特許第5736198号(P5736198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5736198インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736198
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20150528BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
   B41J2/16 303
   B41J2/14 613
   B41J2/16 503
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-51709(P2011-51709)
(22)【出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2012-187758(P2012-187758A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 博之
(72)【発明者】
【氏名】室地 伸昭
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−196122(JP,A)
【文献】 特開2007−320187(JP,A)
【文献】 特開2009−119788(JP,A)
【文献】 特開2006−044242(JP,A)
【文献】 特開2008−162111(JP,A)
【文献】 特開2011−37057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有するノズルプレートと、
前記ノズルに対応する複数の圧力室と、この圧力室に隣接して設けられるとともに前記圧力室を加圧して前記ノズルから液を吐出させる駆動素子と成る側壁と、を有する圧電素子と、
前記圧電素子が接着され、前記圧電素子と親和性のある表面層を有する基板と、
前記圧電素子を囲むように前記基板に載置される枠体と、
前記圧電素子を駆動するための電極と、
を具備し、
前記圧電素子は、前記圧電素子の上端部と連続し、かつ前記ノズルプレートと接しない斜面を有し、
前記基板は、前記表面層に前記斜面と連続する凹部を有し、
前記電極は、前記斜面及び前記凹部の上に形成されているインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記表面層は、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミナ、チタン酸鉛、マグネシウム酸ニオブ酸鉛、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3、ZnOのいずれか1種を材料とする請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記表面層には、前記圧電素子の台形と連続するように凹部が形成される請求項1記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記表面層は、セラミックス材料微粒子とキャリアガスが混合したエアロゾルを前記基板に噴射させて、セラミックス材料微粒子同士が接合して形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
複数のノズルを有するノズルプレートと、ノズルに対応する複数の圧力室と、この圧力室に隣接して設けられるとともに圧力室を加圧してノズルからインクを吐出させ駆動素子と成る側壁とを有する圧電素子と、圧電素子が接着される基板を備えたインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記圧電素子と親和性のある表面層を有する前記基板を用意し、
前記基板の表面にセラミックス材料の微粒子を含むエアロゾルを噴き付けて表面層を形成し、
前記基板にインク吸入孔とインク排出孔とを形成し、
前記基板上に前記圧電素子を接着し、
前記圧電素子を断面が台形になるように加工し、
前記表面層に前記圧電素子の台形と連続するように凹部を加工し、
前記圧力室を形成し、
前記圧力室の側壁、前記圧電素子の斜面、及び前記表面層に導体層を形成し、
前記圧電素子の斜面及び前記表面層の導体層を除去して、前記斜面及び前記凹部の上に電極を形成し、
前記基板に、前記圧電素子を囲む枠体を接着し、
前記枠体及び前記側壁の上端部に、前記ノズルプレートを接着し、
前記ノズルプレートに前記ノズル穴を穿孔するインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記セラミックス材料の微粒子は、チタン酸ジルコン酸鉛である請求項5記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記導体層の最表面にAu層を形成する請求項5記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】
複数のノズルを有するノズルプレートと、ノズルに対応する複数の圧力室と、この圧力室に隣接して設けられるとともに圧力室を加圧してノズルからインクを吐出させ駆動素子と成る側壁とを有する圧電素子と、圧電素子が接着される基板を備えたインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記圧電素子と親和性のある表面層を有する前記基板を用意し、
