(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736174
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】PTCデバイス
(51)【国際特許分類】
H01C 7/02 20060101AFI20150528BHJP
H01C 1/02 20060101ALI20150528BHJP
H01C 1/032 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
H01C7/02
H01C1/02 M
H01C1/032
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-536800(P2010-536800)
(86)(22)【出願日】2009年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2009068999
(87)【国際公開番号】WO2010053158
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年11月5日
(31)【優先権主張番号】特願2008-286737(P2008-286737)
(32)【優先日】2008年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】原戸 建次
(72)【発明者】
【氏名】田中 新
【審査官】
多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−147827(JP,A)
【文献】
実開昭61−057502(JP,U)
【文献】
特開2001−196202(JP,A)
【文献】
特開平11−330317(JP,A)
【文献】
特開2006−344872(JP,A)
【文献】
特開2006−196902(JP,A)
【文献】
特開平11−121205(JP,A)
【文献】
特開平07−335406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/02
H01C 1/02
H01C 1/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱媒体として機能する層状支持体、その上に配置したポリマーPTC素子、およびPTC素子とモールドしている樹脂との間に硬化性樹脂により形成したポッティング要素を有して成るPTCデバイスであって、
ポリマーPTC素子は層状支持体の一方の表面上に配置され、これらは、層状支持体の他方の表面が露出するように樹脂内にモールドされており、
ポッティング要素の線膨張係数は、モールド樹脂の線膨張係数より大きい
ことを特徴とする、異常高温を防止するためのPTCデバイス。
【請求項2】
ポリマーPTC素子は層状支持体の一方の表面上に熱的に接続された状態で配置されている請求項1に記載のPTCデバイス。
【請求項3】
ポッティング要素の線膨張係数は、3.0×10−5/℃以上であり、また、40.0×10−5/℃以下である請求項1または2に記載のPTCデバイス。
【請求項4】
ポッティング要素の線膨張係数は、30.0×10−5/℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載のPTCデバイス。
【請求項5】
層状支持体、それに配置されたポリマーPTC素子、およびPTC素子とモールドしている樹脂との間に硬化性樹脂により形成したポッティング要素を有して成り、ポッティング要素の線膨張係数がモールド樹脂の線膨張係数より大きい、異常高温を防止するためのPTCデバイスの製造方法であって、
層状支持体の一方の表面にポリマーPTC素子を配置する工程、
層状支持体上に配置されたPTC素子を硬化性樹脂によってポッティングすることによって包囲し、
その後、この硬化性樹脂を硬化してポッティング要素を形成し、
その後、層状支持体の他方の表面が露出するように、層状支持体およびポリマーPTC素子をモールド成形する工程
を含んで成るPTCデバイスの製造方法。
【請求項6】
層状支持体へのポリマーPTC素子の配置は、直接的または間接的である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ポッティングする硬化性樹脂は、硬化後の線膨張係数が3.0×10−5/℃以上、40.0×10−5/℃以下となる樹脂である請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のPTCデバイスを有して成る電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTC素子、特にポリマーPTC素子を有して成るPTCデバイスおよびそのようなPTCデバイスを有して成る電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーPTC素子は、例えば、電気装置における過剰電流による障害、電気装置の過熱等を未然に防止するために、その温度が所定の臨界的な値を越えると、抵抗値が急激に増加する特性、即ち、いわゆる正温度係数またはPTC(positive temperature coefficient)特性を有する。そのような臨界的な温度はトリップ温度とも呼ばれる。
