(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736144
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】トラクタにおける運転操作装置
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20150528BHJP
B60K 26/04 20060101ALI20150528BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20150528BHJP
B60K 20/02 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
F02D29/00 B
B60K26/04
B62D49/00 F
B60K20/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-237184(P2010-237184)
(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公開番号】特開2012-87747(P2012-87747A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 文雄
(72)【発明者】
【氏名】横山 和寿
(72)【発明者】
【氏名】白水 崇之
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊憲
(72)【発明者】
【氏名】中西 龍哉
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−279945(JP,A)
【文献】
特開平10−103123(JP,A)
【文献】
特開2008−120208(JP,A)
【文献】
実開平06−074951(JP,U)
【文献】
特開2009−26(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 − 29/06
B60K 26/04
B60K 20/02
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機器(7)を備えたトラクタ(1)の運転操作コラム(12)上に、前記トラクタ(1)の走行変速機構(6)を変速操作する変速レバー(13)と、前記トラクタ(1)に搭載したエンジン(5)の回転数を調節するアクセルレバー(14)と、前記アクセルレバー(14)を最大操作位置に操作したときの上限のエンジン回転数を調節して設定する設定手段(16)とを備える運転操作装置において、
前記アクセルレバー(14)を最大操作位置に操作したときの上限のエンジン回転数を前記設定手段(16)で設定するか、前記変速レバー(13)を最高速度位置に操作したときの上限の走行速度を前記設定手段(16)で設定するかを選択する選択スイッチ(17)を更に備え、
前記アクセルレバー(14)と前記変速レバー(13)と前記設定手段(16)とは、前記運転操作コラム(12)上に、前記アクセルレバー(14)と前記変速レバー(13)とが横方向に並び且つ前記設定手段(16)が前記両レバー(13)(14)の後部で隣接するように配置し、
前記選択スイッチ(17)は、前記運転操作コラム(12)上のうち前記アクセルレバー(14)、前記変速レバー(13)及び前記設定手段(16)の近傍に位置していて、前記アクセルレバー(14)側に操作すると前記設定手段(16)が前記上限のエンジン回転数を設定し、前記変速レバー(13)側に操作すると前記設定手段(16)が前記上限の走行速度を設定するように、前記アクセルレバー(14)側と前記変速レバー(13)側とに選択操作可能なシーソースイッチ又はレバースイッチに構成している、
トラクタにおける運転操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラク
タにおいて、これを運転操作するための操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラクタ等の走行作業機においては、従来から良く知られているように、エンジンの回転数を、アクセルレバー等のアクセル操作具の操作によって例えば最大出力時の回転数等のような所望の回転数に設定し、この状態で、変速レバー等の変速操作具による変速操作によって、各種作業に適した所望の走行速度にするという構成になっている。
【0003】
この場合、先行技術としての特許文献1及び2には、トラクタ等の走行作業機において、走行変速機構を変速操作する変速レバー等の変速操作具に対し、当該変速操作具を最大操作位置に操作したときにおける走行速度を調節して設定する設定手段を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−127692号公報
【特許文献2】特開2007−230518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この先行技術の構成における設定手段は、変速操作具を最大操作位置に操作したときにおける走行速度の調節・設定であり、エンジン回転数を所望の回転数に調節して設定するものではないから、エンジンを、最大出力を得ることができる最高出力回転数よりも低い回転数で使用する場合には、前記アクセル操作具を、前記低い回転数にすることのために、当該アクセル操作具における最大操作位置よりも手前の中間位置に操作するようにしなければならないから、エンジン回転数の設定が判り難いという問題があった。
【0006】
