(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736212
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】信号処理回路、振動検出回路及び電子装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/017 20060101AFI20150528BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B60R21/017
G01P15/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-75586(P2011-75586)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-206687(P2012-206687A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】下田 貞之
【審査官】
杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05828138(US,A)
【文献】
特開平10−129407(JP,A)
【文献】
特開平09−020205(JP,A)
【文献】
特開2001−206190(JP,A)
【文献】
特開2005−229712(JP,A)
【文献】
特開2007−030811(JP,A)
【文献】
国際公開第02/014120(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/017
B60R 21/16−21/33
G01P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度スイッチの開閉状態に基づき、前記加速度スイッチに加わる振動を検出する信号処理回路において、
前記信号処理回路は、前記加速度スイッチの出力とあらかじめ設定された第1の判定基準を比較して、前記加速度スイッチに加わる振動を判定する主判定部と、前記主判定部の判定結果に基づき、電源の供給を制御する電源制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、制御対象を制御する主制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、自らに加わる物理量を検出して、この検出結果を物理量計測情報として出力するセンサと、を備え、
前記加速度スイッチは、前記主判定部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記主制御部または前記センサの少なくとも一方への電源の供給を制御し、
前記加速度スイッチは、前記電源制御部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記加速度スイッチへの電源の供給を制御することを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
加速度スイッチの開閉状態に基づき、前記加速度スイッチに加わる振動を検出する信号処理回路において、
前記信号処理回路は、前記加速度スイッチの出力とあらかじめ設定された第1の判定基準を比較して、前記加速度スイッチに加わる振動を判定する主判定部と、前記主判定部の判定結果に基づき、電源の供給を制御する電源制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、制御対象を制御する主制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、自らに加わる物理量を検出して、この検出結果を物理量計測情報として出力するセンサと、を備え、
前記加速度スイッチは、前記主判定部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記主制御部または前記センサの少なくとも一方への電源の供給を制御し、
前記主制御部は、前記センサが出力する物理量計測情報とあらかじめ設定された第2の判定基準を比較して、前記センサに加わる物理量の状態を判定する判定機能を備え、前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記加速度スイッチへの電源の供給を制御することを特徴とする信号処理回路。
【請求項3】
加速度スイッチの開閉状態に基づき、前記加速度スイッチに加わる振動を検出する信号処理回路において、
前記信号処理回路は、前記加速度スイッチの出力とあらかじめ設定された第1の判定基準を比較して、前記加速度スイッチに加わる振動を判定する主判定部と、前記主判定部の判定結果に基づき、電源の供給を制御する電源制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、制御対象を制御する主制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、自らに加わる物理量を検出して、この検出結果を物理量計測情報として出力するセンサと、を備え、
