(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレームと、前記フレームに回転自在に支持されたサイドレと、前記サイドレに軸方向位置調整可能に装着されかつ表面に基準マークが形成された版胴と、を備えた輪転印刷機であって、
前記版胴の回転角度を検出可能なロータリエンコーダを有する版胴駆動モータと、
前記版胴の軸方向位置を検出可能なエンコーダを有するサイドレ駆動モータと、
前記フレームに支持されかつ前記サイドレの軸方向に沿って延びるレールと、
前記レールに支持されかつ前記レールの長手方向へ移動可能かつ前記版胴の表面の一点を指示可能なレーザポインタと、
前記レーザポインタを支持し、前記レールに沿って移動可能に設けられたホルダと、
前記ホルダの軸方向位置を検出可能なリニアスケールと、
前記レールまたは前記ホルダに設けられ、前記レーザポインタの検出位置への移動および印刷動作時における前記レールの端部への退避を行わせるサーボモータと、
前記レーザポインタの光点と前記版胴の基準マークとが一致した初期位置に前記版胴が調整された状態で、前記版胴駆動モータの前記ロータリエンコーダが検出した前記版胴の回転角度、前記サイドレ駆動モータの前記エンコーダが検出した前記版胴の軸方向位置、および前記リニアスケールが検出した前記ホルダの軸方向位置を登録情報として記憶する記憶装置と、
前記版胴および前記レーザポインタの位置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記サイドレに装着された前記版胴が前記記憶装置に登録されているかを確認し、
確認対象の前記版胴が既登録の場合、前記記憶装置から前記版胴に対応する前記登録情報を読み出し、読み出した前記登録情報に基づき、前記版胴の回転角度を目標に前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴を回転し、前記版胴の軸方向位置を目標に前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴を軸方向に移動することで、前記版胴の位置調整を行い、
確認対象の前記版胴が未登録の場合、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを予め設定した仮の見当見合わせ位置であって前記サイドレの軸方向位置の調整範囲の中間位置へ移動し、前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴の回転角度を調整し、前記
サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴の軸方向位置を調整することで、前記版胴を前記初期位置に調整し、現在の版胴の回転角度および軸方向位置を検出して記憶装置に記憶し、
印刷動作時には、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを前記レールの端部に退避させておく制御を行う構成とされる
ことを特徴とする輪転印刷機。
フレームと、前記フレームに回転自在に支持されたサイドレと、前記サイドレに軸方向位置調整可能に装着されかつ表面に基準マークが形成された版胴と、を備えた輪転印刷機の版胴初期位置調整方法であって、
前記版胴の回転角度を検出可能なロータリエンコーダを有する版胴駆動モータと、
前記版胴の軸方向位置を検出可能なエンコーダを有するサイドレ駆動モータと、
前記フレームに支持されかつ前記サイドレの軸方向に沿って延びるレールと、
前記レールに支持されかつ前記レールの長手方向へ移動可能かつ前記版胴の表面の一点を指示可能なレーザポインタと、
前記レーザポインタを支持し、前記レールに沿って移動可能に設けられたホルダと、
前記ホルダの軸方向位置を検出可能なリニアスケールと、
前記レールまたは前記ホルダに設けられ、前記レーザポインタの検出位置への移動および印刷動作時における前記レールの端部への退避を行わせるサーボモータと、
前記レーザポインタの光点と前記版胴の基準マークとが一致した初期位置に前記版胴が調整された状態で、前記版胴駆動モータの前記ロータリエンコーダが検出した前記版胴の回転角度、前記サイドレ駆動モータの前記エンコーダが検出した前記版胴の軸方向位置、および前記リニアスケールが検出した前記ホルダの軸方向位置を登録情報として記憶する記憶装置と、
前記版胴および前記レーザポインタの位置を制御する制御装置と、を設置しておき、
前記制御装置による制御に基づき、前記サイドレに装着された前記版胴が前記記憶装置に登録されているかを確認し、
