(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明による実施形態を説明する。
図1は本発明による実施形態の曲げ加工装置400を備えた製造装置1の正面図である。
【0014】
図1に示される製造装置1は、眼鏡やサングラスの偏光レンズに用いられる偏光積層シートSを製造する。製造装置1は、材料供給部10と、予熱部20と、予備加工部30と、曲げ加工部40と、抜き加工部50と、材料搬送部60と、浮き防止部70と、粉砕部80とを備える。
【0015】
材料供給部10は巻取軸11を備える。巻取軸11には、シート状物としての原反Mがロール状に巻回されている。原反Mは帯状で、巻取軸11から巻き出されてX軸方向に搬送される。原反Mは偏光積層シートSの素材となるものであり、その構成は特に限定されないが、例えば、偏光層と、偏光層の両面に積層された支持層とを備える。偏光層は、例えばPVAフィルムにより構成される。また、支持層は、例えばTAC、PC、CAB、ナイロンにより形成される。また、原反Mの寸法は、例えば厚みが0.1mm〜1.0mm、幅が105mmである。
【0016】
予熱部20は原反Mを予熱する。予熱部20の構成は特に限定されないが、例えば熱風によって原反Mを加熱するものを用いることができる。原反Mの水分含有率が高いと、曲げ加工時にヘイズやフォグ(白濁)が発生するため、予熱処理が必要である。予熱温度や予熱時間は特に限定されないが、例えば厚さ0.2mmの原反Mでは、予熱温度が100℃の場合に予熱時間が60秒〜120秒に設定され、予熱温度が105℃の場合に予熱時間が30秒〜60秒に設定される。
【0017】
予備加工部30は原反Mに予備の曲げ加工を行う。すなわち、偏光積層シートSの曲げ深さが大きい場合には、曲げ加工部40で曲げ加工を行う前に原反Mをある程度の深さに曲げ加工しておくことで、曲げ加工部40において原反Mをスムーズに最終形状に成形することができる。なお、偏光積層シートSの曲げ深さが浅い場合には、予備加工部30での曲げ加工を行わない場合もある。
【0018】
曲げ加工部40は、予備加工部30で曲げ加工された原反Mもしくはフラットな原反Mに曲げ加工を行い、原反Mを最終形状に成形する。
【0019】
抜き加工部50は、原反Mのうち、曲げ加工部40で所定形状に成形された部分を打ち抜いて偏光積層シートSを得る。打ち抜かれた偏光積層シートSは落下してシート受け51内に収容される。
【0020】
材料搬送部60は原反Mを長手方向に搬送する。原反Mは一方の面を上に向けた状態でX軸方向に水平に搬送される。
【0021】
浮き防止部70は、原反Mの長手方向両側縁部を厚さ方向に挟圧して原反Mの一方の面を略水平な状態に維持する。
【0022】
粉砕部80は、偏光積層シートSが打ち抜かれた原反Mを粉砕する。粉砕によって生じた粉砕屑は落下して屑受け81内に収容される。
【0023】
曲げ加工部40は曲げ加工装置400を備える。曲げ加工装置400は、曲げ加工部40に搬送されてくる原反Mに曲げ加工を行う。曲げ加工装置400は駆動部480を備える。曲げ加工装置400の詳細は
図3〜
図7を参照して後述する。
【0024】
製造装置1はフレーム2とフレーム3とをさらに備える。フレーム2は、予備加工部30と、曲げ加工部40と、抜き加工部50とを支持する。フレーム3は、予熱部20と、予備加工部30と、曲げ加工部40と、抜き加工部50と、材料搬送部60と、浮き防止部70と、粉砕部80とを支持する。
【0025】
図2は製造装置1で製造される偏光積層シートSの斜視図である。
図2(a)は円形の偏光積層シートSを示し、
図2(b)は矩形の偏光積層シートSを示す。偏光積層シートSは、偏光層(図示せず)と、偏光層の両面に積層された支持層(図示せず)とを備える。支持層の数は特に限定されないが、例えば、偏光層の両面の各々に支持層が1〜3層積層される。偏光積層シートSは、眼鏡やサングラスに用いられる偏光レンズの一部を構成する。
【0026】
次に、
図3〜
図7を参照して、曲げ加工装置400の詳細について説明する。
図3は曲げ加工装置400の側面図であり、
図4は曲げ加工装置400の上押型410の型本体411の側面図及び底面図であり、
図5は曲げ加工装置400の下押型420の型本体421の平面図及び側面図であり、
図6は曲げ加工装置400の材料ガイド440の平面図及び側面図であり、
図7は曲げ加工装置400のリフトアップガイド450の平面図及び側面図である。
【0027】
図3に示すように、曲げ加工装置400は、上押型410と、下押型420と、ヒーター430と、材料ガイド440と、リフトアップガイド450と、複数本のガイドロッド460と、緩衝機構470と、駆動部480とを備える。
【0028】
図3及び