前記加速度スイッチは、前記主判定部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記主制御部または前記センサの少なくとも一方への電源の供給を制御し、
前記主判定部と、入力側の電位を変更する電位レベル切替部と、を含む判定部を備え、
前記主制御部は、前記主判定部の判定結果に基づき、前記電位レベル切替部によって、前記判定部の入力側の電位を変更することを特徴とする信号処理回路。
【請求項4】
前記主判定部と、入力側の電位を変更する電位レベル切替部と、を含む判定部を備え、
前記主制御部は、前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記電位レベル切替部によって、前記判定部の入力側の電位を変更することを特徴とする請求項2記載の信号処理回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理回路と、前記加速度スイッチと、を含み、
前記主制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果、または前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記制御対象を制御することを特徴とする振動検出回路。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の信号処理回路と、前記加速度スイッチと、前記制御対象と、を含み、
前記主制御部は、前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果、または前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記制御対象を制御することを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路、振動検出回路及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の信号処理回路について、一般的に知られているエアバックを使用した乗員保護装置を例として、
図8に基づき説明する。なお、この乗員保護装置は、加速度スイッチ及び加速度センサで検出した衝撃に基づき、エアバックを膨張させる雷管を点火させるために信号処理回路を使用している。
【0003】
図8に示す乗員保護装置で使用されている常開型の加速度スイッチの信号処理回路100は、加速度スイッチ101とマイクロコンピュータ102(以下マイコンと記す)と加速度センサ103を含み、電源ラインとグランドの間に第1抵抗104及び第2抵抗105が直列接続され、第1抵抗及び第2抵抗の接続点が加速度スイッチ101を介して接地されるとともに、この接続点はマイコン102の第1ポート102a及び第2ポート102bに接続され、第1ポートを入力ポートに、第2ポートをローレベル出力兼入力ポートに設定している。
【0004】
そこで、加速度スイッチ101に所定値以上の振動が加わると、加速度スイッチが閉状態となり、マイコン102は、第2ポート102bを介して加速度スイッチの開閉状態を電圧変化に基づき検出する。続いて、マイコン102は、加速度センサ103の出力を検出し、この出力結果に基づき、所定値以上の振動が加速度センサに加わったと判定すると、スイッチング用電界効果型トランジスタ106,107を閉状態に切り替えることにより、電源ラインからDC/DCコンバータ108を介して点火電流を雷管109に供給する。
【0005】
このような乗員保護装置で使用される信号処理回路は、加速度スイッチに加わる振動を常時検出できるように、マイコンを常時動作させる必要がある。更に、マイコンは、センサを常時駆動させるとともに、センサの出力信号の検出準備も行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−55114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の加速度スイッチ及びセンサとマイコンを組み合わせた信号処理回路の場合、振動または加速度を検出するセンサを常時駆動させるとともに、マイコンを動作させるための電源を供給する必要であった。