確認対象の前記版胴が既登録の場合、前記記憶装置から前記版胴に対応する前記登録情報を読み出し、読み出した前記登録情報に基づき、前記版胴の回転角度を目標に前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴を回転し、前記版胴の軸方向位置を目標に前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴を軸方向に移動することで、前記版胴の位置調整を行い、
確認対象の前記版胴が未登録の場合、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを予め設定した仮の見当見合わせ位置であって前記サイドレの軸方向位置の調整範囲の中間位置へ移動し、前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴の回転角度を調整し、前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴の軸方向位置を調整することで、前記版胴を前記初期位置に調整し、現在の版胴の回転角度および軸方向位置を検出して記憶装置に記憶し、
印刷動作時には、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを前記レールの端部に退避させておく
ことを特徴とする版胴初期位置調整方法。
【背景技術】
【0002】
多色刷りを行う輪転印刷機には、複数の印刷ユニットが設置される。このような輪転印刷機では、各印刷ユニットの印刷位置ずれ(色ずれ)が生じないように、各印刷ユニットの印刷位置、つまり版胴の初期位置を揃える操作(版胴初期位置調整、見当合わせ)が行われる。
【0003】
従来の版胴初期位置調整では、基準位置の指示装置として、版胴表面の一点を指す機械的な指針を用いる方法、あるいは版胴表面に投影されるレーザポインタを用いる方法が知られている。
何れの方法でも、印刷絵柄の基準位置となる基準マーク(トンボマーク等)を版胴表面に刻印する等しておき、この基準マークと前述した指示装置(指針あるいはレーザポインタ)の指示位置とが一致した状態を版胴の初期位置とするようにしている。
【0004】
ところで、印刷ユニットの版胴は交換可能である。すなわち、版胴は印刷ユニットの回転軸に着脱自在に支持される。版胴と回転軸との間にはキー溝嵌合等が形成され、版胴と回転軸とは所定の角度位置に維持される。
版胴の交換を行った際には、前述した版胴初期位置調整が必須となる。すなわち、版胴のキー溝と表面の基準マークとの角度位置は版胴毎に異なっており、印刷ユニットに新たな版胴を装着する際には、回転軸を動作させ、基準マークが前述した指示装置の指示位置に一致するように調整することが必要である。
【0005】
上述したように、版胴初期位置調整は版胴の交換毎に必要である。しかし、従来の版胴初期位置調整では、調整作業の都度、指示装置を印刷ユニットに装着し、作業の後撤去していた。このため、指示装置の着脱を含めた調整作業を頻繁に繰り返すため作業効率が低く、また作業時以外には指示装置を別途保管しておく必要があった。
このような問題に対し、調整完了状態での回転軸の角度を版胴毎に記録しておき、版胴の使用時には該当する回転軸角度を呼び出すことで、繰り返し使用される版胴については版胴初期位置調整を省略可能とする技術が、本出願人により提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、通常、多色印刷機等では、版胴を印刷機に着脱するために、印刷機の回転軸としてテーパー付シャフト(サイドレ)等を用いて版胴を両側より軸方向に挟持(チャッキング)することがなされている。この際、版胴の面長(版胴の軸方向の長さ)にはばらつきがあり、また挟持状態によっても軸方向位置が変わるため、印刷機に装着された版胴の軸方向位置は毎回同じ位置にならないことがある。
このような問題に対し、軸方向位置についての移動量の計算および調整移動を行うようにした初期見当合わせ装置が提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、版胴毎に印刷ユニットにおける回転軸の版胴初期位置を記録し、再利用することで版胴初期位置調整を省略できるようにしている。
ただし、版胴初期位置調整については、従来通りの指示装置を使用しており、その着脱あるいは保管が必要であった。
また、従来の指示装置では、版胴表面の基準マークに対して回転方向の角度位置決めは行うものの、版胴の回転軸方向の位置調整には対応していない。
前述した特許文献2によれば、回転軸方向の位置調整を行うことができるが、特許文献1では指示装置の取り扱いなど回転軸方向の位置調整を考慮していない。従って、回転方向の角度位置決めと回転軸方向の位置調整とを別個に行う必要があった。
【0009】
本発明の目的は、作業を一層簡略にできるとともに版胴の回転軸方向の位置調整までも行える輪転印刷
