【実施例】
【0083】
6.実施例
以下の実施例では、RGD配列を免疫特異的に認識するモノクローナル抗体の調製、モノクローナル抗体のV領域の配列決定、抗体のエピトープマッピングおよび他の特徴付け、ならびにこのような抗体のキメラ化およびヒト化、ならびに得られたキメラ抗体およびヒト化抗体の特徴付けを例示する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0084】
6.1.RGD配列に対するマウス抗体の調製
RGD配列に対するマウスモノクローナル抗体をサブトラクティブ免疫化法(subtractive immunization method)(Williams C.V.ら、1992、Biotechniques12:842〜847による)に従って調製した。RGD配列を含むアミノ酸配列CVDVPNGRGDSLAYGLR(配列番号71)およびECMタンパク質の細胞接着性配列であるアミノ酸配列SLAYGLR(配列番号72)の合成ペプチドとして抗原を調製した。抗原ペプチドをEMCS(Dojin)を介してサイログロブリンに結合させ、これを抗原としてアジュバントと共にマウスに免疫した。ハイブリドーマを当技術分野でよく知られている方法(例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas掲載、563〜681ページ(Elsevier,N.Y.、1981)を参照されたい)によって調製した。4回免疫した後、脾細胞を収集し、骨髄腫細胞X63−Ag8−653と融合した。次いで、HAT培地を使用し、ELISA(抗原ペプチド固相)を用いて培養上清をスクリーニングすることにより、RGD配列に免疫特異的に反応性を示すモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを選択した。RGD配列を免疫特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを単離すると、8つのハイブリドーマクローン4P11、11M6、25H15、29R5、30C17、33E10、35B6および38I8を樹立した。チオールセファロースビーズ(Amasham Bioscience)を使用することによって調製された抗原ペプチドカラムを使用することにより、抗体をハイブリドーマの上清から精製した。
【0085】
6.2.抗RGD配列モノクローナル抗体のエピトープ分析
アミノ酸配列CLPVKTDSGSSEEKLY(mOPN1)(配列番号73)、CVDVPNGRGDSLAYGLR(mOPN5)(配列番号71)、CVDVPNGRGDS(配列番号74)、CPNGRGD(配列番号75)、CGRGDSLAYGLR(配列番号76)、CGDSLAYG(配列番号77)、CGDSLAUGLR(配列番号78)およびCSLAYGLR(配列番号72)からなる、マウスOPNに由来する部分ペプチドを含むペプチド、アミノ酸配列CVDTYDGRGDSVVYGLRS(配列番号79)およびCSVVYGLR(配列番号80)からなる、ヒトOPNに由来する部分ペプチドを含むペプチド、ならびにアミノ酸配列CGRGDS(配列番号81)の、ヒトOPNおよびマウスOPNの共通のペプチド配列を含むペプチドを、EMCS(同仁化学研究所)を介してBSA(Sigma corporation)に結合させ、ELISAに使用した。
【0086】
96ウェルプレートにペプチド(10μg/ml)またはタンパク質(5μg/ml)を37℃で1時間培養することによって固定化し、0.1%BSA/PBS/0.05%NaN
3溶液でブロッキングし、次いで様々な濃度の抗体と37℃で1時間反応させた。次に、プレートを二次抗体であるHRP標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)と37℃で30分間反応させ、OPDを色素原として添加し、1N H
2SO
4を添加して反応を停止させ、次いで490nmでの吸光度を検出した。
【0087】
図1、
図2、
図3、
図4および
図5に示すとおり、モノクローナル抗体4P11、11M6、25H5、35B6および33E10は、mOPN5およびhOPN5に結合し、RGDタンパク質のマウスおよびヒト部分ペプチドを認識する。モノクローナル抗体33E10は、GRGDS(配列番号81)、VDVPNGRGDS(配列番号74)およびPNGRGD(配列番号75)を認識したが、OPNのRGDに続く配列を含むSLAYGLR(配列番号72)またはSVVYGLR(配列番号80)を認識しなかった。モノクローナル抗体33E10は、GRGDS(配列番号81)、VDVPNGRGDS(配列番号74)およびPNGRGD(配列番号75)に共通に含まれるRGD配列を認識し、ヒトペプチドとマウスペプチドの両方に結合することができる。モノクローナル抗体35B6は、GRGDSLAYGLR(配列番号76)、GDSLAYG(配列番号77)およびGDSLAYGLR(配列番号78)を認識したが、GRGDS(配列番号81)、VDVPNGRGDS(配列番号74)またはPNGRGD(配列番号75)を認識しなかった。モノクローナル抗体35B6は、GDを含む、RGDに続く配列を認識する。モノクローナル抗体29R5、30C17および38I8は、GRGDS(配列番号81)、SLAYGLR(配列番号72)およびSVVYGLR(配列番号80)にはわずかな反応性しか示さなかったが、mOPN5にだけ反応し、それにより、これらのモノクローナル抗体はマウスOPNのVDVPNGRGDSLAYGLR(配列番号71)を認識することが示される。
【0088】
6.3.抗RGD抗体のCDR分析
