特許第5736059号(P5736059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57360594−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736059
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/803 20060101AFI20150528BHJP
   C07D 213/79 20060101ALI20150528BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
   C07D213/803
   C07D213/79CSP
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2013-551280(P2013-551280)
(86)(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公表番号】特表2014-508143(P2014-508143A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】US2012022291
(87)【国際公開番号】WO2012103047
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2013年9月17日
(31)【優先権主張番号】61/435,958
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトカー,グレゴリー,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】アーント,キム,イー.
(72)【発明者】
【氏名】レンガ,ジェームス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ヤンミン
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,クリスチャン,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シダル,トーマス,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ポドレツ,デイビッド,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ロス,ギャリー,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト,スコット,ピー.
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/062979(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/046090(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/051468(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/011853(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/082098(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/149956(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/144891(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/144380(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/089906(WO,A1)
【文献】 米国特許第03803159(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 213/803
C07D 213/79
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)−ピコリネート
【化62】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【化63】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]をフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネート
【化64】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネート
【化65】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネートの6位にあるフルオロ置換基を、ヨウ化物、臭化物、または塩化物供給源で処理することにより、ヨード、ブロモ、またはクロロ置換基と交換して、式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネート
【化66】

[式中、Xは、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Eの4−アミノ−3,6−ジハロ−5−フルオロピコリネート
【化67】

[式中、WおよびXは、独立に、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
e)式Eの4−アミノ−3,6−ジハロ−5−フルオロピコリネートと、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法。
【請求項2】
含アミン生成物または中間体を、a)酸でプロトン化して塩を形成するステップと、b)結晶化、沈殿、または抽出によって、前記塩をより高純度で単離するステップと、c)精製された前記塩を塩基で中和して、中性の精製含アミン生成物または中間体を形成するステップとによって精製する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)−ピコリネート
【化68】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【化69】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]をフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネート
【化70】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネート
【化71】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネートの6位にあるフルオロ置換基を、ヨウ化物、臭化物、または塩化物供給源で処理することにより、ヨード、ブロモ、またはクロロ置換基と交換して、式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネート
【化72】

[式中、Xは、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネートと、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Gの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)−ピコリネート
【化73】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
e)式Gの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法。
【請求項4】
含アミン生成物または中間体を、a)酸でプロトン化して塩を形成するステップと、b)結晶化、沈殿、または抽出によって、前記塩をより高純度で単離するステップと、c)精製された前記塩を塩基で中和して、中性の精製含アミン生成物または中間体を形成するステップとによって精製する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)−ピコリネート
【化74】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【化75】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]と、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Hの4,5−ジクロロ−6−(置換)ピコリネート
【化76】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Hの4,5−ジクロロ−6−(置換)ピコリネートをフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Jの4,5−ジフルオロ−6−(置換)ピコリネート
【化77】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Jの4,5−ジフルオロ−6−(置換)ピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Kの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネート
【化78】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Kの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法。
【請求項6】
含アミン生成物または中間体を、a)酸でプロトン化して塩を形成するステップと、b)結晶化、沈殿、または抽出によって、前記塩をより高純度で単離するステップと、c)精製された前記塩を塩基で中和して、中性の精製含アミン生成物または中間体を形成するステップとによって精製する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
a)
【化79】

[式中、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、
b)
【化80】

[式中、Xは、I、Br、Cl、またはFを表し、Yは、Hを表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、
c)
【化81】

[式中、Yは、Hを表し、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、および
d)
【化82】

[式中、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]
からなる群から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートの調製方法に関する。より詳細には、本発明は、方法スキームにおいて早期に5−フルオロ置換基をハロゲン交換によって導入する、4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,297,197号B1は、特に、ある種の6−(アルコキシまたはアリールオキシ)−4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロピコリネート化合物およびその除草剤としての使用を記載している。米国特許第6,784,137号B2および第7,314,849号B2は、特に、ある種の6−(アリール)−4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロピコリネート化合物およびその除草剤としての使用を記載している。米国特許第7,432,227号B2は、特に、ある種の6−(アルキル)−4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロピコリネート化合物およびその除草剤としての使用を記載している。これらの特許はそれぞれ、対応する5−非置換ピリジンを1−(クロロメチル)−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)でフッ素化することによる4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロピコリネート出発材料の製造を記載している。ピリジン環の5位を1−(クロロメチル)−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)のような高価なフッ素化剤で直接フッ素化することに頼る必要なしに、4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成することは有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを4,5,6−トリクロロピコリネートから調製する方法に関する。より詳細には、本発明は、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネート
【0004】
【化1】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【0005】
【化2】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]をフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネート
【0006】
【化3】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネート
【0007】
【化4】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネートの6位にあるフルオロ置換基を、ヨウ化物、臭化物、または塩化物供給源で処理することにより、ヨード、ブロモ、またはクロロ置換基と交換して、式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネート
【0008】
【化5】

[式中、Xは、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Eの4−アミノ−3,6−ジハロ−5−フルオロピコリネート
【0009】
【化6】

[式中、WおよびXは、独立に、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
e)式Eの4−アミノ−3,6−ジハロ−5−フルオロピコリネートと、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法に関する。
【0010】
ステップa)からe)は、スキームIに示すとおりに、書き出した順序で実施することができる。
【0011】
【化7】
【0012】
別法として、ステップを実施する順序を、たとえばスキームIIおよびIIIで図示するとおりに並べ換えることもできる。
【0013】
【化8】
【0014】
スキームIIによれば、本発明は、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネート
【0015】
【化9】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【0016】
【化10】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]をフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネート
【0017】
【化11】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Bの4,5,6−トリフルオロピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネート
【0018】
【化12】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Cの4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネートの6位にあるフルオロ置換基を、ヨウ化物、臭化物、または塩化物供給源で処理することにより、ヨード、ブロモ、またはクロロ置換基と交換して、式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネート
【0019】
【化13】

[式中、Xは、Cl、Br、またはIを表し、
は、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Dの4−アミノ−5−フルオロ−6−ハロピコリネートと、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Gの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)−ピコリネート
【0020】
【化14】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
e)式Gの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法に関する。
【0021】
【化15】
【0022】
スキームIIIでは、ヨウ素、臭素、または塩素交換ステップc)が必要ない。したがって、本発明はまた、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネート
【0023】
【化16】

[式中、
Wは、Cl、Br、またはIを表し、
Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、
は、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]の調製方法であって、
a)式Aの4,5,6−トリクロロピコリネート
【0024】
【化17】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]と、式Fのアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物
R−Met F
[式中、Rは、前に規定したとおりであり、Metは、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)を表し、ここで、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下でカップリングさせて、式Hの4,5−ジクロロ−6−(置換)ピコリネート
【0025】
【化18】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
b)式Hの4,5−ジクロロ−6−(置換)ピコリネートをフッ化物イオン供給源でフッ素化して、式Jの4,5−ジフルオロ−6−(置換)ピコリネート
【0026】
【化19】

[式中、Rは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
c)式Jの4,5−ジフルオロ−6−(置換)ピコリネートをアンモニアでアミノ化して、式Kの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネート
【0027】
【化20】

[式中、RおよびRは、前に規定したとおりである]を生成するステップと、
d)式Kの4−アミノ−5−フルオロ−6−(置換)ピコリネートをハロゲン供給源でハロゲン化して、式Iの4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートを生成するステップと
を含む方法に関する。
【0028】
スキームI〜IIIのいずれかのステップにおいて、エステル置換基Rは、異なるR置換基と場合により交換してもよい。非置換または置換C〜C11アリールアルキルエステルを始めとするこうしたエステルは、当業界でよく知られている技術を使用しての直接エステル化またはエステル交換反応によって調製することができる。
【0029】
本発明の別の態様は、この方法の間に生成される新規の中間体、すなわち:
a)
【0030】
【化21】

[式中、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、
b)
【0031】
【化22】

[式中、Xは、I、Br、Cl、またはFを表し、Yは、H、Cl、Br、またはIを表し、但し、XがClであるとき、Yは、H、Br、またはIであり、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、
c)
【0032】
【化23】

[式中、Yは、H、Br、またはIを表し、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]、および
d)
【0033】
【化24】