特に、小容量のバッテリしか搭載できない機器に組み込む場合、振動を検知しない時には、信号処理回路を含むシステムを待機させ、振動を検知した時点で、システムを動作させることにより、バッテリの電力を無駄に使用しないように構成する必要があった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、加速度スイッチに所定値より小さい振動しか加わっていない時には、主制御部またはセンサを停止または低電流動作させ、加速度スイッチに所定値以上の振動が加わった時に、主制御部またはセンサを起動させるとともに、主制御部の起動後に加速度スイッチまたはセンサへの電源の供給を制御して、より一層システム全体の消費電流を低減させた信号処理回路、振動検出回路及び電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る、加速度スイッチの開閉状態に基づき、前記加速度スイッチに加わる振動を検出する信号処理回路において、前記信号処理回路は、前記加速度スイッチの出力とあらかじめ設定された第1の判定基準を比較して、前記加速度スイッチに加わる振動を判定する主判定部と、前記主判定部の判定結果に基づき、電源の供給を制御する電源制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、制御対象を制御する主制御部と、前記電源制御部によって供給された電源に基づいて、自らに加わる物理量を検出して、この検出結果を物理量計測情報として出力するセンサと、を備え、前記加速度スイッチは、前記主判定部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記主制御部または前記センサの少なくとも一方への電源の供給を制御することを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、主判定部による加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、電源制御部が、主制御部またはセンサに電源を供給しないことによって、主制御部及びセンサが停止している時に電流を消費せず、加速度スイッチに振動が加わった時に、電源制御部が、主制御部またはセンサに電源を供給することにより、加速度スイッチと信号処理回路を含むシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【0011】
また、前記信号処理回路において、前記加速度スイッチは、前記電源制御部に接続され、前記電源制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、前記加速度スイッチへの電源の供給を制御することを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記に加え、加速度スイッチへの電源の供給を制御することにより、加速度スイッチに供給する電流を低減することができるため、加速度スイッチと信号処理回路を含むシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【0013】
また、前記信号処理回路において、前記主制御部は、前記センサが出力する物理量計測情報とあらかじめ設定された第2の判定基準を比較して、前記センサに加わる物理量の状態を判定する判定機能を備え、前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記加速度スイッチへの電源の供給を制御することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記に加え、主制御部は、センサが出力する物理量計測結果に基づき、加速度スイッチへの電源の供給を制御することにより、必要に応じて、加速度スイッチに供給する電流を低減することができるため、加速度スイッチと信号処理回路とを含めたシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【0015】
また、前記信号処理回路において、前記主判定部と、入力側の電位を変更する電位レベル切替部と、を含む判定部を備え、前記主制御部は、前記主判定部の判定結果に基づき、前記電位レベル切替部によって、前記判定部の入力側の電位を変更することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記に加え、主制御部は、加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、電位レベル切替部によって、判定部の入力側の電位を変更することにより、加速度スイッチの閉状態の場合に、加速度スイッチに流れる電流を低減させることができるため、加速度スイッチと信号処理回路を含めたシステム全体の消費電流を更に低減させることができる。
【0017】
また、前記信号処理回路において、前記主判定部と、入力側の電位を変更する電位レベル切替部と、を含む判定部を備え、前記主制御部は、前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記電位レベル切替部によって、前記判定部の入力側の電位を変更することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記に加え、主制御部は、前記センサのに加わる物理量の状態を判定し、この判定結果に基づき、電位レベル切替部によって、判定部の入力側の電位を変更することにより、加速度スイッチの閉状態の場合に、供給する電流を低減させることができるため、加速度スイッチと信号処理回路を含めたシステム全体の消費電流を更に低減させることができる。
【0019】
