特許第5736213号(P5736213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736213
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】気液混合攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 5/04 20060101AFI20150528BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20150528BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20150528BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20150528BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20150528BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20150528BHJP
   B01F 5/20 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B01F5/04ZAB
   B01D53/34 134D
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 D
   B01F5/00 G
   B01D53/18 E
   B01F5/20
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-77295(P2011-77295)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-210572(P2012-210572A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】593129423
【氏名又は名称】株式会社東設
(74)【代理人】
【識別番号】100061284
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 侑
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】塚瀬 浩之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 謙一郎
【審査官】 藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−296918(JP,A)
【文献】 特開昭63−001471(JP,A)
【文献】 実開昭61−015055(JP,U)
【文献】 特開平03−164420(JP,A)
【文献】 実開昭59−020860(JP,U)
【文献】 実開平02−081641(JP,U)
【文献】 実開平04−053426(JP,U)
【文献】 実開昭61−044262(JP,U)
【文献】 特開平09−234479(JP,A)
【文献】 実開昭57−076830(JP,U)
【文献】 特開昭54−035169(JP,A)
【文献】 特開平07−003479(JP,A)
【文献】 実開昭58−019725(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 1/00−5/26
B01D 53/18
B01D 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる気液混合攪拌装置において、
前記吸気管内に可撓性チューブを挿着して該可撓性チューブの下端部を前記吸気管の下端部に対向させ、前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて内側流水路を形成し、
前記吸気管に、前記内側流水路と連通する分水孔を貫設し、
前記可撓性チューブの内側には、ロッド棒が同心状に設けられていることを特徴とする気液混合攪拌装置。
【請求項2】
前記分水孔は、旋回流を形成する旋回流形成孔であることを特徴とする請求項1記載の気液混合攪拌装置。
【請求項3】
前記分水孔は、吸気管の下端部側に複数形成されていることを特徴とする請求項1記載の気液混合攪拌装置。
【請求項4】
前記吸気管の内周面には、内面突起が設けられていることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の気液混合攪拌装置。
【請求項5】
前記可撓性チューブの外周面には、外面突起が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、又は、4記載の気液混合攪拌装置。
【請求項6】
前記可撓性チューブには、変形容易部が設けられていることを特徴とする請求項1、2、、4、又は、5記載の気液混合攪拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置や液晶製造装置等から排出される有毒ガスを除害、回収するための、除害装置に関するものであるが、更に述べると、導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる、気液混合攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインや液晶製造ラインから排出されるガスには、SiOやWO等の微細な粉体と同時に有害なガスが含まれているので、そのまま大気中に放出することができない。そのため、従来、除害装置を用いて有毒ガスの除害を行っているが、この除害装置として、次の様なものがある。(例えば、特許文献1、参照)。
【0003】