[式中、Rは、C〜Cアルキル、シクロプロピル、C〜Cアルケニル、またはフェニル(ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている)を表し、Rは、C〜C12アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C11アリールアルキルを表す]
からなる群から選択される化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語「アルキル」、「アルケニル」、および「アルキニル」、ならびに「アルコキシ」、「アシル」、「アルキルチオ」、および「アルキルスルホニル」などの派生用語は、本明細書で使用するとき、その範囲内に、直鎖、分枝鎖、および環状の部分を包含する。別段特記しない限り、それぞれ、非置換でもよいし、または限定はしないが、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、C〜Cアシル、ホルミル、シアノ、アリールオキシ、またはアリールから選択される1個または複数の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基は、立体的に適合しており、かつ化学結合およびひずみエネルギーの法則が満たされる。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、1つまたは複数の不飽和結合を包含するものとする。
【0035】
用語「アリールアルキル」とは、本明細書で使用するとき、ベンジル(−CH)、2−メチルナフチル(−CH10)、および1−または2−フェネチル(−CHCHまたは−CH(CH)C)など、合計7〜11個の炭素原子を有する、フェニル置換されたアルキル基を指す。フェニル基それ自体は、非置換でもよいし、またはハロゲン、ニトロ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン化C〜Cアルキル、ハロゲン化C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C(O)OC〜Cアルキルから独立に選択される1個または複数の置換基で置換され、もしくは2個の近接する置換基が一緒になる場合、−O(CHO−「式中、n=1または2である]のように置換されていてもよく、但し、置換基は、立体的に適合しており、かつ化学結合およびひずみエネルギーの法則が満たされる。
【0036】
別段特に限定しない限り、用語「ハロゲン」、ならびに「ハロ」などの派生用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0037】
ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、またはC〜Cハロアルコキシから独立に選択される1〜4個の置換基で置換されている6−フェニル基は、いずれの配向のものでもよいが、4−置換フェニル、2,4−二置換フェニル、2,3,4−三置換フェニル、2,4,5−三置換フェニル、および2,3,4,6−四置換フェニル異性体が好ましい。
【0038】
4−アミノ−5−フルオロ−3−ハロ−6−(置換)ピコリネートは、4,5,6−トリクロロピコリネートから、フッ素交換、アミノ化、ハロゲン交換、ハロゲン化、および遷移金属を用いたカップリングを含む一連のステップによって調製される。個々のステップは、異なる順序で実施してもよい。
【0039】
4,5,6−トリクロロピコリネート出発材料は、既知の化合物である、たとえば、米国特許第6,784,137号B2の実施例3を参照されたい。非置換または置換C〜C11アリールアルキルエステルを始めとするより高級のエステルは、当業界でよく知られている技術を使用しての直接エステル化またはエステル交換反応によって調製することができる。
【0040】
フッ素交換反応では、対応する塩素化ピコリネートを、交換される各環塩素置換基について少なくとも1当量のフッ化物イオン供給源と反応させることにより、フッ素化ピコリネートを調製する。
【0041】
【化25】

典型的なフッ化物イオン供給源は、アルカリ金属フッ化物であり、これには、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、およびフッ化セシウム(CsF)が含まれ、KFおよびCsFが好ましい。フッ化テトラブチルアンモニウム(n−BuNF)などのフッ化物塩を使用してもよい。反応は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、スルホランなどの、極性非プロトン性溶媒または反応媒体中で実施することが好ましい。フッ化物交換の速度を増大させることが知られている、クラウンエーテルや相間移動剤などの添加剤を使用してもよい。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は70℃〜180℃であり、好ましくは80℃〜120℃である。特定の反応にどの溶媒を用いるかに応じて、最適温度は様々となる。一般に、温度が低いほど、反応はゆっくりと進行する。この反応は、通常、反応物混合物の実質的に一様な分散を維持するのに十分な激しい撹拌の存在下で実施する。
【0042】
フッ素化反応を実施する際、反応物を加える速度も順序も、肝要でない。普通は、溶媒とアルカリ金属フッ化物を混合した後、反応混合物に塩素化ピコリネートを加える。典型的な反応は、一般に2〜100時間を要し、普通は周囲大気圧で実施される。
【0043】
反応物の正確な量は肝要でないが、出発材料中の交換される塩素原子の数に対して少なくとも等モル量のフッ素原子を供給する量のアルカリ金属フッ化物、すなわち、少なくとも等モル量のアルカリ金属フッ化物を用いることが好ましい。反応が完了した後、標準的な分離および精製技術を用いることにより、所望の生成物を回収する。
【0044】
アミノ化では、4−フルオロピコリネートをアンモニアと反応させて、フッ素原子をアミノ基で置き換える。
【0045】
【化26】

化学量論量のアンモニアだけしか必要とならないが、大幅に過剰のアンモニアを使用することが、多くの場合好都合である。反応は、不活性溶媒中、好ましくは、DMSO、NMP、DMF、HMPA、またはスルホランなどの極性非プロトン性溶媒または反応媒体中で実施する。あるいは、有機溶媒を使用しまたは使用せずに、水酸化アンモニウム水溶液を使用することもできる。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は0℃〜45℃であり、好ましくは10℃〜30℃である。
【0046】
アミノ化反応を実施する際、4−フルオロピコリネートを溶媒に溶解させ、反応混合物に冷却しながらアンモニアを加える。通常、過剰のアンモニアガスを反応混合物中にバブリングする。典型的な反応は、一般に0.5〜5時間を要し、普通は周囲大気圧で実施される。
【0047】
こうした方法のいずれかによって得られる、含アミン生成物または中間体は、蒸発や抽出などの従来の手段によって回収することができ、再結晶やクロマトグラフィーなどの標準的な手順によって精製することができる。含アミン生成物または中間体の精製は、酸を用いたプロトン化による影響を受けて塩を形成し、それを、結晶化、沈殿、または抽出によってより高純度で単離することもできる。塩酸、臭化水素酸、硝酸、酢酸、または硫酸などの様々な酸を使用することができる。無水塩酸が好ましい酸である。次いで、精製された塩を塩基で中和して、中性の含アミン生成物または中間体を形成する。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基を使用してもよい。トリエチルアミンなどの有機塩基が好ましい。含アミン生成物または中間体の精製は、アミノ化ステップの直後でも、または後続の反応、たとえば、ハロゲン化、カップリングを実施した後でも、このようにして実施することができる。
【0048】
ハロゲン(ヨウ素、臭素、または塩素)交換反応では、対応する6−フッ素化ピコリネートを少なくとも1当量のヨウ化物、臭化物、または塩化物と反応させることにより、6−ヨウ素化、6−臭素化、または6−塩素化ピコリネートを調製する。
【0049】
【化27】

通常、ハロゲン交換反応は、大幅に過剰の無水ヨウ化水素(HI)、臭化水素(HBr)、または塩化水素(HCl)の存在下で実施する。反応は通常、水不在で実施して、副生成物の形成を最小限に抑える。ハロゲン交換には、一般に、5〜50当量、好ましくは10〜20当量のHI、HBr、またはHClが必要となる。反応は、不活性溶媒中、好ましくは、ジオキサンや酢酸などの極性溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は75℃〜150℃であり、好ましくは100℃〜125℃である。反応は通常、HI、HBr、またはHClガスを収容することのできる密閉圧力反応器中で実施する。典型的な反応は、一般に0.5〜5時間を要する。
【0050】
ハロゲン化反応では、不活性溶媒中で3−非置換ピコリネートをハロゲン供給源と反応させることにより、塩素、臭素、またはヨウ素原子をピコリネートの3位に導入する。
【0051】
【化28】
【0052】
3位のハロゲン原子がClであるとき、塩素供給源は、塩素(Cl)それ自体でもよいし、または塩化スルフリル、N−クロロスクシンイミド、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインなどの試薬でもよい。塩素または塩化スルフリルを使用するとき、大幅に過剰の塩素化剤を使用する。塩素ガスを使用するとき、反応は、不活性溶媒中、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロメタン−水、酢酸などの溶媒中で実施する。塩化スルフリルを使用するとき、反応は、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中で、または無希釈の塩化スルフリル中で実施することができる。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は0℃〜45℃であり、好ましくは10℃〜30℃である。典型的な反応は、一般に、0.5〜5時間を要する。塩素化反応は、普通は周囲大気圧で実施する。
【0053】
使用する塩素化剤がN−クロロスクシンイミドまたは1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインであるとき、反応は、化学量論量の塩素化試薬を使用して実施する。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインを塩素化剤として使用する塩素化については、ヒダントインの両方の塩素が反応することがわかっている。反応は、DMFやアセトニトリルなどの不活性極性溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は20℃〜85℃であり、好ましくは50℃〜80℃である。アセトニトリルを溶媒として使用するとき、反応を還流温度で実施することが好都合である。典型的な反応は、一般に、0.5〜5時間を要する。塩素化反応は、普通は周囲大気圧で実施する。
【0054】
3位のハロゲン原子がBrであるとき、臭素供給源は、臭素(Br)それ自体でも、または臭化スルフリル、N−ブロモスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインなどの試薬でもよい。Brを臭素化剤として使用するとき、大幅な過剰量を用いることができ、反応は、不活性溶媒中、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロメタン−水、酢酸などの溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は0℃〜45℃であり、好ましくは10℃〜30℃である。典型的な反応は、一般に、0.5〜5時間を要する。臭素化反応は、普通は周囲大気圧で実施する。
【0055】
使用する臭素化剤がN−ブロモスクシンイミドまたは1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインであるとき、反応は、化学量論量の臭素化試薬を使用して実施する。反応は、DMFやアセトニトリルなどの不活性極性溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は20℃〜85℃であり、好ましくは50℃〜80℃である。アセトニトリルを溶媒として使用するとき、反応を還流温度で実施することが好都合である。典型的な反応は、一般に、0.5〜5時間を要する。臭素化反応は、普通は周囲大気圧で実施する。
【0056】
3位のハロゲン原子がIであるとき、ヨウ素供給源は、ヨウ素(I)それ自体でも、または一塩化ヨウ素やN−ヨードスクシンイミドなどの試薬でもよい。過ヨウ素酸をIと共に使用してもよい。Iをヨウ素化剤として使用するとき、大幅に過剰のIを用いることができ、反応は、不活性溶媒中、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロメタン−水、メチルアルコール、酢酸などの溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は0℃〜45℃であり、好ましくは10℃〜30℃である。典型的な反応は、一般に、0.5〜5時間を要する。ヨウ素化反応は、普通は周囲大気圧で実施する。
【0057】
カップリング反応では、6−ヨード、ブロモ、またはクロロピコリネートと、アリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物[ここで、前記金属は、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、トリ−(C〜Cアルキル)スズ、銅、またはB(OR)(OR)であり、RおよびRは、互いに独立に、水素、C〜Cアルキルであるか、または一緒になったとき、エチレンもしくはプロピレン基を形成している]とを、遷移金属触媒の存在下で反応させる。
【0058】
【化29】

