【実施例1】
【0022】
図1に、本発明のエネルギ削減量等の表示機能付きヒートポンプ給湯器の一実施例の全体構成図を示す。図示のように、本実施例のエネルギ削減量表示機能付きヒートポンプ給湯器は、湯を沸上げる加熱源としてのヒートポンプ装置1と、ヒートポンプ装置1により加熱された湯を貯留する貯湯タンク2とを備えて構成されている。ヒートポンプ装置1は、図示していないが、周知のとおり、CO2などの冷媒を圧縮するインバータモータ駆動の圧縮機、圧縮された高温の冷媒と熱交換して低温水を加熱する冷媒‐水熱交換器、冷媒‐水熱交換器で凝縮された冷媒を周囲空気の熱により蒸発させる蒸発器、この蒸発器に設けられたモータ駆動の送風ファン、膨張弁などを備えて構成されている。貯湯タンク2は、縦型筒状に形成され、底部に給水管3aを介して上水道などから給水が流入されるようになっている。沸上げ循環管路4は、沸上げ循環ポンプ5が設けられた沸上げ循環管路4aを有し、沸上げ循環管路4aを介して沸上げ循環ポンプ5により貯湯タンク2の底部の低温水を吸い込み、ヒートポンプ装置1の冷媒‐水熱交換器の水流路に吐出し、冷媒‐水熱交換器から流出される加熱された湯を沸上げ循環管路4bを介して貯湯タンク2の頂部に戻すように構成されている。
【0023】
貯湯タンク2の頂部には、給湯管6の一端が連通され、貯湯タンク2の頂部から出湯される湯は給湯管6を介して、本実施例では給湯管7、9に分岐されている。給湯管7は台所及び図示していない洗面やシャワーなどに給湯し、給湯管9はふろの浴槽8に給湯するようになっている。給湯管7の途中には混合弁10が設けられ、給湯管7から供給される高温の湯と給水管3bから供給される低温の給水とを混合して、予め設定された給湯温度の湯を生成するようになっている。混合弁10で調節された湯は、給湯管11を介して給湯場所である台所に設けられた図示していない混合栓に供給されるようになっている。一方、給湯管9の途中にはふろ用の混合弁12が設けられ、給湯管9から供給される高温の湯と給水管3bから供給される低温の給水とを混合して、予め設定された給湯温度の湯を生成するようになっている。混合弁12で調節された湯は、給湯管13と追炊き往き管路14を介して給湯場所である浴槽8に供給されるようになっている。また、混合弁12の出口側の給湯管13に電磁弁39が設けられている。
【0024】
また、本実施例では、ふろの追炊き装置15が設けられている。追炊き装置15は、浴槽8の側面の開口に接続された追炊き戻り管路16と、追炊き戻り管路16に設けられた追炊き循環ポンプ17と、追炊き循環ポンプ17から吐出される湯が流通される追炊き熱交換器18と、追炊き熱交換器18から流出される湯を浴槽8の側面に戻す追炊き往き管路14を備えて構成されている。また、追炊き熱交換器18には、貯湯タンク2の頂部から抜き出した湯を追炊き熱交換器18に循環させて、貯湯タンク2の底部に戻す追炊き給湯循環ポンプ19を備えた給湯管20を備えて構成されている。なお、洗面の混合栓は台所の給湯管7に連結してもよい。さらに、ふろと台所と洗面の給湯管7、9の部分を共通にすることができる。また、追炊き熱交換器18は、貯湯タンク2の内部に設置してもよい。
【0025】
ここで、本実施例の特徴構成について説明する。給水管3a,bの入口部に給水温度T1を計測する温度センサ31が設けられている。また、混合弁10の出口部の給湯管11に給湯量F1を計測する流量センサ33と、給湯温度T2を計測する温度センサ32が設けられている。さらに、ふろ用の混合弁12の出口部の給湯管13に給湯量F2を計測する流量センサ34と、給湯温度T3を計測する温度センサ35が設けられている。また、追炊き装置15の追炊き戻り管路16に流れる湯のふろ戻り温度T4を計測する温度センサ36と、追炊き往き管路14に流れる追炊き循環量F3を計測する流量センサ37と、ふろ往き温度T5を計測する温度センサ38とが設けられている。
【0026】
また、ヒートポンプ装置1、沸上げ循環ポンプ5、追炊き循環ポンプ17、追炊き給湯循環ポンプ19及び電磁弁39の駆動を制御するとともに、混合弁10,12の設定温度を可変制御するなど、ヒートポンプ給湯器の全体を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40は、リモコンなどの少なくとも1つ手元コントローラ41に設けられた入力手段42から入力される種々の指令に基づいて、ヒートポンプ給湯器の全体を制御するようになっている。また、流量センサ33,34,37及び温度センサ31,32,35,36,38により計測された計測値が入力される演算装置44と、手元コントローラ41に設けられたモニタ45とを備えている。入力手段42は、演算装置44にも種々の指令等を入力することができるようになっている。モニタ45は、制御装置40と演算装置44の指令に基づいて、種々の情報を表示するようになっている。また、制御装置40と演算装置44は相互に種々の情報を送受可能に構成されている。
