(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡幅連結部を、複数の保定部材の各々に形成された貫通孔と、当該貫通孔を貫通して2つの保定部材を締結する締結具とを用いて構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパイプ材の保定具。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場等において円管状や角柱状のパイプ材が多く用いられている。こうしたパイプ材の中には、建築現場等においてコンクリート型枠を支持するため、円筒状の本体部の両端部に略正方形状の平板が設けられたサポート部材(いわゆるパイプサポート)がある。一回の建築作業で使用されるパイプサポートの数は、建築物の大きさにもよるが、一般的に400〜500本となることも多い。そこで、このような比較的多数のパイプサポートを、資材置場で保管したり、資材置場から建築現場まで搬送したり、建築現場で一時的に保管したりする必要がある。
【0003】
こうしたパイプ材を整列状態に支持して保管・搬送する保定具として種々の型式のものが提案されている。
図9にサポートハンガーと呼ばれる、従来用いられている保定具の一例を示す。サポートハンガーHは、図示のとおり、上方に開放された略コ字状の枠体を有し、これにパイプサポートPSを載置するときには、2つのサポートハンガーHを所定の間隔を空けて平行に配設し、これらに跨って複数のパイプサポートPSを載置する。これにより、サポートハンガーHの枠内に多数のパイプサポートPSを整列保持する。そしてこの状態のまま、サポートハンガーHは搬送トラックの荷台に積載され、資材置場と建築現場との間を搬送されることとなる。通常、1つのサポートハンガーHには、横並びで8本かつ上下に5段で計40本のパイプサポートPSを一束として載置することが多い。よって、一回の建築現場で400〜500本のパイプサポートPSが必要とされる場合、10束〜13束程度のサポートハンガーHを搬送することとなる。
【0004】
ここで、搬送のために手配される搬送トラックは、必ずしも同じ大きさのものを揃えて指定できず、通常、異なることが多い。そして搬送トラックの荷台の幅は、大きさによりそれぞれ異なっている。例えば、約1800mmの荷台幅の搬送トラックと、約2400mの荷台幅の搬送トラックとが混在することがある。
【0005】
そして、サポートハンガーの左右方向の幅が仮に約860mmであるとすると、約1800mmの荷台幅の搬送トラックの場合、幅方向に2束のサポートハンガーを殆ど隙間なく積載することとなる。一方、約2400mmの荷台幅の搬送トラックの場合、幅方向に2束のサポートハンガーを載置してもまだ余剰スペースが生じるが、3束目を積載するには幅が足りない。すなわち、荷台幅が約1800mmであっても約2400mmであっても、搬送トラックに積載できる保定具は2束だけであり、約2400mmの荷台幅の搬送トラックには、使用されない無駄な余剰スペースが生じている。このとき、2束目の保定具の幅を拡げて、より多くのパイプサポートを載置させることができれば、荷台上の余剰スペースを有効に活用して、手配する搬送トラックの台数を減らしたり、搬送時間を低減したりすることができる。
【0006】
そこで、こうした保定具を拡幅する技術を見てみると、特許文献1に記載の技術がある。ここではパイプ材を載置する部材として、
