特許第5735989号(P5735989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5735989ポリイミド樹脂組成物およびそれを含む積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735989
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂組成物およびそれを含む積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20150528BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20150528BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150528BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20150528BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20150528BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20150528BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20150528BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20150528BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20150528BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 6/087 20060101ALI20150528BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08L79/08 Z
   C08K3/00
   B32B15/08 J
   B32B18/00 C
   B32B27/34
   C09J179/08 Z
   C09J11/04
   H01M4/62 Z
   H01M2/16 P
   A61K6/087
   H05K9/00 X
【請求項の数】24
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-553106(P2012-553106)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2012004406
(87)【国際公開番号】WO2013008437
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2012年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2011-151919(P2011-151919)
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-10167(P2012-10167)
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-101504(P2012-101504)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健二
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】今川 清水
(72)【発明者】
【氏名】木場 繁夫
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122056(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143667(WO,A1)
【文献】 特開2011−225675(JP,A)
【文献】 特開2010−006947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合ユニットを含むポリイミドであって、
前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)を含むか、または前記ポリイミドを構成するジアミンが、下記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)を含み、
前記ポリイミドを構成するジアミンが、下記一般式(3)または(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)を含み、
前記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)と前記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)との合計含有量が、前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物とジアミンの合計に対して5〜49モル%であり、かつ
アミン当量が4000〜20000であるポリイミド、
を含む、ポリイミド樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(3)中、Rは、C、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖を有する脂肪族鎖であり、前記主鎖を構成する原子数の合計が7〜500であり;
前記脂肪族鎖は、C、N、H、Oのいずれか一以上の原子からなる側鎖をさらに有してもよく、前記側鎖を構成する原子数の合計が10以下である)
【化4】
(式(4)中、Rは、C、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖を有する脂肪族鎖であり、前記主鎖を構成する原子数の合計が5〜500であり;
前記脂肪族鎖は、C、N、H、Oのいずれか一以上の原子からなる側鎖をさらに有してもよく、前記側鎖を構成する原子数の合計が10以下である)
【請求項2】
前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物の合計モル数が、前記ポリイミドを構成するジアミンの合計モル数に対して0.95〜0.999である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】
溶媒をさらに含み、前記ポリイミドが前記溶媒に溶解している、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(3)のRおよび前記一般式(4)のRは、
アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を含む主鎖を有する脂肪族鎖であって、
前記アルキレンオキシ基のアルキレン部分、および前記ポリアルキレンオキシ基を構成するアルキレンオキシユニットのアルキレン部分の炭素数が1〜10である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(3)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、下記一般式(3−1)で表される化合物であり、
前記一般式(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、下記一般式(4−1)で表される化合物である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【化5】
(式(3−1)中、oは、1〜50の整数を表す)
【化6】
(式(4−1)中、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表す;ただし、p+q+rは1以上である)
【請求項6】
前記一般式(3)または(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、前記ポリイミドを構成するジアミンの合計に対して10モル%以上45%以下である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)は、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる一以上であり、
前記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)は、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノンおよび4,4’−ジアミノベンゾフェノンからなる群より選ばれる一以上である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリイミドのガラス転移温度が120℃以上260℃未満である、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項9】
無機フィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機フィラーが、放熱性フィラーであり、
ポリイミド樹脂組成物の全体積に対する、前記放熱性フィラーの体積が20〜60体積%である、請求項9に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機フィラーが、導電性フィラー及び/または磁性フィラーであり、
ポリイミド樹脂組成物の全体積に対する、前記導電性フィラー及び前記磁性フィラーの合計体積が、20〜90体積%である、請求項9に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項12】
エポキシ化合物、アクリレート化合物、イソシアネート化合物、マレイミド化合物およびナジイミド化合物からなる群より選ばれる一以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項13】
