特許第5736163号(P5736163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736163エンジン制御器用の電気エネルギーを供給する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736163
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】エンジン制御器用の電気エネルギーを供給する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02N 3/02 20060101AFI20150528BHJP
   F02N 11/14 20060101ALI20150528BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   F02N3/02 Z
   F02N11/14
   F02D45/00 395
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-274639(P2010-274639)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2011-127595(P2011-127595A)
(43)【公開日】2011年6月30日
【審査請求日】2013年10月18日
(31)【優先権主張番号】10 2009 058 971.6
(32)【優先日】2009年12月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598052609
【氏名又は名称】アンドレアス シュティール アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167151
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト ゴレンフロ
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ ロイフェン
(72)【発明者】
【氏名】エバーハルト シーバー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント シーアーリング
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−169553(JP,A)
【文献】 特開平05−202833(JP,A)
【文献】 実開平01−158568(JP,U)
【文献】 独国特許出願公開第04413270(DE,A1)
【文献】 特開昭63−297767(JP,A)
【文献】 特開2008−223531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 3/02
F02N 11/14
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で操縦される作業機(1)で引張りロープを用いてスタートさせる内燃エンジン(7)を始動する前にエンジン制御器(17)用の電気エネルギーを供給するための方法であって、前記エンジン制御器(17)の電気エネルギーのために電圧源11)が設けられている前記方法において、
前記電圧源(11)は、前記内燃エンジン(17)の始動の際に電気エネルギーを前記エンジン制御器(17)に供給するために設けられていること、
前記引張りロープを用いて前記内燃エンジン(7)を始動する前に、前記電圧源(11)が操作者によって機械的に駆動され、その結果前記内燃エンジン(17)の始動の前に前記電圧源(11)により電気エネルギーが電気力学式に発生されること、
発生させた電気エネルギーを、前記作業機(1)内に配置される充電可能なエネルギー蓄積装置(16)に供給すること、
前記内燃エンジン(7)をスタートさせるための最初のロープストロークの際に蓄積された電気エネルギーを前記エンジン制御器(17)に供給すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
最初の点火のために前記エネルギー蓄積装置(16)に蓄積されている電気エネルギーを点火回路(18)に供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電気エネルギーを発生させるために、手で操作されるダイナモ(11)を操作し、これによって前記エネルギー蓄積装置(16)を充電し、前記ダイナモ(11)を並進運動、振動運動または回転運動によって駆動することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電圧源(11)の機械式駆動部を用いて、燃料搬送および/または最初の燃料作動圧を提供する燃料ポンプを機械式または電気式で操作することを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記エンジン制御器(17)において、前記内燃エンジン(7)のスタートの前にセンサおよびアクチュエータの機能性の検査を行い、その際に少なくとも前記内燃エンジン(7)のエネルギー管理を考慮し、且つ前記内燃エンジン(7)のスタートに関する決定を行うためにセンサ信号の信頼性を考慮することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