【0003】
電気装置に配置されている、ICチップがマウントされた基板は、電気装置の使用によって大量に発熱するため、その熱を外部に発散するために放熱板を有する。何らかの原因のために(例えばそのような基板に過剰電流が流れることによって)、そのような基板が異常に高温となる場合、放熱板による熱の発散が追いつかず、放熱板も、従って、基板も異常に高温のままになることがある。そこで、セラミックPTC素子(例えば(株)村田製作所から市販されているポジスタ(登録商標))を放熱板に取り付けて基板の温度を検知し、基板が異常に高温になるのを間接的に防止することが行われている。
【特許文献1】特開平04−162701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセラミックPTC素子は、基板が異常に高温となるのを防止する機能を果たすが、場合によって、そのような機能は必ずしも十分ではない。例えば、温度が上昇する際の抵抗値の時間的増加が大きくなく、即ち、シャープに抵抗値が短時間で増加せず、その結果、電流を短時間で遮断することができない。そのため、セラミックPTC素子の抵抗値がある値に達すると、電流を(PTC素子によらずに)遮断する方法(即ち、間接的な方法)が一般的に採用されている。特に、基板が異常に高温になる可能性をより速やかに検知して、異常高温を未然にかつ直接防止することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題に関して、鋭意検討を重ねた結果、ポリマーPTC素子を用い、更に、それを支持体に載せた状態でこれらをモールド成形することによって得られるPTCデバイスによって課題を解決できることが見出された。
【0006】
従って、第1の要旨において、本発明は、
伝熱媒体として機能する層状支持体およびその上に配置したポリマーPTC素子を有して成るPTCデバイスであって、
ポリマーPTC素子は層状支持体の一方の表面上に(熱的に接続された状態で)配置され、これらは、層状支持体の他方の表面が露出するように樹脂内にモールドされている
ことを特徴とするPTCデバイスを提供する。
【0007】
本発明のPTCデバイスでは、PTC素子が樹脂内にモールドされている。その結果、モールドされるPTC素子は、PTCデバイスの周囲の環境からモールド樹脂によって離隔される。例えば、デバイスの周囲に存在する水分、酸素等によってPTC素子が悪影響を受けるのを可及的に防止できる。従って、モールドする樹脂は、水分、酸素等に対するバリア機能を有するのが特に好ましい。
【0008】
層状支持体は、PTCデバイスが温度を検知すべき対象物に対して熱的接触できる。熱的接触とは、層状支持体の露出表面と対象物の表面とが接触することによって、対象物から層状支持体の露出表面に熱が速やかに伝わるようになっていることを意味する。好ましくは、そのような熱的接触の結果、層状支持体の露出表面の温度が対象物の表面温度に実質的に等しくなる。より好ましくは、そのような熱的接触の結果、層状支持体の露出表面の温度と露出していない反対側の表面の温度も実質的に等しくなる。
【0009】
このような層状支持体を構成する材料は、熱伝導性材料、特に良熱伝導性材料(例えばステンレススチール、銅のような金属材料等)であるのが好ましい。尚、それほど良熱伝導性材料でない材料(例えばガラエポ(ガラス繊維+エポキシ樹脂)等の複合材料、他のセラミック材料等)であっても、その厚さが薄い場合には、伝熱に対してそれほど抵抗とならないので、そのような材料を使用してもよい。
【0010】
ポリマーPTC素子は、層状支持体に熱的に接続されており、その結果、層状支持体の露出表面から、従って、PTCデバイスを配置した対象物から層状支持体を経てPTC素子に熱が伝わる、好ましくは速やかに伝わるように構成されている。このように対象物からPTC素子に熱を伝えるという意味で、層状支持体が「伝熱媒体として機能する」との表現を用いる。尚、ポリマーPTC素子の層状支持体への接続は、直接的であっても、あるいは間接的であってもよい。
【0011】
直接的な接続は、ポリマーPTC素子と層状支持体との間に介在するものが存在しない態様に相当し、間接的な接続は、ポリマーPTC素子と層状支持体との間に他の材料が存在する態様に相当する。そのような他の材料には、接着材料(接着剤、ハンダ、導電性接着剤、導電性ペースト等)、絶縁材料等が含まれ、そのような材料は通常層の形態で存在する。