本発明に係る振動検出回路は、前記信号処理回路と、前記加速度スイッチと、を含み、前記主制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチ、または前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記制御対象を制御することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、主制御部は、加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、制御対象を起動または停止し、加速度スイッチ及び信号処理回路を含む振動検出回路の電流を制御することにより、振動検出回路の消費電流を低減することができるため、振動検出回路と制御対象を含むシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【0021】
また、本発明に係る電子装置は、前記信号処理回路と、前記加速度スイッチと、前記制御対象と、を含み、前記主制御部は、前記主判定部による前記加速度スイッチに加わる振動の判定結果、または前記センサに加わる物理量の状態の判定結果に基づき、前記制御対象を制御することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、主制御部は、加速度スイッチに加わる振動の判定結果に基づき、加速度スイッチと信号処理回路に加えて、制御対象の動作を制御することにより、信号処理回路、加速度スイッチ及び制御対象のそれぞれの消費電流を低減することができるため、電子装置のシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る信号処理回路、振動検出回路及び電子装置によれば、加速度スイッチに加わる振動が所定値より小さい時に、信号処理回路の駆動電流を大幅に低減させたシステムを構築することができる。また、加速度スイッチに加わる振動が所定値以上の時にも、主制御部、またはセンサが起動し、主制御部、またはセンサの動作が終了するまでの間、加速度スイッチに供給する電源を制御することにより、加速度スイッチに流れる電流を抑えることができるため、加速度スイッチと信号処理回路を含むシステム全体の消費電流を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】加速度スイッチの構成を説明するための断面図である。
【
図2】加速度スイッチの構成を説明するため、縦断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態である信号処理回路を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態である信号処理回路を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態である電子装置を示すブロック図である。
【
図8】従来の信号処理回路の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明に係る信号処理回路の第1の実施形態について、
図1〜3に基づき説明する。最初に、信号処理回路に接続される加速度スイッチについて
図1,2に基づき説明する。
図1は重り内部の空間に後述する対向電極を持つ、加速度スイッチ10の構成を示す断面図である。
図2は、加速度スイッチ10を
図1で示すA−A´面で切った縦断面図である。なお、
図1は、
図2で示すB−B´面で切った断面図である。
【0026】
図1,2に示す加速度スイッチ10は、絶縁材料を用いる第1基板11、単結晶シリコンなどを用いる第2基板12、ガラスなどの絶縁材料を用いる第3基板13が積層された構成となる。14は加速度スイッチの周辺部に配置される支持部である。15は支持部14に固定される梁である。16は内部に空間を形成し、梁15を介して支持部14で支持された重りである。17は重り16の内部の空間に配置され、一定値以上の加速度が加わった場合に重りの移動を制限するとともに、重りと接触して、電気的に導通する対向電極である。なお、第2基板12は、支持部14、梁15、重り16、対向電極17の電気的な導通を取るため単結晶シリコンからなる。18及び19は、第1基板11に金などの導電性材料を埋め込むことにより、加速度スイッチと後述する信号処理回路とを電気的に接続するための接点となる貫通電極である。なお、第1基板11と第3基板13は陽極接合などの方法により、支持部14及び対向電極17に固定されており、梁15及び重り16を外部環境から保護する機能も備える。
【0027】
この加速度スイッチ10は、加速度スイッチに加わる振動の強さが所定の値以上になると、貫通電極18,19間が導通する閉状態となり、振動の強さが所定値より小さいときは、貫通電極18,19間が導通せず、開状態となる常開型の加速度スイッチである。
【0028】
次に、本発明に係る信号処理回路の第1の実施形態について、
図3に基づき説明する。
図3は加速度スイッチ10に接続する信号処理回路20の構成を示すブロック図である。信号処理回路20は、主判定部21、電源制御部22、主制御部23、センサ24を含む。
【0029】