「触媒」は、遷移金属触媒、特に、二酢酸パラジウムやビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドなどのパラジウム触媒、またはアセチルアセトン酸ニッケル(II)やビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリドなどのニッケル触媒である。加えて、触媒は、酢酸パラジウムとトリフェニルホスフィンや塩化ニッケル(II)とトリフェニルホスフィンなど、金属塩と配位子から、現場で調製することもできる。こうした現場での触媒は、金属塩と配位子を先に反応させ、続いて反応混合物に加えることにより、または金属塩と配位子を、反応混合物に直接、別々に加えることにより調製することができる。
【0059】
通常、カップリング反応は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを使用して、酸素不在で実施する。不活性ガスによるスパージングなど、カップリング反応混合物から酸素を排除するのに使用される技術は、当業者によく知られている。そのような技術の例は、The Manipulation of Air-Sensitive Compounds、第2版、Shriver,D.F.、Drezdzon,M.A.編、Wiley-Interscience、1986に記載されている。準化学量論量、通常は0.0001当量〜0.1当量の触媒を使用する。追加の量の配位子を場合により加えて、触媒安定性および活性を増大させてもよい。加えて、カップリング反応液に、NaCO、KCO、KF、CsF、NaFなどの添加剤を加えるのが通常である。カップリング反応には、一般に、1〜5当量、好ましくは1〜2当量のこうした添加剤が必要である。場合によりカップリング反応液に水を加えて、これら添加剤の溶解性を増大させてもよい。カップリング反応には、一般に、1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量のアリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物が必要である。反応は、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトニトリルなどの不活性溶媒中で実施する。反応を実施する温度は、肝要ではないが、普通は25℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜125℃である。典型的な反応は、一般に、0.5〜24時間を要する。反応物を加える特別な順序は、通常は必要ない。触媒を除くすべての反応物を合わせ、次いで反応溶液を脱酸素する(deoxigenate)ことが、多くの場合、操作の上でより簡単である。脱酸素化に続き、触媒を加えて、カップリング反応を開始することができる。
【0060】
アリール、アルキル、またはアルケニル金属化合物のMet部分が、Zn−ハロゲン化物、Zn−R、または銅であるとき、反応性官能基の保護が必要な場合もある。たとえば、アミノ置換基(−NHRまたは−NH)が存在する場合、こうした反応性基の保護が必要となる場合もある。有機金属試薬との反応からのアミノ基の保護について、様々な基が当業界で知られている。そのような保護基の例は、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Greene,T.W.、Wuts,P.G.M.編、Wiley-Interscience、1999に記載されている。R−Metにおいてどの金属を使用するかの選択は、費用、安定性、反応性、および反応性官能基を保護する必要などの、いくつかの要素に左右される。
【0061】
こうした方法のいずれかによって得た生成物は、蒸発や抽出などの従来の手段によって回収することができ、再結晶やクロマトグラフィーなどの標準的な手順によって精製することができる。
【0062】
以下の実施例は、本発明を例示するために示すものである。
【実施例】
【0063】
出発材料の調製
実施例A. プロパン−2−イル4,5,6−トリクロロピコリネート
【0064】
【化30】

Dean−Starkトラップおよび還流冷却器を備えた250mL容丸底フラスコにおいて、メチル4,5,6−トリクロロピコリネート(14.19グラム(g)、59.0ミリモル(mmol))を、2−プロパノール(150ミリリットル(mL))にスラリー化した。硫酸(98%HSO、8.07g、82mmol)を加え、反応混合物を加熱還流した。還流状態で20時間(h)経過後、2−プロパノール(100mL)の大半が塔頂に留出された(distilled overhead)。ポットは、室温に冷却すると凝固した。得られる固体を酢酸エチル(EtOAc、500mL)および飽和(satd)炭酸水素ナトリウム水(aq)溶液(NaHCO、500mL)と共に撹拌した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、次いでCeliteで濾過した。有機抽出物を回転蒸発によって150mLに濃縮した。ヘキサン(100mL)を加え、溶液を終夜−20℃で貯蔵した。結晶を収集し、ヘキサンで洗浄し、風乾した(7.58g、融点104.6〜105.7℃)。濾液を濃縮することにより2回目の収穫を得て、合計10.36g(65%)を得た。1H NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.23(s, 1H, ピリジン H), 5.16(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 1.34(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 161.9(CO2R), 150.6, 145.9, 145.0, 133.1, 125.4(C3), 70.7(CHMe2), 21.7(Me). 元素分析: C9H8Cl3NO2の計算値: C, 40.26; H, 3.00; N, 5.22. 実測値: C, 40.25; H, 3.02; N, 5.22.
【0065】
実施例B. ベンジル4,5,6−トリクロロピコリネート
【0066】
【化31】

250mL容三口丸底フラスコに入ったメチル4,5,6−トリクロロピコリネート(25g、0.10モル(mol))とベンジルアルコール(100g、0.2mol)の混合物を、窒素中にて100℃で加熱した。チタンイソプロポキシド(0.6g、0.02mol)を加えた。100℃で4時間経過後、ほぼ無色の溶液を冷却し、250mL容丸底一口フラスコに移した。真空中で過剰のベンジルアルコールを除去して、ほぼ白色の固体(31g、94%)を得た:融点125〜126.5℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.08(s, 1H, ピリジン H), 7.42(m, 2H, フェニル), 7.31(m, 3H, フェニル), 5.40(s, 2H, CH2Ph); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 162.0(CO2R), 150.4, 145.0, 144.9, 134.7, 133.1, 128.3(フェニル CH), 125.4(ピリジン CH), 67.88(CH2Ph).
【0067】
実施例C. ベンジル4,5,6−トリクロロピコリネート
【0068】
【化32】

22L容丸底フラスコに、熱電対と、機械式スターラーと、窒素バブラーに接続しているDean−Starkトラップとを取り付けた。容器を窒素パージし、次いで4,5,6−トリクロロピコリネート(2547g、10.07mol)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS、130g、0.52mol)、ベンジルアルコール(2249g、20.8mol)、およびキシレン(10278g)を加えた。撹拌を開始し、ポットを140〜145℃に加熱した。キシレン/水共沸混合物を5時間かけてDean−Starkトラップに集めた。集まった留出物の合計量は、4750gであった(415gは水であった)。水の塔頂への留出が止んだ後、反応器サンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析して、確実に1.5面積%未満の出発カルボン酸が残存するようにした。反応液を室温に冷まし、終夜撹拌した。真空蒸留によってキシレン(4000g)を除去した。溶液を85〜100℃に冷却し、次いで機械式スターラーおよび熱電対を取り付けてある30L容ジャケット付き結晶化容器に真空下で移した。窒素で真空を解除し、結晶化容器に窒素バブラーを設置した。キシレン溶液に15分(min)かけてイソプロピルアルコール(IPA、6200g)を加えた。得られるスラリーをゆっくりと室温に冷まし、次いでさらに5℃に冷却した。固体を濾過によって収集し、ケークを冷(5〜10℃)IPA(3731g)で洗浄した。固体を風乾して恒量とし、白色の結晶(2765g、ガスクロマトグラフィー(GC)内標準純度96.5%、84.3%)を得た。
【0069】
フッ素交換
実施例1a. プロパン−2−イル4,5,6−トリフルオロピコリネート
【0070】
【化33】

250mL容三口フラスコに、機械式スターラーと、窒素吸気口を有するDean−Starkトラップと、熱電対とを備え付けた。フラスコを窒素パージし、CsF(23.38g、154mmol)を加えた。無水DMSO(124mL)を加え、懸濁液を窒素で排気/再充填した(backfilled)(5回)。懸濁液を80℃で30分間加熱した。DMSO(20mL)を真空中にて75℃で留去して、残留する水をすべて除去した。プロパン−2−イル4,5,6−トリクロロピコリネート(13.45g、50.1mmol)を窒素パージしているところへ加えた。反応混合物を排気/再充填し(3回)、激しく撹拌しながら100℃で1時間加熱した。
【0071】
2つ目の250mL容三口フラスコに、機械式スターラーと、窒素吸気口を有するDean−Starkトラップと、熱電対とを備え付けた。フラスコを窒素パージし、CsF(24.41g、0.160mmol)を加えた。無水DMSO(30mL)を加え、懸濁液を窒素で排気/再充填した(5回)。懸濁液を80℃に30分間加熱した。DMSO(22mL)を真空中にて75℃で留去して、残留する水を除去した。1つ目のフラスコに入った冷却した反応混合物を、窒素中にて2つ目のフラスコにカニューレ濾過した。反応混合物を排気/再充填し(5回)、次いで1時間100℃に、次いでさらに110℃で90分間加熱した。一定分量をGCによって分析すると、プロパン−2−イル4,5,6−トリフルオロピコリネートが96%であり、プロパン−2−イル5−クロロ−4,6−ジフルオロピコリネートがわずか1.4%存在することが示された。粗生成物溶液をそれ以上精製せずにアミノ化ステップでそのまま使用した。あるいは、生成物を水で後処理し、EtOAcで抽出し、乾燥させることにより単離して、薄い黄褐色の油状物を得ることもできる。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.94(dd, JF-H=4.5, 8.7Hz, 1H, H3), 5.30(七重線, JH-H=6.3Hz, 1H, CHMe2), 1.44(d, JH-H=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C {1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 161.2(s, CO2IPr), 157.3(ddd, JF-C=266, 8, 6Hz, C4/C6), 152.2(ddd, JF-C=241, 12, 5Hz, C4/C6), 141.1(dt, JF-C=14, 7Hz, C2), 137.0(ddd, JF-C=270, 31, 13Hz, C5), 113.8(dd, JF-C=17, 4Hz, C3), 70.4(s, CHMe2), 21.33(s, Me); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -74.29(dd, JF-F=24, 22Hz, F6), -112.67(ddd, JF-F=22, 19, JF-H=8.3Hz, F4), -151.58(ddd, JF-F=24, 19, JF-H=4.7Hz, F5).
【0072】
実施例1b. プロパン−2−イル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ピコリネート
【0073】
【化34】