図10に示すように、上下両面に所定間隔で円弧状の凹部を形成してなるブロック状の成形体30を中空構造とし、これら複数の成形体30を幅方向に連ねた状態で、これらの中空部分に長尺の箱状部材32を貫通させ一体化した管載置部材34が開示されている。そしてこの管載置部材34を所定の段数上下方向に積層し、管載置部材34の両端で上下方向に挿通したセットボルトで緊締固定して組み立てるパイプ材の保定具が提案されている。これは、箱状部材32に貫通させる成形体30の個数を増やすことで、パイプ材の保定具全体を左右方向に拡幅するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の技術では、管載置部材を拡幅するために予め長さの異なる箱状部材を数種類用意しておく必要があり、部材の在庫が増えるとともに現場での即応性に欠けるという問題がある。また複数の成形体を箱状部材に差し込んで増やすことで拡幅させるため、取り扱う部材の数が多くなり、拡幅作業の作業性がよくないという問題もある。加えてパイプ材の保定具を構成する部材全体の数及び種類が比較的多くなるため、保定具の組立・パイプ材の載置・保定具の分解といった保定作業における取り扱い性が総合的によくないという問題もある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、上記した従来技術の問題点を解決し、拡幅可能な保定具を構成する部材数を抑え、拡幅作業性がよいとともに、保定具の組立・パイプ材の載置・保定具の分解といった保定作業の取り扱い性が総合的に優れたパイプ材の保定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、左右に横並び状態
とされた複数のパイプ材
を載置する複数の保定部材と、当該複数の保定部材に橋架されこれらを一体的に連結するために上下方向に立設された垂直フレームとを有するパイプ材の保定具であって、前記複数の保定部材の各々は、2つの保定部材を
、一方の保定部材の一端を他方の保定部材の前記一方の保定部材の一端と同側の端部より突出するように前記保定部材の厚み方向に重合させてパイプ材の軸方向に着脱自在に連結し、パイプ材の保定具が左右方向に拡幅されるように形成された拡幅連結部を有するパイプ材の保定具とした。
【0011】
この構成によると、同形状の2つの保定部材がパイプ材の軸方向に連結することで、パイプ材の保定具が左右方向に拡幅する。この状態のパイプ材の保定具の左右方向の幅は保定部材を1つ用いた場合の幅より長くなるので、より多くのパイプ材を左右に横並びさせることが可能となる。
【0012】
また、前記拡幅連結部を、前記複数の保定部材の各々の左右方向に複数並設してもよい。
また、前記拡幅連結部を少なくとも3箇所並設するとともに、当該複数の拡幅連結部どうしの間隔を等間隔としてもよい。
また、前記拡幅連結部を、複数の保定部材の各々に形成された貫通孔と、当該貫通孔を貫通して2つの保定部材を締結する締結具とを用いて構成してもよい。
また、前記複数の保定部材の各々を、板状に一体形成してもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様は、上記に記載のパイプ材の保定具と、当該パイプ材の保定具に連結される吊り上げ具と、を備えるパイプ材の吊り上げ装置とした。
また、前記吊り上げ具は、吊り上げ具本体と、当該吊り上げ具本体に配設されクレーンに連結されるクレーン側連結部と、当該吊り上げ具本体にその一端部が各々回動自在に枢着された2枚の回動板と、当該2枚の回動板の前記一端部に各々設けられ前記保定部材と連結する保定部材側連結部と、を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
従って本発明によれば、1種類の保定部材を用いるだけで、パイプ材の保定具を拡幅することができ、長さの異なる部材を用意しておく必要がないので拡幅可能な保定具を構成する部材数を抑えることができる。また、1種類の保定部材を連結するだけで、パイプ材の保定具を拡幅でき、形状の異なる部材を用意しておく必要がないので、拡幅作業性がよい。また全体的に、パイプ材の保定具を構成する部材の数及び種類を抑えられるので、保定具の組立・パイプ材の載置・保定具の分解といった保定作業における取り扱い性が総合的に優れたパイプ材の保定具とすることができる。
