(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送経路を形成する上側直線軌道及び返送経路を形成する下側直線軌道を、これらの端部同士を円弧状反転軌道により繋いだ縦循環式軌道に沿って被搬送物ごとに分離されたスラット台を循環させるスラットコンベア装置であって、
前後のスラット台を近接させた状態で前側スラット台の後端スラット及び後側スラット台の前端スラットを連結する連結手段と、
前記返送経路の上流側部分で前記連結手段による連結を解除する連結解除手段と、
前記搬送経路で、前記連結手段により連結されて連なるスラット台列のスラットに摩擦ローラを圧接させて、前記スラット台列を所定の搬送速度で搬送する搬送用摩擦ローラ式駆動装置と、
前記返送経路で、前記連結解除手段により分離された前記スラット台列の前端スラット台のスラットに摩擦ローラを圧接させて、前記前端スラット台を前記搬送速度よりも速い返送速度で返送する返送用摩擦ローラ式駆動装置とを備えたことを特徴とするスラットコンベア装置。
前記連結手段が、前記前側スラット台の後端スラットの後端チェーンローラと同心になるように前記後端スラットに設けられた係合部材と、前記後側スラット台の前端スラットの裏側の水平支軸まわりに回動可能に支持された、前記前側スラット台及び後側スラット台が近接した状態で前記係合部材に係合する係合ドッグとからなり、
この係合ドッグは、前記前端スラットに対向する面に係合凹部が形成されるとともに、前端面に前方へ行くにしたがって前記前端スラットから離れる方向へ傾斜する傾斜面が形成され、前記前側スラット台及び後側スラット台が離間して連結されていない状態で、付勢されて前記係合部材の後方に位置しており、
前記連結解除手段が、前記係合ドッグに設けられた受部材と、前記返送経路の上流側部分に設置された、前記受部材を操作して前記係合ドッグを前記水平支軸まわりに前記付勢による力に抗して回動させるカム部材とからなる請求項1記載のスラットコンベア装置。
前記連結手段が、前記後側スラット台の前端スラットの前端チェーンローラと同心になるように前記前端スラットに設けられた係合部材と、前記前側スラット台の後端スラットの裏側の水平支軸まわりに回動可能に支持された、前記前側スラット台及び後側スラット台が近接した状態で前記係合部材に係合する係合ドッグとからなり、
この係合ドッグは、前記後端スラットに対向する面に係合凹部が形成されるとともに、後端面に後方へ行くにしたがって前記後端スラットから離れる方向へ傾斜する傾斜面が形成され、前記前側スラット台及び後側スラット台が離間して連結されていない状態で、付勢されて前記係合部材の前方に位置しており、
前記連結解除手段が、前記係合ドッグに設けられた受部材と、前記返送経路の上流側部分に設置された、前記受部材を操作して前記係合ドッグを前記水平支軸まわりに前記付勢による力に抗して回動させるカム部材とからなる請求項1記載のスラットコンベア装置。
前記円弧状反転軌道を前記連結手段が通過する際に前記係合ドッグが前記係合部材から外れないように、前記係合ドッグが前記水平支軸まわりに前記前端スラットから離れる方向へ回動する角度を制限するストッパを設けてなる請求項2又は3記載のスラットコンベア装置。
【背景技術】
【0002】
搬送経路を形成する上側直線軌道及び返送経路を形成する下側直線軌道を、これらの端部同士を円弧状反転軌道により繋いだ縦循環式軌道に沿って多数のスラットを移動させながら上側直線軌道で被搬送物を搬送するスラットコンベア装置は、空になった台車の返送経路を別途設ける必要がないため、工場内の省スペース化を図ることができるという特徴がある。
このようなスラットコンベア装置として、被搬送物ごとに分離され、前端下面にプッシャプレートが突設されたスラット台を縦循環式軌道に沿って移動可能に支持し、スラット台の軌道内方に平行する無端状コンベアチェーンを搬送方向前後両端の駆動スプロケット及び従動スプロケットに掛け渡し、無端状コンベアチェーンに、スラット台の長さよりも大きいピッチでスラット台のプッシャプレートに係脱するプッシャを設けることにより、スラット台をストレージ可能としたものがある(特許文献1参照。)。