基材と、前記基材上に配置される請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層と、を有する積層体。
【請求項14】
前記基材は、金属、セラミックまたは樹脂である、請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項13に記載の積層体を有する、電子回路基板部材。
【請求項16】
請求項13に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【請求項17】
金属箔と、
前記金属箔上に配置され、活物質と請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物とを含む層と
を有する、リチウムイオン電池用電極。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、リチウムイオン電池用セパレーター。
【請求項19】
請求項10に記載のポリイミド樹脂組成物からなる、放熱基材。
【請求項20】
請求項11に記載のポリイミド樹脂組成物からなる、電磁波シールド基材。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、サージ部品用接着剤。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、サージ部品用封止材。
【請求項23】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、半導体製造装置接着剤。
【請求項24】
請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、歯科材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂組成物およびそれを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板や半導体デバイスなどの接着剤は、一般的に、エポキシ樹脂である。しかしながら、エポキシ樹脂は、耐熱性や柔軟性が十分でなく、熱硬化反応に長時間を要していた。
【0003】
一方、熱可塑性ポリイミド樹脂は、高い耐熱性と柔軟性とを有するだけでなく、熱硬化反応も比較的短時間であることが知られている。しかしながら、熱可塑性ポリイミド樹脂は、通常、ポリアミック酸ワニスの塗膜を300℃以上の高温でイミド化するステップを経て得られるため、適用可能なプロセスや部材が制限されるという問題があった。
【0004】
高温でイミド化することなく熱可塑性ポリイミド樹脂を得る方法には、ポリイミドを溶媒に溶解させたワニス(溶剤可溶型のポリイミドワニス)の塗膜を乾燥させる方法がある(例えば特許文献1および2)。特許文献1には、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、特定のシロキサン化合物を含むジアミン成分とを反応させて得られる溶剤可溶型ポリイミドが開示されている。特許文献2には、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を含む酸二無水物成分と、特定のスルホン酸骨格を有する化合物を含むジアミン成分とを反応させて得られる溶剤可溶型ポリイミドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−255780号公報
【特許文献2】特開2001−310336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のポリイミドから得られるフィルムは、柔軟性が十分ではなかった。また、特許文献2のポリイミドはスルホン酸骨格を有するジアミンを含むことから、得られるフィルムは比較的高い耐熱性を有するものの、柔軟性が低かった。そのため、これらのポリイミドを含む樹脂組成物は、フレキシビリティが要求される用途には適していなかった。
【0007】
通常、溶剤に可溶であり、かつフィルムの柔軟性が高いポリイミドを得るためには、ポリイミドを構成するイミド環同士の間に長鎖アルキレンオキシ基などを導入して、イミド環同士のパッキングを抑制することが有効である。しかしながら、長鎖アルキレンオキシ基などが導入されたポリイミドから得られるフィルムは、高温での粘弾性が低く、耐熱性が低いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、溶剤に可溶であり、かつ得られるフィルムが高温下で高い粘弾性と柔軟性とを有するポリイミド、を含む樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の通り、アルキレンオキシ鎖を有するポリイミドは、溶剤に可溶であり、得られるフィルムの柔軟性も高いが、耐熱性が十分でない。これに対して、当該ポリイミドに、ベンゾフェノン骨格を導入し、かつ分子末端をアミノ基とすることで、ベンゾフェノン骨格に含まれるカルボニル基と分子末端のアミノ基とを水素結合させることができ、耐熱性を高めることができる。それにより、高い耐熱性と、柔軟性とを有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0010】
即ち、本発明の第一は、以下のポリイミド樹脂組成物に関する。
[1]テトラカルボン酸二無水物とジアミンの重縮合ユニットを含むポリイミドであって、前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)を含むか、または前記ポリイミドを構成するジアミンが、下記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)を含み;前記ポリイミドを構成するジアミンが、下記一般式(3)または(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)を含み;前記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)と前記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)との合計含有量が、前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物とジアミンの合計に対して5〜49モル%であり、かつアミン当量が4000〜20000であるポリイミド、を含む、ポリイミド樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
(式(3)中、Rは、C、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖を有する脂肪族鎖であり、前記主鎖を構成する原子数の合計が7〜500であり;
前記脂肪族鎖は、C、N、H、Oのいずれか一以上の原子からなる側鎖をさらに有してもよく、前記側鎖を構成する原子数の合計が10以下である)
【化4】
(式(4)中、Rは、C、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖を有する脂肪族鎖であり、前記主鎖を構成する原子数の合計が5〜500であり;
前記脂肪族鎖は、C、N、H、Oのいずれか一以上の原子からなる側鎖をさらに有してもよく、前記側鎖を構成する原子数の合計が10以下である)
【0011】
[2]前記ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物の合計モル数が、前記ポリイミドを構成するジアミンの合計モル数に対して0.95〜0.999である、[1]に記載のポリイミド樹脂組成物。
[3]溶媒をさらに含み、前記ポリイミドが前記溶媒に溶解している、[1]または[2]に記載のポリイミド樹脂組成物。
[4]前記一般式(3)のRおよび前記一般式(4)のRは、アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を含む主鎖を有する脂肪族鎖であって、前記アルキレンオキシ基のアルキレン部分、および前記ポリアルキレンオキシ基を構成するアルキレンオキシユニットのアルキレン部分の炭素数が1〜10である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[5]前記一般式(3)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、下記一般式(3−1)で表される化合物であり、前記一般式(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、下記一般式(4−1)で表される化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【化5】
(式(3−1)中、oは、1〜50の整数を表す)
【化6】
(式(4−1)中、p、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を表す;ただし、p+q+rは1以上である)
【0012】
[6]前記一般式(3)または(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)が、前記ポリイミドを構成するジアミンの合計に対して10モル%以上45%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[7]前記一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)は、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物および2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる一以上であり、前記一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)は、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノンおよび4,4’−ジアミノベンゾフェノンからなる群より選ばれる一以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[8]前記ポリイミドのガラス転移温度が120℃以上260℃未満である、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
