【実施例】
【0031】
経験的コンピューターモデルを用いて
図1、2、及び3のシステムの運転をシミュレートして、デカンター30から軽質相物質ではなく重質相物質を再循環することの効果を示した。
【0032】
軽質相還流と重質相還流とを用いるシステム内での種々の質量流の相対値を、酢酸含量の算出値と共に表1に与える。「相対質量流」とは、デカンター30からの全軽質相還流を用いて
図1及び2のシステムを運転するベースケースに関するシステムにおける特定の点で算出された質量流を指す。したがって、軽質留分カラムに対する粗生成物流の相対質量流(1時間あたりのポンド数)が1であることは、両方のシステムを軽質留分カラムと同じ供給速度(及びこのシミュレーションでは組成)で運転したことを示す。軽質留分生成物側流の相対質量流速は実質的に同等であった。軽質留分カラムにおける相対質量還流は、他の条件がほぼ同一で重質相還流を用いた場合には、実質的により高かった。
【0033】
【表1】
【0034】
同一の供給流を用いて実質的に同一の条件下で運転した場合には、重質相還流を用いるシステムは、軽質相還流を用いて運転した実質的に同一のシステムと比較して、軽質留分カラムの塔頂蒸気中の酢酸の濃度が遙かに低かったことが表1において分かる。同様に、軽質留分生成物側流中の水の相対質量流速は、重質相還流を用いた場合には、生成物側流の相対質量流速が同一であっても著しく低かった。更に、デカンテーションした軽質相中の酢酸濃度は、重質相還流を用いてシステムを運転した場合には非常に低く、一方、LE生成物側流はより高い酢酸濃度を有していた。
【0035】
したがって、本発明のシステムは、(i)軽質留分カラムの蒸留区域からの塔頂蒸気を凝縮し;(ii)凝縮蒸気を、主としてヨウ化メチルを含む重質相、並びに主として酢酸及び水を含む軽質相にデカンテーションし;そして(iii)重質相の少なくとも一部を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する;ことを含む、酢酸カルボニル化プロセスにおける粗生成物流の精製を含む。軽質留分カラムにおいて精製した生成物流は、更なる精製のために乾燥カラムに供給する。
【0036】
一般に、デカンター30からの凝縮重質相の約40重量%〜約90重量%の任意の量を、軽質留分カラムの蒸留区域に還流する。デカンテーションされた重質相の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、又は少なくとも約70重量%、又はそれ以上を還流することができる。また、本発明の運転方法によれば、塔頂蒸気は、カラム16から排出される蒸気の全重量を基準として約5重量%未満、通常は2.5重量%未満、最も典型的には1重量%未満の酢酸含量を有する。デカンテーションされた重質相は、典型的には、約60重量%〜90重量%の間のヨウ化メチル含量を有する。
【0037】
上記のシミュレーションから、精製生成物流は、デカンテーションされた重質相ではなくデカンテーションされた軽質相を還流する、実質的に同一の条件下で運転された実質的に同一の軽質留分カラムから排出される生成物流のものの約0.4倍〜約0.85倍の相対含水率を有する。典型的には、本発明方法の精製生成物流は、デカンテーションされた重質相ではなくデカンテーションされた軽質相を還流する、実質的に同一の条件下で運転された実質的に同一の軽質留分カラムから排出される生成物流のものの約0.75倍又は0.6倍又はそれ未満の相対含水率を有する。
【0038】
デカンテーションされた軽質相は、5重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満の酢酸含量を有することができる。本発明の特に好ましい方法は、所謂「低水分」反応混合物を用いる。この方法においては、メタノールをカルボニル化する工程は、反応の経過中において、反応混合物中に、少なくとも約0.1重量乃至14重量%未満の有限濃度の水を、(i)触媒安定剤及び共促進剤として有効な約2〜約20重量%の範囲のイオン性ヨウ化物の濃度を保持するように働く量の、反応温度において反応混合物中に可溶の塩;(ii)約1〜20重量%のヨウ化メチル;(iii)約0.5〜約30重量%の酢酸メチル;(iv)ロジウム触媒;及び(v)酢酸;と共に保持しながら、触媒反応混合物を保持するカルボニル化反応器内でメタノールを一酸化炭素供給材料と反応させることを含む。
【0039】
多数の態様に関連して本発明を詳細に記載し示した。本発明の精神及び範囲内での特定の態様に対する修正は、当業者に容易に明らかになるであろう。かかる修正は、特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲内である。
また、本発明は、特に限定されないが、以下の発明を包含する。
[1](a)メタノール又はその反応性誘導体を、反応器内において、水と、ロジウム触媒、イリジウム触媒、及びこれらの混合物から選択される触媒と、並びにヨウ化メチル促進剤の存在下でカルボニル化して、酢酸反応混合物を形成し;
(b)酢酸反応混合物の流れを、液体再循環流、並びに酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水を含む粗生成物流に分離し;
(c)粗生成物流を、蒸留区域を有する軽質留分カラムに供給し;
(d)軽質留分カラムの蒸留区域内において粗生成物流を精製して、ヨウ化メチル及び酢酸メチルを除去して精製生成物流を生成させ、ここで精製生成物流は粗生成物流よりも低いヨウ化メチル及び酢酸メチルの濃度を有し、粗生成物流を精製する工程は、(i)軽質留分カラムの蒸留区域からの塔頂蒸気を凝縮し;(ii)凝縮蒸気を、主としてヨウ化メチルを含む重質相、並びに主として酢酸及び水を含む軽質相にデカンテーションし;そして(iii)凝縮重質相の少なくとも一部を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する;ことを含み;そして
