特許第5736173号(P5736173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5736173-改善された熱衝撃抵抗性すすフィルター 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736173
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】改善された熱衝撃抵抗性すすフィルター
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20150528BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150528BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20150528BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150528BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20150528BHJP
   F01N 3/021 20060101ALI20150528BHJP
   F01N 3/02 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B01D39/20 DZAB
   B01D46/00 302
   B01D46/42 B
   B01D53/36 103C
   B01J35/04 301E
   B01J35/04 301H
   F01N3/02 301B
   F01N3/02 301E
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-529014(P2010-529014)
(86)(22)【出願日】2008年10月9日
(65)【公表番号】特表2011-501693(P2011-501693A)
(43)【公表日】2011年1月13日
(86)【国際出願番号】US2008079265
(87)【国際公開番号】WO2009048994
(87)【国際公開日】20090416
【審査請求日】2011年9月28日
【審判番号】不服2014-4835(P2014-4835/J1)
【審判請求日】2014年3月12日
(31)【優先権主張番号】60/979,551
(32)【優先日】2007年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジーバース,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,ロバート,ティー.
【合議体】
【審判長】 河原 英雄
【審判官】 大橋 賢一
【審判官】 真々田 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/026074(WO,A1)
【文献】 特開2000−193395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-39/20 46/00-46/57
C04B 35/00-35/84
F01N 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製の隣接した流入口流路及び流出口流路によってつながれる流入口端及び流出口端を有する多孔性のセラミックハニカム本体を有し、前記流入口流路および前記流出口流路が、前記流入口流路と前記流出口流路との間にある複数の組み合わせられた薄い気体ろ過性の多孔性隔壁及びセラミック栓により規定され、前記流入口流路が前記流出口端において流入口セラミック栓を有し、かつ前記流出流路が前記流入口端において流出口セラミック栓を有するため、前記流入口端に入った流体は前記流出口端から出るために隔壁を通らなければならないセラミックハニカムフィルターであって、前記セラミックハニカム本体内に外殻に包まれ、熱エネルギーを吸収して可逆的な相変化を起こす熱吸収材を設置したセラミックハニカムフィルター。
【請求項2】
前記ハニカムが針状セラミックから構成される、請求項1に記載のセラミックハニカムフィルター。
【請求項3】
前記可逆的相変化が、固体から液体に融解することである、請求項1に記載のセラミックハニカムフィルター。
