【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、第1態様として、原料ガスから所望のガスを選択して分離するガス分
離膜と、該ガス分離膜の厚み方向の一方側に配置されて該ガス分離膜を支持する支持体とを備えたガス分離装置において、前記ガス分離膜と前記支持体との間に、前記ガス分離膜の構成材料と前記支持体の構成材料とを含む混合層を備えるとともに、前記混合層における前記ガス分離膜の構成材料と前記支持体の構成材料との混合比率が、該混合層の厚み方向において傾斜して
おらず、且つ、前記混合層は、前記支持体の表面において、分散して配置されているとともに、前記混合層は、前記支持体の表面の100μm2以上の大きさの凹部及び/又は凸部からなる表面欠陥を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1態様では、ガス分離膜と支持体との間に、ガス分離膜の構成材料(ガス分離膜材料)と支持体の構成材料(支持体材料)とを含む混合層、詳しくは、ガス分離膜材料と支持体材料との混合比率が混合層の厚み方向において傾斜していない混合層を備えている。
【0011】
この様な混合層がガス分離膜と支持体との間にある場合には、ガス分離膜にピンホールが生じにくいという効果がある。
つまり、混合層には、ガス分離膜と同じ成分(ガス分離材料)が含まれているので、混合層とガス分離膜とが接する箇所では、混合層中のガス分離材料とガス分離膜の成分とが強固に結合する。よって、支持体の表面に窪みや突起や微小クラック等の表面欠陥がある場合でも、その部分が混合層で覆われていることによって、支持体の表面欠陥の影響がガス分離膜に影響し難いので、ガス分離膜にピンホールが生じにくいという顕著な効果を奏する。
【0012】
また、混合層には、支持体と同じ成分(支持体材料)が含まれているので、混合層と支持体が強固に接合している。つまり、ガス分離膜は混合層を介して支持体に強固に一体化したものであるので、この点からもピンホールが生じ難いという利点がある。
【0013】
特に、上述した従来技術では、加熱処理によってピンホールを閉塞しているが、本発明の第1態様では、混合層を設けることにより、支持体の表面欠陥を補修して、ピンホールの発生する要因を事前に取り除くことができるので、ピンホールの発生自体を防止することができる。そのため、従来の加熱処理が不要であるので、加熱処理によって新たにピンホールが発生することがない。
【0014】
更に、ガス分離装置を連続使用した場合には、使用環境によっては、新たにピンホールが発生し易いが、本発明の第1態様では、混合層によって支持体の表面欠陥が除去されているので、この混合層で覆った箇所では、ピンホールが発生し難いという効果がある。
【0015】
特に、混合層の組成を「傾斜しない」とすることにより、混合層をより強固に支持体及びガス分離膜に接合することができ、ピンホールの発生をより確実に抑制することができる。
例えば、筒状の支持体に改質触媒機能を付与した場合(即ち、金属触媒をセラミックスに含有させて支持体を構成した場合)、金属触媒によって改質反応が発生する。改質反応によって生成した改質ガスの中、水素のほかに一酸化炭素や二酸化炭素、未反応の原料ガスなどが存在するため、水素の分圧が低くなっている。一方、有効に水素を取り出すには、導入する原料ガスの圧力を上げる必要がある。これにより、ガス分離膜と支持体との固着性がより高く要求される。
本発明のように、混合層の構成材料の配合を傾斜していないように構成することによって、支持体とガス分離膜とがより強固に密着することができ、膜剥離や膜破裂によるガスリークが発生しにくいという効果が顕著に現れる。
また、本発明では、前記混合層は、前記支持体の表面において、分散して配置されている。
混合層が支持体全面を覆っていると、ガス分離性能に影響を及ぼすので、できるだけ少ない方(例えば全表面積の50%以下)が望ましい。具体的には、ピンホールが発生する若しくは発生しやすい箇所のみを覆っていることが望ましい。
更に、本発明では、前記混合層は、前記支持体の表面の100μm2以上の大きさの凹部及び/又は凸部からなる表面欠陥を覆うように配置されている。
