(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、算出装置として光線力学的治療装置(以下「PDT装置」と記述する。)を用いるものとして説明する。
【0028】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るPDT装置を示す模式図である。
PDT装置1は、PDT装置本体100と、PDT装置本体100に接続されたチューブ200と、チューブ200の先端に設けられたコネクタ210とを有する。
チューブ200は、中空の柔らかい管であり、内蔵する装置付属光ファイバ201(
図3参照。)を介して光を伝送可能である。
コネクタ210には、レーザカテーテル300が着脱可能に接続される。
【0029】
患者2には、光感受性薬剤が投与される。静脈注射により投与した場合、投与された光感受性薬剤は血液中に拡散し、さらに心筋組織等の組織に取り込まれる。光感受性薬剤は、静脈注射により治療に必要な分量を一括投与したり、点滴により継続的に投与したり、経口から一括又は継続的に投与したり、局所投与してもよい。光感受性薬剤とは、光の特定波長を吸収して励起し、蛍光を発する薬剤である。例えば、タラポルフィンナトリウム(レザフィリン(登録商標)、明治製菓株式会社)という薬剤がある。この薬剤のQ帯吸収波長は664nm前後に存在するため、この薬剤の励起光源としては、例えば600−800nm、好ましくは660−680nm、さらに好ましくは664±2nmを用いる。
【0030】
図2は、心臓に挿入されたレーザカテーテルを示す模式図である。
レーザカテーテル300は、患者2の大腿静脈又は頸静脈を通して、心臓10の右心房14に挿入される。右心房14に到達したレーザカテーテル300は、中隔を貫通し左心房13に導かれる。
【0031】
[PDT装置本体の構成]
図3は、PDT装置本体を示すブロック図である。
PDT装置本体100は、光源110と、光学系120と、検出部130と、心電取得部140と、制御部150と、記憶部160と、表示部170と、操作部180とを有する。
【0032】
光源110は、光感受性薬剤の励起光を出力する。光源110が出力する光の波長は、光感受性薬剤のQ帯の吸収波長と等しい。例えばQ帯吸収波長が664nm前後の光感受性薬剤が用いられるとき、光源110として発振波長600−800nm、好ましくは660−680nm、さらに好ましくは664±2nmの半導体レーザが使用される。光源110が出力した励起光は、光学系120によりレーザカテーテル300に入射する。
【0033】
光学系120は、光源110が発する励起光を、装置付属光ファイバ201を介してコネクタ210に接続されたレーザカテーテル300に入射する。光学系120は、励起光が照射された光感受性薬剤が発する蛍光をレーザカテーテル300から取り出し、検出部130に入射する。光学系120は、ショートパスフィルタ121と、第1のレンズ122と、偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter、以下「PBS」と記述する。)123と、ロングパスフィルタ124と、第2のレンズ125とを有する。
ショートパスフィルタ121は、カットオン波長670nmの短波長透過フィルタであり、長波側の輻射をカットする。光源110からの励起光は蛍光観察波長域(ピーク波長よりも長波側)に輻射成分をもつ。そこで、励起光の長波側の輻射成分を、レーザカテーテル300に集光する前段階でカットする。ショートパスフィルタ121を透過した励起光は、第1のレンズ122に入射する。
第1のレンズ122は、ショートパスフィルタ121より入射した励起光をレーザカテーテル300の一端面に集光する。また、第1のレンズ122は、レーザカテーテル300の先端部からの蛍光をPBS123に集光する。なお、光源110からの励起光の一部は、装置付属光ファイバ201のPDT装置本体100側端面や、コネクタ210内や、レーザカテーテル300の先端部で反射して正反射光としてPBS123に入射する。これら正反射光は、蛍光の検出にあたりノイズとなる。
PBS123は、第1のレンズ122より入射した光のうち、偏向の違いを利用してチューブ200内の光ファイバの端面で反射した正反射光を透過させて検出せずに、蛍光とその他の端面における正反射光を反射して検出器へと導く。PBS123を透過した蛍光は、ロングパスフィルタ124に入射する。
ロングパスフィルタ124は、PBS123より入射した光のうち、コネクタ210内及びレーザカテーテル300の先端部で反射した正反射光を透過せずに、蛍光のみを透過して検出器へと導く。ロングパスフィルタ124を透過した蛍光は、第2のレンズ125に入射する。
第2のレンズ125は、ロングパスフィルタ124より入射した蛍光を検出部130に集光する。
【0034】
検出部130は、例えばリニアイメージセンサーであり、光学系120より入射した蛍光を分光検出する。すなわち、検出部130は、励起波長の光と励起波長の光より長い光である光感受性薬剤の蛍光を検出する。検出部130は、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。
【0035】
心電取得部140には、電極コード(図示せず)を介して電極パッド141が接続される。心電取得部140は、患者2に装着された電極パッド141と電極コードとを介して患者2の心電信号を取得し、取得した心電信号を制御部150に供給する。
【0036】
制御部150は、PDT装置1内の各部を制御する。
制御部150は、検出部130より取得した電気信号をもとに、蛍光強度を算出する。制御部150は、算出した蛍光強度をもとに、組織中や血中の薬剤濃度を算出する(薬剤濃度モニター動作)。制御部150は、算出した薬剤濃度をもとに、薬剤追加投与の要否を判別する。
制御部150は、検出部130より取得した電気信号をもとに、レーザカテーテル300の組織に対する接触状態を判別する(接触モニター動作)。
制御部150は、励起光照射中の蛍光強度の変化をもとに、異物、破損等の異常の有無や殺細胞効果を判別する(異物・破損モニター動作及び殺細胞効果判別動作)。制御部150は、判別結果をもとに、光源110を制御して励起光照射を停止させる。
制御部150は、検出部130より取得した電気信号と心電取得部140より取得した心電信号とをもとに、電気伝導ブロックの形成の有無を判別する(電気伝導ブロック形成の判別動作)。
制御部150は、上記各種算出結果及び判別結果や種々の情報を表示するための表示命令を表示部170に出力する。
【0037】
記憶部160は、不揮発性メモリであり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、その他の固体メモリに設定される。制御部150は、検出部130より取得した蛍光強度に関する情報と、励起光照射を開始した時刻などの基準時刻からの経過時間等を計測する時間計測部(図示せず)より取得した時間情報とを互いに関連付けて、蛍光強度の経時変化として記憶部160に記録する。制御部150は、心電取得部140より取得した心電信号に関する情報と時間情報とを互いに関連付けて、心電図として記憶部160に記録する。
【0038】
