特許第5735983号(P5735983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5735983-NOxトラップ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735983
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】NOxトラップ
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/94 20060101AFI20150528BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20150528BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150528BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20150528BHJP
   B01J 23/58 20060101ALI20150528BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150528BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B01D53/36 102B
   F01N3/20 E
   F01N3/28 301C
   F01N3/28 301P
   F02D41/04 305A
   F02D41/04 355
   B01J23/58 AZAB
   B01J37/02 301L
   B01J35/04 301L
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-545444(P2012-545444)
(86)(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公表番号】特表2013-514881(P2013-514881A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】GB2010052175
(87)【国際公開番号】WO2011077139
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年12月17日
(31)【優先権主張番号】0922195.3
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ガイ、リチャード、チャンドラー
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス、ヘイゼル、マウントスティーブンス
(72)【発明者】
【氏名】ポール、リチャード、フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、スワロー
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−100626(JP,A)
【文献】 特開2000−084405(JP,A)
【文献】 特開2006−181476(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/100097(WO,A1)
【文献】 特開2001−205051(JP,A)
【文献】 特表2004−535277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0021745(US,A1)
【文献】 特開2004−033872(JP,A)
【文献】 特開2004−305954(JP,A)
【文献】 特表2008−513189(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0057046(US,A1)
【文献】 実開平02−142622(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0041643(US,A1)
【文献】 特開昭63−258648(JP,A)
【文献】 特開2005−279437(JP,A)
【文献】 特表2011−525579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/36
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層がその上に付着されたハニカム基材モノリスを含む、NOxトラップであって、
第1層は、その中に均一に付着された、少なくとも1種の白金族金属と少なくとも1種のNOx貯蔵物質と、粒子状セリアまたは粒子状セリウム含有混合酸化物とを有し、
第1層は希土類酸化物の分散物を有し、
第1層は上流区域と下流区域とを有し、
前記上流区域における前記希土類酸化物分散物の充填が前記下流区域における前記希土類酸化物分散物の充填の0ないし30%である、NOxトラップ。
【請求項2】
