(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5736092
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】クラッチ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/20 20060101AFI20150528BHJP
F16D 59/02 20060101ALI20150528BHJP
F16D 51/04 20060101ALI20150528BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20150528BHJP
F16D 49/10 20060101ALI20150528BHJP
B60N 2/44 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
F16D41/20 A
F16D59/02
F16D51/04
F16D65/22
F16D49/10
B60N2/44
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-534850(P2014-534850)
(86)(22)【出願日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2014052777
【審査請求日】2014年8月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山根 孟士
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 靖
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−224678(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/032340(WO,A1)
【文献】
特開平06−099769(JP,A)
【文献】
特開2002−186535(JP,A)
【文献】
実開平03−021237(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/20
B60N 2/44
F16D 49/10
F16D 51/04
F16D 59/02
F16D 65/22
F16D 121/16
F16D 127/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材の間に介在され、第一部材に対して第二部材を回動可能なロック解除状態と回動不可能なロック状態を切り替えるクラッチ装置であって、
第一部材側に固定されたロックドラムと、
第二部材側に固定された出力軸プレートと、
出力軸プレートに固定された出力軸と、
ロックドラムに内嵌されたロックバネと、
出力軸プレートに連結されてロックバネの端部を固定するロックバネ固定プレートと、
回動する部材の回動を規制する第一ブレーキバネ及び第二ブレーキバネと、
ロックバネと直接的又は間接的に連結された操作機構とを備え、
ロックバネの固定側端部に、ロックバネの中心側に曲げられたロックバネ曲部と、ロックバネ曲部からロックバネの巻回順方向に曲げられたロックバネ底部とからなるロックバネ段部が形成され、
ロックバネ固定プレートに、ロックバネ段部に対応したクランク状溝が設けられ、
ロックバネ段部がクランク状溝に圧入されて多方位的に保持された状態でロックバネが固定された
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
操作機構が、
内周に内歯を有する回動自在な内歯プレートと、
外歯を外周における2箇所に有する外歯プレートと、
内歯プレートの回動中心からずれた位置を中心として揺動可能な状態で外歯プレートが軸支され、左右に回転送りする回転操作片を有する操作プレートと、
操作プレートを元のセンター位置へ復帰させる外側センタリングバネと、
外歯プレートをいずれの外歯も内歯に噛み合わない状態へ復帰させる内側センタリングバネと、
で構成され、
外歯プレートを左右いずれに回転送りさせるかを選択することで内歯プレートの回転送り方向が選択され、
操作プレートの操作によって、内歯と外歯が噛み合った状態での内歯プレートの回動と、内歯と外歯が分離した状態でのリターンとが繰り返されることで、第一部材と第二部材との間欠的な回転送りが可能とされた