【0027】
このように構成される実施例の動作について、以下に説明する。制御装置40は、入力手段42により可変設定される混合弁10、12の出口における給湯温度、貯湯タンク2の頂部の目標貯湯温度、貯湯タンク2に貯湯する設定温度以上の目標貯湯量に基づいて、ヒートポンプ装置1の圧縮機の回転数、膨張弁の開度などを制御して沸上げを制御する。制御装置40はカレンダー時計を備えており、入力手段42から設定値が入力されていないときは、カレンダー時計に対応して設定されている夏季、中間期、冬季に応じて、また過去の使用態様(特に、給湯量)に基づいて、給湯温度、目標貯湯温度、目標貯湯量をメモリから読み出してヒートポンプ給湯器を制御するようになっている。また、本実施例では、深夜電力を利用して、貯湯タンク2の底部の低温水を沸上げ循環ポンプ5により吸い込み、ヒートポンプ装置1を介して貯湯タンク2の頂部に循環し、時間をかけて目標貯湯温度及び目標貯湯量の湯を沸上げて貯湯タンク2に貯湯する。深夜電力は、時間帯によって電力料金が定められており、例えば、1時から5時までの時間帯又は23時から7時までの時間帯を選択して契約するようになっている。
【0028】
一方、湯を使用する時間帯は、利用者の使用態様によって異なる。一般に、ヒートポンプ給湯器の使用態様は、1日サイクルを基本として変動するが、1週間サイクル、1ヶ月サイクルでも変動し、特に、夏期、冬期及び中間期の3ヶ月サイクルで大きく変動する。したがって、給水温度T1、給湯温度T2〜T3、ふろ戻り温度T4、ふろ往き温度T5、及び給湯量F(F1,F2、F3)の瞬時値に基づいて給湯熱量の瞬時値を求めても意味がないことから、本実施例では、設定時間t*にわたって積分した給湯熱量Qo求めるようにしている。設定時間t*は、変動を考慮して適宜可変設定することができる。これにより、ヒートポンプ給湯器の使用態様を考慮して設定される設定時間における給湯熱量を求めることができ、例えば、利用者は1〜3か月単位の給湯熱量及びその変動を把握することができる。
図2に、電力消費量W[kWH]の変動と、給湯熱量Qo[MJ]の変動の一例を示す。
図2の上段は電力消費量Wの変動パターンであり、下段が給湯熱量Qoの変動パターンであり、それぞれ2日間にわたって示している。また、図示例では、沸上げは深夜0時か朝5時までの時間帯で行っている。給湯は生活パターンに応じて給湯熱量が変動している。
【0029】
このようなことから、演算装置44は、流量センサ33,34,37の計測値F1〜F3、及び温度センサ31,32,35,36,38の計測値T1〜T5を取り込み、次式(4)〜(6)により、設定時間t*にわたって積分することにより、設定時間t*における給湯管11からの給湯熱量Qo1、給湯管13からの給湯熱量Qo2、追炊き装置15の給湯熱量Qo3を求める。なお、それらの式において、Cは水の比熱[kcal/kg・℃]=4.1796[kJ/kg・K]であり、温度T1〜T5の単位は[℃]、流量F1〜F3の単位は[L]である。
Qo1={∫((T2−T1)×F1)dt}×C/1000 [MJ](4)
Qo2={∫((T3−T1)×F2)dt}×C/1000 [MJ](5)
Qo3={∫((T5−T4)×F3)dt}×C/1000 [MJ](6)
次いで、設定時間t*におけるヒートポンプ給湯器全体の給湯熱量Qoを次式(7)により求める。
Qo=Qo1+Qo2+Qo3 (7)
【0030】
次いで、制御装置40により収集された電気機器の電力消費量Wの計測値を取り込み、設定時間t*にわたって積分して電力消費量W[kWH]を求める。ここで、ヒートポンプ給湯器の入力エネルギは、ヒートポンプ装置1の圧縮機駆動モータ、凝縮器の送風ファン、膨張弁などの自動弁、制御器などの電力消費量がある。また、沸上げ循環ポンプの駆動モータ、電磁弁等の自動弁などの電力消費量の他、給湯負荷に応じて設けられるポンプ等の電力消費量を挙げることができる。これらの電気機器の電力消費量が、ヒートポンプ給湯器の入力エネルギである。ヒートポンプ装置の圧縮機駆動モータの電力消費量が相対的に大きいことから、モータ電流を例えばクランプ式等の電流センサにより計測して電力消費量を実測する。他の電気機器についても実測することが好ましいが、電力消費量が相対的に小さい電気機器の場合は、カタログの電力消費量あるいは推定した電力消費量を用いることができる。このようにして計測又は推定した電力消費量に基づき、設定時間にわたって積分してヒートポンプ給湯器全体の電力消費量W[kWH]を求める。