【0012】
明らかなように、間接的な接続の場合は、層状支持体とPTC素子とは、熱伝導性材料、特に良熱伝導性材料(例えば金属材料)を介して接続されているのが好ましい。尚、それほどの良熱伝導性でない材料(例えばセラミック材料)であっても、その厚さが薄い場合には、伝熱に対してそれほど抵抗とならないので、そのような材料を使用してもよい。
【0013】
第2の要旨において、本発明は、層状支持体およびそれに配置されたポリマーPTC素子を有して成るPTCデバイスの製造方法であって、
層状支持体の一方の表面にポリマーPTC素子を配置する工程、ならびに
層状支持体の他方の表面が露出するように、層状支持体およびポリマーPTC素子をモールド成形する工程
を含んで成る。この製造方法によって、上述の本発明のPTCデバイスを製造できる。尚、層状支持体へのポリマーPTC素子の配置は、上述のポリマーPTC素子の層状支持体への接続と同様に、直接的であっても、あるいは間接的であってもよい。
【0014】
第3の要旨において、本発明は、上述のPTCデバイスを有して成る電気装置を提供すする。例えば、そのような電気装置は、本発明のPTCデバイスを有する回路基板、特に電源を制御する回路のIC基板、回路モジュール、過熱検知装置等を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のPTCデバイスは、セラミックPTC素子よりも感度に優れたポリマーPTC素子を層状支持体と組み合わせて、支持体の一方の表面が露出するようにモールド成形して形成されている。その結果、層状支持体の露出している表面が異常温度を検出すべき対象物に接触するようにPTCデバイスを対象物に配置すると、対象物の温度上昇が速やかにポリマーPTC素子に伝わり、その結果、その温度上昇に応じてPTC素子が作動できる。即ち、温度上昇が対象物から速やかに伝わるので、ポリマーPTC素子の優れた感度を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明のPTCデバイスを模式的断面図にて示す。
【
図2】
図2は、
図1のPTCデバイスを
図1の左側から見た様子を模式的平面図にて示す。
【
図3】
図3は、実施例1の本発明のPTCデバイスのR−T測定結果を示す。
【
図4】
図4は、実施例5の本発明のPTCデバイスのR−T測定結果を示す。
【
図5】
図5は、実施例6の本発明のPTCデバイスのR−T測定結果を示す。
【
図6】
図6は、実施例1の本発明のPTCデバイスについて、周辺温度を上昇させた時の抵抗値および熱電対の温度の時間的変化を示す。
【
図7】
図7は、無機PTC素子について、周辺温度を上昇させた時の抵抗値および熱電対の温度の時間的変化を示す。
【符号の説明】
【0017】
10…PTCデバイス、12…PTC素子、14…層状支持体、
15,15’…主表面、16…モールド樹脂、18…ハンダ材料層、
20…絶縁材料層、22…銀ペースト層、24…ポッティング要素、
26,26’…リード、28,28’…ワイヤ、30…開口部、32…対象物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のPTCデバイスを構成するポリマーPTC素子は周知であり、種々のものが市販されている。そのようなポリマーPTC素子は、一般的に使用されている用語の意味で使用している。ポリマーPTC素子は、いわゆるポリマーPTC組成物を層状に形成したポリマーPTC要素を有して成り、その両主表面に配置された第1金属電極(特に箔状電極)および第2金属電極(特に箔状電極)を有して成るのが特に好ましい。ポリマーPTC要素は、ポリマー材料(例えばポリエチレン、ポリビニリデンフルオライド等)中に導電性フィラー(例えばカーボンフィラー、金属フィラー(銅、ニッケル、ニッケル−コバルト合金等のフィラー)等)が分散している、いわゆる導電性ポリマー組成物から構成されているものである。通常、そのような組成物を押出成形することによってPTC要素を得ることができる。
【0019】
層状支持体は、対向する2つの主表面によって規定され、ポリマーPTC素子をその一方の主表面上にポリマーPTC素子への熱伝導性材料として、直接的又は間接的に載置できるものであればよい。具体的には、金属層、例えば金属シートまたは金属フィルムである。1つの態様では、層状支持体として、配線基板に用いられる金属(例えばステンレススチール、他の適当な金属等)のリードフレームと同じものを使用してもよい。別の態様では、セラミック材料の層状支持体であってもよい。層状支持体は、その上に載置するPTC素子の占有面積より大きいのが好ましい。即ち、層状支持体上にPTC素子を配置した様子をこれらの上方から見た場合、PTC素子の周囲の少なくとも一部分、好ましくはPTC素子の全周の外側で層状支持体の一部分が延在するのが好ましい。
【0020】