【請求項4】
前記熱吸収材が金属である、請求項1から3のいずれか一項に記載のセラミックハニカムフィルター。
【請求項5】
前記外殻が、前記熱吸収材が前記可逆的相変化を起こす温度よりも少なくとも200℃高い融解温度を有するセラミック又は金属である、請求項1に記載のセラミックハニムフィルター。
【請求項6】
前記熱吸収材が金属であり、前記外殻が前記金属の酸化物である、請求項5に記載セラミックハニカムフィルター。
【請求項7】
前記金属が、アルミニウム、銅、スズ、前記のいずれか1つの合金、又は、前記のいずれかの混合物である、請求項6に記載のセラミックハニカムフィルター。
【請求項8】
前記熱吸収材の前記相変化が、少なくとも約500℃から最高で約800℃までの相変化温度において生じる、請求項1に記載のセラミックハニカムフィルター。
【請求項9】
i)請求項1に記載のセラミックハニカムフィルターを提供し、
ii)ディーゼル排気を、前記排気中のすすが前記フィルターによって捕獲されるように前記セラミックハニカムフィルターに通し、さらに
iii)前記セラミックハニカムフィルターを、前記ディーゼルすすが燃焼するように十分に加熱する(ただし、前記熱吸収材が、前記すすの燃焼から生じる熱の一部を吸収する相変化を起こす)ことを含む、ディーゼルすすをろ過する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/979,551号(2007年10月12日出願、これは参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、改善されたセラミックハニカム微粒子フィルターに関する。特には、本発明は、改善された熱衝撃抵抗性を有するハニカムセラミックフィルターに関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンは、その作動方法のために、すす粒子、又は、凝縮物の微細液滴、又は、これら2つの集塊物(微粒子)を、典型的な有害なガソリンエンジン排気物(すなわち、HC及びCO)と同様に放出する。これらの「微粒子」(本明細書中ではディーゼルすす)には、縮合した多環式炭化水素が多く含まれ、それらの一部は発ガン性であり得る。
【0004】
ディーゼルすすが健康に与える危険性の認識は、ディーゼルエンジンがもたらすより大きい燃料効率の必要性と相反するので、様々な規制が制定されており、放出されることが許されるディーゼルすすの量を制限している。これらの難題に対処するために、様々なすすフィルターがこれまで使用されている。これらのフィルターは、英国特許第1,014,498号及び米国特許第4,828,807号によって例示されるように多くの形態を有する。最も一般的かつ有用なフィルターは、米国特許第4,329,162号によって例示されるように、排気ガスが流路の中に入り、流路の壁を通り抜けなければならないように、塞がれた流路を有する多孔性のセラミックハニカムである傾向を有する。
【0005】
熱衝撃抵抗性がより大きいハニカムを、例えば、蓄熱器及び触媒コンバーターにおける使用のために作製しようとする初期の試みは、低い熱膨張係数を有するセラミック(例えば、米国特許第4,304,585号及び同第4,598,054号に記載されるセラミックなど)の使用に集中した。それにもかかわらず、当分野は、セラミックハニカムの衝撃抵抗性を改善する方法であふれている。例えば、セラミックハニカムの衝撃抵抗性を、より小さいハニカムをこのより小さいハニカムの間の層とともに組み立てることによって(すなわち、セグメント化されたハニカムを組み立てることによって)改善する方法がある。このような層は周知であり、種々の添加物(例えば、セラミック繊維又は金属繊維、有機物(例えば、細孔形成剤及び結合剤など)など)とともにあらゆる種類のセラミックセメント(発泡型又は非発泡型)を含む。例示的な特許には、上記で述べられた特許、並びに、例えば、米国特許第3,251,403号、同第4,335,783号、同第4,381,815号、同第4,810,554号、同第4,953,627号、同第5,914,187号及び同第7,087,286号が含まれる。残念ながら、これらのすべてが、著しくより大きい形成時の複雑性をもたらしており、また、例えば、そのようなハニカムが、流入口流路及び流出口流路を有するフィルターとして使用されるとき、圧力低下における増大をもたらしている。
【0006】