250mL容三口フラスコに、蒸留ヘッド、窒素吸気口、機械式スターラー、および熱電対を備え付けた。フラスコにCsF(14.2g、93.0mmol)を装入した。無水DMSO(80mL)を加え、懸濁液を窒素で排気/再充填した(5回)。懸濁液を80℃で30分間加熱した。DMSO(20mL)を真空中で留去して、残留する水をすべて除去した。固体のプロパン−2−イル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(10.44g、26.6mmol)を加え、溶液を窒素で排気/再充填した(5回)。反応混合物を窒素中で105℃に加熱した。105℃で4時間経過後、一定分量をGCによって分析すると、91:6の比のジフルオロ生成物とモノフルオロ生成物が示された。反応混合物を室温に冷ました。
【0074】
2つ目の250mL容三口フラスコに、機械式スターラーと、窒素吸気口を有する蒸留ヘッドと、熱電対とを備え付けた。フラスコを窒素パージし、CsF(7.5g、49.4mmol)を加えた。無水DMSO(20mL)を加え、懸濁液を窒素で排気/再充填した(5回)。懸濁液を80℃で30分間加熱した。真空中でDMSO(15mL)を留去して、残留する水を除去した。1つ目のフラスコに入った冷却した反応混合物を、窒素中にて2つ目のフラスコにカニューレ濾過した。反応混合物を排気/再充填し(5回)、次いで2時間100℃に加熱した。一定分量をGCによって分析すると、93:2の比の所望の生成物とモノフルオロ中間体が示された。反応混合物を氷水(550g)中に注ぎ、EtOAc(3×200mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて水(5×100mL)およびブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させ、減圧下で濃縮して、褐色の油状物(8.57g)を得たが、静置すると結晶した。固体をシリカゲルクロマトグラフィー(330gシリカカラム、0〜50%のEtOAc−ヘキサンの勾配)によって精製して、白色の固体(4.98g、52%)を得た:融点98.4〜100.0℃;1H NMR(400MHz, アセトン-d6) δ 8.16(dd, JF-H=10.0, 5.6Hz, 1H, ピリジン H), 7.43(m, 2H, フェニル), 5.24(七重線, JH-H=6.3Hz, 1H, CHMe2), 4.01(d, JF-H=1.1Hz, 3H, OMe), 1.37(d, JH-H=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, アセトン-d6) δ 163.1(CO2R), 157.1(dd, JF-C=264, 12Hz, C4/C5), 154.8(d, JF-C=254Hz, C2' フェニル), 148.6(dd, JF-C=267, 11Hz, C4/C5), 147.4(t, JF-C=6Hz), 145.5(d, JF-C=13Hz), 144.6(d, JF-C=13Hz), 131.0, 126.8, 126.6(d, JF-C=3.7Hz), 123.2, 115.8(d, JF-C=16Hz), 70.6(CHMe2), 62.1(d, JF-C=4Hz, OMe), 21.9(CHMe2); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ-124.82(dd, JF-F=21Hz, JF-H=9.9Hz, F4), -129.45(dd, JF-F=27.8Hz, JF-H=6.9Hz, フェニル F), -141.81(m, F5). 元素分析: C16H13ClF3NO3の計算値: C, 53.42; H, 3.64; N, 3.89. 実測値: C, 53.77; H, 3.70; N, 3.95. 一定分量をGCによって分析すると、生成物は純度95.5%であり、モノフルオロ不純物が1.7%であることが示された。
【0075】
実施例1c. ベンジル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0076】
【化35】

250mL容三口フラスコに、蒸留ヘッド、窒素吸気口、機械式スターラー、および熱電対を備え付けた。フラスコにCsF(21.07g、139.0mmol)を装入した。無水DMSO(100mL)を加え、懸濁液を窒素で排気/再充填した(5回)。懸濁液を80℃で30分間加熱した。真空中でDMSO(30mL)を留去して、残留する水をすべて除去した。固体のベンジル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(15.34g、34.8mmol)を加え、溶液を窒素で排気/再充填した(5回)。反応混合物を窒素中で105℃に加熱した。105℃で6時間経過後、一定分量をGCによって分析すると、モノフルオロ中間体のピークが示されなかった。反応混合物を室温に冷ました。反応混合物を氷水(400g)中に注ぎ、EtOAc(3×200mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて飽和NaHCO溶液、水(5×100mL)、およびブラインで洗浄した。抽出物を乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、黄褐色の固体(12.97g)を得た。固体をフラッシュクロマトグラフィー(330gシリカカラム、0〜20%のEtOAc−勾配)によって精製して、白色の固体(9.95g、70%)を得た:融点114〜116℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.01(dd, JF-H=9.4, 5.5Hz, 1H, ピリジン H), 7.53-7.20(m, 7H, フェニル), 5.44(s, 2H, CH2Ph), 3.99(d, JF-H=1.2Hz, 3H, OMe); 13C NMR(101MHz, CDCl3) δ 162.8(d, JF-C=3Hz, CO2Bn, 156.2(dd, JF-C=267, 12Hz), 153.9(d, JF-C=255Hz), 148.0(dd, JF-C=269, 11Hz), 145.4(t, JF-C=7Hz), 144.7(d, JF-C=13Hz), 144.6(dd, JF-C=13, 2Hz), 135.2(s), 130.6(d, JF-C=3Hz), 125.6(d, JF-C=4Hz), 125.4(d, JF-C=2Hz), 122.0(d, JF-C=14Hz), 115.0(d, JF-C=16Hz), 67.9(s, CH2Ph), 61.6(d, JF-C=5Hz, OMe); 19F{1H} NMR(376MHz, CDCl3) δ -123.90(d, JF-F=19.7Hz, F4), -128.37(d, JF-F=33.5Hz, F2'), -139.64(dd, JF-F=33.5, 19.7Hz, F5). 元素分析: C20H13ClF3NO3の計算値: C, 58.91; H, 3.21; N, 3.43. 実測値: C, 59.03; H, 3.20; N, 3.39.
【0077】
実施例1d. ベンジル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0078】
【化36】

平坦な壁面の(straight wall)22L容ジャケット付き反応器に、オーバーヘッドスターラー、冷却器、窒素吸気口および排気口、および栓付き固体装入ポートを取り付けた。反応器を2日間窒素パージした。装入ポートを開き、ベンジル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(2032g、4.12mol、純度89.3%)を反応器にすばやく加えた。CsF(2500g、16.46mol)を反応器にすばやく注いだ。反応器には次に、無水(水100ppm未満)DMSO(8869g)を装入した。混合物を2時間110℃に加熱した。混合物を35℃に冷却し、次いで濾過した。濾過した塩をDMSO(2×1108g)で洗浄した。濾液を合わせて15〜20℃に冷却し、撹拌しながら1時間のうちに水(3023g)を加えた。混合物を10〜12℃に冷却し、次いで濾過した。固体を集めて3:1のDMSO/水(1814g)、次いで水(2000g)で洗浄した。得られる黄褐色の固体を乾燥させて、表題化合物(1626g、HPLC純度(ヘキサノフェノン内標準)85.7wt%、83%)を得た。
【0079】
アミノ化
実施例2a. プロパン−2−イル4−アミノ−5,6−トリフルオロピコリネート
【0080】
【化37】

