特許第5736000号(P5736000)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736000
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】自律型カバレッジロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20150528BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   G05D1/02 L
   A47L9/28 E
【請求項の数】11
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-86629(P2013-86629)
(22)【出願日】2013年4月17日
(62)【分割の表示】特願2011-228703(P2011-228703)の分割
【原出願日】2006年12月4日
(65)【公開番号】特開2013-146587(P2013-146587A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2013年4月17日
(31)【優先権主張番号】60/741,442
(32)【優先日】2005年12月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502432084
【氏名又は名称】アイロボット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】スベンセン, セルマ
(72)【発明者】
【氏名】オジック, ダニエル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ケーシー, クリストファー エム.
(72)【発明者】
【氏名】カプール, ディーパク ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, トニー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チキュン
(72)【発明者】
【氏名】モールス, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】バーネット, スコット トーマス
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−194715(JP,A)
【文献】 特開2002−323926(JP,A)
【文献】 特開2003−047579(JP,A)
【文献】 特開2003−323214(JP,A)
【文献】 特開平07−116849(JP,A)
【文献】 特開2001−250979(JP,A)
【文献】 特開2004−139264(JP,A)
【文献】 特開2003−294413(JP,A)
【文献】 実開平05−027604(JP,U)
【文献】 特表2004−522231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律型清掃ロボットであって、
シャーシと、
前記シャーシに搭載され、前記自律型清掃ロボットを動かす駆動システムと、
前記シャーシの底面にそれぞれ保持される複数の床近接センサであって該床近接センサの直下の床表面におけるクリフを検出する複数の床近接センサと、を備え、
前記床近接センサの各々は、
ビームを前記床表面に向かって発光するビーム発光器と、
前記発光されたビームの前記床表面からの反射を受光するビーム受光器と、
前記ビーム発光器およびビーム受光器を内部で保持する前方部分および後方部分からなる保持部と、
前記ビーム発光器およびビーム受光器をカバーするために、前記保持部に取り付けられるビーム透過蓋と、を備え、
前記各ビーム透過蓋は、前方縁部が後方縁部よりも床面に対して高く位置するよう前記床面に対して角度付された面を備えることを特徴とする、自律型清掃ロボット。
【請求項2】
自律型清掃ロボットであって、
シャーシと、
前記シャーシに搭載され、前記自律型清掃ロボットを動かす駆動システムと、
前記シャーシの底面にそれぞれ保持される複数の床近接センサであって該床近接センサの直下の床表面におけるクリフを検出する複数の床近接センサと、を備え、
前記床近接センサの各々は、
ビームを前記床表面に向かって発光するビーム発光器と、
前記発光されたビームの前記床表面からの反射を受光するビーム受光器と、
前記ビーム発光器およびビーム受光器をカバーするためのビーム透過蓋と、を備え、
前記各ビーム透過蓋は、前記ビーム発光器およびビーム受光器にそれぞれ対応する、不透明の部材で仕切られた2つの区画を有し、前方縁部が後方縁部よりも床面に対して高く位置するよう前記床面に対して角度付された面を備えることを特徴とする、自律型清掃ロボット。
【請求項3】
自律型清掃ロボットであって、
シャーシと、
前記シャーシに搭載され、前記自律型清掃ロボットを動かす駆動システムと、
前記シャーシの底面にそれぞれ保持される複数の床近接センサであって該床近接センサの直下の床表面におけるクリフを検出する複数の床近接センサと、を備え、
前記床近接センサの各々は、
ビームを前記床表面に向かって発光するビーム発光器と、
前記発光されたビームの前記床表面からの反射を受光するビーム受光器と、
前記ビーム発光器およびビーム受光器をカバーするためのビーム透過蓋と、を備え、
前記各ビーム透過蓋は、前後方向における前方縁部が後方縁部よりも床面に対して高く位置するよう前記床面に対して角度付された面を備え、
前記ビーム発光器および前記ビーム受光器は、前記前後方向に直交する方向に並んで配置されることを特徴とする、自律型清掃ロボット。
【請求項4】
前記ビーム透過蓋は、レンズおよび蓋本体からなることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項5】
前記ビーム透過蓋は、帯電防止特性を有する材料によって生成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項6】
前記ビーム発光器およびビーム受光器は、赤外線発光器および受光器であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項7】
前記駆動システムは、
前記床近接センサの検出結果に基づいて、前記自律型清掃ロボットをクリフから遠ざけて操縦するよう構成された制御装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項8】
前記駆動システムは、
複数の駆動輪と、
脚輪と、
前記複数の駆動輪または脚輪の少なくともいずれか1つの近傍に配置された車輪−床近接センサと、をさらに備え、
前記車輪−床近接センサは、前記複数の駆動輪または脚輪に近い床表面を検出するように構成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項9】
前記駆動システムは、前記脚輪の近傍に配置され、前記脚輪の1つの前記シャーシに対する下向きの変位を検出する脱輪センサをさらに備え、
前記脱輪センサは、赤外線発光器および受光器の少なくとも1つの対を備えることを特徴とする、請求項8に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項10】
前記駆動システムの全ての車輪が脱輪した場合に、前記床近接センサの検出結果に応じて、該床近接センサが妨害されていないかを検証する検証システムをさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の自律型清掃ロボット。
【請求項11】
前記検証システムにて前記床近接センサが妨害されていると判断された場合に、前記床近接センサを掃除すべきことを報知することを特徴とする、請求項10に記載の自律型清掃ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年12月2日に出願された「ROBOT NETWORKLING,THEMING AND COMMUNICATION SYSTEM」という名称で、出願番号第60/741,442号を割り当てられた米国仮特許出願に対して、米国特許法第119条(e)の下に優先権を主張し、該出願の内容はその全体が本明細書により参考として援用される。
【0002】
本発明はロボットに関し、さらに具体的には自律カバレッジロボットに関する。
【背景技術】
【0003】