図4に示すように、上押型410は、例えば金属や合成樹脂等により形成され、型本体411と支軸412とを備える。型本体411は上端部が閉鎖された円筒状に形成され、下面に開口部411aを有し、開口部411aの周囲には環状の凸部411bが形成されている。型本体411の上端部の中心部には孔411cが設けられており、孔411cには支軸412の下端部が圧入固定される。支軸412は鉛直方向に延びており、製造装置1のフレーム2を貫通して上端部が駆動部480の駆動軸に連結されている。
【0029】
図3及び
図5に示すように、下押型420は型本体421とホルダー422とを備える。型本体421は熱伝導性が良好な金属や合成樹脂等により形成され、円柱状を呈する。型本体421の頂部は球面状の押圧面421aとなっている。ホルダー422は型本体421を取り囲むように形成されている。下押型420は円形の偏光積層シートS(
図2(a)参照)を成形するためのもので、円柱状を呈しているが、他の形状でもよい。例えば、矩形の偏光積層シートS(
図2(b)参照)を成形する下押型は角柱状に形成される。
【0030】
図3に示すように、ヒーター430はホルダー422に取り付けられており、下押型420の型本体421の内部に延びている。ヒーター430は、型本体421を例えば100℃程度に加熱する。
【0031】
図3及び
図6に示すように、材料ガイド440は、ガイド本体441と、一対のガイド板442と、一対のスペーサー443とを備える。
【0032】
ガイド本体441は矩形板状で、下押型420の型本体421を貫通させる貫通孔441aを有する。ガイド板442はスペーサー443を介してガイド本体441の上面の両側縁部上に載置され、ネジ等の固定部材444によって、ガイド板442、スペーサー443、及びガイド本体441が共締めされている。ガイド板442は円弧状の切欠部442aを有しており、切欠部442aは下押型420の型本体421の外周面に沿っている。
【0033】
図3及び
図7に示すように、リフトアップガイド450は円環状で、貫通孔450aと、段部450bと、複数のガイド孔450cとを有する。貫通孔450aは下押型420の型本体421を貫通させる。段部450bは貫通孔450aの上端の周囲に形成されており、上押型410の凸部411b(
図4参照)が接離する。リフトアップガイド450及び上押型410は本発明の把持手段として機能する。
【0034】
複数のガイド孔450cの各々にはガイドロッド460の上端部が圧入固定される。ガイドロッド460は、ホルダー422及びフレーム3を摺動自在に貫通し、下端部が緩衝機構470の押さえ部材474に固着されている。本実施形態では、ガイドロッド460が4本であるが、ガイドロッド460の本数は4本以外の本数(例えば、6本)でもよい。
【0035】
図3に示すように、緩衝機構470は、支持部材471と、弾性体472と、シャフト473と、押さえ部材474とを備える。緩衝機構470は本発明の緩衝手段として機能する。
【0036】
支持部材471は板状を呈する。弾性体472は、例えば、発泡ウレタン等の合成樹脂により形成され、筒状を呈する。発泡ウレタンとしては、例えば、株式会社ハヤシのラポック(商品名)を用いることができる。弾性体472は支持部材471の上面に垂直に載置され、支持部材471と押さえ部材474との間に圧縮可能に保持される。弾性体472が圧縮されることで、押さえ部材474を上向きに弾性付勢する力が発生する。その結果、複数本のガイドロッド460を介してリフトアップガイド450が向きに弾性付勢される。支持部材471及び押さえ部材474は本発明の保持手段として機能する。
【0037】
シャフト473の上部の外周面にはネジ山が形成されている。フレーム3には当該ネジ山が螺合するネジ孔3aが形成されている。シャフト473は、支持部材471の下方から、支持部材471、弾性体472、及び押さえ部材474を摺動自在に貫通し、上端部がフレーム3のネジ孔3aに螺合している。
【0038】
シャフト473を軸線周りに回転させることで、シャフト473がフレーム3に対して軸線方向に移動する。フレーム3へねじ込まれる方向と反対方向にシャフト473を回転させることで、シャフト473の上端部がフレーム3から抜け出して、支持部材471及び弾性体472がシャフト473とともにフレーム3から離脱する。その状態で、弾性体472をシャフト473から抜いて他の弾性体に交換することができる。弾性体472を弾性率が異なる他の弾性体に交換することで、弾性体472がリフトアップガイド450を上向きに弾性付勢する力を調節することができる。
【0039】
駆動部480は、例えば空気圧シリンダ等のアクチュエーターにより構成される。駆動部480によって、上押型410はZ軸に沿う方向に往復移動する。駆動部480は本発明の駆動手段として機能する。
【0040】
なお、予備加工部30(
図1参照)は、曲げ深さが曲げ加工部40よりも小さい点を除いては曲げ加工部40と実質的に同一の構成である。
【0041】
次に、
図1、
図3、
図8、
図9及び
図10を参照して、製造装置1による偏光積層シートSの製造方法を説明する。