主判定部21は、加速度スイッチ10の一端(貫通電極18)に接続し、加速度スイッチの開閉状態を検出し、この検出信号とあらかじめ設定された判定基準と比較して、振動の発生を判定し、判定結果として出力する。
【0030】
電源制御部22は、主判定部21の判定結果に基づき、主制御部23の電源の供給を制御し、起動及び停止制御、低電流及び通常動作モードの切替制御、センサ24の起動及び停止制御、低電流モード及び通常動作モードの切替制御を行う。
また、電源制御部22は、加速度スイッチ10の他端(貫通電極19)に接続し、加速度スイッチ10に電源を供給をするとともに行い、供給する電圧及び電流の制御も行う。
【0031】
主制御部23は、電源制御部22によって供給された電源に基づいて動作し、制御対象30の動作を制御する。また、後述するセンサ24の加速度検出結果を加速度(物理量)計測情報として受け取り、この加速度計測情報とあらかじめ設定された判定基準と比較し、センサに加わる振動の判定を行う。
【0032】
センサ24は、電源制御部22によって供給された電源に基づいて動作し、自らに加わる加速度(物理量)を検出し、検出結果を加速度(物理量)計測情報として主制御部23に出力する。
図4で示すように、センサ24は加速度(物理量)検出部25とA/D変換部26を含み、加速度検出部で加速度を検出し、A/D変換部でアナログ値をデジタル値に変換し、加速度計測情報として出力する機能を備える。
【0033】
また、信号処理回路20は、抵抗またはコンデンサで構成される負荷31も含む。この負荷31は、加速度スイッチ10の一端(貫通電極18)と主判定部21の入力との間に接続され、加速度スイッチがオフ(開状態)の時に、主判定部21の入力側の電位を調整する機能を備える。また、負荷31は、抵抗、コンデンサを直列及び並列等、どのように組み合わせてもよく、更に、トランジスタ等のアクティブ素子で構成するとともに、主制御部23の出力によって、負荷抵抗を実質的に変更する構成にすることも可能である。
【0034】
次に、信号処理回路20の動作について、
図3に基づき説明する。まず、加速度スイッチ10に振動が加わらない、または、所定値より小さい振動が加わる低振動状態の動作について説明する。この状態では、加速度スイッチ10の開閉状態を主判定部21で検出し、この検出信号をあらかじめ設定された第1の判定基準と比較して低振動状態と判定する。この判定結果に基づき、電源制御部22は主制御部23を停止または一部の機能の動作のみ行う低電流モードに設定する。さらに、電源制御部22は、加速度スイッチ10への電源の供給を制御する。なお、加速度スイッチ10への出力電圧は正電源電圧VDDと同様のハイレベルに設定されている。また、低振動状態では、加速度スイッチ10は通常オフ(開状態)であり、主判定部21の入力側は負荷31によりプルダウンされているので、負電源電圧VSSと同様のローレベルとなる。
【0035】
次に、加速度スイッチ10に所定値以上の振動が加わる高振動状態の動作について説明する。この状態では、加速度スイッチ10が閉状態となり、主判定部21で加速度スイッチの開閉状態を検出し、あらかじめ設定された第1の判定基準と比較して、加速度スイッチに振動が加わっていると判定する。この判定結果に基づき、電源制御部22は、主制御部23を起動または通常の機能を実行する通常動作モードに切り替える。また、電源制御部22は、主判定部21の判定結果に基づき、加速度スイッチへの電源の供給を制御し、加速度スイッチに流す電流を低減、もしくは0にする。この信号処理回路20は、高振動状態においても、加速度スイッチ10と負荷31を介して流れる電流を低減、もしくは0にするため、信号処理回路を含めたシステム全体の消費電流を低減することができる。
【0036】
次に、高振動状態で加速度の計測を開始し、低振動状態に移行した時の動作について説明する。最初に、電源制御部22は、センサ24で加速度の計測を開始するために、センサ起動信号を出力し、センサ24を起動、もしくは通常動作モードに切り替える。これにより、センサ24は、加速度検出部25で加速度の検出を開始し、この加速度検出部で検出したアナログ値をA/D変換部26でデジタル値に変換し、センサ24の動作状態を含む加速度計側情報として、主制御部23に出力する。
【0037】
なお、主制御部23は、この加速度計測情報に基づき、制御対象の動作を制御する。加速度計測情報と、あらかじめ設定された第2の判定基準と比較し、その加速度の状態が通常と異なると判定すると、制御信号を出力し、制御対象30を動作(起動)させる。一方、所定期間内にセンサ24に印加される加速度が第2の判定基準を下回ると判定すると、主制御部23は、電源制御部22にその判定結果に基づく停止信号を出力し、電源制御部22は、この停止信号に基づき、主制御部23及びセンサ24を停止または低電流モードに設定する。また、電源制御部22が、その停止信号に基づき、加速度スイッチへの電源の供給を制御し、加速度スイッチ10への出力電圧をローレベルからハイレベルに設定し、主判定部21で加速度スイッチ10の開閉状態を検出して振動判定可能な状態に変更する。
【0038】