自律型ロボットとは、人間が絶えず誘導しなくても非構造的環境において所望のタスクを実行できるロボットである。ロボットの多くの種類は、ある程度まで自律的である。様々なロボットが、様々な様態で自律的でありうる。自律カバレッジロボットは、1つまたは複数のタスクを実行するために、人間が絶えず誘導することなく作業表面を横断する。家庭向け、事務所向け、および/または一般消費者向けのロボットシステムの分野では、電気掃除機がけ、床洗い、見回り、芝刈り、および他のこのようなタスクなどの家事機能を実行する移動ロボットが広く採用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自律カバレッジロボットが、操作中に多くの障害物に遭遇する。このロボットは、操作を続行するために、絶えず障害物を回避する必要があり、かつ布地、紐、または他の絡み付く柔らかい媒体によって捕らわれた場合には、自力で脱出する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、自律カバレッジロボットは、シャーシと、このシャーシに搭載され、ロボットを操縦するように構成された駆動システムと、シャーシによって担持された縁部掃除ヘッドと、シャーシによって担持された制御装置とを具備する。縁部掃除ヘッドは、縁部掃除ヘッドモータによって駆動され、非水平軸回りに回転することができる。縁部掃除ヘッドは、ロボットが床を横切って操縦される間に床表面に係合するように、シャーシの横方向長さを越えて延びる。縁部掃除ヘッドは、ロボットの周縁上にまたは周縁付近に配置されうる。ロボット操作を制御する制御装置によるブラシ制御過程は、駆動過程とは別個に、縁部掃除ヘッドに関連するモータ電流を監視するように構成される。また制御装置によるブラシ制御過程は、スパイク(例えば、モータ電流の過渡的なまたは急速な増大)または一般に高いモータ電流モータの検出後に(巻き戻るコード、紐、または他の絡まった媒体と同じ速度で、実質的にニュートラルで回転し、かつ/または回転するように駆動されるように)縁部掃除ヘッドモータを以前の掃除方向とは反対の方向へ逆バイアスするように構成され、他方では床を横切ってロボットを操縦し続けて、中断することなく床の網羅もしくは掃除を実行するか、または他の動作行動を実行する。1つの実施態様では、制御装置によるブラシ制御過程は、高い縁部掃除ヘッドモータ電流に続いて、(巻き戻るコード、紐、または他の絡まった媒体と同じ速度で、実質的にニュートラルで回転し、かつ/または回転するように駆動されるように)縁部掃除ヘッドモータを逆バイアスし、かつ引き続いてまたは並行して、直接的にまたは監督過程を介して間接的に、ロボットが実質的に後進し、駆動方向を変更し、かつロボットを前進させるのと同時に巻き戻しが行われうるように、信号を駆動モータ制御過程に送信する。
【0006】
1つの実施態様では、縁部掃除ヘッドは、シャーシの周縁を越えて延びる剛毛を有するブラシを具備する。1つの実施例では、縁部掃除ヘッドが、第1および第2の端部を有する少なくとも1つのブラシ要素を具備し、このブラシ要素は、第1の端部の回りに作業表面に垂直な回転軸を画定する。縁部掃除ヘッドは、実質的に垂直な軸回りに回転可能である。1つの場合では、縁部掃除ヘッドは3つのブラシ要素を具備し、各ブラシ要素が、隣接するブラシ要素と約120度の角度を形成する。別の場合では、縁部掃除ヘッドは6つのブラシ要素を備え、各ブラシ要素が、隣接するブラシ要素と約60度の角度を形成する。
【0007】
別の実施態様では、縁部掃除ヘッドは、シャーシの周縁を越えて延びる回転可能な水切りを備える。この回転可能な水切りは、水洗い、表面処理などに使用可能である。
【0008】
さらに別の実施態様では、縁部掃除ヘッドは、この掃除ヘッドが回転すると、シャーシの周縁を越えて広がる複数の吸着繊維を含む。複数の吸着繊維は、こぼれを拭き取り、床を掃除し、表面処理を施す等々のためにモップのように使用可能である。
【0009】
ロボットは、シャーシによって担持された複数の掃除ヘッド(例えば、2つまたは3つ)を具備する。1つの実施例では、ロボットは、シャーシによって担持された主掃除ヘッドをさらに具備し、掃除ヘッドは、ロボットによって網羅されるスワズ(それはロボットの主作業幅を形成する)を横切って延び、かつ掃除ヘッドは、ロボットが床を横切って操縦されている間に床表面に係合するように、水平軸回りに回転するように駆動されうる。主掃除ヘッドは、作業表面に平行な長手回転軸を画定する円筒本体と、円筒本体上に配置された剛毛と、円筒本体に沿って長手方向に配置された柔軟フラップとを具備しうる。制御装置によるブラシ制御過程は、高い主掃除ヘッドモータ電流に応答して、(巻き戻るコード、紐、または他の絡まった媒体と同じ速度で、実質的にニュートラルで回転し、かつ/または回転するように駆動されるように)主掃除ヘッドの回転を逆バイアスするように構成され、他方で動作制御過程は、別個に床を横切ってロボットを操縦し続ける。別の実施例では、ロボットは、シャーシによって担持され、ロボットが床を横切って操縦される間に床表面に係合するように、水平軸回りに回転するように駆動される2つの主掃除ブラシを具備する。2つの主掃除ブラシは、同じかまたは逆の方向へ回転するように駆動されうる。
【0010】
別の態様では、自律カバレッジロボットの絡まりを解除する方法が、ロボットを床表面の上に配置するステップを含み、ロボットは、シャーシによって担持され、縁部掃除ヘッドモータによって駆動される縁部掃除ヘッドを非水平軸回りに回転させながら、ロボットの前方向へ床表面を自律的に横断する。縁部掃除ヘッドは、シャーシの横方向長さを超えて延び、かつ床表面に係合する。ロボットは、床表面を横切って操縦し続ける間に、高い縁部掃除ヘッドモータ電流に応答して、(巻き戻るコード、紐、または他の絡まった媒体と同じ速度で、実質的にニュートラルで回転し、かつ/または回転するように駆動されるように)、別個に縁部掃除ヘッドモータに逆バイアスを与える。
【0011】
1つの実施態様では、ロボットの制御装置によるブラシ制御過程は、高い掃除ヘッドモータ電流に応答して縁部掃除ヘッドの回転を逆転する前に(ロボット動作制御とは別個に)、前方向へのロボットの移動を決定する。ロボットのブラシ制御過程は、ある一定の時間の間における高い縁部掃除ヘッドモータ電流に応答して、(ロボット動作制御とは別個に)縁部掃除ヘッドの回転を逆転しうる。1つの実施例では、ブラシ制御過程が縁部掃除ヘッドの回転を逆転する後で、ブラシ制御過程は、直接的にまたは監督過程を介して、逆方向へ移動し、駆動方向を変更し、かつその駆動方向へ移動するように、信号をロボットの動作制御過程に送ることができる。
【0012】
別の実施態様では、ロボットはまた、シャーシによって担持された主掃除ブラシを具備し、このブラシは、ロボットが床を横切って操縦される間に床表面に係合するように、水平軸回りに回転するように駆動されうる。ロボットは、床表面を横切って操縦し続ける間に、高い主掃除ヘッドモータ電流に応答して、別個に主掃除ブラシの回転を逆転する。ロボットのブラシ掃除過程はまた、高い主掃除ブラシモータ電流に応答して、別個に主掃除ブラシの回転を逆転する前に、前方向へのロボットの移動を決定することができる。さらに、ロボットのブラシ掃除過程はまた、一定の時間の間または時間間隔の間、主掃除ブラシの回転を逆転することができる。
【0013】
別の態様では、自律カバレッジロボットが、駆動システム、衝突センサ、および近接センサを具備する。駆動システムは、方位(旋回)設定および速度設定に従ってロボットを操縦するように構成される。衝突センサは、前方向における障害物とのロボットの衝突に応答する。近接センサは、近接しているが、ロボットに接触していない距離に、例えば、1〜10インチ、好ましくは1〜4インチにある、ロボット前方の障害物に応答する。駆動システムの動作制御過程はまた、方位設定に従ってロボットを前進させることを含めて、掃除または網羅過程の続行中に、潜在的な障害物の検出を示す近接センサからの信号に応答して速度設定を低減するように構成されうる。さらに、駆動システムの動作制御過程はまた、障害物との接触を示す衝突センサから受け取った信号に応答して、方位(旋回)設定を変更するように構成されうる。
【0014】
幾つかの場合では、駆動システムの動作制御過程は、障害物の周囲を追従するために、衝突センサおよび1つまたは複数の側部近接センサから受け取った信号に応答して、方位設定を変更するように構成されうる。他の場合では、駆動システムは、ロボットを障害物から遠ざけて誘導するために、衝突センサおよび近接センサから受け取った信号に応答して、方位(旋回)設定を変更するように構成されうる。1つの実施例では、駆動システムは、ロボットをトルク(例えば、モータ電流またはモータ抵抗)設定で操縦するように構成され、駆動システムは、障害物との接触を示す衝突センサから受け取った信号に応答して、モータ電流またはモータ抵抗設定を変更するように構成される。駆動システムは、障害物との接触を示す衝突センサから受け取った信号に応答して、モータ電流またはモータ抵抗設定を増大することができる。
【0015】