前記希土類酸化物分散物が、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ランタン、サマリウム及びその混合物からなる群より選択される元素の酸化物を含んでなる、請求項1に記載のNOxトラップ。
【請求項3】
上流区域と下流区域との比率が、20:80〜80:20である、請求項1または2に記載のNOxトラップ。
【請求項4】
前記第1層に均一に付着された成分における前記白金族金属が、白金及び/又はパラジウムを含んでなる、請求項1から3のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項5】
前記粒子状セリウム含有混合酸化物が、ジルコニウム含んでなる、請求項1から4のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項6】
前記少なくとも1種のNOx貯蔵物質のそれぞれが、アルカリ土類金属及びアルカリ金属からなる群より選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項7】
前記第1層で前記均一に付着された成分が、アルミン酸マグネシウムを含んでなる、請求項1から6のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項8】
前記第1層を覆う第2層が支持ロジウム成分を含んでおり、該支持ロジウム成分がロジウムと支持体とを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項9】
前記下流区域が、前記上流区域より低い熱質量を有してなるものである、請求項1から8のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項10】
前記ハニカム基材モノリスが、フロースルーハニカム基材モノリスである、請求項1から9のいずれか1項に記載のNOxトラップ。
【請求項11】
リーンバーン内燃機関用排気システムであって、
請求項1から10のいずれか1項に記載のNOxトラップを備えてなり、
前記上流区域が、前記下流区域の前で、前記内燃機関からの排気ガスを受入するように配置されてなる、リーンバーン内燃機関用排気システム。
【請求項12】
車両であって、
リーンバーン内燃機関と、請求項11に記載の排気システムとを備えてなり、
前記内燃機関が、前記内燃機関使用中に、NOxトラップに貯蔵された硫黄を放出するために、間欠的にエンジンの燃料/空気比(ラムダ)を調整して該ラムダを通常リーン走行モード(ラムダ<1)における値から増加させるように構成された、エンジン管理手段を備えてなる、車両。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載のNOxトラップを製造する方法であって、
前記製造方法が下記工程:
a.ハニカム材モノリスを、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質と、粒子状セリア又は粒子状セリウム含有混合酸化物を含む均一なウォッシュコートでコーティングする工程と、
b.前記コーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程と、
c.前記コーティングされた基材モノリスの第2区域を希土類元素の水溶液で含浸する
又は、前記コーティングされた基材モノリスの第2区域を希土類元素酸化物のゾルと接触
させる工程と、及び
d.前記工程c.のコーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程とを含んでなる、製造方法。
【請求項14】
工程c.と工程d.との間に、前記コーティングされた基材モノリスの第1区域が希土類元素の水溶液に含浸されるか、又は、前記コーティングされた基材モノリスの第1区域が希土類元素酸化物のゾルと接触され、及び
いずれの場合にも、第1区域における希土類酸化物の充填(gin−3)が、
(i)前記第2区域における希土類酸化物の充填の30%未満、又は
(ii)前記第2区域における希土類酸化物の充填の70%超過である、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか1項に記載のNOxトラップを製造する方法であって、
前記製造方法が下記工程:
a.ハニカム基材モノリスの第1区域を、該ハニカム基材モノリスの第1上流端から、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質と粒子状セリア又は粒子状セリウム含有混合酸化物を含むウォッシュコートでコーティングする工程と、
b.前記部分コーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程と、
c.前記部分コーティングされた基材モノリスの第2区域を、該ハニカム基材モノリスの第2下流端から、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質粒子状セリア又は粒子状セリウム含有混合酸化物希土類元素の水溶液又は希土類元素酸化物のゾルを含むウォッシュコートでコーティングする工程と、及び