吸気管から導入される有毒ガスを水に混入せしめて除害する装置であって,前記吸気管内を乾燥させるための気体を流入させる乾燥用管と、該気体の流入を制御する弁とを有する有毒ガスの除害装置において;前記吸気管内を洗浄させるための液体を流入させる洗浄用管と、該液体の流入を制御する弁とを有し、吸気圧力上昇時には、有毒ガスの流入を制限して前記液体を前記吸気管内に流入せしめて管内洗浄し、その後、管内乾燥手段により前記吸気管内を乾燥させて管内乾燥した後、有毒ガスを再度導入するようにした除害装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−296918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例では、適宜吸気管の内周面全体を洗浄乾燥させることにより該吸気管の詰まりを防止しているが、乾燥用管や洗浄用管等の設備が必要となるとともに、洗浄及び乾燥作業に時間がかかる。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑み、簡単に、吸気管の詰まりを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者は、WF(六フッ化タングステン)やSiF(四フッ化ケイ素)などの有害ガスは、水と反応して粉体となるため、前記水と前記ガスとが混合攪拌される場所に位置する、前記吸気管の下端部近傍には、前記粉体が付着しやすいことに注目するとともに、前記課題を解決するためには、前記吸気管の下端部を振動させればよいのではないか、と考えた。
【0008】
そこで、どのようにすれば、前記吸気管の下端部を振動させることができるか、について検討した。除害装置は、運転中にポンプ等の駆動により振動し、僅かに吸気管が振動しているので、この吸気管内に前記吸気管より小径の可撓性チューブを挿入し、その上端部を前記吸気管に固定した。
【0009】
そうすると、前記除害装置の振動により前記チューブが振動して該吸気管の内周面に衝突し、繰り返し該吸気管の下端部に衝撃を与えて振動させるので、前記チューブ及び吸気管に粉体が付着し難いことがわかった。この発明は、前記知見に基づいてなされたものである。
【0010】
この発明は、導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる気液混合攪拌装置において、前記吸気管内に可撓性チューブを挿着して該可撓性チューブの下端部を前記吸気管の下端部に対向させ、前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて内側流水路を形成し、前記吸気管に、前記内側流水路と連通する分水孔を貫設し、前記可撓性チューブの内側には、ロッド棒が同心状に設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明の前記分水孔は、旋回流を形成する旋回流形成孔であることを特徴とする。この発明の前記分水孔は、吸気管の下端部側に複数形成されていることを特徴とする。この発明の前記吸気管の内周面には、内面突起が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明の前記可撓性チューブの外周面には、外面突起が設けられていることを特徴とする。この発明の前記可撓性チューブには、変形容易部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように吸気管に、前記内側流水路と連通する分水孔を貫設したので、導水管と吸気管との間の外側流水路を流れる処理液、例えば、水、は、その一部が前記分水孔から前記内側流水孔内に分流する。そのため、前記可撓性チューブは、前記内側流水路を流れる水の外力を受けて変位し吸気管との衝突を繰り返すので、前記チューブの下端部に付着する粉体は、剥離される。
【0014】
又、前記可撓性チューブの有害ガスは、前記内側流水路から放出される水と混合・撹拌され、更に前記外側流水路から螺旋流となって放出される水と混合・撹拌されて微細気泡状化するので、十分に処理液(水)と接触し除害される。そのため、除害特性は、従来例に比べ、良くなるので、除害効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】本発明の第2実施形態を示す縦断面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】本発明の第3実施形態を示す縦断面図である
図7】気液混合撹拌装置の除害特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施の形態を図1図3に基づいて説明する。有毒ガスの除害装置の液体槽1には、処理液、例えば、水Wが貯溜されている。この液体槽1には、該液体槽1内の処理液(水)Wを循環させるための循環路5が配置されている。この循環路5には、導水管2と吸気管13を備えた気液混合攪拌装置4が設けられている。
【0017】
前記導水管2は、L字状に形成され、その上端は前記循環路5に連結され、その下端2aには、前記導水管2より小径の混合気液管14が連結されている。前記液体槽1の上部には、除害されたガス(処理済ガス)を排気するための排気口1aが突設されている。
【0018】
前記導水管2内には、吸気管13が挿着されているが、この吸気管13は、例えば、直径(内径)30mmのエンビ管である。該吸気管13は、前記導水管2の曲がり部を突き抜けて突出しており、その上端部13aには、有害ガスGの供給ラインの接続手段と、可撓性チューブ18の上端部18aを固定する保持手段が設けられている。
【0019】
前記可撓性チューブ18は、例えば、直径(外径)20mmのテフロン(登録商標)製パイプであり、前記吸気管13の垂直方向の長さより僅かに長く形成されている。前記吸気管13の内周面13bと前記可撓性チューブ18の外周面18bとの間には、断面円環状の内側流水路6が形成されている。この内側流水路6の流路幅Aは、例えば、5mmであるが、その値は必要に応じて適宜選択される。
【0020】
前記チューブ18の下端部18cは、前記吸気管13の下端部13cと対向しているが、前記チューブ18の下端は、前記吸気管13の下端より僅かに突出している。このチューブ18の下端の突出量は、前記内側流水路6の流路幅Aと略同等であるが、必要に応じて適宜選択される。
【0021】
導水管2の下端2a側の内周面13cは、吸気管13の直径より大きな直径を有する狭路リング19が嵌着され、該狭路リング19には、前記吸気管13の下端部13cを保持する楕円板20が設けられている。
【0022】