本発明は、この問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題を達成するため請求項1は、
「作業機器(7)を備えた
トラクタ(1)
の運転操作コラム(12)上に、
前記トラクタ(1)の走行変速機構(6)を変速操作する変速
レバー(13)と、
前記トラクタ(1)に搭載したエンジン(5)の回転数を調節するアクセル
レバー(14)と、前記アクセル
レバー(14)を最大操作位置に操作したとき
の上限のエンジン回転数を調節して設定する設定手段(16)とを備
える運転操作装置において、
前記アクセル
レバー(14)を最大操作位置に操作したとき
の上限のエンジン回転数を前記設定手段(16)
で設定するか、前記変速
レバー(13)を最高速度位置に操作したとき
の上限の走行速度を前記設定手段(16)
で設定するかを選択する選択スイッチ(17)を更に備え、
前記アクセル
レバー(14)と前記変速
レバー(13)と前記設定手段(16)とは、前
記運転操作コラム(12)上に、前記アクセル
レバー(14)と前記変速
レバー(13)とが横方向に並び且つ前記設定手段(16)が前記両
レバー(13)(14)の後部で隣接するように配置し、
前記選択スイッチ(17)は、前記運転操作コラム(12)上のうち前記アクセル
レバー(14)、前記変速
レバー(13)及び前記設定手段(16)の近傍に位置
していて、前記アクセル
レバー(14)側に操作する
と前記設定手段(16)が
前記上限のエンジン回転数
を設
定し、前記変速
レバー(13)側に操作すると前記設定手段(16)が前記上限の走行速度
を設
定するように、
前記アクセルレバー(14)側と前記変速レバー(13)側とに選択操作可能なシーソースイッチ又はレバースイッチに構成している、」
ことを特徴としている。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【発明の効果】
【0012】
請求項1によると、アクセル
レバーを、最大操作位置に操作することにより、エンジン回転数を、作業者が予め設定手段にて調節・設定した所望のエンジン回転数にすることができる。
【0013】
これにより、所望のエンジン回転数にすることが迅速に正確にできるとともに、エンジン回転数の把握が至極容易にできるから、走行作業機の操作性を大幅に向上できる。
【0014】
次に、選択スイッチの操作で、前記アクセル
レバーを最大操作位置に操作したとき
の上限のエンジン回転数を前記設定手段によって調節・設定する場合と、前記変速
レバーを最高速度位置に操作したとき
の上限の走行速度を前記設定手段によって調節・設定する場合とに選択することができることにより、前記設定手段を、前記アクセル
レバーと前記変速
レバーとの両方に別々に設ける必要がなく、両方に共用できるから、部品点数が少なくできて、コストを低減できる。
【0015】
また、前記した選択が、選択スイッチのアクセル
レバー側への操作と、選択スイッチの変速
レバー側への操作とで、間違いを少なくして的確にできるとともに、選択したことの把握が容易にできるから、更に高い操作性を得ることができる。
【0016】
更にまた、本願発明によると、複数の組み合わせモードを、モード切換えスイッチの操作によって、例えば各種の作業機器による作業を行いながら直進走行するという作業走行モードとか、枕地等において作業機器による作業を止めて旋回走行するという旋回走行モードとかに、至極簡単に切り換えることができるので、作業性を向上できる。
【0017】
加えて本願発明によると、例えば、作業機器を下降しての作業走行モードから作業機器を上昇しての旋回走行モードに移行したり、作業機器を上昇しての旋回走行モードから作業機器を下降しての作業走行モードに移行したりすることが、前記作業機器に対するワンタッチ昇降スイッチの操作によって、迅速に効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】トラクタにおける運転操作コラムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、
図1〜
図3の図面について説明する。
【0021】
このトラクタ1は、左右の前輪2と同じく左右の後輪3とで支持される走行機体4を備え、この走行機体4には、エンジン5が搭載されるとともに、走行変速機構6が搭載されているほか、例えばロータリー式耕うん機等のような各種の作業機器7が、昇降機構8にて昇降動するように装着されている。
【0022】
更に、前記走行機体4の上面には、運転キャビン9が設けられており、この運転キャビン9内には、操縦座席10、操縦ハンドル11及び運転操作コラム12が設けられている。
【0023】
前記運転操作コラム12には、
図2に示すように、前記走行変速機構6に対する変速レバー(変速操作具)13と、前記エンジン5に対するアクセルレバー(アクセル操作具)14とが、横方向に並べて設けられており、この変速レバー13及びアクセルレバー14は、そのいずれも、トラクタ1の前後方向に回動操作するという方式である。
【0024】
また、前記走行機体4のうち前記運転操作コラム12等の適宜箇所には、前記作業機器7を昇降操作するためのワンタッチ昇降スイッチ20(
図3参照)が設けられている。
【0025】
前記走行機体4に搭載したコントローラ15は、前記変速レバー13の操作信号を入力として、前記走行変速機構6を変速作動することに加えて、前記アクセルレバー14の操作信号を入力として、前記エンジン5を変速作動する。
【0026】
換言すると、前記コントローラ15は、前記変速レバー13を、