近接センサは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許6594844号、「Robot obstacle detection system」で実質的に開示されたように、相互から固定距離に集束するように相互に向けられた赤外線発光器および受光器の少なくとも1つの対の複数の組を具備することができる。別法として、近接センサは音波探知器装置を含みうる。衝突センサは、スイッチ、容量性センサ、または他の接触感知装置を含みうる。
【0016】
ロボットは床の上に配置されうる。さらに別の態様では、自律カバレッジロボットを床の上の物体に対して操縦する方法は、ロボットが掃除モードにおいて全速掃除速度で床を自律的に横断するステップを含む。ロボット前方に物体の近接を感知すると、ロボットが物体との接触を検出するまで物体に向かい続ける間に、ロボットは、掃除速度を減速掃除速度まで落とす。物体との接触を感知すると、ロボットは、随意選択的には実質的に減速掃除速度で、物体に対して旋回し、他方で物体の近傍で掃除を行う。ロボットは物体の周囲を追従し、他方で物体の近傍で掃除を行うことができる。ロボットが周囲を離れると、ロボットは速度を全速掃除速度まで上げることができる。ロボットは、物体からの実質的に一定の追従距離を維持しうるか、ロボット本体の追従側面を越えて延びる縁部掃除ヘッドまたはブラシの長さよりも小さい追従距離を維持しうるか、または物体との最初の減速掃除速度における接触に応答して、実質的に物体に接触し、他方で物体の近傍で掃除を行うことができる。1つの実施例では、物体からの追従距離は実質的に、物体と実質的に接触した直後におけるロボットと物体との間の距離である。別の実施例では、物体からの追従距離は約0と2インチとの間である。
【0017】
1つの場合では、ロボットは、物体との接触に応答して、物体の周囲を移動するように操縦を実行する。この操縦には、ロボットが物体の周囲を実質的に半円形の経路で、または連続した交互する部分螺旋(例えば、漸減する半径を有する円弧)で移動することを含みうる。別法として、この操縦は、ロボットが物体から遠ざかり、次いで物体に実質的に正接する方向へ移動することを含みうる。
【0018】
ロボットの前方に物体の近接を感知すると、ロボットは、定率で、指数関数的な率で、非線形的な率で、または何らかの他の率で、全速掃除速度から減速掃除速度まで減速することができる。さらに、ロボットは、物体との接触を感知すると、駆動モータ、主ブラシモータ、または側部ブラシモータのトルク(例えば、モータ電流)設定を低減することができる。
【0019】
さらに別の態様では、自律型ロボットが、シャーシと、シャーシに搭載され、ロボットを操縦するように構成された駆動システムと、シャーシによって担持され、ロボットの下方の床表面を検出するように構成された床近接センサとを具備する。床近接センサは、ビームを床表面に向かって誘導するように構成されたビーム発光器と、誘導されたビームの床表面からの反射に応答し、シャーシの下向き受口の中に取り付けられたビーム受光器とを具備する。床近接センサは、実質的に封止されたユニット(例えば、下方向で)でよく、受口の内部に堆積物、「カーペット毛羽」、毛髪、または家庭の埃が蓄積するのを防止するために、受口の下端を横切って配置された前方および後方縁部を有するビーム透過蓋も具備しうる。この蓋は、帯電防止材料から作製されたレンズを具備しうる。ロボットの前縁における蓋の前方縁部、すなわち、ロボットの動作方向における蓋の縁部は、後方縁部よりも高い。受口の下方表面は楔形に形作られうる。1つの実施例では、床近接センサは、米国特許第6594844号、「Robot obstacle detection system」に実質的に開示されたように、赤外線発光器および受光器の少なくとも1つの対を含む。
【0020】
1つの実施態様では、ロボットの駆動システムは、シャーシから懸架された少なくとも1つの被駆動輪と、シャーシによって担持され、車輪の1つに隣接して収納された少なくとも1つの床−輪近接センサとを具備し、この床−輪近接センサは、車輪に隣接する床表面を検出するように構成される。また駆動システムは、床近接センサから受け取った信号に応答して、ロボットを感知されたクリフから遠ざけて操縦するように構成された制御装置も具備しうる。幾つかの場合では、駆動システムは、車輪の1つに近接して収納され、シャーシに対する車輪の実質的な下向き変位に応答する脱輪センサを具備する。駆動システムは、すべての車輪が脱輪するときに、床近接センサの動作可能性を検証する検証システムを含みうる。この検証は、すべての車輪が脱輪したのは、ロボットが人間によって床から持ち上げられている結果である公算が高いという推断に基づいており、必ずしもすべての床近接センサが床表面に整合しないわけではないこと(反射が測定されないかまたは強すぎる反射)を確認するために点検するものである。床表面または過剰に強い反射(例えば、遮断されたセンサを示す)に整合するセンサは、いずれも妨害されていると見なされる。この検出に応答して、ロボットは、標示または光によって床近接センサが掃除されるべきであることを示す保守報告セッションを開始することができる。この検出に応答して、ロボットは、すべての床近接センサが掃除されかつ機能していることを検証手順によって判定するまで、前進動作を禁止する。それぞれの輪−床近接センサおよび脱輪近接センサは、赤外線発光器および受光器の少なくとも1つの対を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、自律型清掃ロボットの実施例の上方斜視図を示す。
図2図2は、自律型清掃ロボットの実施例の下方斜視図を示す。
図3図3は、自律型清掃ロボットの実施例の分解組立図を示す。
図4図4は、自律型清掃ロボットの中に組み込まれうる主掃除ヘッドの実施例の正面斜視図を示す。
図5図5は、自律型清掃ロボットに使用されうる主掃除ヘッドの実施例の分解組立図を示す。
図6A図6Aは、回転可能なブラシを使用する縁部掃除ヘッドの実施例の上方斜視図を示す。
図6B図6Bは、縁部掃除ヘッドの実施例の分解組立図を示す。
図6C図6Cは、縁部掃除ヘッドの実施例の傾きの模式図を示す。
図7図7は、回転可能な水切りを備える縁部掃除ヘッドの実施例を示す。
図8A図8Aは、自律型清掃ロボットに使用されうるバンパを示す。
図8B図8Bは、衝突センサおよび近接センサを示す。
図9A図9Aは、例示的なロボットのブロック図を示す。
図9B図9Bは、動作制御を説明する流れ図を示す。
図9C図9Cは、ブラシ操作を説明する流れ図を示す。
図10図10は、隣接する床の検出に使用されうる床近接センサおよび取付け留め具を示す。
図11図11は、床近接センサの側面図を示す。
図12図12は、床近接センサの分解組立図を示す。
図13図13は、図11および12に示した床近接センサに使用された蓋の分解組立図を示す。
図14図14は、脚輪アセンブリの実施例を示す分解組立図である。
図15図15は、脱輪センサの実施例を示す分解組立図である。
図16図16は、脚輪アセンブリの実施例を示す断面図である。
図17A図17A〜Hは、掃除ヘッドの様々な構成を有する自律型清掃ロボットの絡まりを解除する方法の実施例を例示する。図17Aは、撹拌ローラを有する自律型清掃ロボットに使用されうる絡まりを解除する方法を例示する。
図17B図17Bは、撹拌ローラおよびブラシローラを有する自律型清掃ロボットに使用されうる絡まりを解除する方法を例示する。
図17C図17Cは、複式撹拌ローラを備える自律型清掃ロボットの絡まりを解除する方法を例示する側面図および底面図を有する。
図17D図17Dは、図17Cに示したロボットに関する絡まりを解除する別の方法を例示する。
図17E図17Eは、2つの撹拌ローラおよび1つのブラシローラを有する自律型清掃ロボットの絡まりを解除する方法を例示する。
図17F図17Fは、自律型清掃ロボットの絡まりを解除する別の方法を例示する。
図17G図17Gは、2つの撹拌ローラおよび2つの空気ダクトを有する自律型清掃ロボット300に関する絡まりを解除する方法を例示する側面図および底面図を含む。
図17H図17Hは、2つの撹拌ローラ、1つのブラシローラ、および2つの空気ダクトを有する自律型清掃ロボット300に関する絡まりを解除する方法を例示する側面図および底面図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
異なる図面中の同様の番号は、同様の要素を指す。
【0023】
詳細な説明
