特許第5736011号(P5736011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736011車両用空気調和装置の空気ダクト用の中間要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736011
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置の空気ダクト用の中間要素
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   B60H1/00 102L
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-148551(P2013-148551)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-19439(P2014-19439A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2013年7月18日
(31)【優先権主張番号】10 2012 106 619.1
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513214000
【氏名又は名称】ハラ ビステオン クライメイト コントロール コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス シュトースベルク
(72)【発明者】
【氏名】マリオ オピーラ
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−168190(JP,A)
【文献】 特開平07−269524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調装置(1)の空気ダクト用の中間要素(3)であって、
配管(4、5)用のフィードスルー(8)が中間要素(3)に配置され、前記フィードスルー(8)が、前記中間要素(3)による空気流れを少なくとも2つの流路に分割する流れダクト要素であることを特徴とする中間要素(3)。
【請求項2】
前記中間要素(3)は、ディフューザとして構成されている請求項1記載の中間要素(3)。
【請求項3】
ディフューザと、熱交換器及び/又はフィルタ(17)と、コネクタ(16)とが連続して配置され、前記フィードスルー(8)が前記コネクタ(16)に形成されている請求項1記載の中間要素(3)。
【請求項4】
前記ディフューザ(3)を貫く前記フィードスルー(8)は、空気流れの流れ方向に対して垂直に形成される請求項記載の中間要素(3)。
【請求項5】
車両用空調装置(1)の配管は、前記フィードスルー(8)内に配置される請求項1乃至4の何れか1項に記載の中間要素(3)。
【請求項6】
前記フィードスルー(8)は、前記ディフューザ(3)のハウジング接続部の分割面(13)内に配置されており、前記配管は、組立工程中に前記ディフューザ(3)のフィードスルー(8)に取り付け可能である請求項記載の中間要素(3)。
【請求項7】
前記ディフューザ(3)の1つのハウジング部品が、前記ディフューザ(3)を通る前記フィードスルー(8)の一部を持つ装置カバー(14)として構成され、前記装置カバー(14)は、組立工程中に前記配管を前記フィードスルー(8)に取り付けるときに、前記ディフューザハウジングから取り外し可能である請求項記載の中間要素(3)。
【請求項8】
フィードスルー(8)は、組立工程後に前記配管が前記フィードスルー(8)の正確な嵌め合いにより固定される請求項1乃至7の何れか1項に記載の中間要素(3)。
【請求項9】
いくつかのフィードスルー(8)は、前記ディフューザ(3)内に配置されている請求項記載の中間要素(3)。
【請求項10】
ファン及び空気分配ハウジングの接続開口部(6、7)の中心点は、空気分配ハウジング(2)の縦軸線(12)からオフセットされている請求項1乃至9の何れか1項に記載の中間要素(3)。
【請求項11】
