(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピニングリールの小型化を図るためにスプール軸を小径化することが要望されている。スプール軸を小径化すると、回り止めピンも小径化しなければ、スプール軸の外径に対する貫通孔の内径の比率が大きくなり、貫通孔の周りの肉厚が薄くなり、スプール軸の強度を確保できない。小径化された回り止めピンのスプール軸外周面にせん断力が作用すると、環状溝形成部分で応力集中が生じて回り止めピンの強度を確保しにくい。
【0007】
本発明の課題は、スプール軸の小径化により回り止めピンを小径化しても回り止めピンの強度を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明1に係るスピニングリールのスプール連結構造は、スピニングリールのスプールを貫通するスプール軸に、スプールを回り止めして連結する構造である。スプール連結構造は、ピン挿入部と、回り止めピンと、抜け止め部材と、回り止め溝と、を備えている。ピン挿入部は、スプール軸に径方向に貫通して形成された貫通孔を有している。回り止めピンは、第1端に設けられた第1回り止め部と、嵌合部と、第2回り止め部と、を有している。嵌合部は、第1回り止め部に隣接して配置されピン挿入部に嵌合する長さを有している。第2回り止め部は、嵌合部から第2端に向かって延びピン挿入部より大径である。抜け止め部材は、回り止めピンをスプール軸に対して抜け止めする。抜け止め部材は、第1回り止め部の外周側に配置され、スプール軸に接触可能な軸方向長さを有している。回り止め溝は、スプールのスプール軸貫通部分にスプール軸の直径に沿って形成され、第2回り止め部に係合する溝幅を有する。
第1回り止め部は、嵌合部と同じ外径を有する。抜け止め部材は、第1回り止め部の外周側に装着可能なコイルバネである。
【0009】
このスプール連結構造では、スプール軸のピン挿入部に回り止めピンを第1回り止め部がある第1端側から挿入する。すると、大径の第2回り止め部と嵌合部との段差部分がスプール軸の外周面に接触して回り止めピンの位置決めがなされる。この状態では第1端側の第1回り止め部がピン挿入部から突出している。この突出した第1回り止め部に抜け止め部材を装着し、回り止めピンを抜け止めする。スプール軸に回り止めピンを装着した状態でスプール軸にスプールを装着すると、スプールの回り止め溝が回り止めピンに係合してスプールがスプール軸に回り止めして連結される。
【0010】
ここでは、回り止めピンの第1回り止め部に抜け止め部材を装着して回り止めピンを抜け止めしている。このため、回り止めピンにおいて、せん断力が発生するスプール軸の外周面の近傍に、抜け止めのための環状溝を形成する必要がなくなる。この結果、回り止めピンを小径化しても回り止めピンの強度を確保できるようになる。
【0011】
また、嵌合部と第1回り止め部とが同じ外径であるので、第1回り止め部を嵌合部より小径する場合に比べてさらに回り止めピンの強度を確保できる。
【0012】
さらに、コイルバネの一端を抜け止めして他端を自由長さ又は圧縮させてスプール軸に接触させることにより回り止めピンを抜け止めできる。
【0013】
発明
2に係るスピニングリールのスプール連結構造は、発明
1に記載の構造において、抜け止め部材は、回り止め溝に係合する外径を有する。この場合には、回り止め溝に係合する外径を抜け止め部材が有しているので、スプールががたつきにくくなる。
【0014】
発明
3に係るスピニングリールのスプール連結構造は、発明
1又は2に記載の構造において、回り止めピンは、第1回り止め部の第1端側に形成された環状溝をさらに有し、コイルバネの第1端側の端部は、環状溝に係止可能に小径に形成されている。この場合には、せん断力が作用しない第1端側に環状溝を形成しているので、環状溝を形成しても小径の回り止めピンの強度を確保して抜け止め部材を環状溝により抜け止めできる。
【0015】
発明
4に係るスピニングリールのスプール連結構造は、発明1から
3のいずれかに記載の構造において、スプール軸の外周面に嵌合し、ピン挿入部に連通する抜け止め孔が形成されたスリーブをさらに備える。この場合には、スプール軸を小径化しても、大径のスプール軸に適応するスプールを連結可能になり、大径のスプール軸用のスプールとの互換性を確保できる。
【0016】
発明
5に係るスピニングリールのスプール連結構造は、発明1から
4のいずれかに記載の構造において、スプールは、釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の内周側に設けられた筒状のボス部と、を有している。回り止め溝は、ボス部