層状支持体上にPTC素子に載置するに際して、層状支持体が電気伝導性材料である場合には、PTC素子と層状支持体との間に絶縁材料を配置する必要がある。層状支持体が電気絶縁性である場合には、そのような絶縁材料を配置する必要はない。絶縁材料は、層状形態であるのが好ましい。
【0021】
絶縁材料を介して載置する場合、層状支持体に絶縁材料の層を接着材料によって接着し、接着した絶縁材料の層にPTC素子を接着材料によって接着する。これらの接着材料は同じであっても、あるいは異なってもよく、好ましくは熱伝導性、より好ましくは良熱伝導性である。例えばハンダ、導電性材料ペースト(例えば銀ペースト)、ハンダペースト、導電性接着剤等を使用して接着してよい。
【0022】
本発明のPTCデバイスでは、層状支持体の他方の表面(即ち、PTC素子が載置されていない表面)が露出するように、PTC素子および層状支持体がモールド成形されている。モールド成形では、PTC素子が載置された層状支持体を、層状支持体の他方の表面が露出した状態で、所定の型に配置し、その後、型に樹脂を注入して固化および/または硬化させる。
【0023】
注入する樹脂、即ち、モールド樹脂は、硬化性樹脂、例えば熱硬化性樹脂、光または放射線硬化性樹脂であり、例えば種々のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を使用できる。別の態様では、注入する樹脂は熱可塑性樹脂であってもよく、この場合、溶融状態の樹脂を型に注入し、その後、冷却することによって固化させる。このようなモールド成形自体は周知であり、層状支持体の他方の表面の少なくとも一部分、好ましくは大部分、より好ましくは実質的に全部が露出するように実施する。モールド樹脂は、モールドされるPTC素子をPTCデバイスの周囲の環境から離隔する機能を有する。具体的には、周囲の水分、酸素等によってPTC素子が悪影響を受けるのを可及的に防止する。
【0024】
本発明の特に好ましい態様では、上述のようにモールド成形する前に、層状支持体上に載置されたPTC素子を硬化性樹脂によってポッティングすることによって予め包囲し、その後、この硬化性樹脂を硬化してポッティング要素を形成し、その後、モールド成形する。ここで、ポッティングとは、いわゆる「樹脂盛り(または樹脂盛りコーティング)」して素子を樹脂で覆い、その後、コーティング樹脂を硬化させることを意味する。通常、層状支持体上に載置されたPTC素子上に硬化性樹脂を盛ってそれを硬化させる。硬化性樹脂の盛りは、層状支持体上に載置されたPTC素子が全体的に樹脂によって覆われるように実施する。その結果、層状支持体上で、PTC素子は硬化した樹脂によって覆われる、即ち、PTC素子を包むコーティングがポッティング要素として形成される。当然ながら、ポッティングに際しても、層状支持体の他方の面の少なくとも一部分を露出状態としておく必要がある。従って、ポッティングとは、露出部分を確保しながら、それ以外の部分を封入すること(encapsulation)とも言える。尚、PTC素子に電流を流すために、PTC素子に接続されたワイヤ(または配線)は、ポッティング要素を通過して外側に延在する必要がある。このように、層状支持体上に載置されたPCT素子をポッティング要素によって覆った後、モールド成形を実施する。
【0025】
ポッティング要素によって覆われたPTC素子をモールド成形する場合、そのようなPTC素子を型に入れた状態で、溶融または軟化した熱い樹脂を型に注入する。その場合、熱い樹脂が直接PTC素子に接触することが無いので、熱い樹脂がPTC素子に与える熱的影響を緩和できる。
【0026】
具体的には、PTC素子に用いられるポリエチレン(PE)の融点は例えば180℃〜240℃であり、そのような素子をモールド成形するための樹脂として例えば約180℃の高温の液状のエポキシ樹脂を型に注入すると、ポッティング要素は、PTC素子とモールド樹脂との間に介在し、その結果、モールド樹脂の高温液体のPTC素子に対する熱的影響の緩衝材として機能する。
【0027】
上述の熱的影響に対する緩衝機能に加えて、あるいは代えて、モールド樹脂、特にそれを型に注入する際の状態の樹脂が、PTC素子に化学的に悪影響を与える可能性がある場合には、ポッティング要素は、PTC素子へのそのような悪影響を抑制する緩衝材として機能できる。例えば、PTC要素を構成するPE等のポリマーは、有機溶剤や油類によって変質・劣化することがある。モールド成形に際して注入する樹脂に含まれる溶融・軟化樹脂に含まれる化学成分(例えば硬化剤)が、PTC素子に直接接触することがポッティング要素によって可及的に防止される。
【0028】