エンジン制御器(17)の電気エネルギー用の電圧源(11,14)を備えた、引張りロープを用いて始動される内燃エンジン(7)のスタートの前に前記エンジン制御器(17)用の電気エネルギーを供給するための装置において、
電気力学式の電圧源11)と、該電圧源と導電接続されているエネルギー蓄積装置(16)とが設けられ、該エネルギー蓄積装置(16)が出力側で前記エンジン制御器(17)と導電接続されていること、
前記電気力学式の電圧源(11)の電圧発生が操作者によって手で機械的に操作される駆動部によって行なわれること、
を特徴とする装置。
【請求項7】
前記電圧源として、手で操作されるダイナモ(11)が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記電圧源として、ピエゾ素子(40)が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記エネルギー蓄積装置(16)がコンデンサを含んでいることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記エネルギー蓄積装置(16)の出力側に点火回路(18)が接続されていることを特徴とする、請求項からまでのいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記内燃エンジン(7)のスタート前の前記エネルギー蓄積装置(16)の充電状態を表示する発光表示器(15)が設けられていることを特徴とする、請求項から10までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記スタート前に燃料圧を供給するため、機械式燃料ポンプが設けられていることを特徴とする、請求項から11までのいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した種類のエンジン制御器用の電気エネルギーを供給する方法、および、請求項の上位概念に記載した種類のエンジン制御器用の電気エネルギーを供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーチェーンソー、刈払い機、切断研磨機、枝切り機、吸込/送風機のような手で操縦される作業機には、通常引張りロープで始動される内燃エンジンが装備されることが多い。作業機内に配置される発電機はクランク軸によって駆動され、その結果内燃エンジンの作動中に点火回路およびエンジン制御器用に十分な供給電圧が提供される。始動段階では、すなわち最初のロープストロークから所定の回転数に達するまでは、エンジン制御器の、またはマイクロプロセッサによって制御される点火装置の即座の機能を確保するには、発電機によって提供される電圧では不十分である。この欠点を解消するため、内燃エンジンの始動段階でエンジン制御器または電子点火装置の機能に必要な電圧供給を行うアキュムレータを使用することがすでに提案された。しかしながら、このようなアキュムレータは負荷の頻度または一定時間経過後に交換しなければならず、すなわち内燃エンジンの良好なスタート態勢を保証するには、アキュムレータの管理と定期的な充電とが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の、エンジン制御器用の電気エネルギーを供給する方法において、電気エネルギーを簡単に発生させ蓄積することができるようにすることである。さらに本発明の課題は、電気エネルギーを発生させ蓄積させる前記方法を実施するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、方法に関しては、請求項1の構成要件の組み合わせによって解決され、装置に関しては、請求項の構成要件の組み合わせによって解決される。
【0005】
本発明によれば、内燃エンジンをスタートさせる前に作業機自体に電気エネルギーを発生させ、この電気エネルギーを内燃エンジンをスタートさせるまで蓄積することが可能になる。このために必要な構成要素は保守が必要でなく、わずかな構成空間を必要とするにすぎない。
【0006】
本発明の他の構成では、エネルギーは最初の点火および有利にはこれに続く点火にも利用することができ、このために、エネルギー蓄積装置内に蓄積されたエネルギーを点火回路に供給される。
【0007】
