【実施例】
【0049】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0050】
最初に、各実施例および比較例の重合系における重合転化率、ならびに各実施例および比較例において作製した(メタ)アクリル重合体の評価方法を示す。
【0051】
[重合転化率]
重合系の重合転化率は、重合系に存在する未反応の単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC17A)を用いて測定することにより、求めた。具体的には、以下のとおりである。まず、測定対象である重合溶液の一部を抜き取り、抜き取った重合溶液と、内部標準物質として炭酸ジフェニルとを、アセトンに溶解させた。次に、溶解により得られた溶液に残留する各単量体の量を、ガスクロマトグラフィーを用いて定量した。次に、抜き取った分を含め、重合溶液の全体に残留する各単量体の合計量を、定量した値から換算して求め、これを全残存単量体量とした。次に、以下の式を用いて、重合転化率を求めた。
[重合転化率(%)]=(重合反応終了までに重合系に加えた全単量体量−全残存単量体量)/(重合反応終了までに重合系に加えた全単量体量)
【0052】
ガスクロマトグラフィーの測定装置および測定条件は、以下のとおりである。
システム:島津製作所製ガスクロマトグラフィー GC17A
カラム:信和加工製、ULBON HR-1、長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm
カラム昇温条件:60℃で5分保持した後、昇温速度5℃/分で235℃まで35分かけて昇温し、さらに昇温速度25℃/分で315℃まで3.2分かけて昇温し、そのまま10分間保持した。
気化室温度:250℃
検出器(FID)温度:320℃
キャリアーガス:ヘリウム(250kPa)
全流量:19.2mL/分
カラム流量:2.69mL/分
スプリット比:5.0
【0053】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
【0054】
システム:東ソー製GPCシステム HLC−8220
測定側カラム構成
・ガードカラム:東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
・分離カラム:東ソー製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成
・リファレンスカラム:東ソー製、TSKgel SuperH-RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0055】
[ガラス転移温度(Tg)]
重合体のTgは、JIS K7121の規定に準拠して、始点法により求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
【0056】
[連鎖移動剤導入量]
重合体に導入された連鎖移動剤の量(連鎖移動剤導入量)は、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック製、iCAP6500)を用いて、重合体の硫黄含有率を評価することにより、求めた。具体的には、以下のとおりである。まず、測定対象の重合体が含まれる重合溶液1.2重量部をアセトン20重量部で希釈し、得られた希釈溶液を400重量部のメタノールに滴下して沈殿物を得た。次に、この沈殿物を濾過し、乾燥することによって得た粉体状の重合体を2−ブタノンに溶解し、得られた溶液に対してICP発光分光分析を実施して、重合体の硫黄含有率を評価した。
【0057】
[環構造の含有率]
重合体における主鎖の環構造(ラクトン環構造)の含有率は、ダイナミックTG法により、以下のようにして求めた。最初に、ラクトン環構造を主鎖に有する重合体に対してダイナミックTG測定を実施し、150℃から300℃の間の重量減少率を測定して、得られた値を実測重量減少率(X)とした。150℃は、重合体に残存する水酸基およびエステル基が環化縮合反応を開始する温度であり、300℃は、重合体の熱分解が始まる温度である。これとは別に、前駆体である重合体に含まれる全ての水酸基が脱アルコール反応を起こしてラクトン環が形成されたと仮定して、その反応による重量減少率(即ち、前駆体の脱アルコール環化縮合反応率が100%であったと仮定した重量減少率)を算出し、理論重量減少率(Y)とした。具体的には、理論重量減少率(Y)は、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率から求めることができる。なお、前駆体の組成は、測定対象である重合体の組成から導いた。次に、式[1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))]×100(%)により、重合体の脱アルコール反応率を求めた。測定対象である重合体において、求めた脱アルコール反応率の分だけラクトン環構造が形成されていると考えられる。そこで、前駆体における、脱アルコール反応に関与する水酸基を有する構成単位の含有率に、求めた脱アルコール反応率を乗じ、ラクトン環構造の重量に換算することで、重合体におけるラクトン環構造の含有率とした。
【0058】
[熱分解温度]
重合体の熱分解温度は、差動型示差熱天秤装置(リガク製、Thermo Plus 2 TG-8120)を用いて、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から500℃まで昇温速度10℃/分で昇温して、求めた。なお、このとき、150℃〜500℃の間で、重量減少速度値が0.05重量%/秒以下となるように階段状に等温制御した。
【0059】
[単量体残揮量]
重合体の単量体残揮量(MMA残揮量)は、各実施例および比較例において得られたペレットをアセトンに溶解して得た溶液に対して、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC17A)を用いて、メチルメタクリレート(MMA)単量体の含有率を評価することにより、求めた。MMA残揮量が少ないほど、重合体の耐熱分解性が高いといえる。
【0060】
[耐熱分解性(フィルム成形時の発泡性)]
重合体の耐熱分解性として、熱分解温度以外に、フィルム成形時の発泡を評価した。フィルム成形時に発泡が生じた場合、当該重合体の耐熱分解性は低いといえる。具体的には、各実施例および比較例において得られたペレットを、単軸押出機(φ=20mm、L/D=25)およびコートハンガータイプTダイ(幅150mm)を用いて280℃で溶融押出成形し、厚さ130μmのフィルムを得た。次に、得られたフィルムの長さ10mの範囲における気泡を目視により確認し、気泡が確認できなかった場合を「○(良)」、気泡が確認された場合を「×(不可)」とした。なお、フィルムへの溶融押出成形は、溶融状態の重合体を上記Tダイから、温度110℃に保持した冷却ロール上に吐出することで行った。
【0061】
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)47.5重量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、および酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。重合開始から2時間後、重合系内に、連鎖移動剤としてドデカンチオール0.05重量部(重合系に投入した全単量体の合計重量に対して1000ppmに相当)を添加して、さらに4時間重合を進行させた。
【0062】
次に、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0063】
ドデカンチオールを添加した時点における重合系の重合転化率、ならびに重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、それぞれ77重量%および95重量%であった。
