特許第5736001号(P5736001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736001帰路管の補修方法及び帰路管の中間接続部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736001
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】帰路管の補修方法及び帰路管の中間接続部
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/22 20060101AFI20150528BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20150528BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20150528BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   F16L33/22
   F16L1/00 T
   F16L55/18 B
   H02G1/06 311H
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-95294(P2013-95294)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2014-214861(P2014-214861A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘正
(72)【発明者】
【氏名】川井 栄一
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−089181(JP,A)
【文献】 特開2002−354620(JP,A)
【文献】 特開2006−307914(JP,A)
【文献】 特開2005−069255(JP,A)
【文献】 特公平05−072163(JP,B2)
【文献】 特公昭63−046645(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L33/00−33/34
F16L 1/00
F16L55/18
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部を有するパイプ状の中間接続部材を介して2つのゴム管が連結された中間接続部を備え、地中送電網の冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管の補修方法であって、
前記ゴム管のうち損傷したゴム管を、当該損傷したゴム管が接続されている前記中間接続部材から取り外す第1工程と、
前記中間接続部材の前記損傷したゴム管を取り外した側の補修管路取付部の外周面に、シーリング材を塗布する第2工程と、
可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能で、合成樹脂からなる不透水層と、合成繊維からなる補強層とを有する軟質ホースの端部に所定長の切り込みを形成し、前記中間接続部材の前記シーリング材を塗布した側に、前記軟質ホースの端部が前記補修管路取付部の中央側端部を超えるまで前記軟質ホースを外挿する第3工程と、
前記軟質ホースの外周面に第1の締付金具を装着し、前記補修管路取付部に対して所定のトルクで締め付ける第4工程と、
前記補修管路取付部の中央側端部近傍で前記軟質ホースを外側に折り返す第5工程と、
前記軟質ホースの折り返し部分の外周面に第2の締付金具を装着し、前記補修管路取付部に対して所定のトルクで締め付ける第6工程と、を備えることを特徴とする帰路管の補修方法。
【請求項2】
それぞれの前記管路取付部の外周面には、リング状の凹部が複数形成され、
前記第4工程では、前記補修管路取付部に形成された前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側から2つ以上に対して、前記第1の締付金具を締め付け、
前記第5工程では、前記補修管路取付部に形成された前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側から1つ以上が前記軟質ホースで二重に覆われるように前記軟質ホースを折り返し、
前記第6工程では、前記補修管路取付部に形成された前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側から1つ以上に対して、前記第2の締付金具を締め付けることを特徴とする請求項1に記載の帰路管の補修方法。
【請求項3】
前記管路取付部は、前記複数の凹部の間に、長手方向中央側に向けて拡径するテーパー部を有することを特徴とする請求項2に記載の帰路管の補修方法。