前記基板の表面にセラミックス材料の微粒子を含むエアロゾルを噴き付けて表面層を形成し、
前記基板にインク吸入孔とインク排出孔とを形成し、
前記基板上に前記圧電素子を接着し、
前記圧電素子を断面が台形になるように加工し、
前記表面層に前記圧電素子の台形と連続するように凹部を加工し、
前記圧力室を形成し、
前記圧力室の側壁、前記圧電素子の斜面、及び前記表面層に導体層を形成し、
前記圧電素子の斜面及び前記表面層の導体層を除去して、前記斜面及び前記凹部の上に電極を形成し、
前記基板に、前記圧電素子を囲む枠体を接着し、
前記ノズルプレートに前記ノズル穴を穿孔し、
前記ノズルプレートを前記枠体及び前記圧電素子の側壁の上端部に接着するインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記導体層の最表面にAu層を形成する請求項8記載のインクジェットヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドは、セラミック材料で形成された絶縁基板と、この絶縁基板に対向配置されたノズルプレートと、絶縁基板とノズルプレートとの間に積層配置された駆動素子と、この駆動素子を囲むことで、共通液室及び圧力室を形成するセラミックス材製の枠部材とを備えている。
【0003】
駆動素子は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系圧電セラミックス材料からなる一対の圧電素子を有している。なお、駆動素子は駆動回路により駆動され、絶縁基板上には駆動素子と駆動回路とを同通させる電極パターンが形成されている。また、駆動素子の両方の端面はテーパ面が形成されている。
【0004】
従来のインクジェットヘッドは、駆動素子と駆動回路とを導通させる電極パターンが絶縁基板上に形成されている。電極は、例えば周知の無電解メッキにより形成される。無電解メッキは、触媒核の吸着などの化学的な前処理が必要となる。電極パターンは駆動素子から絶縁基板にわたって形成されるため、圧電素子と絶縁基板を同時に無電解メッキする。
したがって、圧電素子と絶縁基板の表面は、化学的な前処理に対し特性が似通っていることが要求される。圧電素子と絶縁基板表面の化学的特性が大きく異なっていると、メッキ膜の析出に差が出たり、後工程で、メッキ膜が剥がれたりしてしまう。
【0005】
さらに、絶縁基板の表面は、数10μmの電極パターンを引き回すので、平滑度と空隙レスも要求される。平滑度が悪く、空隙が存在すると、電極パターンがオープンになってしまう。
【0006】
さらに、圧電素子を絶縁基板に接合した後、駆動素子の端面を機械的にテーパ加工する場合、絶縁基板側も加工することになるが、圧電素子と絶縁基板表面の機械的特性が大きく異なっていると、圧電素子や絶縁基板に割れや欠けが発生してしまう。
【0007】
一方、インクジェットヘッドのコスト低減の要請から、平滑度がさほど良好でなく、空隙が多数存在するような絶縁基板であっても使用できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−190892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、安価でありながら、表面の化学的・機械的特性が、圧電素子と親和性のよい絶縁基板を備えるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のインクジェットヘッドは、複数のノズルを有するノズルプレートと、前記ノズルに対応する複数の圧力室と、この圧力室に隣接して設けられるとともに前記圧力室を加圧して前記ノズルから液を吐出させる駆動素子と成る側壁と、を有する圧電素子と、前記圧電素子が接着され、前記圧電素子と親和性のある表面層を有する基板と、前記圧電素子を囲むように前記基板に載置される枠体と、前記圧電素子を駆動するための電極と、を具備し、前記圧電素子は、前記圧電素子の上端部と連続し、かつ前記ノズルプレートと接しない斜面を有し、前記基板は、前記表面層に前記斜面と連続する凹部を有し、前記電極は、前記斜面及び前記凹部の上に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インクジェットヘッドの構成を表す図である。
図2】第1の実施形態のインクジェットヘッドの図1におけるAA線断面図である。
図3】第1の実施形態のインクジェットヘッドの図1におけるBB線断面図である。
図4】第1の実施形態のインクジェットヘッドの要部拡大図である。
図5】第1の実施形態のインクジェットヘッドの要部拡大図である。
図6】表面層を形成する成膜装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0013】
(実施形態に係るインクジェットヘッドの構成)
図1は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の構成を表す図である。図1に示すように、インクジェットヘッド100は、誘電体により形成される絶縁性の基板11と、この基板11の上に載置され、内部に空間及び導体層を有する圧力室が刻み込まれた圧電素子12と、この圧電素子12を囲むように基板11に載置される枠体13と、圧電素子12の側壁の上端部に接着され、ノズル列9を有するノズルプレート14と、を備える。