ファン及び空気分配ハウジングの接続開口部(6、7)の中心点は、空気分配ハウジング(2)の縦軸線(12)上に配置される請求項10記載の中間要素(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置のファンと空気分配ハウジングとの間に配置される空気ダクト部分に関する。これらの空気ダクト部分は、ディフューザのみ、或いは、その代わりにディフューザの配列、フィルタ、熱交換器、或いはその両方、及び、接続部品を含む他の領域を装備している。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、通常、客室の前壁近傍でダッシュボードの下方に配置されるが、利用可能な空間が十分ではないことにより、特にグローブボックスと前壁との間及びセンタコンソールと前壁との間の領域において、個々の部品及びそれらの接続配管の配置の最適化を必要とする。
【0003】
車両用空調装置の作動流体用の、車両のクーラント回路からのクーラント用のパイプ又は冷房装置、或いはヒートポンプからの冷媒配管といった接続配管は、利用可能なスペースが不十分なことにより、空調装置、特にディフューザのハウジング壁の深い窪みの内部に部分的に敷設されて、要求され且つ部分的に標準化された流体インタフェースポイントまで配管を持ち上げるようになっている。
【0004】
ディフューザは、一般的に、ガスの流れを減速させて静的なガスの圧力を高める構造的な部分であり、したがって、流体力学理論においては、ノズルと正反対のものを構成する。このディフューザは、ベルヌーイの方程式に従って運動エネルギを圧力エネルギに変換するために用いられる。このため、流れは減速されなければならない。これは、一般的に、流れの断面積を流れの方向に連続的に、或いは不連続に拡大させることにより達成される。それは様々な方法で幾何学的に実現できる。これは、多くの場合、例えば円錐形に開口する形状により達成される。本発明は、ファンと空調装置の他の領域の間において、車両用空調装置に配置されるディフューザに関する。
【0005】
車両用空調装置のディフューザは従来技術において公知である。例えば、特許文献1(欧州特許第1997656号明細書)には、車両用空調装置の流体通路の流れダクト要素が記載されており、少なくとも一つの流れダクト要素が流体通路を2つの部分的な流体通路に分割している。この流体通路はまた、ディフューザ領域の他にノズル領域を有しており、屈曲し且つ狭くなっている領域によって、流れる空気の速度が再度増加する。このようにして、流体通路の速度分布の均質化及び音の吸収という先に言及した課題が解決される。流れダクト要素は、複数部品の本体として流体通路に配置され、流れダクト要素の輪郭の構成は本質的に流体力学及び音響的な要件を考慮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1997656号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際、車両用空調装置においては、それらのハウジングと客室の前壁との間にあるインタフェースにそれらの流体管路を導くことが必要である。従来技術の設計は、利用可能な空間が限られているためにディフューザハウジングに深い窪みを必要とし、これらはディフューザを流れる空気の内部の乱気流に結びつく。
【0008】
特に凝結水の蓄積及び冷凍能力のために、冷媒配管はディフューザハウジングの内部にしばしば複雑に敷設され、それは圧力損失の増加、したがって、空調装置の効率の低下及び高い騒音レベルの原因となる。加えて、これらの窪みは、型抜き工程上の技術的な理由により、機械設備の型抜き方向における最も低い点までハウジングの壁に沿ってしばしば引き下ろされなければならず、それは流路をさらに塞ぐことを意味する。
【0009】
他方では、流体管路用のインタフェースが熱交換器のポートのすぐ近くにない場合、長いパイプによる配管の複雑で高コストの敷設、多くの曲げ点、追加の支持及びフランジがしばしば必要である。これらの設計は、部品及び組立の高いコスト及びより大きな重量の原因となり、軽量で且つ経済的な空調装置についての要求とは正反対であるが、それと同時に、客室に低いノイズレベルの空気の大きい全体的な容量を提供することが期待される。
【0010】
更なる課題は、右ハンドル或いは左ハンドルモデルとして車両の装備を設けることに起因して、ダッシュボードの下方の部品の構成から生じる。コスト的な理由及び他の車両構成の仕様により、自動車用空調システムのポートのインタフェースは、通常、左ハンドル及び右ハンドルモデルの車両において、正確に同じ位置となる。