表示部170は、例えば液晶表示器等を用いた表示デバイスである。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、例えば蛍光強度に関する情報、心電信号に関する情報及び時間情報等を表示画面に表示する。
【0039】
操作部180は、施術者からの入力操作による命令を受け付け、受け付けた命令を制御部150に出力する。命令とは、例えば、光源110が出力する励起光のオン・オフや強度の切り替え等に関する命令である。励起光の強度は、少なくとも、組織や血液に対し低侵襲な低パワー(例えば、光出力1mW以下)の第1の強度と、第1の強度のおよそ1000倍程度の強さの高パワーの第2の強度との2種類を選択可能である。第1の強度は、治療前に、薬剤濃度やレーザカテーテル300の接触状態をモニターする際に選択される。第2の強度は、治療を行う際に選択される。なお、第1の強度は固定値であり、第2の強度は可変してもよい。
【0040】
[レーザカテーテルの構成]
レーザカテーテル300は、先端部から励起光を出射する。
図4は、レーザカテーテルの先端部を示す断面図である。
レーザカテーテル300は、カテーテルチューブ310と、支持部320と、光ファイバ330と、光学ウィンドウ340とを有する。
【0041】
カテーテルチューブ310は、中空の柔らかい管であり、患者2の心臓10の心筋組織の内壁に導かれる。カテーテルチューブ310は、光ファイバ330を内蔵する。
【0042】
支持部320は、カテーテルチューブ310に固定される。支持部320は、光ファイバ330及び光学ウィンドウ340をカテーテルチューブ310に対して保持する。
【0043】
光ファイバ330は、例えば、コア径133μm且つ外形500μmの1本の石英製ステップインデックスファイバである。光ファイバ330は、PDT装置1からの励起光を伝送する。光ファイバ330は、先端から、伝送した励起光を照射光301として光学ウィンドウ340へ出射する。照射光301のビーム径は、光ファイバ330の開口(NA)で定まる角度で増大する。光ファイバ330の先端は、この照射光301のビーム径が適切に増大するように加工される。光ファイバ330は、励起光が照射された組織に取り込まれた光感受性薬剤が発した蛍光をPDT装置1に伝送する。
【0044】
光学ウィンドウ340は、レーザカテーテル300の先端部の最外部に光ファイバ330の先端と光学的に連続して設けられる。光学ウィンドウ340は、固形の透明材料、例えばBK7等の硝子材料からなる。光学ウィンドウ340は、照射部として、光ファイバ330の先端から出射した照射光301を透過させる。光学ウィンドウ340は、受光部として、光感受性薬剤が発した蛍光を光ファイバ330の先端に集光する。
【0045】
SN(Signal-Noise)比の高い蛍光検出を行うには、正反射光を除去するために、レーザカテーテルに照射ファイバ及び検出ファイバを独立に設けて照射及び受光を行う方法が知られている(特開2009−148550段落[0037]参照。)。
一方、心腔内の治療や診断を行う際、レーザカテーテルの曲率を稼ぐため、レーザカテーテルの直径は小さいことが望ましい。複数の光ファイバをレーザカテーテルに設けるには、それぞれの光ファイバを極細に形成することとなり、必要な強度の光を伝送できなくなるおそれがある。
以上より、特に心房細動や心室粗動などの心腔内からのアプローチを必要とする疾患では、レーザカテーテルに内蔵する光ファイバは1本であることが望まれる。また、生体に影響を与えない程度の低パワーの強度での蛍光検出が必要となるため、SN(Signal-Noise)比の高い計測系を1本の光ファイバで構成する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態のPDT装置1によれば、PBS123及びロングパスフィルタ124がファイバ入射端面の正反射光を除去し、さらに、ショートパスフィルタ121が励起光の長波側の輻射成分を除去する。これにより、レーザカテーテル300で照射ファイバと検出ファイバを1本の光ファイバ330で兼用しながらも、検出部130は高SN比で蛍光を検出できる。この結果、生体に影響を及ぼさない程の低パワーで蛍光を検出することができる。これにより、循環器系の疾患の治療及び診断において、十分に細くて曲率が稼げるレーザカテーテルでありながらも、低侵襲な診断が可能である。
【0047】
[PDT装置の動作]
次に、以上のように構成されたPDT装置1の動作について説明する。
図5は、PDT装置の動作を示すフローチャートである。
【0048】
PDT装置1の動作の説明は、以下の(1)〜(6)の順序で行うものとする。
(1)PDTの準備(ステップS101〜ステップS103)
(2)薬剤濃度モニター動作(ステップS104〜ステップS105)
薬剤濃度モニター動作では、光源110は第1の強度で励起光を出力し、制御部150は検出部130が検出する蛍光強度をもとに薬剤濃度を経時的に算出し、算出した薬剤濃度をもとに薬剤追加投与の要否を判別する。
(3)接触モニター動作(ステップS106〜ステップS108)
接触モニター動作では、光源110は第1の強度で励起光を出力し、制御部150は検出部130が検出する蛍光強度をもとにレーザカテーテル300の組織内壁に対する接触状態を判別し、励起光照射プロトコル(強度、時間等)の算出を行う。
(4)異物・破損モニター動作(ステップS109〜ステップS112)
異物・破損モニター動作では、光源110は第2の強度で励起光を出力し、制御部150は検出部130が検出する蛍光強度をもとに適切な治療プロトコルにて、レーザ照射中に何らかの理由で異物がレーザカテーテル300先端に付着するか否か、さらにレーザカテーテル300先端付近の破損が有るか無いかを判別する。
(5)殺細胞効果判別動作(ステップS113)
殺細胞効果判別動作では、光源110は第2の強度で励起光を出力し、制御部150は検出部130が検出する蛍光強度をもとに、励起光が照射されている組織にて殺細胞効果があったかどうかを判別する。
(6)電気伝導ブロック形成の判別動作(ステップS114〜ステップS117)
電気伝導ブロックとは、すでに説明したように異常興奮部位を取り囲む心筋組織を壊死させて、異常興奮部位から左心房への電気パルスの伝導を遮断したブロックである。ここで電気伝導ブロック形成の判別動作は、殺細胞効果判別動作(ステップS113)で用いた蛍光強度の時間変化のデータと、心電波形のデータを制御部で演算することで判別する。場合によっては、レーザカテーテルを電気伝導ブロック内に再配置し、光源110を第1の強度に変更して、同様の処理を行うことで電気伝導ブロックの形成を判別してもよい。
【0049】
[(1)PDTの準備]
図6は、左心房に挿入されたレーザカテーテルを示す模式図である。
まず、医師等の施術者により、レーザカテーテル300が患者2の大腿静脈又は頸静脈を通して心臓10に挿入される。レーザカテーテル300の先端部は、左心房13の心筋組織11内壁の肺静脈12近傍に配置される(ステップS101)。
【0050】
続いて、施術者により、各種レファレンスデータを参考に(ステップS102)、患者2に光感受性薬剤が投与される(ステップS103)。ここでは、静脈注射により治療に必要な分量の光感受性薬剤が患者2に一括投与されるものとして説明する。投与された光感受性薬剤は血液に拡散および組織に取り込まれる。
【0051】
[(2)薬剤濃度モニター動作]
続いて、薬剤濃度モニター動作が行われる。