d.前記工程c.のコーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程とを含んでなる、製造方法。
【請求項16】
前記工程a.のウォッシュコートが、第1区域における希土類酸化物の充填(gin−3)が、
(i)前記第2区域の希土類酸化物の充填の30%未満、又は
(ii)前記第2区域の希土類酸化物の充填の70%超過となる、濃度において、
希土類元素の水溶液又は希土類元素酸化物のゾルを含んでなる、
請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1層でコーティングされた前記基材モノリスを、支持ジウム成分を含む第2層でコーティングし、及び
前記基材モノリスを乾燥させて焼成する工程を含み、該支持されたロジウム成分がロジウムと支持体とを含む、請求項13から16いずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)排気ガス後処理システムの一部を形成するNOxトラップの改善に関し、特に、貯蔵された硫黄に対して改善された再生能力を有するNOxトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
リーンNOxトラップとして知られており、NOxトラップまたはNOx吸収触媒(NAC)としてよりよく知られているインライン(in−line)NOx貯蔵ユニットの使用は、現在、リーンバーン内燃機関のための排気ガス後処理システムでよく知られている。トヨタの欧州特許EP0560991は、硝酸塩を形成するためにNOxと反応するバリウム酸化物のような物質と、白金のようなNOx変換触媒とを結合させることにより、NOx貯蔵ユニットを構造化する方法を記載している。トラップは、燃料/空気比(一般的に、「ラムダ」またはλという)を理論空然比(λ=1)またはリッチ(λ>1)に周期的に調整することによって再生され、NOxが放出され、かつ、触媒と接触して窒素ガスに還元される。
【0003】
従来のNOxトラップは、ハニカム状のフロースルー基材モノリス上の酸素貯蔵成分(「OSC」)と触媒成分とを含むNOx捕獲成分を、ハニカム状の基材モノリスを排気ガス触媒でコーティングするのと類似の方法で付着することによって形成される。本発明者等は、少なくともある環境では、選択された物質層を用いることにより、NOxトラップを形成することが有利であり得ることを既に開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガソリン(スパーク点火エンジン)に適用可能であるが、特に、一般的にディーゼルエンジンとして知られた圧縮点火型内燃機関(エンジン)に適切であるが、ある圧縮点火エンジンは、天然ガス、バイオディーゼルまたはバイオディーゼルと混合されたディーゼル燃料および/またはフィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)燃料のような他の燃料で作動することができる。圧縮点火エンジンは、リーン燃料/空気比(空燃比)で作動して燃費において優れているが、リーン排気ガスのため、NOx貯蔵および変換においてガソリン燃料エンジンより性能が劣る。ガソリン燃料エンジンは、一般的に略λ=1で作動し、NOx変換においてディーゼルでよりやや有利であるが、硫黄の蓄積、放出,NOxトラップにおいては困難があった。
【0005】
仮に、ディーゼル燃料が、最近、一般的に「低硫黄」、「超低硫黄」として精製および製造されているが、燃料とそれによる排気ガスは、硫黄化合物を含む。エンジンで用いられる潤滑油も、排気ガスの硫黄成分の原因となる。一般的に、バリウム酸化物と、酸素貯蔵成分(「OSC」)としてのセリア(ceria)とを含むNOxトラップが、反応によって硫黄化合物を捕獲する。これは、硫黄による「被毒現象」または単にNOx貯蔵サイトとの硫黄競合によるNOxトラップのNOx貯蔵能力の低下とされ得る。硫酸バリウムが硝酸バリウムよりも安定的であるため、硫黄は、貯蔵されたNOxの放出に使用するものよりも強く(よりリッチな、より長くおよび/またはより高い排気ガス温度)周期的に除去されなければならない。それにより、最新のNOx貯蔵トラップ技術は、NOxトラップの有効性を維持するために、硫黄放出過程を含む。この過程は、硫黄がNOxトラップから放出されるようにするエンジンの作動時間であり、NOxトラップ内で発熱を発生可能なλをよく調整(「リーン/リッチ」の切替)する間に、一般的にNOxトラップの温度上昇を伴う。硫黄放出のような過程におけるNOxトラップの温度は、一般的に少なくとも550℃まで上昇する。
【0006】
多くの企業は、NOxトラップからの硫黄放出を改善させること、硫黄放出過程の開始と終了に集中すること、そして、成功的な硫黄放出に必要なエンジンの管理に力を入れている。例として、US2009044518(Peugeot Citroen Automobiles SA)が参照される。しかし、いずれもNOxトラップ自体の構造を変更するものではないと考えられる。全体的に均一な分布の成分を有する典型的な最新NOxトラップにおいて、所望の硫黄放出温度に達するNOxトラップの前方(上流端)とその温度に達するNOxトラップの後方との間には、時間遅延が存在する。それにより、実際の時間において、蓄積された硫黄は、トラップを通過して移動し、トラップの後方は完全に脱硫しない傾向がある。