【請求項4】
前記切り込みの長さが、前記軟質ホースの折り返される部分の長さと同等であることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の帰路管の補修方法。
【請求項5】
前記切り込みは、前記軟質ホースを円周方向に2〜4分割することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の帰路管の補修方法。
【請求項6】
地中送電網の冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管の中間接続部であって、
両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部を有するパイプ状の中間接続部材と、
少なくとも一方の前記管路取付部に取り付けられ、端部に形成された所定長の切り込みを介して外側に折り返された、可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能な軟質ホースと、
前記軟質ホースの折り返されていない部分の外周面に配置され、前記管路取付部に対して締め付ける第1の締付金具と、
前記軟質ホースの折り返された部分の外周面に配置され、前記管路取付部に対して締め付ける第2の締付金具と、
前記管路取付部と前記軟質ホースとの間に介在するシール部と、を備えることを特徴とする帰路管の中間接続部。
【請求項7】
それぞれの前記管路取付部の外周面には、リング状の凹部が複数形成され、
前記軟質ホースは、接続される側の前記管路取付部に形成された前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側の一つを折り返し部分で覆い、
前記第1の締付金具は、前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側から2つ以上に対応して配置され、
前記第2の締付金具は、前記複数の凹部のうち少なくとも長手方向中央側から1つ以上に対応して配置されることを特徴とする請求項に記載の帰路管の中間接続部。
【請求項8】
前記管路取付部は、前記複数の凹部の間に、長手方向中央側に向けて拡径するテーパー部を有することを特徴とする請求項に記載の帰路管の中間接続部。
【請求項9】
前記軟質ホースは、合成樹脂からなる不透水層と、合成繊維からなる補強層と、を有することを特徴とする請求項からの何れか一項に記載の帰路管の中間接続部。
【請求項10】
前記切り込みの長さが、前記軟質ホースの折り返される部分の長さと同等であることを特徴とする請求項からの何れか一項に記載の帰路管の中間接続部。
【請求項11】
前記切り込みは、前記軟質ホースを円周方向に2〜4分割することを特徴とする請求項から10の何れか一項に記載の帰路管の中間接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中送電網の間接冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管の補修方法及び帰路管の中間接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に都市部や市街地では、地中に設けられた洞道内の棚やトラフに電力ケーブルを敷設し、これを使用して送電を行う地中送電網が整備されている。地中送電網においては電力ケーブルの大容量化、高電圧化が進められており、これに伴い電力ケーブルの発熱量も大きくなっている。電力ケーブルの発熱により温度が上昇すると、電力ケーブルの絶縁性能が損なわれる虞があり、また洞道内での作業環境が悪化するため、洞道内(トラフ内を含む)には電力ケーブルを冷却するための冷却システムが設置される。
従来、この種の冷却システムとしては、電力ケーブルに沿って敷設された往路管に冷媒(例えば水)を流すことによって、洞道内(又はトラフ内)の空気を冷却し、間接的に電力ケーブルを冷却する間接冷却方式のものが知られている(例えば特許文献1〜4)。
【0003】
図1は、地中送電網の洞道内の構成を示す概略図である。
図1に示すように、洞道11内には、棚12やトラフ13が多段に配置され、これらに各種ケーブル14〜16が敷設される。図1に示す例では、トラフ13内に超高圧の電力ケーブル14が敷設され、これに沿ってケーブル冷却用の往路管21が敷設されている。
冷却装置(図示略)から送出された低温(例えば10℃)の冷媒が往路管21内を流れることにより、トラフ13内が冷却され、電力ケーブル14が間接的に冷却される。また、吸熱して高温(例えば30〜40℃)となった冷媒は、洞道11内に敷設された帰路管22を通って冷却装置(図示略)に回収される。
【0004】