ピンホールが発生し易い箇所は、支持体表面に窪みや突起や微小クラック等の表面欠陥がある場合である。従って、本発明では、この様な表面欠陥に対応する100μm2以上の大きさの凹部や凸部を混合層で覆うことにより、効果的にピンホールの発生を防止できるとともに、ガス分離性能に与える影響を小さくすることができる。
なお、どの程度の大きさの凹部や凸部を覆うかについては、表面を撮影した画像を解析して、凹部や凸部と認められる画像について、実験により求めたピンホールが発生し易い凹部や凸部の大きさに対応して設定することができる。
また、あまり小さな表面欠陥まで覆う場合には、ピンホールの発生を十分に抑制できるものの、混合層の表面積が増加しその補修のための手間がかかる。逆に、大きな表面欠陥しか覆わない場合には、ピンホールの発生を十分に抑制できない可能性がある。よって、効果と手間(コスト)の関係を考えて、どの程度の表面欠陥まで覆うかを設定することができる。
本発明では、表面欠陥を覆う面積を100μm2以上とするので、上記効果と手間のバランスがよい。
(2)本発明は、第2態様として、前記混合層を厚み方向に破断した断面において、前記ガス分離膜側に近い所定の測定領域(a)におけるガス分離膜材料の混合比率(A)と、前記測定領域(a)よりも前記支持体側に近い所定の測定領域(c)におけるガス分離膜材料の混合比率(C)とを比較した場合、「A≦2C」の場合を「傾斜していない」と
することを特徴とする。
【0016】
この第2態様では、「傾斜していない」好適な場合を例示している。
(3)本発明は、第3態様として、原料ガスから所望のガスを選択して分離するガス分離膜と、該ガス分離膜の厚み方向の一方側に配置されて該ガス分離膜を支持する支持体とを備えたガス分離装置において、前記ガス分離膜と前記支持体との間に、前記ガス分離膜の構成材料と前記支持体の構成材料とを含む混合層を備えるとともに、前記混合層における前記ガス分離膜の構成材料と前記支持体の構成材料との混合比率が、該混合層の厚み方向においてばらつき
がなく、且つ、前記混合層は、前記支持体の表面において、分散して配置されているとともに、前記混合層は、前記支持体の表面の100μm2以上の大きさの凹部及び/又は凸部からなる表面欠陥を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第3態様では、ガス分離膜と支持体との間に、ガス分離膜の構成材料(ガス分離膜材料)と支持体の構成材料(支持体材料)とを含む混合層、詳しくは、ガス分離膜材料と支持体材料との混合比率が混合層の厚み方向においてばらつきのない混合層を備えている。
【0018】
この様な混合層がガス分離膜と支持体との間にある場合には、ガス分離膜にピンホールが生じにくいという効果がある。
つまり、混合層には、ガス分離膜と同じ成分(ガス分離材料)が含まれているので、混合層とガス分離膜とが接する箇所では、混合層中のガス分離材料とガス分離膜の成分とが強固に結合する。よって、支持体の表面に窪みや突起や微小クラック等の表面欠陥がある場合でも、その部分が混合層で覆われていることによって、支持体の表面欠陥の影響がガス分離膜に影響し難いので、ガス分離膜にピンホールが生じにくいという顕著な効果を奏する。
【0019】
また、混合層には、支持体と同じ成分(支持体材料)が含まれているので、混合層と支持体が強固に接合している。つまり、ガス分離膜は混合層を介して支持体に強固に一体化したものであるので、この点からもピンホールが生じ難いという利点がある。
【0020】
特に、上述した従来技術では、加熱処理によってピンホールを閉塞しているが、本発明の第3態様では、厚み方向においてばらつきのない混合層を設けることにより、支持体の表面欠陥を補修して、ピンホールの発生する要因を事前に取り除くことができるので、ピンホールの発生自体を防止することができる。そのため、従来の加熱処理が不要であるので、加熱処理によって新たにピンホールが発生することがない。
【0021】
更に、ガス分離装置を連続使用した場合には、使用環境によっては、新たにピンホールが発生し易いが、本発明の第1態様では、混合層によって支持体の表面欠陥が除去されているので、この混合層で覆った箇所では、ピンホールが発生し難いという効果がある。
特に、混合層の組成を「ばらつきのない」ものとすることにより、混合層をより強固に支持体及びガス分離膜に接合することができ、ピンホールの発生をより確実に抑制することができる。