請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
内歯プレートの中心から外歯プレートの軸支位置までの距離が、内歯のピッチ円半径の1/2以上とされた請求項1又は2記載のクラッチ装置。
【請求項4】
第一部材及び第二部材がリンク機構の構成部材の一部であり、
操作機構がクラッチ操作部材である、リンク機構の車両用オットマン装置に用いる請求項1〜3いずれか記載のクラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材と第二部材の間に介在され、第一部材に対して第二部材を回動可能なロック解除状態と回動不可能なロック状態を切り替えるクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操作レバーを操作することにより車両用シートの高さを調節するシートリフターの機構として、ロックドラムの内部に該ロックドラムの内径よりも僅かに大きな外径を有するロックバネを内嵌したものが知られている(例えば、特許文献1〜3)。これらの機構では、操作レバー(例えば特許文献2の
図7における符号90)が操作されていない状態においては、ロックバネ(同図における符号32)の外周面がロックドラム(同図における符号20)の内周面に密着して、ロックバネをロックドラムに対して回動させることのできないロック状態を維持しながらも、操作レバーが操作されると、ロックバネの端部(同図の符号37)が引っ張り方向(ロックバネが縮径する方向)に押圧されて、ロックバネの外周面がロックドラムの内周面から離れ、ロックバネをロックドラムに対して回動させることのできるロック解除状態が発現するようになっている。
【0003】
上記の機構は、車両用シートの高さを簡単な操作で無段階に調節できるものの、以下のような欠点があった。すなわち、これらの機構では、ロック状態において車両用シートに掛かった負荷をロックバネの前記端部で支持する構造となっていて、過大な負荷が掛かると、ロックバネの前記端部が破損してロック状態を維持できなくなるおそれがあった。また、ロックバネであるが故に、ロックバネが拡縮する際の回動のずれや遊びが大きくなるという課題があった。さらに、操作機構が複雑で強度面と確実性に不安があるなどの課題もあった。この点、本出願人は、特許文献5に示されるクラッチ装置を提案するに至ったが、改良の余地は残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−195312号公報
【特許文献2】特開2002−195323号公報
【特許文献3】特開2009−168094号公報
【特許文献4】特開2008−013132号公報
【特許文献5】特開2013−224678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ロックバネが拡縮するの際の回動のずれや遊びを抑えるだけでなく、強度が高く確実な操作機構を有し、第二部材側に過大な負荷が掛かった場合であってもロック状態を確実に維持することのできる安全性の高いクラッチ装置を提供するものである。また、このように安全性の高いクラッチ装置を簡素な構造で提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
第一部材と第二部材の間に介在され、第一部材に対して第二部材を回動可能なロック解除状態と回動不可能なロック状態を切り替えるクラッチ装置であって、
第一部材側に固定されたロックドラムと、
第二部材側に固定された出力軸プレートと、
出力軸プレートに固定された出力軸と、
ロックドラムに内嵌されたロックバネと、
出力軸プレートに連結されてロックバネの端部を固定するロックバネ固定プレートと、
回動する部材の回動を規制する第一ブレーキバネ及び第二ブレーキバネと、
ロックバネと直接的又は間接的に連結された操作機構とを備え、
ロックバネの固定側端部に、ロックバネの中心側に曲げられたロックバネ曲部と、ロックバネ曲部からロックバネの巻回順方向に曲げられたロックバネ底部とからなるロックバネ段部が形成され、
ロックバネ固定プレートに、ロックバネ段部に対応したクランク状溝が設けられ、
ロックバネ段部がクランク状溝に圧入されることによりロックバネが固定された
ことを特徴とするクラッチ装置
を提供することによって解決される。
【0007】