上述したように、本発明に係る加速度スイッチの信号処理回路20は、低振動状態では、主制御部23及びセンサ24を停止または低電流モードにすることにより、消費電流を低減し、高振動状態では、加速度スイッチ10及び負荷31を流れる電流を低減または0にすることにより、信号処理回路を含むシステム全体の消費電流を低減させることができる。なお、主制御部23は、最初に制御対象30を起動し、次に、センサ24の加速度検出情報に基づく判定結果から、制御対象を停止する構成でもよい。この場合、主制御部は、より短時間に制御対象を起動することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る信号処理回路の第2の実施形態について、
図5,6に基づき説明する。
図5は、
図3に示す第1の実施形態と一部異なる構成を含む信号処理回路40を示すブロック図である。
図6は、信号処理回路40の判定部28の構成を示すブロック図である。信号処理回路40は、電源制御部22と主制御部23とセンサ24と判定部28を含む。この判定部28は、主判定部21を有し、主制御部23の制御に応じて、入力側をプルダウンまたはプルアップもしくはディスエーブル(ハイインピーダンス)に変更する電位レベル切替部27を主判定部21の入力側に有する。信号処理回路40は、この判定部28を含むことにより、
図3の信号処理回路で示した負荷31を設ける必要はない。
【0040】
また、判定部28は、入力側に加速度スイッチ10の一端(貫通電極18)に接続し、加速度スイッチの開閉状態を検出して、この検出信号をあらかじめ設定された第1の判定基準と比較して、加速度スイッチに加わる振動の発生を主判定部21で判定し、この判定結果を電源制御部22に出力する。
【0041】
次に、加速度スイッチの信号処理回路40の動作について、
図5に基づき説明する。まず、主制御部23は、判定部28の入力側をディスエーブル状態(ハイインピーダンス)に設定する。この状態から、所定値以上の振動が加わる高振動状態になると、加速度スイッチ10が閉状態となり、判定部28は、ハイレベル入力を受け、第1の判定基準と比較して、振動の発生を検知する。この判定結果から、電源制御部22は、主制御部23に電源を供給し、起動させる。その後、主制御部23は、判定部28の入力側をプルアップ状態または引き続きディスエーブル状態に切り替える。これにより、再度、加速度スイッチ10が閉状態に変化しても、判定部28の入力側には電流が流れず、加速度スイッチに流れる電流は0となる。その後、電源制御部22がセンサ24に電源を供給して起動させることにより、センサは、加速度検出を開始し、センサに加わるリアルタイムの加速度を計測し、加速度計測情報として主制御部23に出力する。
【0042】
また、この加速度計測情報に基づき、主制御部23は、所定の間、センサ24に加わる加速度を加速度計測情報として抽出し、地震波等、所定の状態で発生する加速度を検知するための第2の判定基準と比較して、加速度の状態を通常とは異なる(地震波)と判定すると、制御対象30を起動させ、所定の間、制御対象を動作させた後、停止させる。一方、主制御部23が通常の状態と判定すると、制御対象の停止状態を維持する。その後、主制御部23は、判定部28の入力側をプルダウン状態にした後、ディスエーブル状態にするとともに、センサ24の消費電流を低減させるために、センサによる加速度検出を停止させる制御信号を電源制御部22に出力する。その後、電源制御部22は、主制御部23を停止させ、信号処理回路40の消費電流を低減させる。なお、このような状態から、加速度スイッチ10にあらかじめ設定された第1の判定基準以上の振動が加わり、加速度スイッチ10が再び閉状態となる場合、判定部28にはハイレベルが入力され、判定部の判定結果に基づき、電源制御部22は、再び、主制御部23またはセンサ24に電源を供給する。
【0043】
なお、信号処理回路に含まれる判定部が、プルダウンまたはプルアップの切り替え不能である場合、判定部の入力側に、プルダウンとプルアップを切り替える回路に接続することにより、プルダウンまたはプルアップに切り替えることも可能である。また、トランジスタなどアクティブ素子を使用した入力条件変更機能を有する回路を接続しし、判定部の入力側に接続することにより、プルダウンまたはディスエーブル状態を作り出すことも可能である。
【0044】
これまで説明した信号処理回路の実施形態では、ハイレベルが判定部の入力信号として加わる場合に、電源制御部22に出力(割り込み出力)する例として説明したが、ローレベルが判定部に加わる場合に、出力することも可能である。この場合には、
図3,5で示す信号処理回路の構成で、負荷31に接続されている負電源を正電源(VDD)に、加速度スイッチに接続されている正電源(VDD)を負電源に、プルダウンをプルアップに、プルアップをプルダウンに、ハイレベルをローレベルに、それぞれ置き替える構成としても、本発明の目的である、低振動状態における信号処理回路の主制御部またはセンサに流れる電流を低減し、高振動状態における加速度スイッチに流れる電流を低減することが可能である。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る第3の実施形態として、第1の実施形態で示した信号処理回路を含み、加速度スイッチに加わる振動の検出結果に基づき所定の動作を行う電子装置について、そのような電子装置の一例である、バッテリで駆動する地震計について、