モノクローナル抗体33E10および35B6のCDRのアミノ酸配列を以下の手順によって決定した。RNeasy Miniキット(Qiagen)を使用して対応するハイブリドーマからRNAを抽出し、First−strand cDNA synthesisキットを使用してcDNAを調製した。抗体のH鎖cDNAを、Heavy primer amplificationキット(Amasham Bioscience)を使用したPCRによって増幅し、pCRII−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングし、次いでcDNA配列およびアミノ酸配列を決定した。ABG:Directory of 3D structures of antibodies(http://www.ibt.unam.mx/vir/structure/structures.html)によってCDRを決定した。V鎖およびL鎖のCDRは以下のとおりである(
図6および
図7にも示す)。
(H鎖)
[CDRH1]
33E10:GFTFTDYYMI(配列番号1)
35B6:GYTFTNYWMH(配列番号7)
[CDRH2]
33E10:WLGFIRNKANGYTTEYSASVKG(配列番号2)
35B6:WIGNINPRNGDSNYNEKFRS(配列番号8)
[CDRH3]
33E10:GAY(配列番号3)
35B6:GYFDV(配列番号9)
(L鎖)
[CDRL1]
33E10:RSSQSIVHSNGNTYLE(配列番号4)
35B6:KASQDINSYLS(配列番号10)
[CDRL2]
33E10:RVSNRFS(配列番号5)
35B6:RANRLVD(配列番号11)
[CDRL3]
33E10:GSFVPW(配列番号6)
35B6:YDEFPF(配列番号12)
【0089】
本実施例では、CDRをABGによって決定した。しかし、他のプログラムを使用してCDRを決定することもでき、それによりある程度異なる配列が得られることもあることは当技術分野でよく知られている。
【0090】
6.4.RGD配列を有するECMタンパク質に対する結合能
ヒトOPN(hOPN)遺伝子またはマウスOPN(mOPN)遺伝子をそれぞれ導入したCHO−K1細胞の培養上清から、抗OPN抗体カラムを使用することにより、hOPNまたはmOPNをそれぞれ精製した。ヒトビトロネクチン(以下「VN」と略記する)はAGC TECHNO GLASS Co.,Ltdから得た。ヒトフィブロネクチン(以下「FN」と略記する)、ヒトトロンボスポンジンおよびマウスラミニンはSigma Corporationから得た。
【0091】
上記で得たhOPN、mOPN、FN、VNまたはラミニンを固定化した96ウェルプレートを使用したELISAにより、ECMタンパク質に対するモノクローナル抗体33E10および35B6の結合能を検出した。96ウェルプレートにペプチド(10μg/ml)またはタンパク質(5μg/ml)を37℃で1時間培養することによって固定化し、0.1%BSA/PBS/0.05%NaN
3溶液でブロッキングし、次いで様々な濃度の抗体と37℃で1時間反応させた。次に、プレートを二次抗体のHRP標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)と37℃で30分間反応させ、OPDを色素原として添加し、1N H
2SO
4を添加して反応を停止させ、次いで490nmでの吸光度を検出した。
【0092】
図8にその結果を示した。モノクローナル抗体33E10は、試験したすべてのECMタンパク質と交差反応性を示したが、ラミニンとは低い反応性を示した。モノクローナル抗体35B6は、hOPNおよびmOPNと反応性を示したが、ラミニンとは反応性を示さなかった。
【0093】
6.5.細胞接着阻害活性
細胞接着にはRGDペプチドとそのリガンド、すなわちインテグリンなどとの結合が関与することが知られているので、単離された抗RGD抗体をその細胞接着阻害活性について検討した。ヒトOPN(hOPN)遺伝子またはマウスOPN(mOPN)遺伝子をそれぞれ導入したCHO−K1細胞の培養上清から、抗OPN抗体カラムを使用することにより、hOPNまたはmOPNをそれぞれ精製した。大腸菌から単離することによる、トロンビン切断型mOPNのN末端部分とのグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として、mOPNのN半分を精製した。ヒトFNおよびヒトVNはSigma Corporationから得た。
【0094】
50μlのタンパク質を96ウェルプレートの各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートし、プレート上に固定化した。プレートをブロッキング溶液(0.5%BSA/PBS)でブロッキングし、PBSで1回洗浄した後、NIH3T3細胞を0.25%BSA−最小必須培地(MEM)に懸濁させ、単離されたモノクローナル抗体を1.0×10
5細胞/mlの最終濃度で混合し、プレートに200μl/ウェルで添加し、5%CO
2下、37℃で1時間インキュベートした。非接着細胞をPBSですすぎ、接着細胞を固定し、0.5%Crystal Violet(和光純薬工業、大阪、日本による)/20%メタノールで染色した。染色細胞を室温で30分間静置させた。プレートを蒸留水で洗浄し、それに20%酢酸溶液を添加して溶解させた。590nmでのODを測定することによって接着活性を定量した。
【0095】
mOPNのN半分を固定化した96ウェルプレートに、NIH3T3細胞とモノクローナル抗体33E10または35B6の混合物を添加し、NIH3T3細胞とmOPNのN半分との結合に及ぼす抗体の効果を検討した。mOPNのN半分、FNまたはVNをそれぞれ固定化した96ウェルプレートに、NIH3T3細胞とモノクローナル抗体33E10の混合物を添加し、NIH3T3細胞と各タンパク質との結合に及ぼす抗体の効果を検討した。