これにより、回動する部材の回動を規制し、第二部材側に過大な負荷が掛かり、その負荷が出力軸プレートを通じてロックバネに掛かった際であっても、ロックバネ段部が出力軸プレート又はそれと連結されたロックバネ固定プレートのクランク状溝に多方位的に保持されることで、ガタツキの無い確実で強固な固定が可能となり、必要なロック力の発揮と維持が可能になる。したがって、性能に優れるだけでなく、信頼性や安全性の高いクラッチ装置を提供することが可能になるとともに、クラッチ装置のコストや重量を抑えることも容易になる。
【0008】
また、本発明のクラッチ装置においては、締まり勝手の第一ブレーキバネ及び第二ブレーキバネを回動する部材に巻き付けたことにより、それと連結する内歯プレートと出力軸プレートの回動のずれや遊びの発生を防止することが可能となっている。加えて、ロックバネ底部や、出力軸プレートのクランク状溝におけるロックバネ底部を圧入するロックバネ底部圧入部分は、ロックバネの巻回方向に沿った円弧状(ロックバネの巻回部分と同心円の円弧を為すよう)に形成してもよいが、その先端側をロックバネ及び出力軸プレートの中心側に傾けると好ましい。これにより、事故などが発生した際には、限度を越えた過負荷が意図的に加わるようにし、出力軸プレートやロックドラムが潰れて各部材が互いに噛み合った状態を発現させることが可能になる。このため、例えば、座席の急激な落下を防いで人体ダメージを減らすことなどが可能になる。ロックバネ底部やロックバネ底部圧入部分の傾斜角度(前記円弧からの傾斜角度)は、要求されるロック力の大きさに応じて決定されるが、0〜15°程度までの範囲で設定すると好ましい。
【0009】
また、本発明のクラッチ装置において、ロックバネ段部を設ける場所は特に限定されず、ロックバネの端部と中途部のいずれであってもよい。ロックバネの中間部(例えば、ロックバネが7巻である場合の4巻目)にロックバネ段部を形成してもよい。これらいずれの場所にロックバネ段部を設けても、上述した効果を得ることができる。ただし、オットマンに採用する場合など、左右両方向でのロック力を期待して中間部に段部を設けて固定する場合には、ロック力のオン−オフ切換機構との組合わせが必要になることなどは、言うまでもない。
【0010】
さらに、本発明のクラッチ装置においては、
操作機構を、
内周に内歯を有する回動自在な内歯プレートと、
外歯を外周における2箇所に有する外歯プレートと、
内歯プレートの回動中心からずれた位置を中心として揺動可能な状態で外歯プレートが軸支され、左右に回転送りする回転操作片を有する操作プレートと、
操作プレートを元のセンター位置へ復帰させる外側センタリングバネと、
外歯プレートをいずれの外歯も内歯に噛み合わない状態へ復帰させる内側センタリングバネと、
で構成し、
外歯プレートを左右いずれに回転送りさせるかを選択することで内歯プレートの回転送り方向が選択され、
操作プレートの操作によって、内歯と外歯が噛み合った状態での内歯プレートの回動と、内歯と外歯が分離した状態でのリターンとが繰り返されることで、第一部材と第二部材との間欠的な回転送りが可能とする
と好ましい。
【0011】
そして、本発明のクラッチ装置においては、内歯プレートの中心から外歯プレートの軸支位置(揺動中心)までの距離を、内歯のピッチ円半径の1/2以上とすると好ましい。これにより、2箇所の外歯を、それぞれ前記ピッチ円の半周における40%以上の区間に設けることが可能になるなど、多くの外歯が内歯に噛み合い、外歯と内歯の噛合強度を高めることが可能になる。外歯プレートの揺動中心が内歯プレートの外部となるようにすると、2箇所の外歯を設ける区間を、それぞれ前記ピッチ円の半周における60%程度まで増大させることもできる。本発明のクラッチ装置においては、第一部材と第二部材をリンク機構の構成部材の一部とし、操作機構をクラッチ操作部材とすると、ロック力が高く安全な車両用オットマン装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によって、ロックバネが拡縮するの際の回動のずれや遊びを抑えるだけでなく、強度が高く確実な操作機構を有し、第二部材側に過大な負荷が掛かった場合であってもロック状態を確実に維持することのできる安全性の高いクラッチ装置を提供することが可能になる。また、このように安全性の高いクラッチ装置を簡素な構造で提供することも本発明の目的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第一実施態様のクラッチ装置の分解斜視図である。
【
図2】第一実施態様のクラッチ装置を組み立てた状態を回動中心線L
1を含む平面で切断した断面図である。
【
