特許第5736231号(P5736231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736231
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体及び研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20150528BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20150528BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20150528BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
   C08G18/40
   B24B37/00 P
   H01L21/304 622F
   C08G101:00
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-99934(P2011-99934)
(22)【出願日】2011年4月27日
(62)【分割の表示】特願2010-509178(P2010-509178)の分割
【原出願日】2009年4月21日
(65)【公開番号】特開2011-153316(P2011-153316A)
(43)【公開日】2011年8月11日
【審査請求日】2012年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2008-116025(P2008-116025)
(32)【優先日】2008年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222417
【氏名又は名称】トーヨーポリマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・ハース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100124947
【弁理士】
【氏名又は名称】向江 正幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140969
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 真行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 充朗
(72)【発明者】
【氏名】竹本 和生
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 伸之
(72)【発明者】
【氏名】羽場 真一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光一
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝夫
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−228266(JP,A)
【文献】 特開2010−280743(JP,A)
【文献】 特許第4897082(JP,B2)
【文献】 特開平03−121116(JP,A)
【文献】 特開平07−062053(JP,A)
【文献】 特開昭60−195118(JP,A)
【文献】 特開2000−336340(JP,A)
【文献】 特開2002−248003(JP,A)
【文献】 特開2007−326984(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/029538(WO,A1)
【文献】 特開2006−334745(JP,A)
【文献】 特開2006−282719(JP,A)
【文献】 特開平05−295074(JP,A)
【文献】 特開昭63−061014(JP,A)
【文献】 特表2000−509423(JP,A)
【文献】 特開平05−059146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/40
C08J 9/00
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオールと(C)分子量が400以下の多価アルコール系の鎖延長剤と(D)水とを含有する配合組成物を反応させることにより得られるポリウレタン発泡体であって、
前記配合組成物中に、前記(A)成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が主成分として配合されてなり、該MDIの配合量が、前記(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたときに、45〜70重量部であり、(B)ポリオールの配合量が、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、10〜50重量部であり、
前記(B)成分として、数平均分子量が1500以上で、平均官能基数が2以上の、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールのうち少なくとも1種が主成分として配合されてなることを特徴とするポリウレタン発泡体。
【請求項2】
(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオールと(C)分子量が400以下の多価アルコール系の鎖延長剤と(D)水とを含有する配合組成物を反応させることにより得られるポリウレタン発泡体であって、
前記配合組成物中に、前記(A)成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が主成分として配合されてなり、該MDIの配合量が、前記(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたときに、45〜70重量部であり、(B)ポリオールの配合量が、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、10〜50重量部であり、