【0011】
同様に、左ハンドル及び右ハンドルモデルにおいては、経済的な空調装置を提供するために、取付パイプを有した熱交換器及びエバポレータも同一でなければならない。熱交換器に対するパイプの経路及びディフューザの幾何学的な配列は、左ハンドルモデルにおける残りの取付け空間によって、必然的に決まるのに対し、エバポレータに接続するパイプの経路は右ハンドルモデル用の残りの取付け空間から生じる。
【0012】
左ハンドルモデルにおいては、加熱用の熱交換器の接続及びパイプの締結のために、エバポレータの近くのディフューザハウジングの壁に大きな窪みを必要とする。しかしながら、類似の問題が、右ハンドルモデルにおけるエキスパンションバルブから生じる。右ハンドルモデルにおいては、取付け空間の問題が更に悪化する。空気分配ハウジングの外側部品がエバポレータ入口の近くでは(上方から見たときに)段差或いは楔の形状ではなく、したがって、パイプの位置決めのために利用可能なスペースがより少ないからである。このことは、図1の従来技術の図面に示されている。
【0013】
本発明の課題は、軽量でコンパクト且つ経済的な車両用空調装置を創り出すことにある。従来技術に比較すると、本発明は、製造、パワー及びスペースの条件が等しい効率的な空調装置が、客室に対してより大きな容積の空気をより低い騒音レベルで供給することを保証する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、請求項1に係る発明の特徴事項を有するディフューザにより解決される。変形例は、従属項に示されている。
【0015】
本発明によれば、このような課題は、配管用のフィードスルー(feedthrough)が配置され、そのフィードスルーが中間要素を流れる空気を少なくとも2つの流路に分割する流れダクト要素である、特に車両用空調装置の空気ダクト用の中間要素により解決される。
【0016】
本発明によれば、中間要素はディフューザとして構成される。
【0017】
ディフューザ、熱交換器及び/又はフィルタ、及びコネクタを連続させて配置すると共に、フィードスルーをコネクタに形成することが好都合であり且つ有利であることが明らかになった。
【0018】
本発明は、ディフューザを貫くフィードスルーが、空気流の流れ方向に対して垂直に形成される。
【0019】
本発明の特に有利な実施形態は、車両用空調装置の流体管路がディフューザを貫くフィードスルーに配置される点にある。流体管路は、例えば、冷媒の配管、クーラントの配管或いは、電線並びに換気用の配管も意味する。
【0020】
驚くべきことに、配管がディフューザの壁或いはディフューザハウジングの深い窪み内に敷設されているときに比べると、これらの流体管路は、フィードスルーによって導かれるときにディフューザ内部のガス流れを妨げる程度が極めて小さいことが判った。
【0021】
少なくとも2ピースのディフューザハウジングの構成を最適化する手段により、本発明の1つの有利な構成においては、ディフューザのハウジング接続部の分割面内にフィードスルーを配置することが可能であり、且つ配管は組立工程中にディフューザのフィードスルーに取り付けることができる。
【0022】
ハウジング接続部は、いくつかのパーツから成るハウジングを通る分離ラインを意味する。ハウジングの接続部は、分割面と呼ばれる完全に1つの平面内に位置し得るが、このことは必ずしも必要ではない。
【0023】
本発明の特に有利な構成は、装置カバーの構成を含むが、それはディフューザのハウジング部品として構成されると共にフィードスルーの一部を含む。このハウジングカバーは、組立工程中に配管をフィードスルーに取り付けるときに、ディフューザハウジングから取り外すことができる。
【0024】
組立工程後に、フィードスルー内の正確な嵌め合いによって、配管が固定されるように、配管のフィードスルーを構成することが好都合で且つ有利であることがわかった。このことは、配管の固定のために必要な、プラスチック部品として一般的に構成される追加のパーツを節約する。
【0025】
したがって、ディフューザのフィードスルーの二つの機能は、取付け空間の減少、及びエバポレータのパイプのような配管用の空調装置ハウジング上の固定位置を節約する可能性の両方を達成する。これらのパイプは、適切に設計されて全ての関連する誤差を許容するときに、多かれ少なかれメインハウジングの半割体により固定されるからである。