図7のブロック図に基づき説明する。
【0046】
図7は、加速度スイッチと信号処理回路を含み、小容量のバッテリを搭載する地震計60のブロック図である。地震計60は、振動検出回路61と、音や光、もしくはデータ発信を行う制御対象に相当する警報発信手段62と、振動検出回路と警報発信手段に電源を供給するバッテリ63を含む。なお、振動検出回路61は、加速度スイッチ10と信号処理回路20(40)を含み、加速度スイッチに加わる所定値以上の振動でマイコン64及びセンサ24を起動させるように構成されている。なお、マイコン64は、
図3,5の信号処理回路のブロック図で示す主判定部21、電源制御部22、主制御部23を含む。なお、
図7に示す地震計では、第1の実施形態で示した信号処理回路20を含む構成としたが、この信号処理回路20の代わりに第2の実施形態で示した、判定部28を有する信号処理回路40を含む構成としてもよい。
【0047】
マイコン64の主制御部23は、地震波の判定機能と制御対象の制御機能を有する。センサ24は、加速度検出部25で検出した加速度検出結果をA/D変換部26で加速度計測情報に変換し、主制御部23に出力する。主制御部23は、そのセンサ24が出力する加速度計測情報とあらかじめ設定した基準と比較して、地震が発生しているか否かの判定を行い、その判定結果に基づき、制御対象の起動または停止の制御を行う。警報発信手段62は、マイコン64の主制御部24の制御信号S4に基づき、スピーカーや発光手段を通して音や光等を発生する機能を有する。
【0048】
次に地震計60の動作について、
図7に基づき説明する。加速度スイッチ10に加わる振動が所定値より小さい場合、地震計に含まれる信号処理回路20(40)は待機または停止状態を維持し、警報発信手段62も待機状態を維持する。一方、加速度スイッチに加わる振動が所定値以上の場合、主判定部21は、加速度スイッチの開閉状態を示す出力信号(S1)を検出して、あらかじめ設定された所定値と比較し、加速度スイッチ10に加わる振動の発生を判定を行う。この判定結果に基づき、電源制御部22は、主制御部23を起動させる。さらに、主制御部23は、起動信号(S2)をセンサ24に出力して、センサによる加速度の検出を開始する。このセンサ24は加速度を検出し、この検出結果をデジタル値に変換した加速度測定情報(S3)を出力する。この加速度測定情報(S3)とあらかじめ設定した判定基準と比較し、主制御部23が、地震が発生したと判定すると、その判定結果に基づき、制御信号(S4)を警報発信手段62へ出力する。警報発信手段62は、制御信号(S4)に基づき、スピーカーや発光デバイス、無線デバイス等を介して警報である音や光、データを周囲に発信する。なお、警報を所定の間、発信した後、主制御部23は警報発信手段を停止させ、電源制御部22で主制御部23及びセンサ24への電源供給を停止させることにより、マイコン64は低電流モードに切り替わり、地震計60は待機状態に移行する。
【0049】
このように、本発明に係る電子装置は、加速度スイッチ10に加わる振動の判定を主判定部21で行い、この判定結果に基づき、マイコン64の電源制御部22は主制御部23及びセンサ24に電源を供給し、起動させる。続いて、主制御部23は、センサ24で加速度の計測を開始させ、センサに加わる加速度の計測情報を得て、この情報とあらかじめ設定された判定基準を比較し、地震が発生したと判定すると、音、光等の警報発生及び他端末等へ発信など、所定の動作を開始するように制御対象を起動させる。一方、マイコン64の主制御部23は、地震が発生していないと判定した場合や加速度スイッチに所定値より小さい振動が加わっていると判定した場合は、制御対象の動作を停止させるように制御する、このようにして、電子装置自体の消費電流を低減することができるため、電子装置のバッテリ交換頻度を少なくすることができる。
【0050】
なお、本発明に係る信号処理回路及び電子装置の実施形態では、加速度を計測するセンサを例として説明したが、加速度を計測するセンサに限らず、例えば、温湿度、ジャイロ、圧力等の物理量を計測する種々のセンサを含む構成にすることも可能である。これらのセンサが自らに加わる物理量を検出し、その検出結果の集合である物理量測定情報に基づき、電源制御部は、電源の供給を制御して、主制御部及びセンサを適宜、起動、停止もしくは低電流モードに切り替えることにより、信号処理回路の消費電流を低減させることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 加速度スイッチ
20 信号処理回路
21 主判定部
22 電源制御部
23 主制御部
24 センサ
25 加速度検出部
26 A/D変換部
27 電位レベル切替部
28 判定部
40 信号処理回路
60 地震計(電子装置)
61 振動検出回路
62 警報発信手段
63 バッテリ
64 マイコン
100 従来の信号処理回路