【実施例】
【0038】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[X線回折]
フィリップス社製 X線回折装置 モノクロメーターを用いてX線回折測定を行った。
[EBSD(Electron Backscatter Diffraction;電子線後方散乱回折法]
EDAX社製 TSL−01Mにより測定した。
[TEM(透過型電子顕微鏡)観察]
JEOL社製 2000EXにより測定した。
[硬さ[HV]]
島津製作所社製 HMVにより測定した。
[0.2%耐力、引張強度(UTS)、伸び]
島津製作所社製 DSS−10Tにより測定した。
[RD//E及びTD//E]
日本テクノプラス社製 弾性率測定装置 JE−RTにより測定した。
【0040】
[転位密度]
転位密度は、T. Ungerにより提案されたWarren-Averbach methodにコントラストファクターC(歪み感受性の結晶面依存性に関する定数)を導入したModified Warren-Averbach method(J. Phys. Chem. Sol., 62, 2001, 1935-1941)を用いて算出した。
試料のX線回折プロフィールを測定し、生のプロフィールに
バックグラウンド除去後、測定誤差因子の校正をし、フーリエ変換に通して、各回折プロフィールからフーリエ長さ(L)に対応するフーリエ係数A(L)を求め、次の式(1)〜式(3)で表されるWarren-Averbachの計算式を用いて、組織の転位密度と性格パラメータが算出できる。
【0041】
【数1】
【0042】
式(1)〜式(3)中、bはバーガースベクトル、R
eは転位による歪み
場の大きさ、ρは転位密度、K=2sinθ/λ、Oは転位間距離に基づく定数、A
s(L)は結晶粒径に基づくフーリエ係数、Lはコヒーレントな回折条件を満たす距離(フーリエ長さ)を示す。
式(2)に示すように、X(L)は式(1)の1次の項の係数であり、この式(2)は式(3)に変形できる。従って、X(L)/L
2をlnLに対してプロットすることにより、転位密度ρを求めることができる。なお、本実施例では、フィリップス社製 X線回折装置 モノクロメーターを用いてX線回折プロフィールを測定し、解析ソフトはオリジン(OriginLab Corporation社製)を用いた。
【0043】
[結晶子サイズ]
結晶子サイズは、結晶子サイズ=Kλ/(βcosθ)で表されるScherrerの式を用い
て求めた。ここで、KはScherrer定数、λは使用X線の波長、βはX線回折ピークの半値幅、θはX線入射角2θを示す。なお、結晶子サイズとはサブグレインの大きさを表す。
【0044】
以下の実施例では、比較として、汎用合金であるSUS316Lと、Co−35Ni合金を使用した。Co−35Ni合金は、
図3に示すように、本実施例のCo−Ni基合金と室温付近での積層欠陥エネルギーが室温付近で同程度であり、また、積層欠陥エネルギーの温度依存性がほぼ等しいため、比較材として選択した。ここで、
図3に示すのは、fcc(面心立方格子)構造であるγ相からhcp(最密六方格子)構造であるε相に相変態する合金系の積層欠陥エネルギー(SFE:Stacking Fault Energy)である。SFEを熱力学的に計算する方法は、Mater. Sci. Eng. A 387-389 (2004) 158-162に記載されており、積層欠陥エネルギーγ
SFEは次に示す式(4)および式(5)により算出することができる。
【0045】
【数2】
【0046】
ここで、ΔG
γ→εはγ→ε変態に伴うGibbsエネルギー変化、σ
γ/εはγ/ε境界の界面エネルギー、aはfcc相の格子定数(=0.354nm)、Nはアボガドロ数(=6.022×10
23mol
−1)であり、ΔG
γ→εにはThermo-Calc (Thermo-Calc Software社製:ver.4.1.3.41,database:FE ver.6)用いて算出した値を使用した。また、式(4)における界面エネルギーの温度依存性は小さく、遷移金属ではその値は変わらないことから、本実施例では表面エネルギー項である2σ
γ/ε=15mJm
−2として計算を行った。
【0047】