図1〜3は、例示的な自律型清掃ロボット100の上方斜視図、下方斜視図、および分解組立図を示す。ロボット100は、シャーシ102、駆動システム104、縁部掃除ヘッド106a、および制御装置108を有する。駆動システム104は、シャーシ102に搭載され、ロボット100を操縦するように構成された差動式駆動装置(ロボットの中心直径に近接するかまたはその直径の上にあり、別個に速度制御可能な左輪および右輪)である。縁部掃除ヘッド106aは、ロボット100の下方およびその直近の汚れおよびゴミを除去するために、さらに具体的にはロボットが前方向で掃除するときに汚れおよびゴミを主掃除ヘッド106bの掃除経路の中へ掃き込むために、シャーシ102の側縁を越えて延びるように取り付けられる。幾つかの実施態様では、主または縁部掃除ヘッド106b、106aは、表面処理を施すためにも使用可能である。制御装置108(図9Aにも図示されている)は、シャーシ102によって担持され、自律的様態で床を掃除または処理するために、下で説明するように、センサ読取り値または指示に基づいて指令をロボット100の構成要素に供給する行動規範型ロボットシステムによって制御される。蓄電池109がロボット100およびその副システム用の電源となりうる。底蓋110は、ロボット100の内側部分を保護しかつ汚れおよびゴミを締め出すことができる。
【0024】
駆動システム104は、左駆動輪アセンブリ112、右駆動輪アセンブリ114、および脚輪アセンブリ116を具備する。駆動輪アセンブリ112、114および脚輪アセンブリ116は、シャーシ102に連結されて、ロボット100の支持体になる。制御装置108は、ロボット100を操縦するために駆動輪アセンブリ112および114を前方または後方に駆動するように駆動システムに指令を供給することができる。例えば、両方の駆動輪アセンブリを前方向に係合させるように制御装置によって指令が送出され、ロボット100の前進動作をもたらす。別の場合では、指令が、左駆動輪アセンブリ112を前方向に駆動させ、他方では右駆動輪アセンブリ114を後方向へ駆動させる左旋回のために送出可能であり、上方から眺めたときにロボット100は時計回りに旋回することになる。
【0025】
図4および5は、シャーシ102に取り付けることによってロボット100の主掃除ヘッド106bに組み込まれうる主掃除ブラシ111の前方斜視図および分解組立図を示す。本明細書に開示されたように、ロボットおよび掃除ヘッドの一般的な構造は、別様にそのように留意される場合を除けば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許6883201号に開示されたものと同様である。一般に、ロボットブラシが、コード、紐、毛髪、縁飾り、飾り房が絡まるとき、ブラシモータが過電流または温度上昇に遭遇し、ブラシのエネルギー消費の増大、掃除不良、減速、またはロックを引き起こす恐れがある。ロボットがそのように制御されているか、または絡まり物が重かったりもしくは固定されたりしている場合に、ロボットはその場に拘束される恐れがあり、センサが膠着状態を検出するために利用可能である場合に、動作を停止し、それによって掃除ができない恐れがある。ロボットがその通常の作業工程中に立ち往生すると、ロボットは、自律的機能を続行するために「救助」されかつ掃除されねばならない。理論的には、駆動輪、脚輪、ゴミ箱水切り、および掃除ヘッド駆動列(逆駆動装置)の静的または動的摩擦に対抗するために追加的なエネルギー消費が発生する。縁飾り/飾り房/コードは、掃除ブラシの最小巻付き径(例えば、ブラシ111が剛毛しか具備していなければ、通常はブラシ111の芯)の回りに緊密に巻き付きうる。掃除ブラシ111の最小径が中実であれば(弾性がなければ)、例えば、ブラシが縁飾り/飾り房/コードを巻き戻すために掃除ヘッドの内部で逆回転されるとき、掃除ヘッドの歯車列および床と接触しているブラシにおける静的または動的摩擦に打ち勝つために、追加的なエネルギーが必要とされうる。飾り房または紐がブラシの回りに絡まり続けるままにされていれば、絡まりを除去するためにブラシ111を掃除ヘッド106bから取り外す必要がありうる。主掃除ブラシ111は、掃除ヘッド本体117に沿って配置されたバッフルまたは柔らかいフラップ113および剛毛115を有する。掃除ヘッド本体117の長さに沿って配置された柔らかいフラップ113は、静的摩擦を最小化しうる。掃除ヘッド本体117は、ロボット100が床全体を移動中に、掃除ヘッド本体が床表面に係合するように、その水平軸回りに回転可能であり、バッフル113および剛毛115に床の表面上に存在しうる汚れおよびゴミを撹拌させる。制御装置108は、主掃除ヘッドモータ電流の急上昇または増大に続いて、主掃除ブラシ111の回転を逆バイアスし(すなわち、ロボットが前方向へ遠ざかると、ロボットが絡まりを引き出しかつ巻き戻すときに掃除ブラシの自由回転を許容するのに十分な逆電流を供給し)、他方では、制御装置108がロボット100を床全体に移動させるために個々の動作制御行動を実行するときに、掃除サイクルまたは他のサイクルの実行を続行するように構成可能である。この場合に、柔らかいフラップ113のへり116は、主掃除ブラシ111の最小径になりうる。へり116は、変形に殆どエネルギーの必要がないように柔軟であり(しなやかで、柔らかく)、潜在的にはロボット100の移動を開始するのに必要とされるエネルギーからその一部を分流させる。静的摩擦に遭遇するブラシ歯車列の一時的な遅延は、ロボット100が移動を再開する機会を与え、それによってブラシの絡まりを容易に解除することを可能にする。同様に、ブラシ111は、絡まったコードまたは飾り房の単位長さ当たりの巻きを単にそれほど多く完成しないという理由で、コードまたは飾り房は、へり116のより大きな直径(芯117のような芯またはさらに細い芯に比べて)回りに絡まり難くなりうる。さらには、フラップ113の長さ方向にえぐられる(湾曲される)性質が、始動されているロボットと、絡まった主掃除ブラシ111の逆駆動をバイアスする逆バイアスとの間の一時的な遅延の間に、飾り房/縁飾りを強制的にほどき/解除するばねの役割をさらに果たす。剛毛115は、主として掃除するために使用されうるが、他方でフラップ113は、主として絡まりの解除目的に使用されうる。これは、絡まった紐が主掃除ブラシ111の中でフラップ113によって食い取られかつ保持される場合に、ロボット100が掃除(カーペットの撹拌)を続行することを可能にする。本明細書で説明されたものと組合せ可能な他のロボットの細部および特徴構造が、ここで参照によりその内容全体が組み込まれる以下の米国特許仮出願第60/747791号に見いだすことができる。
【0026】
図6Aおよび6Bは、縁部掃除ヘッド106aの上方斜視図および分解組立図を示す。縁部掃除ヘッド106aは、シャーシ102によって担持され、ブラシ120を非水平軸回りに回転するために縁部掃除ヘッドモータ118および駆動力伝達装置119によって駆動される。ブラシ120は、シャーシ102の周縁を越えて延びるブラシ要素122A〜Fを有する。各ブラシ要素122A〜Fは、隣接するブラシ要素と約60度の角度を形成し、これらの要素の軸に沿って延びる剛毛が先端に付けられる。ブラシ120は、ブラシ要素122A〜Fの端部が作業表面に対して直角に移動するように、垂直軸回りに回転可能である。縁部掃除ヘッド106aは、ブラシ120がシャーシ102の縁部を越える汚れおよびゴミを掃き取りできるように、ロボット100の縁部に近接して配置されうる。幾つかの実施態様では、縁部掃除ヘッド106aが、ロボットの垂直軸からずれた(傾斜した)軸回りに動作する。図6Cに模式的形態で示したように、縁部清掃ヘッド106aは、ゴミをロボット周辺部の外側から主作業幅に向かって集めるが、このような集められたゴミが一旦主作業面にくれば、そのようなゴミをかき乱さず、または主作業面になければゴミをロボットの作業幅からはじき出すために、前方向および左右方向へ傾斜しうる(すなわち、車輪接触平面の内部の移動方向から約45度の線回りに、その平面に対して下向きに傾斜する)。この軸ずれは、毛羽織物のような様々なカーペットの種類に適するように、縁部掃除ヘッド106aの傾きを個別修正するために随意選択的に調節可能である。
【0027】
縁部掃除ヘッドの他の構成もロボット100に使用可能である。例えば、縁部掃除ヘッドは、120度分離された3つの等間隔のブラシ要素を有してもよい。図7は、回転可能な水切り126がブラシの代わりに使用される縁部掃除ヘッド124の別の実施例を示す。他の構成では、縁部掃除ヘッドが、シャーシ102の周縁を越えて広がる1つまたは複数の吸着繊維を有する。
【0028】
図8Aは、自律網羅型ロボット100に使用されうるバンパ130を示す。図8Bは、バンパ130の内部に収容可能な近接センサ134を示す。駆動システム104は、方位設定および速度設定にしたがってロボット100を操縦するように構成されうる。近接センサ134は、ロボットの前方の潜在的な障害物を感知することができる。
【0029】
図9Aは、ロボット100の電子機器の模式図である。ロボット100は、全方向受光器、指向性受光器、近接センサ134、および衝突センサ132を同時に制御するバンパ用マイクロコントローラ107Aと通信する制御装置108を具備する。制御装置108は、クリフセンサ140および各モータ用のモータ電流センサを含めて、他のすべてのセンサ入力を監視する。