【0096】
図9および
図10A〜10Cに示すとおり、NIH3T3細胞はmOPNのN半分に接着し、この接着を抗RGD抗体によって阻害した。モノクローナル抗体33E10は、モノクローナル抗体35B6と比較して強い阻害活性を示した。NIH3T3細胞は、検討したすべてのECMタンパク質に接着した。モノクローナル抗体33E10は、mOPNのN半分との細胞接着を阻害したが、FNまたはVNとの細胞接着を阻害しなかった。したがって、モノクローナル抗体33E10はOPNと細胞の間の接着を特異的に阻害することが示される。
【0097】
6.6.抗RGD抗体の治療効果
抗RGD抗体の治療効果をマウス系において検討した。抗RGDモノクローナル抗体(4P11、11M6、29R5、30C7、38I8、33E10および35B6)を抗RGD抗体についての記載(セクション6.1、前掲を参照されたい)と実質的に同様に調製した。
【0098】
6.6.1.肝炎に対する治療効果
WO02/081522は、OPN機能を阻害することによって肝炎を治療できることを開示している。したがって、マウス肝炎モデルにおいてマウス抗RGD抗体(4P11、11M6、29R5、30C7、38I8、33E10および35B6)を使用して抗RGD抗体の治療効果を試験した。マウス(マウス5匹/群)の血中ASTおよびALTレベルを、200μgのコンカナバリンA(ConA)(Vector)の静脈内投与から12時間後、GPT/ALT−PIIIおよびGOT/AST−PIII(富士フイルム)を使用して測定した。ConA注射の3時間前に抗体を200μg投与した。対照抗体としてマウスIgGを使用した。
【0099】
図11に示すとおり、モノクローナル抗体25H15はいかなる治療効果も示さなかったが、モノクローナル抗体4P11、11M6、29R5、30C17および38I8は治療効果を示した。モノクローナル抗体33E10または35B6を投与したマウスは、ASTおよびALTレベルの増大を示さなかった。したがって、この結果から、モノクローナル抗体33E10または35B6によって肝炎を治療する可能性があることが明らかになった。
【0100】
6.6.2.マウス癌細胞株の転移に及ぼす抗RGD抗体の効果
肺転移のマウス実験モデルおよび自然発症モデルにおいて転移に及ぼす抗RGD抗体の効果を試験した。
【0101】
実験モデルでは、400μg/マウスのモノクローナル抗体と混合したマウスメラノーマ細胞株B16−Luc細胞(1×10
5細胞/マウス)をC57BL/6マウスの尾静脈に注射し、注射から14日後、肺転移数をカウントした。対照として同じ種類の抗体(mIgG1)を使用した。
【0102】
自然発症モデルでは、マウスメラノーマ細胞株B16−BL6細胞(4×10
5細胞/マウス)をC57BL/6マウスの左足蹠に皮下注射した。注射から19日後、原発性腫瘍を外科的に切除し、切除から14日後(B16−BL6細胞の注射から33日後)、屠殺したマウス由来の肺における腫瘍コロニーの数をカウントした。200μg/マウスのモノクローナル抗体を腫瘍細胞の注射から3、5、7、9、11、13、15および17日後の8回、腹腔内投与した。原発性腫瘍のサイズは切除までに測定した。外科切除から14日後、肺における腫瘍コロニーの数をカウントした。対照として同じ種類の抗体(mIgG1)を使用した。
【0103】
図12A〜12Bにマウス実験モデルの結果を示す。モノクローナル抗体33E10または35B6を投与したマウスにおける肺転移の平均数は対照と比較して少なかった。モノクローナル抗体35B6は肺転移を有意に阻害した。
【0104】
図13A〜13Cは、マウス自然発症モデルにおける以下のフォーマット:原発性腫瘍サイズの経日変化、肺転移コロニーの数、および体重変化の結果を示す。モノクローナル抗体33E10または35B6のいずれかを投与したマウスにおける原発性腫瘍のサイズは、対照マウスと比較して小さかった。したがって、その結果から、モノクローナル抗体33E10または35B6によって腫瘍増殖を阻害する可能性があることが示される。対照群における5匹のマウスのうち2匹が非常に多数の肺転移コロニーを示したので、35B6に関しては統計学的有意差が示されなかった。しかし、モノクローナル抗体33E10または35B6を投与したマウスにおける肺転移の平均数は対照抗体と比較して少なかった。したがって、モノクローナル抗体33E10または35B6は癌転移を阻害することが示される。
【0105】
6.6.3.マウス関節リウマチモデルにおける抗RGD抗体の治療効果
II型コラーゲン特異的モノクローナル抗体(IBL、日本)のカクテルを供給元のプロトコールに従って使用して、マウスに関節リウマチを誘発した。すなわち、マウス(Balb/c)にII型コラーゲン特異的モノクローナル抗体のカクテルを注射し、注射の3日後、LPSを注射して関節リウマチを発症させた。抗RGDモノクローナル抗体または正常ハムスターIgG(NHG)をコラーゲン抗体注射の前日からコラーゲン抗体注射の6日後まで全8回200μg/マウス/日で腹腔内に投与した。マウスをコラーゲン抗体注射の日から毎日観察し、各足を関節の紅斑および腫脹に基づいて0から4までに類別することによって関節炎のレベルをスコア付けした(0=紅斑または腫脹なし;1=つま先などの1つの小さい関節に紅斑または腫脹あり;2=小さい関節の2つ以上に紅斑または腫脹あり、または手首または足首などのより大きい関節に紅斑または腫脹あり;3=足全体に紅斑または腫脹あり;4=足全体に完全な紅斑または腫脹あり;マウス(4足)1匹の最大スコア16)。
【0106】
その結果を
