(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736221
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】旋回カメラ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20060101AFI20150528BHJP
G03B 15/00 20060101ALI20150528BHJP
G03B 17/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
G03B17/56 B
G03B15/00 P
G03B17/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-83683(P2011-83683)
(22)【出願日】2011年4月5日
(65)【公開番号】特開2012-220564(P2012-220564A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220620
【氏名又は名称】東芝テリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】井口 克紀
【審査官】
原田 英信
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−026867(JP,A)
【文献】
特開平08−108099(JP,A)
【文献】
特開2010−130061(JP,A)
【文献】
特開2009−058870(JP,A)
【文献】
特開2003−121918(JP,A)
【文献】
実開昭63−186937(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 15/00
G03B 17/00
G03B 17/56−17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールを筐体内に収容したカメラ部と、
前記カメラ部と別筐体で構成され前記カメラ部を水平および垂直方向に旋回駆動する水平旋回駆動機構および垂直旋回駆動機構を筐体内に収容した旋回部と、
前記旋回部と別筐体で構成され前記旋回部を水平旋回可能に支承する台座部とを具備し、
前記水平旋回駆動機構および垂直旋回駆動機構は、それぞれ、
第1大小一対のプーリと同プーリの間に張設された第1歯付ベルトを第1段とし、第2大小一対のプーリと同プーリの間に張設された第2歯付ベルトを第2段とし、前記第1段の大プーリと前記第2段の小プーリが軸着された中間軸を有し、前記中間軸を折り返し点として前記第1段と前記第2段が互いに重なる方向に平行して設けられた減速機構と、
前記減速機構の前記第1段の小プーリを軸着したステッピングモータと、
前記ステッピングモータに軸着された電磁ブレーキと、
前記減速機構の前記第2段の大プーリを一端に軸着した旋回駆動軸と、
を有し、
前記垂直旋回駆動機構の前記旋回駆動軸は、前記第1段の前記第1歯付ベルトのベルト内空間を貫通し、且つ前記第2段の大プーリを介して前記カメラ部を軸着し、前記中間軸は旋回部筐体に固定された中間軸支部に回転自在に支持されていることを特徴とする旋回カメラ。
【請求項2】
前記電磁ブレーキの回転軸の一端は前記ステッピングモータの回転駆動軸に直結され、他端は前記ステッピングモータの回転位置検出を行うエンコーダの回転軸に直結されていることを特徴とする請求項1に記載の旋回カメラ。
【請求項3】
前記水平旋回駆動機構に設けられた前記減速機構、および前記垂直旋回駆動機構に設けられた前記減速機構は、それぞれ、
前記中間軸および前記ステッピングモータの回転駆動軸に直交するプーリ面を回転面とし、前記旋回駆動軸に直交するプーリ面を旋回面としたとき、前記回転面と前記旋回面が平行であることを特徴とする請求項2に記載の旋回カメラ。
【請求項4】