【0030】
ロボット100の方向および速度の制御は、近接センサ134が潜在的障害物を検出するときにロボット100の速度の大きさを低減するために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6809490号および同第6781338号に一般的に開示された、網羅および範囲限定のための行動規範型ロボットシステムの原理に従って、アービタによって選択される(かつ制御装置108によって実行される)動作制御行動によって対処することができる。制御装置108によって実行される動作行動は、衝撃センサ132が障害物とのロボット100の衝突を検出するときに、ロボット100の速度も変更可能である。したがって、図9Bを参照すると、ロボット100は、巡行または直線行動900を実行することによって床表面を横断する。ロボット100が、近接センサ134によって、近接するが、まだ障害物に接触していないことを検出するとき、ロボット100は、減速ルーチン902(これは1つの行動でもよいし、1つの行動の一部でもよいし、または2つ以上の行動によって形成されてもよい)を実行するが、そのルーチンでは、ロボット100は、全速掃除速度で障害物に突進することはなく、衝突が実際に発生するときに、衝突の騒音がより小さくかつ衝突が表面を傷つける恐れがより少ないように、制御装置108によって、潜在的な障害物に向かうロボットの接近速度を、約300mm/秒の全速掃除速度から約100mm/秒の減速掃除速度まで落とす。全体的な騒音、ロボット100にまたはこのロボットによって衝突される物体に対する潜在的な損傷が軽減される。ロボット100が、衝突センサ132によって物体との接触を検出するとき、ロボット100は、以下のルーチン、すなわち、弾む910、障害物の周囲を追従する912、駆動方向を変更しかつ物体から遠ざかる914、または物体(例えば、壁)に近接しかつそれに沿って追従するように駆動方向を変更して曲がるというルーチン914Bの1つを実行する。弾む910は、物体に沿って弾むようにロボット100が移動することを必然的に伴う。物体の周囲に追従する912は、ロボット100が、例えば、物体の近傍を掃除するためにかつ/または壁際まで掃除するために、物体の周囲に沿って所定の距離をおいて追従するように近接センサ134を使用することを必然的に伴う。ロボット100は、連続的に部屋を掃除し、ロボットが前方向で近接する物体(それは壁、テーブル、椅子、ソファー、または他の障害物でありうる)を検出するとき、ロボットは、減速されるけれども、中断することなく同じ方向で掃除を続行する。所定のおよび/または無作為の場合に、ロボット100は、縁部掃除ヘッド106aが床と壁または障害物との間のコーナからゴミまたは汚れを集めるように、本質的に減速掃除速度で、物体に衝突し、主掃除ヘッド106bの縁部が可能な限り壁に近接するように所定の位置で旋回し、かつロボットの側面に接する物体を緊密に追従する。一旦ロボット100が壁を離れると、所定の制限範囲内の所定のおよび/または無作為化された距離を隔てた後で、ロボット100は、その速度を全速掃除速度まで上げる。他の場合では、ロボットは、物体に衝突し、物体または壁から離れる方向に面するまで定位置で旋回し、かつ直ちに全速掃除速度で物体または壁から遠ざかる。
【0031】
ロボット100は、制御装置108の内部の行動ソフトウェアアーキテクチャを使用する。本明細書で論じるロボット100の実施形態は行動規範型制御の一部しか使用できないか、または全く使用できないが、行動規範型制御は、ロボットが堅牢である(すなわち、立ち往生したりまたは故障したりしない)ばかりでなく、安全でもあるように制御する際に効果的である。ロボット100は、制御装置108の中のアービタによって実行される幾つかの行動を有する制御およびソフトウェアアーキテクチャを使用する。行動は、センサ事象に応答してアービタに入力される。1つの実施形態では、すべての行動が相互に対して固定された相対優先順位を有する。アービタ(この場合では)は可能化条件を認識し、その行動は可能化条件の完全な組を有しており、アービタは可能化条件を満たした行動の中で最高優先順位を有する行動を選択する。優先順位の降順では、行動は、一般に、脱出および/または回避行動(クリフを回避したりまたはコーナから脱出したりするような)、ならびに作業行動(例えば、壁追従、弾み、または直線駆動)として分類される。行動には、様々な脱出(コーナ脱出、谷間下り防止、立ち往生状況、例えば、米国特許第6809490号で開示されたような幾つかの回避行動を抑止する「弾道学的な」一時的ファイアアンドフォーゲット移動を含む)、クリフ回避、仮想壁回避(仮想壁はゲートウェイビームによるビーコンでありうる)、スポット網羅(螺旋または犂耕書式パッチのような限定的なパターンで網羅する)、位置合わせ(障害物追従中に遭遇する前方障害物、例えば、内側コーナと位置合わせするために側部近接センサを使用して、定位置で旋回する)、追従(ロボットの側面に延びる側部近接センサまたはバンパを使用する、障害物に沿った実質的に平行な追従または衝突追従のいずれか一方または両方を表す)、「弾む」(ロボットが物体に衝突した後に生起する行動)ために衝突に応答すること、および運行(巡行)が含まれうる。行動の優先順位を決定する間に何らかのロボットの動作が行われる。2つ以上の行動がアービタの中に存在すれば、任意の対応する必要条件が満足される限り、より高い優先順位を有する行動が実行される。例えば、クリフ回避行動は、クリフ検出センサによってクリフが検出されなければ実行されることはないが、クリフ回避行動の実行は、可能化条件を同様に満たしている他の行動の実行よりも常に優先順位が高い。
【0032】
反応型行動は、その可能化条件またはトリガとして、様々なセンサおよび現象の検出を含む。これらには、前方近接検出(複式)、前方衝突検出(複式)、クリフセンサ(複式)、仮想壁信号(これは、むしろ網羅トリガと考えてもよい)の検出のような、障害物の回避および検出用のセンサが含まれる。これらの種類のセンサは、フィルタ、条件付け、およびそれらのドライバによって監視および条件付けられるが、これらのセンサは、可能化条件を生成するばかりでなく、行動が予測可能に働くことを助け、かつすべての利用可能な情報(例えば、1ビット「正/誤」信号への変換、センサ群からの強度または時間差に基づいて衝突または出来事の見込み角度の記録、または履歴、平均、頻度、もしくは変動情報)に関するデータを記録することもできる。
【0033】
実際の物理的センサは、条件付けおよびドライバから合成された「仮想」センサによってアーキテクチャの中に表示されうる。モータの過電流、ロボット100の静止または立ち往生状況(車輪エンコーダまたはカウンタからの走行距離計読取り値の欠如を監視することによって)、電量分析による蓄電池充電状態のようなロボット100に関して固有受容的なもしくは解釈された、検出可能なまたは解釈された物理的特性から合成された追加的な「仮想」センサ、および他の仮想センサ。
【0034】
さらに、反応型行動は、追尾または追従されるべき検出現象を表す可能化条件に従って実行可能である。ビームまたは無線(RF、音響)信号が、指示なしでまたは幾つかの場合では指示されて検出可能である。指示を与える遠隔ビームまたは標識(バーコード、逆反射目印、特徴的目印、基準目印、または視覚によって認識される自然の目印)が、ホーミングまたは相対移動を可能にするが、しかし、指示なしでも、ロボット100は、検出信号の存在、非存在、および/または相対的な強度に基づいてサーボ機構制御に移行することができる。ロボット100からのビーム、縁、または線の反射も同様に検出可能であり、追従行動(ロボット100による障害物追従のような)が、このような信号に基づいてサーボ機構制御によって実行される。ゴミまたはアーティファクト信号が、ロボットが集めたゴミまたは横切った物体を監視することによって収集可能であり、この信号は、スポット網羅パターンを制御する反応型行動のための可能化条件でありうる。
【0035】
ロボット100は、一般に反応型行動とは考えられていない同時発生過程、すなわち、「並行」過程を維持する。協働的または他の多重タスク様態でプロセッサ時間を殆どの他の過程(例えば、アービタおよび行動を含む)に割り当てるために、スケジューラが必要でありうる。より多くのスレッディングが利用可能であれば、スケジューラによって管理されうる過程がより少なくなる。留意したように、フィルタおよび条件付けならびにドライバは、生の信号を解釈および翻訳することができる。これらの過程は反応型行動とは見なされず、モータ駆動装置または他のアクチュエータに対する直接的な制御を行わない。さらに、本実施形態では、主ブラシおよび側部ブラシは専用のブラシ行動およびブラシ制御アービタによって他に制御可能であるが、1つまたは複数のブラシモータ制御装置が、これらのブラシを制御する。