【0026】
いくつかのフィードスルーをディフューザに配置する構成が特に有利である。このようにして、いくつかの流路を作り出すことができると共に、温度が異なる加熱用及び冷却用の流体管路を異なるフィードスルー内に敷設できる。
【0027】
ここで言及される発明の解決手段の1つの特別な利点は、ファン及び空気分配ハウジングの接続開口部の中心点が空気分配ハウジングの縦軸線からオフセットされており、したがって、それらの構成が最適化されることにある。このようにして、フィードスルーの下流における速度分布は均一なままであり、生じる不快な音及び振動はより少ない。
【0028】
本発明の特に好ましい一つの流体構成によると、ファン及び空気分配ハウジングの接続開口部の中心点は、空気分配ハウジングの縦軸線上に配置される。
【0029】
コンピュータによる流体力学(CFD)により、典型的な用途の1つ或いは2つのフィードスルーを有したディフューザについて、空気分配ハウジング内を流れる空気の速度分布を計算して標準版のそれと比較した。
【0030】
驚くべきことに、フィードスルーを有するディフューザの提案された幾何学的配列の両方について算出された空気の質量流量はほとんど同じままであり、且つエバポレータ出口面の中央の速度分布がより一様であることが判明した。増加した数のディフューザが開口角度を効果的に低下させ、それによって、より良好な整流作用を達成するからである。
【0031】
このことは、エバポレータ出口面において、最も均一な速度分布を求める要求を満たし、最大の冷却能力及び特にマルチゾーン空調装置における空調装置出口での均衡のとれた空気量の分配が達成される。
【0032】
これにより、加熱用熱交換器及びエバポレータの流体管路を有するインタフェースの所望の位置が、新しいハウジングの幾何学的配列により、特にディフューザの領域において、空調装置のハウジング壁の深い窪みなしに達成される。
【0033】
ディフューザには、それを通って流体管路が導かれる少なくとも一つのフィードスルーが提供される。このようにして、トータルの大きな空気容積におけるシステムの圧力損失の減少によって、騒音レベルがより低く、且つ構成部品及び組み付け用のコストがより低い、軽量な空調装置が達成される。
【0034】
特に、所定の長さのディフューザは、その局所的な開口角度がより小さいのでより効果的に作動する。このことが、起こり得る流れの剥離をより効果的に減少させ、或いは防止できるからである。
【0035】
さらに、本発明は、空気分配ハウジングの接続開口部全体において、最も均一な速度分布を求める要求を満たし、その結果、最大冷却パワー及び空調装置の出口における空気容積の均衡のとれた分配が達成される。
【0036】
最後に、ディフューザ内の熱交換器パイプのフィードスルーは、好ましくは、その型割線の中央に配置され、且つディフューザの型割りによって、生じる中間スペースに通してパイプを導くことにより、熱交換器パイプ上の固定位置が節約される。
【0037】
本発明の概念は、配管を接続するための追加の取付け空間の必要がなく、且つ内側の空気流れに対して逆の影響を及ぼし、より大きな圧力損失を生じさせる深い窪みが空調装置のハウジングの壁に不要となるように、配管、特に空調装置の熱交換器における流体供給配管を必要な位置に導くことにある。
【0038】
本発明の実施形態の詳細、特徴及び利点は、添付の図面を参照することにより、実例としての実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来技術の車両用空調装置におけるパイプの引き回しを示す図である。
図2】配管用のフィードスルーを有するディフューザハウジングの幾何学的配列を示す概略図である。
図3図3のa)〜c)は、異なるファン配置におけるディフューザの開口角度を示す図である。
図4図4のa)〜f)は、様々なディフューザの変形例におけるハウジング接続を示す図である。
図5】空気分配ハウジング、上流側フィルタ及び/又は熱交換器及びコネクタを有するハウジングの幾何学的配列の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、所望のインタフェース位置にあるエキスパンションバルブに接続された熱交換器パイプ4及びエバポレータパイプ5が従来稼働している空気分配ハウジング2及びディフューザ3を有する、従来技術の車両用空調装置1を概略的に示している。ここに示されているバージョンについて明確に認識されることは、両方の熱交換器用の流体管路がハウジングの完全に外側に敷設されており、したがって、追加の取付け空間を必要とするということである。