【0014】
基板11は、例えば、アルミナにより形成される。他の基板11の材料として、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁性材料を用いることも可能である。
【0015】
インクジェットヘッド100は、圧電素子12を基板11の上に2列有する。圧電素子12は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)により形成される。他の圧電素子12材料として、PTO(PbTiO3:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3:マグネシウム酸ニオブ酸鉛)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、ZnOなどを用いることも可能である。
【0016】
ノズルプレート14は、ポリイミドなどの樹脂フィルムにより形成される。ノズルプレート14のインク滴吐出側の表面には、例えばフッ素樹脂などにより撥水膜(図示せず)が形成されている。他のノズルプレート14材料として、ニッケルプレートやシリコンプレートを用いることもできる。
【0017】
各ノズル列9は、複数のノズル穴15を含んでいる。ノズル穴15は、インク滴の吐出孔として機能するもので、等間隔で形成されている。
【0018】
図2は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の図1におけるAA線断面図である。図2に示すように、インクジェットヘッド100は、基板11にインク吸入孔16と、インク排出孔17と、を有している。インクは、インク吸入孔16、圧力室30、インク排出孔17を循環する。圧力室30は、内部に空間及び導体層を有する。基板11、枠体13、及びノズルプレート14によって囲まれたインク室8が形成される。
【0019】
基板11の表面には、PZTから成る表面層11Aが、50μmの厚さで形成されており、その表面層11Aの上に、圧電素子12が接合されている。この場合、基板11/表面層11A/圧電素子12の構成は、アルミナ/PZT/PZTとなる。他の表面層11Aを製作する材料として、アルミナ、PTO、PMNT、PZNT、ZnOなどを用いることも可能である。
【0020】
さらに、圧電素子12の圧力室30の側壁は断面が台形を呈している。ノズルプレート14は、圧力室30の上部にノズル穴15を有する。
【0021】
インクジェットヘッド100は、枠体13の外側に圧電素子12を駆動させるドライバIC18と、ドライバIC18と圧電素子12とを接続する電極19と、を有する。電極19は、基板11の表面層11Aの上に配線される。インクジェットヘッド100は、ドライバIC18により駆動される圧力素子12が変形することより、インクを吐出する。すなわち、容積が増えた圧力室30内はインクを内部に導入し、容積が減った圧力室30は加圧されたインクをノズル穴15から吐出する。
【0022】
図3は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の図1におけるBB線断面図である。図3に示すように、インクジェットヘッド100は、基板11の表面層11Aの上に第1の圧電素子12Bを凹凸が連続するくしの歯状に有している。この第1の圧電素子12Bの凸部の上端に、第1の圧電素子12Bとは極性が逆となる第2の圧電素子12Aと、第1の圧電素子12Bの凹部の上端に、圧力室30の側壁31を断面コの字状に覆う導体層21と、を有している。
【0023】
このような構造において、側壁31、溝部の底面、及びノズルプレート14に囲まれた部位が、主走査方向に並んだ複数の圧力室30を形成している。
【0024】
図4は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の基板11の表面層11Aの凹部11Bの断面の拡大図である。凹部11Bは、圧電素子12の台形と連続するように形成される。凹部11Bの深さは、例えば20μmであり、表面層11Aの厚みよりも小さい。
【0025】
図5は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の凹部11Bの斜視拡大図である。図5に示すように、圧電素子12の斜面50と斜面50の間であって圧電素子12の圧力室30から凹部11Bを含む表面層11Aの上を引き回して、電極19が形成される。
【0026】
以上述べたように、本実施形態のインクジェットヘッド100は、基板11の表面に圧電素子12と化学的及び機械的に親和性の高い表面層11Aを有し、この表面層11Aに圧電素子12の斜面50と連続する凹部11Bを備え、斜面50及び凹部11Bを含む表面層11Aの上に圧電素子12を駆動するための電極19を備える。
【0027】
従って、電極19の密着性などの信頼性が高い。さらに、圧電素子12を基板11に接合した後、圧電素子12の端面を機械的にテーパ加工する場合、基板11側も加工することになるが、圧電素子12や基板11に割れや欠けが発生しない。
【0028】
(実施形態に係るインクジェットヘッドの製造方法)
次に、以上のように構成されたインクジェットヘッドの製造方法について説明する。
【0029】