ここで、ポッティング要素を形成する硬化性樹脂は、いずれの適当な硬化性樹脂であってもよい。例えば熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)であるのが好ましい。別の態様では、ポッティング要素を形成する硬化性樹脂は、光または放射線硬化性樹脂であってよい。尚、モールド成形に用いる樹脂が硬化性樹脂である場合、その硬化性樹脂は、ポッティング要素を形成する硬化性樹脂とは異なる樹脂である。このようなポッティング要素を形成する硬化性樹脂は、PTC素子のトリップ温度において、硬化後の線膨張係数がモールド樹脂の線膨張係数より大きいのが好ましく、加えて、PTC素子を構成するPTC要素のポリマーの線膨張係数と同じか、あるいはそれより小さいものがより好ましい。
【0029】
一般的には、ポッティング要素を形成する樹脂の線膨張係数は、硬化後では、Tg(ガラス転移温度)より高い温度において、3.0×10
−5/℃以上であるのが好ましく、また、40.0×10
−5/℃以下、特に30.0×10
−5/℃以下であるのが好ましい。硬化後の樹脂の線膨張係数は、例えば10×10
−5/℃〜20×10
−5/℃である。ポリマーPTC素子を構成するポリマーがポリエチレンである場合、硬化後の樹脂がこの範囲内の線膨張係数を有するのが特に好ましい。例えば、ポッティング要素を構成する樹脂がエポキシ樹脂である場合、その樹脂の線膨張係数は、硬化後では、PTC素子のトリップ温度付近の温度において、3.0×10
−5/℃以上であるのが好ましく、40.0×10
−5/℃以下であるのが好ましい。
【0030】
PTC素子の温度が上昇してPTC素子のポリマーPTC要素が熱膨張する際、PTC要素の膨張によってその体積が大きくなろうとすることによって生じる力は、PTC素子の周辺部を押すことになる。その結果、素子が膨張することによって生じる力は、PTC素子の周辺部が圧縮されることによって生じる力とバランスする。従って、PTC素子の周囲に位置するモールド材が比較的硬い場合、即ち、温度上昇してもそれほど膨張しない場合(即ち、線膨張率が小さい場合)、PTC要素は十分に膨張できず、その結果、PTC特性に悪影響を与えることが考えられる。例えば、トリップ時に十分に高抵抗とならないことが有り得る。
【0031】
この場合、PTC素子とモールド材との間に、比較的柔らかい材料を介在させると、PTC要素の周囲に柔らかい材料が存在することになるので、PTC要素は容易に膨張することができる。そのような柔らかい材料は、比較的大きい線膨張率を有する。従って、線膨張率が大きい材料をポッティング要素として用いると、PTC要素の膨張を妨げることが抑制され、その結果、PTC素子としての特性が可及的に保持される。例えば、そのようなポッティング要素を介在させることによって、ポッティング要素が存在しない場合と比べると、PTCデバイスのR-T特性は、熱によるPTC要素が膨張したトリップ後の抵抗値は、2倍〜4倍となった(後述の
図5参照)。
【0032】
従って、本発明のPTCデバイスにおいて、モールド材の線膨張率は、ポッティング要素の線膨張率より小さいのが特に好ましい。この線膨張率の関係は、PTC素子の少なくともトリップ温度付近(好ましくはトリップ温度±20℃、より好ましくはトリップ温度±10℃、例えばトリップ温度±5℃)において満足されるのが好ましい。
【0033】
次に図面を参照して、本発明のPTCデバイスをより詳細に説明する。
図1は、本発明のPTCデバイスを模式的断面図にて示す。また、
図1のPTCデバイスを
図1の左側から見た様子を、同様にモールド樹脂の内部に位置するPTC素子の様子が分かるように、
図2に模式的平面図にて示す。容易に理解できるように、
図2の中央を通過する垂直方向の直線(
図2の矢印AおよびA’を結ぶ線)に沿って切断した場合の切り口が
図1に相当する。
【0034】
本発明のPTCデバイス10は、ポリマーPTC素子12および層状支持体14を有して成る。層状支持体14は対向する2つの主表面15(一方の表面とも呼ぶ)および主表面15’(他方の表面とも呼ぶ)を有し、一方の主表面15にPTC素子12が載置されている。本発明のPTCデバイス10において、主表面15’が露出すべき表面である。主表面15’は、異常状態(例えば過剰高温、過剰電流等)を検知すべき対象物32に接触する面であり、検知した結果、その異常状態に応じてPTC素子12がトリップする。
【0035】
尚、主表面15’は、その少なくとも一部分、好ましくは大部分、より好ましくは図示するように実質的に全部が対象物32に接触する(対象物32は
図2においては図示せず)。このような接触によって、対象物32から層状支持体14を介して熱が速やかにPTCデバイス10に伝わる。
【0036】
図示した態様では、PTC素子12と層状支持体14との間に、絶縁材料層(例えばセラミック材料層、ガラエポ材料層、あるいは上述のモールドに使用できる樹脂の層等)20が存在する。層状支持体14が導電性材料である場合にはこのように絶縁材料層が介在するのが有効である。層状支持体14と絶縁材料層20とは、ハンダ材料層18によって接続され、絶縁材料層20とPTC素子12との間には銀ペースト層22が存在する。従って、図示した態様では、PTC素子12と層状支持体14とは間接的に接続され、従って、間接的に熱的に接触している。PTC素子12と層状支持体14との間に存在するこれらの層は、いずれも熱伝導性、好ましくは良熱伝導性材料でできている。