一般に、往路管21には、高い伝熱性能を有するステンレス製の配管が用いられる。一方、帰路管22には、高い伝熱性能は要求されず、高コストのステンレス製のものを用いる必要はないため、例えばゴム製の配管(以下、ゴム管)が用いられる。通常、帰路管22に用いられるゴム管は、受注生産品である。
【0005】
また、帰路管22には、数十〜数百mごとに中間接続部が設けられ、この中間接続部で挟まれた区間単位でゴム管を交換できるようになっている。
具体的には、図2に示すように、中間接続部100では、両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部111、112を有するパイプ状の中間接続金具110を介して2つのゴム管120A、120Bが連結される。図2に示す例では、中間接続金具110の長手方向中央の中央部115を挟んで、管路取付部111、112に区画される。管路取付部111、112の外周面に形成されたリング状の凹部113に対応する位置において、ゴム管120の外周にステンレス製のホースバンド130が配置される。このホースバンド130を所定のトルクで締め付けることにより、ホースバンド130がゴム管120に食い込み、ゴム管120A、120Bと中間接続金具110とが水密に接続固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平5−72163号公報
【特許文献2】特公昭63−46645号公報
【特許文献3】特開平9−89181号公報
【特許文献4】特開2002−354620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、帰路管に使用されているゴム管には、経年劣化や機械的摩耗等の損傷によって亀裂が生じることがある。そして、亀裂から漏水が始まり、さらに亀裂が進んで漏水量が多くなると、重故障警報が発生し、送電設備が機能しなくなってしまう。そのため、ゴム管に損傷が生じた場合は、新しいゴム管に交換される。
【0008】
しかしながら、帰路管として適用される正規のゴム管は、受注生産品であるために納期が遅く、交換に数ヶ月を要する場合もある。また、正規のゴム管は、変形しにくく、可撓性にも乏しい。そのため、取り回しが難しく大掛かりな改修工事となり、さらには工期の調整も必要となる。
このように、ゴム管の損傷が発見されても、その箇所を早急に新しいゴム管に交換することは困難であるため、しばらくは放置されることとなる。このような状況は、近いうちに送電事故に繋がる程に危険なわけではないが、安全性、信頼性の面からできるだけ早急に対応するのが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、帰路管の一部に損傷が発見された場合に早急に対応することができ、地中送電網の安全性、信頼性の向上を図ることができる帰路管の補修方法及び帰路管の中間接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る帰路管の補修方法は、両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部を有するパイプ状の中間接続部材を介して2つのゴム管が連結された中間接続部を備え、地中送電網の冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管の補修方法であって、
前記ゴム管のうち損傷したゴム管を、当該損傷したゴム管が接続されている前記中間接続部材から取り外す第1工程と、
前記中間接続部材の前記損傷したゴム管を取り外した側の補修管路取付部の外周面に、シーリング材を塗布する第2工程と、
可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能で、合成樹脂からなる不透水層と、合成繊維からなる補強層とを有する軟質ホースの端部に所定長の切り込みを形成し、前記中間接続部材の前記シーリング材を塗布した側に、前記軟質ホースの端部が前記補修管路取付部の中央側端部を超えるまで前記軟質ホースを外挿する第3工程と、
前記軟質ホースの外周面に第1の締付金具を装着し、前記補修管路取付部に対して所定のトルクで締め付ける第4工程と、
前記補修管路取付部の中央側端部近傍で前記軟質ホースを外側に折り返す第5工程と、
前記軟質ホースの折り返し部分の外周面に第2の締付金具を装着し、前記補修管路取付部に対して所定のトルクで締め付ける第6工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る帰路管の中間接続部は、地中送電網の冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管の中間接続部であって、
両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部を有するパイプ状の中間接続部材と、