の一端面に直径に沿って形成された溝である。この場合には、スプールとスプール軸とを一体回転可能又は回転不能に連結できる。
【0017】
発明
6に係るスピニングリールのスプール連結構造は、発明1から
4のいずれかに記載の構造において、スプールは、スプール本体と、筒状部材と、を有している。スプール本体は、釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部と、糸巻胴部の内周側に設けられた筒状のボス部と、を有している。筒状部材は、スプール本体のボス部を回転自在に支持するようにスプール軸に装着される。回り止め溝は、筒状部材
の一端面に直径に沿って形成された溝である。この場合には、スプール本体と筒状部材とが相対回転可能になるため、スプール本体と筒状部材との間にフロントドラグ機構を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回り止めピンの第1回り止め部に抜け止め部材を装着して回り止めピンを抜け止めしている。このため、抜け止めのための環状溝をせん断力が発生するスプール軸の外周面の近傍に形成する必要がなくなる。この結果、回り止めピンを小径化しても回り止めピンの強度を確保できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
<全体構成>
本発明の第1実施形態を採用したスピニングリールは、
図1に示すように、釣り竿の長手方向に沿う第1軸X回りに釣り糸を巻き取るレバーブレーキ型のリールである。スピニングリールは、ハンドル1を備えたリール本体2と、リール本体2の前部に第1軸X回りに回転自在に支持されたロータ3と、ロータ3の前部に配置された釣り糸を巻き取るスプール4とを備えている。
【0021】
リール本体2は、例えばマグネシウム合金製である。リール本体2は、
図1に示すように、釣り竿に装着される前後に長い竿装着部2cと、竿装着部2cと間隔を隔てて配置されたリールボディ2aと、竿装着部2cとリールボディ2aとを連結する脚部2bとを有している。リールボディ2aは、内部に機構装着空間を有し、脚部2bと一体形成され側部が開口している。リールボディ2aの開口は、蓋部材(図示せず)により塞がれている。リールボディ2aの前部には、取付フランジ付きの金属製の筒状の取付部材2eが装着されている。なお、第1実施形態では、脚部2bがリールボディ2aと一体形成されているが、蓋部材と一体形成されていてもよい。
【0022】
リールボディ2aの内部には、ロータ駆動機構5と、レバーブレーキ機構6と、オシレーティング機構20とが設けられている。ロータ駆動機構5は、ハンドル1に連動してロータ3を回転させるための機構である。レバーブレーキ機構6は、ロータ3の糸繰り出し方向の回転(逆転)を制動するための機構である。オシレーティング機構20は、ハンドル1の回転に連動してスプール軸8を介してスプール4を前後に往復移動させる機構である。
【0023】
ロータ3は、例えばマグネシウム合金製であり、リール本体2に回転自在に支持されている。ロータ3は、円筒部3aと、円筒部3aの側方に互いに対向して設けられた第1アーム部3b及び第2アーム部3cとを有している。円筒部3aの前壁3dの中央部には後述するスプール軸8及びピニオンギア12が貫通するボス部3fが形成されている。第1アーム部3bの先端と第2アーム部3cの先端とには、ベールアーム9が揺動自在に設けられている。このベールアーム9により釣り糸がスプール4に案内される。
【0024】
<スプールの構成>
スプール4は、例えばアルミニウム合金製のものである。スプール4は、ロータ3の第1アーム部3bと第2アーム部3cとの間に配置されている。スプール4は、スプール4を貫通するスプール軸8に対して、ワンタッチ着脱機構48によりワンタッチで着脱自在である。また、スプール4は、スプール連結構造65により、スプール軸8の先端部に回り止めして連結されている。
【0025】
スプール軸8は、例えば、直径が同じサイズの従来のスピニングリールのスプール軸より外径が小さい軸である。第1実施形態では、例えばスプール軸8の外径は、4mmであり、また、従来のスプール軸の直径は、例えば4.5mmである。スプール軸8は、
図2に示すように、先端に形成されたテーパ面8aと、テーパ面8aの後方に形成された環状の抜け止め溝8bと、を有している。また、スプール軸8の抜け止め溝8bの後方には、直径に沿って貫通して形成された貫通孔8cを有するピン挿入部8dが設けられている。ピン挿入部8dの貫通孔8cには、回り止めピン50が着脱可能に嵌合している。
【0026】
スプール4は、
図2及び