【0037】
図示した態様では、層状支持体14の上に配置されたPTC素子12および上述の層(18,20および22)を覆うようにポッティング要素24が存在する。尚、PTC素子の上側(即ち、PTC素子の一方の金属電極)にはワイヤ28の一端が接続されており、これはポッティング要素24を通過して外に延在している。ワイヤ28の他方の端部は、リード26に接続されている。また、PTC素子の下側(即ち、PTC素子の他方の金属電極)には銀ペースト層22を介してワイヤ28’の一端が接続されており、これはポッティング要素24を通過して外に延在している。ワイヤ28の他方の端部は、リード26’に接続されている。尚、理解を容易にするため、リード26’およびワイヤ28’は、
図1では図示していない。
【0038】
このように層状支持体14上に配置されたPTC素子12がモールド成形され、図示するようにモールド樹脂16がPTC素子12およびその下方に位置する種々の層を覆っている。図示するように、モールド樹脂16は、層状支持体14の他方の面15’を覆っておらず、露出させている。即ち、樹脂16内にPTC素子12がモールドされた本発明のPTCデバイスが得られる。尚、層状支持体14は、PTCデバイスを対象物に取り付ける際にネジ留めできるように、ネジ用の開口部30を有する。
【0039】
このような本発明のPTCデバイス10は、最初に、層状支持体14上にPTC素子12を直接的または間接的に載置し、その後、PTC素子12とリード26およびリード26’との間をワイヤボンディングによって接続してワイヤ28およびワイヤ28’を形成する。この状態で、必要に応じて、ポッティングによって樹脂盛りして、これを硬化させてポッティング要素24を形成し、リード26に接続されたPTC素子12が層状支持体14上に載置されたアッセンブリを得る。その後、得たアッセンブリをモールド成形することによって、樹脂16内にモールドされた本発明のPTCデバイス10を得ることができる。
【0040】
尚、PTCデバイスの製造に際して、層状支持体14とリード26および26’とが元々一体であるリードフレームを用意し、ワイヤボンディングを実施してワイヤ28および28’を接続した後に、図示するように、層状支持体とリードとに分離するのが好都合である。なお、ワイヤボンディングを行わず、PTC素子の表および裏側にリード26および26’をそれぞれ直接接続する方法も有効な方法である。
【実施例1】
【0041】
以下に説明するように、本発明のPTCデバイスを製造した。
PTC素子:ポリエチレン(PE、46重量%)およびカーボンブラック(54重量%)を含む導電性ポリマー組成物を押し出して押出物を得、この両主表面に第1および第2金属電極:Niメッキ銅箔を熱圧着して、2種類のPTC素子を得た。これらのPTC素子のトリップ温度(Tr)は、それぞれ95℃および125℃であった。その後、PTC素子の金属電極を金メッキした(メッキ厚さ:0.03μm以下)。PTC素子のサイズは、Tr=95℃の素子については1.6mm×0.8mm×0.3mm(厚さ)であり、Tr=125℃の素子については3.2mm×2.5mm×0.3mm(厚さ)であった。
【0042】
このPTC素子をニッケル下地銀メッキ付の銅・錫合金製(合金製のフレームにニッケルメッキを施し、その上に更に銀メッキを施したもの)のリードフレーム(層状支持体に相当、厚さ:1.3mm)上に載置した。載置に際しては、リードフレーム上に、5mm×3mmのセラミック絶縁基板(Tn/Ni、厚さ0.6mm)を絶縁材料層としてハンダ付け(千住金属M705)し、その上に上記のPTC素子を銀ペースト(パナソニック製DBC130SD)で固定し、150℃で10分保持することによってペーストを硬化させた。このようにして、
図1に示すように、層状支持体14上にハンダ材料層18、絶縁材料層20および接着材料としての銀ペースト層22を介してPTC素子12を載置した。
【0043】
次に、PTC素子の上面とリード26の片端とを、そして、セラミック絶縁基板上の銀ペースト層22とリードフレーム26’の片端とを、
図2に示すようにφ150μmのワイヤボンディング(アルミニウムワイヤ28および28’を使用)を施して、PTC素子とリードフレームとを電気的に接続して、層状支持体14上にPTC素子12が載置されたアッセンブリを得た。
【0044】
次に、得られたアッセンブリのPTC素子12およびその下の層が覆われるように、エポキシ樹脂(Epoxy)(ソマール株式会社製、EPIFORM K−8908)24をポッティングした後、エポキシ樹脂を80℃、7時間で硬化させて、層状支持体上に載置したPTC素子およびその下の層を