まず、施術者は、操作部180を操作して低パワーの第1の強度での励起光出力命令を制御部150に入力する。制御部150は、励起光出力命令を取得すると、光源110に第1の強度での励起光出力命令を出力する。光源110は、制御部150より励起光出力命令を取得すると、第1の強度で励起光を出力する。光源110が出力した励起光は、光学系120及びレーザカテーテル300を介して組織や血液に照射される。組織や血液に取り込まれた光感受性薬剤は、レーザカテーテル300からの励起光を吸収して蛍光を発する。光感受性薬剤が発した蛍光はレーザカテーテル300を介して光学系120により取り出され検出部130に入射される。検出部130は、入射した蛍光を検出し、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。
【0052】
制御部150は、検出部130より取得した電気信号をもとに、蛍光強度を算出する。制御部150は、算出した蛍光強度を時間計測部(図示せず。)から取得した時間情報に関連付けたログとして、蛍光強度の経時変化を記憶部160に記録し始める。制御部150は、算出した蛍光強度と、静脈注射を開始した時刻などの基準時刻からの経過時間とをもとに、蛍光強度の経時変化に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、蛍光強度の経時変化を表示画面に表示する。例えば、表示部170は、蛍光強度の経時変化をグラフとして表示画面に表示する。
【0053】
ここで、蛍光強度の経時変化を示すグラフの一例について説明する。
図7は、蛍光強度の経時変化を示すグラフである。
同図は、光感受性薬剤(レザフィリン)をブタに静脈注射(intravenous injection, i.v.)し、薬剤の吸収スペクトルのQ帯に一致する励起光(半導体レーザ、発振波長例えば600−800nm、好ましくは660−680nm、さらに好ましくは664±2nm、400μW)を照射したときの蛍光強度(Intensity)の経時変化を示す。レーザカテーテル300の先端部はブタ右心房内に配置した。
血液での蛍光強度は、薬剤投与後、単調減少した。一方、心筋組織での蛍光強度は、薬剤投与後、一定時間までは増加し、その後減少した。また、血液での蛍光強度は、心筋組織での蛍光強度より大きい。
【0054】
ここで、蛍光強度と薬剤濃度との関係について説明する。
図8は、蛍光強度と薬剤濃度の相関を示すグラフである。
同図は、採血法により得られた薬剤濃度(PS concentration)の絶対値と、前図に示す励起光を血液に照射したときの蛍光強度(Intensity)との相関を示す。薬剤濃度の絶対値と蛍光強度とはほぼ一致した。すなわち、経時的に算出された蛍光強度をもとに、リアルタイムに薬剤濃度をモニターできる。
【0055】
制御部150は、算出した蛍光強度をもとに、組織や血液中の薬剤濃度を算出する(ステップS104)。制御部150は、算出した薬剤濃度を時間計測部(図示せず。)から取得した時間情報に関連付けたログとして、薬剤濃度の経時変化を記憶部160に記録し始める。制御部150は、また、算出した薬剤濃度と、静脈注射を開始した時刻などの基準時刻からの経過時間とをもとに、薬剤濃度の経時変化に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、薬剤濃度の経時変化を表示画面に表示する。例えば、表示部170は、薬剤濃度の経時変化をグラフとして表示画面に表示する。
【0056】
ここで、薬剤濃度の経時変化を示すグラフの一例について説明する。
図9は、薬剤濃度の経時変化を示すグラフである。
上述のように、血液での蛍光強度は心筋組織での蛍光強度より大きく、また、蛍光強度と薬剤濃度には相関がある。従って、血中の薬剤濃度は、血中の蛍光強度の経時変化と同様と同様に、薬剤投与後単調減少する。一方、組織中での薬剤濃度は、組織中の蛍光強度の経時変化と同様と同様に、薬剤投与後一定時間までは増加し、その後減少する。また、血中の薬剤濃度は組織中の薬剤濃度より高いレベルを示すことになる。
【0057】
制御部150は、算出した薬剤濃度が閾値以上かどうかを判別する(ステップS105)。制御部150は、薬剤濃度が閾値以上と判別すると、薬剤濃度が十分であると推定して、接触モニター動作へと移行する(ステップS105でYes)。一方、制御部150は、薬剤濃度が閾値未満と判別すると、薬剤濃度が不十分であると推定して、薬剤追加投与を促す表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、施術者へ光感受性薬剤の追加投与を促す情報を表示する(ステップS105でNo)。
【0058】
なお、蛍光強度と薬剤濃度とには相関があるので、蛍光強度を表示部170により表示画面に表示すれば、制御部150により薬剤濃度を算出しなくても、医師等の施術者は蛍光強度から薬剤濃度を推定できる。
【0059】
ところで、一般に、血中の薬剤濃度変化をモニターする手法としては、薬剤投与後から一定時間ごとに採血した血液の吸光度を計測する方法が知られている。しかし、この方法は、採血可能な血液量が限られているためプロット数が制限され、また、リアルタイムでは濃度を計測することができない。
あるいは、体外にバイパス経路を作製し、その経路を通過する血液に対して光を照射し、蛍光強度を観察することでモニターする方法が知られている。しかし、この方法は、衛生面に留意する必要がある。
また、組織中の薬剤濃度をモニターする手法としては、薬剤を構成する一部の炭素を同位体に変換したものを同時に投与し、放射線量から各組織の薬剤濃度をモニターする方法が知られている(CANCER RESEARCH 50. 3985-3990, July 1, 1990, Tissue Distribution and Photosensitizing Properties of Mono-L-aspartyl Chlorin e6 in a Mouse Tumor Model, Charles J. Corner and Angela Ferrario)。しかし、この方法では、被爆の問題と、マクロ的な濃度しかモニターできないという問題がある。
【0060】
これに対して、本実施形態の薬剤濃度モニター動作によれば、蛍光強度の経時変化を算出することにより、蛍光強度に相関のある薬剤濃度の経時変化を算出できる。これにより、組織及び血液中の薬剤濃度をリアルタイムにモニターできる。また、上記従来のモニター方法に比べて、低侵襲であり、安定的かつ再現性高く薬剤濃度の経時変化をモニターできる。また、PDT装置1の光源110からの励起光を用いて薬剤濃度の経時変化を経カテーテル的にモニターするので、薬剤濃度検出装置を別途追加する必要がなく、低コストと省スペースを実現できる。さらに、薬剤濃度をリアルタイムにモニターできるので、薬剤追加投与の判別アシストをリアルタイムに行うことができる。
【0061】
さらに、本実施形態の薬剤濃度モニター動作は、PDTに限定されず、励起光を吸収して蛍光を発する薬剤を用いた治療や診断においても実行することができる。薬剤を使う治療や診断では、薬剤動態(薬剤デリバリー)を把握することが重要である。本実施形態の薬剤濃度モニター動作によれば、所望組織の薬剤濃度を経カテーテル的にリアルタイムかつミクロに測定でき、各種薬剤の動態を把握できる。また、低侵襲にモニターできるので、メリットが大きく実用的である。さらに、本実施形態の薬剤濃度モニター動作は、特定の場所にのみ薬剤を到達させるシステム(DDS、Drug Delivery System)においても実行することができ、実際に薬が限局的に到達できているかを評価するのに有用である。