前記垂直旋回駆動機構の前記旋回駆動軸の他端側に設けられたケーブル収納室と、前記旋回駆動軸内の軸方向に沿って設けられた第1ケーブル貫通孔とを有し、前記第1ケーブル貫通孔に前記カメラモジュールから導出されたカメラケーブルが挿通され、前記ケーブル収納室に所定長収納されていることを特徴とする請求項1に記載の旋回カメラ。
【請求項5】
前記水平旋回駆動機構の前記旋回駆動軸内に、その軸方向に沿って第2ケーブル貫通孔が設けられ、前記ケーブル収容室から導出した前記カメラケーブルが前記第2ケーブル貫通孔に挿通されていることを特徴とする請求項4に記載の旋回カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCCTV(closed-circuit Television)システムに適用して好適なパンおよびチルト方向の旋回機構を備えた監視カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
パン(水平)およびチルト(垂直)方向の旋回機構を持つ監視カメラは、監視対象として、任意の数点の監視位置を設定し、その設定した監視位置を行き来しながら各設定位置でそれぞれカメラ監視する使用例が多い。この際、各設定位置の間を旋回移動して停止したときの位置ズレ量は、極力小さく抑えることが望ましく、その旋回機構には工夫を凝らす必要がある。
【0003】
一般に、屋外型の旋回カメラで、カメラ部および照明部を旋回させるには、原動機としてモータを使い、滅速機を介して出カトルクを増大させる機構を具備する。また、この場合、歯車機構による減速機にて減速比を大きくとることで高精度化が実現可能となる。例えばウォームギヤ機構を使う場合、滅速比が大きく高い停止精度が得られ、またセルフロックが働くため、出力軸側からは回転せず、停止位置を保持できるというメリットがある。ただし歯車機構である限り、必ずバックラッシュが発生し停止精度を小さくするには限界が生じる。例えば、旋回駆動機構に、大きな駆動トルクが得られるギアレシオ(減速比)の大きいウォームギアを用いた場合、ギアのバックラッシュによる、所謂、駆動部のガタが発生し、このガタ(ギアのバックラッシュ)が画角設定精度を妨げる。また、バックラッシュの大きさは機械的な調整に左右されるため慎重な調整が要求され機構も複雑になり易い。
【0004】
この問題を解決するための技術として、従来では、ウォームギアを用いた旋回駆動機構において、旋回停止時(ウォームとウォームホイールの回転伝達停止時)に、押し付け力発生部材により、ウォームをウォームホイールに押し付けて、ウォームとウォームホイール間の隙間(バックラッシュ)を少なくし、旋回時(回転伝達時)に、押し付け力発生部材による押し付けを解除する技術が存在した(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、このバックラッシュ防止技術は、押し付け力発生部材の押し付けタイミングにより性能が大きく左右され、安定した信頼性の高い動作が期待できないという問題があり、さらに押し付けタイミングによって駆動源となるモータに過度の負荷がかかるという問題がある。
【0006】
また、ウォームをウォームホイールに常時押し付ける構造とした場合は、この押し付けに伴う摩擦が常時発生することから、駆動源に駆動トルクの大きな大型モータを必要とし、装置の大型化を招くとともに、安定した信頼性の高い動作を期待できないという問題がある。
【0007】
また、他の技術として、ウォームを回転可能に支持するウォームベースをウォームホイールの軸と直交する法線方向に可動するためのガイド機構を有して、ウォームをウォームホイールの歯面に作用する法線方向に押圧し、ウォームとウォームホイールとの軸間距離を所定範囲内に保持する技術が存在した(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、このバックラッシュ防止技術は、ウォームとウォームホイールとの軸間距離を一定の範囲内に安定した状態で常時保持する機構が必要となり、構造が煩雑になるとともに、信頼性に乏しく、実用性の面で問題がある。