図14に示す。対照NHGを注射したマウスは高スコアを示し、関節リウマチを発症したが、抗RGD抗体33E10または35B6をそれぞれ注射したマウスは低スコアを示し、関節リウマチの発症は完全に遮断された。したがって、この結果に照らして、抗RGD抗体は関節リウマチに対して予防的および治療的効果を有することが示された。
【0107】
6.6.4.マウス子宮内膜症モデルにおける抗RGD抗体の治療効果
子宮内膜症の症状は、嚢胞形成、周囲の間質における炎症、子宮内膜腺上皮の異所的な増殖による平滑筋化生、神経新生および血管形成を示す。免疫組織化学的方法により、オステオポンチン(OPN)がヒト子宮内膜症およびラット子宮内膜症モデルにおいて高度に発現されることが報告された。したがって、抗RGD抗体(33E10)による動物モデル対する治療効果を子宮内膜症に対する新たな療法として調べた。
【0108】
C57BL/6J雌性マウス(9週齢)を使用した。子宮内膜症モデルとして18匹のマウスを準備した。右の子宮を切除し、子宮の2mm×2mm角の2つ小片を腹部に自己移植した。左の子宮は参照用に処置しなかった。マウス抗RGD抗体(500μg/頭部、ip)を9匹のマウス(処置群)に週2回4週間(8回投与の全投与量:4000μg/頭部)施した。対照群(マウス9匹)には抗体を投与しなかった。投与後、形成された嚢胞の数を確認し、組織学的検査によって病的変化を観察した。
【0109】
その結果を表1に示した。2つの群に体重の差はなかった。処置群の出現した子宮内膜症の数は対照群よりも著しく少なかった。形成された嚢胞の重量は明らかに減少し、処置群は対照群の平均して約1/3であった。免疫組織化学的検査により、子宮内膜腺上皮におけるOPN発現が抗体処置によって抑制されることを確認することができた。処置群の間質における平滑筋の厚さは、対照群の1/2に減少した。
【0110】
マウス子宮内膜症モデルは抗RGD抗体の投与による治療効果を示した。
【0111】
【表1】
【0112】
6.7.非ヒト抗体のヒト化
6.7.1.マウス33E10可変領域遺伝子のクローニングおよび配列決定
7.5%CO
2インキュベーターにおいて10%ウシ胎児血清(FBS;HyClone、Logan、UT)を含有するTIL培地I(免疫生物研究所、群馬、日本)中、37℃でマウス33E10ハイブリドーマ細胞を増殖させた。TRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を供給元のプロトコールに従って使用して、約3×10
6ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。GeneRacer Kit(Invitrogen)を供給元のプロトコールに従って使用して、オリゴdTプライマーによるcDNAを合成した。35B6重鎖および軽鎖の可変領域cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、マウスγ−1およびκ鎖定常領域にそれぞれアニーリングする3’プライマー、ならびにGeneRacer Kitにおいて提供されるGeneRacer5’プライマー(5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’)(配列番号84)を使用して、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Beverly、MA)を用いて増幅した。VHのPCR増幅については、3’プライマーは配列5’−GCCAGTGGATAGACAGATGG−3’(配列番号85)を有する。VLのPCR増幅については、3’プライマーは配列5’−GATGGATACAGTTGGTGCAGC−3’(配列番号86)を有する。増幅されたVHおよびVL cDNAをpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングして配列を決定した。可変領域のDNA配列決定をTocore(Menlo Park、CA)で実施した。いくつかの重鎖および軽鎖クローンの配列を決定し、典型的なマウス重鎖および軽鎖可変領域に相同である固有の配列を同定した。33E10 VHおよびVLのコンセンサスcDNA配列を推定アミノ酸配列と一緒にそれぞれ
図15および16に示す。
【0113】
6.7.2.キメラ33E10 IgG1/κ抗体の構築
33E10 VHをコードする遺伝子は、PCRにより、鋳型として33E10 VH cDNA、5’プライマーとして5’−GGG
ACTAGTACCACCATGAAGTTGTGGCTGAACTGGATT−3’(SpeI部位は下線付き)(配列番号87)および3’プライマーとして5’−GGG
AAGCTTGAAGTTAGGACTCACCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCCC−3’(HindIII部位は下線付き)(配列番号88)を使用して、スプライスドナーシグナルおよび適切なフランキング制限酵素部位を含むエキソンとして作製した(
図17)。同様に、33E10 VLをコードする遺伝子は、PCRにより、鋳型として33E10 VL cDNA、5’プライマーとして5’−GGG
GCTAGCACCACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCTGTTG−3’(NheI部位は下線付き)(配列番号89)および3’プライマーとして5’−GGG
GAATTCTTTGGATTCTACTTACGTTTGATTTCCAGCTTGGTGCCTCC−3’(EcoRI部位は下線付き)(配列番号90)を使用して、スプライスドナーシグナルおよび適切なフランキング制限酵素部位を含むエキソンとして作製した(