図8は製造装置1による偏光積層シートSの製造方法を示すフローチャートであり、
図9及び
図10は曲げ加工装置400による曲げ加工方法の説明図である。
【0042】
図1において、作業員が製造装置1を起動すると、材料搬送部60が材料供給部10から原反Mを巻き出してX軸方向に搬送する。そして、
図8のステップS100において、予熱部20が原反Mを所定温度に予熱する。次に、ステップS200において、予備加工部30が必要に応じて原反Mに予備の曲げ加工を行う。
【0043】
次に、ステップS300において、曲げ加工装置400(
図3参照)の上押型410が下降して、
図9に示すように、上押型410の凸部411bがリフトアップガイド450の段部450bに嵌合し、凸部411bが段部450bの底面との間で原反Mを挟圧して原反Mを把持する。ステップS300は本発明の把持工程に相当する。
【0044】
次に、
図8のステップS400において、上押型410がさらに下降して、上押型410とリフトアップガイド450とによって把持された原反Mが下押型420に接近する。その結果、
図10に示すように、原反Mが型本体421の押圧面421aによって厚さ方向に押圧されて押圧面421aに沿って変形し、所定形状に成形される。ステップS400は本発明の成形工程に相当する。
【0045】
上押型410がリフトアップガイド450を下降させる際には、押さえ部材474(
図3参照)が弾性体472を圧縮する。上押型410が下降するに従って弾性体472の圧縮量が大きくなり、弾性体472がリフトアップガイド450を上向き(すなわち、原反Mが下押型420から離間する方向)に弾性付勢する力が大きくなる。したがって、リフトアップガイド450は一気に下降せず、弾性体472によって緩衝されながら徐々に下降する。
【0046】
その結果、原反Mが下押型420の押圧面421aに押圧されて所定形状に成形される際において、原反Mに過大な力が作用することがなく、原反Mが破断することが抑制される。
【0047】
次に、
図8のステップS500において、抜き加工部50(
図1参照)が原反Mに打ち抜き加工を行い、所定形状の偏光積層シートS(
図2参照)を作製する。打ち抜かれた偏光積層シートSはシート受け51内に落下する。偏光積層シートSは偏光レンズの製造工程に搬送され、射出成形や熱重合等によって偏光レンズが作製される。
【0048】
そして、
図8のステップS600において、偏光積層シートSが打ち抜かれた原反Mを粉砕部80が粉砕する。それによって生じる粉砕屑は屑受け81内に落下する。
【0049】
以上のように、製造装置1によれば、長尺の原反Mを長手方向に搬送し、搬送方向に配置された各種装置によって原反Mに順次加工を行うため、偏光積層シートSを効率良く製造することができる。また、曲げ加工装置400は、原反Mを真空吸引せずに曲げ加工を行うため、作製された偏光積層シートSに真空吸引の痕跡が残ることがない。したがって、偏光積層シートSの歩留まり率が向上し、偏光積層シートSを安価に製造することができる。
【0050】
以上、
図1〜
図10を参照して、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で本実施形態に種々の改変を施すことができる。
【0051】
例えば、本実施形態では、シート状物を成形型に対して接近及び離間させて曲げ加工を行うようにしているが、成形型をシート状物に対して接近及び離間させて曲げ加工を行うようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、シート状物を成形型から離間する方向に弾性付勢しながら成形型に押圧しているが、成形型をシート状物から離間する方向に弾性付勢しながらシート状物に押圧してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、シート状物を成形型から相対的に離間する方向に弾性付勢するための弾性体として、合成樹脂製の弾性体が用いられているが、当該弾性体に換えて他の弾性体(例えば、コイルバネ)を用いてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、圧縮することにより弾性付勢力を発生する弾性体が用いられているが、引張することにより弾性付勢力を発生する弾性体を用いてもよい。引張することにより弾性付勢力を発生する弾性体を用いる場合には、シート状物の成形型への相対的な接近に伴って弾性体が引っ張られるように保持手段を構成する。
【0055】
また、本発明は、眼鏡やサングラスの偏光レンズに用いられる偏光積層シートの素材となるシート状物以外のシート状物に曲げ加工を行う場合にも適用可能である。
【0056】
その他にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で本実施形態に種々の改変を施すことができる。