また、搬送方向に連続するスラットを用いずに、左右のチェーンの前後両端側にのみスラットを掛け渡してその表面側に被搬送物を支持するスキッドを設け、前方のスラットの裏面側に係合ピンを設けてなる台車を用い、係合ピンに係合するドッグが所定間隔ごとに取り付けられた無端状コンベアチェーンである、上側の台車牽引チェーンにより上側直線軌道の搬送開始位置から搬送終了位置の間で台車を搬送し、下側の台車返送チェーンにより下側直線軌道でストレージ位置まで台車を返送し、送出機構により床下側にストレージされている台車を所定のタイミングで床上側の搬送開始位置まで送り出すように構成することにより、台車をストレージ可能にするとともに生産タクトの増減に応じて被搬送物を任意の搬送ピッチで搬送できるようにしたものがある(特許文献2参照。)。
さらに、縦循環式軌道を備える構成ではないが、被搬送物ごとに分離されたスラット台(パレット)を、各一端部を開放しかつ互いに平行にのびた上側ガイド経路及び下側ガイド経路並びにこれらの両経路の他端部同士を繋ぐ反転ガイド経路を有するガイドレールに沿って移動可能に支持し、スラット台を駆動する摩擦ローラ式駆動装置を備えることにより、台車走行レールに沿って移動する自走台車との間でスラット台を移し替えることができるように構成した搬送装置もある(特許文献3参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようなスラットコンベア装置において、特許文献1及び2の構成では、無端状コンベアチェーンのプッシャ(ドッグ)によりスラット台(台車)を牽引することから、上側直線軌道で前後のスラット台間に隙間が存在するため、上側直線軌道に作業工程がある場合には作業性が悪くなる。
また、特許文献1及び2の構成では、無端状コンベアチェーンの駆動にスプロケットを用いているので、上側直線軌道と下側直線軌道の間の寸法が大きくなるため、返送経路を形成する下側直線軌道を床下に収容するために高価なピット工事(地面の堀り込み)が必要になる。
さらに、特許文献2の構成では、作業工程の出入り口で無端状コンベアチェーン間の乗継ぎがあるため、作業工程が短くなる。
ここで、特許文献3の構成は、スラット台を摩擦ローラ式の駆動装置により駆動するため、上側直線軌道と下側直線軌道の間の寸法を小さくすることができるものであるが、上下の直線軌道を繋いだ縦循環式軌道に沿ってスラット台を循環させるものではなく、上側直線軌道で前後のスラット台間の隙間を略なくした状態で搬送するものでもない。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、搬送経路を形成する上側直線軌道及び返送経路を形成する下側直線軌道を、これらの端部同士を円弧状反転軌道により繋いだ縦循環式軌道に沿って多数のスラットを移動させながら上側直線軌道で被搬送物を搬送するスラットコンベア装置において、搬送経路で前後のスラット台間の隙間を略なくした状態で安定かつ確実に搬送することができ、搬送経路における作業性が向上するとともに作業工程が短くなることがなく、高価なピット工事が不要になるスラットコンベア装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスラットコンベア装置は、前記課題解決のために、搬送経路を形成する上側直線軌道及び返送経路を形成する下側直線軌道を、これらの端部同士を円弧状反転軌道により繋いだ縦循環式軌道に沿って被搬送物ごとに分離されたスラット台を循環させるスラットコンベア装置であって、前後のスラット台を近接させた状態で前側スラット台の後端スラット及び後側スラット台の前端スラットを連結する連結手段と、前記返送経路の上流側部分で前記連結手段による連結を解除する連結解除手段と、前記搬送経路で、前記連結手段により連結されて連なるスラット台列のスラットに摩擦ローラを圧接させて、前記スラット台列を所定の搬送速度で搬送する搬送用摩擦ローラ式駆動装置と、前記返送経路で、前記連結解除手段により分離された前記スラット台列の前端スラット台のスラットに摩擦ローラを圧接させて、前記前端スラット台を前記搬送速度よりも速い返送速度で返送する返送用摩擦ローラ式駆動装置とを備えたことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、連結手段により前後のスラット台を近接させた状態で連結してスラット台列とし、このスラット台列が搬送経路を移動する構成であることから、前後のスラット台間の隙間を略なくすことができるため、搬送経路における作業性が向上するとともに作業工程が短くならない。
その上、搬送経路では搬送用摩擦ローラ式駆動装置により駆動され、返送経路では返送用摩擦ローラ式駆動装置より駆動され、特許文献1及び2のような駆動及び従動スプロケットが不要なことから、上側直線軌道と下側直線軌道の間の寸法を小さくすることができるため、高価なピット工事(地面の堀り込み)が不要になる。