【0036】
別の実施例によれば、減速ルーチン902が、約1から10インチ(好ましくは1から4インチ)で作動するべき赤外線の近接センサ134を使用する(すなわち、受光器が、相互に向かって角度を成す発光器および受光器の重なり空間の中で生じる反射光から受け取るとき)。この距離は、IR近接センサ134または交差ビームセンサの有効範囲内であるが、しかし検出障害物と衝突する前にロボット100を減速するのに十分な時間がある範囲内にあるように選択される。従来の近接センサは、障害物アルベドに応じて信号強度を反射するが、交差ビーム信号は、受光器および発光器のビーム/領域が交差する、センサから特定の距離の中に侵入する様々なアルベドに関して閾制限されうる。さらに、近接検出された壁に基づく減速は、衝突センサ132とは別個に、使用者によって抑制または中断されうる。制御装置108は、ロボットの下降を実質的に安定的に減速し、次いでゆっくりと巡行させることができる。制御装置108は、約3インチを超えてゆっくりとS字カーブを実行することが可能であり、安定的に、しかし約3インチを超える加速または減速率で速度を落とすことができる。脱出行動、例えば、パニック、静止、立ち往生、谷間下り防止の間に、ロボットは、任意の脱出行動または幾つかの回避行動に関する可能化条件として通常は近接センサ134を使用しないことによって、本質的に近接センサ134の切断が可能である。
【0037】
駆動システム104は、前方障害物の検出を示す近接センサ134からの信号に応答して速度設定を低減し、他方では、現状の方位設定に従ってロボット100を前進させて床または表面に対する作業を続行するように構成可能である。駆動システム104は、障害物との接触を示す衝突センサ132から受け取った信号に応答して方位設定を変更するように構成可能である。例えば、駆動システム104は、ロボット100が障害物の周囲を追従するように、衝突センサ132および近接センサ134から受け取った信号に応答して方位設定を変更するように構成可能である。別の実施例では、駆動システム104は、ロボット100を障害物から遠ざけて誘導するために方位を変更するように構成可能である。
【0038】
近接センサ134は、赤外線発光器および受光器の1つまたは複数の対を含みうる。例えば、変調された発光器および標準的な受光器が使用可能である。ライトパイプ(図示せず)、コリメーティングもしくは拡散光学系、フレネルもしくは回折光学系が、直前方向のような高確率/高衝突区域において、より均一な光パターンまたはより集中的なもしくはより検出可能性が高い光パターンを供給することによって、盲点を排除するために幾つかの実施態様で使用されうる。別法として、幾つかの実施態様は、音波探知器または他の種類の近接センサを利用しうる。
【0039】
幾つかの実施態様では、衝突センサ132が機械式スイッチ130を含みうる。幾つかの実施態様では、衝突センサ132が容量性センサを含みうる。他の種類の接触センサも同様に使用可能である。
【0040】
駆動システム104は、障害物との接触を示す衝突センサ132から受け取った信号に応答して、ロボット100をトルク(またはモータ電流)設定で操縦するように構成可能である。例えば、駆動システム104は、障害物との接触を示す衝突センサから受け取った信号に応答して、トルク(またはモータ電流)を増大することができる。
【0041】
自律型清掃ロボットを床の上の物体に対して操縦する方法の別の実施例では、ロボット100が最初に床の上に配置されることが可能であり(または、例えば、ロボットが充電ドックから出発する場合には既に床の上に存在しうる)、ロボット100は、掃除モードにおいて全速掃除速度で床を自律的に横断する。ロボット100がロボット100の前方に近接物体を検出すれば、ロボットは掃除速度を減速し(例えば、減速掃除速度まで)、この物体との可能性が高いが、別の物体でもありうる衝突を検出するまで、物体に向かって移動し続けかつ床の作業/掃除を続行する。物体との衝突を検出するとき、ロボット100は、それが物体に衝突し、それに隣接して、すなわち、それに沿って掃除を行うように物体に対して旋回する。例えば、ロボット100は、物体の周囲を追従し、他方で物体に沿ってまたは隣接して掃除を行うことができる。別の場合では、ロボット100は、物体との接触に応答して、物体に隣接して掃除を行いながら、物体からある一定の追従距離を維持することができる。物体からの追従距離は、物体との接触直後のロボット100と物体との間の距離、例えば、0から2インチでありうる。この距離は、随意選択的に、側部または縁部清掃ヘッド106aがロボットの側面を越えて延びる距離よりも小さい。
【0042】
幾つかの場合では、ロボット100が、物体との接触に応答して物体の周囲を巡るように操縦を行う。例えば、ロボット100は、物体の回りで幾分半円の経路を描いて、または連続した交互する部分螺旋(例えば、漸減する半径を有する円弧)で移動することができる。別の場合では、ロボット100は、物体から遠ざかり、次いで物体に対して幾分正接する方向へ移動することができる。
【0043】
ロボット100は、定率で、例えば、非線形的または指数関数的な率で減速速度まで掃除速度を落とすことができる。ロボット100の全速掃除速度は約300mm/秒でよく、ロボット100の減速掃除速度は約100mm/秒でよい。
【0044】
図10は、隣接する床を検出するためにロボット100に使用可能である、衝突センサ132、床近接センサ140、および取付け留め具142である。衝突センサ132は、ロボット100とロボットの前方経路中の物体との間の衝突を検出することができる。床近接センサ140は、シャーシ102によって担持され、ロボット100が1組の階段のような「クリフ」に近接する時点を感知するために使用可能である。床近接センサ140は、クリフが検出されるか否かを示す信号を制御装置108に送ることができる。床近接センサ140からの信号に基づいて、制御装置108は、クリフを回避するために、速力または速度を変更するように駆動システム104に指示することができる。
【0045】
図11および12は、床近接センサ140の側面図および分解組立図を示す。床近接センサ140は、前方部分144、後方部分146、発光器148、受光器150、および蓋152を備える本体を有する。発光器148および受光器150は、赤外光を放出しかつ受け取る能力がありうる。発光器148および受光器150は、これらの軸が、ほぼ床距離にあるロボット100の直下の点で位置が合うように、角度を成して前方および後方本体部分144、146の内部に配置される。
【0046】
図13は、蓋152の分解組立図を示す。蓋152は、レンズ154および蓋本体156から成る。レンズ152は、赤外光に透明でよく、蓋本体156は発光器148から送られた光線を合焦し易くするために不透明でよい。蓋152の前方縁部159は、埃の蓄積を低減するのを助け、かつ、主としてセンサ140が床の上方に正確に位置決めされるときに、光が受光器150によって受け取られ、センサ140が「クリフ」上方にあるときに、低減した量が受け取られることを保証するために、この蓋の後方縁部158よりも高くなっている。幾つかの実施態様では、蓋152は、帯電防止ポリカーボネート、酸化銅ドープまたは被覆ポリカーボネート、General Electric,Inc.から入手可能な帯電防止Lexan「LNP」、帯電防止ポリエチレン、帯電防止ABS/ポリカーボネート合金、または他の同様な材料のような、帯電防止(散逸性または導電性)特性を有する材料を使用して作製される。1つの実施例が、帯電防止粉体と混合されたABS747およびPC114Rまたは1250Yを含む。好ましくは、ロボット外殻、シャーシ、および他の部品も、少なくとも一部が、静電防止蓋152を接地するために、帯電防止(例えば、帯電防止ABS)、散逸性、および/または導電性である。蓋152も任意の導電経路によって接地されうる。網羅型ロボット100が床を横断するとき、帯電防止特性を備えない蓋152は静電気で帯電される恐れがあり(例えば、摩擦によって)、それによって、毛羽のような反対の極性に帯電したゴミを蓄積する傾向を有するが、それは、発光器148および受光器150の感知視野を妨害しうる。
【0047】
床近接センサ140が床の上に適切に配置されるとき、発光器148から放出された光は、床から反射して受光器150に戻り、制御装置108によって読取り可能な信号となる。床近接センサ140が床の上方にない場合には、受光器150によって受け取られる光の量が減少し、制御装置108によってクリフとして解釈されうる信号となる。
【0048】
図14は、脚輪アセンブリ116の実施例を示す分解組立図である。脚輪アセンブリ116は、シャーシ102およびロボット100から個々別々に取り外し可能である。脚輪アセンブリ116は、脚輪筐体162、脚輪164、脱輪センサ166、および車輪−床近接センサ168を具備する。