図3に示すように、スプール本体22と、スプール本体22に装着されたフロントドラグ機構23と、スプール本体22が回転自在に装着されたスプール筒部(筒状部材の一例)24と、を有している。スプール本体22は、筒状の糸巻胴部22aと、糸巻胴部22aの後端部に糸巻胴部22aより大径に形成された筒状のスカート部22bと、糸巻胴部22aの前部に前方に傾斜して形成されたフランジ部22cとを有している。
【0027】
糸巻胴部22aは、径方向内方に延びる装着円板部22eと、装着円板部22eの内周側に一体形成された装着筒部(ボス部の一例)22fとを有している。装着円板部22eの後面には、ドラグ作動時に発音する後述するドラグ発音機構56の爪部材82が揺動自在に装着されている。装着円板部22eの前面には、フロントドラグ機構23を収納するドラグ収納筒部22gが前方に突出して形成されている。ドラグ収納筒部22gには、後述する摩擦部58の第2ドラグ座金67を回り止めのためのスリット22hが周方向に間隔を隔てて1又は複数(例えば2つから4つ)形成されている。装着筒部22fは、スプール筒部24に回転自在に装着されている。
【0028】
フランジ部22cの外周面には、先広がりのテーパ面を有する整流部材22dが装着されている。整流部材22dは、キャスティング時に釣り糸をバックラッシュすることなくスムーズに繰り出せるようにするために設けられている。整流部材22dは、フランジ固定部材25によりフランジ部22cに固定されている。フランジ固定部材25は、整流部材22dを押圧するテーパ状の押圧部25aと、押圧部25aから後方に延びる第1筒部25bと、第1筒部25bの後部に径方向内方に突出して形成された円板部25cと、円板部25cから後方に延びる第2筒部25dとを有している。この第2筒部25dが糸巻胴部22aの内周面にネジ込こみ固定されている。また、第2筒部25dにフロントドラグ機構23を抜け止めする抜け止めバネ26が装着される凹部25eが形成されている。
【0029】
スプール筒部24は、従来の4.5mmの直径のスプール軸にも装着可能な内径を有している。スプール筒部24は、
図3及び
図5に示すように、中間部の外周面に互いに平行に対向して配置された面取り部24aを有している。また、
図3、
図4及び
図5に示すように、スプール筒部24の後端部24bは大径に形成されており、そこには、回り止めピン50が係合する係合溝(回り止め溝の一例)24cが直径に沿って形成されている。係合溝24cは、従来の回り止めピンとの互換性を維持するために従来の回り止めピンの外径に係合可能な溝幅を有している。スプール筒部24は、回り止めピン50により回転不能にスプール軸8に装着されている。
【0030】
スプール筒部24の前端部の外周面には、ドラグ調整のための雄ネジ部24dが設けられている。雄ネジ部24dの後方には、ワンタッチ着脱機構48の後述する板
バネ77及び抜け止め板78を装着するための装着溝24eが形成されている。装着溝24eは、スプール筒部24の内周面まで切り欠くように断面がD字状に形成されている。スプール筒部24の後部外周面には、後端部24bに接触してドラグ発音機構56の円板部材80が回転不能に装着されている。円板部材80は、回り止めピン50に接触して後方への移動が規制されている。これにより、スプール本体22の後方への移動が規制される。円板部材80と装着円板部22eとの間には、
図4に示すように、スプール本体22のスプール軸方向の位置調整のための合成樹脂製の複数枚(例えば3枚)のスプールワッシャ81が装着されている。このスプールワッシャ81は、後方からの液体の浸入を防止するシール機能を有している。スプール筒部24の先端側内周面には、ワンタッチ着脱機構48が装着されている。
【0031】
ワンタッチ着脱機構48は、
図3に示すように、スプール筒部24の内部に前後移動自在に装着されたプッシュボタン76と、板バネ77と、板バネ77とプッシュボタン76との間に配置される抜け止め板78と、を有している。プッシュボタン76は、概ね有底筒状の部材であり、後述するフロントドラグ機構23の操作部材60から前方に突出している。プッシュボタン76は、コイルバネの形態の押圧バネ79により前方に付勢されかつスプール筒部24に対して抜け止めされている。プッシュボタン76の基端側には
、抜け止め板78を移動させるための先細りのカム突起76aが形成されている。抜け止め板78は
、板バネ77により、スプール筒部24の径方向内方に付勢されている。板