【0062】
[(3)接触モニター動作]
続いて、接触モニター動作が行われる。
【0063】
図10は、レーザカテーテルの接触状態を示す模式図である。
レーザカテーテル300は、発光部位としての先端部が心筋組織11の内壁に垂直に接触するように配置されるのが望ましい(
図10(a)参照、以下「垂直接触状態」と記述する。)。これは、レーザカテーテル300の先端部から心房内血液15を排除して心房内血液15中の光感受性薬剤の活性化を抑えるためである。また、レーザカテーテル300の先端部を組織に直接接触させることで組織に取り込まれた光感受性薬剤を選択的に活性化するためである。
しかしながら、レーザカテーテル300の先端部の正確な接触状態をX線撮影又は触覚的に認識するのは困難である。このため、実際には、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して垂直接触状態となるとは限らない。レーザカテーテル300の先端部と組織との間に血液15が介在して、先端部が血中に存在することもある(
図10(c)参照、以下「非接触状態」と記述する。)。あるいは、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して斜めに接触し、先端部と組織との隙間に部分的に血液15が存在することもある(
図10(b)参照、以下「斜め接触状態」と記述する。)。
接触モニター動作では、このようなレーザカテーテル300の先端部の接触状態、すなわち、接触状態であるか非接触状態であるか、接触状態の場合の接触角度(垂直接触状態・斜め接触状態)等がモニターされる。なお、本明細書において「接触角度」とは、狭義の角度の値のみをいうものでなく、レーザカテーテル300の先端部の組織に対する接触状態が垂直であるか斜めであるかといった広義の接触角度をも意味するものとする。
【0064】
引き続き、光源110は光学系120に第1の強度で励起光を出力し、制御部150は蛍光強度及び薬剤濃度を算出し、表示部170は蛍光強度の経時変化を表示画面に表示している。例えば、表示部170は、蛍光強度の経時変化をグラフとして表示画面に表示している。
【0065】
ここで、蛍光強度の経時変化を示すグラフの一例について説明する。
図11は、蛍光強度の経時変化を示すグラフである。
同図は、
図7と同条件での蛍光強度の経時変化を示すグラフである。グラフ中、A線は蛍光強度が低く、C線は蛍光強度が高く、B線はA線の蛍光強度とC線の蛍光強度との間で変動した。
なお、同図では、説明をわかりやすくするため、レーザカテーテル300の先端部が垂直接触状態、斜め接触状態及び非接触状態にあるときの蛍光強度の経時変化を1つのグラフに示している。しかしながら、実際は、レーザカテーテル300の先端部の接触状態に応じて一方が表示される。
A線について検討する。ここで、
図7に示したように、組織での蛍光強度は、血液での蛍光強度より小さい。従って、A線はレーザカテーテル300が励起光を組織に照射したときの蛍光強度を示すと考えられる。よって、A線のような蛍光強度が算出された場合には、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して垂直接触状態にあるため、組織中の蛍光強度が反映されたと考えられる。
C線について検討する。ここで、
図7に示したように、血液での蛍光強度は、組織での蛍光強度より大きい。従って、C線はレーザカテーテル300が励起光を血液に照射したときの蛍光強度を示すと考えられる。よって、C線のような蛍光強度が算出された場合には、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して非接触状態であるため、血中の蛍光強度が反映されたと考えられる。
B線について検討する。B線はA線の蛍光強度とC線の蛍光強度との間に位置するので、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して斜め接触状態にあると考えられる。また、レーザカテーテル300の先端部の接触対象物が動く心筋組織であるため、レーザカテーテル300が組織の動きに追従して動く。その結果、レーザカテーテル300の先端部が組織に対して斜めに接触している場合には、レーザカテーテル300の先端部と組織との間の血液量が計測中に変化しやすい。また心拍に応じて心筋組織及び心房内の血流量も変化する。これらの影響を受けて、B線の蛍光強度変動は、A線やC線に比べて大きくなる。
さらに、レーザカテーテル300の先端部が組織に何らかの形で接触している場合には(垂直接触状態、斜め接触状態)、レーザカテーテル300が心筋組織の動きによって影響を受けることもある。つまり、レーザカテーテル300の先端部の接触状態が接触状態(垂直接触状態、斜め接触状態)と非接触状態との間で変動する。この場合には、蛍光強度の変動がより激しくなる。従って、波形に示される蛍光強度の変動をもとに、レーザカテーテル300が心筋組織の動きに追従しているかどうかを判別できる。例えば、グラフ中A線において、薬剤投与後4秒付近の蛍光強度が高いのは、瞬間的にレーザカテーテル300の先端部が垂直接触状態から非接触状態になり、再び垂直接触状態に戻ったことを示す。
【0066】
制御部150は、算出した蛍光強度をもとに、レーザカテーテル300の先端部の接触状態(接触・非接触、接触時の接触角度)を判別する(ステップS106)。
具体的には、制御部150は、算出した蛍光強度が第1の閾値より大きいもしくは同レベルと判別するとき、非接触状態と判別する(C線)。制御部150は、蛍光強度の最小値が第1の閾値より小さい第2の閾値より小さいもしくは同レベルと判別するとき、垂直接触状態と判別する(A線)。制御部150は、蛍光強度が第1の閾値と第2の閾値との間で一定周期で変動すると判別するとき、斜め接触状態と判別する(B線)。
制御部150は、表示部170を用いて、判別した接触状態を施術者へ報知する。具体的には、制御部150は、斜め接触状態又は非接触状態を判別すると、レーザカテーテル300の先端部の接触状態変更を促す表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、施術者へレーザカテーテル300の先端部の接触状態変更を促す情報を表示する(ステップS107)。施術者は、レーザカテーテル300に設けられたハンドピース等(図示せず。)を操作することにより、レーザカテーテル300の先端部の組織に対する接触状態を変更することができる。
【0067】
制御部150は、引き続き蛍光強度及び薬剤濃度を算出している。制御部150は、記憶部160に記憶された蛍光強度及び薬剤濃度を参照する。制御部150は、参照した蛍光強度をもとにレーザカテーテル300の先端部と組織との間の隙間に存在する血液量を算出する。制御部150は、算出した血液量と、参照した薬剤濃度とをもとに、治療の際の励起光照射プロトコル、すなわち、励起光の第2の強度や照射時間等を算出する(ステップS108)。