例えば、筒状の支持体に改質触媒機能を付与した場合(即ち、金属触媒をセラミックスに含有させて支持体を構成した場合)、金属触媒によって改質反応が発生する。改質反応によって生成した改質ガスの中、水素のほかに一酸化炭素や二酸化炭素、未反応の原料ガスなどが存在するため、水素の分圧が低くなっている。一方、有効に水素を取り出すには、導入する原料ガスの圧力を上げる必要がある。これにより、ガス分離膜と支持体との固着性がより高く要求される。
本発明のように、混合層の構成材料の配合をばらつきのないように構成することによって、支持体とガス分離膜とがより強固に密着することができ、膜剥離や膜破裂によるガスリークが発生しにくいという効果が顕著に現れる。
また、本発明では、前記混合層は、前記支持体の表面において、分散して配置されている。
混合層が支持体全面を覆っていると、ガス分離性能に影響を及ぼすので、できるだけ少ない方(例えば全表面積の50%以下)が望ましい。具体的には、ピンホールが発生する若しくは発生しやすい箇所のみを覆っていることが望ましい。
更に、本発明では、前記混合層は、前記支持体の表面の100μm2以上の大きさの凹部及び/又は凸部からなる表面欠陥を覆うように配置されている。
ピンホールが発生し易い箇所は、支持体表面に窪みや突起や微小クラック等の表面欠陥がある場合である。従って、本発明では、この様な表面欠陥に対応する100μm2以上の大きさの凹部や凸部を混合層で覆うことにより、効果的にピンホールの発生を防止できるとともに、ガス分離性能に与える影響を小さくすることができる。
なお、どの程度の大きさの凹部や凸部を覆うかについては、表面を撮影した画像を解析して、凹部や凸部と認められる画像について、実験により求めたピンホールが発生し易い凹部や凸部の大きさに対応して設定することができる。
また、あまり小さな表面欠陥まで覆う場合には、ピンホールの発生を十分に抑制できるものの、混合層の表面積が増加しその補修のための手間がかかる。逆に、大きな表面欠陥しか覆わない場合には、ピンホールの発生を十分に抑制できない可能性がある。よって、効果と手間(コスト)の関係を考えて、どの程度の表面欠陥まで覆うかを設定することができる。
本発明では、表面欠陥を覆う面積を100μm2以上とするので、上記効果と手間のバランスがよい。
【0022】
(4)本発明では、第4態様として、前記混合層を厚み方向に破断した断面において、前記ガス分離膜側に近い所定の測定領域(a)におけるガス分離膜材料の混合比率(A)と、前記測定領域(a)よりも前記支持体側に近い所定の測定領域(c)におけるガス分離膜材料の混合比率(C)と、前記測定領域(a)と前記測定領域(c)との中間の所定の測定領域(b)におけるガス分離膜材料の混合比率(B)とを比較した場合、「A≦2B又は2C」、「B≦2C又は2A」、「C≦2A又は2B」の全てを満たしている場合を「ばらつきのない」とすることを特徴とする。
【0023】
この第4態様では、「ばらつきのない」好適な場合を例示してい
る。
【0029】
(
5)本発明は、第
5態様として、前記混合層は、前記ガス分離膜の構成材料及び前記支持体の構成材料のみからなることを特徴とする。
混合層は、ガス分離膜の構成材料及び支持体の構成材料のみで構成されると好適である。混合層は、ガス分離膜の構成材料及び支持体の構成材料のみで構成される場合には、構成材料間の親和性が高くなり、ガス分離膜及び支持体の両方をより強固に接続することができる。例えば、ガス分離膜の構成材料はPdとAgで構成され、支持体の構成材料はイットリア安定化ジルコニアで構成された場合には、混合層を、Pd、Agとイットリア安定化ジルコニアで構成することが望ましい。
なお、混合層は、ガス分離膜の構成材料及び支持体の構成材料以外に、他のセラミック材料を含んでいてもよい。この他のセラミック材料としては、例えば、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアが挙げられる。
【0030】
(
6)本発明は、第
6態様として、前記支持体は、改質触媒として機能する金属触媒とセラミックからなる多孔質基体と、前記多孔質基体の表面に形成され、前記多孔質基体の構成材料と前記ガス分離膜の構成材料が反応しないように分離するバリア層と、を有し、前記混合層は、前記バリア層の表面に形成されて、且つ、前記バリア層の構成材料と前記ガス分離膜の構成材料を含むことを特徴とする。