[9]無機フィラーをさらに含む、[1]〜[8]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物。
【0013】
[10]前記無機フィラーが、放熱性フィラーであり、ポリイミド樹脂組成物の全体積に対する、前記放熱性フィラーの体積が20〜60体積%である、[9]に記載のポリイミド樹脂組成物。
[11]前記無機フィラーが、導電性フィラー及び/または磁性フィラーであり、ポリイミド樹脂組成物の全体積に対する、前記導電性フィラー及び前記磁性フィラーの合計体積が、20〜90体積%である、[9]または[10]に記載のポリイミド樹脂組成物。
[12]エポキシ化合物、アクリレート化合物、イソシアネート化合物、マレイミド化合物およびナジイミド化合物からなる群より選ばれる一以上の化合物をさらに含む、請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【0014】
[13]基材と、前記基材上に配置される[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層と、を有する積層体。
[14]前記基材は、金属、セラミックまたは樹脂である、[13]に記載の積層体。
[15]前記[13]または[14]に記載の積層体を有する、電子回路基板部材。
[16]前記[13]または[14]に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【0015】
[17]金属箔と、前記金属箔上に配置され、活物質と[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物とを含む層とを有する、リチウムイオン電池用電極。
[18]前記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物を含む、リチウムイオン電池用セパレーター。
[19]前記[10]に記載のポリイミド樹脂組成物からなる、放熱基材。
[20]前記[11]に記載のポリイミド樹脂組成物からなる、電磁波シールド基材。
[21]前記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物を含む、サージ部品用接着剤。
[22]前記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物を含む、サージ部品用封止材。
[23]前記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリイミド樹脂組成物を含む、半導体製造装置接着剤。
[24]前記[1]〜[12]のいずれか一項に記載のポリイミド樹脂組成物を含む、歯科材料。
【0016】
[25]極性溶媒に溶解可能なポリイミドを含むポリイミド樹脂組成物であって、
前記ポリイミド樹脂組成物からなる厚さ50μmのポリイミドフィルムは、下記条件a)及びb)を満たす、ポリイミド樹脂組成物。
a)180℃における、周波数1Hzでの貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上である
b)23℃における、速度50mm/分での引張破断時の伸び率が50%以上である
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、溶剤への溶解性に優れ、高温下での高い粘弾性と高い柔軟性とを有する。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物は、高い耐熱性と、フレキシビリティとが要求される各種分野(例えば、電子回路基板部材、半導体デバイス、リチウムイオン電池部材および太陽電池部材など)の接着剤などとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの一例を示す模式図である。
図2】チップ・オン・フィルム(COF)パッケージの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.ポリイミド樹脂組成物
本発明のポリイミド樹脂組成物は、特定のポリイミドを含み、必要に応じて無機フィラーなどの他の任意成分をさらに含んでもよい。
【0020】
ポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合ユニットを含み、1)テトラカルボン酸二無水物がベンゾフェノン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物(α1)を含むか;ジアミンがベンゾフェノン骨格を有するジアミン(β1)を含むか;あるいはテトラカルボン酸二無水物がベンゾフェノン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物(α1)を含み、かつジアミンがベンゾフェノン骨格を有するジアミン(β1)を含むこと、2)ジアミンが、アルキレンオキシ基を含む脂肪族ジアミン(β2)を含むこと、を特徴の一つとする。
【0021】
ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物は、ベンゾフェノン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物(α1)を含みうる。ベンゾフェノン骨格を有するテトラカルボン酸二無水物(α1)は、好ましくは一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物である。
【化7】
【0022】
一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物は、ベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)以外の他のテトラカルボン酸二無水物(α2)をさらに含んでよい。他のテトラカルボン酸二無水物(α2)は、特に限定されないが、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、柔軟性の観点からは脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0024】
他のテトラカルボン酸二無水物(α2)でありうる芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,1',2,2'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2',3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,2',3-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-イソフタロイルジフタリックアンハイドライドジアゾジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、ジアゾジフェニルメタン-2,2',3,3'-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-チオキサントンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラキノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-キサントンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0025】
他のテトラカルボン酸二無水物(α2)でありうる脂肪族テトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸-6-酢酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0026】
ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、芳香環上の水素原子の一部もしくは全ては、フルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基などから選ばれる基で置換されていてもよい。また、テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、目的に応じて、エチニル基、ベンゾシクロブテン-4'-イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、ニトリロ基、及びイソプロペニル基などから選ばれる架橋点となる基を有していてもよい。これらは、一種類で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
他のテトラカルボン酸二無水物(α2)は、柔軟性を大幅に損なうことなく、高い耐熱性を得るためには、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、より好ましくは3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,1',2'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2',3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、または1,2,2',3-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0028】
ポリイミドを構成するジアミンは、ベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)を含みうる。ベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)は、好ましくは一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミンである。