図1に示すようにポッティング要素24によって覆うことによって、PTCデバイスの前駆体を得た。
【0045】
その後、PTC要素を載置していないリードフレームの表面15’が露出するように、前駆体を射出型へ取付け、溶融させたモールド材(エポキシ樹脂、住友ベークライト製、スミコンEME6200)を注入した後、180℃で3分間仮硬化させた。仮硬化の後、アッセンブリを型から外し、バリ取りを施した後、アッセンブリを175℃で8時間維持して、モールド材16を本硬化させて本発明の
図1に示すPTCデバイス10(トリップ温度(Tr)が95℃のPTC素子を使用したデバイスと、トリップ温度が125℃のPTC素子を使用したデバイスの2種類)を得た。
【実施例2】
【0046】
別のエポキシ樹脂(ソマール株式会社製、EPIFORM R−2101)を使用してポッティング要素を形成し、その後、モールド成形しなかった以外は、実施例1を繰り返して、ポッティング要素を有する本発明のPTCデバイスの前駆体を得た。但し、Trが95℃のPTC素子を使用した。
【実施例3】
【0047】
別のエポキシ樹脂(ソマール株式会社製、SOMAKOTE KZ−106)を使用してポッティング要素を形成した以外は、実施例2を繰り返して本発明のPTCデバイスの前駆体を得た。但し、Trが95℃のPTC素子を使用した。
【実施例4】
【0048】
別のエポキシ樹脂(ソマール株式会社製、SOMAKOTE KZ−107)を使用してポッティング要素を形成した以外は、実施例2を繰り返して本発明のPTCデバイスの前駆体を得た。但し、Trが95℃のPTC素子を使用した。
【実施例5】
【0049】
シリコーン樹脂(Silicone)(信越ポリマー製、KE−1867)を使用した以外は、実施例1を繰り返して本発明のPTCデバイスを得た。但し、Trが95℃のPTC素子を使用した。
【実施例6】
【0050】
実施例1を繰り返して本発明のPTCデバイスを得た。但し、本実施例では、上述のポッティング要素を形成しないで本発明のPTCデバイスを得た。使用したPTC素子は、Trが125℃のものであった。
【0051】
(1)PTC特性の確認
上述のようにして得られた種々のPTCデバイスまたはその前駆体について、その周囲の温度を5℃ずつ上昇させ、その温度雰囲気で10分間保持した後、PTCデバイスの抵抗を測定することを繰り返して、PTCデバイスまたはその前駆体の抵抗(R)−温度(T)特性を評価した。測定温度範囲は20℃〜160℃とした。
尚、抵抗は、2つのリード間の抵抗値を測定することによって求めた。これらのPCTデバイスおよびその前駆体に加えて、PTC素子自体(ポッティング要素を有さず、また、モールド成形もしていないもの)および比較例としての無機PTC素子(村田製作所製、商品名:ポジスタ、125℃を検知する素子)についても、同様に抵抗を測定した。
【0052】
測定結果を下記の表1および表2に示す。尚、表において、硬化後の樹脂(PEは以外)のガラス転移温度(Tg)、Tgより高い温度(T>Tg)における線膨張係数およびTgより低い温度(T<Tg)における線膨張係数をも示す。また、実施例1(Trが125℃のPTC素子を使用したPTCデバイス)、実施例5のデバイスおよび実施例6のデバイスの測定に関しては、測定結果を
図3〜
図5に示す。
【0053】
【0054】
【0055】
表1の結果から明らかなように、95℃検知のいずれのPTCデバイスについても、PTC素子と同様に、室温(25℃)条件における抵抗値は非常に小さく、トリップ温度以下のやや高い温度(60℃)における抵抗値もそれほど大きくはないが、トリップ温度付近では、非常に大きい抵抗値を示し、これは、本発明のPTCデバイスがPTC素子としての適切な性質を有することを意味する。
【0056】
表2の結果から明らかなように、トリップ温度が125℃のPTC素子を用いる場合、ポッティング要素を有する場合(実施例1)とポッティング要素を有さない場合(実施例6)のそれぞれに関し、モールドしたいずれのPTCデバイスについても、PTC素子と同様に、室温(25℃)条件における抵抗値は非常に小さく、トリップ温度以下のやや高い温度(100℃)における抵抗値もそれほど大きくはないが、トリップ温度付近では、非常に大きい抵抗値を示し、これは、本発明のPTCデバイスがPTC素子としての適切な性質を有することを意味する。また、この結果より、ポッティング加工していない(即ち、ポッティング要素を有さない)実施例6のトリップ時の抵抗は、ポッティング加工した実施例1のトリップ時の抵抗の約半分程度と低く、ポッティング加工がPTC素子の膨張に若干の影響を与え得ることが推測される。
【0057】
図3に実施例1の本発明のPTCデバイス(Trが125℃のPTC素子を使用)のR−T測定結果を示す。尚、
図3には、Trが125℃のPTC素子自体のR−T測定結果、および比較例としてのセラミックPTC素子の測定結果を一緒にプロットしている。
【0058】