電気機械の原理または電気力学の原理に基づく電圧発生は種々の態様で行うことができ、たとえば機械的に手で操作されるダイナモによって行うことができる。このために並進運動(たとえばスライダ)、振動運動(たとえばプッシュキー)、または回転運動(たとえばクランクまたは回転ボタン)を駆動手段として使用することができる。これとは択一的に、引張りロープを複数回操作し(合目的には内燃エンジンへの燃料供給を遮断して)、これによって、クランク軸によって駆動される発電機に発生するエネルギーを、エネルギー蓄積装置に供給することも可能である。また、電圧源として1個または複数個の永久磁石を設け、これにコイルを付設し、その結果(クランク軸が回転しなくとも)、たとえば引張りロープのようなスタート装置を操作して電圧をコイル内に誘導するようにしてもよい。
【0009】
電気エネルギーをこの種の作業機に発生させる他の可能性は、ピエゾ素子に力を作用させることにある。合目的には、電気エネルギーの発生を、燃料の供給および/または最初の燃料作動圧の供給を行う装置と組み合わせる。従って、ピエゾ素子の操作を、燃料ポンプとして作動するパージャーの操作と組み合わせることができる。この場合、電気エネルギーの発生と同時に燃料が搬送され、または、燃料圧が提供され、その結果クランク軸の最初の回転のときに混合気形成用の燃料が提供される。合目的には、気化器において、パージャーの操作とダイナモの操作(ダイナモ・パージャー)とが連動し、その結果機械的にエネルギーが発生するとともに、燃料が搬送され、または、燃料圧が発生する。燃料供給用のシステム(燃料ポンプ)を備えた機器の場合には、エネルギー蓄積装置内にあるエネルギーを適宜燃料搬送に使用することができ、または、最初の燃料圧の提供に使用することができる。
【0010】
エネルギー蓄積装置はたとえばコンデンサ、特に電解コンデンサを含んでいる。これとは択一的にアキュムレータを設けてもよい。エネルギー蓄積装置の出力側には少なくともエンジン制御器が接続され、有利な実施態様では、エネルギー蓄積装置に補助的に点火回路が接続される。内燃エンジンをスタートさせるために必要なエンジン制御器および場合によっては点火回路用の電気エネルギーがエネルギー蓄積装置内にあるかどうかを操作者が認識するようにするため、信号装置が設けられる。信号装置は、好ましくは、エネルギー蓄積装置の十分な充電状態を表示する発光表示器である。
【0011】
本発明の他の構成では、スタートの前に燃料圧を提供するため、機械式の燃料ポンプが設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1】パワーチェーンソーとして構成された、手動操作型ダイナモを備える手で操縦される作業機を示す図である。
図2】太陽電池を備えたパワーチェーンソーのエンジンケースを示す図である。
図3電圧源として手動操作型ダイナモを設けた場合の回路図である。
図4】電気機械式エネルギー発生装置を備えたスタート装置の縦断面図である。
図5】パージャーと電気機械式エネルギー発生装置とを備えた気化器の断面図である。
図6】内燃エンジンのスタート前に行う検査のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1にはパワーチェーンソー1が図示されている。このパワーチェーンソー1では、エンジンケース2に前部グリップ3と後部グリップ4とが配置されている。エンジンケース2の前面では、周回するソーチェーン6を備えたガイドレール5が突出している。エンジンケース2内では、気化器8とエアフィルタ9とを備えた内燃エンジン7が設けられている。内燃エンジン7は、スタートのために、始動グリップ10を用いて引っ張られる引張りロープを介して始動させることができる。エンジンケース2内にはダイナモ11が配置され、ダイナモ11は構成に応じて押しボタンまたは回転ボタン12を用いて操作できる。
【0014】
エンジンケース2内には、マイクロプロセッサを含んでいる制御器と点火回路とが設けられている。内燃エンジン7を作動させる際の電気エネルギーは、クランク軸によって駆動される発電機によって発生させる。内燃エンジンの始動の際にエンジン制御器および場合によっては点火回路にも即座に十分な電気エネルギーを供給するようにするため、たとえば押しボタン12を複数回操作することによって電気エネルギーを発生させる前記ダイナモ11の形態の電圧源が設けられている。この電気エネルギーは図1に図示していないエネルギー蓄積装置に供給され、エネルギー蓄積装置は、引張りロープを用いた内燃エンジン7の始動の際に、スタートに必要な電気エネルギーをエンジン制御器に対し提供し、場合によっては点火回路に提供し、合目的には燃料搬送ポンプに提供する。
【0015】
エンジン制御器および点火回路を作動させるために十分なエネルギー蓄積装置内の電気エネルギーを表示するため、例えばLEDの形態の発光表示器15が用いられる。これとは択一的に、ディスプレイまたは蓄積されたエネルギーを表示する他の器具を用いてもよい。
【0016】