【化8】
【0029】
一般式(2)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミンの例には、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノンおよび4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどが含まれる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ポリイミドを構成するジアミンは、脂肪族ジアミン(β2)を含む。脂肪族ジアミン(β2)は、好ましくは一般式(3)または一般式(4)で表される脂肪族ジアミンである。ポリイミド樹脂組成物には、一般式(3)または一般式(4)で表される脂肪族ジアミンのうち、いずれか一方のみが含まれてもよく、また両方が含まれてもよい。
【化9】
【化10】
【0031】
式(3)のRおよび式(4)のRは、C、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖を有する脂肪族鎖、好ましくは一以上のCを含む主鎖を有する脂肪族鎖を示す。主鎖を構成する原子数の合計は、好ましくは5〜500、より好ましくは10〜500、さらに好ましくは21〜300、より更に好ましくは50〜300である。一般式(3)のRにおける主鎖とは、分子末端の2つのフェニル基を連結する脂肪族鎖のうち、側鎖を構成する原子以外の原子からなる鎖であり;一般式(4)のRにおける主鎖とは、分子末端の2つのアミノ基を連結する脂肪族鎖のうち、側鎖を構成する原子以外の原子からなる鎖である。
【0032】
脂肪族鎖を構成するC、N、Oのいずれか一以上の原子からなる主鎖の例には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアルキレンポリアミンに由来する構造を有する主鎖;アルキレン基を含む主鎖;ポリアルキレングリコール構造を有する主鎖;アルキルエーテル構造を有する主鎖;ポリアルキレンカーボネート構造を有する主鎖;アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を含む主鎖などが含まれ、好ましくはアルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を含む主鎖である。
【0033】
ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシを繰り返し単位として含む2価の連結基であり、エチレンオキシユニットを繰り返し単位とする「−(CHCHO)−」や、プロピレンオキシユニットを繰り返し単位とする「−(CH−CH(−CH)O)−」(nとmは繰り返し数)などが例示できる。ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシユニットの繰り返し数は、2〜50であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜15であるとより更に好ましい。ポリアルキレンオキシ基には、複数種のアルキレンオキシユニットが含まれていてもよい。
【0034】
アルキレンオキシ基のアルキレン部分およびポリアルキレンオキシ基を構成するアルキレンオキシユニットのアルキレン部分の炭素数は、1〜10であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。アルキレンオキシ基を構成するアルキレン基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基などが含まれる。アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基を構成するアルキレン基として、ブチレン基を有すると、本発明のポリイミド樹脂組成物から得られるポリイミドフィルムが優れた破断強度を示すため好ましい。
【0035】
またはRの主鎖において、アルキレンオキシ基またはポリアルキレンオキシ基と、末端アミノ基とを連結する基は、特に制限されず、アルキレン基、アリーレン基、アルキレンカルボニルオキシ基、アリーレンカルボニルオキシ基などであってよく、末端アミノ基の反応性を高める観点からは、アルキレン基が好ましい。
【0036】
およびRが示す脂肪族鎖は、C、N、H、Oのいずれか一以上の原子からなる側鎖をさらに有してもよい。RおよびRにおける側鎖とは、主鎖を構成する原子に連結する1価の基である。各側鎖を構成する原子数の合計は10以下であることが好ましい。側鎖の例には、メチル基などのアルキル基だけでなく、水素原子なども含まれる。
【0037】
このように、一般式(3)または一般式(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)は、長い脂肪族鎖を含むため、得られるポリイミドは高い柔軟性を有する。
【0038】
一般式(3)で表される脂肪族ジアミンは、好ましくは一般式(3−1)で表される化合物である。一般式(4)で表される脂肪族ジアミンは、好ましくは一般式(4−1)で表される化合物である。
【化11】
【化12】
【0039】
式(3−1)のoは、1〜50の整数を示し、好ましくは10〜20の整数である。式(4−1)のp、qおよびrは、それぞれ独立に0〜10の整数を示す。ただし、p+q+rは1以上であり、好ましくは5〜20である。
【0040】
一般式(3−1)または一般式(4−1)で表される脂肪族ジアミンは、長鎖アルキレンオキシ基を含むため、得られるポリイミドは高い柔軟性を有する。
【0041】
ポリイミドを構成するジアミンは、ベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)や脂肪族ジアミン(β2)以外の他のジアミン(β3)をさらに含んでよい。他のジアミン(β3)は、特に制限されず、芳香族ジアミン(β1)以外の芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン(β2)以外の脂肪族ジアミン、または脂環族ジアミンであり、耐熱性を高める観点からは、芳香族ジアミン(β1)以外の芳香族ジアミンであることが好ましい。
【0042】
芳香族ジアミン(β1)以外の芳香族ジアミンの例には、
m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジメチルベンジジン、3,4'−ジメチルベンジジン、4,4'−ジメチルベンジジン、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−エチルベンゼン、1,3−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)−5−sec−ブチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,3−ビス(4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(2−アミノ−6−エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)−4−メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)−4−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,4−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−3−n−ブチルベンゼン、1,2−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,4’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,3’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼンなどが含まれる。なかでも、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,4’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,3’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3'−ジメチルベンジジン、3,4'−ジメチルベンジジン、4,4'−ジメチルベンジジンが、柔軟性を著しく低下させることなく、耐熱性を高めることができるため、好ましい。
【0043】
脂肪族ジアミンの例には、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンなどが含まれ、なかでもエチレンジアミンが好ましい。
【0044】
脂環族ジアミンの例には、シクロブタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン〔1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを除くビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン〔またはメチレンビス(シクロヘキシルアミン)〕、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデンなどが含まれる。なかでも、ノルボルナンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミンが、柔軟性を著しく低下させることなく、耐熱性を高めることができるため、好ましい。
【0045】
ベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)と、ベンゾフェノン骨格を有する芳香族ジアミン(β1)との合計は、ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの合計に対して5〜49モル%であることが好ましく、9〜30モル%であることがより好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)と芳香族ジアミン(β1)との合計が5モル%未満であると、ベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基が少ない。そのため、後述するように、一の分子に含まれるベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基と、他の分子の末端アミノ基とを十分に水素結合させることができない;または同一分子内に含まれるベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基と末端アミノ基とを十分に水素結合させることができないため、耐熱性が得られにくい。
【0046】
一般式(3)または(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)の量(前記一般式(3)または(4)で表されるジアミンの合計量)は、ポリイミドに高い柔軟性を付与するために、ポリイミドを構成するジアミンの合計に対して10モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることがより好ましい。一方、ポリイミドの耐熱性を大幅に低下させないためには、脂肪族ジアミン(β2)は、ポリイミドを構成するジアミンの合計に対して45モル%以下であることが好ましい。
【0047】
ポリイミドの分子末端をアミノ基とするためには、反応させるジアミン成分(bモル)を、テトラカルボン酸二無水物成分(aモル)よりも多くすればよい。具体的には、ポリイミドを構成するテトラカルボン酸二無水物(aモル)とジアミン(bモル)のモル比は、a/b=0.8以上1.0未満であることが好ましく、0.95〜0.999であることがより好ましい。a/bが1.0以上であると、分子末端をアミノ基とすることができない;または同一分子内に含まれるベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基と末端アミノ基とを十分に水素結合させることができないため、耐熱性が得られにくい。
【0048】
ポリイミドは、ランダム重合体であっても、ブロック重合体であってもよい。
【0049】
ポリイミドのアミン当量は、4000〜20000であることが好ましく、4500〜18000であることがより好ましい。ポリイミドのアミン当量は、「ポリイミドの数平均分子量/1分子中に含まれるアミノ基の数」として定義される。1分子中に含まれるアミノ基には、末端アミノ基はもちろん、それ以外のアミノ基なども含まれる。アミン当量が上記範囲にあるポリイミドは、ポリイミド全体における末端アミノ基の存在割合が高いため、ベンゾフェノン骨格に含まれるカルボニル基との水素結合を多く生じさせることができ、ポリイミドの耐熱性が高められる。
【0050】
ポリイミドの数平均分子量は、6.0×10〜1.0×10であることが好ましく、8.0×10〜4.0×10であることがより好ましい。ポリイミドの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。
【0051】
前述の通り、ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)または芳香族ジアミン(β1)由来のベンゾフェノン骨格を含み、かつ分子末端がアミノ基である。そのため、一のポリイミド分子に含まれるベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基と、他のポリイミド分子の末端アミノ基とが水素結合するため、高い耐熱性が得られる。また、ポリイミドが、脂肪族ジアミン(β2)由来の長鎖アルキレンオキシ基をさらに含むため、溶剤に対する溶解性が高く、得られるポリイミドフィルムは高い柔軟性を有する。
【0052】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて、前述のポリイミド以外の他の樹脂、フィラー、および表面改質剤などをさらに含んでいてもよい。
【0053】
他の樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のエポキシ化合物;カルボキシエチルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレートおよび脂肪族エポキシアクリレート等のアクリレート化合物;メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)およびキシレンジイソシアネート(XDI)等のイソシアネート化合物;4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルオキシビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,4−トリレンビスマレイミド、2,6−トリレンビスマレイミド、エチレンビスマレイミド、ヘキサメチレンビスマレイミド、4,4’-(2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)イソプロピリデン)ビスマレイミド、4,4’−(2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン)マレイミド、4,4’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)メタン)マレイミド、4,4’−ビス(3,5−ジエチルフェニル)メタン)ビスマレイミド、4,4’−(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン)ビスマレイミド、4,4’−ビス(3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン)マレイミド、4,4’−ジシクロヘキシルメタン)ビスマレイミド、p−キシリレンビスマレイミド、m−キシリレンビスマレイミド、1,3−ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、1,4−ジメチレンシクロヘキサンマレイミド及びアミノフェノキシベンゼン−ビスマレイミド(APB−BMI)等のマレイミド化合物;およびアルケニル置換ナジイミド等のナジイミド化合物等が含まれる。例えば、ポリイミド樹脂組成物に感光性を付与したい場合は、ポリイミド樹脂組成物に、アクリレート化合物等の光硬化性樹脂や光硬化剤などを含有させればよい。
【0054】
ポリイミド樹脂組成物には、難燃剤が含有されていてもよい。難燃剤は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、リン系難燃剤を使用することができる。難燃剤は、1種類で用いてもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。ハロゲン系難燃剤としては、塩素を含む有機化合物と臭素を含む化合物が挙げられる。具体的には、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロデカンテトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。無機系難燃剤としては、アンチモン化合物と金属水酸化物などが挙げられる。アンチモン化合物としては三酸化アンチモンと五酸化アンチモンが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。リン系難燃剤としては、ホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステルなどが挙げられる。難燃剤の添加量は、特に限定されず、用いる難燃剤の種類に応じて適宜変更できる。一般的には、ポリイミド樹脂100質量部に対して5質量部から50質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0055】
フィラーは、ポリイミド樹脂組成物の耐熱性や熱伝導性を高めるためには、無機フィラーであることが好ましい。無機フィラーは、例えば放熱性フィラー、導電性フィラー、または磁性フィラー等であり得る。放熱性フィラーは、電気絶縁性と高放熱性を有する材質で構成されたものとできる。放熱性フィラーの例には、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンカーバイド、ダイヤモンド、ハイドロキシアパタイト、およびチタン酸バリウムなどが含まれ、好ましくは窒化ホウ素などである。ポリイミド樹脂組成物全体積に対する放熱性フィラーの含有量は、20〜60体積%が好ましい。上限は50体積%とすることがより好ましい。放熱性フィラーの体積を上記範囲とすると、放熱性に優れたポリイミド樹脂組成物となる。
【0056】
また、導電性フィラーは、導電性を有する材質で構成されたものとできる。導電性フィラーの例には、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆されたフィラー、カーボン粉末、黒鉛、炭素繊維、カーボンフレーク、鱗片状カーボン等が含まれる。
磁性フィラーは、磁性を有する材質で構成されたものとできる。磁性フィラーの例には、センダスト、パーマロイ、アモルファス合金、ステンレス鋼、MnZnフェライト、NiZnフェライト等が含まれる。ポリイミド樹脂組成物全体積に対する、導電性フィラー及び磁性フィラーの含有量の合計体積は、20〜90体積%が好ましく、より好ましくは30〜80体積%である。導電性フィラー及び磁性フィラーの合計体積を上記範囲とすると、導電性等に優れたポリイミド樹脂組成物となる。
【0057】
表面改質剤の例には、シランカップリング剤が含まれる。表面改質剤は、フィラーの表面を処理するために添加してもよい。これにより、ポリイミドとの相溶性を高めることができ、フィラーの凝集や分散状態を制御することができる。
【0058】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、ワニス状であっても、フィルム状であってもよい。