図18)。33E10 VHおよびVLエキソンのスプライスドナーシグナルは、それぞれマウス生殖系列JH3およびJκ1配列に由来するものであった。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Valencia、CA)を使用してPCR増幅断片をゲル精製し、SpeIおよびHindIII(VHについて)またはNheIおよびEcoRI(VLについて)で消化し、ヒトγ−1およびκ定常領域を担う哺乳動物発現ベクター中にクローニングしてキメラ33E10 IgG1/κ抗体を産生した。得られた発現ベクターpCh33E10の概略構造を
図19に示す。
【0114】
6.7.3.ヒト化33E10 VHおよびVL遺伝子の作製
33E10可変領域のヒト化をQueenら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:10029〜10033、1989)に概説されているとおりに実施した。まず、コンピュータプログラムを利用して33E10可変領域の分子モデルを構築した。次に、ヒト可変領域配列に対する相同性検索に基づいて、33E10 VHと高い相同性を有するU03400(GenBankアクセッション番号)のヒトアミノ酸配列を、ヒト化33E10 VHのフレームワークを提供するアクセプターとして選択した。同様に、X72452(GenBankアクセッション番号)のヒトアミノ酸配列を33E10 VLのヒト化用のアクセプターとして選択した。
【0115】
コンピュータモデルがCDRとの有効な接触を提案したフレームワーク位置で、ヒトフレームワークアミノ酸をマウス33E10可変領域のアミノ酸で置換した。30位および48位でこれを実施して、ヒト化33E10(Hu33E10)VHを作製した(
図20)。軽鎖については、置き換えることを必要とせずに、ヒト化33E10(Hu33E10)VLを作製した(
図21)。33E10、設計したHu33E10およびヒトアクセプターアミノ酸配列のアライメントをVHについては
図20、VLについては
図21に示す。
【0116】
Hu33E10 VHおよびVLのぞれぞれをコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライスドナーシグナルおよび適切な制限酵素部位を含むエキソンとして設計して、続いて哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。Hu33E10 VHおよびVLエキソンのスプライスドナーシグナルは、それぞれヒト生殖系列JH4およびJκ1配列に由来するものであった。マウス33E10 VL遺伝子のシグナルペプチド配列は、SIG−Predシグナルペプチド予測ソフトウェア(http://bmbpcu36.leeds.ac.uk/prot_analysis/Signal.html)により、正確な切断に部分最適であることが示された。したがって、SIG−Predソフトウェアによって効率的かつ正確に切断すると予測された、マウスモノクローナル抗体35B6のVL遺伝子のシグナルペプチド(ジーンテクノサイエンス)をHu33E10 VLエキソンにおいて使用した。Hu33E10 VHエキソンにおけるシグナルペプチド配列は、対応するマウス33E10 VH配列に由来するものであった。SIG−Predソフトウェアにより、Hu33E10 VH遺伝子のシグナルペプチドが効率的かつ正確に切断されることが示された。
【0117】
Hu33E10 VHおよびVL遺伝子は、Heら(J.Immunol.160:1029〜1035、1998)に概説されているとおり、Phusion DNAポリメラーゼを使用して、いくつかの重複している合成オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122および123)の伸長およびPCR増幅によって構築した。Hu33E10 VHおよびVL遺伝子の構築に使用されたオリゴヌクレオチドをそれぞれ
図22および
図23に記載する。Hu33E10 VHおよびVL遺伝子におけるオリゴヌクレオチドの位置をそれぞれ
図24および25を示す。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を使用してPCR増幅断片をゲル精製し、pCR4Blunt−TOPOベクター中にクローニングして配列を決定した。SpeIおよびHindIII(VHについて)またはNheIおよびEcoRI(VLについて)で消化した後、Hu33E10 VHおよびVL遺伝子を哺乳動物発現ベクター中の対応する部位にサブクローニングしてヒトIgG1/κの形で産生した。得られた発現ベクターpHu33E10の概略構造を
図19に示す。得られたHu33E10 VHおよびVL遺伝子のヌクレオチド配列を推定アミノ酸配列と一緒にそれぞれ
図26(配列番号52)および
図27(配列番号54)に示す。
【0118】
6.7.4.キメラおよびヒト化33E10 IgG1/κの一過性発現
キメラおよびヒト化33E10 IgG1/κ抗体は、Durocherら(Nucl.Acids Res.30:e9、2002)に従ってポリエチレンイミンを使用してpCh35B6およびpHu35B6プラスミドDNAをそれぞれHEK293細胞にトランスフェクトすることによって一過性に発現させる。一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞を、7.5%CO