バネ77は、概ねD字状にバネ板材を折り曲げて形成されている。板バネ77は、スプール筒部24の装着溝24eに係合する円弧状に湾曲した1対の第1係合部77aと、第1係合部77aの間で凸に折り曲げられた第2係合部77bと、有している。第2係合部77bとプッシュボタン76のカム突起76aとの間に抜け止め板78が配置され、スプール軸8の環状の抜け止め溝8bに係脱する。抜け止め板78は、装着溝24eに係合する両端に配置された1対の第1部分78aと、第1部分78aの間に配置され、抜け止め溝8bに係合する第2部分78bと、を有するC字形状の板状部材である。抜け止め板78は、プッシュボタン76を押圧したときに、カム突起76aに係合して径方向に移動し、板バネ77の第2係合部77bを均一に径方向に移動させる。これにより、板
バネ77を安定して変位させることができる。抜け止め板78の第2部分78bをプッシュボタン76の押圧操作により抜け止め溝8bから離脱させることによりスプール4をスプール軸8から取り外すことができる。また、スプール4をスプール軸8に装着すると、板
バネ77の付勢力に抗して抜け止め板78がスプール軸8の先端のテーパ面8aに沿って径方向外方に移動し、抜け止め溝8bに至ると、抜け止め板78が板バネ77の付勢力により抜け止め溝8bに係止される。
【0032】
回り止めピン50は、
図3、
図4及び
図5に示すように、第1端に設けられた第1回り止め部50aと、嵌合部50bと、第2回り止め部50cと、を有している。第1回り止め部50aの先端部には、抜け止め部材51を係止する環状溝50dが形成されている。嵌合部50bは、第1回り止め部50aに隣接して配置されピン挿入部8dに嵌合する長さを有している。嵌合部50bは、第1実施形態では、第1回り止め部50aと同じ直径を有している。第2回り止め部50cは、嵌合部50bから第2端に向かって延びており、ピン挿入部8dより大径である。第2回り止め部50cは、係合溝24cに係合する外径を有している。第2回り止め部50cは、回り止めピン50をピン挿入部8dに装着したとき、嵌合部50bとの段差部分でスプール軸8の外周面に接触する。この第2回り止め部50cの外径は、従来の回り止めピンと同じ外径であり、従来のスプールの係合溝に係合可能な外径である。
【0033】
第1回り止め部50aの外周側には、第2回り止め部50cとスプール軸8を挟んで配置された抜け止め部材51が装着されている。抜け止め部材51は、回り止めピン50をスプール軸8に対して抜け止めするものである。抜け止め部材51は、係合溝24cに係合する外径と、第1回り止め部50aの外周面に嵌合する内径とを有している。したがって、抜け止め部材51の外径は、第2回り止め部50cと実質的に等しい。抜け止め部材51は、第1実施形態では、例えば一端に小径の装着部51bが形成されたコイルバネ51aである。装着部51bは環状溝50dに係止されている。これにより、抜け止め部材51が回り止めピン50に対して抜け止めされる。抜け止め部材51は、スプール軸8の外周面に接触可能な軸方向長さを有している。第1実施形態では、抜け止め部材51の他端は、スプール軸8の外周面に僅かに圧縮した状態で接触している。
【0034】
スプール軸8とスプール筒部24との間には、直径が4.5mmの従来のスプール軸との互換性を確保するためにスリーブ52が装着されている。スリーブ52は、スプール筒部24の内周面にすきま嵌めで嵌合する外周面と、スプール軸8の外周面にすきま嵌めで嵌合する内周面とを有している。スリーブ52のロータ3に接近する後部には、回り止めピン50の第2回り止め部50c及び抜け止め部材51が通過可能な通過孔52aが直径に沿って形成されている。この通過孔52aを回り止めピン50及び抜け止め部材51が通過するため、スリーブ52を抜け止めできる。このスリーブ52により、従来のスプール軸に装着されるスプールをスプール軸8に装着でき、従来のスプールとの互換性を図ることができる。
【0035】
スプール連結構造65は、上述したスプール軸8のピン挿入部8dと、回り止めピン50と、抜け止め部材51と、係合溝24cと、により構成されている。
【0036】
フロントドラグ機構23は、
図2及び
図3に示すように、ドラグ調整部57と、ドラグ調整部57により摩擦力が調整される摩擦部58とを有している。ドラグ調整部57は、スプール筒部24に螺合する操作部材60と、操作部材60により押圧され摩擦部58を押圧する押圧部材61とを有している。
【0037】
図2及び
図3に示すように、概ね鍔付き円筒形状の部材である操作部材60は、直径に沿って突出するつまみ突起60aを有するつまみ把手60bと、つまみ把手60bが固定されたつまみフランジ部60cとを有している。つまみ把手60bの中心には、
図2示すように、スプール筒部24の雄ネジ部24dに螺合するナット62が一体回転可能かつ軸方向移動自在に装着されている。なお、
図2では、ナット62は、第1軸Xの上側に対して下側が、押圧力が強くなるように