【0059】
ポリイミド樹脂組成物がワニス状である場合、ポリイミド樹脂組成物は、必要に応じて溶媒をさらに含んでもよい。溶媒の例には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼンなどの他、これらの2種以上の混合溶媒、あるいはこれらの溶媒とベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリル、ジオキサン、シクロヘキサンなどとの混合溶媒などが含まれる。ポリイミドワニスにおける樹脂固形分の濃度は、塗工性を高める観点などから、5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがより好ましい。
【0060】
20重量%のポリイミドを、NMPとトリメチルベンゼンの混合溶媒に分散させて得られるポリイミド溶液の、E型粘度計により25℃で測定される粘度が、5.0×10〜1.0×10mPa・sであることが塗工性の観点から好ましく、1.0×10〜5.0×10mPa・sであることがより好ましい。
【0061】
ポリイミドワニスは、溶媒中に酸無水物成分とジアミン成分とを配合して、これらを脱水反応させてアミド酸を得た後、さらにイミド化して得ることができる。配合する酸無水物成分とジアミン成分は、前述した各成分とすればよい。
【0062】
前述のポリイミドは、極性溶媒に溶解可能である。したがって、本発明のポリイミド樹脂組成物を、前述の溶媒にポリイミドが溶解したポリイミドワニスとすることができる。そして、本発明のポリイミド樹脂組成物を、基材上に塗布した後、乾燥してポリイミド層を形成することができる。このように、本発明のポリイミド樹脂組成物の塗膜を高温でイミド化するステップが不要となるため、耐熱性の低い基材上にもポリイミド層を塗布形成することができる。
【0063】
ポリイミドが「極性溶媒に溶解可能」とは、溶媒がN−メチル−2−ピロリドンであり、かつ溶質がポリイミドである溶液において、ポリイミドの濃度を5質量%としたときに、ポリイミドが析出したり、ポリイミドがゲル化しないことをいう。ポリイミドは、前記溶液に対するポリイミドの濃度を50質量%としたときにも、析出したりゲル化しないことが好ましい。ポリイミドの析出及びゲル化は、目視で確認する。
【0064】
ポリイミド樹脂組成物がフィルム状である場合、フィルムの厚さは、例えば2〜200μmとしうる。
【0065】
ポリイミド樹脂組成物からなるフィルムのガラス転移温度は、120℃以上260℃未満であることが好ましく、130〜210℃であることがより好ましい。ポリイミド樹脂組成物のガラス転移温度が260℃以上であると、例えばポリイミド樹脂組成物をフィルム状接着剤とした場合に、低温で接着(熱圧着)させにくい。
【0066】
ポリイミド樹脂組成物からなるフィルムのガラス転移温度は、以下の方法で測定することができる。即ち、厚さ50μmのポリイミドからなるフィルムを準備する。このフィルムの固体粘弾性の温度分散測定を、引張モードで測定周波数1Hzの条件で行い、貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”を測定する。そして、得られた損失正接tanδ=E”/E’のピーク値を「ガラス転移温度」とする。
【0067】
ポリイミド樹脂組成物からなるフィルムの、(ガラス転移温度+30℃)での貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、1.0×10Pa以上であることがより好ましい。貯蔵弾性率は、前述のガラス転移温度の測定で得られた固体粘弾性のプロファイルから、ガラス転移温度+30℃における貯蔵弾性率を特定することで、求められる。
また、ポリイミド樹脂組成物からなるフィルムの180℃での貯蔵弾性率E’は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、1.0×10Pa以上であることがより好ましい。180℃の貯蔵弾性率E’も、前述のガラス転移温度の測定で得られた固体粘弾性のプロファイルから求められる。
【0068】
ポリイミド樹脂組成物からなる厚さ50μmのフィルムの23℃における引張破断時の伸び率は、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂組成物は、フレキシビリティが要求される用途に適している。フィルムの引張破断時の伸び率は、幅10mm、長さ140mmにカットしたポリイミド樹脂組成物からなるフィルムを、テンシロンにて長さ方向に、23℃において、速度50mm/分で引っ張ったときの、(破断時のサンプルフィルムの長さ−サンプルフィルムの元の長さ)/(サンプルフィルムの元の長さ)として表される。
【0069】
本発明のポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミドは、前述の通り、芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)または芳香族ジアミン(β1)由来のベンゾフェノン骨格を含み、かつ分子末端がアミノ基を含む。そのため、一のポリイミド分子に含まれるベンゾフェノン骨格由来のカルボニル基と、他のポリイミド分子の末端アミノ基とが水素結合するため、得られるフィルムは高い耐熱性を有する。また、本発明のポリイミド樹脂組成物に含まれるポリイミドは、脂肪族ジアミン(β2)由来の長鎖アルキレンオキシ基をさらに含む。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物から得られるポリイミド層またはポリイミドフィルムは、高い耐熱性を有しつつ、高い柔軟性を有する。
【0070】
2.ポリイミド樹脂組成物の用途
本発明のポリイミド樹脂組成物から得られるフィルムは、高い耐熱性と、高い柔軟性とを有する。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物は、特に耐熱性と柔軟性が要求される用途;例えば電子回路基板部材、半導体デバイス、リチウムイオン電池部材、太陽電池部材、燃料電池部材、モーター巻線、エンジン周辺部材、塗料、光学部品、放熱基材および電磁波シールド基材、サージ部品などにおける接着剤や封止材、絶縁材料、基板材料、または保護材料としうる。
【0071】
即ち、基材と、その上に配置される本発明のポリイミド樹脂組成物を含む樹脂層と、を有する積層体としうる。基材は、用途にもよるが、シリコン、セラミックスまたは金属などで構成されうる。金属の例には、シリコン、銅、アルミ、SUS、鉄、マグネシウム、ニッケル、およびアルミナなどが含まれる。樹脂の例には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、PET樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが含まれる。
【0072】
前述の積層体は、基材上に、本発明のポリイミド樹脂組成物を塗布した後、乾燥させて、ポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層を形成するステップを経て製造されてもよいし;基材と、本発明のポリイミド樹脂組成物からなるフィルムとを熱圧着させて、ポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層を形成するステップを経て製造されてもよい。本発明のポリイミド樹脂組成物を塗布および乾燥してポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層を形成する場合、塗膜の乾燥温度は250℃以下であることが好ましい。
【0073】
電子回路基板部材について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、回路基板;特にフレキシブル回路基板における絶縁性基板または接着材としうる。例えば、フレキシブル回路基板は、金属箔(基材)と、その上に配置された、本発明のポリイミド樹脂組成物からなる絶縁層とを有しうる。また、フレキシブル回路基板は、絶縁樹脂フィルム(基材)と、本発明のポリイミド樹脂組成物からなる接着層と、金属箔とを有しうる。
【0074】
半導体デバイスについて
本発明のポリイミド樹脂組成物は、半導体チップ同士の接着や、半導体チップと基板との接着を行う接着材、半導体チップの回路を保護する保護材、半導体チップを埋め込む埋め込み材(封止材)などとしうる。本発明のポリイミド樹脂組成物が無機フィラーをさらに含む場合、本発明のポリイミド樹脂組成物は、放熱性の高い接着材としうる。
【0075】
即ち、本発明の半導体デバイスは、半導体チップ(基材)と、その少なくとも一方の面に配置された、本発明のポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層とを有する。半導体チップは、ダイオード、トランジスタおよび集積回路(IC)などが含まれ、パワー素子等も含まれる。ポリイミド樹脂組成物からなる樹脂層は、半導体チップの端子が形成される面(端子形成面)に配置されても、端子形成面とは異なる面に配置されてもよい。
【0076】
ポリイミド樹脂組成物からなる層の厚みは、例えばポリイミド樹脂組成物を接着層とする場合は、1〜100μm程度であることが好ましい。ポリイミド樹脂組成物層を回路保護層とする場合は、2〜200μm程度であることが好ましい。
【0077】
本発明のポリイミド樹脂組成物を、半導体チップを埋め込む埋め込み材とした例を以下に示す。図1は、ボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの一例を示す模式図である。図1に示されるように、BGAパッケージ10は、基板12と、その他方の面上に配置された半導体チップ14と、を有する。そして、半導体チップ14(基材)の上面は、シール層16によって封止されている。シール層16を、本発明のポリイミド樹脂組成物とすることができる。
【0078】