機および版胴初期位置調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の輪転印刷機は、フレームと、前記フレームに回転自在に支持されたサイドレと、前記サイドレに軸方向位置調整可能に装着されかつ表面に基準マークが形成された版胴と、を備えた輪転印刷機であって、前記版胴の回転角度を検出可能なロータリエンコーダを有する版胴駆動モータと、前記版胴の軸方向位置を検出可能なエンコーダを有するサイドレ駆動モータと、前記フレームに支持されかつ前記サイドレの軸方向に沿って延びるレールと、前記レールに支持されかつ前記レールの長手方向へ移動可能かつ前記版胴の表面の一点を指示可能なレーザポインタと、前記レーザポインタを支持し、前記レールに沿って移動可能に設けられたホルダと、前記ホルダの軸方向位置を検出可能なリニアスケールと、前記レールまたは前記ホルダに設けられ、前記レーザポインタの検出位置への移動および印刷動作時における前記レールの端部への退避を行わせるサーボモータと、前記レーザポインタの光点と前記版胴の基準マークとが一致した初期位置に前記版胴が調整された状態で、前記版胴駆動モータの前記ロータリエンコーダが検出した前記版胴の回転角度、前記サイドレ駆動モータの前記エンコーダが検出した前記版胴の軸方向位置、および前記リニアスケールが検出した前記ホルダの軸方向位置を登録情報とし
て記憶する記憶装置と、前記版胴および前記レーザポインタの位置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記サイドレに装着された前記版胴が前記記憶装置に登録されているかを確認し、確認対象の前記版胴が既登録の場合、前記記憶装置から前記版胴に対応する前記登録情報を読み出し、読み出した前記登録情報に基づき、前記版胴の回転角度を目標に前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴を回転し、前記版胴の軸方向位置を目標に前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴を軸方向に移
動することで、前記版胴の位置調整を行い、確認対象の前記版胴が未登録の場合、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを予め設定した仮の見当見合わせ位置であって前記サイドレの軸方向位置の調整範囲の中間位置へ移動し、前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴の回転角度を調整し、前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴の軸方向位置を調整することで、前記版胴を前記初期位置に調整し、
現在の版胴の回転角度および軸方向位置を検出して記憶装置に記憶し、印刷動作時には、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを前記レールの端部に退避させておく制御を行う構成とされることを特徴とする。
【0012】
本発明の版胴初期位置調整方法は、フレームと、前記フレームに回転自在に支持されたサイドレと、前記サイドレに軸方向位置調整可能に装着されかつ表面に基準マークが形成された版胴と、を備えた輪転印刷機の版胴初期位置調整方法であって、前記版胴の回転角度を検出可能なロータリエンコーダを有する版胴駆動モータと、前記版胴の軸方向位置を検出可能なエンコーダを有するサイドレ駆動モータと、前記フレームに支持されかつ前記サイドレの軸方向に沿って延びるレールと、前記レールに支持されかつ前記レールの長手方向へ移動可能かつ前記版胴の表面の一点を指示可能なレーザポインタと、前記レーザポインタを支持し、前記レールに沿って移動可能に設けられたホルダと、前記ホルダの軸方向位置を検出可能なリニアスケールと、前記レールまたは前記ホルダに設けられ、前記レーザポインタの検出位置への移動および印刷動作時における前記レールの端部への退避を行わせるサーボモータと、前記レーザポインタの光点と前記版胴の基準マークとが一致した初期位置に前記版胴が調整された状態で、前記版胴駆動モータの前記ロータリエンコーダが検出した前記版胴の回転角度、前記サイドレ駆動モータの前記エンコーダが検出した前記版胴の軸方向位置、および前記リニアスケールが検出した前記ホルダの軸方向位置を登録情報とし
て記憶する記憶装置と、前記版胴および前記レーザポインタの位置を制御する制御装置と、を設置しておき、前記制御装置による制御に基づき、前記サイドレに装着された前記版胴が前記記憶装置に登録されているかを確認し、確認対象の前記版胴が既登録の場合、前記記憶装置から前記版胴に対応する前記登録情報を読み出し、読み出した前記登録情報に基づき、前記版胴の回転角度を目標に前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴を回転し、前記版胴の軸方向位置を目標に前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴を軸方向に移