前記吸気管13の下端部13c側には、分水孔22が貫設されている。この分水孔22は、旋回流を形成できるように接線方向を向いているが、その形状、配設位置、開口面積、等は必要に応じて適宜選択される。前記吸気管13の下端部側内周面13bには、可撓性チューブ18の外周面18bが衝突する内面突起23が設けられている。この内面突起23は、1個、又は、外周方向に間隔をおいて複数個設けてもよい。この内面突起23の形状、配置、等は必要に応じて適宜選択される。
【0023】
前記可撓性チューブ18の中心部には、ロッド棒24が同心状に配設されている。このロッド棒24の下端24cは、前記吸気管13の下端部13c及び可撓性チューブ18の下端18cより下方に突出しているが、その太さ(直径)、配設位置等は、必要に応じて適宜選択される。前記導水管2の狭路リング19、吸気管13、可撓性チューブ18及びロッド棒24は、略等間隔をおいて同心状に配設されているが、これらの間隔は、必要に応じて適宜選択することができる。
【0024】
次に、本実施形態の作動について説明する。図示しないポンプにより液体層1内の処理液(例えば、水)Wが循環路5に送られると、前記水Wは前記外側流水路8内に流れ込むと共に、その一部Wは、分水孔22を通って内側流水路6に流れ込む。そうすると、導水管2と吸気管13との間の外側流水路8を流れる水Wは、楕円板20の作用により螺旋流となって流下すると共に、内側流水路6内を流れる水Wも、旋回流となりながら流下する。
【0025】
そして、前記内側流水路6の水Wは、可撓性チューブ18に外力を与えながら流下し、該可撓性チューブ18を振動させるので、該可撓性チューブ18は吸気管13の内面突起23と衝突する。そうすると、該可撓性チューブ18の下端部18cに付着した粉体は、外側からの衝撃を受けて剥がれ落ちる。更に、前記可撓チューブ18はロッド棒24と衝突するので、外側からの衝撃で剥がれ落ちなかった粉体もこの内側からの更なる衝撃により効果的に剥ぎ落とすことができる。
【0026】
又、前記可撓性チューブ18内を流下する有害ガスGは、前記内側流水路6から旋回流となって放出される前記水Wと混合・撹拌されながら混合気液管14内を旋回するとともに、外側流水路8から螺旋流となって放出される前記水Wと混合・撹拌され、混合気液WGとなりながら前記混合気液管14内を流下し、微細気泡状なる。この混合気液WGは、前記混合気液管14を介して液体槽1内に戻されて、除害される。
【0027】
この時、前記外側流水路8を流れる水Wの流速と、内側流水路6を流れる水Wの流速と、可撓性チューブ18を流れる有害ガスGの流速とは、互いに異なっており、例えば、水Wの流速<水Wの流速<有害ガスGの流速、の関係である。そして、最も流速の大きい有害ガスGは、最初に最も流速の遅い前記水Wと混合・撹拌され、更に、前記水Wより流速の大きい水Wと混合・撹拌されることになるので、前記有害ガスGは、良く混合・撹拌されて微細気泡状となり、水と十分に接触することができる。そのため、有害ガスGは、全体的にみると、従来例より水と接触する面積が大きくなるので、除害効率が良くなる。
【0028】
因みに、本件発明者が、本発明の気液混合撹拌装置と従来例の気液混合撹拌装置を使用して、可撓性チューブ18に供給される有害ガスの入口塩素量(sccm)と、液体層1の排気口1aから排出される排気ガスの出口塩素濃度(ppm)との関係を実験調査してみたところ、図7に示す結果を得た。但し、実験条件は、下記の通りである。
a:有害ガス吸引量(総風量) 60L/min.
b:外側流水路の水Wの流速 4.27m/s
c:内側流水路の水W1の流速 1.86m/s
d:可撓性チューブの有害ガスの流速 5.0m/s
【0029】
この図7は、
(1)入口塩素量が60sccmの時の出口塩素濃度は、
本件発明X:0.3ppm、 従来例Y:0.3ppm、
(b)入口塩素量が100sccmの時の出口塩素濃度は、
本件発明X:1.0ppm、 従来例Y:1.7ppm、
(c)入口塩素量が150sccmの時の出口塩素濃度は、
本件発明X:13.0ppm、 従来例Y:15.5ppm、
であることを示している。
【0030】
前記実験調査の結果、入口塩素量が60sccmの時は、本件発明Xと従来例Yとの出口塩素濃度は、同一であったが、入口塩素量が60sccmを超えると、その値が大きくなればなるほど、本件発明Xと従来例Yと間の差が大きくなり、本件発明の除害効率が向上していることが分かった。なお、入口塩素量60sccm、100sccm、150sccmは、総風量60L/min.に対する割合に換算すると、約0.1%、0.17%、0.25%、となる。
【0031】
前述のようにして除害されたガス(処理済みガス)は、排気口1aを介して生産ライン等に送り込まれる。
【0032】
本発明の第2実施の形態を図4図5に基づいて説明するが、図1図3と同一図面符号はその名称も機能も同一である。この実施形態と前記第1実施形態との相違点は、可撓性チューブ18の外周面18bに外面突起26を設けたことである。この外面突起26は、可撓性チューブ18の下端部18cに設けられ、かつ、周方向及び軸方向に間隔をおいて、複数個設けられている。この外面突起26の形状、大きさ、配設位置等は、必要に応じて適宜選択される。
【0033】
この外面突起26を配設することにより、可撓性チューブ18の衝撃力を大きくすることができるので、前記チューブ18の下端部18cに付着した粉体をより効果的良く剥がすことができる。
【0034】
本発明の第3実施の形態を図6に基づいて説明するが、図1図3と同一図面符号はその名称も機能も同一である。この実施形態と前記第1実施形態との相違点は、可撓性チューブ18に変形容易部30を形成したことである。この変形容易部30は、他の部分より変形し易い部分であるが、例えば、この変形容易部30として可撓性チューブ18の一部を薄肉にした円筒状薄肉部が採用される。この変形容易部30の形状、大きさ、配設位置等は、必要に応じて適宜選択される。
【0035】
この実施形態では、変形容易部30が他の部分に比べ変形しやすいので、可撓性チューブ18の振動を激しくすることができる。そのため、可撓性チューブ18の衝撃力を大きくすることができるので、前記チューブ18の下端部18cに付着した粉体をより効果的良く剥がすことができる。
【符号の説明】
【0036】
導水管
気液混合攪拌装置
内側流水路
外側流水路
13 吸気管
18 可撓性チューブ
22 分水孔
23 内面突起
24 ロッド棒
26 外面突起
30 変形容易部
処理液(水)
処理液(水)
有害ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7