【0009】
また、減速機構に、ギアに代わりベルトを用いた旋回駆動機構も種々存在する(特許文献3,4)。この減速機構にベルトを用いた旋回駆動機構は、旋回位置精度を上げようとすると、要求される旋回位置精度に応じた、大きな減速比をもつ多段ベルト構成の減速機構と、段毎若しくは最終段の出力側に高精度の制動機構が必要となり、とくにパンとチルトの双方を多段ベルト構成とした場合、構成の煩雑化を招くとともに装置の大型化を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−279758号公報
【特許文献2】特開2004−108443号公報
【特許文献3】特開2008− 78964号公報
【特許文献4】特開2009− 58870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来では、長期に亘り安定した動作が期待できる、実用性の高いカメラ旋回駆動機構が存在しないという問題があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、煩雑な減速機構並びに制動機構を必要とせず、簡素な構成で長期に亘り安定した精度の高い旋回動作が期待できる旋回カメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明
の実施形態に係る旋回カメラは、カメラモジュールを筐体内に収容したカメラ部と、前記カメラ部と別筐体で構成され前記カメラ部を水平および垂直方向に旋回駆動する水平旋回駆動機構および垂直旋回駆動機構を筐体内に収容した旋回部と、前記旋回部と別筐体で構成され前記旋回部を水平旋回可能に支承する台座部とを具備し、前記水平旋回駆動機構および垂直旋回駆動機構は、それぞれ、
第1大小一対のプーリと同プーリの間に張設された
第1歯付ベルト
を第1段とし、第2大小一対のプーリと同プーリの間に張設された第2歯付ベルトを第2段とし、前記第1段の大プーリと前記第2段の小プーリが軸着された中間軸を有し
、前記中間軸を折り返し点として前記第1段と前記第2段が互いに重なる方向に平行して設けられた減速機構と、前記減速機構の
前記第1段の小プーリを軸着したステッピングモータと、前記ステッピングモータに軸着された電磁ブレーキと、前記減速機構の
前記第2段の大プーリを
一端に軸着した旋回駆動軸と、
を有し、前記垂直旋回駆動機構の前記旋回駆動軸は、前記第1段の前記第1歯付ベルトのベルト内空間を貫通し、且つ前記第2段の大プーリを介して前記カメラ部を軸着し、前記中間軸は旋回部筐体に固定された中間軸支部に回転自在に支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、煩雑な減速機構並びに制動機構を必要とせず、簡素な構成で長期に亘り安定した精度の高い旋回動作が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る旋回カメラの外観構成を示す正面図。
【
図2】上記実施形態に係る旋回カメラの外観構成を示す側面図。
【
図3】上記実施形態に係る旋回カメラの垂直旋回駆動機構の構成を示す斜視図。
【
図4】上記実施形態に係る旋回カメラの水平旋回駆動機構の構成を示す斜視図。
【
図5】上記実施形態に係る旋回カメラの旋回部の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態に係る旋回カメラは、ギアに代わりベルトを用いたフルベルト駆動機構により旋回駆動機構の減速機構を構成し、この減速機構を介在した旋回機構の駆動源となるステッピングモータ(パルスモータ)に、通電を断つことにより制動作動する電磁ブレーキを直結した構成として、減速機構に過負荷をかけることなく、高い回転位置精度で撮像カメラ本体をパン、チルト制御できる旋回カメラを実現している。
【0017】
本発明の一実施形態に係る旋回カメラの外観構成を
図1および
図2に示し、旋回部の構成を