実施例1aからの反応混合物を濾過してCs塩を除去し、塩をDMSO(50mL)で洗浄した。DMSO洗浄溶液を、アンモニアで飽和しているDMSO溶液(150mL)に15分間加えた。フラスコを、温度をほぼ16℃に保った冷浴に浸しておいた。アンモニアを30分間反応混合物にバブリングし、その間、白色の沈殿が形成した。90分後、一定分量をGCによって分析すると、4−アミノ生成物の単一の主ピークが示された。飽和塩化アンモニウム(NHCl)水溶液(100mL)に続いて水(400mL)を加えて反応混合物を失活させた。水溶液をエーテル(EtO 3×150mL)、次いでEtOAc(3×150mL)に抽出した。有機抽出物を合わせて水(5×150mL)、次いでブラインで洗浄した。抽出物を乾燥させ(MgSO)、蒸発にかけて黄褐色の固体とし、これを1:1のヘキサン−エーテルで洗浄して、薄い黄褐色の粉末(5.57g、全体で51.4%)を得た:融点168〜170℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.42(d, JF-H=5.5Hz, 1H, ピリジン H), 5.22(七重線, J=6.2Hz, 1H, CHMe2), 4.75(s, 2H, NH2), 1.35(d, J=6.2Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, DMSO-d6) δ 162.8(CO2R), 151.2(dd, JF-C=228, 12Hz, C6), 146.5(dd, JF-C=9, 6Hz, C2/C4), 139.3(dd, JF-C=16, 5Hz, C2/C4), 133.8(dd, JF-C=252, 31Hz, C5), 112.3(C3), 68.8(CHMe2), 21.5(Me); 19F NMR(376MHz, DMSO-d6) δ -91.9(d, JF-F=26.6Hz, F6), -163.9(dd, JF-F=26.6, JH-F=5.6Hz, F5). 元素分析: C9H10F2N2O2の計算値: C, 50.00; H, 4.66; N, 12.96. 実測値: C, 49.96; H, 4.65; N, 12.91.
【0081】
実施例2b. プロパン−2−イル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ピコリネート
【0082】
【化38】

プロパン−2−イル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(4.89g、13.9mmol)をDMSO(100mL)に溶解させた。48時間のうちに合計100分間、アンモニアを溶液にバブリングした。反応混合物を氷水(500mL)中に注いだ。生成物をEtOAc(3×250mL)に抽出した。有機抽出物を合わせて水(5×100mL)、次いでブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、白色の固体(4.36g、88%)を得た:融点180.2〜181.9℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.54(d, JF-H=6.5Hz, 1H, ピリジン H), 7.27(m, 2H, フェニル), 5.27(七重線, JH-H=6.3Hz, 1H, CHMe2), 4.69(s, 2H, NH2), 3.96(d, JF-H=0.9Hz, 3H, OMe), 1.38(d, JH-H=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, DMSO-d6) δ 163.7(CO2R), 153.2(d, JF-C=252Hz), 146.8(d, JF-C=254Hz), 144.2(d, JF-C=4Hz), 143.9, 143.7, 139.0(d, JF-C=14Hz), 128.2(d, JF-C=3Hz), 126.0(d, J=3Hz), 125.4(d, JF-C=3Hz), 123.9(dd, JF-C=14, 3Hz), 112.5(d, JF-C=5Hz), 68.5(CHMe2), 61.5(d, JF-C=4Hz, OMe), 21.56(CHMe2); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.43(dd, JF-F=32.0, JF-H=6.6Hz), -142.27(dd, dd, JF-F=32.0, JF-H=6.3Hz). 元素分析: C16H15ClF2N2O3の計算値: C, 53.87; H, 4.24; N, 7.85. 実測値: C, 53.65; H, 4.28; N, 7.75.
【0083】
実施例2c. ベンジル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0084】
【化39】

ベンジル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(4.99g、12.2mmol)をDMSO(100mL)にスラリー化した。アンモニアを30分間溶液にバブリングした。終夜撹拌した後、反応混合物を氷水(500mL)中に注いだ。生成物をEtOAc(3×150mL)に抽出した。有機抽出物を合わせて水(5×100mL)およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、白色の固体(4.99g、101%)を得た。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.52(d, JF-H=6.5Hz, 1H, ピリジンH3), 7.45-7.38(m, 2H), 7.37-7.17(m, 5H), 5.38(s, 2H, CH2Ph), 4.67(br s, 2H, NH2), 3.94(d, JF-H=1.1Hz, 3H, OMe); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.4(CO2R), 153.9(d, JF-C=254Hz), 147.6(d, JF-C=256Hz), 144.4(d, JF-C=14Hz), 144.0(d, JF-C=5Hz), 142.2(d, JF-C=12Hz), 140.4(d, JF-C=15Hz), 135.6(s), 129.5(d, JF-C=3Hz), 128.5(CH), 128.3(CH), 128.3(CH), 125.6(d, JF-C=3Hz, CH), 125.2(d, JF-C=4Hz, CH), 123.3(dd, JF-C=14, 4Hz), 113.1(d, JF-C=4Hz, C3), 67.3(s, CH2Ph), 61.5(d, JF-C=4Hz, OMe); 19F{1H} NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.54(dd, J=30.7, 5.2Hz, F2'), -141.84(dd, J=30.8, 6.5Hz, F5). HRMS-ESI(m/z): [M]+C20H15ClF2N2O3の計算値, 404.0739; 実測値: 404.0757.
【0085】
実施例2d. ベンジル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0086】
【化40】

機械式スターラー、温度計、アンモニア投入口、およびガス排気口を取り付けた1L容四口フラスコにおいて、ベンジル4,5−ジフルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(65.0g、0.16mol、純度87%)のDMSO(400mL)溶液を調製した。DMSO溶液表面下のTeflon管から20分間バブリングすることにより、アンモニアガス(8.1g、0.48mol、3当量)を加えた。アンモニアを加える間、反応液は、ピンク色/薄赤色に変化し、内部温度は30℃に上昇した。5時間撹拌した後、追加のアンモニアガス(6.1g、0.36mol、2.25当量)を20分かけて加えた。さらに2.5時間撹拌した後、HPLC分析によって、出発材料が完全に消費されたことが示された。窒素を反応混合物にバブリングし、反応液を終夜撹拌した。反応混合物を濾過して、反応の間に形成した塩を除去し、固体をDMSO(50mL)で洗浄した。DMSO溶液に水(225mL)を1時間かけて滴加した。得られる沈殿を濾過し、次いでDMSO/水(2:1、2×40mL)に続いて水(2×50mL)で洗浄した。固体を乾燥させて、表題化合物(55.35g、87%、HPLC(ヘキサノフェノン内標準)による純度87%)を得た。
【0087】
ハロゲン交換
実施例3a. プロパン−2−イル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート
【0088】
【化41】

ハステロイ製の100mL容Parr撹拌反応器において、プロパン−2−イル4−アミノ−5,6−ジフルオロピコリネート(4.25g、19.7mmol)を塩酸(HCl、4Mジオキサン溶液、65mL)に溶解させた。反応器を2時間100℃に加熱した。室温で終夜静置すると、黄色の結晶質固体が形成した。この固体は、EtOAcに可溶性でなかったが、飽和NaHCO水溶液(500mL)およびEtOAc(300mL)と共に振盪すると溶解した。水層をEtOAc(2×250mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて水(5×50mL)、次いでブラインで洗浄した。抽出物を乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮して、オフホワイト色の固体を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(120gシリカカラム、0〜100%のヘキサン−EtOAcの勾配)によって精製して、白色の固体(2.11g、46%)を得た:融点190.7〜192.4℃;1H NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 7.543(d, JF-H=5.7Hz, 1H), 6.91(br s, 2H, NH2), 5.09(七重線, J=6Hz, 1H, CHMe2), 1.29(d, J=6Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, DMSO-d6) δ 162.8(CO2R), 144.8(d, JF-C=12Hz, C2/C4), 143.4(d, JF-C=254Hz, C5), 142.7(d, JF-C=4.8Hz, C2/C4), 136.5(d, JF-C=17Hz, C6), 112.8(d, JF-C=5Hz, C3), 68.9(CHMe2), 21.6(Me); 19F NMR(376MHz, DMSO-d6) δ -141.0(d, JF-H=6Hz). 元素分析: C9H10ClFN2O2の計算値: C, 46.47; H, 4.33; N, 12.04. 実測値: C, 46.50; H, 4.33; N, 11.96.
【0089】
ハロゲン化
実施例4a. プロパン−2−イル4−アミノ−3,6−ジクロロ−5−フルオロピコリネート
【0090】
【化42】

プロパン−2−イル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート(1.191g、5.12mmol)をCHCl(40mL)にほぼ完全に溶解させた。水(40mL)を加えた。塩素を5分間溶液にバブリングした。30分後、一定分量の反応混合物をGCによって分析し、所望の生成物およびわずか1.7%の出発材料が示された。水層を分離し、CHCl(50mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて、飽和NaHCO水溶液、次いでブラインで洗浄した。抽出物を乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して橙色の油状物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(120gシリカカラム、0〜50%のEtOAc−ヘキサンの勾配)にかけると、明るい黄色の結晶質固体(394mg、28%)が得られた。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 5.29(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 5.19(br s, 2H, NH2), 1.40(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 163.2(CO2R), 143.3(d, JF-C=5Hz, C2), 142.8(d, JF-C=270Hz, C5), 141.0(d, JF-C=26Hz, C4), 135.3(d, JF-C=17Hz, C6), 114.9(s, C3), 70.6(CHMe2), 21.6(s, Me); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -136.5.
【0091】
実施例4b. プロパン−2−イル4−アミノ−3,6−ジクロロ−5−フルオロピコリネート
【0092】
【化43】