図2右側に移動して描かれている。ナット62と押圧部材61との間には、ドラグ力を滑らかに調整するためのコイルバネの形態の調整バネ63が圧縮状態で装着されている。押圧部材61は、スプール筒部24に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。押圧部材61は操作部材60に回転自在かつ脱落不能に連結されている。押圧部材61と、スプール本体22の内周部(例えばフランジ固定部材25の第2筒部の内周面)との間には、スプール本体22とドラグ調整部57との隙間をシールする第1シール部材84が装着されている。押圧部材61の後部には、押圧部材61とスプール筒部24との隙間をシールする第2シール部材85が、例えばインサート成形又はアウトサート成形等の一体成形技術により一体形成されている。これらの第1シール部材84、第2シール部材85及びスプールワッシャ81により、スプール4の着脱の如何にかかわらず、摩擦部58への液体の浸入を防止できる。操作部材60と押圧部材61との間には、操作部材60を回してドラグ調整する時に発音するドラグつまみ発音機構64が装着されている。
【0038】
摩擦部58は、押圧部材61と、スプール本体22の装着円板部22eとの間に装着されている。摩擦部58は、スプール筒部24の面取り部24aに回転不能に装着された、第1ドラグ座金66a及び第3ドラグ座金66bと、糸巻胴部22aに一体回転可能に装着された耳付きの第2ドラグ座金67と、を有している。第1ドラグ座金66aと第2ドラグ座金67との間及び第2ドラグ座金67と第3ドラグ座金66bとの間には、ドラグディスク68aがそれぞれ装着されている。また、第
3ドラグ座金6
6bと装着円板部22eとの間には、ドラグディスク68bが装着されている。第2ドラグ座金67は、
図3に示すように、径方向に突出する1又は複数(例えば4つ)の耳部67aを有している。耳部67aは、前述した糸巻胴部のスリット22hに係止される。なお、フランジ固定部材25は糸巻胴部22aにネジ込まれているとともに接着されている。これにより、振動によりフランジ固定部材25が緩むことがない。摩擦部58は、フランジ固定部材25の凹部25eに装着された抜け止めバネ26により抜け止めされている。これにより、操作部材60をスプール筒部24から外しても摩擦部58は脱落しない。
【0039】
ロータ駆動機構5は、
図1に示すように、ハンドル1が一体回転可能に固定されたマスターギア軸10とともに回転するマスターギア11と、このマスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。マスターギア軸10は、リール本体2に回転自在に支持されている。ピニオンギア12は筒状に形成されており、ピニオンギア12の前部12aはロータ3のボス部3fを貫通してスプール4側に延びている。ピニオンギア12の前部12aで、ロータ3はナット13によりピニオンギア12に一体回転可能に固定されている。ピニオンギア12は、前部と中間部とで軸受14a、14bによりリールボディ2aに回転自在に支持されている。ナット13は、リテーナ36により緩み止めされている。またナット13は、軸受13aによりスプール軸8に接触している。これにより、ピニオンギア12の内周面とスプール軸8の外周面との間に隙間を形成している。リテーナ36には、第3シール部材36bが装着されており、スプール軸8とピニオンギア12との隙間からの液体の浸入を防止している。
【0040】
オシレーティング機構20は、
図1に示すように、トラバースカム式のものであり、ピニオンギア12に噛み合う中間ギア20aと、リールボディ2aにスプール軸8と平行な軸回りに回転自在に装着された螺軸20bと、螺軸20bの回転により前後移動するスライダ20cとを有している。スライダ20cにスプール軸8の後端部が回転不能かつ軸方向移動不能に取り付けられている。
【0041】
ドラグ発音機構56は、
図2に示すように、ドラグ作動時にスプール4とスプール軸8とが相対回転することにより発音する機構である。ドラグ発音機構56は、スプール軸8に回転不能なスプール筒部24に回転不能に固定された円板部材80と、スプール4の装着円板部22eに揺動自在に装着された爪部材82と、爪部材82を中立位置に付勢する付勢部材83とを有している。
【0042】
レバーブレーキ機構6は、
図1に示すように、制動部16と、制動部16の制動力を調整操作するための制動レバー17と、制動レバー17を竿装着部2cから離反する方向に付勢するコイルバネ19と、制動レバー17により所定制動状態と制動解除状態とに切換可能な所定制動部(図示せず)とを有している。制動レバー17は、リール本体の脚部2bに揺動自在に装着されている。
【0043】
制動部16は、制動レバー17の先端が圧接されて制動される筒状の制動部本体31と、ロータ3の糸繰り出し方向の回転を制動部本体31に伝達する爪式のワンウェイクラッチ32とを有している。