さらに保定部材の形状は1種類で済むことから、大量生産に適しており、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るパイプ材の保定具(以下、単に「保定具」ともいう)は、パイプ材を保管・搬送する際に、パイプ材の荷姿を一定に保つために用いられるものである。本文中では、パイプ材としてパイプサポートを用いて説明する。このパイプサポートは、型枠支保工等のコンクリート打設作業において、型枠を水平方向から支持する大引を下方から支持するために用いられるものである。そして2つの保定具がパイプサポートの軸方向に間隔を空けて平行に配設され、複数のパイプサポートがこれらに跨って横並びに載置される。さらにその上段にも複数のパイプサポートが横並びに載置され、これを繰り返すことによって、複数のパイプサポートを一束に保定するものである。
【0017】
以下、本実施形態に係るパイプ材の保定具の構成を、図面を参照して説明する。尚、図中に示された保定具を構成する各部材の形状、大きさ又は比率は適宜簡略化及び誇張して示されている。
(構成)
本実施形態に係るパイプ材の保定具は、
図1に示すように、複数のパイプサポートPSの外周面と当接する上面及び下面を有する複数の保定板(保定部材)1と、上下方向に複数並設された保定板1に橋架された一対の垂直フレーム20とを有する。一対の垂直フレーム20は、保定板1の左右方向の両端に立設され、複数の保定板1を一体的に連結する。
図1に示すこのような構造が、本実施形態に係る保定具の基本形態とされるものである。まず、この基本形態の詳細を説明する。
【0018】
各保定板1は、
図2に示すように、スチールで一体形成され、左右に長手を有する略矩形の平板状部材であり、紙面の手前側と奥側に各々連結面8を有する。左右方向の長さは略840mmとされている。また紙面に垂直な方向が厚み方向であり、厚みは約1〜2mm程度とされる。各保定板1の上縁面及び下縁面には、それぞれ、円弧状の凹部6が左右に8箇所並設されるとともにこれら8箇所の凹部6の間及び保定板1の左右両端には平坦部7が形成されている。パイプサポートPSは、その外周面が上下の保定板1の各々の凹部6に当接し、上下から挟み込まれて支持される(
図1参照)。そして複数のパイプサポートPSが左右に横並び整列されることとなる。
【0019】
各保定板1の連結面8には、
図2に示すように、保定板1どうしを連結するために用いられる拡幅連結部である貫通孔2が形成されている。加えてこの連結面8には、三連孔3と、中央孔4と、側孔5とが形成されている。
【0020】
貫通孔2は、保定板1の上下方向の略中央の高さ位置において、同一直線上を水平に、約200mmの等間隔で、左右方向に5箇所並設されている。貫通孔2は、
図3に示すように、保定板1を厚み方向に貫通して形成されている。この貫通孔2を用いて、2つの保定板1、1を連結し保定具を拡幅することとなる。また貫通孔1は、垂直フレームとの連結にも用いられている。
【0021】
三連孔3は、
図2に示すように、上下に等間隔で並設された一組の3つの孔からなり、これら3つの孔のうち中央の孔は、貫通孔2と同じ高さ位置に配置されている。三連孔3は、同一直線上を水平に、保定板1の左右方向に等間隔で8箇所並設されている。三連孔3は、
図3に示すように、保定板1を厚み方向に貫通して形成されている。三連孔3は、後述する直立補助部材を保定板1に連結するために用いられる。
【0022】
中央孔4は、
図2に示すように、左右に長手を有する長孔形状とされ、保定板1の左右方向に4箇所並設される。中央孔4は、貫通孔2と同じ高さ位置において、同一直線上を水平に、保定板1の左右方向に等間隔で4箇所並設されている。また、中央孔4は、2つの貫通孔2、2間の中間地点に配置されている。中央孔4は、保定板1を厚み方向に貫通して形成されている。中央孔4が保定板1に形成されることによって、保定板1を軽量化することができる。
【0023】
側孔5は、