プロパン−2−イル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート(634ミリグラム(mg)、2.73mmol)をアセトニトリル(11mL)にスラリー化した。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチル−ヒダントイン(303mg、1.54mmol)を固体として加え、反応混合物を還流状態で2.5時間撹拌した。追加の1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(50mg、0.25mmol)を加え、反応混合物を還流状態でさらに1時間撹拌した。水(20mL)を加えた。次いで、回転蒸発によってアセトニトリルを除去して黄色の油性固体を得、これをEtOAc(2×20mL)で抽出した。有機抽出物を合わせて、10%亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)溶液、飽和NaHCO水溶液、およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、淡橙色の固体(671mg、92%)を得た:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 5.29(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 5.19(br s, 2H, NH2), 1.40(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -136.5.
【0093】
実施例4c. メチル4−アミノ−3−ブロモ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート
【0094】
【化44】

1,2−ジクロロエタン(15mL)中で、メチル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート(1.0g、4.9mmol)を1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(1.7g、5.9mmol)と合わせ、4時間加熱還流(83℃)した。冷却した混合物を10%NaHSO溶液およびEtOAc(30mL)と共に撹拌した。有機相を分離し、水(2×20mL)、ブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(5〜50%のEtOAc−ヘキサン)によって精製して、橙色の固体(840mg、61%)を得た:融点138〜139℃;EIMS m/z 282, 284; 1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 5.09(s, 2H, NH2), 3.97(s, 3H, Me); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -135.55(s).
【0095】
実施例4d. メチル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロ−3−ヨードピコリネート
【0096】
【化45】

メチル4−アミノ−6−クロロ−5−フルオロピコリネート(2.2g、10.8mmol)をメチルアルコール(CHOH、20mL)に溶解させた。溶液を過ヨウ素酸(880mg、3.9mmol)およびヨウ素(2.2g、8.6mmol)で処理し、次いで20時間加熱還流した。混合物を冷却し、真空中で揮発性物質を除去した。残渣をEtOAc(50mL)に溶解させ、次いで10%NaHSO溶液(20mL)と共に10分間撹拌した。有機相を分離し、ブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、蒸発にかけた。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(5〜50%のEtOAc−ヘキサンの勾配)によって精製して、表題化合物を薄い橙色の固体(2.5g、70%)として得た:融点149〜151℃;ESIMS m/z 330 ([M]+); 1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 5.17(s, 2H, NH2), 3.97(s, 3H, OMe); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -135.79(s).
【0097】
実施例4e. プロパン−2−イル4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0098】
【化46】

プロパン−2−イル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(3.065g、8.59mmol)を塩化スルフリル(150mL)に溶解させた。溶液を窒素中にて室温で8時間撹拌した。この時間の間、白色の沈殿が形成した。ヘキサン(100mL)を加え、混合物を終夜−20℃で貯蔵した。生成物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、次いでEtOAc(100mL)にスラリー化した。有機懸濁液を飽和NaHCO水溶液で中和し、これによりすべての固体が溶解した。有機層を分離し、10%NaHSO水溶液およびブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して、白色の固体(1.962g、58%)を得た:融点109〜111℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.25(m, 2H), 5.32(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 5.07(br s, 2H), 3.97(d, JF-H=1.0Hz, 3H, OMe), 1.40(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.16(dd, JF-F=33.3Hz, JF-H=2.5Hz, フェニル F), -138.35(d, JF-F=33.4Hz, ピリジンF5).
【0099】
実施例4f. ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0100】
【化47】

シンチレーションバイアルにおいて、ベンジル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート(2.07g、5.12mmol)をアセトニトリル(20mL)にスラリー化した。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(554mg、2.181mmol)を固体として加え、反応混合物を還流状態で1時間撹拌した。室温に冷却した後、水(40mL)を加えて生成物を沈殿させた。ブフナー漏斗で固体を集め、水で洗浄した。55℃で真空乾燥すると、白色の固体(2.187g、97%)が得られた:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.50-7.41(m, 2H, 芳香族), 7.41-7.20(m, 5H, 芳香族), 5.42(s, 2H, CH2Ph), 4.92(br s, 2H, NH2), 3.97(d, J=1.2Hz, 3H, OMe); 19F{1H} NMR(CDCl3) δ -128.19(d, J=33.9Hz, F2'), -137.79(d, J=33.8Hz, F5).
【0101】
実施例4g. ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0102】
【化48】

機械式スターラーおよび温度計を備えた1L容三口丸底フラスコにおいて、ベンジル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート(53.0g、0.131mol、純度95%)のアセトニトリル(450mL)溶液を調製した。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン 14.2g、0.072mol、0.55当量)を加えた。反応混合物を80℃で3時間加熱した。反応混合物を室温に冷まし、次いで希亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)溶液(990mL、7.5gのNaHSO)に1時間かけて滴加した。得られる沈殿を濾過によって単離し、アセトニトリル−水(1:1v/v、2×50mL)、次いで水(2×50mL)で洗浄した。固体を乾燥させて、淡黄色の粉末(53.44g、94%、HPLC純度(オクタノフェノン内標準)96.1%)を得た。
【0103】
実施例4h. プロパン−2−イル4−アミノ−3−ヨード−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0104】
【化49】

プロパン−2−イル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(600mg、1.682mmol)を酢酸(5.6mL)に溶解させた。酢酸ナトリウム(1.5g、18.50mmol)を加えた後、一塩化ヨウ素(2.2g、13.45mmol)を加えた。加える間、約10℃の発熱が認められた。反応混合物を80℃で20時間加熱した。次いで反応混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を水、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、次いで濃縮乾燥した。残渣をシリカゲルカラム(80g)にかけ、次いで溶離させて(0〜70%のアセトン−ヘキサンの勾配)、橙色の固体(343mg、42%)を得た:融点134〜135℃;1H NMR(400MHz, アセトン-d6) δ 7.41(dd, J=8.5, 1.6Hz, 1H), 7.33(dd, J=8.5, 6.8Hz, 1H), 6.29(s, 2H), 5.29-5.14(七重線, 1H), 3.98(d, J=1.1Hz, 3H), 1.37(d, J=6.3Hz, 6H); EIMS m/z 396.
【0105】
実施例4i. プロパン−2−イル4−アミノ−3−ブロモ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0106】
【化50】

プロパン−2−イル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(500mg、1.402mmol)をジクロロメタン(3.2mL)に溶解させた。N−ブロモ−スクシンイミド(299mg、1.682mmol)を加え、溶液を周囲温度で20時間撹拌した。次いで反応混合物を濃縮乾燥した。残渣をクロマトグラフィー(40gシリカゲルカラム、0〜70%のEtOAc−ヘキサン)によって精製して、黄褐色の固体(504mg、83%)を得た:1H NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 7.47(dd, J=8.5, 1.6Hz, 1H), 7.29(dd, J=8.5, 7.1Hz, 1H), 7.01(s, 2H), 5.22-5.10(m, 1H), 3.93(d, J=0.9Hz, 3H), 1.32(d, J=6.3Hz, 6H); EIMS m/z 350.
【0107】
カップリング
実施例5a. プロパン−2−イル4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0108】
【化51】

50mL容シュレンクフラスコに、プロパン−2−イル4−アミノ−3,6−ジクロロ−5−フルオロピコリネート(2.162g、8.09mmol)、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン(2.775g、11.35mmol)、およびCsF(2.601g、17.12mmol)を装入した。アセトニトリル(20mL)および水(7mL)を加えた。溶液を窒素で排気/再充填した(5回)。固体のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPhCl、281mg、4.9mol%)を加えた。溶液を窒素で排気/再充填し(5回)、次いで窒素中にて70℃で3時間加熱した。3時間後、反応混合物を室温に冷ました。水層を分離した。有機層に水(20mL)を加えた。得られる暗褐色の沈殿を濾過し、水で洗浄した。固体をEtOAc(60mL)に溶解させ、濾過して、少量の黒色の固体を除去した。EtOAc溶液を活性炭(175mg)で処理し、濾過してワイン色の溶液を得た。減圧下で蒸発にかけると、暗赤色の固体が得られた。精製すると(120gシリカカラム、0〜50%のEtOAc−ヘキサンの勾配)、白色の固体(2.59g、82%)が得られた:融点110.6〜112.1℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.25(m, 2H), 5.32(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 5.07(br s, 2H), 3.97(d, JF-H=1.0Hz, 3H, OMe), 1.40(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.2(CO2R), 153.8(d, JF-C=254Hz, C5/C2'), 145.5(d, JF-C=258Hz, C5/C2'), 145.0(d, JF-C=5Hz), 144.4(d, JF-C=14Hz), 140.0(d, JF-C=13Hz), 137.5(d, JF-C=14Hz), 129.7(d, JF-C=3Hz), 125.4(d, JF-C=2Hz, C5'/C6'), 125.2(d, JF-C=3Hz, C5'C6'), 122.7(dd, JF-C=14, 4Hz, C1'), 114.6(C3), 70.2(CHMe2), 61.5(d, JF-C=4Hz, OMe), 21.6(CHMe2); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ-128.16(dd, JF-F=33.3Hz, JF-H=2.5Hz, フェニル F), -138.35(d, JF-F=33.4Hz, ピリジンF5). 元素分析: C16H14Cl2F2N2O3の計算値: C, 49.12; H, 3.61; N, 7.16. 実測値: C, 49.30; H, 3.69; N, 7.08.生成物は、HPLCにより純度97.5%であるとわかった。
【0109】
実施例5b. プロパン−2−イル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−ピコリネート
【0110】
【化52】