セラミックハニカムの熱衝撃抵抗性を増大させるための別の方法は、例えば、米国特許第3,887,741号及び同第3,983,283号などでは、スリットをハニカムにおいて半径方向又は軸方向に作製して、ハニカムをフープ応力及び軸方向応力に起因してより合致させることを含む。熱衝撃抵抗性を増大させるためのこの方法は、残念ながら、より大きい取り扱い損傷を製造時にもたらす脆いハニカムをもたらす傾向があり、また、半径方向の溝を形成することにおいて複雑化する傾向がある。
【0007】
必要とされるものは、先行技術の1つ又はそれ以上の問題(例えば、上記で述べられた問題の1つなど)を回避するディーゼル微粒子フィルターである。具体的には、有効ろ過面積を最大にし、同時に、フィルターの長さに沿った種々の化学種の燃焼に起因する触媒内の温度差を除く(すなわち、熱衝撃抵抗性がより大きい)ディーゼル微粒子フィルターを提供することが望ましい。ハニカムの熱衝撃を改善するために使用される他の方法に伴う圧力低下の増大を最小限に抑えることもまた、そうするときには望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、改善されたセラミックハニカム構造、例えば、有効ろ過面積を最大にし(すなわち、圧力低下を最小限に抑え)、同時に、優れた熱衝撃抵抗性を提供するすすフィルターを可能にする改善されたセラミックハニカム構造を発見している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、セラミック本体の流入口端から流出口端まで延びる、隣接した流入口流路及び流出口流路によってつながれる流入口端及び流出口端を有する多孔性のセラミックハニカム本体を有し、流入口流路および流出口流路が、流入口流路と流出口流路との間にある複数の組み合わせられた薄い気体ろ過性の多孔性隔壁により、及びセラミック栓により規定され、流入口流路がセラミック本体の流出口端において流入口セラミック栓を有し、かつ流出流路がセラミック本体の流入口端において流出口セラミック栓を有するため、流入口端に入った流体は流出口端から出るために隔壁を通らなければならず、セラミックハニカム本体が、熱エネルギーを吸収する可逆的相変化を受ける熱吸収材を有するセラミックハニカムフィルターである。
【0010】
本発明の別の態様は、
i)熱エネルギーを吸収する相変化を受ける熱吸収材を有するセラミックハニカムフィルターを提供し、
ii)ディーゼル排気を、上記排気中のすすが上記フィルターによって捕獲されるように上記セラミックハニカムフィルターに通し、さらに、
iii)上記セラミックハニカムフィルターを、上記ディーゼルすすが燃焼するように十分に加熱する(ただし、上記熱吸収材が、上記すすの燃焼から生じる熱の一部を吸収する相変化を受ける)ことを含む、ディーゼルすすをろ過する方法である。
【0011】
本発明のフィルターは、微粒子(例えば、すすなど)をガス状又は液体の流れ(例えば、自動車、列車、トラック又は定置動力装置の排気など)から除く必要があるどのような用途においても使用することができる。本発明のフィルターは、すすをディーゼルエンジンの排気から除くために特に有用である。加えて、本発明の相変化材は、例えば、相変化材を有する流路のみが塞がれ、それ以外の流路は依然として、反応物及び生成物が流路を通り抜けるために開通したままである、不均一触媒反応による反応(例えば、部分酸化反応)のためのセラミックハニカム担体に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の相変化材を有するフィルターに堆積したすすの燃焼期間中の温度上昇のグラフである。
図2】相変化材を有しないフィルターに堆積したすすの燃焼期間中の温度上昇のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
相変化を受ける熱吸収材は、室温を超える温度、かつフィルターの使用温度の範囲内(すなわちフィルターが融解又は分解する温度よりも低い温度)において相変化を受け、固体から液体に融解する熱、結晶構造を変化させる熱、あるいは、非晶質物質の場合にはガラス転移温度又は融解範囲を通り抜ける熱といった熱を可逆的に吸収する物質を意味する。一般に、相変化は、例えば、フィルターに補足されるすすが燃焼する温度又は温度範囲に近い温度において生じる。この温度は望ましくは、すすが燃焼し始める温度よりも高い。すすが燃焼し始める温度は、例えば、すすのタイプ、用途、又は、フィルターにおける触媒の存在に依存し得る。