図2に示すように、正面視で略台形状とされ、連結面8の上端側と下端側とで夫々、同一直線上を水平に、保定板1の左右方向に等間隔で9箇所並設されている。9箇所の側孔5の内中間に位置する7箇所の側孔5は略等脚台形状とされ、両端の2箇所の側孔5は対向する対辺の長さが異なる台形状とされる。側孔5は、いずれも平坦部7に近接して形成されている。側孔5は、
図3に示すように、保定板1を厚み方向に貫通して形成されている。連結面8の上端側の側孔5と下端側の側孔5とは、上下対称に構成されている。側孔5が保定板1に形成されることによって、保定板1を軽量化することができる。
【0024】
各保定板1は、
図2に示すように、スチールで一体形成され、左右に長手を有する略矩形の板状部材であり、紙面の手前側と奥側に各々連結面8を有するとともに紙面に垂直の方向に厚みを有する。
【0025】
垂直フレーム20は、スチールで一体形成され、
図1に示すように、上下に長手を有する略矩形の平板状部材であり、その一面に橋架面20cが形成されている(
図3参照)。垂直フレーム20には、上下連結孔20aが上下方向に等間隔で6箇所形成され、各上下連結孔20aは、垂直フレーム20を厚み方向に貫通して形成されている。また、橋架面20cには、係止突起20bが上下方向に等間隔で6箇所形成され、各係止突起20bは水平に突出形成された後、略90度上方に屈曲形成されている。6箇所の係止突起20bは、ひとつずつ、6箇所の上下連結孔20aに対応し、対応する上下連結孔20aは、係止突起20bよりやや上方の高さ位置とされている。各上下連結孔20aは、係止突起20bの口部20b´が、保定板1の係止部9の下縁に係止したとき、対応する貫通孔2と同軸となる位置に形成されている。これら上下連結孔20a及び係止突起20bは、各保定板1と一対の垂直フレーム20との連結に用いられるものであり、具体的には以下のように行われる。
【0026】
まず、一枚の保定板1の上にパイプサポートPSを横並び整列させ、整列したパイプサポートPSの上方に、別の保定板1を載置する。そしてこの保定板1にもパイプサポートPSを横並び整列させる。こうした作業を繰り返し、最終的に6枚の保定板1を用いて、パイプサポートPSを上下方向に5段載置したとする。このとき、全ての保定板1の左右方向における貫通孔2は、上下方向において揃うことになる。
【0027】
次に、垂直フレーム20の係止突起20bを、6枚の保定板1の両端の側孔5に同時に挿通しながら、対向する保定板1の連結面8と垂直フレーム20の橋架面20cとを近接させ、これらを当接させる。その後、連結面8と橋架面20cとを摺動させつつ、垂直フレーム20をやや上方に移動する。係止突起20bの口部20b´が、保定板1の係止部9の下縁に係止する。このとき上下連結孔20aが貫通孔2と同軸となる。
【0028】
次に、上下連結孔20aと貫通孔2にボルト12を挿通し、これをナット13で締結して、保定板1と垂直フレーム20とを連結する。6枚の保定板1全てを垂直フレーム20と連結してもよいし、上下両端に位置する2枚の保定板1、1のみを垂直フレーム20と連結してもよく、連結する保定板1は適宜選択されてよい。
【0029】
また、ボルト12及びナット13を緩めることで保定板1と垂直フレーム20との連結を解除して、これらが分離される。このように、保定板1と垂直フレーム20とは、着脱自在に連結される。
以上が、基本形態の保定具の構成となる。続けて、基本形態から拡幅された保定具の構成について説明する。保定具の拡幅は、実質的には、保定板1をパイプサポートの軸方向である厚み方向に、以下のように連結することにより行われる。
【0030】
まず、2枚の保定板1、1を、一方の保定板1の左右方向の一端部が、他方の保定板1の前記一端部と同側の端部より突出するように、厚み方向に重合させる。これにより、2つの保定板1、1は、互いの連結面8の中心位置がずれた状態で重合することとなる。このときの状態を
図4に示す。