以下に示す実施例では、高周波真空誘導溶解炉にて、Ni:31質量%、Cr:19質量%、Mo:10.1質量%、Fe:2質量%、Ti:0.8質量%、Nb:1質量%及び残部Coの成分組成で各元素を配合、溶解して炉冷し、得られた鋳塊を100℃で熱間鍛造した後、1050℃で焼きなましを行うことにより得られた合金材(以下、「実施例用合金材」と称する。)を使用して各Co−Ni基合金を作製した。
また、比較例では、高周波真空誘導溶解炉にて、Ni:35質量%及び残部Coの成分組成で各元素を配合、溶解して炉冷し、得られた鋳塊を100℃で熱間鍛造下後、1000℃で焼きなましを行うことにより得られた合金材(以下、「比較例用合金材」と称する。)を使用して各Co−35Ni合金を作製した。
なお、以下の実施例及び比較例における熱処理は、真空中、昇温速度8℃/秒、冷却速度12℃/秒で行った。
【0048】
(実施例1)
実施例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施すことにより、Co−Ni基合金を作製した。
(比較例1)
比較例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施すことにより、Co−35Ni合金を作製した。
(比較例2)
比較例用合金材に加工率50%の冷間圧延を施すことにより、Co−35Ni合金を作製した。
【0049】
実施例1および比較例1の各合金についてX線回折測定を行った。
図4(a)は実施例1のCo−Ni基合金の圧延集合組織(111)の正極点図であり、
図4(b)は比較例1のCo−35Ni
合金の圧延集合組織(111)の正極点図である。また、
図5(a)は
図4(a)に示す正極点図のGoss方位、Copper方位およびBrass方位のピーク強度をプロットしたグラフであり、
図5(b)は
図4(b)に示す正極点図のGoss方位、Copper方位およびBrass方位のピーク強度をプロットしたグラフである。
図4より、実施例1のCo−Ni基合金と比較例1のCo−35Ni合金は、圧延方向RDにGoss{110}<001>があり、
図5の各方位のピーク強度比よりも集合組織においてGoss方位が主方位であることがわかった。
【0050】
次に、実施例1、比較例1、2の各合金の集合組織をTEM(透過型電子顕微鏡)により観察した。
図6は、実施例1のCo−Ni基合金のTEM明視野像写真であり、
図7は、
図6をさらに拡大したTEM明視野像写真である。
図7の符号AおよびBで示す領域のディフラクションパターンはリング状となっており、これらの領域は様々な方位を有する多結晶化した微細領域であることがわかる。また、
図7の符号C〜Dで示す線状に見える領域のディフラクションパターンは、ディフラクションスポットが点状または規則性を有しており、ディフラクションスポットの位置関係から等しい方位を持った変形双晶であることが分かる。実施例1のCo−Ni基合金は、
図6の広域写真で示すように、線状に見える変形双晶bが、破線で示した微細領域aにより格子状に分断されていた。
図8は比較例1のCo−35Ni合金のTEM明視野像写真であり、
図9は比較例2のCo−35Ni合金のTEM明視野像写真である。
図8および
図9に示すように、比較例1および2の集合組織は、幅広バンド状の大きな変形双晶の組織となっており、実施例1のCo−Ni基合金ような格子状の変形双晶は見られなかった。
【0051】
(実施例2:サンプルNo.1〜7)
実施例用合金材に表1記載の加工率で冷間圧延を施すことにより、サンプルNo.1〜7のCo−Ni基合金を作製した。得られた各Co−Ni基合金についてX線回折測定および組織観察を行い、転位密度及び結晶子サイズを求めた。得られた結果を表1に併記した。表1には冷間圧延を施していない(加工率0%)実施例用合金材をサンプルNo.0として併記した。なお、表1において、EBSD(電子線後方散乱回折法)は、観察可能な場合を○、観察不可能な場合を×として判定した。また、
図10に、冷間圧延加工率毎のCo−Ni基合金の転位密度および結晶子の関係をプロットしたグラフを示す。なお、
図10において、丸印で結晶子サイズの各プロット点を示し、菱形印で転位密度の各プロット点を示している。
【0052】