【0007】
本発明の発明者らは、NOxトラップ基材の長さにわたる温度伝播が遅いという点に注目した。そのため、脱硫過程において、トラップの前方からの従来の熱伝達に依存するよりは、NOxトラップの下流部分での熱発生を向上させることが望ましいはずである。本発明の目的は、より効果的に捕獲された硫黄を放出する能力および/またはより少なく要求される脱硫過程を提供する、改善されたNOxトラップを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ハニカム状の基材モノリス上の第1層に均一に付着された少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質およびバルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物を備える成分を含むNOxトラップを提供し、前記第1層で均一に付着された成分は、炭化水素および一酸化炭素を酸化させるために下流区域に比べて向上した活性度を有する上流区域と、脱硫過程中に熱を発生させるために前記上流区域に比べて向上した活性度を有する下流区域とを備え、前記下流区域は、希土類酸化物の拡散物を含み、前記希土類酸化物は、前記上流区域に加えられるものよりも大きく前記流区域にginで加えられる。
【0009】
ここで、セリア(または他の成分)のような還元可能な酸化物に関連する用語である「バルク」は、セリアが固体粒子として存在することを意味する。この粒子は、一般的に非常に微細であり、直径約0.5〜15ミクロンの粒子が少なくとも90%である。「バルク」という用語は、セリアが、例えば、セリウム硝酸塩溶液または成分の他の液体分散剤から支持物質に含浸され、乾燥して、か焼され、含浸されたセリウム硝酸塩を耐火物支持体の表面上にセリア粒子で分散させるような方法で、耐火物支持金属上で「分散」する状態と区別するために使われる。結果としてのセリアは、耐火物支持体の表面層内に分散する。バルクセリアは、微細で、固体粒子のセリアを含むため、分散したセリアはバルク形態で存在しない。分散は、ゾル(sol)、すなわち、ナノスケールで微細に分けられたセリアのような粒子の形態であり得る。
【0010】
GB2450578は、2つの個別基材を備えるリーンNOxトラップを開示し、上流基材は、低セリウム酸化物貯蔵成分を含み、下流基材よりも低い白金族金属の充填を有する。しかし、GB2450578のいずれの実施例も、上流および下流基材の間でリーンNOxトラップシステムのセリアの総充填を分割することによる利点については記載されていない。また、リーンNOxトラップの「セリウム」が「バルク」セリア、分散セリアまたは両方を意味するかは明確でない。本発明のNOxトラップにおいて、発明者らは、ハニカム状の基材モノリス上の第1層で均一に付着された「バルク」セリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物の存在がリッチNOx変換を改善させることを見出した。これを除去すると、リッチNOx変換がより低くなって望ましくない。
【0011】
US2004/0082470は、ガソリンエンジンで主に用いられるように設計された2つの区域を有するNOxトラップを開示し、NOxトラップは、酸素貯蔵成分を含まない上流区域と、「少量のジルコニウムとセリウムとの混合酸化物」を有する下流区域とを備える。前記理由により、発明者らは、上流区域におけるセリアのようなOSCの不在は、NOxトラップの全体のNOx還元活性度を低下させることを知るようになった。また、上流区域におけるPGMの充填は、下流区域でより大きい。
【0012】
実施形態において、希土類酸化物分散物は、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ランタン、サマリウムおよびその混合物からなる群より選択された元素の酸化物を含むことができる。好ましい希土類酸化物は、セリウム酸化物および/または、特に好ましくはセリウム酸化物を有するプラセオジム酸化物を含む。希土類酸化物分散物は、例えば、NOxトラップの含浸物(NOxトラップの1種以上の成分が希土類酸化物を支持する)またはゾル(ナノメートルスケールで微細に分離された希土類酸化物の粒子)として存在することができる。
【0013】
発明者らは、セリアのような分散した希土類酸化物の存在が、PtまたはPtPd/CeZrO内でHCとCOの酸化に有害であることに注目した。また、発明者らは、NOx貯蔵を向上させるカギは、排気ガスからのHCおよびCOの除去であることにも注目した。このような観察の結果として、当業者は白金族金属を入口側でより大きい充填で配置することを考慮することができる。しかし、これは、利得が少ないのに対し、費用を増加させる。同様に、全体のNOx貯蔵は触媒量に従属し、白金族金属はNOx貯蔵を向上させるためにNOをNOに酸化させる必要があるため、前記流区域から白金族金属を除去することも全体のNOx貯蔵に有害である。そのため、好ましくは、前記流区域における希土類酸化物分散物の充填がgin−3で0である。しかし、アンダーフロア位置でNOxトラップより前で、隣接結合ディーゼル酸化触媒(以下を参照)を含む排気システムを使用するといったある実施形態において、希土類酸化物は、前記流区域に前記流区域よりも低い充填(例えば、gin−3で前記流区域における希土類酸化物分散物の充填の5〜25%、20%未満または10〜20%のような30%未満)で存在することができる。