【0044】
制動レバー17を竿装着部2cに接近する方向に操作すると、制動レバー17により制動部本体31が制動されてロータ3の糸繰り出し方向の回転が操作力に応じて制動される。また、制動レバー17を竿装着部2cから離反する方向に操作すると、所定制動部の作用により制動部本体31が予め設定された制動力で制動される。
【0045】
<リールの動作及び操作>
キャスティング時にはベールアーム9を糸開放姿勢側に倒し、キャスティングすることにより、スプール4の外周から釣り糸が繰り出される。糸巻取時には、ハンドル1を糸巻き取り方向に回転させると、ベールアーム9が図示しない戻し機構により糸巻き取り姿勢に戻る。ハンドル1の回転力は、マスターギア軸10、マスターギア11を介してピニオンギア12に伝達される。ピニオンギア12に伝達された回転力は、ピニオンギア12の前部12aを介してロータ3に伝達される。このときロータ3は糸巻き取り方向に回転するので、ワンウェイクラッチ32は動作せず、この回転力は制動部本体31には伝達されない。ピニオンギア12が回転すると、スプール軸8が前後方向に往復移動する。これにより、釣り糸がスプール4に巻き取られる。
【0046】
魚が掛かって制動レバー17を操作してロータ3を制動しかつ操作部材60を操作してドラグ力を強くすると、フロントドラグ機構23を介してスプール筒部24に強いトルクが伝達される。これにより、回り止めピン50のスプール軸8の外周面の近傍に強いせん断力が発生する。しかし、この実施形態では回り止めピン50のせん断力が発生する部分に小径の環状溝が形成されていない。このため、この結果、回り止めピン50を小径化しても回り止めピン50の強度を確保できるようになる。
【0047】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ドラグ機構を有するスプール4を例に本発明を説明したが、第2実施形態では、ドラグ機構を有さないスプールを例に本発明に係るスプール連結構造を説明する。
図6に示す第2実施形態は、スプール104及びスプール連結構造165を除いて第1実施形態と同じ構造であるので、スプール及びスプール連結構造以外の構造の説明は省略する。
【0048】
図6及び
図7において、スプール104は、スプール軸8に回転不能に連結されている。スプール104は、筒状の糸巻胴部122aと、糸巻胴部122aの後端部に糸巻胴部122aより大径に形成された筒状のスカート部122bと、糸巻胴部122aの前部に前方に傾斜して形成されたフランジ部122cとを有している。
【0049】
糸巻胴部122aは、径方向内方に延びる装着円板部122eと、装着円板部122eの内周側に一体形成された装着筒部(ボス部の一例)122fとを有している。装着円板部122eは、糸巻胴部122aの前側内周面に一体形成されている。装着円板部122eの前面には、前方に突出する固定筒部122gが形成されている。
【0050】
フランジ部122cの外周面には、先広がりのテーパ面を有する整流部材122dが装着されている。整流部材122dは、フランジ固定部材125によりフランジ部122cに固定されている。フランジ固定部材125は、整流部材122dを押圧するテーパ状の押圧部125aと、押圧部125aから後方に延びる第1筒部125bとを有している。この第1筒部125bが固定筒部122gの外周面にネジ込み固定されている。また、固定筒部122gの内周面には、円板状の前カバー部122iがネジ込み固定されている。前カバー部122iにワンタッチ着脱機構148のプッシュボタン176が前後移動自在に装着されている。装着筒部122fの後端部には、回り止めピン50が係合する係合溝124cが直径に沿って形成されている。スプール104は、回り止めピン50によりスプール軸8に対して回り止めされている。
【0051】
ワンタッチ着脱機構148は、
図7に示すように、スプール104の前カバー部122iに前後移動自在に装着されたプッシュボタン176と、抜け止めバネ177と、を有している。プッシュボタン176は、概ね有底筒状の部材であり、前カバー部122iから前方に突出している。プッシュボタン176は、抜け止めバネ177により前方に付勢されかつ前カバー部122iに対して抜け止めされている。プッシュボタン176の基端側には、抜け止めバネ177を移動させるための先細りのカム突起176aが形成されている。抜け止めバネ177は概ねE字状にバネ線材を折り曲げて形成されている。抜け止めバネ177は、前カバー部122iの内周面に装着された複数枚のワッシャ部材182により保持されている。抜け止めバネ177をプッシュボタン76の押圧操作により抜け止め溝8bから離脱させることによりスプール104をスプール軸8から取り外すことができる。また、スプール104をスプール軸8に装着すると、抜け止めバネ177がスプール軸8の先端のテーパ面8aに沿って広がり、抜け止め溝8bに至ると、抜け止めバネ177が抜け止め溝8bに弾性により係止される。