図3】第一実施態様のクラッチ装置におけるロック機構ユニットと操作機構ユニットとを組み付けている状態を示した斜視図である。
【
図4】第一実施態様のクラッチ装置における第一ロックバネ固定プレートに設けられたクランク状溝にロックバネ段部を圧入した状態を回動中心線L
1に垂直な平面で切断した断面図である。
【
図5】(イ)第一実施態様のクラッチ装置において、操作レバーが初期位置(元の位置)にあり、外歯プレートが内側リターンバネによってフリーな中立位置にあるときの操作機構の各部の位置関係を示した図、 (ロ)第一実施態様のクラッチ装置において、操作レバーを(イ)の初期位置から下方(左)に回動させ、外歯プレートが揺動したときの操作機構の各部の位置関係を示した図、 及び、 (ハ)第一実施態様のクラッチ装置において、操作レバーを(ロ)の位置からさらに下方操作し、内歯プレートを回動送りさせた操作機構の各部の位置関係を示した図である。
【
図6】回動中心の異なる第二実施態様のクラッチ装置において、操作レバーが初期位置にあるときの主要部の位置関係を示した図である。
【
図7】本発明に係るクラッチ装置を組み込んだ車両用オットマン装置を出力軸に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施態様のクラッチ装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の技術的範囲は、以下で述べる実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0015】
[第一実施態様のクラッチ装置]
図1は、第一実施態様のクラッチ装置の分解斜視図である。
図2は、第一実施態様のクラッチ装置を組み立てた状態を回動中心線L
1を含む平面で切断した断面図である。
図3は、第一実施態様のクラッチ装置におけるロック機構ユニット10と操作機構ユニット20とを組み付けている状態を示した斜視図である。第一実施態様のクラッチ装置は、ロック機構10と、操作機構30と、間欠送り機構30aとで構成され、操作機構30は第一部材と第二部材の間に介在され、第一部材に対して第二部材の相対回転角度を変更させるものになっている。
【0016】
ロック機構10は、出力軸11と、出力軸プレート12と、第一ロックバネ固定プレート13と、第一ブレーキバネ15と、第二ブレーキバネ19と、ロックバネ16と、第二ロックバネ固定プレート17と、ロックドラム18とで構成されている。ロックドラム18は、第一部材(図示省略)に固定され、出力軸プレート12は、それに固定された出力軸11を介して第二部材(図示省略)に連結される。ロックバネ16は、自由状態においてロックドラム18の内径よりも数%大きな外径を有しており、ロックドラム18に強制的に内嵌されている。また、第一ブレーキバネ15は、自由状態において、内歯プレート31のバーリング部分及びブレーキバネホルダー14の筒状部分の外径よりも数%小さな内径を有しており、当該バーリング部分及び当該筒状部分に強制的に外嵌されている。この締め付けによる滑り摩擦抵抗によって、外歯プレート33が初期位置に戻る際の動きにつられて内歯プレート31が回動するのを防いで、内歯プレート31が移動した位置で留まるようにし、遊びやずれを防いでいる。また、第二ブレーキバネ19は、第一ブレーキバネ15と同様の締め代を持つ寸法のもので、樹脂一体カラー20とロックドラム18のバーリング部分を締め付けて回動を規制し、バネブレーキ機構の課題であるロックバネ16の拡縮の際の回動のガタツキや遊びを防ぐ機能を有している。
【0017】
ロックバネ16には、
図4に示すように、その中心側に曲げられたロックバネ曲部16aと、ロックバネ曲部16aからロックバネ16の巻回順方向に曲げられたロックバネ底部16bと、からなるロックバネ段部16cが形成されている。
図4は、第一実施態様のクラッチ装置における第一ロックバネ固定プレート13に設けられたクランク状溝13aにロックバネ段部16cを圧入した状態を回動中心線L
1に垂直な平面で切断した断面図である。ロックバネ曲部16aのロックバネ16を縮径させる側は、ロックバネ引張側接点P
1となっており、ロックバネ曲部16aのロックバネ16を拡径させる側は、ロックバネ押当側接点P
2となっている。第一ロックバネ固定プレート13には、ロックバネ引張側接点P
1を押圧するためのロックバネ引張部13bと、ロックバネ押当側接点P
2を押圧するためのロックバネ押当部13cとが設けられている。第一実施態様のクラッチ装置においては、