まず、基板11を用意する。基板11の表面には予め、PZTなどのセラミックス材料の微粒子を含むエアロゾルを噴き付けて、表面層11Aが形成される。
【0030】
インク吸入孔16とインク排出孔17とを有する基板11の上に、一対の第1の圧電素子12Bと第2の圧電素子12Aとを貼り合わせたものを接着する。
【0031】
図6は、表面層11Aを形成する成膜装置70の概略図である。成膜装置70は、主に、キャリアガスを内蔵するガスボンベ71、エアロゾル発生器72、成膜室73、ノズル74、基板ホルダ75及び排気ポンプ76から構成される。
【0032】
エアロゾル発生器72には、内部に材料微粒子を収容可能なエアロゾル室72aと、このエアロゾル室72aを振動させる振動機72bとを備えている。エアロゾル室72aとガスボンベ71とは、導入管77を介して接続されている。導入管77の先端は、エアロゾル室72a内部において底面付近に位置し、セラミックス材料微粒子中に埋没するように配置されている。
【0033】
成膜室73には、基板11を取り付けるための基板ホルダ75と、ノズル74が備え付けられている。ノズル74は、供給管78を介してエアロゾル室72aに接続されている。さらに、成膜室73には、排気ポンプ76が接続されている。
【0034】
以上のように構成した成膜装置70において、エアロゾル発生器72内にセラミックス材料微粒子を投入し、さらに、成膜室73の基板ホルダ75に基板11をセットする。次に、ガスボンベ71からヘリウムなどの不活性ガスのキャリアガスを、導入管77を通じて、エアロゾル発生器72内に導入する。キャリアガスの導入によりセラミックス材料微粒子が舞い上がるとともに、振動機72bの作用によりセラミックス材料微粒子とキャリアガスが混合され、エアロゾルが発生する。発生したエアロゾルは、供給管78を通じてノズル74から基板11に向けて高速で噴射される。エアロゾル中のセラミックス材料微粒子は、基板11に衝突し細かく粉砕され、基板11に接着するとともに、セラミックス材料微粒子同士が接合して緻密な表面層11Aを形成する。この表面層11Aは、セラミックス焼成体と同程度の硬度を有しているため、その後の高温の加熱を必要としない。
【0035】
次に、接着した圧電素子12を、断面が台形となるように切削加工する。同時に、表面層11Aも切削加工して、凹部11Bを形成する。このように、凹部11Bは圧電素子12の台形と連続するように形成される。
【0036】
次に、ダイシングソーのダイアモンドホイールなどにより、圧力室30を切削加工する。
【0037】
次に、圧力室30の側壁31、圧電素子12の斜面50、及び基板11の表面層11Aに導体層21を形成する。
【0038】
より具体的には、圧力室30の側壁31、圧電素子12の斜面50、及び基板11の表面層11Aに無電解メッキ法によりNiまたはCuの層を0.5〜3μm形成し、次に電解メッキ法によりAu層を0.1μm形成する。即ち、導体層21の最表面はAuで形成されている。
【0039】
次に、圧力室30の側壁31の上端部の導体層21を、化学的エッチングまたは機械的に除去する。さらに、圧電素子12の斜面50及び基板11の表面層11Aの導体層21については、レーザーを照射して不要部分を除去し、電極19を形成する。
【0040】
次に、基板11に枠体13を接着する。接着剤は、例えば、熱硬化型のエポキシ系接着剤が好適である。
【0041】
次に、枠体13及び圧電素子12の側壁31の上端部に、接着剤を用いてノズルプレート14を接着し、ノズルプレート14にレーザーを照射してノズル穴15を穿孔する。
【0042】
または、予めノズル穴15が穿孔されたノズルプレート14を、枠体13及び圧電素子12の側壁31の上端部に、接着剤を用いて接着する。
【0043】
他のノズルプレート14材料として、ニッケルノズルプレートやシリコンプレートを用いることができる。ニッケルノズルプレートは、電鋳法によってノズルを有するニッケルプレートを形成し、インク吐出側の表面に撥水膜が形成されたものである。シリコンプレートは、単結晶シリコン板を異方性エッチングによって形成し、インク吐出側の表面に撥水膜が形成されたものである。
【0044】
次に、基板11の電極19にドライバIC18を接続する。
【0045】
次に、インクケースを接着する。
【0046】
本実施形態のインクジェットヘッド100の製造方法では、基板11の表面に圧電素子12と化学的及び機械的に親和性の高い表面層11Aを、セラミックス材料微粒子を含むエアロゾルを噴き付けて形成する。
【0047】
本実施形態によれば、セラミックス材料微粒子を含むエアロゾルを噴き付けて形成した表面層11Aは、緻密な膜ができる。そのため、平滑度がさほど良好でなく空隙が多数存在する材料であっても、基板11として使用することができる。
【0048】
さらに、セラミックス焼成体と同程度の硬度を有しているため、その後の高温の加熱が必要ないので、セラミックスなどと比較して耐熱性の低い材料も基板11として使用することが可能となる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100・・・インクジェットヘッド、
11・・・基板、
11A・・・表面層、
11B・・・凹部、
12・・・圧電素子、
13・・・枠体、
14・・・ノズルプレート、
21・・・導体層、
22・・・溝部、
30・・・圧力室。
図1
図2
図3
図4
図5
図6