【表1】
【0053】
表1および
図10の結果より、加工率15%以上の冷間圧延を施したCo−Ni基合金は、転位密度が10
15m
−2以上となっており、加工率15〜90%で冷間圧延を施したCo−Ni基合金は、集合組織においてGoss方位が主方位となることが確認された。
【0054】
さらに、No.1〜No.7のCo−Ni基合金、及び加工率15%から90%まで変化させたCo−35Ni合金について、圧延集合組織(111)、(001)、(110)の正極点図を測定し、これらの正極点図から3次元結晶方位分布関数(ODF)を計算し、Bunge方式による角度φ
1、φ、φ
2の圧延集合組織の成分を求め、φ
2=45度で表示される圧延集合組織の成分の強度比より、最も強度の高い成分を各合金の圧延集合組織の主方位とした。表2にODFマップから得られた圧延集合組織の強度比=(求める成分の強度)/(全成分の強度の和)を示す。表2に示すように、No.1〜No.7のCo−Ni基合金および比較例のCo−35Ni合金には、Goss方位、Brass方位、Copper方位の他に、Copper twin方位およびDillamore方位が含まれていた。得られた各方位成分のうち、Goss方位、Copper方位およびBrass方位のピーク強度比をプロットしたグラフを
図11に示す。
図11(a)はNo.1〜No.7のCo−Ni基合金の各方位成分のピーク強度比であり、
図11(b)は比較例のCo−35Ni合金各方位成分のピーク強度比である。
図11(a)の結果より、実施例2のCo−Ni基合金の集合組織において、Goss方位の割合は35〜55%の範囲内となっていた。また、
図12に、加工率70%のCo−Ni基合金、及び加工率70%のCo−35Ni合金のODFマップを示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(実施例3)
実施例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に、800℃にて熱処理を施した。800℃、5分間の熱処理を行ったCo−Ni基合金のEBSDと、800℃、60分間の熱処理を行ったCo−Ni基合金のEBSDを、熱処理前のCo−Ni基合金の(111)正極点図と共に
図13に示した。その結果、
図13に示すように、実施例3のCo−Ni基合金は、800℃、60分間の熱処理を行ってもEBSDピークは殆ど変化せず、圧延方向RDにGoss{110}<001>があった。したがって、実施例3のCo−Ni基合金は、熱処理後の集合組織においてGoss方位が主であり、熱処理前の集合組織の主方位が保たれていた。
【0057】
(比較例3)
比較例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−35Ni合金を作製した。得られたCo−35Ni合金に、350℃にて熱処理を施した。350℃、5分間の熱処理を行ったCo−35Ni合金のEBSDと、350℃、60分間の熱処理を行ったCo−35Ni合金のEBSDを、熱処理前のCo−35Ni合金の(111)正極点図と共に
図13に示した。その結果、
図13に示すように、比較例3のCo−35Ni合金は、350℃の熱処理を行うことにより、圧延方向RDにあったGoss{110}<001>のピークが消失し、圧延幅方向TDに新たなピークが表れた。したがって、Co−35Ni合金は、熱処理を行うことにより、集合組織の主方位が変化した。
【0058】
(実施例4)
実施例用合金材に加工率90%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に、1050℃、1時間の熱処理を施した。
図14(a)は熱処理前のCo−Ni基合金の(111)正極点図であり、
図14(b)は熱処理後のCo−Ni基合金の(111)正極点図である。
図14(a)および
図14(b)に示すように、実施例4のCo−Ni基合金は、1050℃、1時間の熱処理を行っても(111)正極点図のピークは殆ど変化せず、圧延方向RDにGoss{110}<001>があった。したがって、実施例4のCo−Ni基合金は、熱処理後の集合組織においてGoss方位が主であり、熱処理前の集合組織の主方位が保たれていた。