【0031】
本発明の第
6態様によれば、支持体とガス分離膜の間にバリア層を設けることにより、支持体の構成材料とガス分離膜の構成材料が反応しなくなり、ガス分離膜の機能低下を抑制することができる。
【0032】
(
7)本発明は、第
7態様として、前記金属触媒は、Ni、Fe、Co、Ti、Mn、V、Cr、Pd、Pt、Ru、Rh、の少なくとも一種の金属を含むことを特徴とする。
ここでは、好適な金属触媒を例示している。
(8)本発明は、第8態様として、前記表面欠陥は、前記支持体の表面検査によって検出されたものであり、前記混合層は、前記表面欠陥を覆うように形成されたものであることを特徴とする。
本第8態様では、表面検査によって検出された表面欠陥を覆うように混合層が形成されている。
(9)本発明は、第9態様として、前記第1〜第8態様のいずれかに記載のガス分離装置の製造方法であって、前記支持体に前記ガス分離膜を形成する前に、前記支持体の表面検査を行うことによって、前記支持体の表面の100μm2以上の大きさの凹部及び/又は凸部からなる表面欠陥を検出し、前記表面欠陥を覆うように前記混合層を形成することを特徴とする。
本第9態様のガス分離装置の製造方法では、検出された表面欠陥を覆うように混合層を形成し、その後、ガス分離膜を形成することにより、前記第1〜第8態様のいずれかに記載のガス分離装置を製造することができる。
【0033】
a)ここで、上述した発明の各構成について、詳しく説明する。
前記混合層におけるガス分離膜の構成材料と支持体の構成材料との割合は、ガス分離膜の構成材料が30〜70体積%、支持体の構成材料が30〜70体積%の範囲が好適である。つまり、ガス分離膜の構成材料が30体積%以上であると、ガス分離膜との接合性が向上し、支持体の構成材料が30体積%以上であると、支持体との接合性が向上する。
【0034】
なお、混合層に含まれるガス分離膜の構成材料及び支持体の構成材料は、混合層全体の30体積%以上であると、上述した効果が十分に得られるので好適である。
前記した様に、前記支持体としては、多孔質の支持基体(多孔質基体)と、その多孔質基体の表面を覆う多孔質のバリア層(保護層)が挙げられるが、バリア層を省略することも可能である。つまり、多孔質基体からなる支持体としてもよい。
【0035】
前記多孔質基体を構成する材料としては、多孔質セラミックが挙げられる。この多孔質セラミックとしては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアおよびこれらの混合物が挙げられる。また、前記セラミックに金属触媒を担持させたセラミック、金属触媒とセラミックとのサーメットなどが挙げられる。
水素分離膜を形成した多孔質基体は、前記多孔質基体の多孔質セラミックに金属触媒を担持させることで「メンブレンリフォーマー」として機能することができる。具体的には、セラミックと改質金属触媒(Ni)とのサーメットに水素分離膜を形成することによって、改質される原料ガス(炭化水素ガス)と水蒸気を導入した際に、改質金属触媒によって改質されたガスを、水素分離膜により選択的に透過分離する場合、原料ガスのガス圧力を高くしたり、透過側の圧力を負圧にしたりする必要がある。その際に、混合層が傾斜していない、もしくはばらつきのないように構成されている為、支持体及び水素分離膜と強固に接合され、水素分離膜の剥離及び破裂によるガスリークが発生しにくい。
【0036】
前記バリア層は、多孔質基体の金属成分とガス分離膜の成分とが互いに拡散することにより、ガス分離性能が劣化することを防止するためのものであり、このバリア層の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアが挙げられる。
【0037】
前記ガス分離膜が、原料ガスから水素を分離する水素分離膜である場合には、その水素分離膜の材料としては、Pd、Pd合金、V合金、Nb合金等が挙げられる。
前記ガス分離膜が、原料ガスから酸素を分離する酸素分離膜である場合には、その酸素分離膜の材料としては、希土類とアルカリ土類と遷移金属とのペロブスカイト酸化物、ランタンガレート系ペロブスカイト酸化物、ドープトセリアとジルコニアの固溶体等、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0038】