【0064】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーが設けられており、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、濾過面積1.5m
2)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、13重量部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガノックス1010)と、失活剤として3重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)とを、トルエン84重量部に溶解させた溶液を用いた。
【0065】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(1A)を得た。ペレット(1A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は13.5万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は200ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0066】
(実施例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA47.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、および酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。さらに、2時間重合を進行させた後、重合系内に、連鎖移動剤としてドデカンチオール0.05重量部(重合系に投入した全単量体の合計重量に対して1000ppmに相当)を添加した。その後、2時間のさらなる重合を進行させた。
【0067】
次に、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0068】
ドデカンチオールを添加した時点(重合開始から4時間経過した時点)における重合系の重合転化率、ならびに重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、それぞれ92重量%および96重量%であった。
【0069】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0070】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(2A)を得た。ペレット(2A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は13.5万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は100ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0071】
(実施例3)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、アクリル酸メチル(MA)1.0重量部、MMA46.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、および酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。重合開始から2時間後、重合系内に、連鎖移動剤としてドデカンチオール0.05重量部(重合系に投入した全単量体の合計重量に対して1000ppmに相当)を添加して、さらに4時間の重合を進行させた。
【0072】
次に、重合により形成したMA−MMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MA−MMA−MHMA共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0073】
ドデカンチオールを添加した時点における重合系の重合転化率、ならびに重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、それぞれ76重量%および95重量%であった。
【0074】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0075】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(3A)を得た。ペレット(3A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは118℃、重量平均分子量は13.0万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は210ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0076】
(実施例4)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA47.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部、および連鎖移動剤としてドデカンチオール0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた。さらに、2時間重合を進行させた後、重合系内に、連鎖移動剤としてドデカンチオール0.025重量部(重合系に投入した全単量体の合計重量に対して500ppmに相当、重合開始前に加えた連鎖移動剤の量を合算すると1000ppmに相当する)を添加した。その後、2時間のさらなる重合を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0077】
次に、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。
【0078】
重合進行中にドデカンチオールを添加した時点(重合開始から4時間経過した時点)における重合系の重合転化率、ならびに重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、それぞれ90重量%および94重量%であった。
【0079】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0080】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(4A)を得た。ペレット(4A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は12.0万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は270ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0081】
(比較例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA47.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部、および連鎖移動剤としてドデカンチオール0.05重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた後、さらに4時間重合を進行させた。重合開始前に重合系に加えた連鎖移動剤の量は、重合系に投入した全単量体の合計重量に対して1000ppmに相当した。
【0082】
次に、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0083】