図2に矢印A1で示すように後ろ方向に回動操作したときに走行速度を速くし、矢印A2で示すように前方向に回動操作したときに走行速度を遅くするという構成である。
【0027】
また、前記コントローラ15は、前記アクセルレバー14を、
図2に矢印B1で示すように後ろ方向に回動操作したときにエンジン回転数を速くし、矢印B2で示すように前方向に回動操作したときにエンジン回転数を遅くするという構成である。
【0028】
より詳しくは、前記変速レバー13を、矢印A1で示すように、後ろ方向に限度の最大操作位置にまで回動操作したとき、上限の走行速度になる構成である一方、前記アクセルレバー14を、矢印B1で示すように後ろ方向に限度の最大操作位置にまで回動操作したとき、前記エンジン5における回転数が当該エンジン5において最大出力を得ることができる上限のエンジン回転数になるように構成されている。
【0029】
また、前記運転操作コラム12のうち、前記変速レバー13及び前記アクセルレバー14の後部で、これらに隣接した部位には、
図2に示すように、設定ダイヤル(設定手段)16と、シーソースイッチ又はレバースイッチに構成した選択スイッチ17とが設けられている。
【0030】
更に、前記コントローラ15は、前記設定ダイヤル16及び選択スイッチ17からの信号を入力として、以下に述べるように、前記走行速度及びエンジン回転数を制御するようにしている。
【0031】
すなわち、前記設定ダイヤル(設定手段)16は、前記選択スイッチ17を前記アクセルレバー14側に操作した場合において、前記アクセルレバー14を最大操作位置に回動操作したときにおける上限のエンジン回転数を調節して設定するという構成であり、前記選択スイッチ17を前記変速レバー13側に操作した場合において、前記変速レバー13を最高速度位置に回動操作したときにおける上限の走行速度を調節して設定するという構成である。
【0032】
この構成において、前記選択スイッチ17を前記アクセルレバー14側に操作した場合には、前記アクセルレバー14を、矢印B1で示すように後ろ方向に、最大操作位置にまで回動操作することにより、エンジン回転数を、作業者が予め設定ダイヤル16によって調節・設定した所望のエンジン回転数にすることができる。
【0033】
また、前記選択スイッチ17を前記変速レバー13側に操作した場合には、前記変速レバー13を、矢印A1で示すように後ろ方向に、最大操作位置にまで回動操作することにより、走行速度を、作業者が予め設定ダイヤル16によって調節・設定した所望の走行速度にすることができる。
【0034】
つまり、前記選択スイッチ17は、前記アクセルレバー14を最大操作位置に回動操作したときにおけるエンジン回転数を前記設定ダイヤル16によって調節・設定する場合と、前記変速レバー13を最高速度位置に回動操作したときにおける走行速度を前記設定ダイヤル16によって調節・設定する場合とに選択する機能を備えている。
【0035】
ところで、ロータリー式耕うん機等のような作業機器7を装着したトラクタ1においては、前記設定ダイヤル16の調節・設定により、前記作業機器7による作業を行いながら作業速度で直進走行するという作業走行モードにしたり、前記作業機器7による作業を止めて遅い速度で旋回走行するという旋回走行モードにしたりするというように、前記設定ダイヤル16にて調節・設定したエンジン回転数と、前記設定ダイヤル16にて調節・設定した走行速度との組み合わせを一つのモードとし、この組み合わせモードの複数にすることを行なうようにしている。
【0036】
そこで、本発明の実施の形態においては、前記コントローラ15に記憶手段18を設けて、この記憶手段18によって、前記複数の各組み合わせモード、例えば、前記作業走行モード及び旋回走行モードを記憶しておく。そして、この記憶しておいた複数の組み合わせモードのうちから一つの組み合わせモードを、
図2に示すように、前記変速レバー(変速操作具)13等の適宜箇所に設けたモード切換えスイッチ19によって選択するように構成する。
【0037】
この構成によると、前記モード切換えスイッチ19の操作によって、例えば各種の作業機器による作業を行いながら直進走行するという作業走行モードとか、枕地等において作業機器による作業を止めて旋回走行するという旋回走行モードとかに、至極簡単に切り換えることができる。
【0038】
更に、本発明の実施の形態においては、前記モード切換えスイッチ19にて切り換えられた各組み合わせモードを、前記トラクタ1に装着された作業機器7を昇降操作するワンタッチ昇降スイッチ20に連動させるという構成にしている。
【0039】
この構成によると、例えば、作業機器7を下降しての作業走行モードから作業機器7を上昇しての旋回走行モードに移行したり、作業機器7を上昇しての旋回走行モードから作業機器7を下降しての作業走行モードに移行したりすることが、前記作業機器7に対するワンタッチ昇降スイッチ20の操作によって、迅速に行なうことができる。
【0040】
なお、前記複数の組み合わせモードとしては、前記した作業走行モード及び旋回走行モードに限るものでないことはいうまでもない。
【0041】
また、前記実施の形態は、走行作業機としてトラクタ1に適用した場合であったが、その適用は前記トラクタ1に限られるものではなく、乗用型田植機等の他の走行作業機にも当然に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 トラクタ(走行作業機)
5 エンジン
7 作業機器
8 昇降機構
12 運転操作コラム
13 変速レバー(変速操作具)
14 アクセルレバー(アクセル操作具)
16 設定ダイヤル(設定手段)
17 選択スイッチ
18 記憶手段
19 モード切換えスイッチ
20 ワンタッチ昇降スイッチ