少なくとも一方の前記管路取付部に取り付けられ、端部に形成された所定長の切り込みを介して外側に折り返された、可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能な軟質ホースと、
前記軟質ホースの折り返されていない部分の外周面に配置され、前記管路取付部に対して締め付ける第1の締付金具と、
前記軟質ホースの折り返された部分の外周面に配置され、前記管路取付部に対して締め付ける第2の締付金具と、
前記管路取付部と前記軟質ホースとの間に介在するシール部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正規のゴム管の代わりに軟質ホースを用いることにより、帰路管の一部に損傷が発見された場合に早急に補修することができるので、地中送電網の安全性、信頼性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】地中送電網の洞道内の構成を示す概略図である。
図2】帰路管の中間接続部を示す図である。
図3】実施の形態で適用される軟質ホースの一例を示す図である。
図4】軟質ホースの切り込みを示す図である。
図5】実施の形態に係る帰路管の補修工程を示す図である。
図6】実施の形態に係る帰路管の補修工程を示す図である。
図7】実施の形態に係る帰路管の補修工程を示す図である。
図8】実施の形態に係る補修後の帰路管の中間接続部を示す図である。
図9】実施の形態に係る補修後の帰路管の中間接続部の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
背景技術でも説明した通り、地中送電網が敷設される洞道内には、電力ケーブルを冷却するための冷却システムが設置される。この冷却システムは、図1に示すように、冷媒を還流させる往路管21及び帰路管22を備える。冷却装置(図示略)から送出された低温(例えば10℃)の冷媒が往路管21内を流れることにより、電力ケーブル14が間接的に冷却される。また、吸熱して高温(例えば30〜40℃)となった冷媒は、帰路管22を通って冷却装置(図示略)に回収される。この冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管22には、数十〜数百m(例えば60m)ごとに中間接続部100が設けられる(図2参照)。
【0015】
本実施の形態では、図2に示す中間接続部100で連結されている一方のゴム管120Aが損傷した場合の補修方法について説明する。すなわち、本実施の形態では、中間接続部材(中間接続金具110)を介して2つのゴム管(120A、120B)が連結された中間接続部(100)を備え、地中送電網の冷却システムの冷媒流路を構成する帰路管22の補修方法について説明する。
【0016】
中間接続金具110は、例えばステンレス製のパイプ状の部材であり、両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部111、112を有する。ここでは、図2等に示すように、中間接続金具110を管路取付部111、112及び中央部115の3つの部分に区画しているが、中間接続金具110の長手方向中央を境界として一端側を管路取付部111、他端側を管路取付部112としてもよい。
それぞれの管路取付部111、112の外周面には、リング状の凹部113が複数形成される。このリング状の凹部113に対応する位置に、後述するホースバンド130、140が配置される。
【0017】
また、凹部113に隣接する部分は長手方向中央側に向けて拡径するテーパー部114となっている。中間接続金具110の中央部115の外径は、ここでは管路取付部111、112のそれぞれの最も中央側のテーパー部114の大径側の外径と同一となっている。中間接続金具110に接続される管路は、中間接続金具110により拡径され、さらにテーパー部114により部分的により拡径されるので、中間接続金具110との密着性が向上する。
【0018】
図2において、ゴム管120Aに損傷が発見された場合、中間接続金具110(右側の管路取付部111)からゴム管120Aを取り外して、新しいゴム管に交換することとなる。しかし、新しいゴム管は、受注生産品であり、ゴム管120Aの損傷が発見されてから注文されるため、早急に交換することはできない。本実施の形態では、応急処置として、損傷したゴム管120Aを軟質ホースに交換して、新しいゴム管に交換するまでの代用とする。
【0019】
本実施の形態で適用される軟質ホースは、可撓性、不透水性を有する長尺の筒状体であり、常時は平たく潰した扁平状態で折り畳んで収納可能なものである。また、軟質ホースは、帰路管22に冷媒が流れるときの圧力(例えば、0.3〜0.5MPa)に耐え得る程度の耐圧性能(例えば使用圧力:0.7MPa以上)を有する。軟質ホースとして、例えばポリエステルを繊維素材とし、軟質塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)をコーティングした市販の布編ホース(商品名:ヘビーデューティーサニーホース)を適用することができる。