図4では、紙面の手前から奥への方向が、パイプサポートの軸方向(厚み方向)となる。重合した2枚の保定板1、1には、1つの重合部と2つの非重合部が形成される。この重合部内で、互いの貫通孔2の位置を揃えて同軸とし、各々の貫通孔2にボルト12を挿通してこれをナット13で締結する。
【0031】
例えば、図中、重合部には3箇所の貫通孔2があり、これら3箇所の貫通孔2の内、左右両端の2箇所の貫通孔2が、保定板1どうしの連結に用いられている。そして連結された保定板は、非重合部1つ分の長さ、一枚の保定板1より拡幅されている。
【0032】
このように、重合部を有するように連結された2枚の保定板1を所定の段数形成し、それらを上記した垂直フレーム20を用いて上下方向に連結すれば、拡幅された保定具を得ることができる。こうして得られた保定具は、基本形態の保定具の幅より非重合部1つ分の長さ拡幅されており、より多くのパイプサポートPSを左右に横並びさせることが可能となる。
【0033】
上記したボルト12とナット13が、本発明の締結具に相当する。またボルト12及びナット13を緩めれば、2つの保定板1、1の連結を解除して、これらを分離することとなる。こうして2つの保定板1、1は着脱自在に連結されている。
(直立補助部材)
【0034】
次に、保定板1にパイプサポートPSを載置する際、保定板1の上面が水平となるように保定板1の直立状態を補助する直立補助部材に関して、
図5を用いて説明する。直立補助部材16は、例えば木製の角材からなり、上記した三連孔3に挿通された釘等からなる固定ピン15によって、保定板1に着脱自在に連結される。
【0035】
直立補助部材16の上面の高さは、保定板1の上面の凹部6の最も低い位置と略同じとされるとともに、直立補助部材16の下面の高さは、保定板1の下面の凹部6の最も高い位置と略同じとされている。よって直立補助部材16の上面又は下面は、パイプサポートPSが保定板1に載置されて保定されている状態において、パイプサポートPSの円筒状の本体部の外周面に滑らかに当接する。このようにして直立補助部材16は、保定板1の直立状態を補助するので、保定板1にパイプサポートPSを載置する作業中、保定板1が転倒することを抑制し、作業効率を向上することができる。
【0036】
なお、保定具を分解する時は、この固定ピン15を三連孔3から引き抜けば、直立補助部材16を保定板1から容易に分離できる。このように、直立補助部材16と保定板1とは着脱自在に連結される。
【0037】
(吊り上げ装置)
次に、本実施形態に係る保定具を用いたパイプ材の吊り上げ装置を、
図6〜8を用いて説明する。パイプ材の吊り上げ装置は、フックF又はワイヤロープW等を介してクレーンCに連結され、パイプ材の吊り上げ作業を容易とするために用いられるものである。
【0038】
パイプ材の吊り上げ装置は、上記した本実施形態に係る保定具と、この保定具に連結される吊り上げ具30とを有する。吊り上げ具30は、例えば全体がスチール製の部材からなり、
図6、7に示すように、略矩形状の本体板(吊り上げ具本体)31と、本体板31に形成されたリング孔31bを介して配設されたリング(クレーン側連結部)34とを有する。また吊り上げ具30は、本体板31に形成された回動軸孔31aを介して、回動軸33で本体板31に同軸で、その一端部が各々回動自在に枢着された2枚の回動板32、32を有する。
【0039】
各回動板32には、回動軸33側の反対側の端部に、保定板1の両端部に連結される係合部(保定部材側連結部)32aと、拡張用連結孔32bが形成されている。係合部32aは、断面略L字状の突起形状とされ、一方の回動板32の係合部32aは、
図7に示すように、回動軸33の軸方向の一方側(図中左側)に突出するように形成されている。また他方の回動板32の係合部32aは、回動軸33の軸方向の他方側(図中右側)に突出するように形成されている。
【0040】
回動板32は、