その上さらに、連結解除手段により返送経路の上流側部分で連結手段による連結が解除され、スラット台列から分離された前端スラット台が返送用摩擦ローラ式駆動装置により早送りで返送されるため、スラット台の数を少なくすることができる。
その上、返送経路の入口で連結手段による連結を解除して、返送経路の出口で連結することにより、搬送経路における作業工程の長さを最大限に確保することができる。
【0008】
ここで、前記連結手段が、前記前側スラット台の後端スラットの後端チェーンローラと同心になるように前記後端スラットに設けられた係合部材と、前記後側スラット台の前端スラットの裏側の水平支軸まわりに回動可能に支持された、前記前側スラット台及び後側スラット台が近接した状態で前記係合部材に係合する係合ドッグとからなり、この係合ドッグは、前記前端スラットに対向する面に係合凹部が形成されるとともに、前端面に前方へ行くにしたがって前記前端スラットから離れる方向へ傾斜する傾斜面が形成され、前記前側スラット台及び後側スラット台が離間して連結されていない状態で、付勢されて前記係合部材の後方に位置しており、前記連結解除手段が、前記係合ドッグに設けられた受部材と、前記返送経路の上流側部分に設置された、前記受部材を操作して前記係合ドッグを前記水平支軸まわりに前記付勢
による力に抗して回動させるカム部材とからなると好ましい。
【0009】
また、前記連結手段が、前記後側スラット台の前端スラットの前端チェーンローラと同心になるように前記前端スラットに設けられた係合部材と、前記前側スラット台の後端スラットの裏側の水平支軸まわりに回動可能に支持された、前記前側スラット台及び後側スラット台が近接した状態で前記係合部材に係合する係合ドッグとからなり、この係合ドッグは、前記後端スラットに対向する面に係合凹部が形成されるとともに、後端面に後方へ行くにしたがって前記後端スラットから離れる方向へ傾斜する傾斜面が形成され、前記前側スラット台及び後側スラット台が離間して連結されていない状態で、付勢されて前記係合部材の前方に位置しており、前記連結解除手段が、前記係合ドッグに設けられた受部材と、前記返送経路の上流側部分に設置された、前記受部材を操作して前記係合ドッグを前記水平支軸まわりに前記付勢
による力に抗して回動させるカム部材とからなると好ましい。
【0010】
これらのような構成によれば、返送経路で早送りされたスラット台がスラット台列の後端スラット台に追い付いた状態では、後端スラット台又は早送りされたスラット台の係合部材が早送りされたスラット台又は後端スラット台の係合ドッグの傾斜面に当接して係合ドッグを裏面側へ回動させた後に係合部材が係合ドッグの係合凹部に自動的に係合するため、返送経路で早送りされたスラット台をスラット台列に連結する位置に、前側スラット台の後端スラット及び後側スラット台の前端スラットを連結するように操作するスラット台と別体の操作手段を設置する必要がない。
その上、係合部材をチェーンローラ(後端チェーンローラ又は前端チェーンローラ)と同心にしていることから、反転軌道部において係合部材がガイドレール(円弧状反転軌道)と同一の一定曲率半径の軌道に沿って移動することになり、係合部材に連結された係合ドッグの回動角度が一定かつ最小となるため、反転軌道部での安定した連結が可能になる。
その上さらに、連結解除手段が、係合ドッグに設けられた受部材及び返送経路の上流側部分に設置されたカム部材であり、カム部材により受部材が操作されて係合ドッグが回動して係合部材との係合が解除され、スラット台列の前端スラット台が分離するため、スラット台列の前端スラット台の分離を安定かつ確実に行うことができる。
【0011】
さらに、前記円弧状反転軌道を前記連結手段が通過する際に前記係合ドッグが前記係合部材から外れないように、前記係合ドッグが前記水平支軸まわりに前記前端スラットから離れる方向へ回動する角度を制限するストッパを設けてなると好ましい。
このような構成によれば、スラット台列の連結手段が円弧状反転軌道を通過する際に係合ドッグに作用する引張力の大きさや方向の変動が大きい場合であっても、ストッパにより係合ドッグの回動角度が制限されて係合ドッグが係合部材から外れない。
【0012】
さらにまた、前記搬送用摩擦ローラ式駆動装置を搬送方向に離間して複数設けてなると好ましい。
このような構成によれば、連結手段により連結されて連なるスラット台列が搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置により駆動されることから、各搬送用摩擦ローラ式駆動装置の容量(サイズ)を小さくすることができるため、上側直線軌道と下側直線軌道の間の寸法をさらに小さくすることができる。