【0020】
図3は、軟質ホースの一例を示す図である。
図3に示す軟質ホース200は、内径が155mm(呼径150mm)、肉厚が2.95mm、最大使用圧力が0.7MPaのヘビーデューティーサニーホース(商品名)である。軟質ホース200は、最内層201、最内層201の外周に形成される第1補強層202、第1補強層202の外周に形成される第2補強層203、及び第2補強層203の外周に形成される最外層204を備える。最内層201及び最外層204は、軟質塩化ビニル等の合成樹脂で構成された不透水層である。第1補強層202及び第2補強層203は、ポリエステル繊維等の合成繊維で構成された補強層である。軟質ホース200は、例えば押出成形により4層構造に加工される。
【0021】
帰路管に用いられる正規のゴム管の納期が2〜3週間であるのに対して、市販されている軟質ホース200は2日程度で入手することが可能であるので、ゴム管120Aの損傷が発見されたときに、早急に対応することができる。また、正規のゴム管に比較して重量が軽い上、扁平状態で収納されており取り回し性も格段に容易なので、補修工事の簡便性や施工性に優れる。
【0022】
図4図8は、実施の形態に係る帰路管の補修工程を示す図である。以下において、中間接続金具110の管路取付部111、112のうち、ゴム管を交換される側を補修管路取付部と称する。
図2に示す中間接続部100においてゴム管120Aに損傷が発見された場合、まず、軟質ホース200を洞道内に引き入れ、折り畳んだ状態で補修箇所まで運搬する。そして、軟質ホース200の端部に、予め長手方向に延在する所定長の切り込みSを形成する(図4参照)。例えば2つの切り込みを形成する場合、図4に示すように、扁平状態に潰された軟質ホース200の幅方向両側に切り込みSを形成する。これにより、軟質ホース200を中間接続金具110に外挿する作業が容易になる。なお、軟質ホース200に切り込みを形成した後、軟質ホース200を洞道内に引き入れるようにしてもよい。
【0023】
軟質ホース200に形成される切り込みSの長さは、折り返し部分に相当する長さ(ここでは補修管路取付部111と同等の長さ、すなわち中間接続金具110の略半分の長さ)とするのが好ましい(例えば図4では、切り込みSの長さは150mm)。これにより、折り返されない部分にまで切り込みSが形成されて、軟質ホース200と中間接続金具110との密着性が損なわれるのを回避できるとともに、軟質ホース200を中間接続金具110に外挿する作業が極めて容易になる。
【0024】
また、作業性と摩擦強度の観点から、軟質ホース200の円周方向が2〜4分割されるように、複数の切り込みSを形成するのが好ましい。図4には、軟質ホース200の円周方向が2分割されるように、2つの切り込みSを形成した例が示されている。切り込みSが1箇所の場合、軟質ホース200を中間接続金具110に外挿する際の作業性、また外側に折り返す際の作業性が悪くなるため、切り込みSは2箇所以上とするのが好ましい。また、切り込みSが5箇所以上になると、軟質ホース200を取り付ける際の作業性は向上するが、切り込みSを形成する作業が増えるとともに、折り返し後の接触面積が減少するため、摩擦強度が弱くなり、冷媒を流した際に軟質ホース200が中間接続金具110から抜け落ちる可能性が高まるため、切り込みSは4箇所以下とするのが好ましい。
【0025】
そして、図5に示すように、ゴム管120Aを固定していたホースバンド130を外して、損傷したゴム管120Aを中間接続金具110(右側の管路取付部111)から取り外す(第1工程)。
【0026】
次に、図6に示すように、補修管路取付部111の外周面にシーリング材を塗布し、シール部150を形成する(第2工程)。シーリング材は、水密性、接着性、追従性、及び耐久性に優れたものが好ましく、例えばシリコーンゴムを適用することができる。シーリング材としてのシリコーンゴムは、塗布前はペースト状であり、補修管路取付部111に塗布された後、硬化してゴム弾性体となる。
なお、シーリング材の塗布厚さ、及び塗布状態は特に制限されないが、むらなく均一であることが好ましい。また、シーリング材は、補修管路取付部111の凹部113A、113Bにだけ塗布するようにしてもよい。
【0027】
次に、図7に示すように、軟質ホース200の端部が補修管路取付部111の中央側端部を超えるまで、軟質ホース200を一端側(補修管路取付部111側)から中間接続金具110に外挿する(第3工程)。つまり、軟質ホース200を補修管路取付部111の中央側端部近傍で折り返すことができる状態とする。ここでは、中間接続金具110の中央部115との境界部分が、補修管路取付部111の中央側端部となる。