【0059】
(比較例4)
SUS316Lに加工率66%の冷間圧延を施してSUS316L−CRを作製した。得られたSUS316L−CRに、1050℃、1時間の熱処理を施した。
図14(c)は熱処理前のSUS316L−CRの(111)正極点図であり、
図14(d)は熱処理後のSUS316L−CRの(111)正極点図である。
図14(c)および
図14(d)に示すように、SUS316Lは、1050℃、1時間の熱処理を行うことにより、(111)正極点図が著しく変化していた。したがって、SUS316Lは、熱処理を行うことにより、集合組織の主方位が変化した。
【0060】
(実施例5)
実施例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に、800℃にて熱処理を施した。800℃で、熱処理時間を変化させたCo−Ni基合金についてEBSDを測定した。
図15は、得られたEBSDより再結晶粒の平均粒径を求め、熱処理時間に対してプロットしたグラフである。また、
図16は、得られたEBSDより再結晶している領域の割合を求め、熱処理時間に対してプロットしたグラフである。さらに、
図17(a)に、800℃で、処理時間5分、20分、60分の熱処理を行ったCo−Ni基合金のEBSDのKA
M(Kernel Average Misorientation)像を示した。
【0061】
(比較例5)
比較例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−35Ni合金を作製した。得られたCo−35Ni合金に、350℃にて熱処理を施した。350℃で、熱処理時間を変化させたCo−35Ni合金についてEBSDを測定した。得られたEBSDより再結晶粒の平均粒径を求め、熱処理時間に対して
図15にプロットした。また、得られたEBSDより再結晶している領域の割合を求め、熱処理時間に対して
図16にプロットした。
さらに、
図17(b)に、350℃で、処理時間0.5分、2.5分、60分の熱処理を行ったCo−35Ni合金のEBSDのKA
M像を示した。
【0062】
図15、
図16、および
図17の結果より、比較例5のCo−35Ni合金は再結晶および粒成長の進行が速く、再結晶粒も350℃、60分間の熱処理により粒径10μm程度まで成長していた。これに対し、実施例5のCo−Ni基合金は再結晶および粒成長の進行が遅く、熱処理時間による再結晶粒の粒径の変化が小さく、800℃、60分間の熱処理を行っても再結晶粒の粒径は2μm程度であった。この結果より、実施例5のCo−Ni基合金では、
図2(a)に示すように、熱処理により転位密度が高い領域中に転位密度が低い領域が複数存在する組織となり、再結晶粒が成長したと考えられる。すなわち、実施例5のCo−Ni基合金では熱処理により鈴木効果が発現して転位が拡張し、転位の回復が遅れて粒成長が遅くなっていると考えられる。
【0063】
(実施例6)
実施例用合金材に加工率15%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に、700℃、1時間の熱処理を施した。
図18は、熱処理前のCo−Ni基合金と熱処理後のCo−Ni基合金の硬さ[HV]をプロットしたグラフである。
図19(a)は熱処理前のCo−Ni基合金のTEM明視野像写真であり、
図19(b)は熱処理後のCo−Ni基合金のTEM明視野像写真である。
【0064】
(比較例6)
比較例用合金材に加工率15%の冷間圧延を施してCo−35Ni合金を作製した。得られたCo−35Ni合金に、350℃、1時間の熱処理を施した。熱処理前のCo−Ni基合金と熱処理後のCo−35Ni合金の硬さ[HV]を
図18にプロットした。
図19(c)は熱処理前のCo−35Ni合金のTEM明視野像写真であり、
図19(d)は熱処理後のCo−35Ni合金のTEM明視野像写真である。
【0065】
図18の結果より、比較例6のCo−35Ni合金は、350℃、1時間の熱処理を行うことにより、硬さが著しく低下していた。これに対し、実施例6のCo−Ni基合金は、700℃、1時間の熱処理を行うことにより、硬さが向上していた。この結果より、実施例6のCo−Ni基合金では、熱処理により鈴木効果による転位の固着が起こり、すべりが難しくなり、硬さが向上したものと考えられる。また、