図3から、実施例1の本発明のデバイスおよび比較例(125℃検知)の無機PTC素子については約120℃〜130℃の範囲に閾温度(PTC素子の温度が室温から上昇してトリップ温度(trip temperature)とも呼ばれる温度付近でPTC素子の抵抗が急激に増加する温度)を有し、いずれについても、そのような範囲の後の抵抗値は、前の抵抗値の少なくとも約10
6倍以上となっており、従って、PTCデバイスおよび無機PTC素子は、いずれもPTC素子としてのスイッチング機能を有することが明らかである。尚、一般的には抵抗値が少なくとも約10
3倍以上大きくなると、PTC素子としての機能を有すると考えてよい。
【0059】
また、モールド加工を施した本発明のPTCデバイスと無機PTCデバイスを比較すると、トリップ前後の抵抗値の増加の割合および抵抗のシャープな増加については、本発明のPTCデバイスが無機PTC素子より遥かに優れていることが分かる。即ち、本発明のPTCデバイスは、ポリマーPTC素子と大差の無いR−T特性を示し、その特性は、無機PTC素子の特性より明らかに優れている。
【0060】
図4に実施例5のPTCデバイス(Trが95℃のPTC素子を使用)のR−T測定結果を示す。尚、
図4には、Trが95℃のPTC素子自体のR−T測定結果の測定結果を一緒にプロットしている。
【0061】
図4から、本発明(実施例5)のPTCデバイス及び何も施していないPTC素子共に、95℃前後でトリップする閾温度を有し、またいずれも約10
4倍以上の抵抗値の上昇が見られ、十分なトリップ特性を示していることが分かる。即ち、本発明のデバイスにおいて、シリコーン樹脂のような他のポッティング材を用いる場合であっても、本発明のPTCデバイスは、PTC素子と大差の無いR−T特性を示し、その特性は、PTC素子として使用するのに十分な特性である。
【0062】
図5に実施例6のPTCデバイス(Trが125℃のPTC素子を使用)のR−T測定結果を示す。尚、
図5には、
図3と同様に、Trが125℃のPTC素子自体のR−T測定結果、およびそれを用いて得られた本発明のPTCデバイスの測定結果を一緒にプロットしている。
【0063】
図5から、本発明(実施例6)のポッティング要素を有さないPTCデバイスは、ポッティング要素を有する実施例1と同様に、125℃前後でトリップする閾温度を有していることがわかる。また、実施例6はポッティング要素を有さないことにより若干PTC要素の膨張が妨げられることが考えられ、実施例1に比べて2〜4分の1程度にトリップ時の抵抗値が低くなっているが、いずれにしても約10
4倍以上の抵抗値の上昇が見られ、十分なトリップ特性を示していることが分かる。即ち、ポッティング要素を省略した場合であっても、本発明のPTCデバイスは、PTC素子と大差の無いR−T特性を示し、その特性は、PTC素子として使用するのに十分な特性である。
【0064】
(2)PTCデバイスの熱反応特性の確認
実施例1の本発明のPTCデバイス(Tr=125℃のPTC素子を使用)について、デバイスの周辺環境の温度を所定時間的割合で上昇させた場合のPTCデバイスの温度および抵抗値を測定することによって、PTCデバイスの熱反応特性試験を実施した。
【0065】
具体的には、ホットプレート(アズワン製、EC−1200NP)上に、PTCデバイスの層状支持体の露出面がホットプレートに接するように、デバイスを耐熱テープで固定し、熱電対(TC-K-H-0.1-1WP)をホットプレート表面及びデバイスの層状支持体の露出面に取付け、ホットプレート温度を20℃〜160℃まで上昇させた。
【0066】
このように上昇させる間、所定時間毎に本発明のPTCデバイスの抵抗値および熱電対の温度を測定した。これらは、データロガー(KEYENCE製、GR−3000)で測定し、それらの測定結果を時間に対してプロットしたものを
図6に示す。また、比較のため、無機PTC素子(モールド型セラミックPTC素子、村田製作所製、PTFM04BB222Q2N34B0)を同様にホットプレート上で加熱させたときのデータを
図7に示す。
【0067】
図6の結果から、本発明のPTCデバイスでは、ホットプレートの温度が100℃から130℃に達する約25秒の間、本発明のPTCデバイスは20秒〜25秒でトリップ状態に達していることがわかる。
【0068】
また、
図7の結果から、セラミックPTC素子についても同様に、ホットプレートの温度が100℃から130℃へ到達する約25秒の間、PTC素子の温度は殆ど変化せず、30秒を経過した後、緩やかに温度上昇を開始し、その後、トリップしていることがわかる。
【0069】
これらの結果から、本発明のPTCデバイスは、無機PTC素子と比較して、検知対象とするホットプレートの温度変化に非常に速い時間で反応し、急峻な抵抗上昇を示す。即ち、本発明のPTCデバイスは、温度を検知すべき対象の温度をより速やかに、そしてより精度良く検知できることがわかる。