ドデカンチオールを添加した時点における重合系の重合転化率は、重合開始前であることから0重量%であった。重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、88重量%であった。
【0084】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0085】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(5A)を得た。ペレット(5A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は11.6万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は420ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0086】
(比較例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA47.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、および酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた後、さらに4時間の熟成を行った。
【0087】
次に、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0088】
比較例2の重合では、連鎖移動剤を重合系に加えなかった。重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、97重量%であった。
【0089】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0090】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(6A)を得た。ペレット(6A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は13.1万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は0ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0091】
(比較例3)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA47.5重量部、MHMA2.5重量部、重合溶媒としてトルエン50重量部、および酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.025重量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.10重量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.10重量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させた後、さらに4時間の熟成を行った。
【0092】
次に、得られた重合溶液に、連鎖移動剤としてドデカンチオール0.05重量部を添加した後、重合により形成したMMA−MHMA共重合体に対して環化反応を進行させ、その主鎖にラクトン環構造を導入した。具体的には、得られた重合溶液に上記連鎖移動剤を添加した後、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸2−エチルヘキシル(堺化学工業製、Phoslex A-18)0.013重量部を当該溶液に加え、約90〜110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。このとき、重合系における重合条件は満たされており、MMAとMHMAとの共重合体が形成する重合反応は、環化縮合反応が終了するまで当該反応とともに進行していた。
【0093】
重合進行中にドデカンチオールを添加した時点(重合開始から6時間経過した時点)における重合系の重合転化率、ならびに重合が終了した時点(重合開始から8時間経過した時点)における重合系の重合転化率を、重合溶液の一部を抜き取って評価したところ、それぞれ96重量%および97重量%であった。
【0094】
次に、得られた重合溶液を熱交換器に通して240℃まで昇温し、当該温度において環化縮合反応をさらに進行させた後、その重合溶液を、実施例1で使用したものと同じベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、100重量部/時(重合体量換算)の処理速度で導入し、脱揮を行った。その際、別途準備しておいた酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を1.51重量部/時の投入速度で第1ベントの後から、イオン交換水を0.49重量部/時の投入速度で第2および第3ベントの後から、それぞれ投入した。酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液には、実施例1と同じ溶液を用いた。
【0095】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある重合体を当該押出機の先端からポリマーフィルタにより濾過しながら排出し、ペレタイザーによりペレット化して、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(7A)を得た。ペレット(7A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は12.4万であった。連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は検出限界以下であり、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0096】
(実施例5)
酸化防止剤/環化触媒失活剤の混合溶液を、13重量部の酸化防止剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガノックス1010)と、失活剤として3重量部のオクチル酸亜鉛(日本化学産業製、ニッカオクチクス亜鉛3.6%)と、41重量部の紫外線吸収剤(ADEKA製、アデカスタブLA−70F)とを、トルエン43重量部に溶解させた溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして、主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル重合体の透明なペレット(8A)を得た。ペレット(8A)を構成する(メタ)アクリル重合体のTgは119℃、重量平均分子量は13.5万、連鎖移動剤の導入量(重合系に投入した全単量体の合計重量に対する導入量)は200ppm、ラクトン環構造の含有率は7.2重量%であった。
【0097】
実施例1〜5および比較例1〜3の結果を、以下の表1および表2にまとめる。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1,2に示すように、重合系に連鎖移動剤を加えない比較例2に比べて、重合系に連鎖移動剤を加えた実施例1〜5ならびに重合開始前に全ての連鎖移動剤を加えた比較例1では、耐熱分解温度が上昇し、フィルム成形時の発泡も抑制された。すなわち、耐熱分解性に優れる(メタ)アクリル重合体が得られた。しかし、重合開始前に全ての連鎖移動剤を加えた比較例1では、重合進行中の特定のタイミングで連鎖移動剤を加えた実施例1〜5に比べて重合終了時における重合転化率が低く、(メタ)アクリル重合体の生産性に劣った。また、重合転化率が96重量%のときに全ての連鎖移動剤を加えた比較例3では、熱分解温度が低く、フィルム成形時に発泡が生じた。すなわち、耐熱分解性に優れる(メタ)アクリル重合体が得られなかった。