【0052】
回り止めピン50は、第1実施形態と同様な構成である。第1回り止め部50aの外周側には、第2回り止め部50cとスプール軸8を挟んで配置された抜け止め部材151が装着されている。抜け止め部材151は、回り止めピン50をスプール軸8に対して抜け止めするものである。抜け止め部材151は、係合溝124cに係合する外径と、第1回り止め部50aの外周面に嵌合する内径とを有している。したがって、抜け止め部材151の外径は、第2回り止め部50cと実質的に等しい。抜け止め部材151は、第2実施形態では、例えば合成ゴムやポリアセタール等の合成樹脂製の筒状体151aを有している。抜け止め部材151は、スプール軸8の外周面に接触可能な軸方向長さを有している。抜け止め部材151は、内周面の一端に環状溝50dに係止される環状の係合突起151bを有している。この係合突起151bが弾性により環状溝50dに係止されることにより、抜け止め部材151が回り止めピン50に抜け止めされる。第2実施形態では、抜け止め部材151の他端がスプール軸8の外周面に接触するように第1回り止め部50aに装着される。
【0053】
スプール軸8と装着筒部122fとの間には、直径が4.5mmの従来のスプール軸との互換性を確保するためにスリーブ52が装着されている。スリーブ52は第1実施形態と同様な構成である。
【0054】
このようなドラグ機構を有さないスプール104にも本発明を適用できる。
【0055】
<特徴>
(A)スプール連結構造65(又はスプール連結構造165)は、スピニングリールのスプール4(又はスプール104)を貫通するスプール軸8に、スプール4(又はスプール104)を回り止めして連結する構造である。スプール連結構造65(又はスプール連結構造165)は、ピン挿入部8dと、回り止めピン50と、抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)と、係合溝24c(又は係合溝124c)と、を備えている。ピン挿入部8dは、スプール軸8に径方向に貫通して形成された貫通孔8cを有している。回り止めピン50は、第1端に設けられた第1回り止め部50aと、嵌合部50bと、第2回り止め部50cと、を有している。嵌合部50bは、第1回り止め部50aに隣接して配置されピン挿入部8dに嵌合する長さを有している。第2回り止め部50cは、嵌合部50bから第2端に向かって延びピン挿入部8dより大径である。抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)は、回り止めピン50をスプール軸8に対して抜け止めする。抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)は、第1回り止め部50aの外周側に第2回り止め部50cとスプール軸8を挟んで配置され、スプール軸8に接触可能な軸方向長さを有している。係合溝24cは、スプール4(又はスプール104)のスプール軸8貫通部分にスプール軸8の直径に沿って形成され、第2回り止め部50cに係合する溝幅を有する。
【0056】
このスプール連結構造65(又はスプール連結構造165)では、スプール軸8のピン挿入部8dに回り止めピン50を第1回り止め部50aがある第1端側から挿入する。すると、大径の第2回り止め部50cとピン挿入部8dとの段差部分がスプール軸8の外周面に接触して回り止めピン50の位置決めがなされる。この状態で第1端側の第1回り止め部50aがピン挿入部8dから突出している。この突出した第1回り止め部50aに抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)を装着し、回り止めピン50を抜け止めする。スプール軸8に回り止めピン50を装着した状態でスプール軸8にスプール4(又はスプール104)を装着すると、スプール4(又はスプール104)の係合溝24c(又は係合溝124c)溝が回り止めピン50に係合してスプール4(又はスプール104)がスプール軸8に回り止めして連結される。
【0057】
ここでは、回り止めピン50の第1回り止め部50aに抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)を装着して回り止めピン50を抜け止めしている。このため、回り止めピン50において、せん断力が発生するスプール軸8の外周面の近傍に、抜け止めのための環状溝を形成する必要がなくなる。この結果、回り止めピン50を小径化しても回り止めピン50の強度を確保できるようになる。