2インキュベーターにおいて10%FBSを含有するDMEM中、37℃で2日間維持する。培養上清におけるCh33E10およびHu33E10 IgG1/κ抗体のそれぞれの発現レベルをサンドイッチELISAによって測定する。ELISAプレートをPBS中2,000倍希釈したヤギ抗ヒトIgG Fcγ鎖特異的ポリクローナル抗体(SouthernBiotech、Birmingham、AL)を100μl/ウェルで加えて4℃で一晩コーティングし、Wash Buffer(0.05%Tween20を含有するPBS)で洗浄し、Blocking Buffer(2%Skim Milkおよび0.05%Tween20を含有するPBS)を300μl/ウェルで加えて室温で1時間ブロッキングする。Wash Bufferで洗浄した後、ELISA Buffer(1%Skim Milkおよび0.025%Tween20を含有するPBS)中で適切に希釈した試料を100μl/ウェルでELISAプレートにアプライする。ヒト骨髄腫血清(SouthernBiotech)から精製したヒトIgG1/κ抗体を標準物質として使用する。ELISAプレートを室温で2時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、2,000倍希釈したHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトκ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech)を100μl/ウェルで使用して、結合した抗体を検出する。室温で1時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、ABTS基質(bioWORLD、Dublin、OH)を100μl/ウェルで添加することによって発色を実施する。2%シュウ酸を100μl/ウェルで添加することによって発色を停止させる。405nmでの吸光度を読み取る。
【0119】
6.7.5.ヒト化35B6の特徴付け
ELISAにより、ヒト化35B6 IgG1/κの親和性をキメラ33E10 IgG1/κと比較する。抗原として、ウシ血清アルブミンとコンジュゲートした合成オリゴペプチド(Cys−Val−Asp−Thr−Tyr−Asp−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Val−Val−Tyr−Gly−Leu−Arg−Ser)(hOPN5−BSA)を使用する。典型的な実験において、ELISAプレートをPBS中1μg/ml hOPN−BSAを100μl/ウェルで加えて4℃で一晩コーティングし、Wash Bufferで洗浄し、Blocking Bufferを300μl/ウェルで加えて室温で1時間ブロッキングする。Wash Bufferで洗浄した後、ELISA Buffer中で適切に希釈した試料を100μl/ウェルでELISAプレートにアプライする。ELISAプレートを4℃で一晩インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、2,000倍希釈したHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトγ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech)を100μl/ウェルで使用して、結合した抗体を検出する。室温で1時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、ABTS基質を100μl/ウェルで添加することによって発色を実施し、2%シュウ酸を100μl/ウェルで添加することによって停止させる。405nmでの吸光度を読み取る。
【0120】
6.7.6.マウス35B6可変領域遺伝子のクローニングおよび配列決定
7.5%CO
2インキュベーターにおいて10%ウシ胎児血清(FBS;HyClone、Logan、UT)を含有するTIL培地I(免疫生物研究所、群馬、日本)中、37℃でマウス35B6ハイブリドーマ細胞を増殖させた。TRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を供給元のプロトコールに従って使用して、約3×10
6ハイブリドーマ細胞から全RNAを抽出した。GeneRacer Kit(Invitrogen)を供給元のプロトコールに従って使用して、オリゴdTプライマーによるcDNAを合成した。35B6重鎖および軽鎖の可変領域cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、マウスγ−1およびκ鎖定常領域にそれぞれアニーリングする3’プライマー、ならびにGeneRacer Kitにおいて提供されるGeneRacer5’プライマー(5’−CGACTGGAGCACGAGGACACTGA−3’)(配列番号84)を使用して、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs、Beverly、MA)を用いて増幅した。VHのPCR増幅については、3’プライマーは配列5’−GCCAGTGGATAGACAGATGG−3’(配列番号124)を有する。VLのPCR増幅については、3’プライマーは配列5’−GATGGATACAGTTGGTGCAGC−3’(配列番号125)を有する。増幅されたVHおよびVL cDNAをpCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローニングして配列を決定した。可変領域のDNA配列決定をTocore(Menlo Park、CA)で実施した。いくつかの重鎖および軽鎖クローンの配列を決定し、典型的なマウス重鎖および軽鎖可変領域に相同である固有の配列を同定した。35B6 VHおよびVLのコンセンサスcDNA配列を推定アミノ酸配列と一緒にそれぞれ
図28および29に示す。
【0121】
6.7.7.キメラ35B6 IgG1/κ抗体の構築
35B6 VHをコードする遺伝子は、PCRにより、鋳型として35B6 VH cDNA、5’プライマーとして5’−GGG