図1に示すように、ロックバネ16の両端部にロックバネ段部16cを設けており、他方のロックバネ段部16cは、第二ロックバネ固定プレート17に設けられたクランク状溝17aに圧入することでロックバネ16の端部に掛かる高負荷を分散して受けるようになっている。
【0018】
続いて、第一実施態様のクラッチ装置における操作機構30について、
図5を用いて説明する。操作機構30は、内歯プレート31と、外歯プレート33と、操作プレート32と、外側センタリングバネ35とで構成されている。この操作機構30では、操作プレート32の回転中心C
1と外歯プレート33の揺動中心(軸支位置)C
2とが異なっていため、操作プレート32によって回動方向が選択されて左右いずれかに回動されると、内側センタリングバネ34に抗って外歯プレート33が揺動し(線分C
1C
2に対して線分C
1C
3が傾き)、外歯33aは内歯31aに噛み合ったまま回動送りされる。その後、操作プレート32は外側センタリングバネ35(
図1及び
図2)によって元の位置まで戻される。このとき、外歯プレート33は、内側センタリングバネ34によって噛み合いが解かれて、内歯31aと外歯33aとが分離した状態でリターンする。すなわち、内歯31aと外歯33aとが噛み合った状態での内歯プレート31の回動送りと、内歯31aと外歯33aとが分離した状態でのリターンとが繰り返されることで、第一部材と第二部材との間欠的な回転送りを行うものとなっている。なお、内歯プレート31の内周部には、複数の内歯31aが設けられ、外歯プレート33の外周部には、左右それぞれの回転送りのための複数の外歯33aが2箇所に設けられている。外歯33aの歯数をより多く確保するため、外歯33aのピッチ円半径は、内歯31aのピッチ円半径と同一としている。
【0019】
より具体的には、操作レバー50などの操作手段を操作した際には、ロックドラム18に対して操作機構30の各部が回動することで、内歯31aに外歯33aが噛み合った状態と分離した状態とが切り替わるものとなっている。
図5の(イ)〜(ハ)は、操作レバー50を初期位置から下方に回動させた場合における操作機構20の各部の位置関係を示した図である。
図5(イ)の初期状態から操作レバー50を下向き(左回転方向)に操作すると、操作プレート32に設けられた回転操作片32aが外歯プレート33を下向きに押圧することで、外歯プレート33が
図5(ロ)の状態に揺動し、外歯33aが内歯31aに噛み合い、
図5(ハ)に示すように、内歯プレート31が左に回動送りされる。左回動操作を中止すると、外側センタリングバネ35(
図1及び
図2)の働きで操作レバー50は元の位置に戻り、
図5(イ)の状態に戻る。なお、回動送り量は、シートリフターの場合で、通常、1サイクル(1操作)30°程度である。ここで述べた内容は、左回転に限らず、逆方向回転においても同様である。
【0020】
なお、
図5の(ロ)及び(ハ)のときには、ロックバネ16は、
図4に示すロックバネ引張側接点P
1が押圧されて縮径しているため、ロックドラム18に対して回動自在な状態(ロックバネ可動状態)となっている。すなわち、第一部材(ロックドラム18を固定した部材)に対して第二部材(出力軸11を固定した部材)を回動可能なロック解除状態が発現するようになっている。一方、操作レバー50の操作を停止すると、
図5(イ)の状態に戻り、ロックバネ16が元の状態に拡径してロックドラム18の内周面に強く密着し、ロックドラム18に対して回動できない状態(ロックバネ固定状態)となる。このロックバネ固定状態においては、ロックバネ16に過大な負荷が掛かるが、ロックバネ段部16cがクランク状溝13a,17aで支持されているため、その負荷を分散させロックバネ16の破損を防ぐようになっており、ロック状態をしっかりと維持することができるようになっている。
【0021】
[第二実施態様のクラッチ装置]
上記で述べた第一実施態様のクラッチ装置は、
図5に示すように、外歯プレート33の揺動中心C
2が、内歯31aのピッチ円の外側に配されていたが、
図6に示す第二実施態様のクラッチ装置では、内歯プレート31の回動中心C
1から外歯プレート33の揺動中心C
2までの距離が、内歯31aのピッチ円半径の1/2程度となっており、外歯プレート33の揺動中心C
2が、内歯31aのピッチ円の内側に配されている。本発明のクラッチ装置は、この態様に限定されないが、外歯プレート33の揺動中心C
2が内歯プレート31の回動中心C
1から離れるほど、内歯31aと外歯33aの噛合歯数を増やせることについては、前述の通りである。
【0022】
[応用例]