図3乃至
図5に示す。
図1は実施形態に係る旋回カメラの外観構成を示す正面図、
図2は同旋回カメラの外観構成を示す側面図、
図3は同旋回カメラの垂直旋回駆動機構の構成を示す斜視図、
図4は同旋回カメラの水平旋回駆動機構の構成を示す斜視図、
図5は同旋回カメラの旋回部の構成を示す斜視図である。
【0018】
本発明の実施形態に係る旋回カメラは、
図1および
図2に示すように、カメラ部10と、カメラ部10を支承し水平・垂直方向に旋回駆動する旋回部20と、旋回部20を支承する台座部30とを具備して構成される。カメラ部10は旋回部20に垂直旋回駆動部DVを介して垂直方向(図示矢印rv方向)に所定角の回動範囲で旋回可能(チルト制御可能)に支承され、旋回部20は台座部30に水平旋回駆動部DHを介して水平方向(図示矢印rh方向)に旋回可能(パン制御可能)に支承されている。
【0019】
カメラ部10と旋回部20と台座部30は、それぞれ独自の筐体10A,20A,30Aにより構成されている。ここでは筐体10Aをカメラ部筐体、筐体20Aを旋回部筐体、筐体30Aを台座部筐体と称す。
【0020】
カメラ部10は、カメラ部筐体10Aに、撮像カメラ本体(カメラモジュール)11、および図示しないデフロスタガラス、ヒーター等を収容して構成される。
【0021】
カメラモジュール11は、その前部に撮像窓部にデフロスタガラス12、およびワイパー15を備え、カメラ本体内部の光軸上にCMOSセンサまたはCCDセンサ等のエリア・イメージ・センサを内蔵している。カメラモジュール11は、エリア・イメージ・センサの映像出力に従うNTSCコンポジット信号またはY/C信号等の映像信号を映像ケーブル(L)に出力する。この映像ケーブル(L)は、旋回部20を介し、さらに台座部30を介して、台座部30に導かれ、台座部30に設けられた映像ケーブルコネクタC1に接続される。この映像ケーブルコネクタC1には、上記映像信号を外部のモニタに伝送するための同軸ケーブルが接続される。
【0022】
旋回部20は、旋回部筐体20Aに、図示しない制御モジュールと、この制御モジュールにより旋回制御される水平旋回駆動部DHおよび垂直旋回駆動部DVと、図示しないヒーター等を収容して構成される。
【0023】
水平旋回駆動部DHと垂直旋回駆動部DVは、それぞれ旋回モータ(ステッピングモータ)とベルト式の減速機とを組み合わせた駆動機構により構成され、制御モジュールからの駆動指令に従いカメラ部10を旋回駆動(パン、チルト駆動)する。この水平旋回駆動部DHと垂直旋回駆動部DVの構成は
図3乃至
図5を参照して後述する。
【0024】
旋回部筐体20Aは、
図3に示す垂直旋回駆動部DVの垂直旋回軸45に対して直交する一方の壁面部に扁平状のカメラ部筐体軸支面部20aを形成し、他方の壁面部に蓋部20cとの間でケーブル収容室23を形成している。カメラ部筐体軸支面部20aには垂直旋回軸45が貫通する軸貫通孔A1(
図4参照)が設けられている。ケーブル収容室23には垂直旋回軸45に設けられたケーブル貫通孔45hから導出された映像ケーブル(L)が所定長収容され、ケーブル収容室23から導出された映像ケーブル(L)が水平旋回軸52に設けられた貫通孔52hに導入され、後述するスリップリングを介して台座部筐体30A内に導かれる。
【0025】
旋回部20と台座部30との間には、旋回部20と台座部30との間で回路接続を行うスリップリング(図示せず)が設けられる。このスリップリングには、上記した映像ケーブル(L)の各信号線が配線され、スリップリングを介して映像信号が台座部30内の映像ケーブル(L)に導かれる。上記スリップリングは
図3に示す水平旋回軸52に設けられたケーブル貫通孔52hに連通して旋回部20と台座部30との間に設けられている。
【0026】
台座部30は、台座部筐体30Aに、映像ケーブルコネクタC1、電源コネクタC2、外部インターフェイスコネクタC3、制御信号コネクタC4等を具備するとともに、図示しない装置電源、電源コネクタ、ヒーター等を収容して構成される。