前記(B)成分として、数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコールが主成分として配合されてなることを特徴とするポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記(C)成分として、ジエチレングリコール、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールのうち少なくとも1種が含有されている、請求項1または2記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記配合組成物の反応を密閉金型内で行うにあたり、該密閉金型100容量部あたり前記配合組成物を10〜80重量部注入することを特徴とする、請求項1〜のいずれか記載のポリウレタン発泡体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか記載のポリウレタン発泡体からなる研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン発泡体及びそれを用いた研磨パッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハ等の半導体基板や、レンズ等の光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料は、製品に対する要求精度が高いため、その製造過程において表面を研磨・平滑化することが必須である。かかる研磨用の装置は一般的に、被研磨物を保持する研磨ヘッド、被研磨物の研磨処理を行うための研磨パッド、前記研磨パッドを保持する研磨定盤から構成されている。そして、研磨剤と薬液からなる研磨スラリーを用いて、被研磨物と研磨パッドを相対運動させることにより、被研磨物表面の突起,凹凸部分を除去し、被研磨物を平滑にするものである。その際、使用する研磨パッドには、製品に欠陥を出さないための特性として、高硬度と高弾性を有することが求められる。
【0003】
従来から、上記の要求特性を満足させるため、ポリイソシアネートとしてトリレンジイソシアネート(TDI)と、ポリオールとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とを反応させて得られたプレポリマーに、硬化剤として3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)及び発泡粒子,空気,水等を配合してウレタン組成物とし、このウレタン組成物を発泡化させてプレポリマーを鎖延長させることにより製造されるポリウレタン発泡体、及び該発泡体を用いた研磨パッドが開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−178374号公報
【特許文献2】特許第3685064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、研磨パッドには、品質特性として高硬度と高弾性が通常要求されるが、最近では、低比重(例えば、0.6以下)にもかかわらず、従来と同程度の硬度が必要とされるなど要求される品質特性がより高度化している。しかし、このような品質特性は従来の研磨パッドでは実現できなかった。また、研磨パッドの品質特性としては、上記の他、高い耐摩耗性も要求される。
【0006】
したがって、本発明は、低比重にもかかわらず、研磨パッドとして好適な硬度と弾性を有するポリウレタン発泡体、及びそれを用いてなる研磨パッドを提供することを主たる課題とする。さらに、本発明は、上記の課題に加えて、従来のMOCA系ポリウレタン発泡体と同等の耐摩耗性を有するポリウレタン発泡体、及びそれを用いてなる研磨パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用い、ポリオールとして特定のポリプロピレングリコールを用い、さらに鎖延長剤及び水を用いる配合組成物において、前記MDIの含有量を特定範囲に設定することで、前記課題が解決できることを見出すとともに、使用し得るポリオールを種々検討し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕 (A)ポリイソシアネートと(B)ポリオールと(C)分子量が400以下の多価アルコール系の鎖延長剤と(D)水とを含有する配合組成物を反応させることにより得られるポリウレタン発泡体であって、
前記配合組成物中に、前記(A)成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が主成分として配合されてなり、該MDIの配合量が、前記(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたときに、45〜70重量部であり、(B)ポリオールの配合量が、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、10〜50重量部であり、
前記(B)成分として、数平均分子量が1500以上で、平均官能基数が2以上の、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールのうち少なくとも1種が主成分として配合されてなることを特徴とするポリウレタン発泡体、
〔2(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオールと(C)分子量が400以下の多価アルコール系の鎖延長剤と(D)水とを含有する配合組成物を反応させることにより得られるポリウレタン発泡体であって、
前記配合組成物中に、前記(A)成分として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が主成分として配合されてなり、該MDIの配合量が、前記(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたときに、45〜70重量部であり、(B)ポリオールの配合量が、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、10〜50重量部であり、
前記(B)成分として、数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコールが主成分として配合されてなることを特徴とするポリウレタン発泡体、
〕 前記(C)成分として、ジエチレングリコール、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールのうち少なくとも1種が含有されている、前記〔1〕または〔2〕記載のポリウレタン発泡体、
〕 前記配合組成物の反応を密閉金型内で行うにあたり、該密閉金型100容量部あたり前記配合組成物を10〜80重量部注入することを特徴とする、前記〔1〕〜〔〕のいずれか記載のポリウレタン発泡体の製造方法、
〕 前記〔1〕〜〔〕のいずれか記載のポリウレタン発泡体からなる研磨パッド。
【発明の効果】
【0009】
前記〔1〕,〔2〕記載の発明によれば、低比重にもかかわらず、研磨パッドとして好適な硬度と弾性を有するポリウレタン発泡体を提供することができる。
前記〔3〕記載の発明によれば、前記〔1〕,〔2〕記載の発明の効果に加えて、従来のMOCA系ポリウレタン発泡体と同等の耐摩耗性を有するポリウレタン発泡体を提供することができる。
前記〔4〕記載の発明によれば、前記〔1〕〜〔3〕記載の発明の効果に加えて、平均気泡径がより微小化されたポリウレタン発泡体を提供することができる。
前記〔5〕記載の発明によれば、密閉金型への配合組成物の注入量を変えるだけで、比重が0.1〜0.8の範囲にあるポリウレタン発泡体を容易に製造することができる。