続いて、本発明の応用例について説明する。
図7は、本発明に係るクラッチ装置を組み込んだ車両用オットマン装置を出力軸11に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図7のオットマン装置は、クラッチ装置100と、リンク機構200と、フットレスト300とで構成されている。クラッチ装置100は、中間部に段部を設けたロックバネ16による左右両方向のロック機能を持つもので、その操作機構30はロック機構をオン−オフ操作する第一クラッチ操作部材61と第二クラッチ操作部材62とで構成されている。リンク機構200は、フットレスト300を座席の下から前方に引き出す、又は、座席の下へ収納させる、オットマン装置の構造体である。リンクを構成する第一部材210に対してロックドラム18が固定されており、第二部材220に対して出力軸11が固定されている。
【0023】
図7に示す車両用オットマン装置の具体的な動作について説明する。図示省略の操作レバーが操作されるなどして、第一クラッチ操作部材61の基端部と第二クラッチ操作部材62の基端部が互いに離反する方向に回動すると、
図4に示されるロックバネ16の両端部に設けられたロックバネ引張側接点P
1がロックバネ引張部13bによってそれぞれ押圧され、ロックバネ16が縮径してロック解除状態となる。この状態でフットレスト300が前方に引き出し又は座席下に収納される。操作レバーの操作を停止すると、ロックバネ16が拡径してロック状態が発現することなどについては、上述した実施態様のクラッチ装置と同様である。
【0024】
このように、
図7に示す車両用オットマン装置では、操作機構30に相当する部分を複数のクラッチ操作部材(第一クラッチ操作部材61及び第二クラッチ操作部材62)で構成したが、これに限らずクラッチ操作部材を1つの部材で構成することも可能である。
【0025】
[用途]
以上で述べた、本発明のクラッチ装置は、その用途を限定されず、各種用途に採用することができる。なかでも、車両用シートのリフター装置における昇降機構や、車両用シートのリクライニング装置における角度調節機構や、車両用オットマン装置におけるロック機構などに好適に採用することができる。これらの装置に使用されるクラッチ装置はいずれも、事故などによりその第二部材側に過大な負荷がかかるおそれがある。このため、本発明のクラッチ装置を使用することにより、乗員の安全性を高めることができるという利益が得られる。
【符号の説明】
【0026】
10 ロック機構ユニット(ロック機構)
11 出力軸
12 出力軸プレート
13 第一ロックバネ固定プレート
13a クランク状溝
13b ロックバネ引張部
13c ロックバネ押当部
14 ブレーキバネホルダー
15 第一ブレーキバネ
16 ロックバネ
16a ロックバネ曲部
16b ロックバネ底部
16c ロックバネ段部
17 第二ロックバネ固定プレート
17a クランク状溝
18 ロックドラム
19 第二ブレーキバネ
20 軸一体樹脂カラ―
30 操作機構ユニット(操作機構)
30a 間欠送り機構ユニット(間欠送り機構)
31 内歯プレート
31a 内歯
32 操作プレート
32a 回転操作片
33 外歯プレート
33a 外歯
34 内側センタリングバネ
35 外側センタリングバネ
36 ハンドルプレート
37 ワッシャー
50 操作レバー(操作手段)
61 第一クラッチ操作部材(操作機構)
62 第二クラッチ操作部材(操作機構)
100 クラッチ装置
200 リンク機構
210 第一部材
220 第二部材
300 フットレスト
C
1 内歯プレートの回動中心
C
2 外歯プレートの揺動中心
L
1 内歯プレートの回動中心線
P
1 ロックバネ引張側接点
P
2 ロックバネ押当側接点
【要約】
【課題】
第二部材側に過大な負荷が掛かった場合であってもロック状態を確実に維持することのできる安全性の高いクラッチ装置を提供する。
クラッチ装置を、第一部材側のロックドラム18と、第二部材側の出力軸プレート12と、ロックドラム18に内嵌されたロックバネ16と、ロックバネ固定プレート13,17と、ロックバネ16と連結した操作機構20とを備えたものとし、ロックバネ16の固定側端部にロックバネ段部16cを形成し、ロックバネ段部16cをロックバネ固定プレート13,17のクランク状溝13a,17aに圧入固定した。これにより、圧縮負荷の加わるロックバネ16を固定し、遊びの無い強力なロック力が得られる。操作機構20は、歯車の噛合いによるシンプルな間欠送りによるものを採用すると好ましい。