その上、搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列を駆動することから、搬送経路の下流側端部に設置した搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列を牽引する構成又は搬送経路の上流側端部に設置した搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列を押送する構成と比べて、摩擦ローラが押圧される各スラット等の構造部品の強度を低くすることができるため、製造コストを低減することができる。
その上さらに、搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列を押送する構成のように、スラット台列がスラットのチェーンローラのガイドレール内の隙間分の屈曲を起こすことがなく、スラット台列を安定かつ確実に駆動することができる。
その上、ラックピニオンではなく、搬送方向に離間した複数の摩擦ローラを圧接して駆動していることから、搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置を完全に等速度に制御しなくても、速度差が摩擦ローラの僅かなすべりにより吸収されるため、速度制御が簡単になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係るスラットコンベア装置によれば、連結手段により前後のスラット台を近接させた状態で連結してなるスラット台列が搬送経路を移動する構成であることから、前後のスラット台間の隙間を略なくすことができるため、搬送経路における作業性が向上するとともに作業工程が短くならず、摩擦ローラ式駆動装置により駆動されるのでスプロケットが不要なことから、上側直線軌道と下側直線軌道の間の寸法を小さくすることができるため、高価なピット工事(地面の堀り込み)が不要になり、連結解除手段により返送経路の上流側部分で連結手段による連結が解除され、分離されたスラット台列の前端スラット台が返送用摩擦ローラ式駆動装置により早送りで返送されるため、スラット台の数を少なくすることができ、返送経路の入口で連結手段による連結を解除して、返送経路の出口で連結することにより、搬送経路における作業工程の長さを最大限に確保することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書においては、スラット台1,1,…を搬送及び返送する縦循環経路における上流側から下流側へ向かった状態で前後左右をいうものとし、被搬送物Wの搬送方向に向かって左方から見た図を正面図とする。
本発明の実施の形態に係るスラットコンベア装置は、概略正面図である
図1、
図2に示すように被搬送物Wを搬送する搬送経路Tを形成する上側直線軌道S1及び返送経路Rを形成する下側直線軌道S2を、これらの端部同士を円弧状反転軌道R1,R2により繋いだ縦循環式軌道に沿って被搬送物Wごとに分離されたスラット台1,1,…を循環させるものであり、前方から見た縦断面図である
図3に示すように床面FL上に設置され、その側方(例えば左方)には作業架台Bが設置される。
図1〜
図3に示すような被搬送物Wがタイヤ付き車体である場合は、作業工程の出入り口に特殊な乗継装置を設置する必要がなく、タイヤの転動により乗継することができる。
【0016】
搬送経路Tにおいては、連結手段3,3,…により前後のスラット台1,1を近接させた状態で順次連結してなる、多数のスラット台1,1,…により構成されるスラット台列Aが、搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…により駆動されて所定の搬送速度で搬送される。
この搬送状態において、連結手段3,3,…による連結の解除は、
図1に示すように、返送経路Rの上流側部分(例えば入口)において、連結解除手段4により行われる。
この状態から、スラット台列Aの前端スラット台1Fのみを返送用摩擦ローラ式駆動装置6,6,…により駆動して前記搬送速度よりも速い返送速度で早送り返送し、返送経路Rの下流側部分(例えば出口)のスラット台列Aの後端に当接する位置まで搬送し、連結手段3によりスラット台列Aの後端に連結する。
この状態で連結されたスラット台列Aを搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…により駆動して所定の搬送速度で搬送する。
【0017】