【0027】
旋回部20の旋回部筐体20A内に設けられた、垂直旋回駆動部DV、および水平旋回駆動部DHの構成を
図3乃至
図5に示している。
【0028】
垂直旋回駆動部DVは、
図3および
図5に示すように、垂直旋回駆動源となるステッピングモータ41と、ステッピングモータ41に軸着された電磁ブレーキ42と、電磁ブレーキ42に軸着されたエンコーダ43と、大小一対のプーリおよび同プーリの間に張設された歯付ベルト
46cを一組の段として段間に中間軸
44を有した
2段の減速機構RVと、減速機構RVの出力軸となる垂直旋回軸45とを具備して構成される。減速機構RVは各プーリ
46a、46bの回転軸
41a、44に直交する
プーリ面を回転面とし、垂直旋回軸45に直交する
プーリ47bのプーリ面を旋回面としたとき、各プーリ
46a、46b、の回転面を
プーリ47bの旋回面に対して平行に設けている。
【0029】
減速機構RVは、ここでは、大小一対のプーリ46a,46bおよび同プーリ46a,46bの間に張設された歯付ベルト46cを第1段とし、大小一対のプーリ47a,47bおよび同プーリ47a,47bの間に張設された歯付ベルト47cを第2段として段間に中間軸44を有して構成されている。中間軸44は、旋回部筐体20Aに固定して設けられた中間軸支部48に回転自在に支持され、第1段の大プーリ46bと第2段の小プーリ47aが軸着される。この中間軸44を折り返し点として、第1段と前記第2段が互いに重なる方向に平行して設けられている。第2段(出力側)の歯付ベルト47cを第1段(入力側)の歯付ベルト46cよりも幅広にして伝達トルクの不均衡を回避している。
【0030】
ステッピングモータ41は、回転駆動軸41aの一端側(先端側)に減速機構RVの第1段の小プーリ46aを軸着し、他端側(後端側)に電磁ブレーキ42を軸着(軸相互を直結)している。電磁ブレーキ42の回転軸は、通電時は回転フリーの状態にあり、通電が絶たれると、その遮断タイミングで回転軸をロック(制動)する。電磁ブレーキ42の回転軸は、一端側(先端側)が上記ステッピングモータ41の回転駆動軸41aに直結され、他端側(後端側)がエンコーダ43の回転軸に直結されている。エンコーダ43はステッピングモータ41の回転位置検出に伴う垂直旋回位置検出信号を出力する。
【0031】
減速機構RVの出力軸となる垂直旋回軸45の一端はカメラ部筐体軸支面部20aの軸貫通孔A1(
図4参照)から導出され、その軸先端部に
大プーリ47bを介してカメラ部10が取り付けられる。すなわち
、カメラ部筐体10Aの一側面に垂直旋回軸45の一端(先端)が取着され、
大プーリ47bによってカメラ部10が垂直旋回軸45に垂直旋回可能に支持される。カメラ部10は
、大プーリ47bが回転されることで垂直旋回軸45を回動中心として垂直旋回軸45により垂直(チルト)方向に旋回駆動される。
垂直旋回軸45は、小プーリ46aと大プーリ46b間に張設された歯付ベルト46cのベルト内空間を貫通して、他端側に設けられたケーブル収納部23まで延長している。
【0032】
垂直旋回軸45の軸中心部に軸方向に沿って設けられた貫通孔45hには、カメラモジュール11から導出された映像ケーブル(L)が貫通され、垂直旋回軸45の他端側の貫通孔45hから導出される。ケーブル貫通孔45hから導出された映像ケーブル(L)は貫通孔45hに連通したケーブル収容室23に所定長収容され、ケーブル収容室23から導出された映像ケーブル(L)が水平旋回軸52に設けられた貫通孔52hに導入される。
【0033】
水平旋回駆動部DHは、
図4および
図5に示すように、水平旋回駆動源となるステッピングモータ61と、ステッピングモータ61に軸着された電磁ブレーキ62と、電磁ブレーキ62に軸着されたエンコーダ63と、大小一対のプーリおよび同プーリの間に張設された歯付ベルト
67cを一組の段として段間に中間軸
64を有した
2段の減速機構RHと、減速機構RHの出力軸となる水平旋回軸52とを具備して構成される。減速機構RHは各プーリ
66a、66bの回転軸