(e)軽質留分カラムから精製生成物流を取り出す;
ことを含む、酢酸を製造するためのカルボニル化方法。
[2]凝縮重質相の約40重量%〜約90重量%を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する、[1]に記載の方法。
[3]デカンテーションした重質相の少なくとも約50重量%を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する、[1]に記載の方法。
[4]デカンテーションした重質相の少なくとも約60重量%を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する、[1]に記載の方法。
[5]デカンテーションした重質相の少なくとも約70重量%を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する、[1]に記載の方法。
[6]塔頂蒸気が5%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[7]塔頂蒸気が2.5%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[8]塔頂蒸気が1%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[9]デカンテーションした重質相が約60重量%〜約90重量%の間のヨウ化メチル含量を有する、[1]に記載の方法。
[10]精製生成物流が、デカンテーションした重質相ではなくデカンテーションした軽質相を還流する、実質的に同一の条件下で運転された実質的に同一の軽質留分カラムから取り出される生成物流のものの約0.4倍〜約0.85倍の相対含水率を有する、[1]に記載の方法。
[11]精製生成物流が、デカンテーションした重質相ではなくデカンテーションした軽質相を還流する、実質的に同一の条件下で運転された実質的に同一の軽質留分カラムから取り出される生成物流のものの0.75倍以下の相対含水率を有する、[1]に記載の方法。
[12]精製生成物流が、デカンテーションした重質相ではなくデカンテーションした軽質相を還流する、実質的に同一の条件下で運転された実質的に同一の軽質留分カラムから取り出される生成物流のものの0.6倍以下の相対含水率を有する、[1]に記載の方法。
[13]デカンテーションした軽質相が5重量%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[14]デカンテーションした軽質相が2重量%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[15]デカンテーションした軽質相が1重量%未満の酢酸含量を有する、[1]に記載の方法。
[16]精製生成物流を、水除去を含む更なる精製のために先へ送ることを更に含む、[1]に記載の方法。
[17](a)反応の経過中において、反応混合物中に、少なくとも約0.1重量%乃至14重量%未満の有限濃度の水を、(i)触媒安定剤及び共促進剤として有効な約2〜約20重量%の範囲のイオン性ヨウ化物の濃度を保持するように働く量の、反応温度において反応混合物中に可溶の塩;(ii)約1〜20重量%のヨウ化メチル;(iii)約0.5〜約30重量%の酢酸メチル;(iv)ロジウム触媒;及び(v)酢酸;と共に保持しながら触媒反応混合物を保持するカルボニル化反応器内でメタノールを一酸化炭素供給材料と反応させ;
(b)酢酸反応混合物の流れを、液体再循環流、並びに酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水を含む粗生成物流に分離し;
(c)粗生成物流を、蒸留区域を有する軽質留分カラムに供給し;
(d)軽質留分カラムの蒸留区域内において粗生成物流を精製して、ヨウ化メチル及び酢酸メチルを除去して精製生成物流を生成させ、ここで精製生成物流は粗生成物流よりも低いヨウ化メチル及び酢酸メチルの濃度を有し、粗生成物流を精製する工程は、(i)軽質留分カラムの蒸留区域からの塔頂蒸気を凝縮し;(ii)凝縮蒸気を、主としてヨウ化メチルを含む重質相、並びに主として酢酸及び水を含む軽質相にデカンテーションし;そして(iii)凝縮重質相の少なくとも一部を軽質留分カラムの蒸留区域に還流する;ことを含み;そして
(e)軽質留分カラムから精製生成物流を取り出す;
ことを含む、酢酸を製造するためのカルボニル化方法。
[18](a)反応器内において、水と、ロジウム触媒、イリジウム触媒、及びこれらの混合物から選択される触媒と、並びにヨウ化メチル促進剤の存在下でメタノール又はその反応性誘導体をカルボニル化して酢酸反応混合物を形成する反応器;
(b)反応器に接続されており、反応混合物の流れを受容して、それを(i)液体再循環流、及び(ii)酢酸を含む粗生成物流に分離するように構成されているフラッシャー装置;
(c)フラッシャーに接続されており、粗生成物流から低沸点成分を分離して精製生成物流を生成するように構成され、上部、下部、及び中央部を有する蒸留区域を有し、蒸留区域の中央部は精製生成物流を先へ送るための生成物側流口を有する、軽質留分カラム;
(d)軽質留分カラムの上部と連絡しており、それから受容した蒸気を凝縮して凝縮蒸気流を生成するように構成されている凝縮器;
(e)凝縮器と連絡しており、凝縮蒸気流を、軽質相凝縮流及び主としてヨウ化メチルを含む重質相凝縮流にデカンテーションするように構成されており、更に重質相凝縮流の少なくとも一部を還流として軽質留分カラムの上部に供給するように構成されているデカンター;及び
(f)軽質留分カラムに接続されており、精製生成物流を受容して更に精製する脱水カラム;
を有する、酢酸を製造するための装置。
[19]デカンターが、凝縮重質相の約40重量%〜約90重量%を還流として軽質留分カラムに戻すように構成されている、[18]に記載の装置。
[20]脱水カラムが重質留分カラムに接続されている、[18]に記載の装置。