【0031】
次に、電力消費量W[kWH]を給湯熱量Qoの単位である[MJ]に合わせるために、前記式(2)のQi=W×3.6により、熱量に換算した電力消費熱量Qiを求める。ところで、給湯熱量Qoはヒートポンプ給湯器の出力エネルギであり、電力消費熱量Qiはヒートポンプ給湯器の入力エネルギである。したがって、通常は成績係数であるCOPが1以上のヒートポンプ給湯器により削減されるエネルギ削減量Qrは、前記式(3)のQr=Qo−Qiにより求めることができる。
【0032】
また、COPに相当する給湯効率ηは、次式(8)で表せる。
η=Qo/Qi=Qo/(W×3.6) (8)
また、エネルギ削減量Qrを電力に換算した電力削減量Wr[kWH]は、次式(9)で表せる。
Wr=Qr/3.6 [kWH] (9)
さらに、設定時間t*にわたって積分された電力消費量W[kWH]に基づいて、CO2排出量Xを下式(10)により求める。同式において、Eは各電力会社によって決められた単位電力消費量当たりのCO2排出量の原単位であり、単位は[kgCO2/kWH]である。
X=W×E×η [kgCO2] (10)
また、電力削減量Wr[kWH]に対応するCO2削減量Yは、次式(11)により求めることができる。
Y=Wr×E [kgCO2] (11)
【0033】
さらに、電力消費量Wを、深夜電力料金契約分と昼間電力契約分に分類し、それぞれの契約料金に従って電力料金を算出する。つまり、深夜電力契約の電気機器の電力消費量W1と、通常の電力契約の電気機器の電力消費量W2を分けて求める。そして、深夜電力契約の電気料金をA円/kWH、通常の電力契約の電気料金をB円/kWHとすると、設定時間t*における電気料金¥は、次式(12)で表せる。
¥=W1×A+W2×B [円] (12)
これにより、利用者はモニタ45を見て一目で使用実績に対応した電力料金を認識できるから、ヒートポンプ給湯器の使い方を工夫することにつながる。
【0034】
以上説明したように、本実施例によれば、設定時間t*にわたって積分された給湯熱量Qoと電力消費熱量Qiを実測してメモリに記憶しておき、指令に応じて設定時間t*におけるエネルギ削減量Qrをモニタ45に表示するようにしているから、利用者はエネルギ削減量と使用実績とを対比して、さらにエネルギ削減量を増大させる工夫を検討できる。例えば、無駄な湯の使用(給湯量)を減らした場合のエネルギ削減効果を定量的に把握できる。また、目標貯湯温度あるいは目標貯湯量を低くすることとエネルギ削減効果の因果関係を定量的に把握できる。このようにして、使用湯量を加減したり、給湯温度を調節したり、季節に応じて貯湯温度の設定値を調節するなどの工夫により、省エネルギ効果及びCO2排出・削減効果を一層向上させることができる。
【0035】
同様に、電力消費量W、電力削減量Wr、給湯効率η、CO2排出量X、CO2削減量X、電気料金¥についても算出していることから、エネルギ削減及びCO2排出・削減について使用態様との因果関係を把握できる。その結果、エネルギ削減量を増大させる工夫をしたり、環境に対する意識の高揚を図ることができる。
【0036】
さらに、本実施例1の入力手段42を、給湯熱量Qo、電力消費熱量Qi、エネルギ削減量Qr、電力消費量W、電力削減量Wr、CO2排出量、CO2削減量、給湯効率、電力料金の少なくとも1つの出力情報を選択可能に形成することができる。この場合は、演算装置44は、入力手段42により選択された出力情報を、モニタ45に数値、数値の時間変化又はグラフにより表示させるように構成することができる。
【0037】
さらに、入力手段42は、ふろ等の給湯負荷に供給される湯の目標給湯温度、貯湯タンク2の目標貯湯温度、貯湯タンク2の目標貯湯量の少なくとも1つの目標値を可変設定可能に構成することができる。この場合、演算装置44は、入力手段42により可変設定される各目標値に基づいて、ヒートポンプ装置1、沸上げ循環ポンプ5、混合弁10,12の制御指令を出力する機能を備えて構成することができる。これにより、利用者は、使用湯量を加減したり、給湯温度を調節したり、季節に応じて貯湯温度、貯湯量の設定値を調節するなどの工夫により、省エネルギ効果及びCO2排出・削減効果を一層向上させることができる。