61a、67aに直交する
プーリ面を回転面とし、水平旋回軸52に直交する
プーリ67bのプーリ面を旋回面としたとき、各プーリ
66a、66bの回転面を
プーリ67bの旋回面に対して平行に設けている。
【0034】
減速機構RHは、ここでは、大小一対のプーリ66a,66bおよび同プーリ66a,66bの間に張設された歯付ベルト66cを第1段とし、大小一対のプーリ67a,67bおよび同プーリ67a,67bの間に張設された歯付ベルト67cを第2段として段間に中間軸64を有して構成されている。中間軸64は、旋回部筐体20Aに固定して設けられた中間軸支部68に回転自在に支持され、第1段の大プーリ66bと第2段の小プーリ67aが軸着される。この中間軸64を折り返し点として、第1段と前記第2段が互いに重なる方向に平行して設けられている。第2段(出力側)の歯付ベルト67cを第1段(入力側)の歯付ベルト66cよりも幅広にして伝達トルクの不均衡を回避している。
【0035】
ステッピングモータ61は、回転駆動軸61aの一端側(先端側)に減速機構RHの第1段の小プーリ66aを軸着し、他端側(後端側)に電磁ブレーキ62を軸着(軸相互を直結)している。電磁ブレーキ62の回転軸は、通電時は回転フリーの状態にあり、通電が絶たれると、その遮断タイミングで回転軸をロック(制動)する。電磁ブレーキ62の回転軸は、一端側(先端側)が上記ステッピングモータ61の回転駆動軸61aに直結され、他端側(後端側)がエンコーダ63の回転軸に直結されている。エンコーダ63はステッピングモータ61の回転位置検出に伴う水平旋回位置検出信号を出力する。
【0036】
減速機構RHの出力軸となる水平旋回軸52の一端は旋回部筐体20Aから導出され、その軸先端部に軸周面を一体に結合した旋回台51が取り付けられている。この旋回台51は台座部筐体30Aの上面部に固定され、水平旋回軸52の回転に伴い、旋回部筐体20Aが台座部筐体30Aに支承された状態で台座部筐体30Aに対して水平旋回可能に支承される。水平旋回軸52には旋回基準位置検出用のセンサ片Paが取着されている。
【0037】
水平旋回軸52の軸中心部に軸方向に沿って設けられた貫通孔52hには、旋回部20に設けられたケーブル収容室23から導出された映像ケーブル(L)が貫通して図示しないスリップリングを介し台座部30内に導かれ、映像ケーブルコネクタC1に配線される。
【0038】
上記構成において、旋回部20に設けられた図示しない制御モジュールは、外部から受けた水平旋回指令に基づき垂直旋回駆動部DVを旋回駆動制御し、垂直旋回指令に基づき水平旋回駆動部DHを旋回駆動制御する。
【0039】
垂直旋回駆動部DVにおいて、ステッピングモータ41が回転すると、この回転がフルベルト構造の減速機構RVに伝達され、低速・大トルク変換された後、垂直旋回軸45に伝達されて、カメラ部10が垂直(チルト)方向に旋回駆動される。
【0040】
ステッピングモータ41が回転すると、ステッピングモータ41の回転が、同モータの回転駆動軸41aに軸着された第1段の小プーリ46aと中間軸44に軸着された同段の大プーリ46bとの間に掛け渡された歯付ベルト46cを介して中間軸44に伝達される。これによりステッピングモータ41の回転に対し中間軸44が第1段の減速比で回転駆動される。この中間軸44の回転が、中間軸44に軸着された第2段の小プーリ47aと垂直旋回軸45に軸着された同段の大プーリ47bとの間に掛け渡された歯付ベルト47cを介して垂直旋回軸45に伝達される。これにより垂直旋回軸45が第1段と第2段の減速比(減速機構RVの減速比)で回転(回動)駆動され、この垂直旋回軸45の回転に伴いカメラ部10が垂直(チルト)方向に所定の角度範囲内で旋回駆動される。
【0041】
水平旋回駆動部DHにおいて、ステッピングモータ61が回転すると、この回転がフルベルト構造の減速機構RHに伝達され、低速・大トルク変換された後、水平旋回軸52に伝達されて、カメラ部10(旋回部20)が台座部30に対し水平(パン)方向に旋回駆動される。