100mL容シュレンクフラスコに、プロパン−2−イル4,5,6−トリクロロピコリネート(10.46g、39.0mmol)、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン(13.27g、54.3mmol)、およびCsF(11.76g、77.0mmol)を装入した。アセトニトリル(75mL)および水(25mL)を加えた。反応混合物をNで排気/再充填した(5回)。固体Pd(PPhCl(1.331g、1.896mmol)を加えた。溶液をNで排気/再充填し(5回)、次いで還流状態で2時間撹拌した。室温に冷却すると白色の固体が沈殿した。固体を濾過し、水で洗浄し、風乾した(10.56g、69%):融点123.8〜127.7℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.20(s, 1H, ピリジン), 7.28(dd, JH-H=8.5Hz, JF-H=1.6Hz, 1H), 7.13(dd, JH-H=8.5Hz, JF-H=6.8Hz, 1H), 5.32(七重線, J=6.3Hz, 1H, CHMe2), 3.99(d, J=1.2Hz, 3H, OMe), 1.41(d, J=6.3Hz, 6H, CHMe2); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 162.7(CO2R), 153.8, 153.6(d, JF-C=253Hz, C2'), 146.7, 144.5(d, JF-C=13Hz), 144.0, 134.0, 130.0(d, JF-C=3.4Hz), 125.9, 125.3(d, JF-C=3Hz), 125.1(d, JF-C=3Hz), 70.4(CHMe2), 61.6(d, JF-C=4Hz, OMe), 21.7(CHMe2). 元素分析: C16H13Cl3NO3の計算値: C, 48.94; H, 3.34; N, 3.57. 実測値: C, 48.91; H, 3.50; N, 3.51.
【0111】
実施例5c. メチル4,5−ジクロロ−6−エチルピコリネート
【0112】
【化53】

還流冷却器および窒素吸気口を備えた100mL容三口フラスコに、メチル4,5,6−トリクロロピコリネート(2.40g、9.98mmol)を装入した。無水THF(50mL)を加えた後、N,N−ジメチルエタノールアミン(0.20g)を加えた。反応混合物を窒素で15分間スパージングした。固体Pd(PPhCl(140mg、0.2mmol)を加えた。反応混合物を窒素中で20分間撹拌した。ジエチル亜鉛(1Mヘキサン溶液、10mL、10mmol)を2mLずつ加えた。GCによる分析で出発材料が認められなくなったとき、反応混合物を水で失活させ、EtOAcに抽出した。有機抽出物を合わせてブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、減圧下で濃縮して白色の固体(2.34g)を得た。GC−MSによって分析すると、固体が出発材料のメチル4,5,6−トリクロロピコリネートを11%含んでいたことが示された。1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.06(s, 1H, ピリジン H), 4.01(s, 3H, CO2Me), 3.10(q, J=8Hz, 2H, CH2), 1.33(t, J=8Hz, 3H, CH2CH3); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.4, 162.8, 145.4, 143.3, 132.9, 124.5(C3), 53.1(CO2Me), 30.0(CH2), 12.3(CH2CH3).
【0113】
実施例5d. ベンジル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0114】
【化54】

還流冷却器および窒素吸気口を備えた250mL容三口フラスコに、ベンジル4,5,6−トリクロロピコリネート(17.77g、56.10mmol)、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン(19.20g、79.0mmol)、およびCsF(17.04g、112.0mmol)を装入した。アセトニトリル(100mL)および水(30mL)を加えた。反応混合物を窒素で排気/再充填した(5回)。固体Pd(PPhCl(1.724g、2.456mmol)を加えた。溶液を窒素で排気/再充填し(5回)、次いで還流状態で90分間撹拌した。室温に冷却すると白色の固体が沈殿した。固体を濾過し、水で洗浄し、風乾した(18.66g、75%):1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 8.23(s, 1H, ピリジン H), 7.52-7.32(m, 5H, フェニル), 7.27(dd, JH-H=8.4Hz , JF-H=1.7Hz, 1H, 芳香族), 7.10(dd, JH-H=8.4Hz, JF-H=6.8Hz, 1H, 芳香族), 5.44(s, 2H, CH2Ph), 3.98(d, J JF-H=1.3Hz, 3H, OMe); 13C{1H} NMR(101MHz, CDCl3) δ 163.0, 153.7, 153.5(d, JF-C=253Hz, C2'), 146.0, 144.5(d, JF-C=13Hz), 144.1, 135.0, 134.2, 129.9(d, JF-C=3Hz), 128.5, 126.1, 125.8(d, JF-C=14Hz), 125.3(d, JF-C=3Hz), 124.9(d, JF-C=2Hz), 67.9(CH2), 61.5(d, JF-C=4Hz, OMe). 元素分析: C20H13Cl3FNO3の計算値: C, 54.51; H, 2.97; N, 3.18. 実測値: C, 54.60; H, 3.08; N, 3.16.
【0115】
実施例5e. ベンジル4,5−ジクロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート
【0116】
【化55】

機械式スターラーを備えた、平坦な壁面の22L容反応器に、水道水(3403g)を装入した。次いでリン酸二カリウム(KHPO、2596g、14.9mol)を加え、すべての固体が溶解するまで、窒素流でパージしながら混合物を撹拌した。すべての固体が溶解した後、アセトニトリル(8173g)を反応器に装入した。底部配水管および機械式オーバーヘッドスターラーを備えた、平坦な壁面の別の30L容ジャケット付き反応器に、2−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−1,3,2−ジオキサボリナン(1724g、7.01mol)およびベンジル4,5,6−トリクロロピコリネート(1630g、4.97mol)を装入した。反応器を窒素で排気し、満たした(3回)。次いで、KHPOを含有するアセトニトリル/HO混合物を30L容反応器に移し、ラインをアセトニトリル(1434g)ですすいだ。スラリーを窒素で30分間スパージングし、次いでトリフェニルホスフィン(114.8g、0.44mol)を加えた。次いで、スラリーを窒素で15分間スパージングした後、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)クロリド(83.8g、0.22mol)を加えた。明るい黄色のスラリーを窒素で15分間スパージングし、次いで混合物を74〜75℃に加熱した。74℃で3.3時間撹拌した後、HPLC分析により、反応は完了したと思われた。この段階で、反応器冷却温度を5℃に設定し、直ちに反応器に冷水(4448g、約3℃)を加えた。得られる沈殿を濾過して、クリームホワイト色のケークを得た。濾過ケークを冷アセトニトリル/HO(3345g、1.4:1、8〜10℃)で洗浄して、オフホワイト色の湿ったケークを得た。ケークを窒素流中で乾燥させて、2044gの恒量とした。内標準(テトラフェニルエチレン)を使用してのHPLC分析により、生成物は純度90.0%であり、1840g(84.0%)の生成物を含んでいたことが示された。
【0117】
アンモニウム塩の精製
実施例6a. プロパン−2−イル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0118】
【化56】

プロパン−2−イル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(1.50g、LC面積による純度71%)をテトラヒドロフラン(THF、10mL)に加え、40℃に加熱して、透明な黄色の溶液を得た。溶液を室温に冷まし、HCl(4Mジオキサン溶液、1.3mL、5.2mmol)を加えた。HClを加えた後、溶液から固体が沈殿し、反応混合物を0℃に冷却した。固体を真空濾過によって単離し、冷THF(5mL)で洗浄した。湿った塩ケークをTHF(10mL)および水(5mL)に加えた。混合物にトリエチルアミン(EtN、0.8mL、5.7mmol)を加え、反応混合物が透明な二相性の溶液になった。反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を分離した。有機層にヘキサン(20mL)を加え、溶液から固体が沈殿した。反応混合物を0℃に冷却し、30分間撹拌した。固体を真空濾過によって単離し、ヘキサン(10mL)で洗浄し、真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、プロパン−2−イル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートを白色の固体(0.90g、LC面積による純度89%)として得た:融点174〜176℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.54(d, J=6.4Hz, 1H), 7.34-7.22(m, 2H), 5.27(七重線, J=6.3Hz, 1H), 4.56(br s, 2H), 3.97(d, J=1.0Hz, 3H), 1.39(d, J=6.3Hz, 6H); 13C NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.03, 154.07(d, J=253.7Hz), 147.70(d, J=256.1Hz), 144.92(d, J=5.0Hz), 144.48(d, J=13.9Hz), 142.01(d, J=12.2Hz), 140.58(d, J=14.4Hz), 129.59(d, J=3.4Hz), 125.85(d, J=3.7Hz), 125.29(d, J=3.8Hz), 123.57(dd, J=14.1, 3.7Hz), 112.85(d, J=3.7Hz), 69.58(s), 61.63(d, J=4.5Hz), 21.86(s); 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.44(d, J=32.7Hz), -142.30(d, J=31.3Hz).
【0119】
実施例6b. プロパン−2−イル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)5−フルオロピコリネート
【0120】
【化57】