図19に示すように、実施例6のCo−Ni基合金は、700℃、1時間の熱処理を行うことにより、
図19(b)に細かい縦線状に見える積層欠陥が多く発生しており、鈴木効果により転位が拡張・固着していることがわかる。これに対し、
図19(c)および
図19(d)に示す比較例6のCo−35Ni合金では、350℃、1時間の熱処理を行うことにより、線状に見える転位が減少しており、転位が回復していることがわかる。
【0066】
(実施例7)
実施例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に、800℃にて、熱処理時間を変化させて熱処理を行い、熱処理時間によるCo−Ni基合金の硬さの変化を測定した。結果を
図20にプロットした。
【0067】
(比較例7)
比較例用合金材に加工率70%の冷間圧延を施してCo−35Ni合金を作製した。得られた350℃または500℃の熱処理を熱処理時間を変化させて行い、熱処理温度および熱処理時間によるCo−35Ni合金の硬さの変化を測定した。結果を
図20にプロットした。
【0068】
図20の結果より、Co−35Ni合金は熱処理を行うことにより、硬さが著しく低下していた。これに対し、実施例7のCo−Ni基合金では、鈴木効果の発現により800℃、1分の熱処理で硬さが向上しており、その後も鈴木
効果により転位の回復が遅れることにより、硬さの変化がゆるやかであった。
【0069】
(実施例8)
実施例用合金材に加工率90%の冷間圧延を施してCo−Ni基合金を作製した。得られたCo−Ni基合金に熱処理時間1時間、熱処理温度を350℃から1050℃まで変化させて熱処理を行い、熱処理温度による硬さの変化を測定した。結果を
図21にプロットした。
【0070】
(比較例8)
比較例用合金材に加工率90%の冷間圧延を施してCo−35Ni
合金を作製した。得られたCo−35Ni合金に熱処理時間1時間で350℃または600℃の熱処理を行い、熱処理温度による硬さの変化を測定した。結果を
図21にプロットした。
【0071】
図21の結果より、Co−35Ni合金は熱処理を行うことにより、硬さが著しく低下していた。これに対し、実施例8のCo−Ni基合金では、350℃以上の熱処理を行うことにより硬さが向上しており、350℃以上の熱処理により鈴木効果が発現することが確認できた。また、加熱の初期段階で鈴木効果が発現するので、加熱温度は1050℃でもよいが、800℃以上では鈴木効果による転位の固着よりも再結晶が優勢となり、硬さが低下する。そのため、加熱温度は350℃〜750℃の範囲がより好ましいことが確認された。
【0072】
(実施例9:サンプルNo.8〜14)
実施例用合金材に加工率90%の冷間圧延を施すことにより、サンプルNo.8〜14のCo−Ni基合金を作製した。得られた各Co−Ni基合金に表3に示す熱処理条件で熱処理を施した。熱処理後の各Co−Ni基合金についてX線回折測定、組織観察、力学特性の測定を行った。得られた結果を表3に併記した。なお、表3において、EBSD(電子線後方散乱回折法)は、観察可能な場合を○、観察不可能な場合を×として判定した。
【0073】
【表3】
【0074】
表3の結果より、650℃以上の温度で熱処理されたCo−Ni基合金は、いずれも集合組織がGoss方位を主方位としており、熱処理前の集合組織の主方位と同一であった。また、熱処理を施すことにより、力学特性が向上していた。
【0075】
(実施例10:サンプルNo.15〜22)
実施例用合金材に加工率90%の冷間圧延を施すことにより、サンプルNo.15〜22のCo−Ni基合金を作製した。得られた各Co−Ni基合金に表4に示す熱処理条件で熱処理を施した。熱処理後の各Co−Ni基合金についてX線回折測定、組織観察、力学特性の測定を行った。得られた結果を表4に併記した。
【0076】
【表4】
【0077】
表4の結果より、700℃にて0.5時間以上の時間熱処理されたCo−Ni基合金は、いずれも集合組織がGoss方位を主方位としており、熱処理前の集合組織の主方位と同一であった。また、熱処理を施すことにより、力学特性が向上していた。