動することで、前記版胴の位置調整を行い、確認対象の前記版胴が未登録の場合、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを予め設定した仮の見当見合わせ位置であって前記サイドレの軸方向位置の調整範囲の中間位置へ移動し、前記版胴駆動モータを作動させて前記版胴の回転角度を調整し、前記サイドレ駆動モータを作動させて前記版胴の軸方向位置を調整することで、前記版胴を前記初期位置に調整し、
現在の版胴の回転角度および軸方向位置を検出して記憶装置に記憶し、印刷動作時には、前記サーボモータを作動させて前記レーザポインタを前記レールの端部に退避させておくことを特徴とする。
【0013】
このような本発明では、レールおよび
レーザポインタが常時設置されているので、従来の指示装置における着脱および保管の問題を解消できる。
また、レールが回転軸方向に沿って形成され、
レーザポインタはこのレールに沿って回転軸方向に移動可能であるため、
レーザポインタのレール長手方向位置を測定すれば版胴の回転軸方向の位置を測定できることになる。
これらの本発明において、
レーザポインタの移動、版胴の回転、版胴の軸方向の位置調整は、制御装置からの指示でモータ等を作動させるように自動化
されるが、参考としてオペレータによる手動で行うことも可能である。また、版胴表面の基準マークと
レーザポインタで投影される版胴表面の光点との一致についても、オペレータが目視により確認してもよく、カメラで撮影した画像を制御装置で画像認識して一致か否かを確認するように自動化してもよい。
【0016】
このような本発明では、軸方向位置調整装置
としてのサイドレ駆動モータにより版胴
の軸方向位置を適切に調整できるとともに、適切に調整された状態の版胴に対して
レーザポインタを合わせ、その状態での軸方向位置を軸方向位置検出装置
としてのサイドレ駆動モータのエンコーダで検出しておくことで、次回の調整時にはこの軸方向位置を用いることができる。
【0019】
このような本発明では、
サイドレ駆動モータのエンコーダで検出した版胴毎の適切な軸方向位置を記憶装置に記憶しておくことができ、記憶装置から読み出した版胴毎の軸方向位置に基づいて
サイドレ駆動モータの作動で版胴の軸方向位置を調整することで、版胴を適切な軸方向位置に設定することができる。
従って、
サイドレ駆動モータにより版胴
の軸方向位置を適切に調整できるとともに、適切に調整された状態の版胴に対して
レーザポインタを合わせ、その状態での軸方向位置を
サイドレ駆動モータのエンコーダで検出しておくことで、次回の調整時にはこの軸方向位置を用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には本実施形態の輪転印刷機1が示されている。輪転印刷機1は、5色ストレートグラビア輪転印刷機であり、一連に配置された5台の印刷ユニット2〜6を備えている。
輪転印刷機1には、印刷用紙(ウェブ)Wが通される。ウェブWは、前述した5台の印刷ユニット2〜6を通されて5色の重ね刷りが行われる。
【0022】
このようなウェブWを操作するために、印刷ユニット2の上流側には、ウェブWを供給する給紙部7およびインフィード部8が配置されている。また、印刷ユニット6の下流側には、アウトフィード部9および印刷済みのウェブWを巻き取る巻取り部10が配置されている。
さらに、輪転印刷機1には制御ユニット11が接続され、前述した印刷ユニット2〜6、給紙部7、インフィード部8、アウトフィード部9および巻取り部10を含む輪転印刷機1全体の制御が行われる。
【0023】
印刷ユニット2〜6には、それぞれ版胴22、圧胴20および複数のガイドローラ21等が設けられている。各々の版胴22は、各々の版胴駆動モータ23によりそれぞれ独立して回転駆動される。
【0024】
図2において、印刷ユニット2〜6は、両側一対のフレーム31,32を有し、前述した版胴22および他のローラはこれらのフレーム31,32間に設置される。
版胴22は、両側一対のサイドレ24によって挟持されて印刷ユニット2〜6に装着されるとともに、サイドレ24を後退させて挟持を解除することで印刷ユニット2〜6から離脱可能である。
【0025】
サイドレ24は、印刷ユニット2〜6の回転軸にあたるものであり、それぞれフレーム31,32に回転自在に支持され、前述した版胴駆動モータ23はこのサイドレ24を回転駆動することで版胴22を駆動して回転させる。
版胴駆動モータ23はサーボモータであり、制御対象の回転角度を検出するロータリーエンコーダを有する。ここで、版胴駆動モータ23は、本発明における回転駆動装置として版胴22を回転駆動するとともに、本発明の回転検出装置として版胴22の回転角度を検出する機能として兼用される(