なお、図7では図示を省略しているが、軟質ホース200と中間接続金具110(補修管路取付部111)の間にはシール部150が介在する。図8においても同様である。また、図2図5から図8において、ゴム管120Bと中間接続金具110(管路取付部112)の間にも同様にシール部が介在する。
【0028】
具体的には、軟質ホース200を補修管路取付部111の中央側端部近傍で折り返したときに、少なくとも長手方向中央側の凹部113Aが軟質ホース200で覆われる程度に、軟質ホース200を外挿する。図7に示す例では、軟質ホース200が中間接続金具110の全部を覆うように外挿されているので、軟質ホース200を折り返したときに軟質ホース200の折り返し部分で凹部113Aを含む補修管路取付部111の全部が覆われる。
【0029】
次に、図7に示すように、軟質ホース200の外周面にホースバンド130を装着し、補修管路取付部111に対して所定のトルクで締め付ける(第4工程)。軟質ホース200は正規のゴム管に比較して変形しやすいので、ホースバンド130を締め付ける際のトルクは、軟質ホース200が損傷しない限度において、正規のゴム管を締め付けるときのトルクよりも大きくする。
【0030】
本実施の形態では、補修管路取付部111に2つの凹部113A、113Bが形成されているので、軟質ホース200の外周において、凹部113A、113Bに対応するそれぞれの位置にホースバンド130が配置され、補修管路取付部111に対して所定のトルクで締め付けられる。補修管路取付部111に3つ以上の凹部113が形成される場合、ホースバンド130は少なくとも長手方向中央側から2つ以上の凹部113に対応する位置の軟質ホース200の外周に配置され、補修管路取付部111に対して所定のトルクで締め付けられていればよい。もちろん、すべての凹部113に対応する位置の軟質ホース200の外周にホースバンド130を配置してもよい。
これにより、軟質ホース200は中間接続金具110に強固に固定されるので、冷媒を流したときの水圧で軟質ホース200が脱落したり、軟質ホース200と中間接続金具110の隙間から冷媒が漏れ出したりするのを効果的に防止することができる。
【0031】
次に、図8に示すように、軟質ホース200を補修管路取付部111の中央側端部近傍で外側に折り返す(第5工程)。
そして、図8に示すように、軟質ホース200の折り返し部分の外周面にホースバンド140を装着し、補修管路取付部111に対して所定のトルクで締め付ける(第6工程)。ホースバンド140を締め付けるときのトルクも、ホースバンド130を締め付けるときと同様に、軟質ホース200が損傷しない限度において、正規のゴム管を締め付けるときのトルクよりも大きくする。
【0032】
軟質ホース200は、正規のゴム管に比較して取り回しが容易な反面、変形しやすいために中間接続金具110との密着性は悪い。そのため、正規のゴム管と同じ固定方法、すなわち軟質ホース200を折り返さないで固定する方法では、軟質ホース200に冷媒を流した際に、軟質ホース200が中間接続金具110から抜け落ちる虞がある。
そこで、本実施の形態では、軟質ホース200を折り返した上で、さらに折り返し部分の外周面にホースバンド140を装着して、締め付けるようにしている。
【0033】
この軟質ホース200の折り返し部分の外周面において、図8では補修管路取付部111に形成された2つの凹部113A、113Bのうち、1つの凹部113Aに対してホースバンド140を装着しているが、図9に示すように、2つの凹部113A、113Bに対してホースバンド140を装着するようにしてもよい。この場合、軟質ホース200は中間接続金具110にさらに強固に固定されるので、冷媒を流したときの水圧で軟質ホース200が脱落したり、軟質ホース200と中間接続金具110の隙間から冷媒が漏れ出したりするのをより効果的に防止することができる。
このように、補修管路取付部111に複数の凹部113A、113Bが形成されている場合、軟質ホース200の折り返し部分の外周面において少なくとも長手方向中央側から1つ以上、すなわち、少なくとも凹部113Aに対応する軟質ホース200の折り返し部分の外周面においてホースバンド140を締め付けるのが好ましい。これにより、折り返し部分の中間接続金具110中央側の端部(図8図9では折り返し部分の左側端部)が捲れて、軟質ホース200が中間接続金具110から抜け落ちやすくなるのを防止することができる。
さらに、補修管路取付部111に複数の凹部が形成されている場合に、各凹部に対して、軟質ホース200の外周面(軟質ホース200の最外層204の外周面)及び軟質ホースの折り返し部分の外周面(軟質ホース200の最内層201の内周面が折り返された部分の周面)の双方にホースバンドを締め付けることで、より強固に軟質ホース200を中間接続金具110に固定することができる。例えば、図9では2つの凹部113A、113Bに対していずれもホースバンド130、140を軟質ホース200に締め付けている。また、補修管路取付部110に3つの凹部がある場合(図示略)は、ホースバンド130、140の双方をそれぞれの凹部に対応する位置の軟質ホース200に締め付ければよい。