前記〔6〕記載の発明によれば、前記〔1〕〜〔4〕の効果を有する研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例3で得られたポリウレタン発泡シートの走査型電子顕微鏡写真。
図2】実施例18で得られたポリウレタン発泡シートの走査型電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリウレタン発泡体は、上述したように、(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオールと(C)分子量が400以下の多価アルコール系の鎖延長剤と(D)水とを含有する配合組成物を反応させることにより得ることができ、前記配合組成物中に、前記(A)成分として、MDIが主成分として配合されてなり、該MDIの配合量が、前記(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたときに、45〜70重量部であることを特徴とする。
【0012】
本発明においてポリウレタン発泡体は、いわゆるワンショット法、および(A)成分と(B)成分(必要に応じて少量の(C)成分)から成るイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成し、これに(C)成分(プレポリマーの合成に(C)成分を使用したときは、残りの(C)成分)、(D)成分等を反応させるプレポリマー法のどちらでも製造することができるが、(B)成分として、後述する数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させていないポリプロピレングリコールを主成分とする場合は、研磨パッドとして好適な硬度と弾性を発揮させるため、プレポリマー法で製造することが好ましい。なお、ポリウレタン発泡体の具体的な製造方法は後述する。
【0013】
本発明の原料成分である(A)ポリイソシアネートは、蒸気圧が低く、毒性が少ない点で、MDIが好ましい。このようなMDIとしては、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト(ピュアMDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネ−ト(ポリメリックMDI)およびこれらの変性物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。上記変性物としては、例えばウレタン変性物、カルボジイミド変性物、アロファネート変性物、ウレア変性物、ビューレット変性物、イソシアヌレート変性物、オキサゾリドン変性物等が挙げられる。これらの中では、カルボジイミド変性物(以下、「カルボジイミド変性MDI」という)が、常温で液状で、粘度が低く、取り扱いが容易である点で好適に使用できる。
【0014】
このようなMDIは市販品が容易に入手でき、ピュアMDIとしては、例えば、コスモネートPH(三井化学ウレタン社製)、ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられ、ポリメリックMDIとしては、例えば、コスモネートM−100、コスモネートM−200(ともに三井化学ウレタン社製)、ミリオネートMR100、ミリオネートMR200(ともに日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられ、カルボジイミド変性MDIとしては、例えば、コスモネートLL(三井化学ウレタン社製)、ミリオネートMTL(日本ポリウレタン工業社製) 、SBU0632(住化バイエルウレタン社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明では、(A)成分として上記MDIを主成分とするが、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートなど他のポリイソシアネートも併用することができる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI:日本ポリウレタン工業社製)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI:住化バイエルウレタン社製)、水添キシリレンジイソシアネート(タケネート600:三井化学ウレタン社製)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(デスモジュールW:住化バイエルウレタン社製)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(コロネートT−100,80,65:日本ポリウレタン工業社製)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(コスモネートND:三井化学ウレタン社製)、キシリレンジイソシアネート(タケネート500:三井化学ウレタン社製)、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
本発明の原料成分である(B)ポリオールは、上記(A)成分との組み合わせにおいて、製造されるポリウレタン発泡体が研磨パッドとして好適な硬度と弾性を示す点で、数平均分子量が1500以上で、平均官能基数が2以上の、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールを当該(B)成分の主成分として配合することが好ましい。
【0017】
ポリエステルポリオールは、以下に挙げるグリコール類やエーテル類と2価のカルボン酸やカルボン酸無水物とを脱水縮合させる等により得られるものである。ここでは、本発明に使用可能なポリエステルポリオールの作製に使用される具体的な化合物を挙げる。先ず、飽和もしくは不飽和のグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール等の各種グリコール類が挙げられる。また、エーテル類としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類が挙げられる。また、2価のカルボン酸や酸無水物としては、例えば、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸、ひまし油およびその脂肪酸等が挙げられる。これらを用いて脱水縮合により得られるポリエステルポリオール類の他に、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類も挙げられる。
【0018】