ACTAGTACCACCATGGGATGGAGCTGTATCCTC−3’(SpeI部位は下線付き)(配列番号126)および3’プライマーとして5’−GGG
AAGCTTAAAAAAAGCCAGCTTACCTGAGGAGACGGTGACCGTGGTCCC−3’(HindIII部位は下線付き)(配列番号127)を使用して、スプライスドナーシグナルおよび適切なフランキング制限酵素部位を含むエキソンとして作製した(
図30)。同様に、35B6 VLをコードする遺伝子は、PCRにより、鋳型として35B6 VL cDNA、5’プライマーとして5’−GGG
GCTAGCACCACCATGAGGACCCCTGCTCAGTTTCTT−3’(NheI部位は下線付き)(配列番号128)および3’プライマーとして5’−GGG
GAATTCGCAAAAGTCTACTTACGTTTTATTTCCAACTTTGTCCCCGA−3’(EcoRI部位は下線付き)(配列番号129)を使用して、スプライスドナーシグナルおよび適切なフランキング制限酵素部位を含むエキソンとして作製した(
図31)。35B6 VHおよびVLエキソンのスプライスドナーシグナルは、それぞれマウス生殖系列JH1およびJκ4配列に由来するものであった。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Valencia、CA)を使用してPCR増幅断片をゲル精製し、SpeIおよびHindIII(VHについて)またはNheIおよびEcoRI(VLについて)で消化し、ヒトγ−1およびκ定常領域を担う哺乳動物発現ベクター中にクローニングしてキメラ35B6 IgG1/κ抗体を産生した。得られた発現ベクターpCh35B6の概略構造を
図32に示す。
【0122】
6.7.8.ヒト化35B6 VHおよびVL遺伝子の作製
35B6可変領域のヒト化をQueenら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:10029〜10033、1989)に概説されているとおりに実施した。まず、コンピュータプログラムを利用して35B6可変領域の分子モデルを構築した。次に、ヒト可変領域配列に対する相同性検索に基づいて、35B6 VHと高い相同性を有するZ47230(GenBankアクセッション番号)のヒトアミノ酸配列を、ヒト化35B6 VHのフレームワークを提供するアクセプターとして選択した。同様に、X72479(GenBankアクセッション番号)のヒトアミノ酸配列を35B6 VLのヒト化用のアクセプターとして選択した。
【0123】
コンピュータモデルがCDRとの有効な接触を提案したフレームワーク位置で、ヒトフレームワークアミノ酸をマウス35B6可変領域のアミノ酸で置換した。48位、66位、67位、68位、69位および71位でこれを実施して、ヒト化35B6(Hu35B6)VHを作製した(
図33)。軽鎖については、46位および69位で置き換えて、ヒト化35B6(Hu35B6)VLを作製した(
図34)。35B6、設計したHu35B6およびヒトアクセプターアミノ酸配列のアライメントをVHについては
図33、VLについては
図34に示す。
【0124】
Hu35B6 VHおよびVLのぞれぞれをコードする遺伝子を、シグナルペプチド、スプライスドナーシグナルおよび適切な制限酵素部位を含むエキソンとして設計して、続いて哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。Hu35B6 VHおよびVLエキソンのスプライスドナーシグナルは、それぞれヒト生殖系列JH6およびJκ1配列に由来するものであった。マウス35B6 VH遺伝子のシグナルペプチド配列は、SIG−Predシグナルペプチド予測ソフトウェア(http://bmbpcu36.leeds.ac.uk/prot_analysis/Signal.html)により、正確な切断に部分最適であることが示された。したがって、SIG−Predソフトウェアによって効率的かつ正確に切断すると予測された、マウスモノクローナル抗体35E10のVH遺伝子のシグナルペプチド(ジーンテクノサイエンス)をHu35B6 VLエキソンにおいて使用した。ヒト化Hu35B6 VLエキソンにおけるシグナルペプチド配列は、対応するマウス35B6 VL配列に由来するものであった。SIG−Predソフトウェアにより、Hu35B6 VL遺伝子のシグナルペプチドが効率的かつ正確に切断されることが示された。
【0125】
Hu35B6 VHおよびVL遺伝子は、Heら(J.Immunol.160:1029〜1035、1998)に概説されているとおり、Phusion DNAポリメラーゼを使用して、いくつかの重複している合成オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号91、92、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、107、108、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154および155)の伸長およびPCR増幅によって構築した。Hu35B6 VHおよびVL遺伝子の構築に使用されたオリゴヌクレオチドをそれぞれ
図35および
図36に記載する。Hu35B6 VHおよびVL遺伝子におけるオリゴヌクレオチドの位置をそれぞれ
図37および38を示す。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Valencia、CA)を使用してPCR増幅断片をゲル精製し、pCR4Blunt−TOPOベクター中にクローニングして配列を決定した。SpeIおよびHindIII(VHについて)またはNheIおよびEcoRI(VLについて)で消化した後、Hu35B6 VHおよびVL遺伝子を哺乳動物発現ベクター中の対応する部位にサブクローニングしてヒトIgG1/κの形で産生した。得られた発現ベクターpHu35B6の概略構造を