例えば、レーザカテーテル300の先端部が斜め接触状態又は非接触状態にあって隙間に血液が存在する場合には、血液量から励起光の損失(組織に到達しない励起光)を考慮して、第2の強度を高く設定したり、照射時間を長く設定した励起光照射プロトコルとする。制御部150は、励起光照射プロトコルを算出すると、照射プロトコルに関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、励起光照射プロトコル(第2の強度、照射時間)に関する情報を表示する。
以上のように、制御部150は、蛍光強度をもとに薬剤濃度及び血液量を算出し、算出した薬剤濃度及び血液量をもとに励起光照射プロトコルを算出する。すなわち、制御部150は、蛍光強度をもとに励起光照射プロトコルを算出できる。
【0068】
なお、蛍光強度の経時変化はレーザカテーテル300の先端部の接触状態に応じて異なるので、蛍光強度の経時変化を表示部170により表示画面に表示すれば、制御部150により接触状態を判別しなくても、施術者は蛍光強度の経時変化から接触状態を推定できる。
【0069】
ところで、循環器系疾患の分野では、安全性と確実性を担保するため、カテーテルの先端部の所望組織への接触状態及び隙間に存在する血液量や、異物・破損の有無をリアルタイムに判別することが重要である。また所望組織が心筋組織のように動く対象の場合、確実な治療を施すためには、その組織の動きにレーザカテーテルが追従しているかという詳細な接触状態を判別する必要がある。従来より、例えば、血液排除による透明空間確保、X線透視、電位計測(インピーダンス計測)、電位マッピング、温度計測、力計測(圧力、応力)、多色光源による反射光計測等をもとにカテーテルの接触状態を判別することが知られている。しかしながら、経カテーテル治療及び診断において、血液中でカテーテルの先端状況を判別するのは困難であり、詳細な接触状態を判別可能な技術は未だに開発されていない。上記各従来法では、おおまかな接触状態しか判別できない上、以下に示すように課題も多い。
血液排除による透明空間の確保とは、バルーンにより血流を一時的に遮断し、生理食塩水等をカテーテル先端部から流出することで透明空間を確保して血管内視鏡で接触状態を観察する方法である。しかしながらこの方法は、末梢血管が虚血状態になるおそれがある。
X線透視では、精度不足のため、カテーテルと組織との離間距離や、カテーテルと所望組織との間の血液量を判別困難である。また、組織が動く場合、カテーテルの先端がその動きに追従しているかどうかも明確ではない。従って、カテーテルの先端により血液(心腔内治療の場合)又は血管壁(血管内治療の場合)を損傷するおそれがある。また、所望組織へのエネルギー投入量が想定量よりも減少して、十分な治療効果が得られないおそれがある。さらに、解剖学の知識と経験(接触時の手感)を持ち合わせた医者しか判別できず、主観に頼っていることが一番の問題点である(特表第2007−525263号参照)。
電位計測(インピーダンス計測)とは、心筋組織は電位伝播により収縮運動をしているため、その電位を計測することで心筋組織への接触状態を判別する方法である。しかし、光による治療を施す場合、カテーテルの先端部(心筋組織に対する接触部)は光学ウィンドウとなる。このため、電位測定部位は、カテーテルの先端部以外の部位に設けることとなる。その結果、光照射部位と電位測定部位が不一致となり、診断領域と治療領域にズレが生じて、正確な治療ができないおそれがある。また、電極面積が減るため、角度判別の精度が低くなるおそれがある。さらに、電気計測を行うため、電磁干渉の影響のおそれがある(特表第2008−531170号参照)。
電位マッピングとは、電位計測を三次元に発展させたものである。しかしながら、従来の装置では詳細な接触状態を判別する分解能が不足している。また、判別の時間がかかり、過剰な接触力によって生じる人為的な影響が生じるおそれがある(特表第2008−531170号参照)。さらに、電位計測となるカテーテルがずれると、マッピング画像と真の位置にズレが生じるおそれがある。さらに、電気計測を行うため、電磁干渉の影響のおそれがある(特表第2008−531170号参照)。
温度計測とは、血管閉塞部を有する疾患において、温度計測により閉塞部を特定する方法である(特表第2007−525263号参照)。しかし、閉塞部に限った診断法であり、例えば心房細動や心室粗動など閉塞空間がない疾患には適用できない。また正常血管壁へ不必要な熱を与えるおそれがある。
力計測(圧力、応力)とは、カテーテルに圧力センサや応力センサを搭載して、接触対象物を特定する方法である(特表第2009−542371号、米国特許第6696808号、米国特許公開第2008/0009750号、国際公開第01/33165号参照)しかし、カテーテルの先端部が大型化したり、電磁干渉の影響を受けるおそれがある(特表第2008−531170号参照)。
多色光源による反射光計測とは、波長により異なる吸収係数を利用した方法である。具体的には、多色光源を用いて、各波長の反射率の違いから組織を判別する(特許第4261101号参照)。この方法ではカテーテルと組織間の血液量を推定できるが、複数光源を用意しているため、光学系が複雑になり、装置が大型化し、コストが増加するおそれがある。
【0070】
これに対して、本実施形態の接触モニター動作によれば、蛍光強度を検出することで、所望組織への接触状態や追従移動を経カテーテル的にリアルタイムに判別できる。この方法によれば、血液排除等が不要なので低侵襲である。また、判別された接触状態等をもとに励起光照射プロトコルを算出できるので、安全かつ確実な治療及び診断を補助できる。
【0071】
[(4)異物・破損モニター動作]
光線力学的治療時には、異物・破損モニター動作が行われる。
まず、施術者は、表示部170に表示された励起光照射プロトコルを参照し、操作部180を操作して高パワーの第2の強度での励起光出力命令を制御部150に入力する。制御部150は、励起光出力命令を取得すると、光源110に第2の強度での励起光出力命令を出力する。光源110は、制御部150より励起光出力命令を取得すると、第2の強度で励起光を出力する。光源110が出力した励起光は、光学系120及びレーザカテーテル300を介して組織に照射され、光線力学的治療が実施される(ステップS109)。
【0072】
制御部150は、検出部130より取得した電気信号をもとに、蛍光強度を算出する。制御部150は、算出した蛍光強度と、静脈注射を開始した時刻などの基準時刻からの経過時間とをもとに、蛍光強度の経時変化に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、蛍光強度の経時変化を表示画面に表示する。
【0073】
制御部150は、算出した蛍光強度が閾値以上かどうかを判別する(ステップS110)。この閾値は、例えば、通常の蛍光強度の数倍以上の値である。
【0074】
図19は、波長と蛍光強度との関係を示すグラフである。
同図は、異物接触や破損のおそれがあるレーザカテーテル及び通常のレーザカテーテルの波長(Wavelength)と蛍光強度(Intensity)との関係を示す。レーザカテーテルの先端部が生体組織以外の異物に接触したり破損したときは、通常の蛍光強度に比較して蛍光強度が強くなることがわかる。
【0075】