本発明に使用し得るポリエステルポリオールは市販品が容易に入手でき、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とを脱水縮合させたポリ[3−メチル−1,5−ペンタンジオール]−alt−(アジピン酸)](クラレポリオールP2010、クラレ社製)等が挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールは、一般に多価アルコールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、または、多価アルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経て生成される。これらの反応で使用される多価アルコールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4−シクロヘキサンジグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0020】
本発明に使用し得るポリカーボネートポリオールは市販品が容易に入手でき、例えば、1,6−ヘキサンジオールを主成分とした共重合体(PES−EXP815、日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。
【0021】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールの1種又は2種以上にテトラヒドロフランを開環重合により付加して得られるものが挙げられる。これらの環状エーテルは単独で又は2種以上を併用して使用することができ、さらに上記環状エーテルを2種以上使用した共重合体も使用可能である。例えば、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールの共重合体(PTXG−1800、旭化成社製)等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の原料成分である(B)ポリオールは、上記(A)成分との組み合わせにおいて、製造されるポリウレタン発泡体が研磨パッドとして好適な硬度と弾性を示すとともに、従来のMOCA系ポリウレタン発泡体と同等の耐摩耗性を示す点で、数平均分子量が2500以上、好ましくは3000以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコール(以下、このような特定のポリプロピレングリコールを「EO付加PPG」という場合がある)を当該(B)成分の主成分として配合することが好ましい。エチレンオキシド含量は、ポリオール中、5〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。このような特定の(B)ポリオールは市販品が容易に入手でき、例えば、アクトコールEP3033(三井化学ウレタン社製)、PREMINOL7003(旭硝子社製)、PREMINOL7001(旭硝子社製)、アデカポリエーテルAM302(旭電化社製)等を挙げることができる。
【0023】
さらに、本発明の原料成分である(B)ポリオールは、上記(A)成分との組み合わせにおいて、製造されるポリウレタン発泡体が研磨パッドとして好適な硬度と弾性を示す点で、数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させていないポリプロピレングリコール(以下、このような特定のポリプロピレングリコールを「EO未付加PPG」という場合がある)を当該(B)成分の主成分として配合することが好ましい。このような特定の(B)ポリオールは市販品が容易に入手でき、例えば、アデカポリエーテルG3000(旭電化社製)等を挙げることができる。
【0024】
本発明で(B)成分の主成分として使用し得る化合物は、上述したように数平均分子量が1500以上で、平均官能基数が2以上の、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールのうち少なくとも1種;EO付加PPG;およびEO未付加PPG;から選択されるが、これらのうち、耐加水分解性、価格等の点で、EO付加PPGとEO未付加PPGが好ましい。また、EO付加PPGとEO未付加PPGとでは、後述するようにポリウレタン発泡体の製造時にワンショット法を適用できる点で、EO付加PPGが好ましい。
【0025】
本明細書において「研磨パッドとして好適な硬度」とは、製造されたポリウレタン発泡体を厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、硬度計で測定したときのA型硬度が、80°A以上の値を示すものをいう。このような硬度とすることにより、研磨時において被研磨物の表面をより平坦化しやすくなる。また、「研磨パッドとして好適な弾性」とは、製造されたポリウレタン発泡体を厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、該供試体を二つ折りにしたときに、折り曲げ部分に割れが生じないものをいう(以下、上記の試験を「180°屈曲試験」という)。さらに、「従来のMOCA系ポリウレタン発泡体と同等の耐摩耗性」とは、製造されたポリウレタン発泡体を厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、JIS K 7204に準拠した摩耗試験を行ったときの摩耗量が従来のMOCA系ポリウレタン発泡体で得られた摩耗量と同等であることをいう。このような耐摩耗性を備えることで、研磨パッドの寿命を従来品と同程度にすることができる。
【0026】
本発明の原料成分である(C)鎖延長剤は分子量が400以下の多価アルコールである。このような鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の直鎖脂肪族グリコール;ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族分岐グリコール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添加ビスフェノールA等の脂環族グリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリブチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多官能グリコール;が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができ、さらに2種以上の共重合体として使用することもできる。これらのうちでは、製造されるポリウレタン発泡体の平均気泡径がより微小化され、研磨パッドとしてより好適な特性を示す点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが好ましい。
【0027】
本明細書において「平均気泡径」とは、製造されたポリウレタン発泡体を厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、走査型電子顕微鏡を使用し、上記供試体の断面を倍率200倍で観察した写真を画像処理装置で解析し、写真中に存在する全ての気泡径を平均した値をいう。上記ポリウレタン発泡体を研磨パッドとして用いるには、平均気泡径が好ましくは100μm以下であり、より好ましくは90μm以下である。このような平均気泡径とすることで、研磨における気泡縁部を原因とした研磨物の端部分の過剰研磨(いわゆるR化、またはフチダレ現象)を抑制できるので、ひいては被研磨物表面の平坦部面積が増大することから、被研磨物におけるデバイスチップなどの収率の向上が図れる。