【0014】
前記希土類酸化物分散物の全体ではない大部分を前記流区域に位置させることにより、前記流区域の前記炭化水素および一酸化炭素酸化物の活性度は、前記流区域に比べて改善される。また、前記流区域の希土類酸化物分散物は、脱硫過程中に脱硫を向上させるための熱発生活性度を増加させる。また、発明者らは、希土類酸化物が、NOxトラップに存在する硫黄を不安定にし得る水素(例えば、水性ガス転換により)を生産することができ、それにより、脱硫を向上させることもできると判断した。
【0015】
車両で使用するための最も適切な配置(例えば、最大排気ガス温度、排気ガス温度帯域(すなわち、温度範囲)、空間速度、排気システムでの位置(隣接結合またはアンダーフロア位置))により、第1層の長さに応じて、前記上流および下流区域の比率は、20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30、特に好ましくは50:50であり得る。
【0016】
他の実施形態において、前記第1層で均一に付着された成分における前記白金族金属は、白金および/またはパラジウムを含む。白金とパラジウムとの組み合わせは、パラジウムが白金の焼結、表面積および活性度の損失の傾向を低減させるため好ましい。
【0017】
バルクセリアおよびセリウム含有混合酸化物成分は、酸素貯蔵活性度を有する、すなわち、排気ガス環境において排気ガスが理論空然比のラムダセットポイントにリッチな時に酸素を放出し、排気ガスが理論空然比のラムダセットポイントに稀薄な時に排気ガスから出た酸素を吸収する還元可能な酸化物である。バルクセリウム酸化物の熱水(hydrothermal)安定性を改善するために、混合酸化物にセリウムと共に混合するための好ましい成分はジルコニウムであり、セリウムに対して使用されたジルコニウムの比率に応じて、1種以上の希土類元素が含まれてもよい。
【0018】
前記少なくとも1種のNOx貯蔵物質のそれぞれは、アルカリ土類金属とアルカリ金属からなる群より選択されてもよい。適切なアルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、および好ましくはバリウムおよび/またはストロンチウムを有するマグネシウムを含む。アルカリ金属は、カリウム、セシウム、ナトリウム、および好ましくはカリウムおよび/またはセシウムを有するリチウムからなる群より選択されてもよい。
【0019】
NOxトラップの熱水安定性を改善するために、前記第1層の前記均一に付着された成分は、アルミン酸マグネシウムを含むことが好ましい。
【0020】
相対的に高い温度でNOx還元率を改善し、熱水エージング後のNOx還元率を維持するために、好ましくは前記第1層を覆う前記第2層が支持ロジウム成分を含む。前記ロジウム支持体は、アルミナまたはジルコニア、選択的には1種以上の希土類元素でドーピングされたものであり得る。好ましくは、ロジウム用支持体またはロジウム含有ウォッシュコートは、セリアのような還元可能な酸化物を含む。セリアがロジウム支持体内に存在しない場合には、ゾルとしてウォッシュコート内に含まれてもよい。
【0021】
熱管理をより改善するために、下流区域上流区域よりも低い熱質量を有することができるが、例えば、より少ないウォッシュコートの充填が適用可能である。
【0022】
ハニカム状の基材モノリスが、コーディエライトまたは炭化ケイ素のようなセラミック物質、またはFecralloyTMのような金属で製造可能である。配置は、いわゆる、フロースルー構造であることが好ましいが、その内部で複数のチャネルが開放された入口側から開放された出口側に平行に延びる。しかし、ハニカム状の基材モノリスは、いわゆる、ウォールフローフィルタまたはセラミック発泡体のようなフィルタリング基材の形態を有してもよい。
【0023】
他の態様によれば、本発明は、本発明にかかるNOxトラップを含むリーンバーン内燃機関用排気システムを提供し、前記上流区域は、前記下流区域の前で、前記エンジンからの排気ガスを受けるように配置される。本発明にかかる前記NOxトラップは、いわゆる、隣接結合位置、すなわち、触媒活性度の促進のための熱使用を極大化するために、エンジン排気マニホールドの50cm程度以内に位置する時に特に好適である。次善の他の配置においては、NOxトラップが、いわゆる、アンダーフロア、すなわち、車両の下部本体(アンダーフロアのNOxトラップの上流に位置(選択的にエンジンに隣接して結合)するディーゼル酸化触媒を有する)の下に低く位置してもよい。後者の配置では、本発明にかかるいくつかの希土類酸化物が前記上流区域に分散することが好ましい。
【0024】