本発明のポリイミド樹脂組成物を、半導体チップと基板との隙間を埋め込む埋め込み材とした例を以下に示す。図2は、チップ・オン・フィルム(COF)パッケージの一例を示す模式図である。図2に示されるように、COFパッケージ20は、フィルム基板22と、その一方の面上にバンプを介して配置された半導体チップ24とを有する。そして、半導体チップ24とフィルム基板22(基材)との間隙は、アンダーフィル層26によって封止されている。アンダーフィル層26を、本発明のポリイミド樹脂組成物とすることができる。
【0079】
太陽電池部材について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、太陽電池モジュールにおける基板、枠状封止材、および有機薄膜太陽電池や色素増感太陽電池のITO電極の表面に配置される絶縁保護膜などとしうる。即ち、太陽電池モジュールは、通常、太陽電池セルと、それを挟持する一対の基板(保護部材)と、少なくとも一方の基板と太陽電池セルとの間に充填された封止層とを有し、太陽電池モジュールの外周が、封止材でさらに封止されている。そして、基板(保護部材)または枠状に配置される封止材を、本発明のポリイミド樹脂組成物とすることができる。
【0080】
リチウムイオン電池部材について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、リチウムイオン二次電池を構成する電極の、電極活物質を金属箔上に固定するためのバインダー(特に高容量の負極活物質(例えばシリコン粒子)を負極板(箔)上に固定するためのバインダー)や、セパレーターとしうる。
【0081】
即ち、リチウムイオン二次電池の電極は、金属箔(集電箔)と、その上に配置される電極活物質と、バインダーとを含む活物質層とを有する。そして、活物質層におけるバインダーを、本発明のポリイミド樹脂組成物とすることができる。
【0082】
リチウムイオン二次電池では、充放電過程において電極活物質がリチウムイオンの吸蔵と放出を繰り返すため、電極活物質の膨張と収縮が大きく、電極活物質が剥離(脱落)しやすい。本発明のポリイミド樹脂組成物は、充放電に伴う電極活物質の膨張と収縮に耐えうる接着性を有し、耐熱性も有するため、電極活物質の剥離を抑制しうる。
【0083】
また、リチウムイオン二次電池のセパレーターは、本発明のポリイミド樹脂組成物を含んでよい。例えば、リチウムイオン二次電池のセパレーターは、本発明のポリイミド樹脂組成物からなるファイバーを紡織して得られるものであってよい。このような、本発明のポリイミド樹脂組成物を含むセパレーターは、従来のオレフィン系のセパレーターよりも高い耐熱性を有する。
【0084】
放熱基材について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、半導体デバイス、家電、パソコン、モーター、携帯機器などを冷却するための放熱基材としうる。従来の放熱基材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル等からなるものであったが、これらは耐熱性、可撓性、及び絶縁性が十分でなく、さらにVOC(揮発性有機化合物)を含んでいた。これに対し、本発明のポリイミド樹脂組成物を放熱基材とすれば、耐熱性、可撓性、絶縁性を良好にでき、さらにVOC量を少なくできる。本発明のポリイミド樹脂組成物を放熱基材とする場合、ポリイミド樹脂組成物全体積に対して、放熱性フィラーを20〜60体積%含むことが好ましい。
【0085】
電磁波シールド基材
本発明のポリイミド樹脂組成物は、半導体デバイス、家電、パソコン、自動車などの輸送機器、携帯機器などへ影響を及ぼす外部電磁波、またはそれらから発生する内部電磁波を遮断する電磁波シールド基材としうる。従来の電磁波シールド基材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなるものであったが、これらは耐熱性及び可撓性が十分でなく、VOC(揮発性有機化合物)を含んでいた。これに対し、本発明のポリイミド樹脂組成物を電磁波シールド基材とすれば、耐熱性及び可撓性を良好にでき、さらにVOC量を少なくできる。本発明のポリイミド樹脂組成物を電磁波シールド基材とする場合、ポリイミド樹脂組成物全体積に対して、導電性フィラー及び/または磁性フィラーを20〜90体積%含むことが好ましい。
【0086】
サージ部品用接着剤及びサージ部品用封止材について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、家電、パソコン、自動車などの輸送機器、携帯機器、電源、サーバー、電話などへ影響を及ぼす異常電流・電圧から保護するためのサージ部品(サージアブソーバー)用接着剤、またはサージ部品用封止材としうる。従来のサージ部品用接着剤または封止材は、銀蝋などの溶接剤であったが、これらは高温プロセスが必要であり、且つ材料コストが高かった。また、樹脂系接着を上記接着剤または封止材とする場合には、耐電圧性及び耐熱性が十分でなく、さらにVOC(揮発性有機化合物)を含んでいた。これに対し、本発明のポリイミド樹脂組成物を上記接着剤または封止材とすれば、サージ部品を低温で接着もしくは封止が可能であり、かつ耐電圧及び耐熱性も十分である。またVOC量を低減でき、さらにコストの観点からも好ましい。
【0087】
半導体製造装置用接着剤用途について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、半導体製造装置内に使用される接着剤、特に静電チャックの接着剤用途として好ましく用いられる。従来はセラミック静電チャックとアルミ基板電極との間の接着剤として、応力緩和性のあるブチルゴムなどのゴム系接着剤や、耐熱性のあるエポキシ、ポリイミド系接着剤が用いられてきた。しかしながら、半導体製造温度が高温化するに従って、ゴム系接着剤では耐熱性不足の課題があった。一方で、エポキシやポリイミド系接着剤では、応力緩和が不十分でセラミック静電チャック部が割れるなどの課題があった。さらに、静電チャック部の放熱性を上げるために接着剤層を薄くする必要性があるが、ポリイミド以外のゴム系接着剤やエポキシなどでは絶縁性が低く、絶縁破壊を起こす問題が指摘されていた。本発明のポリイミド樹脂組成物は耐熱性と柔軟性、絶縁性の両立が可能であり、且つ熱可塑性であるためにそのまま接着剤として使うことができ、本用途に好適である。
【0088】
歯科材料用途について
本発明のポリイミド樹脂組成物は、人工歯や入れ歯など歯科材料の表面コート材や接着剤用途として好ましく用いられる。従来の人工歯の表面コートにはアクリル系コート材が用いられてきた。しかしながら人工歯としての耐摩耗性、耐摩擦性が不足しているといった課題があった。本発明のポリイミド樹脂組成物は、機械強度が強く耐摩耗性にも優れるため、白色フィラーなどを混ぜることで人工歯の表面コート材や周辺接着剤として好適である。
【実施例】
【0089】
実施例および比較例で用いた酸無水物およびジアミンを以下に示す。
(1)酸二無水物
1)一般式(1)で表されるベンゾフェノン骨格を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物(α1)
BTDA:3,3',4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
2)他のテトラカルボン酸二無水物(α2)
s−BPDA:3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(JFEケミカル社製)
PMDA:ピロメリット酸二無水物
ODPA:オキシジフタル酸二無水物
【0090】
(2)ジアミン
1)一般式(3)または一般式(4)で表される脂肪族ジアミン(β2)
14EL:ポリテトラメチレンオキシド ジ-p-アミノベンゾエート(エラスマー1000)(伊原ケミカル社製)
【化13】
XTJ-542:下記式で表されるポリエーテルアミン(製品名:ジェファーミン、HUNTSMAN社製)
【化14】
D−2000:ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン社製)
2)他のジアミン(β3)
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学社製)
p−BAPP:2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン
1−Si:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
m−BP:4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル
【0091】
(実施例1)
ポリイミドワニスの調製
NMP(N−メチルピロリドン)とメシチレンを7/3の比率で調製した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、3種類のジアミン(APB、14EL、XTJ−542)とを、s-BPDA:BTDA:APB:14EL:XTJ−542=0.79:0.2:0.8:0.1:0.1のモル比で配合した。得られた混合物を、乾燥窒素ガスを導入できるフラスコ内で4時間以上攪拌し、樹脂固形分が20〜25質量%であるポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を、十分に攪拌した後、ディーンスターク管が付属したフラスコ内で攪拌しながら、反応系を180℃程度まで加熱し、脱水反応で発生した水を系外に取り出して、ポリイミドワニスを得た。
【0092】
1)ワニスの安定性
作製したポリイミドワニスを小瓶に入れて、3℃に調整した冷蔵庫内で3ヶ月間保管した。そして、数週間ごとにポリイミドワニスの外観を目視観察した。具体的には、樹脂の析出やゲル化が生じるかどうかを目視観察した。そして、ワニスの安定性を、以下の基準に基づいて評価した。
○:3ヶ月を超えても、樹脂の析出やゲルの生じない
△:1ヶ月超3ヶ月以内で、析出やゲル化が生じる
×:1ヶ月以内に、析出やゲル化が生じる
【0093】
フィルムの作製
得られたポリイミドワニスを、離型処理されたPETフィルム上に10mm/秒の速度で塗工した後、200℃で10分間乾燥させて溶媒を除去した。乾燥後に得られたフィルムを、ピンセットでPETフィルムから剥離して、膜厚50μmのポリイミドフィルムを得た。
【0094】
2)耐熱性