図6に示すように、回動軸33側から遠い側の端部が回動軸33に対して回動自在に構成されているので、2つの係合部32a、32a間の距離(係合部間距離D)が変化する。すなわち、係合部間距離Dが調節自在に構成されている。そして、
図8に示すように、2つの係合部32a、32aを、保定具の上端の保定板1の両端の側孔5、5に各々、反対側から係合させ、吊り上げ具30と保定具とを連結する。尚、
図8は、複数のパイプサポートPSの軸方向の一方の端部側に設けられた保定具を示すとともに、パイプサポートPS及び他の保定板1の図示は省略しているものとする。
【0041】
そしてリング34にワイヤロープWの一端を連結し、他端をクレーンCのフックFに連結する。またこの吊り上げ具30を別に一つ用意し、これを上記同様に、パイプサポートPSの他方の端部側に設けられた保定具においても、同様に側孔5、5に各々係合させ、吊り上げ具30と保定具とを連結する。
【0042】
上記した拡張用連結孔32bは、拡張用回動板(不図示)を、回動軸(不図示)を用いて回動板32に枢着するために用いられるものである。拡張用回動板を連結することにより、係合部間距離Dを拡張することができる。
【0043】
(保定具の使用方法)
次に、本実施形態に係る保定具の使用方法を説明する。まず、複数のパイプサポートPSを、資材置場から建築現場へ搬送するための積載作業を説明する。
搬送のために手配された搬送トラックは、大きさがそれぞれ異なっており、各々の荷台の幅が約1800mmのものと、約2400mmのものとが混在しているものとする。
【0044】
ここで、基本形態の保定具の左右方向の長さは約860mmとする。よって約1800mmの荷台幅の搬送トラックには、2束積載して、殆ど余剰スペースが生じない。一方、約2400mmの荷台幅の搬送トラックには、2束の保定具を積載すると、残り約660mm幅の余剰スペースが生じる。この幅は、基本形態の1束の保定具の幅より短いので、この保定具を積載することができない。
【0045】
そこで、保定板1を2枚用意し、一方の保定板1の左右方向の一端側から2箇所の貫通孔2を選定する。また他方の保定板1の一端側からも2箇所の貫通孔2を選定する。そしてこれら2箇所の貫通孔2を、上記したように保定板1どうしが重合部と非重合部とを形成するように連結する。各貫通孔2は約200mmの等間隔で形成されているので、このときの重合部の幅は約200mmとなる。また非重合部の幅は約660mmとなる。よって、この連結された保定板を6枚用いて5段のパイプサポートPSを載置できる拡幅された保定具の幅は、約1460mmとなる。またこのとき左右方向には凹部6が6箇所増加することとなるため、保定具全体で30本の追加のパイプサポートPSを載置できることとなる。
【0046】
そして、基本形態の保定具(幅約860mm)と、上記のように拡幅された保定具(幅約1460mm)とを一つずつ、搬送トラックの荷台上に載置した。これにより、約2400mmの幅を有する荷台上に余剰スペースが殆ど生じず、この搬送トラックには2束で計110本のパイプサポートPSを積載できた。
【0047】
従って、仮に荷台の幅が約1800mmの搬送トラックと、約2400mmの搬送トラックが各々2台ずつ手配された場合、上記のように保定具を拡幅すれば、これら4台の搬送トラックだけで、380本のパイプサポートPSを搬送できる。従来であれば、基本形態の保定具しか積載できないため、同じ4台の搬送トラックの場合、320本のパイプサポートPSしか搬送できない。
【0048】
次に、建築現場で保定具を一時保管する場合を説明する。搬送トラックが建築現場に到着すると、パイプサポートPSは保定具ごと荷台から荷下ろしされ、建築現場内の所定の場所に配置される。まず、最上段の保定板1と垂直フレーム20との連結が解除され、この保定板1が保定具から取り外される。そして、パイプサポートPSが持ち出される。その後、残りの保定板1は、下段に向かって、逐次的に取り外される。
【0049】