【0014】
一般に、相変化が生じる温度は少なくとも約400℃から約1200℃までである。好適な範囲は、当然のことながら、それよりも狭く、例えば、その温度は、少なくとも約425℃、少なくとも約450℃、少なくとも約500℃、少なくとも約525℃、少なくとも約550℃、少なくとも約575℃、少なくとも約600℃又は少なくとも約625℃から、最高でも、約1100℃、1000℃、900℃、850℃、800℃、775℃、750℃、725℃又は700℃までであり得る。相変化が温度範囲にわたって生じ得ることが理解されるが、本発明における目的のためには、相変化の温度は、周知の標準的な熱分析技術を使用して、例えば、示差熱分析(DTA)又は示差走査熱量測定法(DSC)などを使用して加熱したときの吸熱のピークにおける温度である。
【0015】
1つの実施形態において、熱吸収材は、より高い融解温度を有する金属から構成される外殻を有する金属、又は、より高い融解温度を有するセラミックであり、例えば、熱吸収材が金属であるときには熱吸収材の酸化物である。そのような実施形態において、金属が相変化を受けるとき、金属は外殻の内部に含有され、フィルター内を流れないことが好ましい。同様に、外殻は、例えば、ガラス転移温度及び融解範囲の両方を通り抜けることができる無機ガラスを含有するために使用することができる。無機ガラスの場合、セラミック外殻は、ガラスを含有するために好適な任意のものであり得るか、又は、場合により、より高い融解温度を有する金属であり得る。一般に、外殻は、熱吸収材の相変化温度(例えば、融解温度)よりも実質的に高い融解温度を有する。外殻は、例えば、典型的には、少なくとも約200℃から、セラミックハニカムフィルター自体の融解温度又は分解温度と同等以上までである融解温度を有する。
【0016】
外殻は、用いられるとき、いずれかの好適な方法によって形成することができる。例えば、外殻は単に容器であってもよく、この場合、熱吸収材が設置され、容器はその後で密封される。その後の密封は、例えば、金属の場合には、上部を容器にろう付け又は溶接することによって達成することができる。セラミック容器の場合には、容器は、セラミック結合叉は金属結合を生じさせるために十分に熱せられた状態に上部を置くことによって密封することができる。金属結合は、セラミック結合を形成させるためにさらに反応させることができ、この場合、反応を外殻のセラミックの周囲ガスと行うことができる。
【0017】
別の実施形態において、セラミック外殻は、例えば、熱吸収材が金属であるとき、金属−セラミック層を金属熱吸収材の表面に形成するために、熱吸収材をガス又は他の反応物(例えば、炭素)と反応させることによって形成することができる。一般に、そのような層(これは、便宜上、典型的には酸化物である)を形成するための温度は、金属の表面を容易に反応させるためには十分に高く、しかし、金属が、金属の流れを妨げるために必要な十分なセラミック層を形成する前に融解し、流れるほどには高くない。一般に、この温度は金属の融解温度よりも低く、ケルビン度で融解温度の約50%までである。速度のために、しかし、好適な制御に関して、その温度は、金属の融解温度の60%、70%、80%又は90%であり得る。好適なセラミックには、例えば、窒化物、酸化物、炭化物、ホウ化物又はこれらの組合せ(例えば、オキシ窒化物)が含まれる。上記で記載されるように、安定性及び好都合さ(すなわち、空気を、酸化物層を形成するために使用することができる)の両方について上記で記載されるような酸化物又はオキシコンビネーション(oxy-combination)が好ましい。最も好ましくは、外殻セラミックは酸化物である。
【0018】
好適な金属の例には、アルミニウム、鉄、スズ、亜鉛、銅、ニッケル、上記のそれぞれの合金、又は、これらの混合物が含まれる。フィルターが、ディーゼルすすを捕獲するために使用されるとき、アルミニウム、アルミニウム合金又はこれらの混合物、特に、融解したときに金属を含有することができる酸化物層が有用であり得る。上記酸化物層は、金属を含有するための任意の好適な厚さであり得るが、典型的には、平均して少なくとも約5nm(ナノメートル)の厚さであり、しかし、相変化を受ける金属の量が実質的に低下するほどには厚くない(すなわち、金属及び酸化物外殻の総体積の約50体積%未満となるほどには厚くない)。典型的には、酸化物層は、平均して、少なくとも約20nm、50nm、100nm、500nm、1マイクロメートル、又は、10マイクロメートルから、最大でも約0.5mm、0.2mm、150マイクロメートル、75マイクロメートル、又は、25マイクロメートルまでである。