これにより、冷媒を流したときの水圧で軟質ホース200が脱落したり、軟質ホース200と中間接続金具110の隙間から冷媒が漏れ出したりするのをより効果的に防止することができる。また、軟質ホース200の折り返し部分の外周面において凹部に対応する位置にホースバンドを締め付けない部分がある場合に比べて、すべての凹部に対応する位置にホースバンド140を取り付けるため、折り返し部分における軟質ホース200の端部(図8図9では折り返し部分の右側端部)が捲れるのをより効果的に防止することができるので、軟質ホース200が中間接続金具110から抜け落ちやすくなるのをより効果的に防止することができる。
【0034】
このように、本実施の形態に係る帰路管の補修方法は、2つのゴム管(120A、120B)のうち損傷したゴム管(120A)を、当該損傷したゴム管(120A)が接続されている中間接続部材(中間接続金具110)から取り外す第1工程と、中間接続部材(110)の損傷したゴム管(120A)を取り外した側の補修管路取付部(111)の外周面に、シーリング材を塗布する第2工程と、可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能な軟質ホース(200)の端部に所定長の切り込み(S)を形成し、中間接続部材(110)のシーリング材を塗布した側に、軟質ホース(200)の端部が補修管路取付部(111)の中央側端部を超えるまで軟質ホース(200)を外挿する第3工程と、軟質ホース(200)の外周面に第1の締付金具(ホースバンド130)を装着し、補修管路取付部(111)に対して所定のトルクで締め付ける第4工程と、補修管路取付部(111)の中央側端部近傍で軟質ホース(200)を外側に折り返す第5工程と、軟質ホース(200)の折り返し部分の外周面に第2の締付金具(ホースバンド140)を装着し、補修管路取付部(111)に対して所定のトルクで締め付ける第6工程と、を備える。
【0035】
また、補修後の帰路管の中間接続部100は、両端のそれぞれに管路を取り付けるための管路取付部(111、112)を有するパイプ状の中間接続部材(中間接続金具110)と、少なくとも一方の管路取付部(111)に取り付けられ、端部に形成された所定長の切り込みを介して外側に折り返された、可撓性、不透水性を有し、扁平状態で収納可能な軟質ホース(200)と、軟質ホース(200)の折り返されていない部分の外周面に配置され、管路取付部(111)に対して締め付ける第1の締付金具(ホースバンド130)と、軟質ホース(200)の折り返された部分の外周面に配置され、管路取付部(111)に対して締め付ける第2の締付金具(ホースバンド140)と、管路取付部(111)と軟質ホース(200)との間に介在するシール部(150)と、を備える。
【0036】
本実施の形態では、帰路管に損傷が発見された場合に、正規のゴム管ではなく、容易に入手することができる市販の軟質ホース(商品名:ヘビーデューティーサニーホース)を適用するため、数日間で帰路管を補修することができる。また、軟質ホース200の折り返し部分の外周面を含め、所定の位置においてホースバンド130、140で締め付けることにより、確実に水密構造の接続構造を構成することができる。
このように、本実施の形態によれば、正規のゴム管の代わりに軟質ホース200を用いることにより、帰路管の一部に損傷が発見された場合に早急に補修することができる。したがって、地中送電網の安全性、信頼性が格段に向上する。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施の形態では、中間接続金具100の右側の管路取付部111に接続されたゴム管120Aが損傷した場合の補修工程について説明したが、左側の管路取付部112に接続されたゴム管120Bが損傷した場合の補修工程も同様である。また、管路取付部111、112に接続された2つのゴム管120A、120Bが損傷し、これらを一度に補修する場合に本発明を適用してもよい。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
100 中間接続部
110 中間接続金具(中間接続部材)
111 管路取付部(補修管路取付部)
112 管路取付部
113、113A、113B 凹部
114 テーパー部
115 中央部
120、120A、120B ゴム管
130 ホースバンド(第1の締付金具)
140 ホースバンド(第2の締付金具)
150 シール部
200 軟質ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9