他の態様によれば、本発明は、リーンバーン内燃機関と、本発明にかかる排気システムとを含む車両を提供するが、前記エンジンは、NOxトラップに貯蔵された硫黄を放出するために、エンジン使用中に燃料/空気比(一般的に、「ラムダ」またはλという)を正常リーン動作(ラムダ<1)モードから欠的に調整して増加するように構成されたエンジン管理手段を含む。車両の前記リーンバーン内燃機関は、ディーゼルエンジンのような圧縮点火エンジンであることが好ましく、このエンジンは、天然ガス、バイオディーゼルまたはディーゼルとバイオディーゼルとのブレンドおよび/またはフィッシャー・トロプシュベースの燃料ブレンドを使用するものであってもよい。
【0025】
他の態様によれば、本発明は、前記NOxトラップを製造する方法を提供するが、この方法は、(a)ハニカム状の基材モノリスを、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質およびバルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物を含む均一なウォッシュコートでコーティングする工程と、(b)前記コーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程と、(c)前記コーティングされた基材モノリスの第2区域を希土類元素の水溶液で含浸するか、前記コーティングされた基材モノリスを希土類元素酸化物のゾルと接触させる工程と、(d)前記工程(c)の前記コーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程とを含む。
【0026】
一実施形態において、さらなる工程が、工程(c)と(d)との間に追加されるが、前記コーティングされた基材モノリスの第1区域が希土類元素の水溶液に含浸されるか、前記コーティングされた基材モノリスの第1区域が希土類元素酸化物のゾルと接触し、いずれの場合にも、前記第1区域における結果としての希土類酸化物の充填は、gin−3で(すなわち、バルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物を除く)、(i)第2区域内の希土類酸化物の充填の30%未満;または(ii)第2区域内の希土類酸化物の充填の70%超過である。
【0027】
他の態様によれば、本発明は、本発明にかかるNOxトラップを製造する方法を提供するが、前記方法は、(a)ハニカム状の基材モノリスの第1区域を第1端から、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質およびバルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物を含むウォッシュコートでコーティングする工程と、(b)前記部分コーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程と、(c)前記部分コーティングされた基材モノリスの第2区域を第2端から、少なくとも1種の白金族金属、少なくとも1種のNOx貯蔵物質、バルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物および希土類元素の水溶液または希土類元素酸化物のゾルを含むウォッシュコートでコーティングする工程と、(d)前記工程(c)のコーティングされた基材モノリスを乾燥させて焼成する工程とを含む。
【0028】
一実施形態において、前記工程(a)の前記ウォッシュコートは、希土類元素の水溶液または希土類元素酸化物のゾルを含み、ある濃度で、前記第1区域における結果としての希土類酸化物の充填は、gin−3で(すなわち、バルクセリアまたはバルクセリウム含有混合酸化物を除く)、(i)第2区域内の希土類酸化物の充填の30%未満;または(ii)第2区域内の希土類酸化物の充填の70%超過である。
【0029】
本発明にかかるNOxトラップ製造方法の実施形態において、さらなる工程として、前記第1層でコーティングされた前記基材モノリスを支持ロジウム成分を含む第2層でコーティングし、最終基材モノリスを乾燥させて焼成する工程がさらに含まれる。
【0030】
前記第1および第2区域は、触媒と他の成分との差分蒸着のために、排気ガス触媒用として知られた技術を利用して形成できるが、その例としては、WO99/47260があり、ここには、(a)密閉手段を支持体の上端に位置させる工程と、(b)予め設定された液体成分の量を前記密閉手段内に投入する工程(工程(a)の次に工程(b)が行われるか、工程(b)の次に工程(a)が行われてもよい)と、(c)圧力または真空を加えて前記液体成分を前記支持体の少なくとも1つの部分内に誘導し、前記支持体内で実質的に前記量全体を維持する工程とを含む。
【0031】
本発明をよりよく理解するために、次の例が説明のために提供され、添付した図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、第1層(下部層)に存在するセリアゾルを有する2、2層のリーンNOxトラップ、1に対する合成触媒活性度テスト装置において、約500℃で脱硫過程の数に対して表示された、繰り返されたSox/deSOxサイクルによるNOx変換率の損失を示す。