制御部150は、蛍光強度が閾値以上と判別すると、すなわち、蛍光強度がそれまでの蛍光強度を度外視するごとく数倍以上に増加したと判別すると、異物や破損があると推定する(ステップS110でYes)。制御部150は、異物や破損があると推定すると、励起光照射の終了及び異物・破損の発生に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する。異物・破損の発生に関する表示情報には、励起光照射の停止、照射時間の再設定、照射パワーの再設定、レーザカテーテル300の検査等を促す情報が含まれる。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基づき、施術者へ励起光照射の終了(ステップS111)及び異物・破損発生に関する情報を表示する(ステップS112)。
なお、制御部150は、蛍光波長以外の任意の波長(励起光波長など)の異常な強度増加を検知した場合にも異物や破損があると推定して(ステップS110でYes)、同様の処理(ステップS111、ステップS112)を行ってもよい。
【0076】
一方、制御部150は、蛍光強度が閾値以上であると所定時間内に判別しないときは、異物や破損がないと推定し、殺細胞効果判別動作に移行する(ステップS110でNo)。
【0077】
なお、蛍光強度が所定の閾値を超えたとき異物や破損があると推定できるので、蛍光強度を表示部170により表示画面に表示すれば、制御部150により異物・破損の発生を推定しなくても、施術者は蛍光強度から異物・破損の発生を推定できる。
【0078】
また、心腔内にレーザカテーテル300のほか複数本のカテーテルを配置する場合、レーザカテーテル300が別のカテーテルに接触するおそれがある。例えば、心腔内に配置した別のカテーテルに接触した状態でレーザカテーテル300から光を照射すると、双方のカテーテルが機能を失うおそれがある。レーザカテーテル300の先端部の異常に気づかないまま励起光の照射を続行すると、レーザカテーテル300の先端部が発熱し、生体に熱損傷を与える危険がある。また、被接触側のカテーテルも、機能を果たせなくなるおそれがある。
【0079】
本実施形態の異物・破損モニター動作によれば、生体組織以外に接触している場合には強い反射光が計測されるため、異物・破損の発生を経カテーテル的にリアルタイムに推定できる。これにより、レーザカテーテル300の検査を施術者に促すことができるので、患者に危害を及ぼすことなく極めて安全に治療が行える。
【0080】
[(5)殺細胞効果判別動作]
続いて、殺細胞効果判別動作が行われる。
光線力学的治療では、組織に取り込まれた光感受性薬剤は、レーザカテーテル300からの励起光を吸収してエネルギーを得て基底状態から一重項励起状態となる。多くのエネルギーは、項間交差により一重項励起状態から三重項励起状態に移行するが、残りの一部は一重項状態から基底状態に戻り、この時に蛍光を発する。また、三重項励起状態の光感受性薬剤が三重項状態の酸素と衝突すると、エネルギーを酸素に移譲し、酸化力の強い一重項酸素を生成する。この酸化力により組織に傷害を与えるとともに、光感受性薬剤を破壊(ブリーチング)する。ブリーチングが生じると、実効的な薬剤量が減るため、蛍光量も減る。従って、蛍光量の減少は、ブリーチング及び組織傷害量の指標となる。光感受性薬剤が発した蛍光はレーザカテーテル300を介して光学系120により取り出され検出部130に入射される。検出部130は、光学系120より入射した蛍光を検出し、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。
【0081】
引き続き、光源110は光学系120に第2の強度で励起光を出力し、制御部150は蛍光強度を算出し、表示部170は、蛍光強度の経時変化を表示画面に表示している。例えば、表示部170は、蛍光強度の経時変化をグラフとして表示画面に表示する。
【0082】
ここで、蛍光強度の経時変化を示すグラフの一例について説明する。
図12は、蛍光強度の経時変化を示すグラフである。
同図は、光感受性薬剤をブタに静脈注射後20分の時点で、励起光照射を20秒間行った場合の、蛍光強度の経時変化を示す。上述のように、蛍光量の減少はブリーチング及び組織傷害量の指標となるので、蛍光強度の減衰カーブを表示することにより、PDTの進行をリアルタイムに表示できる。
【0083】
制御部150は、算出した蛍光強度が閾値未満まで減衰したかどうかを判別する(ステップS113)。制御部150は、蛍光強度が閾値未満まで減衰したと判別すると、励起光が照射されている組織にて殺細胞効果があったと推定する(ステップS113でYes)。そして、制御部150は、殺細胞効果の指標に関する表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、施術者へ殺細胞効果の指標に関する情報を表示する。施術者は、表示部170に表示された殺細胞効果の指標に関する情報を参照し、電気伝導ブロック形成の判別動作に移行する。
【0084】
一方、制御部150は、所定時間内に蛍光強度が閾値未満に低下したことを判別しなかった場合は、算出した蛍光強度をもとに、励起光照射の延長や光強度の再設定を促す表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170に出力する(ステップS113でNo)。表示部170は、制御部150より表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、施術者へ励起光照射の延長や光強度の再設定を促す情報を表示する。制御部150は、表示命令出力後所定時間が経過すると、ステップS108の動作に移行する。
【0085】
なお、蛍光強度が閾値未満まで減衰したとき殺細胞効果があったと推定できるので、蛍光強度を表示部170により表示画面に表示すれば、制御部150により殺細胞効果の有無を推定しなくても、施術者は蛍光強度から殺細胞効果の有無を推定できる。
【0086】
本実施形態の殺細胞効果判別動作によれば、薬剤濃度に相関のある蛍光強度をもとに、励起光が照射されている組織にて進行する心筋細胞への傷害、すなわち治療効果をリアルタイムで経カテーテル的に計測できるため、確実な治療が可能となる。
【0087】
[(6)電気伝導ブロック形成の判別動作]
続いて、電気伝導ブロック形成の判別動作が行われる。
電気伝導ブロック形成の判別動作では、殺細胞効果判別に用いた蛍光の時間波形を心電図(Electrocardiogram、ECG。ECGの取得方法は後で説明する。)と同期する。ECGのR波とR−R波間隔中に現れる蛍光ピーク強度との位相差を制御部150にて解析することで、電気伝導ブロック形成の判別を行う。場合によっては、レーザカテーテル300を電気伝導ブロック内部(
図13で示した一点鎖線内)に再配置して、励起光出力を第1の強度に変更して、低パワーで計測した蛍光の時間波形をECGに同期して解析してもよい。レーザカテーテルを再配置して計測する場合の手順は以下の通りである。
【0088】
まず、施術者は、レーザカテーテル300の先端部を電気伝導ブロック内部(