スラット台1は、正面図である
図4及び平面図である
図5に示すように、所定長さとした左右両側部のコンベアチェーン7,7に前後方向に近接した状態の多数のスラット2,2,…を掛け渡しており、コンベアチェーン7,7のチェーンローラ8,8,…が
図3に示す上下の直線軌道S1及びS2並びに
図1、
図2に示す円弧状反転軌道R1及びR2によりガイドされるため、これらの軌道に沿って移動することができるものであり、
図1、
図2に示す搬送経路Tにおいて、スラット2,2,…の表面上に被搬送物Wを載置して位置決め部材18,18,…により位置決めした状態で被搬送物Wを搬送することができる。
また、スラット台1の前端スラット2Fには、連結手段3を構成する係合ドッグ12及び連結解除手段4を構成する受部材であるカムローラ16が取り付けられ、スラット台1の後端スラット2Rには、連結手段3を構成する係合部材である係合ピン10が取り付けられる。
【0018】
次に、連結手段3の一例について、その詳細構造について説明する。
係合ドッグ12まわりの構成を示す斜視図である
図6及び分解斜視図である
図7のように、基体11は横部材11Aに左右の縦部材11B,11Bを連結して構成され、縦部材11B,11B間に前後方向に長い係合ドッグ12を挿入した状態で、水平支軸であるピン13を、縦部材11Bの左右方向の通孔11b、係合ドッグ12後端部の左右方向の通孔12a及び縦部材11Bの左右方向の通孔11bに挿通することにより、係合ドッグ12はピン13まわりに回動可能に支持される。
また、横部材11A後面のばね支持ボルト14Aの頭部及び係合ドッグ12の後端部上方のばね支持ボルト14Bの頭部が圧縮コイルばね14のコイル両端部に挿入されるため、係合ドッグ12はその前端部上面(前端スラット2Fに対向する面)に形成された係合凹部12Aが前端スラット2Fに近づく方向へ圧縮コイルばね14により弾性付勢され、係合ドッグ12の前後方向中間部上面に突設された当止部材12Cが横部材11Aの下面により当て止めされた状態となる。
なお、係合ドッグ12を圧縮コイルばね14等のばねにより弾性付勢する構成ではなく、錘等により付勢するようにしてもよい。
【0019】
このように一体化された基体11及び係合ドッグ12は、前端スラット2Fの表面側から通孔2a,2aを通して取付ねじ19,19を横部材11Aの螺孔11a,11aに螺合することにより、スラット台1の前端スラット2Fの裏面の所定位置に基体11の上面が当接した状態で固定される。
また、前後のスラット台1F,1Rが連結手段3により連結された状態を示す縦断正面図である
図8に示すように、係合部材である係合ピン10は、前側スラット台1Fの後端スラット2Rの裏面に取付ねじ20,20,…により取り付けられた基体9により支持されており、チェーンローラ8,8,…の後端チェーンローラ8Rと同心とされる。
このように係合部材である係合ピン10を後端チェーンローラ8Rと同心にすることで、反転軌道部において係合ピン10がガイドレール(軌道R1,R2)と同一の一定曲率半径の軌道に沿って移動することになり、係合ピン10に連結された係合ドッグ12の回動角度が一定かつ最小となるため、反転軌道部での安定した連結が可能になる。
【0020】
そして、係合ドッグ12は、前側スラット台1F及び後側スラット台1Rが離間して連結されていない状態では、係合ピン10の後方から前端スラット2Fから離れる方向へ、係合ドッグ12の後面に突出されたストッパ15が前端スラット2Fの裏面に当接するまで回動することができ、圧縮コイルばね14により弾性付勢されるため、係合ピン10の後方に位置している。
この係合ドッグ12の前端面には前方へ行くにしたがって前端スラット2Fから離れる方向へ傾斜する傾斜面12Bが形成されているため、前側スラット台1Fに後側スラット台1Rが接近した際に、係合ピン10が係合ドッグ12の傾斜面12Bに当接して係合ドッグ12を圧縮コイルばね14の弾性付勢力に抗して裏面側へ回動させた後に係合ピン10が係合ドッグ12の係合凹部12Aに自動的に係合して
図8に示す状態になる。
【0021】
したがって、
図1及び
図2に示す返送経路Rで返送用摩擦ローラ式駆動装置6,6,…により早送りされたスラット台1Fがスラット台列A後端のスラット台1に追い付いた
図2に示す状態では、連結手段3によりスラット台列Aの後端スラット台1に自動的に連結されるため、返送経路Rで早送りされたスラット台1Fをスラット台列Aに連結する位置に、スラット台1,1,…と別体の操作手段を設置する必要がない。
【0022】