【0019】
好適なガラスの例には、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス(例えば、PYREX(登録商標)など)、シリカガラス(例えば、VYCORなど)が含まれる。他のガラスには、例えば、R.G.Frieserによって、Electrocomponent Sci. and Tech.(1975年、第2巻、163頁〜199頁)に記載されるガラス(表IX、表XIV及び表XVI)が含まれ得る。
【0020】
好適な塩の例には、NaCl、KCl、Na、NaBr、NaBO、KMO、KI、NaI、LiI、LiCl及びこれらの混合物が含まれる。
【0021】
熱吸収材(HAM)は、本発明のハニカム内に設置されるために好適な任意の形状又はサイズであり得る。例えば、HAMは、ロッド、チューブ、ペレット、ボール、シート、粒状物、又は、任意の他の考えられる体積形状の形態であり得る。
【0022】
1つの実施形態において、HAMは、HAMがフィルター内に留まることを保証するために流路が両端で塞がれるフィルターの1つ又はそれ以上の流路に置かれる粒状物又はロッドの形態である。
【0023】
別の実施形態において、HAMは、1つ又はそれ以上の多孔性のセラミック隔壁に対して、或いは、上記壁の1つ又はそれ以上の一部に対して上記壁(1つ又はそれ以上)の穴の内部に適用され得る被覆物である。
【0024】
別の実施形態において、HAMは、1つ又はそれ以上の流路のための部分栓又は完全な栓を含むことができる。そのようなHAM栓は様々な長さのものであり得て、標準的な栓と異なり得る。HAMが栓のほんの一部分にすぎない場合、栓の残り部分を構成する栓材料は、下記で記載されるような任意の好適な材料であり得る。
【0025】
フィルターの多孔性セラミックハニカム、同様にまた、栓(栓は、ハニカムと同じ又は異なるセラミックであってもよく、同様にまた、単に、流路を封鎖するために一緒に締め付けられるハニカムの隔壁であってもよいことに留意)は、いずれかの好適なセラミック、又は、セラミックのいずれかの好適な組合せであり得る(例えば、ディーゼルすすをろ過するために当分野において公知のものなど)。例示的なセラミックには、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、オキシ窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、ムライト、キンセイ石、βリチア輝石、チタン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムストロンチウム、ケイ酸アルミニウムリチウムが含まれる。好ましい多孔性セラミック本体は、炭化ケイ素、キンセイ石及びムライト、又は、これらの組合せを含む。そのような炭化ケイ素は、好ましくは、米国特許第6,582,796号及び同第6,669,751B1号、並びに、国際公開第EP1142619A1号、同第2002/070106A1号に記載される炭化ケイ素である。他の好適な多孔性本体が、国際公開第2004/011386A1号、国際公開第2004/011124A1号、米国特許出願公開第2004/0020359A1号及び国際公開第2003/051488A1号によって記載される。
【0026】
セラミックは好ましくは、針状の結晶粒(acicular grains)を有するセラミックである。そのような針状セラミックの多孔性本体の例には、国際公開第2005/097706によって記載される針状セラミック多孔性本体、そして、例えば、米国特許第5,194,154号、同第5,173,349号、同第5,198,007号、同第5,098,455号、同第5,340,516号、同第6,596,665号及び同第6,306,335号、米国特許出願公開第2001/0038810号、並びに、国際PCT公開第03/082773号によって記載されるような針状ムライトが含まれる。
【0027】
多孔性セラミックハニカムは一般に、多孔度が約30%〜85%である。好ましくは、多孔性セラミックハニカムは、多孔度が少なくとも約40%から、より好ましくは少なくとも約45%から、一層より好ましくは少なくとも約50%から、最も好ましくは少なくとも約55%から、好ましくは最大でも約80%まで、より好ましくは最大でも約75%まで、最も好ましくは最大でも約70%までである。