【0042】
ステッピングモータ61が回転すると、ステッピングモータ61の回転が、同モータの回転駆動軸61aに軸着された第1段の小プーリ66aと中間軸64に軸着された同段の大プーリ66bとの間に掛け渡された歯付ベルト66cを介して中間軸64に伝達される。これによりステッピングモータ61の回転に対し中間軸64が第1段の減速比で回転駆動される。この中間軸64の回転が、中間軸64に軸着された第2段の小プーリ67aと水平旋回軸52に軸着された同段の大プーリ67bとの間に掛け渡された歯付ベルト67cを介して水平旋回軸52に伝達される。これにより水平旋回軸52が第1段と第2段の減速比(減速機構RHの減速比)で回転(回動)駆動され、この水平旋回軸52の回転に伴いカメラ部10が水平(パン)方向に旋回駆動される。
【0043】
上記した構成により、煩雑な減速機構並びに制動機構を必要としない簡素な制動機能付きのフルベルト構造による減速機構を用いた旋回駆動機構を提供でき、さらに長期に亘り安定した精度の高い旋回動作を期待できる。さらに各筐体内に引き回されるカメラケーブルを信頼性の高い安定した状態で簡素に配線できる。
【0044】
上記した実施形態に係るフルベルト構造の減速機構は、2個のプーリの間に主にゴム製のタイミングベルト(歯付ベルト)を掛けて回転動力を伝える構造であり、2軸が常にベルトで接触しているため、基本的にバックラッシュは発生せず、また、ベルトの弛みも一方のプーリを引張ることで間単に調整することができる。また、2個のプーリの直径を変えることで容易に所望の滅速比を得ることができる。今回開発した旋回装置では、ベルト、プーリに高トルクに対応可能な歯付きのものを選定し、減速比を大きくするために、原動機側入力軸プーリと出力軸プーリとの間に2段重ねの中間プーリを配置している。これにより、歯車減速機構を使わずにフルベルト構造で大きなトルクが得られ、高停止精度が実現可能となった。装置内でのレイアウトに関してもプーリ軸間距離に応じてベルトの長さを選定可能であるので設計的自由度が高く、ベルトの調整に関してもプーリの取付位置を調整するだけなので、歯車の調整と比較して非常に簡単に調整を行うことができる。また、動作停止時の位置保持に電磁ブレーキを採用しているので、旋回動作の停止中は無通電による磁力ブレーキが働き、大トルク旋回可能で、パックラッシュが無い分、セルフロックよりも正確に停止位置を保持することが可能となる。以上の機構をパン、チルト両旋回部に使用することで、旋回装置の停止精度を±0,05°以内まで高めることが可能となった。また、減速機構は基本的にアルミプーリとゴムベルトの構成のため、全体を軽量化でき、動作中の騒音を著しく低減できる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。例えば上記した実施形態では、垂直旋回駆動部DVの減速機構RV、および水平旋回駆動部DHの減速機構RHをそれぞれ2段のフルベルト構造で実現したが、筐体内の実装スペース、要求される旋回精度等に応じて任意の段数に変更することも可能である。また、カメラ部10、旋回部20、台座部30の各筐体構造も上記した実施形態に限らず、種々の筐体構造に本発明の旋回駆動機構を適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…カメラ部、10A…カメラ部筐体、11…撮像カメラ本体(カメラモジュール)、12…デフロスタガラス、15…ワイパー、20…旋回部、20A…旋回部筐体、23…ケーブル収容室、30…台座部、30A…台座部筐体、41,61…ステッピングモータ(パルスモータ)、42,62…電磁ブレーキ、43,63…エンコーダ、44,64…中間軸、45…垂直旋回軸、45h…貫通孔、46a,46b、47a,47b、66a,66b、67a,67b…プーリ、46c,47c、66c,67c…歯付ベルト、52…水平旋回軸、52h…貫通孔、DH…水平旋回駆動部、DV…垂直旋回駆動部、RV,RH…減速機構、L…映像ケーブル、C1…映像ケーブルコネクタ。