図4参照)。
なお、本発明において、回転駆動装置である版胴駆動モータ23とは別に回転検出装置を設置してもよい。また、版胴22は、版胴駆動モータ23による駆動のほか、オペレータが手操作により適宜回転させることができる。
【0026】
フレーム31,32には、サイドレ24の軸方向位置を移動させるサイドレ駆動モータ34が設置され、このサイドレ駆動モータ34により前述した版胴22の挟持および解除を行うとともに、サイドレ24の軸方向位置を変更することで、版胴22の軸方向位置を調整することができる。
サイドレ駆動モータ34は、移動方向の位置検出用のエンコーダを有し、サイドレ24の移動位置を検出可能である。ここで、サイドレ駆動モータ34は、本発明における軸方向位置調整装置として版胴22の軸方向位置を調整するとともに、本発明の軸方向位置検出装置として版胴22の軸方向位置を検出する機能として兼用される(
図4参照)。
なお、本発明において、軸方向位置調整装置であるサイドレ駆動モータ34とは別に軸方向位置検出装置を設置してもよい。また、サイドレ24は、サイドレ駆動モータ34による駆動のほか、オペレータがハンドルを手操作することにより適宜進退させることができる。
【0027】
印刷ユニット2〜6には、本発明に基づく版胴初期位置調整方法を実行するために、本発明に基づく版胴基準位置指示装置40が設置されている。
フレーム31,32には、回転軸方向に延びるレール41が架け渡されている。レール41は角柱状とされ、内部にはポインタ位置検出手段としてリニアスケール42が設置されている。
レール41にはホルダ43が装着され、このホルダ43はレール41に沿って移動可能であり、ホルダ43の軸方向位置(版胴22の回転軸線に沿った方向の位置)がリニアスケール42で検出可能である。
【0028】
ホルダ43にはレーザポインタ44が支持されている。レーザポインタ44(以下単にポインタと略称することがある)は、版胴22に向けて版胴22の表面に垂直なレーザ光を照射し、版胴22の表面に胴表面の一点を指示する光点P(
図3参照)を生成する。
なお、レール41の端部にはレーザポインタ44の退避位置とされ、初期位置調整を行う時以外は版胴22に対する作業者の操作に影響がないように退避される。
印刷ユニット2〜6において、それぞれのリニアスケール42はフレーム31,32に対して高精度に位置決めされており、その検出値からレーザポインタ44の軸方向位置が高精度に把握することができる。
レーザポインタ44の位置調整および退避は、オペレータが手操作で、ホルダ43のレール41に対するクランプ等を解除し、レール41の適宜位置まで移動させ、再度クランプ等することで行われる。ただし、ホルダ43またはレール41にサーボモータ等を設置し、制御ユニット11により自動制御を行うようにしてもよい。
【0029】
図3において、版胴22の表面には「+」字状の基準マークMが刻印されている。詳細は後述するが、版胴初期位置調整においてはこの基準マークMとレーザポインタ44の光点Pとが一致するように、版胴22の初期回転角度の調整Rを行うとともに、軸方向位置の調整Aを行う。
複数の印刷ユニット2〜6において、レーザポインタ44の光点Pの位置が一定位置に定められていれば、この光点Pに基準マークMを一致させることで、版胴22の駆動系の状態に拘わらず、版胴22の表面を一定位置に設定することができる。
なお、基準マークMとレーザポインタ44の光点Pとの一致については、オペレータが目視により確認すればよい。例えば、初期回転角度の調整Rを行う際には、オペレータが基準マークMと光点Pとのずれ(版胴22周方向、
図3の上下方向)を見ながら、版胴22を手操作またはモータ等で回転させる。また、軸方向位置の調整Aを行う際には、オペレータが基準マークMと光点Pとのずれ(版胴22軸方向、
図3の左右方向)を見ながら、サイドレ24を手操作またはモータ等で移動させる。
なお、版胴22の表面を撮影するカメラを設置しておき、基準マークMおよび光点Pを含む画像を撮影し、この画像を制御ユニット11に取り込んで画像認識を行い、これにより基準マークMと光点Pとの一致か否かを確認するように自動化してもよい。
【0030】
図4において、輪転印刷機1の制御ユニット11は、輪転印刷機1の動作制御を行うための既存の構成を備えるとともに、本発明に基づく構成である版胴初期位置調整用の制御装置12および版胴初期位置調整用の登録情報を記録する記憶装置13を備えている。
印刷ユニット2〜6には、前述の通り版胴駆動モータ23、サイドレ駆動モータ34、リニアスケール42が設置されている。前述した通り、版胴駆動モータ23は本発明の回転駆動装置および本発明の回転位置検出装置を兼ねるものであり、サイドレ駆動モータ34は本発明の軸方向位置調整装置および本発明の軸方向位置検出装置を兼ねるものである。リニアスケール42は本発明の軸方向位置検出装置であり、レーザポインタ44の軸方向位置の検出に用いられる。