【0028】
ハニカム並びに流路は、用途に依存して、任意の幾何学的断面形態(例えば、円形、楕円形、正方形、長方形又は任意の他の幾何学的形状など)であり得る。ハニカムは任意のサイズであり得るが、用途に依存する。
【0029】
隔壁は触媒を壁内に含有し得るか、又は、壁の表面に被覆された触媒を含有し得る。そのような触媒は、すす、一酸化炭素及び/又は炭化水素の燃焼を触媒するために有用な任意のものであり得る。触媒は好ましくはまた、ディーゼル排気流における1つ又はそれ以上の他の汚染ガス(例えば、NOxなど)を減少させる(例えば、窒素への選択的触媒還元「SCR」、及び、COの酸化によるCOの生成)。
【0030】
典型的には、触媒が酸化物ウォッシュコート(washcoat)及びウォッシュコート表面の金属触媒から構成されることが望ましい。好ましいウォッシュコートが、アルミニウムの酸化物、セリウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、アルミノケイ酸塩(例えば、ゼオライト)又はこれらの組合せである。より好ましくは、ウォッシュコートは、セリウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物又はこれらの組合せである。有用であり得る他の例示的なウォッシュコートが、米国特許出願公開第2005/0113249号、並びに、米国特許第4,316,822号、同第5,993,762号、同第5,491,120号及び同第6,255,249号に記載されるウォッシュコートである。
【0031】
ウォッシュコートを使用するとき、酸化物粒子のボールミル粉砕を使用して形成される典型的なウォッシュコートを使用することができ、しかし、このウォッシュコートは、平均粒子サイズが典型的には1マイクロメートル超〜約20マイクロメートルであることのためにハニカムの隔壁の細孔を詰まらせる傾向があるので好ましくない。そのようなウォッシュコートの例が、米国特許第3,565,830号、同第4,727,052号及び同第4,902,664号によって記載される。好ましくは、ウォッシュコートは、使用されるとき、米国特許出願公開第2005/0113249号(段落19〜段落24;これは参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されるように、溶液から沈殿させられる。
【0032】
ウォッシュコート微粒子は好ましくは、液体に分散されたコロイド状粒子である。本明細書中におけるコロイドは、数平均粒子サイズが1マイクロメートル未満である微粒子を意味する。コロイドは結晶性又は非晶質であり得る。好ましくは、コロイドは非晶質である。コロイドは好ましくは、アルミナ、セリア、ジルコニア又はこれらの組合せである。そのようなコロイドをNYACOLの商品名(Nyacol Nano Technologies Inc.、Ashland、MA)で入手することができる。
【0033】
コロイドは好ましくは、粒子のすべてが数に基づく等価球直径で750ナノメートル(nm)未満である小さい粒子サイズを有する。好ましくは、数平均粒子サイズは、直径で、約500ナノメートル(nm)未満、より好ましくは約250nm未満、一層より好ましくは約100nm未満、最も好ましくは約50nm未満、好ましくは少なくとも約1nmまで、より好ましくは少なくとも約5nmまで、最も好ましくは少なくとも約10nmまでである。
【0034】
隔壁における触媒量は任意の有用な量であり得て、流路(1つ又はそれ以上)の長さに沿って壁内又は壁表面で、或いは、流路毎に変化し得る。一般に、触媒の量は約10グラム/cu−ftから約6000グラム/cu−ftまで変化し得るが、例えば、用途及び使用される具体的なハニカムに依存する。体積が、従来通り、ハニカムの断面積×ハニカムの長さとしてこの場合には理解されるハニカムの幾何学的体積として理解される。
【0035】
すす及び炭化水素を燃焼させるために有用な触媒の他の例が、米国特許第4,828,807号(これは参照により本明細書に組み込まれる)の第4欄25行〜59行に記載される。記載される触媒はどれも、ハニカムフィルターの隔壁を横断するガス状汚染物の変換を改善するために貴金属と組み合わせることができる。