図13で示した一点鎖線内)又は励起光照射部位に配置する。そして、施術者は、操作部180を操作して低パワーの第1の強度での励起光出力命令を制御部150に入力する。制御部150は、励起光出力命令を取得すると、光源110に第1の強度での励起光出力命令を出力する。光源110は、制御部150より励起光出力命令を取得すると、第1の強度で励起光を出力する。光源110が出力した励起光は、光学系120及びレーザカテーテル300を介して組織に照射される。組織に取り込まれた光感受性薬剤は、レーザカテーテル300からの励起光を吸収して蛍光を発する。光感受性薬剤が発した蛍光は、レーザカテーテル300を介して光学系120により取り出され検出部130に入射する。検出部130は、光学系120より入射した蛍光を検出し、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。制御部150は、取得した電気信号をもとに蛍光強度を算出する。
【0089】
一方、心電取得部140は心電信号を取得し、取得した心電信号を制御部150に供給する。制御部150は、算出した蛍光強度と取得した心電信号とをもとに表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、蛍光強度と心電図のR波との相関を表示画面に表示する。
【0090】
ここで、蛍光強度とECGのR波との相関について説明する。
図14は、ECGと心腔内圧、心筋組織の血流量を支配する冠状動脈血流量の関係を示す図であり、「エッセンシャル解剖・生理学」(学研メディカル秀潤社、2001年)に記載される前提的な知識で、以下の説明にあたり有効である。
同図に示すように、心腔内と心筋組織中の血流量では、血流量の時間変化が異なる。心腔内の血流量はR波に一致した時点でピークを迎えるのに対し、右心系の心筋組織中の血流量はR波から約200ms遅れた時点で第1ピークが、約400ms遅れた時点で第2ピークが現れる。
【0091】
図15は、レーザカテーテルが垂直接触状態のときの蛍光強度とR波との相関を示す図である。
レーザカテーテル300の先端部が垂直接触状態のときの蛍光強度(例えば照射パワー900mW時)とR波との相関について説明する。垂直接触状態では、R波に対して約100msと400ms遅れたところに蛍光ピークが観測される。なお、カテーテルを左心系に配置した場合には、前図の左冠状動脈血流量に比例した変化をとる。これは、R波発生時に心室が収縮し、血液が全身(心筋組織を含む)に供給される。血液には光感受性薬剤が存在するので、心筋の血管に血液が供給されたときの心筋組織の蛍光強度が最も高くなる。このため、R波発生から所定時間遅れて蛍光強度のピークが発生する。
【0092】
図16は、レーザカテーテルが斜め接触状態のときの蛍光強度とR波との相関を示す図である。
レーザカテーテル300の先端部が斜め接触状態のときの蛍光強度(例えば照射パワー900mW時)とR波との相関について説明する。斜め接触状態では、隙間に血液が存在し、心腔内の血流量の支配が強くなるために、蛍光強度のピークとR波が一致する。
以上のように、垂直接触状態及び斜め接触状態において、R波と蛍光強度のピークとの位相差は明らかに異なり、接触状態が維持されていれば位相差は一定である。
【0093】
そこで、制御部150は、算出した蛍光強度と取得した心電信号とをもとに、蛍光強度とR波の位相差が一定かどうかを判別することにより、電気伝導ブロックが形成されたかどうかを判別する(ステップS114)。制御部150は、蛍光強度とR波の位相差が一定であると判別すると、電気伝導ブロックが形成されていないと判別して(ステップS114でNo)、表示部170に、施術者に励起光照射の終了(ステップS116)及びレーザカテーテル300の移動を促す情報を表示させる(ステップS117)。施術者は、表示部170に表示された情報を参照し、励起光照射を一旦終了し、レーザカテーテル300を移動する。そして、再びステップS104以降の処理が行われる。
【0094】
図13は、レーザカテーテルの移動の軌跡を示す模式図である。
施術者は、レーザカテーテル300の先端部を肺静脈(PV、Pulmonary Vein)の異常興奮部位を取り囲む(図中一点鎖線もしくは点線)ように移動させる。
【0095】
一方、制御部150は、蛍光強度とR波の位相差が一定でないと判別すると、電気伝導ブロックが形成されたと判別して(ステップS114でYes)、施術者に励起光照射の終了及びレーザカテーテル300の抜去を促す表示命令を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、施術者に励起光照射の終了及びレーザカテーテル300の抜去を促す情報を表示画面に表示し、処理を終了する(ステップS115)。
【0096】
ここで、蛍光強度とR波の位相差が一定でない場合に電気伝導ブロックが形成されたと判別する原理について説明する。心筋細胞の傷害が進行すると、その心筋細胞は電気を伝導しなくなるため、心拍時に心筋細胞自身は収縮しない。この傷害された心筋細胞がボックス状に形成された電気伝導ブロックは、自身は収縮せず、近傍の心筋組織の収縮運動に追従するようにして動くこととなる。その結果、レーザカテーテル300の先端部の接触状態は不安定となり、刻々と変化する。その結果、蛍光強度とR波との位相差は不安定となる。言い換えれば、蛍光強度とR波との相関は、
図15及び
図16に示した相関を行ったり来たりするような状態となる。
【0097】
そこで、本実施形態の電気伝導ブロック形成の判別動作によれば、蛍光強度と心電図のR波との位相差により、電気伝導ブロックの形成をリアルタイムに判別できる。
具体的には、蛍光強度のピークがR波より所定時間遅れて発生するときは、電気伝導ブロックは形成されておらず、レーザカテーテル300の先端部は垂直接触状態にあると判別できる。蛍光強度のピークとR波とが略同時に発生するときは、電気伝導ブロックは形成されておらず、レーザカテーテル300の先端部は斜め接触状態にあると判別できる。蛍光強度のピークのR波に対する位相差が一定でなくなったときは、電気伝導ブロックが形成されたと判別できる。
【0098】
なお、蛍光強度とR波の位相差が一定でない場合に電気伝導ブロックが形成されたと判別できるので、蛍光強度とR波との相関を表示部170により表示画面に表示すれば、制御部150により電気伝導ブロック形成の有無を推定しなくても、施術者は蛍光強度とR波との相関から電気伝導ブロック形成の有無を推定できる。
【0099】
<第2の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態に係るPDT装置について説明する。以下の説明において、第1の実施形態のPDT装置1と同様の構成、機能及び動作等については説明を省略又は簡略し、異なる点を中心に説明する。
第2の実施形態に係る光学系及び検出部について説明する。
【0100】
[光学系及び検出部の構成]
図17は、本発明の第2の実施形態の光学系及び検出部等を示すブロック図である。
光学系120aは、ショートパスフィルタ121と、第1のレンズ122と、PBS123と、第1のダイクロイックミラー(Dichroic Mirror、以下「DM」と記述する。)126と、第2のDM127とを有する。
【0101】
検出部130aは、第1のフォトダイオード(Photodiode、以下「PD」と記述する。)131と、第2のPD132とを有する。
【0102】
第1のDM126は、PBS123より入射した光のうち、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させる。これにより、第1のDM126は、レーザカテーテル300からの蛍光の一部を反射し、その他の波長をもつレーザカテーテル300からの蛍光及び正反射光を透過させる。第1のDM126にて反射した蛍光は、第1のPD131に入射する。