【0049】
脚輪筐体162は、脚輪164、脱輪センサ866、および車輪−床近接センサ168を担持する。脚輪164は、垂直軸回りに旋回し、脚輪筐体162の水平軸回りに転動する。
【0050】
脱輪センサ166は、シャーシ102に対する脚輪164の下向き変位を検出する。脱輪センサ166は、脚輪164が作業表面と接触しているかどうかを判定する。
【0051】
車輪−床近接センサ168は、脚輪164に隣接して収納される。車輪−床近接センサ168は、シャーシ102に対する床の近接度を検出する。車輪−床近接センサ168は、赤外線(IR)発光器およびIR受光器を含む。IR発光器はIR信号を生成する。IR信号は作業表面から反射する。IR受光器は反射されたIR信号を検出して、作業表面の近接度を判定する。別法として、車輪−床近接センサ168が、可視光センサのような別の種類のセンサを使用してもよい。車輪−床近接センサ168は、ロボット100が階段または棚部のような作業表面中のクリフから落下するのを防止する。幾つかの実施態様では、駆動輪アセンブリ112、114は、それぞれが車輪−床近接センサを含む。
【0052】
図15は、脱輪センサ166の実施例を示す分解組立図である。脱輪センサ166は、IR発光器170およびIR受光器172を筐体173の中に含む。IR発光器170はIR信号を生成する。IR信号は脚輪164から反射する。IR受光器172は反射されたIR信号を検出し、脚輪164の垂直位置を判定する。
【0053】
図16は、脚輪アセンブリ116の実施例を示す断面図である。本図は、IR信号が反射する脚輪164の上表面174を示す。IR受光器172は、反射されたIR信号を使用して脚輪164の垂直位置を判定する。
【0054】
幾つかの場合では、駆動システム104が、すべての車輪が脱輪するときに床近接センサの動作可能性を検証する検証システムをさらに含みうる。この検証は、すべての車輪が脱輪したのは、ロボットが人間によって床から持ち上げられている結果である公算が高いという推断に基づいており、必ずしもすべての床近接センサが床表面に整合しないわけではないこと(反射が測定されないかまたは強すぎる反射)を確認するために検査するものである。床表面または過剰に強い反射(例えば、遮断されたセンサを示す)に整合するセンサは、いずれも妨害されていると見なされる。この検出に応答して、ロボットは、床近接センサが掃除されるべきであることを標示または光によって示す保守報告セッションを開始することができる。この検出に応答して、ロボットは、すべての床近接センサが掃除されかつ機能していることを検証手順によって判定するまで、前進動作を禁止する。例えば、機械式スイッチセンサが脚輪164の上方の箇所176に位置決めされうるが、この箇所は、脚輪が押し込まれるときに(例えば、それが床によって押し上げられるときに)センサを閉鎖させ、よって脚輪164が床の上にあるという交番信号を制御装置108に供給する。
【0055】
場合によって、自律型清掃ロボットは、敷物の端の縁飾りまたは結び目が解けた靴から垂れ下がる靴ひものような、外部物体が絡まった状態になりうる。自律型清掃ロボットシステム(ロボット100のような)の絡まりを解除する方法は、最初にロボット100を床表面に配置することを含みうるが、それは、ロボットがドックから出発する場合(例えば、かなりの遅延の後であるが、しかし床の上に配置されている)を含むものと考えられるべきである。ロボット100は、掃除ヘッド106a、106bを動作させながら自律的に床表面を横切って前進する。ロボット100は、不変の方向で床表面を横切って運行し続け、中断することなく床作業および/または床掃除を行いながら、測定されたモータ電流の増大(例えば、閾値を超えるスパイクまたは増大、所定の勾配の急激な増大)に応答して、縁部掃除ヘッドモータ118を逆バイアスすることができる。
【0056】
幾つかの場合では、ロボット100は、高い掃除ヘッドモータ電流に応答して縁部掃除ヘッド106aの回転を逆バイアスする前に(動作行動による前進動作制御とは別個に)、前進することができる。ロボット100は、一定時間の間、増大した縁部掃除ヘッド106aモータ電流に応答して、別個に、縁部掃除ヘッド106aの回転を逆転しうる。増大した電流に関する時間は、例えば、秒単位で指定可能である。縁部掃除ヘッド106aの回転を逆バイアスした後で、ロボット100は、逆方向へ進み、その移動方向を変更し、かつ新たな方向へ移動することができる。
【0057】
特定の組合せでは、ロボットは、このロボットの中心を横切って、例えば、ロボット作業経路を横断する方向または主駆動輪に平行な方向へ延びる主掃除ヘッド106bばかりでなく、ロボットの脇(ロボットの本体直下だけではなく)を掃除するように、ロボットの横側に配置される縁部掃除ヘッドも、側面方向のロボットの周囲を越えて縁部掃除ヘッドを繰り出す位置に具備する。主掃除ヘッ106bは、少なくとも1つの回転駆動式ブラシ111を含み、縁部掃除ヘッド106aは、少なくとも1つの回転駆動式ブラシ120を含む。
【0058】
図9Cに示したように、主掃除ヘッド106bは、例えば、ブラシモータ制御プロセス930によって制御される。ブラシモータ制御プロセスは、主掃除ヘッドモータの電流センサを監視し、急激な電流上昇(例えば、閾値、所定量の積分されたまたは別様に求められた勾配を超えるスパイクもしくは上昇)が生じるとき、ロボットが前進中であるかどうかを随意選択的にチェックする(例えば、過程、前進動作を示す標識、または直接的に主駆動モータを監視することによって)。ロボット100が前進中であり、このような前進を中断することがなければ(ロボット動作が行動によって制御された別個の駆動装置によって制御されるとき、そのような前進動作を行う能力から随意選択的に切り離されて)、ブラシモータ制御プロセス930は、ブラシモータに逆バイアスを掛ける。
【0059】
逆バイアスは、絡まった同じコード、紐、または飾り房をブラシ回りに逆方向へ巻き付けることを回避するように、モータを急激に逆方向へ回転させることはない。そうではなく、ブラシモータ制御プロセス930は、ブラシの回転を殆どニュートラルに維持するのに十分な程度の僅かなバイアスを掛ける。ロボット100が前進するとき、絡まりを巻き戻すようにブラシを引っ張るコード、紐、または飾り房は、逆方向の減衰したトルクをモータに伝達するだけであるが(例えば、モータとブラシとの間の歯車箱が、逆の機械的拡大率で歯車箱の逆駆動を可能にするので)、逆バイアスと組み合わさって、この減衰したトルクは、より多くの張力がコードまたは紐によって印加されるとき、例えば、ロボットが、コードもしくは紐または飾り房が取り付いた場所からさらに遠ざかるとき、絡まったブラシの、補助されているがゆっくりとした次第に速度が上昇する巻戻しをもたらす。
【0060】
逆バイアスは、時間が切れるまで、または引っ張りもしくはロック負荷がモータで検出されなくなる(例えば、絡まりがなくなる)まで続行し、その時点で、本過程が終了し、掃除ヘッドは表面を掃除する方向で通常の回転を再開する。
【0061】
縁部掃除ヘッド106aの縁部掃除ブラシ120は、縁部ブラシモータ制御過プロセス960において実質的に同じ制御を受けるが、この制御プロセスでは、縁部ブラシ120の回転が、同様の様態で逆バイアスされる962(図9Cにも示されている)。
【0062】
したがって、主掃除ヘッド106bおよび縁部掃除ヘッド106aは共に、相互に別々にかつロボット動作とは別個に制御され、それぞれが他方を監視または妨害することなく絡まりから抜け出すことが可能である。幾つかの場合では、それぞれが同時に絡まり、別個であるが同時に制御することで、両方が同時に巻戻されるかまたは自己解放することを可能にする。さらに、ブラシモータを反応型制御下に置くことによって(駆動モータ状態または他の全体的なロボット状態を待つことなく)かつほんの僅かな逆バイアスで、ブラシは、急激な電流上昇が少しでも検出され、絡まりをいち早く把握すると、直ちに巻戻しのために使用可能になるが、いずれにしても同様の絡まり問題を逆方向で惹起するほど十分な量まで逆転することはない。
【0063】
幾つかの場合では、動作制御はブラシの状態とは別個であり、かつそれを監視することはないので、ロボット100は前進し続け、縁部掃除ヘッド106bは、ロボット100がある程度の量だけ前進した後で、主掃除ヘッド106bの回転を逆バイアスし始める。幾つかの場合では、ロボット100が、ある一定の時間の間の高い掃除ヘッドモータ電流に応答して、主掃除ヘッド106bの回転を逆転し始めることができる。主掃除ヘッド106bの回転を逆転した後、ロボット100は、逆方向に移動し、駆動方向を変更し、かつその駆動方向へ移動することができる。
【0064】