【0041】
ここには示されていない従来技術の他のバージョンによれば、配管がハウジングの深い窪みの内部にセットされて、追加の取付け空間を外側に必要としないようになっている。しかしながら、このバージョンは、窪みが空調装置の内部の空気流れを大きく妨げるという欠点を有しており、したがって最終的に装置の機能に損失をもたらす。
【0042】
図2は、対称的なほぼ二次元のディフューザ3の縦断面を概略的に示している。ここで、実線は、センターライン10に対して開口角度9が約20度であるディフューザ3の第一のバージョンを示している。この角度9は、ファン及び空気分配ハウジングの接続部6及び7の、それらの互いの間隔に対する高さの相違から生じている。
【0043】
ここで、センターライン10に対する開口角度15が約10度の偏菱形の領域が、ディフューザ3のハウジング壁を横切るフィードスルー8として実現すると、一方が他方の上にある2つのディフューザに結びつき、その局所的な開口角度9は20度より大幅に小さくなる。局所的な開口角度という用語は、共にセンターライン10に対しての、ディフューザ3の開口角度9とフィードスルー8の開口角度15との間の相違を表している。
【0044】
偏菱形のフィードスルー8によって、生じる断面損失が、図2の破線で示すように開口角度9’を25度まで広げることによって、埋め合わせられるなら、センターライン10に対して15度の局所的な開口角度9’を得ることができる。
【0045】
この二次元の概略図から現実的な3次元ディフューザへの移行は容易である。一般的に、接続部6が矩形の形状を有しており、且つ接続部7が空気分配ハウジングの方向に長方形の断面をほとんどいつでも有しているからである。一般的に2つの変形可能なプラスチック部品がこの領域に提供されているので、通常は、ディフューザを広げる方向についてほぼ二次元の形状を得る。スペースを考慮すると、三次元に広げることは通常は達成することができず、且つ丸い形状は車両用空調装置の接続部においては慣習的でない。
【0046】
ある長さのディフューザ3は、損失なしに流速を低下させ、したがって、ベルヌーイの方程式によりディフューザの長さに沿った圧力上昇を実現できる場合、効果的に作動することが知られている。より少ない局所的な開口角度9は、断面積の広がりがより少ないことを意味し、起こりうる流れ剥離に関連する強い圧力上昇を効果的に防止できる。
【0047】
このことは、ディフューザ3内の配管用のフィードスルー8が生じたものの、ディフューザ3の効率を低い圧力損失の点で一定に保つことができ、或いは、剥離の回避によって、良くても増加することを意味する。ディフューザ3の領域の利用可能な取付け空間に応じて、局所的な開口角度9を更に低下させるために、ディフューザ3内に複数のフィードスルー8を実現することもできる。
【0048】
図3のa)、図3のb)及び図3のc)は、それぞれがフィードスルー8を有する異なるディフューザ3を備えた車両用空調装置1を概略的に示している。スペースを考慮した幾何学的な配置は、ファン11が空気分配ハウジング2に対して上方に又は下方へ変位し或いは中央に配置されているという事実から生じている。図3のa)或いは図3のb)のように、接続開口部6の中心から大きく外れた位置にファン11があると、ディフューザ3の一方の側にきわめて大きな開口角度9が生じ、それは多くの場合に騒音レベルが増加する強い流れの剥離につながる。
【0049】
図3のc)におけるファン11の接続部6のより適切な構成は、ファン11及び空気分配ハウジング2の接続開口部の中心点が空気分配ハウジング2の縦軸線12に対し変位している点に特徴がある。好ましい実施形態(図示せず)は、ファン11及び空気分配ハウジング2の接続開口部6及び7の中心点が、空気分配ハウジング2の縦軸線12上に直接位置するときに生じる。
【0050】
フィードスルー8の適切な構成により、局所的な開口角度9の減少につながり、フィードスルー8を備えていないディフューザと少なくとも同じ圧力低下を達成する。ファン11の接続開口部6の開口流路断面は、同時にディフューザの入口であり、且つ空気分配ハウジング2の接続開口部7の開口流路断面は、同時にディフューザの出口領域である。