図2は、前部グリップ3と後部グリップ4と始動グリップ10とを備えたパワーチェーンソー1のエンジンケース13を示している。エネルギー蓄積装置に供給される電気エネルギーを発生させるため、この実施形態では、エンジンケース13上に太陽電池14が設けられている。この種の太陽電池は周知であり、電場を発生させるpn接合部を表面付近に備えた半導体材料から成っている。従って、エネルギーが太陽光の形態で供給される場合、電荷担体が発生し、電荷担体はpn接合部によって異なる方向に誘導され、よって直流電圧を生じさせる。太陽電池14はエネルギー蓄積装置に給電するための電圧源として用いられ、エネルギー蓄積装置は必要な場合に、すなわち内燃エンジンをスタートさせる際にエンジン制御器および場合によっては点火回路に電気エネルギーを供給する。エンジン制御器および点火回路を作動させるためのエネルギー蓄積装置の待機状態を表示するため、発光表示器15が用いられる。音信号装置も合目的である。
【0017】
図3は、電圧源として手動操作型ダイナモ11を設けた場合の回路図である。これとは択一的に、電圧源として、図1に関し説明したように内燃エンジンによって駆動される発電機も用いることができる。他の択一性としては、図2で述べたように太陽電池で電圧を発生させることができる。発生させた電気エネルギーは、いわゆる揮発性エネルギー蓄積装置に供給される。揮発性蓄積装置はたとえばコンデンサを含んでおり、よって蓄積したエネルギーを短時間で実質的に完全に放出する。エンジン制御器および点火回路を作動させるために十分な電気エネルギーが蓄積されると、これを発光表示器15が信号化する。内燃エンジンを始動させるための最初のロープストロークで、エネルギー蓄積装置16に蓄積されていた電荷はエンジン制御器17と点火回路18とに供給される。この電荷は、内燃エンジンをスタートさせて有利には完全に始動させるために十分なものである。補助的に、燃料供給用の電気システムを備えた機器の場合には、エンジン制御器17を燃料ポンプおよび燃料弁と接続してよく、その結果電気エネルギーは最初の燃料搬送または燃料供給にも使用される。揮発性エネルギー蓄積装置16の代わりに、アキュムレータを設けてもよい。
【0018】
図4はスタート装置20を示している。このスタート装置20はたとえばパワーソー、切断研磨機、刈払い機等の手で操縦される作業機のケーシング21内に配置され、該作業機の内燃エンジンの始動に用いる。スタート装置20は支持軸22を有している。支持軸22はケーシング21で保持され、該ケーシング21と一体に形成されていてよい。ケーシング21は受容部24を画成する縁部23を有している。受容部24内には復帰ばね24が配置され、復帰ばね24はコイルばねとして形成されている。受容部24はローププーリ26によって閉鎖されている。
【0019】
ローププーリ26はハブ27を用いて回転軸線Dのまわりに回転可能に支持軸22で支持されている。ローププーリ26はその外周に受容溝28を有し、受容溝28内に始動ロープ29が巻回されている。始動ロープ29には始動グリップ30が固定され、始動グリップ30は作業機のケーシング21から突出し、操作者が把持することができる。始動グリップ30のロープは始動ロープ29の巻き戻しを生じさせ、それによって回転軸線Dのまわりでのローププーリ26の回転駆動を生じさせる。
【0020】
ローププーリ26は半径方向において受容溝28の内側に凹部42を有し、凹部42内にはコイルばね43が配置されている。ローププーリ26を起点として筒状の縁部44が延在し、この場合凹部42と縁部44とはコイルばね43を配置するための受容空間を形成している。さらに受容空間内には駆動体47が配置されている。駆動体47はハブを用いて回転軸線Dのまわりに回転可能に支持軸22で支持されている。コイルばね43は一端をローププーリ26の保持部45で保持され、他端を駆動体47の保持部46で保持されている。これによってコイルばね43はローププーリ26の回転運動を駆動体47へ伝える。コイルばね43はその内周側でローププーリ26に設けた案内細条部と駆動体47に設けた案内細条部とによって案内されている。駆動体47は図面に図示していないスロットルロックを介して内燃エンジンのクランク軸と結合可能である。受容溝28を画成しているフランジ31には複数個の永久磁石32が配置されている。永久磁石32に対し軸線方向にわずかな間隔をもって、ケーシング21内に配置される位置固定のコイル33が設けられている。
【0021】
始動グリップ30または始動ロープ29を用いてローププーリ26を操作すると、ローププーリ26は駆動体47に対し回転する。ないねなエンジンのピストンと結合されているクランク軸を介してまず駆動体47が停止し、他方ローププーリ26は回転する。これによってコイルばね43が緊張する。その結果コイルばね43の巻線部が縮径し、同時にコイルばねは長くなる。コイルばね43が完全に緊張した後、クランク軸に対しては、ローププーリの更なる回転と、緊張したコイルばねの力との双方が作用し、これによって内燃エンジンをスタートさせるために十分な力が与えられる。ローププーリ26の回転の際に永久磁石32の運動によってコイル33内に電圧が誘導され、この電圧は図3に図示したエネルギー蓄積装置16の充電のために用いる。従って、エンジン制御器および/または点火装置用の電気エネルギーは、すでに内燃エンジンをスタートまたは始動させる前に存在している。