図17A〜Hは、掃除ヘッドの様々な構成を備える自律型清掃ロボットの絡まりを解除方法の実施例を示す。一般に、掃除ヘッドは、電気モータによって駆動されうるローラを有する。汚れおよびゴミが、掃除ヘッドによって拾い上げられ、後で手動または自動的に廃棄するために容器の中に堆積される。自律型清掃ロボットの方向を変更するための駆動モータの制御および撹拌ブラシローラの制御にも電子制御装置を設けることができる。このような方法は、自律型清掃ロボットが絡まり状況に遭遇した後も、操縦員不在で自律型清掃ロボットに掃除を再開させることができる。
【0065】
図17Aは、撹拌ローラ202が作業表面と正接して接触する自律型清掃ロボット200の掃除ヘッド201の側面図を示す。ローラ202は、ブラシ室206の内部に組み込まれる吸引ダクト204に向かって、汚れ203を掃き取る。空気吸引流の利用によって、集められたゴミ210は容器212に搬送されうる。
【0066】
ローラ202の動きが所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、掃除ヘッド201は停止可能であり、ロボット200は、ローラ202が障害を解除する程度に十分な最小限の動力を逆方向へ受けた状態で、方向を逆転することが可能になる。例えば、コードがローラ202回りに巻き付けられた場合に、ローラ202は、ロボット200が後退するときにコードが巻き戻るように、切り離されて回転可能になる。次いで、ロボット200は、元の回転方向でローラ202の動作を再開し、元の方向でロボットの動作を再開する。
【0067】
図17Bは、ブラシローラ214が追加されたロボット200を使用して絡まりを解除別の実施例を示す。ブラシローラ214は、同じかまたは異なるモータによって駆動され、作業表面に対して垂直に回転することができる。ブラシローラ214は、ロボット200の縁部からローラ202の集塵区域218まで汚れ216を送る。
【0068】
本実施例では、ローラ202または214が所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、掃除ヘッド201は停止可能であり、ロボット200は、ローラ202、214が障害を解除する程度に十分な最小限の動力を逆方向へ受けた状態で、方向を逆転することが可能になる。例えば、コードがローラ202または214の回りに巻き付けられた場合に、ローラ202もしくは214または両方は、ロボット200が後退するときにコードが巻き戻るように、切り離されて回転可能になる。次いで、ロボット200は、元の回転方向でローラ202、214の動作を再開し、元の方向でロボットの動作を再開する。
【0069】
図17Cは、自律型清掃ロボット240の下面図およびこのロボットの内部の掃除ヘッドの側面図を示す。第1のブラシローラ244および第2のブラシローラ246は、作業表面と正接して接触している。ローラ244および246は、作業表面を撹拌し、これらのローラの間に捕らわれたゴミ248をブラシ室252の内部に組み込まれる吸引ダクト250に向かって動的に持ち上げる。空気吸引流254の利用によって、集められたゴミ256は容器258に搬送されうる。
【0070】
ローラ244、246の動きが所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、ローラ244、246は停止可能であり、ロボット240は、ローラ244、246が障害を解除する程度に十分な最小限の動力を逆方向へ受けた状態で、矢印260によって示したように前進し、元の回転方向でローラモータの動作を再開することが可能になる。
【0071】
図17Dは、絡まりを解除方法の別法による実施例を実行するロボット240を示す。撹拌ローラ244、246の動きが所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、ローラ244、246は切り離されうる(すなわち、能動的に駆動されない)。次いで、ロボット240は、ローラ244、246が障害を解除する程度に十分な最小限の動力を逆方向へ受けた状態で、矢印262によって示したように方向を逆転するが、その時点で、ローラ244、246はそれらの元の回転方向で再係合されることが可能であり、ロボット240はその元の方向で運転を再開する(矢印264によって示す)。
【0072】
図17Eは、3つのローラを備える自律型清掃ロボット270の側面図を示す。ロボット270は、掃除ヘッド272および側部ブラシ274を有する。掃除ヘッド272は、垂直撹拌ローラ276および逆回転撹拌ローラ278を有する。撹拌ローラ276および278は、相互に対してかつ作業表面に対して平行に回転駆動可能であり、ブラシローラ274は、1つまたは複数の電気モータ(図示せず)によって作業表面に対して垂直に駆動可能である。ブラシローラ274は、予め作業表面を掃き取り、矢印279によって示したように、汚れおよびゴミを撹拌ローラ276、278に向かって押し込む。撹拌ローラ276、278は、ブラシ室284の内部に組み込まれる吸引ダクト282に向かって汚れ280を押し込むことができる。空気吸引流の利用によって、集められたゴミ288は容器290に搬送されうる。
【0073】
撹拌ローラ276、278の動きが所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、1つまたは複数のローラモータは停止されるか、または障害物もしくは妨害物を除去しようと逆方向へ一時的に駆動されうる。次いで、これらの1つまたは複数のローラモータは、元の回転方向で動作を再開することができる。
【0074】
図17Fは、網羅型ロボット270の絡まりを解除方法の別の実施例を示す。撹拌ローラ276、278の動きが所定のまたは設定可能な程度にまで阻止もしくは妨害される場合に、1つまたは複数のローラモータは停止されるか、または逆方向へ一時的に駆動されうる。次いで、これらの1つまたは複数のローラモータは、元の回転方向でローラ276、278の駆動を再開することが可能であり、他方で同時に、ロボット270の移動方向を逆転するか、またはその軸回りに捻り動作を与える。次いで、ロボット270は元の方向で動作を再開することができる。
【0075】
図17Gは、2つのローラおよび2つの空気ダクトを備える自律型清掃ロボット300の側面図および底面図を示す。ロボット300は、掃除ヘッド302、垂直撹拌ローラ304、および逆回転撹拌ローラ306を有する。撹拌ローラ304および306は、1つまたは複数の電気モータ(図示せず)によって相互にかつ作業表面に対して平行に回転駆動されうる。
【0076】
ローラ304、306は、ブラシ室312の内部に組み込まれる主空気ダクト308に向かって汚れおよびゴミ307を動的に持ち上げかつ押し込む。ローラ304、306によって受け渡される汚れおよびゴミは、ローラの背後に配置された副空気ダクト310に遭遇しうる。空気吸引モータ(図示せず)によって生成された吸引流は、集められた汚れおよびゴミをダクト308、310経由で容器314に搬送しうる。関連する電子制御装置が、ロボット300を旋回および方向転換し、かつ撹拌ローラ304、306も方向制御するモータを駆動するために制御を行う。
【0077】
撹拌ローラ304、306の動きが阻止または妨害される場合には、制御装置は、1つまたは複数のローラモータを停止すること、またはこのモータに最小限の動力を逆方向へ与えることの1つまたは複数を実行し、次いで元の回転方向でローラモータの動作を再開する。同時に、ロボット300は、その方向を少なくとも一時的に逆転するか、またはその軸回りに捻り動作を与え、次いでその元の方向で動作を再開することができる。
【0078】
図17Hは、ブラシローラ316が追加されたロボット300に関わる絡まりを解除方法の別の実施例を示す。ブラシローラ316は、垂直の回転軸を有し、現状のまたは専用の電気モータによって駆動されうる。ブラシモータ316は、作業表面を予め掃き取り、汚れおよびゴミ318を撹拌ローラ304、306に向かって押し込む(矢印318によって示す)。次いで、汚れおよびゴミは、上で説明したように除去されうる。
【0079】
撹拌ローラ304、306の動きが阻止または妨害される場合には、制御装置は、1つまたは複数のローラモータを停止するか、またはこのモータに最小限の動力を逆方向逆へ与え、次いで元の回転方向でローラモータの動作を再開することができる。同時に、ロボット300は、その方向を少なくとも一時的に逆転するか、またはその軸回りに捻り動作を与え、次いでその元の方向で動作を再開することができる。
【0080】
幾つかの実施態様が説明された。しかし、様々な変更形態が以下の特許請求の趣旨および範囲から逸脱することなく実施されうることが理解されよう。したがって、他の実施態様は以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H