【0031】
このような本実施形態における動作について説明する。
輪転印刷機1において、新たな印刷を行う場合、印刷ユニット2〜6の版胴22を換装するとともに、印刷に先立って印刷ユニット2〜6のそれぞれにおいて版胴初期位置調整処理を行い、全ての印刷ユニット2〜6で版胴22の初期位置(回転角度および軸方向位置)を揃える。
【0032】
図5に示すように、版胴初期位置調整処理においては、先ず、制御装置12が印刷ユニット2〜6に装着された版胴22の個体確認を行い、装着された版胴22が記憶装置13に登録されているかを確認する(処理S31)。具体的には、作業者が版胴22の識別コードを制御装置12に入力する操作を行えばよく、あるいは版胴22に表示された識別コードを印刷ユニット2〜6に設置した光学的あるいは電磁気的な読み取り手段で読み取ってもよい。
【0033】
現在の版胴22が未登録の場合(処理S32)、レーザポインタ44を検出位置へ移動させる(処理S33)。検出位置への移動にあたっては、レーザポインタ44を予め設定しておいた仮の見当合わせ位置(版胴22の表面に基準マークMが刻印される軸方向の概略位置)へと移動させる。
検出位置においては、リニアスケール42で検出されるレーザポインタ44の軸方向位置を参照して、各印刷ユニット2〜6でレーザポインタ44の軸方向位置が同じ値となるように調整しておく。これにより、各印刷ユニット2〜6においてレーザポインタ44はフレーム31,32を基準として一定の軸方向位置に設定される。
【0034】
続いて、レーザポインタ44からレーザ光を版胴22に向けて照射し、版胴22の表面に光点Pを生成し、この光点Pと版胴22の表面の基準マークMとが一致するように調整を行う(処理S34)。
具体的には、版胴駆動モータ23で版胴22を回転させて版胴22の初期回転角度の調整R(
図3参照)を行うとともに、サイドレ駆動モータ34でサイドレ24の軸方向位置を変更することで、版胴22の軸方向位置の調整A(
図3参照)を行う。
【0035】
なお、版胴22の軸方向位置の調整Aにおいて、サーボモータ34でサイドレ24の軸方向位置の調整範囲外である場合、レーザポインタ44の位置を変更し、改めて版胴22の軸方向位置の調整Aを行う。
この際、他の印刷ユニットでの調整代を確保しておくために、新たなレーザポインタ44の位置はサイドレ24の調整範囲の中間位置となるように設定することが望ましい。何れの場合も、各印刷ユニット2〜6でのレーザポインタ44の軸方向位置が同じとなるように調整する。
【0036】
版胴22の初期回転角度の調整Rおよび軸方向位置の調整Aができたら、印刷ユニットの機械的基準位置(例えばフレーム31,32に対する回転軸の基準位置、サイドレの基準位置)に対する現在の版胴22の回転角度および軸方向位置を検出し、記憶装置13に記憶しておく(処理S35)。
また、リニアスケール42から現在のレーザポインタ44の軸方向位置を検出し、以降の印刷ユニットにおけるレーザポインタ44の軸方向位置として記憶装置13に記憶しておく。レーザポインタ44の検出位置への移動(処理S33)および退避位置への格納(後述する処理S36)を制御ユニット11の制御下で自動的に行う場合、レーザポインタ44の軸方向位置を記憶しておくことが望ましい。
【0037】
以上の処理が済んだら、レーザポインタ44を退避位置へと移動させ(処理S36)、この状態で輪転印刷機1による印刷運転を実施する(処理S37)。運転に先立って、レーザポインタ44を退避させることで、版胴22に対する作業者の操作等の障害になることが避けられるとともに、レーザポインタ44に対する衝突等を回避してレーザポインタ44を安全な保管が可能となる。
【0038】
一方、処理S32において、現在の版胴22の初期位置が登録されていた場合、制御装置12は記憶装置13から該当する登録情報を読み出し(処理S38)、これに基づいて版胴22の回転角度および軸方向位置を変更するように移動させ(処理S39)、この状態で輪転印刷機1による印刷運転を行う(処理S37)。
従って、装着する版胴22に関する初期位置の情報が登録されている場合、前述した処理S33〜S36による基準マーク合わせ操作を省略することができ、大幅な効率化、時間短縮が期待できる。
【0039】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、版胴22をサイドレ24で挟持する構成であったが、版胴22を着脱自在に装着できれば他の構造であってもよい。
輪転印刷機1はグラビア印刷機に限らず、版胴22を用いる構成であれば他の印刷機にも適用できる。また、印刷ユニット2〜6は5台に限らず、4台以下あるいは6台以上でもよい。