【0058】
(B)スプール連結構造65(又はスプール連結構造165)において、第1回り止め部50aは、嵌合部50bと同じ外径を有する。この場合には、嵌合部50bと第1回り止め部50aとが同じ外径であるので、第1回り止め部50aを嵌合部50bより小径する場合に比べてさらに回り止めピンの強度を確保できる。
【0059】
(C)スプール連結構造において、抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)は、係合溝24c(又は係合溝124c)溝に係合する外径を有する。この場合には、係合溝24c(又は係合溝124c)に係合する外径を抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)が有しているので、スプール4(又はスプール104)ががたつきにくくなる。
【0060】
(D)スプール連結構造65において、抜け止め部材51は、嵌合部50bの外周側に装着可能なコイルバネ51aを有する。この場合には、コイルバネ51aの一端を抜け止めして他端を自由長さ又は圧縮させてスプール軸8に接触させることにより回り止めピン50を抜け止めできる。
【0061】
(E)スプール連結構造65において、回り止めピン50は、第1回り止め部50aの第1端側に形成された環状溝50dをさらに有し、コイルバネ51aの第1端側の端部は、環状の環状溝50dに係止可能に小径に形成されている。この場合には、せん断力が作用しない第1端側に環状溝50dを形成しているので、環状溝50dを形成しても小径の回り止めピン50の強度を確保して抜け止め部材51を環状溝50dにより抜け止めできる。
【0062】
(F)スプール連結構造65(又はスプール連結構造165)において、スプール軸8の外周面に嵌合し、ピン挿入部8dに連通する通過孔52aが形成されたスリーブ52をさらに備える。この場合には、スプール軸8を小径化しても、大径のスプール軸に適応するスプール4(又はスプール104)を連結可能になり、大径のスプール軸用のスプールとの互換性を確保できる。
【0063】
(G)スプール連結構造165において、スプール104は、釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部122aと、糸巻胴部122aの内周側に設けられた装着筒部122fと、を有している。係合溝124cは、装着筒部122fに直径に沿って形成された溝である。この場合には、スプール104とスプール軸8とを一体回転可能又は回転不能に連結できる。
【0064】
(H)スプール連結構造65において、スプール4は、スプール本体22と、スプール筒部24と、を有している。スプール本体22は、釣り糸が巻き付けられる糸巻胴部22aと、糸巻胴部22aの内周側に設けられた装着筒部22fと、を有している。スプール筒部24は、スプール本体22を回転自在に支持するようにスプール軸8に装着される。係合溝24cは、スプール筒部24の後端部24bに直径に沿って形成された溝である。この場合には、スプール本体22とスプール筒部24とが相対回転可能になるため、スプール本体22とスプール筒部24との間にフロントドラグ機構23を設けることができる。
【0065】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
(a)前記2つの実施形態では、レバーブレーキ型のスピニングリールを例に発明を説明したが、本発明が適用されるスピニングリールは、これに限定されない。例えば、リアドラグ型のスピニングリールやフロントドラグ型のスピニングリールにも本発明を適用できる。これらの場合は、ワンタッチ着脱機構を有するスピニングリールに適用するのが好ましい。
【0067】
(b)前記の2つの実施形態では、抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)としてコイルバネ51a又は合成樹脂製の筒状体151aを開示したが、抜け止め部材はこれらに限定されない。例えば、複数枚の皿ばねや波板バネやOリングを用いても良いし、中心に円形孔が形成され外形が多角形の棒状部材であっても良い。
【0068】
(c)前記2つの実施形態では、回り止めピン50に形成された環状溝50dにより抜け止め部材51(又は抜け止め部材151)が抜け止めされているが、根本発明はこれに限定されない。例えば、環状溝50dを設けずに、抜け止め部材自身の弾性等により回り止めピン50の第1回り止め部50aに対して抜け止めされていても良い。この場合、抜け止め部材の内径を第1回り止め部の外径より僅かに小さくしても良い。