【0036】
貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、レニウム、ルテニウム、金、銀又はそれらの合金)は、ハニカムの隔壁において使用されるとき、好ましくは、Pt、Pd、Rh又はこれらの組合せから構成される。好ましくは、貴金属はPtから構成され、より好ましくは、貴金属はPtである。貴金属の量は、例えば、用途に依存して、広い範囲にわたって変化し得る。一般に、貴金属の量は約1g/cu−ftから約500g/cu−ftまでである。好ましくは、貴金属の量は少なくとも約1g/cu−ftから、より好ましくは少なくとも約5g/cu−ftから、最も好ましくは少なくとも約10g/cu−ftから、好ましくは最大でも約250g/cu−ftまで、より好ましくは最大でも約125g/cu−ftまで、最も好ましくは最大でも約50g/cu−ftまでである。
【0037】
他の例示的な触媒には、直接に結合した金属触媒(例えば、貴金属、アルカリ金属、アルカリ金属の卑金属(alkali metal base metals)、及び、これらの組合せなど)が含まれる。貴金属触媒の例には、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、レニウム、金、銀及びそれらの合金が含まれる。卑金属触媒、アルカリ金属触媒、アルカリ金属(alkaline metal)触媒の例には、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、マンガン、バナジウム、チタン、スカンジウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、セシウム及びこれらの組合せが含まれる。金属触媒は、好ましくは金属の形態であり、しかし、無機化合物又はガラス(例えば、ケイ酸塩、酸化物、窒化物及び炭化物など)として、或いは、ハニカムの多孔性隔壁のセラミック結晶粒の内部における欠陥構造として存在することができる。金属は、いずれかの好適な技術によって、例えば、当分野において公知の技術などによって適用することができる。例えば、金属触媒を化学気相蒸着によって適用することができる。
【0038】
第2の例示的な触媒が、多孔性セラミックのセラミック結晶粒の格子構造に組み込まれる触媒である。例えば、元素が、Ce、Zr、La、Mg、Ca、上記段落において記載される金属元素、又は、これらの組合せであり得る。これらの元素は、いずれかの好適な様式で、例えば、当分野において公知の様式などで組み込むことができる。
【0039】
第3の例示的な触媒が、金属酸化物組成物を含むペロブスカイト型触媒、例えば、Goldenによって米国特許第5,939,354号に記載されるペロブスカイト型触媒などである。他の例示的な触媒には、米国特許第4,828,807号(これは参照により本明細書に組み込まれる)において第4欄25行〜59行に記載される触媒が含まれる。
【0040】
触媒成分の1つ又はそれ以上を堆積させるための他の例示的な方法が、米国特許第4,515,758号、同第4,740,360号、同第5,013,705号、同第5,063,192号、同第5,130,109号、同第5,254,519号、同第5,993,762号、並びに、米国特許出願公開第2002/0044897号、同第2002/0197191号及び同第2003/0124037号、並びに、国際特許出願公開第97/00119号、同第99/12642号、同第00/62923号、同第01/02083号及び同第03/011437号、並びに、英国特許第1,119,180号に記載される。
【0041】
多孔性セラミックを、例えば、コロイドと接触させた後、多孔性の本体は、典型的にはいずれかの好適な方法によって、例えば、液体媒体を、いずれかの好適なガス(例えば、乾燥空気、窒素、或いは、溶液又はスラリーを乾燥させるために有用ないずれかの他のガスなど)において、周囲温度で、又は、(例えば、400℃程度にまで)軽く加熱して乾燥させることなどによって乾燥させられる。乾燥後、典型的には、触媒は、例えば、触媒を壁内に形成するように、接着するために、及び/又は所望される触媒化学を実現するために(例えば、炭酸塩を酸化物に分解するために)、さらに加熱される。一般に、この加熱温度は少なくとも約400℃から約1600℃までである。典型的には、この温度は少なくとも約500℃から約1000℃までである。加熱は、いずれかの好適な雰囲気(例えば、任意の所定の触媒について当分野において公知の雰囲気など)であり得る。