次に、搬送用摩擦ローラ式駆動装置5及び返送用摩擦ローラ式駆動装置6の一例について、その詳細構造について説明する。
搬送用摩擦ローラ式駆動装置5は、正面図である
図9(a)に示すように、モータ支持部材5Cの一端部がピン5Hを介してブラケット5Dにより支持され、モータ支持部材5Cの他端部がピン5I、ばね支持ボルト5G及び圧縮コイルばね5Fを介してブラケット5Eにより支持され、モータ支持部材5Cの中央部に固定されたモータ5Bの出力軸に摩擦ローラ5Aが固定されており、摩擦ローラ5Aは圧縮コイルばね5Fの弾性付勢力により搬送経路T側のスラット2,2,…に圧接される。
したがって、モータ5Bを図中矢印のように回転させることにより、搬送経路T側のスラット2,2,…を搬送方向(図中矢印参照。)へ駆動することができる。
また、返送用摩擦ローラ式駆動装置6は、正面図である
図9(b)に示すように、モータ支持部材6Cの一端部がピン6Hを介してブラケット6Eにより支持され、モータ支持部材6Cの他端部が、ばね支持ボルト6G及び圧縮コイルばね6Fを介してブラケット6Dにより支持され、モータ支持部材6Cの中央部に固定されたモータ6Bの出力軸に摩擦ローラ6Aが固定されており、摩擦ローラ6Aは圧縮コイルばね6Fの弾性付勢力により返送経路R側のスラット2,2,…に圧接される。
したがって、モータ6Bを図中矢印のように回転させることにより、返送経路R側のスラット2,2,…を返送方向(図中矢印参照。)へ駆動することができる。
【0023】
次に、連結解除手段4の一例について、その詳細構造について説明する。
連結解除手段4の構成を示す概略縦断正面図である
図10のように、連結解除手段4は、係合ドッグ12に設けられた受部材であるカムローラ16と、返送経路Rの上流側部分(例えば入口)に設置された、カムローラ16を操作して係合ドッグ12を水平支軸であるピン13まわりに圧縮コイルばね14の弾性付勢力に抗して回動させるカム部材であるカムレール17とからなる。
また、カムレール17は、下流側へ行くにしたがって返送経路Rのスラット2,2,…から離れる方向へ傾斜する傾斜板17A、及び、傾斜板17Aから下流側に離間した、下流側へ行くにしたがって返送経路Rのスラット2,2,…に近づく方向へ傾斜する傾斜板17B、並びに、傾斜板17A及び17Bを繋ぐ水平板17Cからなる。
したがって、カムレール17の傾斜板17Aによりカムローラ16が操作されてスラット2,2,…から離れる方向へ変位した
図10の状態では、カムローラ16とともに係合ドッグ12がスラット2,2,…から離れる方向へ回動することから、係合凹部12Aと係合ピン10との係合が解除されてスラット台列Aの前端スラット台1F(
図1も参照。)が分離するため、スラット台列Aの前端スラット台1Fの分離を安定かつ確実に行うことができる。
【0024】
次に、連結手段3が円弧状反転軌道R1を通過する際の状態について説明する。
この状態を示す概略断正面図である
図11のように、連結手段3が上側直線軌道S1に位置する
図11(a)の状態から連結手段3が円弧状反転軌道R1に進入した
図11(b)の状態になると、円弧状反転軌道R1に沿って移動するコンベアチェーン7のチェーンローラ8,8,…にスラット2,2,…が掛け渡されているため、後端スラット2R及び前端スラット2Fもこれらの表面の角度が変わるように相対的に屈曲する。
そして、連結手段3がさらに円弧状反転軌道R1を進んだ
図11(c)の状態では、前記屈曲角度がさらに大きくなっており、連結手段3が下側直線軌道S2に進入した
図11(d)の状態では、前記屈曲角度は小さくなる。
したがって、連結手段3が円弧状反転軌道R1又はR2を移動している際には、係合ドッグ12に作用する引張力の大きさや方向の変動により、連結手段3が外れる場合がある。
上述のとおり、係合ドッグ12の後面に突出するストッパ15は、係合ドッグ12の回動角度範囲を制限することができるものであり、前記回動角度範囲は、円弧状反転軌道R1又はR2の曲率半径、チェーンローラ8,8,…の間隔、係合ドッグ12及び係合ピン10の位置関係等の諸元から、スラット台列Aの連結手段2が円弧状反転軌道R1,R2を通過する際に係合ドッグ12に作用する引張力の大きさや方向の変動が大きい場合であっても、係合ドッグ12が係合ピン10から外れないように決定される。
【0025】
以上のようなスラットコンベア装置の構成によれば、連結手段3,3,…により多数のスラット台1,1,…を近接させた状態で連結してスラット台列Aとし、このスラット台列Aが搬送経路Tを移動する構成であることから、前後のスラット台1,1間の隙間を略なくすことができるため、搬送経路Tにおける作業性が向上するとともに作業工程が短くならない。