プロパン−2−イル4−アミノ−3−クロロ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(1.75g、LC面積による純度95%)をジクロロメタン(15mL)に加え、混合物を40℃に加熱して、透明な黄色の溶液を得た。溶液を室温に冷まし、HCl(4Mジオキサン溶液、1.25mL、5mmol)を加えた。HClを加えた後、溶液から固体が沈殿し、反応混合物を0℃に冷却した。固体を真空濾過によって単離し、冷ジクロロメタン(5mL)で洗浄した。湿った塩ケークをジクロロメタン(10mL)および水(5mL)に加えた。混合物にEtN(0.6mL、4.3mmol)を加え、反応混合物が透明な二相性の溶液になった。反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を分離した。有機層にヘキサン(20mL)を加え、溶液から固体が沈殿した。反応混合物を0℃に冷却し、固体を真空濾過によって単離し、ヘキサン(10mL)で洗浄した。固体を真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、プロパン−2−イル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートを白色の固体(1.02g、LC面積による純度99%)として得た:融点115〜117℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.31-7.22(m, 2H), 5.32(七重線, J=6.3Hz, 1H), 4.93(br s, 2H), 3.98(d, J=1.1Hz, 3H), 1.41(d, J=6.3Hz, 6H); 13C NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.28, 153.93(d, J=254.4Hz), 145.79(d, J=230.6Hz), 145.23(d, J=4.9Hz), 144.44(d, J=13.8Hz), 139.97(d, J=13.5Hz), 137.72(d, J=13.8Hz), 129.90(d, J=3.4Hz), 125.59(d, J=3.2Hz), 125.41(d, J=3.7Hz), 122.82(dd, J=14.0, 4.4Hz), 114.82, 70.36, 61.66(d, J=4.7Hz), 21.76; 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.15(d, J=34.1Hz), -138.44(d, J=34.1Hz).
【0121】
実施例6c. メチル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0122】
【化58】

ベンジル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(3.00g、7.41mmol)をCHOH(35mL)に加えた。反応混合物にナトリウムメトキシド(CHOH中25wt%、2.0mL、8.9mmol)を加え、24時間撹拌した。反応混合物に水(50mL)を加え、混合物を減圧下で濃縮して、CHOHの大部分を除去した。混合物をEtOAc(2×40mL)で抽出し、有機層を合わせて水(40mL)および飽和塩化ナトリウム(40mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して、メチル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートを淡黄色の固体(1.86g、LC面積による純度67%)として得た。
【0123】
メチル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピコリネート(1.50g、LC面積による純度67%)をTHF(10mL)およびジクロロメタン(5mL)に加え、混合物を40℃に加熱して、透明な黄色の溶液を得た。溶液を室温に冷まし、HCl(4Mジオキサン溶液、1.4mL、5.6mmol)を加えた。HClを加えた後、溶液から固体が沈殿し、反応混合物を0℃に冷却した。固体を真空濾過によって単離し、冷THF(5mL)で洗浄した。湿った塩ケークをTHF(25mL)および水(10mL)に加えた。混合物にEtN(0.8mL、5.7mmol)を加え、反応混合物が透明な二相性の溶液になった。反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を分離し、濃縮して約10mLの溶液とした。有機層にヘキサン(20mL)を加え、溶液から固体が沈殿した。反応混合物を0℃に冷却し、固体を真空濾過によって単離し、ヘキサン(10mL)で洗浄した。固体を真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、メチル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートを白色の固体(0.53g、LC面積による純度89%)として得た:融点203〜204℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.60(d, J=6.4Hz, 1H), 7.28-7.25(m, 2H), 4.58(br s, 2H), 3.97(d, J=1.1Hz, 3H), 3.96(s, 3H); 13C NMR(101MHz, CDCl3) δ 165.27, 154.05(d, J=254.1Hz), 147.83(d, J=256.3Hz), 144.56(d, J=13.7Hz), 144.31(d, J=5.1Hz), 142.16(d, J=12.4Hz), 140.63(d, J=14.5Hz), 129.69(d, J=3.5Hz), 125.63(d, J=3.1Hz), 125.41(d, J=3.7Hz), 123.43(dd, J=14.1, 3.6Hz), 113.05(d, J=3.7Hz), 61.64(d, J=4.5Hz), 52.98; 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.71(d, J=28.6Hz), -141.94(d, J=28.6Hz).
【0124】
実施例6d. メチル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)5−フルオロピコリネート
【0125】
【化59】

ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート(3.00g、6.83mmol)をCHOH(35mL)に加えた。反応混合物にナトリウムメトキシド(CHOH中25wt%、1.9mL、8.2mmol)を加え、反応混合物を24時間撹拌した。反応混合物に水(50mL)を加え、混合物を減圧下で濃縮して、CHOHの大部分を除去した。混合物をEtOAc(2×40mL)で抽出し、有機層を合わせて、水(40mL)および飽和塩化ナトリウム(40mL)で洗浄した。減圧下で揮発性物質を濃縮すると、メチル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートが淡黄色の固体(2.04g、LC面積による純度88%)として得られた。
【0126】
メチル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート(1.25g、LC面積による純度88%)をジクロロメタン(15mL)およびTHF(3mL)に加え、混合物を40℃に加熱して、透明な黄色の溶液を得た。溶液を室温に冷まし、HCl(4Mジオキサン溶液、0.95mL、3.8mmol)を加えた。HClを加えた後、溶液から固体が沈殿し、反応混合物を0℃に冷却した。固体を真空濾過によって単離し、冷ジクロロメタン(5mL)で洗浄した。湿った塩ケークをジクロロメタン(20mL)および水(10mL)に加えた。混合物にEtN(0.6mL、4.3mmol)を加え、反応混合物が透明な二相性の溶液になった。反応混合物を分液漏斗に移し、有機層を分離し、減圧下で濃縮して約10mLの溶液とした。有機層にヘキサン(20mL)を加え、溶液から固体が沈殿した。反応混合物を0℃に冷却し、固体を真空濾過によって単離し、ヘキサン(10mL)で洗浄した。固体を真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、メチル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネートを白色の固体(0.51g、LC面積による純度96%)として得た:融点170〜171℃;1H NMR(400MHz, CDCl3) δ 7.30-7.20(m, 2H), 4.98(br s, 2H), 3.98(m, 6H); 13C NMR(101MHz, CDCl3) δ 164.67, 153.95(d, J=254.7Hz), 145.93(d, J=245.8Hz), 144.57(s), 143.65(d, J=4.6Hz), 140.21(d, J=13.3Hz), 137.71(d, J=13.9Hz), 130.02(d, J=3.5Hz), 125.49(d, J=7.1Hz), 125.49, 122.70(dd, J=14.1, 4.3Hz), 115.89(d, J=1.5Hz), 61.67(d, J=4.5Hz), 53.06; 19F NMR(376MHz, CDCl3) δ -128.34(d, J=31.3Hz), -137.60(d, J=32.7Hz).
【0127】
実施例6e. ベンジル4−アミノ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0128】
【化60】

ベンジル4−アミノ−5−フルオロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−2−ピリジンカルボキシレート(98g、0.209mol、純度86.5%)とTHF(300mL)からなるスラリーを、穏やかに28℃に加熱して、透明な琥珀色の溶液を得た。溶液を20℃に冷まし、HCl(4M 1,4−ジオキサン溶液、55mL、0.219mol、1.05当量)をシリンジで1分かけて加えた。溶液が、固体形成を伴って急速に濁り、混合物の温度が28℃に達した。混合物を10℃未満に冷却した。沈殿を濾過し、冷THF(2×40mL)ですすいで、白色の固体(120.4g)を得た。この固体をTHF(300mL)および水(100mL)と共に撹拌した。このスラリーに、EtN(30.5mL、0.219mol)をシリンジで1分かけて加え、固体を溶解させて、濁った混合物を得た。有機層を分離した。撹拌しながらヘキサン(450mL)を加え、溶液を10℃未満に冷却した。得られる沈殿を濾過し、ヘキサン(2×40mL)ですすいで、白色の固体(76.1g、HPLC純度(ヘキサノフェノン内標準)95.1wt%)を得た。濾液を濃縮すると、追加の純度93.9%の生成物7.56gが得られた。単離された生成物のHおよび19F NMRスペクトルは、実施例2cで観測されたものと同一であった。
【0129】
実施例6f. ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート
【0130】
【化61】

ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロピコリネート(5.00g、LC面積による純度87%、LC分析によれば88wt%)のジクロロメタン(25mL)溶液に、HCl(4M 1,4−ジオキサン溶液、3.1mL、12.4mmol)をシリンジで加えた。1分間撹拌した後、溶液が固体形成を伴って濁ってきた。混合物を氷浴で10℃未満に冷却し、濾過し、冷ジクロロメタン(5mL)ですすいで白色の固体を得た。この固体をジクロロメタン(30mL)および水(15mL)でスラリー化し、EtN(1.98mL、14.2mmol)を加えた。固体を溶解させて、二相混合物を得た。15分間撹拌した後、混合物を分液漏斗に移し、相を15分かけて分離させた。有機層を分離し、ヘキサン(60mL)を加え、混合物を10℃未満に冷却した。溶液が急速に濁り、混合物から固体が沈殿した。混合物を真空濾過すると、白色の固体が得られ、これを真空オーブンにおいて40℃で乾燥させて、ベンジル4−アミノ−3−クロロ−6−(4−クロロ−2−フルオロ−3−メトキシフェニル)−5−フルオロ−2−ピリジンカルボキシレートを白色の固体として得た(3.11g、70%、LC面積による純度97%、LC分析によれば97wt%)。単離された生成物のHおよび19F NMRスペクトルは、実施例4fで観測されたものと同一であった。