【0042】
異なる触媒帯域を、いずれかの好適な方法によって、例えば、当分野において公知の方法などによって、例えば、ハニカムの一方の端のみを堆積させられる触媒のスラリー又は溶液に浸けることなどによって作製することができる。異なる触媒溶液又は触媒スラリーにおける一方又は両方の端での浸漬の組合せ、或いは、ハニカム全体を触媒溶液又は触媒スラリーに沈め、その後、別の触媒溶液/スラリーを一方又は両方の端に浸けることの組合せ、或いは、いかなる数のこれらの組合せを、触媒化されたフィルターを作製するために使用することができる。触媒被覆物に対するバリアとして作用する除去可能な被覆物もまた用いることができる(例えば、ワックスなど)。
【0043】
本発明の方法を行う際には、本発明のフィルターは、当分野では従来的であるように、また、記載されるように、排気がフィルターを通り抜けるようにさせる金属缶を使用する排気系に設置することができる。ディーゼルエンジンがその後、排気がフィルターを通り抜けるように動かされ、その場合、フィルターにより、放出されたすすの少なくとも一部が捕獲される。一般に、フィルターに捕獲されるすすの体積割合は、放出されたすすの少なくとも約90%である。
【0044】
すすが燃焼するとき、フィルターは一層さらに熱くなり、熱吸収材が、熱吸収材を有しない同様なフィルター、又は、より大きい熱質量を単に有するだけのフィルター(単に熱キャパシタンスからの熱吸収)と比較して、燃焼期間中にフィルターにおいて達成される最高温度を低下させる相変化を受ける。最高温度が一般には、少なくとも2%低下するが、増加するパーセントでは、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%低下する場合があり、しかし、一般には、約75%を超えて低下しない。
【0045】
実施例
10×10セル×3インチ(”)(全体の寸法:3/4インチ×3/4インチ×3インチ)の長針状ムライトのディーゼル微粒子フィルターを米国特許出願公開第2006/0197265と同様な様式で作製し、しかし、13本のAlワイヤ(1mmの直径)を一列おきでの流出口流路の1つおきに設置することによって改変した。Alワイヤのパターンは、それぞれの流入口流路が、アルミニウム(Al)ワイヤを含有する流路に隣接する1つの壁を有するようにされる。加えられたアルミニウムの重量は1.9686gであった。Al含有流路をResbond919(Cotronics Corp.、Brooklyn、NY)セラミックセメントで塞ぎ、従って、Al含有流路はもはや流出口流路ではなかった。DPFには、その後、不完全燃焼に由来する0.146gのディーゼルすす(約5.5g/L)が負荷された。
【0046】
すす負荷サンプルのそれぞれを、N(15標準立方フィート/時間、「scfh」)を流しながら620℃〜630℃に加熱した。温度が安定したとき、ガスをNから、再び15scfhでの空気に切り換えて、制御されないすすの燃焼を開始させた。モノリス(monolith)の流出口端及び中心部における温度をモニターした。最高温度及び温度プロフィルが図1に示される。
【0047】
比較例:
アルミニウムワイヤが存在しなかったこと、及び、実施例においてアルミニウムワイヤによって占められたそのような流路が流出口流路であったことを除いて、実施例の場合と同じ様式及び同じサイズで作製された針状ムライトフィルターを使用した。すすの量及びすすの燃焼もまた、実施例の場合と同じであった。最高温度及び温度プロフィルが図2に示される。
【0048】
図1及び図2から、実施例の方が著しく低い最高温度を有したこと、及び、温度プロフィルが実質的に広がっていることが明らかであり、このことは、実施例の方がはるかに穏やかな熱事象であるので望ましい。加えて、温度プロフィルが広がることは、より多くの燃料の典型的な挿入を伴うことなく、さらなるすすを制御された様式で燃焼させることにおいて有用であり得る(すなわち、相変化材が元に戻るとき、相変化材は熱エネルギーを放出し、その熱エネルギーが、さらなるすすに点火するために使用され得る)。
【0049】
以下の請求項、それらが互いに明示的に従属しない場合があるとしても、本発明では、いずれか1つ又はそれ以上の請求項と組み合わされるいずれか1つの請求項の1つ又はそれ以上の実施形態の任意の組合せが意図される。
図1
図2