取り外された保定板1は、例えばこの保定具周囲の空きスペース等に、一時的に保管される。ここで保定板1は、厚みが1〜2mm程度の板状であるため、一時保管にあたり比較的大きな空きスペースを必要としない。そして一時保管する保定板1が複数となっても、これらは全て同じ形状であるので、既に取り外された保定板1の横に立てかけたり、或いは上に重ねたりすることを容易に行える。このように、保定部材が一枚の板状の部材からなる保定板1であるとともに、保定具がこの同形状の保定板1を用いて構成されているため、本実施形態に係る保定具は、保定具の分解や保定板1の一時保管における取り扱い性に優れている。
【0050】
次に、建築現場での作業が終了すると、パイプサポートPSの一部又は全てを建築現場から資材置場に持ち帰ることとなる。その際、手配された複数の搬送トラックの荷台の幅が夫々異なっていても、上記同様に保定具を拡幅すれば、余剰スペースが生じてもこれを無駄なく活用して、パイプサポートPSを効率的に搬送することができる。
【0051】
また、分解した保定具から生じた保定板1や垂直フレーム20等を、部材の状態で持ち帰る場合があるが、部材の種類が基本的にこれら2種類だけであるため、部材ごとにまとめることが容易であるとともに、荷台上にも効率よく配置できる。よって、保定具を分解した状態で、部材を搬送する場合の取り扱い性がよい。
尚、パイプサポートPSが載置された保定具を移動させる際、クレーン吊り作業が発生する場合には、上記したパイプ材の吊り上げ装置を用いることができる。
(効果)
【0052】
上記したように、本実施形態に係る保定具を用いてパイプサポートを保管・搬送すれば、1種類の保定板を用いるだけで、保定具を拡幅することができ、長さの異なる部材を用意しておく必要がないので部材数を抑えることができる。また、形状の異なる部材を用意しておく必要がないので、拡幅作業性がよいとともに、大量生産に適しており、製造コストを低減できる。また全体的に、保定具を構成する部材の数及び種類を抑えられるので、保定具の組立・パイプ材の載置・保定具の分解といった保定作業における取り扱い性が総合的によい、パイプ材の保定具とすることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る保定具によれば、保定板に5箇所の貫通孔が形成されており、これらを適宜使い分けて連結できるので、拡幅する長さを調節できる範囲が広がるので、拡幅作業性がより向上する。また同時に2箇所以上の貫通孔を締結することが可能となる。これにより、1箇所のみで保定板を連結する場合に比べ、連結された保定板を構成する各々の保定板が、貫通孔を中心に、自重又は載置するパイプサポートの重さによって回動する動作が抑制される。よってパイプ材の保定具を拡幅しても、連結された保定板どうしの連結を強固に保持するので、拡幅作業性がより向上する。
【0054】
また、本実施形態に係る保定具によれば、貫通孔どうしの間隔が等間隔であり、拡幅する長さ調節が容易となるので、拡幅作業性がより向上する。
また、本実施形態に係る保定具によれば、拡幅連結部が、2つの保定板に形成された各々の貫通孔及びこれらを同軸で貫通して締結する締結具を用いるだけで構成されるので、拡幅作業が簡便となり、拡幅作業性がより向上する。また貫通孔は、保定板に孔あけ加工を施すだけで比較的容易に形成できるので、保定具の製造コストをより低減することができる。加えて、貫通孔部を形成することによって、スチール製の保定板の重量が軽減される効果を有するので、拡幅作業性及び取り扱い性がより向上する。
【0055】
また、本実施形態に係る保定具によれば、保定部材がスチール製で板状の保定板であるので保定部材の厚みが比較的薄く、建築現場でこれを複数まとめて一時保管しても全体としての厚みを抑制できる。そのため、建築現場での建設作業の邪魔になることがなく、保定作業の取り扱い性がより向上する。また保定板が一体形成されるので、強度をより向上できるとともに、製造が簡易となるので製造コストを低減できる。