前記ガス分離膜が、セラミック分子篩膜である場合には、そのセラミック分子篩膜にて、目的とするガス(水素、酸素、二酸化炭素等)のみを透過させて(原料ガスから)分離することができる。なお、セラミック分子篩膜としては、アモルファスシリカ、ゼオライト、窒化珪素多孔体等が挙げられる。
【0039】
b)また、本発明では、各用語の意味を下記の様に定義している(以下同様)
なお、以下の説明では、a、b、cは、各測定領域を示し、A、B、Cは、各測定領域a、b、cにおける混合比率を示している。
【0040】
混合層:混合層を厚み方向に破断した断面を電子顕微鏡にて観察する(SEM写真を撮影する)際に、電子顕微鏡の視野の全範囲(
図7参照)において、混合層(断面)が観察視野全範囲の20%以上を占めるように調整し、かつ、ガス分離膜断面及び混合層断面が全体と、支持体の断面の一部とが視野に入るように調整して観察する(SEM写真を撮影する)。なお、SEM写真撮影の際は、画像上辺(若しくは下辺)とガス分離膜の外側表面(混合層と反対側の表面)が平行になるように調整して撮影する。また、ガス分離膜の外側表面に対して平行な線を引き、支持体材料の少なくとも1種類とガス分離膜材料とを含む領域を区画する二つの平行線の間の領域を混合層として定義し、平行線間の距離を混合層の厚みとする。
【0041】
なお、混合層においては、その厚み方向の両側の部分に、混合層に隣接する部材(支持体及びガス分離膜)の成分が多い境界部分が存在するが、この境界部分には、「支持体材料の少なくとも1種とガス分離膜材料と」を含むので、この境界部分も含めて混合層とする。なお、混合層の厚みは1μm以上であることが好ましい。
【0042】
混合比率:混合比率は上記の層(混合層)断面の観察方法にて、電子顕微鏡による断面SEM画像を撮影し計測を実施する。
図1に示す様に、支持体及び混合層及びガス分離膜を厚み方向に破断した断面について、混合層の厚みに対して厚み方向に1/3〜1/5の厚み(例えば1/4の厚み:例えば8μm)を有し、且つ、画像(視野)の左端(上端)から右端(下端)までの幅が視野幅の80%以上100%未満を有する長方形の測定領域(a,b、c)を、任意に選択する。なお、この3箇所の測定領域は、互いに重なることなく設定する。そして、この3箇所の測定領域に対して、2値化解析により、支持体材料とガス分離膜材料との面積をそれぞれ算出し、2値化された両面積の合計を100%として各面積の割合を求め、この割合から混合比率を求める。
【0043】
傾斜が無い(傾斜していない):前記
図1に例示する様に、混合層の断面について、上述の様に選択された測定領域のうち、ガス分離膜側に近い前記測定領域(a)におけるガス分離膜材料の混合比率(A)と、支持体側に近い前記測定領域(c)におけるガス分離膜材料の混合比率(C)を比較した場合、混合比率(A)が混合比率(C)の2倍を上回る場合、即ち「A>2C」の場合には、混合比率の差が明確となり、傾斜があるとする。一方、前記第2態様に示す様に、「A≦2C」の場合を、傾斜が無いとする。
【0044】
なお、ここでは、ガス分離膜材料の混合比率の傾斜について述べたが、YSZの混合率(傾斜)についても同様なことが言える。つまり、支持体に近い測定領域から順に支持体材料の混合比率をA、B、Cとすると、ガス分離膜材料と同様に傾斜の状態が分かる。なお、下記のばらつきについても同様である。
【0045】
ばらつきが無い(ばらつきのない):前記
図1に例示する様に、混合層の断面について、上述の様に選択された測定領域のうち、ガス分離膜側に近い前記測定領域(a)におけるガス分離膜材料の混合比率(A)と、(a)、(c)の中間の前記測定領域(b)におけるガス分離膜材料の混合比率(B)と、支持体側に近い前記測定領域(c)におけるガス分離膜材料の混合比率(C)を比較した場合、最も少ない混合比率に対して最も多い混合比率が2倍を上回る場合には、ばらつきが大きい。すなわち、前記第4態様に示す様に、「A≦2B又は2C」、「B≦2C又は2A」、「C≦2A又は2B」の全てを満たす場合を、ばらつきが無いとする。一方、「A>2B又は2C」、「B>2C又は2A」、「C>2A又は2B」のいずれかの場合には、ばらつきが大きいとする。