【0022】
図1で説明した手動で操作されるダイナモの代わりに、図4に対する変形実施形態によれば、ロープ引張りスターターのたとえば2回ないし4回のスタートストロークを、燃料供給を遮断したままで実施し、クランク軸によって駆動される発電機がその中に発生される電気エネルギーをエネルギー蓄積装置に供給するようにしてもよい。その後になってはじめて、更なるロープストロークに対し燃料供給が可能になる。また、ローププーリ内のダイナモとクランク軸との間に、操作可能なクラッチを設けてもよい。
【0023】
ロープ引張りスターターの1回のロープストロークによって燃料の搬送(パージ)も生じさせることができる。この点は、本出願人の1994年の出願に関わる独国特許出願公開第4413270A1号明細書に記載されており、その開示内容を、特にその図6を、全面的にここに引用する。
【0024】
図5には、パージャー36を備えた気化器35が断面図で図示されている。パージャー36は、回動可能に支持されているレバー37を矢印Fの方向に押すことにより操作される。レバー37の、回動軸線38の右側にある端部は、押圧ピン39をピエゾ素子40に対し押圧させ、これによってピエゾ素子40に電圧が発生し、この電圧は図3に図示したエネルギー蓄積装置16に供給される。レバー37を出発位置へ迅速に復帰させるため、復帰ばね41を設けることができる。このような構成により、内燃エンジンの始動、スタートの前に機械的に燃料が搬送され、同時に内燃エンジンをスタートさせるための電気エネルギーが機械的に生成される。
【0025】
エネルギー蓄積装置16が適宜な大きさに選定されていて、たとえば太陽電池に対し比較的長時間の太陽照射によって十分な量のエネルギーを発生させるならば、電気スタートのためのエネルギー供給も可能である。
【0026】
図6は、内燃エンジンのスタートの前に行うべき、監視されるセンサおよびアクチュエータの機能性に関する検査を、フローチャートで示したものである。この検査を行うためのエネルギーは、図3のエネルギー蓄積装置16から取り出される。この例では、内燃エンジンのエネルギー管理が正常であるかどうかを確認するために、スタート後にまずエネルギー管理が検査される。検査の結果正常でなければ、すなわち「No」であれば、エラーメモリへのインプットが行われ、正常であれば、次のステップとしてセンサの検査を行う。ここでは例えば圧力センサ、温度センサ、スタート・ストップスイッチの位置センサ等のすべてのセンサが信頼性の検査対象になり、ここでも、検査結果が正常でなければ、すなわち「No」であれば、エラーメモリへのインプットが行われる。検査結果が正常であれば、エラーメモリ内にスタートを阻害させるようなインプットがすでにない限りは、内燃エンジンをスタートさせる。問い合わせ「スタート可能か?」が「Yes」であれば、内燃エンジンをスタートさせ、回転数をアイドリングに制限すべきかどうかを問い合わせる。結果が「No」であれば、内燃エンジンを「通常モード」でスタートさせ、結果が「Yes」であれば、内燃エンジンの回転数を制限してスタートさせる。
【0027】
制御器の内部供給電圧を監視してもよく、従ってスタートのためにおよぞ十分なエネルギーがあるかどうかを暗黙に監視してもよい。
【0028】
エンジン制御器は、好ましくは、エンジンの作動中にすべてのセンサおよびアクチュエータを監視する。エラーが発生すれば、これを制御器が検出し、エラーメモリにファイルする。内燃エンジンの作動終了に関しては、制御器によって多数のケースが識別される。
・ストップスイッチが操作された場合。エラーメモリへのインプットは行わない。
・エラーが検知されて、エンジンが切られた場合。エラーメモリへのインプットを行う。
・エラーが検知されずに内燃エンジンがエンストした場合。エラーメモリへのインプットは行わない。
・燃料不足の場合。エラーメモリへのインプットは行わない。
【0029】
択一的な実施形態によれば、内燃エンジンの再スタートを、エラーの重みづけ/分類に依存して行ってもよい。たとえば、グリップ加熱のような快適機能が故障していれば、内燃エンジンの再始動を許容する。また、内燃エンジンの作動を阻害しないようなエラーを表示すること、たとえばスタート時の特殊な点火パターンを介してこのようなエラーを検知できるようにすることも考えられる。
【符号の説明】
【0030】
1 作業機
7 内燃エンジン
11 ダイナモ
14 太陽電池
16 エネルギー蓄積装置
17 エンジン制御器
18 点火回路
20 スタート装置
32 永久磁石
33 コイル
40 ピエゾ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6