【0056】
また、本実施形態に係る保定具によれば、保定板と垂直フレームとを着脱自在に連結するのに、保定板側は拡幅連結部である貫通孔が用いられる。すなわち、貫通孔は、拡幅連結部としての役割と、垂直フレームとの連結部としての役割を兼ねる。よって保定板と垂直フレームとの連結部を、保定板に別途形成する必要がない。よって保定作業の取り扱い性がより向上するとともに、パイプ材の保定具の製造コストをより低減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る保定具によれば、保定板の連結面に直立補助部材が着設されるので、保定板が転倒して凹部にパイプサポートを載置できなくなる状態を抑制する。よって、保定板にパイプサポートを効率よく載置できる。また直立補助部材は保定板から着脱自在であるので、保定作業の取り扱い性に干渉することがない。
【0058】
また、本実施形態に係る吊り上げ装置は、上記本実施形態に係る保定具の効果に加え、以下のような効果を奏する。
例えば、
図9に示すように、従来、一束のパイプサポートPSをクレーンCで吊り上げる場合、サポートハンガーHごとワイヤロープWを一束のパイプサポートPSに巻きつける必要があった。そのため、サポートハンガーHの枠内に積層して保定されたパイプサポートPSの内、最下段のパイプサポートPSの下方の狭い空間にワイヤロープWをくぐらせなければならず、この作業は非常に手間がかかるという問題が生じていた。
【0059】
また本発明に係る保定具のように、保定具が拡幅された場合、最下段のパイプサポートPSの下方でワイヤロープWをくぐらせる距離が長くなるため、同作業の困難性がますます増大するという問題があった。
【0060】
そこで、本実施形態に係る吊り上げ装置を用いれば、最下段のパイプサポートPSの下方にワイヤロープWを通す必要がないため、吊り上げ作業を容易に行うことができる。また吊り上げ具30は係合部間距離Dが調節自在に構成されているため、本実施形態に係るパイプ材の保定具が拡幅された場合であっても、これに対応して係合部間距離Dを調節できる。よって拡幅した保定具に容易に対応できるので、吊り上げ作業性が向上する。
さらに、拡張用回動板を連結すれば係合部間距離Dが拡張されるので、拡幅した保定具に対応できる調節範囲が広がる。よって吊り上げ作業性をより向上させることができる。
(その他)
【0061】
尚、本発明における拡幅連結部を構成する貫通孔は本実施形態の形状に限定されず、適宜変更されてよい。例えば左右方向に長手の幅を有する長穴としてもよく、この場合、保定板どうしの連結位置を微調整できるので、拡幅作業性がより向上する。
また、貫通孔は、その数や配置場所が適宜変更されてよく、例えば2つ以上の孔を比較的近接位置でまとめて形成し、これら一組の孔を1箇所の拡幅連結部とした上で、こうした拡幅連結部を保定板の左右方向に並設してもよい。また、本実施形態の三連孔の形態のように、上下方向に3つの孔を設けてもよい。
【0062】
また、本発明における拡幅連結部は、貫通孔と締結具に限定されず、適宜変更されてよい。例えば、保定板の連結面に形成された拡幅用突起部と、この拡幅用突起部の形状に対応する拡幅用嵌合部とが、保定板の連結面上の左右方向に繰り返し形成されてもよい。この場合、締結具を別途用いる必要がないので、保定具の取り扱い性がより向上する。
また、重合部を有するように連結される保定板1の枚数は、本実施形態のように2枚に限定されず、3枚、4枚と適宜変更されてよい。
【0063】
また直立補助部材は、本実施形態の形状に限定されず、適宜変更されてよい。例えば木材の他、樹脂性、ゴム性、金属製等の任意の材料を用いて構成されてよい。また直立補助部材と保定板との連結方法も適宜変更されてよい。例えば、直立補助部材の保定板に対向する面に突起部を設け、この突起部に対応して嵌合する嵌合部を保定板の連結面に形成し、これらを嵌合させて着脱自在に連結する構成としてもよい。