【0051】
図4のa)〜f)は、車両用空調装置1のディフューザ3の異なるハウジング区分を概略的に示しているが、それらのほとんどが分割面13として構成されている。空気分配ハウジング2に対するファン11又はファンの螺旋の方向、及びディフューザ3を貫くフィードスルー8の数に応じて、いくつかの変形例を有利に構成することができ、これらは本発明の概念に含まれる。
【0052】
図4のa)及び図4のc)のように側面に取り付ける空気調和装置においては、修理作業時に、ファン11を備えた空気入口及びディフューザ3を空気分配ハウジング2から別々に取り外すことがしばしば要求される。この場合、ディフューザ3を貫く分割面13を空気分配ハウジング12の縦軸線に対して垂直に、且つフィードスルー8を左右の部品の間の分割面13内の比較的中央に配置することが有利である。
【0053】
図4のb)は、複数の部品から成る変形例の実施形態を同様に示しているが、追加の部品は、装置カバー14に対して寸法が減少している。この装置カバー14は、ディフューザ3のハウジング部分とは独立して設計されている。この変形例では、装置カバー14は、フィードスルー8の一部として且つ同時にディフューザ3の一部として構成されている。したがって、取付け中、敷設される配管は押し通されることがなく、ディフューザ3のフィードスルー8へ、例えば、上方から挿入できる。次いで、フィードスルー8及びディフューザ3の残りの開口部は、装置カバー14で閉じられると共に、取付け中にパイプが固定される。
【0054】
図4のd)〜f)においては、図4のd)に示されている分割面13がファン11の対称面に沿って設けられている。ここで、フィードスルー8は、図4のd)のように分割面13と平行に、或いは図4のe)及びf)のように垂直に配置することができるが、図4のe)及びf)の変形例の特徴は、フィードスルー8にパイプを押し通す点にある。
【0055】
2つのフィードスルー8を備えたディフューザ3の分割については、2つの変形例が可能である。好ましくは、このような分割は、右側及び左側の部品内への流れの方向に対して垂直な図4のc)の構成によって可能である。これに代えて、分割は、空気分配ハウジング2の縦軸線12の方向及びフィードスルー8に対して垂直な方向に可能である。しかしながら、このような構成においては、配管はフィードスルー8に押し通すことにより敷設されなければならない。
【0056】
すべての変形例に共通することは、ハウジング部品の数が従来の構成と同じであり、追加のハウジング部品の必要がないことである。
【0057】
図5は、本発明の好ましい実施形態を示している。ファン11と空気分配ハウジング2との間の単純なディフューザ3に代えて、ディフューザ3、フィルタ17及びコネクタ16の組合せが配置されており、フィードスルー8はコネクタ16を貫いている。エバポレータ又は熱交換器をフィルタ17の位置に配置したり、フィルタ17、エバポレータ及び熱交換器の組合せをフィルタ17の位置に配置したりすることが、特に有利である。空気分配ハウジング2は、それらの構成部品をもはや収容しておらず、それらはフィルタ17の位置にある。
【0058】
隣接する空気ダクト用のコネクタ16は、フィルタ17から解放される空気を再度収集すると共に、空気分配ハウジング2の方向にその進路を変更する。厳密に言うと、コネクタ16は、もはやディフューザとして機能していないが、特に、左ハンドルや右ハンドルのモデルに関して、ハウジングを貫くフィードスルー8を介して熱交換器パイプ4又はエバポレータパイプ5を押すことは可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用空調装置
2 空気分配ハウジング
3 ディフューザ、空気ダクト用の中間要素
4 熱交換器パイプ
5 エバポレータパイプ
6 ファン用の接続開口部
7 空気分配ハウジング用の接続開口部
8 フィードスルー
9,9’ ディフューザの開口角度
10 ディフューザのセンターライン
11 ファン
12 空気分配ハウジングの縦軸線
13 分割面
14 装置カバー
15 フィードスルーの開口角度
16 コネクタ
17 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5