作製したポリイミドフィルムを幅10mm×長さ100mmの短冊状に切り出し、サンプルフィルムとした。このサンプルフィルムを、所定の温度に加熱した半田浴槽上に所定の時間浮かべたときに、サンプルフィルムが溶融するかどうかを観察した。そして、サンプルフィルムの耐熱性を、以下の基準に基づいて評価した。
◎:280℃、30秒間後においても溶融なし
○:260℃、60秒間後において若干溶融するが、形状を維持でき、かつ引き上げ可能なレベル
×:260℃、60秒間後において溶融する
【0095】
3)ガラス転移温度および4)貯蔵弾性率
作製したポリイミドフィルムの貯蔵弾性率E’と損失弾性率E''を、TA製のRSA−IIにより、固体粘弾性の温度分散測定を引張モード、測定周波数1Hzで測定した。そして、損失正接tanδ=E''/E’のピーク値からガラス転移温度を導出した。
【0096】
また、ポリイミドフィルムの、ガラス転移温度よりも30℃高い温度での貯蔵弾性率E’を、下記基準に基づいて評価した。
○:貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上
×:貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa未満
さらに、180℃における貯蔵弾性率も特定した。180℃における貯蔵弾性率E’についても、下記基準に基づいて評価した。
○:貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa以上
×:貯蔵弾性率E’が1.0×10Pa未満
【0097】
5)引張破断時の伸び率及び破断強度
作製したポリイミドフィルムを、幅10mm、長さ140mmにカットして、サンプルフィルムとした。サンプルフィルムを長さ方向にテンシロンにて、23℃において、速度50mm/分で幅10mm×長さ100mm部分を両端20mmの掴みシロを引っ張った。そして、(破断時のサンプルフィルムの長さ−サンプルフィルムの元の長さ)/(サンプルフィルムの元の長さ)を「引張破断時の伸び率」とした。そして、サンプルフィルムの引張破断時の伸び率を以下の基準で評価した。
○:引張破断時の伸び率が50%以上
×:引張破断時の伸び率が50%未満
また、上記サンプルフィルムの破断時の引張強度を、破断強度とした。
【0098】
(実施例2)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、3種類のジアミン(APB、14EL、XTJ−542)とを、s−BPDA:BTDA:APB:14EL:XTJ−542=0.39:0.6:0.8:0.1:0.1のモル比で配合した以外は、実施例1と同様にポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0099】
(実施例3)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、3種類のジアミン(p−BAPP、14EL、XTJ−542)とを、s−BPDA:BTDA:p−BAPP:14EL:XTJ−542=0.78:0.2:0.8:0.1:0.1のモル比で配合した以外は、実施例1と同様にポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0100】
(実施例4)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、3種類のジアミン(p−BAPP、14EL、XTJ−542)とを、s−BPDA:BTDA:p−BAPP:14EL:XTJ−542=0.59:0.4:0.7:0.1:0.2のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0101】
(実施例5)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、2種類のジアミン(APB、14EL)とを、s−BPDA:BTDA:APB:14EL=0.79:0.2:0.8:0.2のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0102】
(実施例6)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、2種類のジアミン(p−BAPP、XTJ−542)とを、s−BPDA:BTDA:pBAPP:XTJ−542=0.79:0.2:0.9:0.1のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
(実施例7)
NMPとメシチレンとを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、2種類のジアミン(p−BAPP、D−2000)とを、s−BPDA:BTDA:p−BAPP:D−2000=0.59:0.4:0.8:0.2のモル比で配合した以外は、実施例1と同様にポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0103】
(実施例8)
NMPとメシチレンを7/3の比率で調整した溶媒中に、2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、4種類のジアミン(p−BAPP、m−BP、14EL、XTJ542)とを、s−BPDA:BTDA:p−BAPP:m−BP:14EL:XTJ542=0.79:0.2:0.2:0.6:0.1:0.1のモル比で配合した以外は、実施例1と同様にポリイミドワニス及びポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0104】
(比較例1)
1種類の酸二無水物(PMDA)と1種類のジアミン(APB)とをPMDA:APB=1.0:1.0のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスを作製した。しかしながら、ワニスの安定性が低く、フィルムを作製することができなかった。
【0105】
(比較例2)
1種類の酸二無水物(BTDA)と1種類のジアミン(APB)とを、BTDA:APB=1.0:1.0のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスを作製した。しかしながら、ワニスの安定性が低く、フィルムを作製することができなかった。
【0106】
(比較例3)
3種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA、ODPA)と、1種類のジアミン(APB)とを、s−BPDA:BTDA:ODPA:APB=0.68:0.2:0.1:1.0のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0107】
(比較例4)
1種類の酸二無水物(s−BPDA)と、4種類のジアミン(APB、14EL、XTJ−542、1−Si)とを、s−BPDA:APB:14EL:XTJ−542:1−Si=0.99:0.5:0.2:0.2:0.1のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0108】
(比較例5)
2種類の酸二無水物(s−BPDA、BTDA)と、2種類のジアミン(APB、1−Si)とを、s−BPDA:BTDA:APB:1−Si=0.79:0.2:0.85:0.15のモル比で配合した以外は実施例1と同様にしてポリイミドワニスおよびポリイミドフィルムを作製し、評価した。
【0109】
(比較例6)
NMPとメシチレンを7/3の比率で調整した溶媒中に、1種類の酸二無水物(s−BPDA)と、1種類のジアミン(m−BP)とを、s−BPDA:m−BP=1:1のモル比で配合した以外は、実施例1と同様にポリイミドワニスを作製した。しかしながら、ワニスの安定性が低く、フィルムを作製することができなかった。
【0110】
実施例1〜8および比較例1〜6の評価結果を表1に示す。表1における、ポリイミドのアミン当量は、ポリイミドの数平均分子量を測定した後;得られた数平均分子量を1分子に含まれるアミノ基の数で割って求めた。また、ベンゾフェノン骨格を有するモノマーの合計含有量は、ポリイミドを構成する酸二無水物とジアミンの合計モル数に対する、ベンゾフェノン骨格を有するモノマー(酸二無水物またはジアミン)の合計モル数の比率とした。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示されるように、ベンゾフェノン骨格と、脂肪族ジアミン由来の長鎖アルキレンオキシ基とを有し、かつアミン当量が一定の範囲にある実施例1〜8のポリイミドは、ワニスの安定性が高く、得られるフィルムの耐熱性と伸び率がいずれも高いことがわかる。
【0113】
これに対して、脂肪族ジアミン由来の長鎖アルキレンオキシ基を有しない比較例1、2及び6のポリイミドは、ワニスの安定性が低く、フィルムにすることができなかった。一方、脂肪族ジアミン由来の長鎖アルキレンオキシ基を有するが、ベンゾフェノン骨格を有しない比較例4のポリイミドは、ワニスの安定性は高いが、得られるフィルムの耐熱性が低いことがわかる。また、ベンゾフェノン骨格を有するが、脂肪族ジアミン由来の長鎖アルキレンオキシ基を有しない比較例3のポリイミドは、ワニスの安定性が高く、得られるフィルムの耐熱性も高いが、伸び率が低いことがわかる。また、脂肪族ジアミン由来の長鎖アルキレンオキシ基を有さず、ポリメチレンシロキサン由来のアルキレン基を有する比較例5のポリイミドは、ワニスの安定性は良好であり、得られるフィルムの耐熱性も良好であるが、伸び率が低いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、溶剤への溶解性に優れ、高温下での高い粘弾性と高い柔軟性とを有する。そのため、本発明のポリイミド樹脂組成物は、高い耐熱性と、フレキシビリティとが要求される各種分野;例えば、電子回路基板部材、半導体デバイス、リチウムイオン電池部材および太陽電池部材などの接着剤として好適である。
【符号の説明】
【0115】
10 BGAパッケージ
12、22 基板
14、24 半導体チップ
16 シール層
20 COFパッケージ
26 アンダーフィル層
図1
図2