図32に示す。得られたHu35B6 VHおよびVL遺伝子のヌクレオチド配列を推定アミノ酸配列と一緒にそれぞれ
図39(配列番号68)および
図40(配列番号70)に示す。
【0126】
6.7.9.キメラおよびヒト化35B6 IgG1/κの一過性発現
キメラおよびヒト化35B6 IgG1/κ抗体は、Durocherら(Nucl.Acids Res.30:e9、2002)に従ってポリエチレンイミンを使用してpCh35B6およびpHu35B6プラスミドDNAをそれぞれHEK293細胞にトランスフェクトすることによって一過性に発現させた。一過性にトランスフェクトされたHEK293細胞を、7.5%CO
2インキュベーターにおいて10%FBSを含有するDMEM中、37℃で2日間維持した。培養上清におけるCh35B6およびHu35B6 IgG1/κ抗体のそれぞれの発現レベルをサンドイッチELISAによって測定した。ELISAプレートをPBS中2,000倍希釈したヤギ抗ヒトIgG Fcγ鎖特異的ポリクローナル抗体(SouthernBiotech、Birmingham、AL)を100μl/ウェルで加えて4℃で一晩コーティングし、Wash Buffer(0.05%Tween20を含有するPBS)で洗浄し、Blocking Buffer(2%Skim Milkおよび0.05%Tween20を含有するPBS)を300μl/ウェルで加えて室温で1時間ブロッキングした。Wash Bufferで洗浄した後、ELISA Buffer(1%Skim Milkおよび0.025%Tween20を含有するPBS)中で適切に希釈した試料を100μl/ウェルでELISAプレートにアプライした。ヒト骨髄腫血清(SouthernBiotech)から精製したヒトIgG1/κ抗体を標準物質として使用した。ELISAプレートを室温で2時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、2,000倍希釈したHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトκ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech)を100μl/ウェルで使用して、結合した抗体を検出した。室温で1時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、ABTS基質(bioWORLD、Dublin、OH)を100μl/ウェルで添加することによって発色を実施した。2%シュウ酸を100μl/ウェルで添加することによって発色を停止させた。405nmでの吸光度を読み取った。
【0127】
6.7.10.ヒト化35B6の特徴付け
ELISAにより、ヒト化35B6 IgG1/κの親和性をキメラ35B6 IgG1/κと比較した。抗原として、ウシ血清アルブミンとコンジュゲートした合成オリゴペプチ(Cys−Val−Asp−Thr−Tyr−Asp−Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Val−Val−Tyr−Gly−Leu−Arg−Ser)(配列番号79)(hOPN5−BSA)を使用した。典型的な実験において、ELISAプレートをPBS中1μg/ml hOPN−BSAを100μl/ウェルで加えて4℃で一晩コーティングし、Wash Bufferで洗浄し、Blocking Bufferを300μl/ウェルで加えて室温で1時間ブロッキングした。Wash Bufferで洗浄した後、ELISA Buffer中で適切に希釈した試料を100μl/ウェルでELISAプレートにアプライした。ELISAプレートを4℃で一晩インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、2,000倍希釈したHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトγ鎖ポリクローナル抗体(SouthernBiotech)を100μl/ウェルで使用して、結合した抗体を検出した。室温で1時間インキュベートし、Wash Bufferで洗浄した後、ABTS基質を100μl/ウェルで添加することによって発色を実施し、2%シュウ酸を100μl/ウェルで添加することによって停止させた。405nmでの吸光度を読み取った。
図41A、41Bに示すとおり、ヒト化35B6 IgG1/κとhOPN5−BSAの結合は、キメラ35B6 IgG1/κに類似し(
図41A)、または識別不可能であった(
図41B)。この結果から、マウス35B6抗体のヒト化に成功したことが示される。
【0128】
7.寄託
本明細書で33E10および35B6と称した、マウス抗RGDモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、微生物の寄託に関するブダペスト条約に従って、2005年10月27日、茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6(郵便番号:305−8566)にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託し、それぞれアクセッション番号FERM BP−10440およびFERM BP−10441を受けた。すべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。