図2図2は、セリアゾルを有する場合と、そうでない場合とで、リーンNOxトラップの800℃でエージングされた第1層のCO変換率を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施例
実施例1−リーンNOxトラップの製造
平方インチあたり400セル(cell)のフロースルーコーディエライト基材モノリスが、2gin−3のアルミナ、2gin−3の粒子状セリア、90gft−3のPt、25gft−3のPdおよび800gft−3のBaを含む第1層(下部層)と、希土類元素でドーピングされた0.5gin−3の85重量%のジルコニア、10gft−3のRhおよび400gft−3のセリアゾルを含む第2層とからなる2層のNOxトラップの製造でコーティングされた。第1層は、元の基材(virgin substrate)モノリス上に、WO99/47260に開示された方法を利用してコーティングされ、次いで、第2層が塗布される前に、100℃で通風乾燥機で30分間乾燥し、500℃で2時間焼成され、同様の乾燥および焼成過程が繰り返された。このようなNOxトラップは、LNT1で表示された。
【0034】
LNT2は、400gft−3のセリアゾルが第1層の製造に追加されたことを除けば、同様の過程を用いて製造された。
【0035】
実施例2−合成触媒活性度テスト(SCAT)の繰り返しSox/deSOxテスト
コア(core)がLNT1とLNT2のそれぞれから切開され、各コアは、次のような条件下、合成触媒活性度テスト(SCAT)装置を用いて交互にテストされた。
【0036】
1)350℃の入口温度で300秒のリーン/20秒のリッチの間のサイクル
−クリーンなNOx性能を評価するために硫黄を無くして5サイクル;および
−2g/litreでサンプルに硫酸処理するために硫黄を有して5サイクル
2)500℃で5分間脱硫
50秒のリッチ/10秒のリーンの間のサイクル
3)350℃で300秒のリーン/20秒のリッチ
−脱硫したNOx性能を評価するために硫黄を無くして5サイクル
−2g/lで硫酸処理するために硫黄を有して5サイクル
4)繰り返し
使用されたガス条件を、表1にまとめた。
【表1】
【0037】
繰り返された硫黄/脱硫サイクルの結果とNOx変換に対する効果が図1に示されており、これより、繰り返された脱硫後、LNT1がLNT2よりも大きいNOx変換活性度を維持することが確認された。すなわち、LNT1の第1層の追加的な分散セリアの存在が、繰り返されたSox/deSOxサイクル後のNOx変換率の維持に役立つ。本発明の発明者らは、これより、分散したセリアが脱硫過程中にNOxトラップの脱硫を補助する発熱および/または水素を発生させることにより脱硫を補助すると推測した。
【0038】
実施例3−NOxトラップの第1層のCO酸化活性度
実施例1に記載されているように、乾燥して焼成後、LNT1およびLNT2の第1層だけでコーティングされた基材モノリスは、800℃で5時間、10%のHO、10%のO、平衡Nでエージングされた。基材モノリスのそれぞれは、実験室内の実験台(bench−mounted)1.9リットルのユーロ4ディーゼルエンジンから既存のNOxトラップを除去し、これを、LNT1(第1層)またはLNT2(第1層)基材モノリスに代替することによってテストされた。
【0039】
1200rpmのエンジン速度が選択され、エンジントルクは、望ましい触媒入口温度を得るために変更された。評価は、350℃の触媒入口温度から出発した。エンジントルクは、一酸化炭素酸化の「ライトアウト(light−out)」を達成するのに十分な150℃未満の温度に低下するように調整された。実際、この過程は、10分以上の間、エンジントルクを100Nmから5Nmまで低減させることによって行われた。「ライトアウト」後、エンジントルクは、一酸化炭素酸化の「ライトオフ(light−off)」を達成するために、350℃で約7℃/minの増加率で再度増加した。排気ガス組成、質量流量、温度などは、車両動力計(dynamometer)を用いてすべてモニタリングされた。
【0040】
このようなテストの手順に対するCO変換率(%)が図2に示されており、これより、150℃未満でライトアウトされた後、テストが約165℃以上に上昇するにつれて触媒のCO酸化活性度が再度「ライトオフ」され、LNT1の第1層のCO変換活性度が全体のテストにわたって80%以下に低下しないことが確認された。しかし、LNT1の他のウォッシュコート成分に追加し、セリアゾルを含むLNT2の第1層のCO変換活性度が150℃未満でライトアウトされた後、触媒は、180℃までLNT1の第1層と類似の程度で再度ライトオフされず、CO変換効率は50%以下に低下する。
【0041】
実施例1、2および3の結果は、Pt、Pdおよびアルミナとバルクセリアに支持されるバリウムNOx貯蔵成分を含むリーンNOxトラップに対し、分散したセリアの存在がCO変換活性度には有害に作用し、脱硫に有用に作用することを示す。NOxトラップを収容する基材モノリスの後方で分散セリアを「区域化」することにより、機能的に組み合わされるという利点を得ることができる。
【0042】
疑う余地を無くすため、ここで参照されたすべての特許文献の内容全体は、ここに組み込まれて参照される。
図1
図2