第1のPD131は、第1のDM126から入射した蛍光を検出する。第1のPD131は、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。
【0103】
第2のDM127は、第1のDM126を透過した光のうち、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させる。これにより、第2のDM127は、第1のDM126を透過した蛍光の一部を反射し、その他の波長をもつ蛍光及び正反射光を透過させる。第2のDM127にて反射した蛍光は、第2のPD132に入射する。
第2のPD132は、第2のDM127から入射した蛍光を検出する。第2のPD132は、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。
【0104】
なお、光学系120aは第1のDM126及び第2のDM127と同様の構成を持つDMをさらに有してもよい。このようにして、最終的に、複数のDM126、127…はレーザカテーテル300からの蛍光を反射し、複数のPD131、132…はレーザカテーテル300からの蛍光を検出する。そして、複数のDM126、127…は、正反射光を透過する。
【0105】
なお、他の実施形態として、光源110としてパルス光源を用いて、光路長の違い(レーザカテーテル300の長さの2倍程度)からファイバ入射端面の正反射光を時間的に分離してもよい
【0106】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、R−R波間隔における蛍光強度のピークとR波との位相差をもとに接触モニターのステップを実行するものである。
第1の実施形態の電気伝導ブロック形成の判別動作で、R−R波間隔における蛍光強度のピークとR波との位相差をもとに、電気伝導ブロックの形成を判別した。この原理を接触モニター動作に利用してもよい。
【0107】
光源110は光学系120に第1の強度で励起光を出力する。検出部130は、光学系120より入射した蛍光を検出する。検出部130は、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。制御部150は、取得した電気信号をもとに蛍光強度を算出する。
【0108】
一方、心電取得部140は心電信号を取得し、取得した心電信号を制御部150に供給する。制御部150は、算出した蛍光強度と取得した心電信号とをもとに表示情報を生成し、生成した表示情報を含む表示命令を表示部170へ出力する。表示部170は、制御部150から表示命令を取得すると、表示命令に含まれる表示情報に基き、蛍光強度と心電図のR波との相関を表示画面に表示する。
【0109】
制御部150は、算出した蛍光強度と取得した心電信号とをもとに、レーザカテーテル300の先端部の接触状態を判別する(ステップS106)。具体的には、制御部150は、蛍光強度のピークがR波より所定時間遅れて発生すると判別するときは、レーザカテーテル300の先端部は垂直接触状態にあると判別する。制御部150は、蛍光強度のピークとR波とが同時に発生すると判別するときは、レーザカテーテル300の先端部は斜め接触状態にあると判別する。また蛍光ピーク強度からレーザカテーテル300の先端部と組織の内壁との間の血液量を推定することもできる。
【0110】
<第4の実施形態>
第4の実施形態は、自家蛍光のスペクトルの違いを利用して接触モニターのステップを実行するものである。なお、自家蛍光とは組織自らが発する光を指し、薬剤からの蛍光を意味するものではない。すなわち、第4の実施形態では薬剤を用いない診断方法を示している。
【0111】
光源110は、心筋組織の自家蛍光スペクトル特性と血液の自家蛍光スペクトル特性の違いを判別しやすい励起光を出力する。検出部130は、入射した蛍光を検出する。検出部130は、検出した蛍光の強度を電気信号として制御部150に出力する。制御部150は、取得した電気信号をもとに蛍光スペクトルを算出する。制御部150は、算出した蛍光スペクトルが心筋組織の自家蛍光スペクトル特性と血液の自家蛍光スペクトル特性の何れを示すかを判別する。制御部150は、算出した蛍光スペクトルを心筋組織の及び血液の自家蛍光スペクトル特性と比較して、レーザカテーテル300の先端部の接触状態を判別する(ステップS106)。具体的には、制御部150は、算出した蛍光スペクトルが心筋組織の自家蛍光スペクトル特性を示すと判別すると、レーザカテーテル300の先端部が垂直接触状態にあると判別する。制御部150は、算出した蛍光スペクトルが血液の自家蛍光スペクトル特性を示すと判別すると、レーザカテーテル300の先端部が非接触状態にあると判別する。制御部150は、算出した蛍光スペクトルが何れの自家蛍光スペクトル特性も示していないと判別すると、レーザカテーテル300の先端部が斜め接触状態にあると判別する。
【0112】
自家蛍光スペクトルの違いを利用した接触モニターは、血管閉塞部(例えば、動脈硬化性疾患など)を有する疾患の治療におけるレーザカテーテルの接触モニターにも有用である。
図18は、血管内腔でのレーザカテーテルの接触状態を示す模式図である。
血管閉塞部を有する疾患の治療において、レーザカテーテル300の先端部が血管20の血管閉塞部(粥腫)21に接触しているか(
図18(a)参照)、血管壁22に接触しているか(
図18(b)参照)を判別することが求められる。ここで、コラーゲン、エラスチン、脂質等の組成比は、血管閉塞部と血管壁との間で異なる。具体的には、血管閉塞部(動脈硬化)の組成比は、水70%、コラーゲン5%、エラスチン6%、脂質9%である。血管の組成比は、水73%、コラーゲン6.5%、エラスチン10.5%、脂質1%である。このため、血管閉塞部の自家蛍光スペクトル特性と血管壁の自家蛍光スペクトル特性とは異なったものとなる。この特性の違いを判別しやすい励起光を被治療部位に照射して、蛍光を計測すれば、レーザカテーテル300の先端部が血管閉塞部21と血管壁22との何れに接触しているかを判別できる。なお、自家蛍光スペクトルの違いを利用した接触モニターでは、組成比から粥腫の有無を判別できるので、血管径の大きさから粥腫の有無を判別するIVUS(Intravascular Ultrasound、血管内超音波検査)よりも正確な診断を行うことができる。
【0113】
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の形態が考えられる。
【0114】
上記実施形態では、レーザカテーテル300をPDT装置1のコネクタ210に着脱可能に接続したが、レーザカテーテル300をPDT装置1に一体に設けてもよい。
上記実施形態では、PDT装置本体100にチューブ200を設け、チューブ200の先端にコネクタ210を設けたが、コネクタ210をPDT装置本体100に設けてもよい。
上記実施形態では、PBS123を用いたが、これに代えてDMを用いてもよい。
【0115】
上記実施形態では、制御部150は、施術者に所定の制御を促す情報を表示部170により報知したが、これに限定されない。PDT装置1にスピーカ部を設け、制御部150は、施術者に所定の制御を促す際、音声出力命令を生成し、生成した音声出力命令をスピーカ部に出力してスピーカ部に音声を出力させることにより施術者に所定の制御を促してもよい。