい改善例は、下位請求項により特徴付けられ、又は、図面と共に以下の本発明の好ましい実施形態の記載を参照することでより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る塗装用ロボットの好ましい実施形態の側面図。
図2図1の塗装用ロボットの平面図。
図3図1及び2の塗装用ロボットの斜視図。
図4A図1から3の塗装用ロボットの供給管路の軸方向張力調節用スプリングロッドの略図。
図4B】それた状態のスプリングロッドの略図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1から3は、塗装プラントでの自動車本体部品の塗装などに用いられる本発明に係る塗装用ロボット1をさまざまな視点からみた図を示す。
【0042】
ここで、塗装用ロボット1は、接合フランジ2上に、随意に固定して又は直線的に移動可能に、取り付けられてもよい。
【0043】
接合フランジ2は、ここで、ロボット基底部3上に配置され、ロボット基底部3は、それに対して垂直回転軸A1を中心に回転させることが可能である回転可能なロボット要素4をその下面に備えている。
【0044】
ロボット腕部5は、回転可能なロボット要素4上に旋回可能に配置され、水平に延びる旋回軸A2を中心に該ロボット要素4に対して旋回可能であり、ロボット工学の分野で通常用いられる専門用語で表せば「腕部1」と呼ばれるものである。
【0045】
遠位のロボット腕部6は、ロボット腕部5の遠位端に旋回可能に取り付けられており、ロボット工学の分野で通常用いられる専門用語で表せば「腕部2」と呼ばれるものであり、水平に延びる旋回軸A3を中心に該ロボット腕部5に対して旋回可能である。
【0046】
多軸ロボット手根部7は、従来の回転式噴霧器8を移動性よく位置合わせできるように、ロボット腕部6の遠位端に取り付けられている。
【0047】
回転式噴霧器8に、ここで、色切替器9により所望の塗料が供給される。色切替器9は、遠位のロボット腕部6に配置され、そのため、回転式噴霧器8に比較的近い。そのため、塗料の切替えに伴う損失は最小限に抑えられる。
【0048】
回転式噴霧器8と色切替器9との供給は、種々の媒体(例えば、塗料、洗浄剤、駆動用空気など)用の複数のホース管路を備えるホースの集合体の形態の供給管路10によって行われる。ここで、供給管路10は、ブロッククランプ11から始まり、まず、補正ループ12をなす。該補正ループ12は、ロボットの運動により供給管路10の長さを変える必要が生じた場合に矢印の方向に供給管路10の軸方向の補正運動を可能にする。
【0049】
供給管路10は、ここで、スプリングロッド13の形態の機械的張力調節要素により張力をかけられる(図4A及び4B参照)。このとき、張力調節要素13は、軸方向に近接して配列された復元力を供給管路10に掛ける。そのため、張力調節要素13は供給管路10を図1に示した代表図においてロボット基底部3の上方に引き上げようとする。これにより、図1の側面図で特に明らかなように、供給管路10がロボットの位置に関わらずロボット腕部5の外形を超えないことが達成される。この方法では、供給管路10が塗装用ロボット1の運動の自由を制限しないため、有利である。
【0050】
さらに、図2から、供給管路10がその全長に渡って実質的にホース誘導面14内を走ることがわかる。この方法では、供給管路10が実質的に曲がるのみであり捻れないので、供給管路10にピッグを通すことができるため、有利である。
【0051】
図4A及び4Bについて、張力調節要素13は、代わりに、供給管路10の軸方向の伸長が同程度の張力調節要素13の軸方向の伸長と連動してこれに応じた軸方向の復元力を生じるように、供給管路10の壁面に接続されてもよい。
【0052】
本発明は、上述の好ましい実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の思想を利用し本発明の保護範囲に分類される種々の変形例及び修正例が可能である。さらに、本発明は、上位請求項の特徴とは独立して下位請求項の主題の保護を請求するものである。
【符号の説明】
【0053】
1 塗装用ロボット
2 接合フランジ
3 ロボット基底部
4 ロボット要素
5 ロボット腕部
6 ロボット腕部
7 ロボット手根部
8 回転式噴霧器
9 色切替器
10 供給管路
11 ブロッククランプ
12 補正ループ
13 張力調節要素
14 ホース誘導面
A1 回転軸
A2 旋回軸
A3 旋回軸
図1
図2
図3
図4A
図4B