また、搬送経路Tでは搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…により駆動され、返送経路Rでは返送用摩擦ローラ式駆動装置6,6,…より駆動され、特許文献1及び2のような駆動及び従動スプロケットが不要なことから、上側直線軌道S1と下側直線軌道S2の間の寸法を小さくすることができるため、高価なピット工事(地面の堀り込み)が不要になる。
さらに、連結解除手段4により返送経路Rの上流側部分で連結手段3による連結が解除され、スラット台列Aから分離された前端スラット台1Fが返送用摩擦ローラ式駆動装置6,6,…により早送りで返送されるため、スラット台1,1,…の数を少なくすることができる。
さらにまた、返送経路Rの入口で連結手段3による連結を解除して、返送経路Rの出口で連結することにより、搬送経路Tにおける作業工程の長さを最大限に確保することができる。
【0026】
また、
図1に示すように、搬送用摩擦ローラ式駆動装置5は、搬送方向に離間して複数設けられており、このような搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…により、連結手段3,3,…により連結されて連なるスラット台列Aが駆動されることから、各搬送用摩擦ローラ式駆動装置5の容量(サイズ)を小さくすることができるため、上側直線軌道S1と下側直線軌道S2の間の寸法をさらに小さくすることができる。
さらに、搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…によりスラット台列Aを駆動することから、搬送経路Tの下流側端部に設置した搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列Aを牽引する構成又は搬送経路の上流側端部に設置した搬送用摩擦ローラ式駆動装置によりスラット台列Aを押送する構成と比べて、摩擦ローラ5A,5A,…に押圧される各スラット2,2,…等の構造部品の強度を低くすることができるため、製造コストを低減することができる。
さらにまた、搬送用摩擦ローラ式駆動装置5によりスラット台列Aを押送する構成のように、スラット台列Aがスラット2,2,…のチェーンローラ8,8,…のガイドレール(軌道S1)内の隙間分の屈曲を起こすことがなく、スラット台列Aを安定かつ確実に駆動することができる。
また、ラックピニオンではなく、搬送方向に離間した複数の摩擦ローラ5A,5A,…を圧接して駆動していることから、搬送方向に離間した複数の搬送用摩擦ローラ式駆動装置5,5,…を完全に等速度に制御しなくても、速度差が摩擦ローラ5A,5A,…の僅かなすべりにより吸収されるため、速度制御が簡単になる。
【0027】
以上の説明においては、連結手段3が、前側スラット台1Fの後端スラット2Rの後端チェーンローラ8Rと同心になるように後端スラット2Rに設けられた係合部材である係合ピン10と、後側スラット台1Rの前端スラット2Fの裏側の水平支軸であるピン13まわりに回動可能に支持された、前側スラット台1F及び後側スラット台1Rが近接した状態で係合ピン10に係合する係合ドッグ12とからなり、この係合ドッグ12は、前端スラット2Fに対向する面に係合凹部12Aが形成されるとともに、前端面に前方へ行くにしたがって前端スラット2Fから離れる方向へ傾斜する傾斜面12Bが形成され、前側スラット台1F及び後側スラット台1Rが離間して連結されていない状態で、付勢されて係合ピン10の後方に位置する構成を示したが、前側スラット台1Fの後端スラット2Rにより係合ドッグを支持し、後側スラット台1Rの前端スラット2Fに係合部材(係合ピン10)を設ける構成としてもよい。
すなわち、このように構成する場合は、連結手段3が、後側スラット台1Rの前端スラット2Fの前端チェーンローラと同心になるように前端スラット2Fに設けられた係合部材である係合ピンと、前側スラット台1Fの後端スラット2Rの裏側の水平支軸であるピンまわりに回動可能に支持された、前側スラット台1F及び後側スラット台1Rが近接した状態で前記係合ピンに係合する係合ドッグとからなり、この係合ドッグは、後端スラット2Rに対向する面に係合凹部が形成されるとともに、後端面に後方へ行くにしたがって後端スラット2Rから離れる方向へ傾斜する傾斜面が形成され、前側スラット台1F及び後側スラット台1Rが離間して連結されていない状態で、付勢されて前記係合ピンの前方に位置する構成となる。