【0028】
本発明に係るポリウレタン発泡体は、上記(A)ポリイソシアネート、上記(B)ポリオール、上記(C)鎖延長剤および(D)発泡剤としての水を混合してなる配合組成物を反応させることにより製造される。
【0029】
上記(A)ポリイソシアネートの配合割合は、製造されるポリウレタン発泡体が研磨パッドとして好適な硬度と弾性を示す点で、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、45〜70重量部の範囲になるように配合することが好ましい。
【0030】
また、(B)ポリオールの配合割合は、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、10〜50重量部の範囲になるように配合することが好ましい。上記の範囲で(B)成分を配合すると、(A)成分との組み合わせにおいて、製造されるポリウレタン発泡体が研磨パッドとして好適な硬度と弾性を示すようになる。(D)水の配合割合は、(A)、(B)及び(C)の各成分の合計重量を100重量部としたとき、0.01〜0.5重量部の範囲に設定することが好ましい。
【0031】
イソシアネート基/水酸基の当量比(NCO基/OH基)は好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。
【0032】
上記配合組成物は、上記(A)〜(D)の成分の他に、触媒、整泡剤、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤等、ポリウレタン発泡体の技術分野で公知の添加剤を含有していてもよい。ただし、硬化剤として汎用されているMOCAは配合しないことが望ましい。
【0033】
触媒としては、例えば、オクタン酸スズ、ナフテン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、オクタン酸亜鉛等の有機酸とSn、Co、Ni、Fe、Zn、Pb等からなる金属触媒(樹脂化触媒ともいう)や、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、ジエチルベンジルアミン等のアミン触媒(泡化触媒ともいう)等を併用することができる。金属触媒としては、例えば、「アデカスタブ465E(旭電化工業社製)が利用可能であり、アミン触媒としては、例えば、DABCO33LV(エアープロダクツジャパン社製)が利用可能である。整泡剤としては、例えば、各種ポリエーテル変性シリコーン等、発泡ポリウレタンの技術分野で公知のシリコーン整泡剤が使用でき、例えば、SH193(東レ・ダウコーニング社製)が利用可能である。
【0034】
続いて、ポリウレタン発泡体の製造方法について説明する。ワンショット法としては、例えば、(1)密閉金型内に、(A)ポリイソシアネート、(B)ポリオール、(C)鎖延長剤、(D)水および必要に応じて上記添加剤を入れ、ミキサー等で混合して得られる配合組成物を発泡させる方法;(2)(B)ポリオール、(C)鎖延長剤、(D)水および必要に応じて上記添加剤を混合した混合液(以下、(B)成分を含有する混合液を「R液」という)と(A)ポリイソシアネート(以下、(A)成分からなる液を「P液」という)をミキサー等で混合し、得られた配合組成物を密閉金型内に注入して発泡させる方法;(3)R液とP液をRIM(Reaction Injection Molding)成形機により混合し、得られた配合組成物を密閉金型内に注入して発泡ポリウレタンを得る方法;等を挙げることができる。なお、RIM成形機の通常の構成としては、例えば、温度調節可能な原料タンク(R液とP液のもの2つ)、計量ポンプ(R液とP液のもの2つ)、ミキシングヘッド、ミキシングヘッド用油圧ユニット等の各機構を備えたものが挙げられる。
【0035】
本発明においてワンショット法は、上述した(B)成分のうち、数平均分子量が1500以上で、平均官能基数が2以上の、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコールのうち少なくとも1種、またはEO付加PPGを当該(B)成分の主成分として配合する場合に適用される。
【0036】
プレポリマー法としては、例えば、(1)(A)ポリイソシアネートと(B)ポリオール(必要に応じて少量の(C)鎖延長剤)とを反応させてイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成するとともに(以下、得られたプレポリマーを「X液」という)、別途(C)鎖延長剤(プレポリマーの合成に(C)鎖延長剤を使用したときは、残りの(C)鎖延長剤)、(D)水および必要に応じて上記添加剤を入れ、ミキサー等で混合して得られる配合組成物(以下、得られた混合液を「Y」液という)を調製し、次いでX液とY液をミキサー等で混合し、得られた配合組成物を密閉金型内に注入して発泡ポリウレタンを得る方法;(2)X液とY液をRIM成形機により混合し、得られた配合組成物を密閉金型内に注入して発泡ポリウレタンを得る方法;等を挙げることができる。本発明においてプレポリマー法は、上述した全ての(B)成分を当該(B)成分の主成分とする場合に適用することができる。
【0037】
上記いずれの製造方法を採用しても、密閉金型内に注入する配合組成物の注入量を変えるだけで、製造されるポリウレタン発泡体の比重を容易に調整することができる。すなわち、製造されるポリウレタン発泡体の比重は、密閉金型の容量(100容量部)に対する注入された配合組成物の重量の比にほぼ対応した値となる。例えば、密閉金型100容量部あたり上記配合組成物を10〜80重量部、15〜80重量部または20〜80重量部注入すると、製造されるポリウレタン発泡体の比重を、それぞれ0.1〜0.8、0.15〜0.8または0.2〜0.8の範囲に調整することができる。
【0038】
また、上記の製造方法のうち、(3)のRIM成形機を用いると、製造されるポリウレタン発泡体の平均気泡径が(1)および(2)方法に比べて微小化され、研磨パッドとして好適なものになる。
【0039】
また、密閉金型は注入された原料の漏れがなく、原料の発泡硬化時の圧力に耐えうるものであれば、形状,材質等は特に限定されるものではない。
【0040】
上記のようにして製造されるポリウレタン発泡体は、比重0.1〜0.8の範囲でA型硬度が80°A以上で、平均気泡径が概ね100μm以下であり、180°屈曲試験で折り曲げ部分に割れが生じない弾性を有するとともに、従来のMOCA系ポリウレタン発泡体と同等の耐摩耗性を有するので、研磨パッドとして好適である。
【0041】
また、上記諸特性を備えるポリウレタン発泡体は、研磨パッドの他に、例えば、衝撃吸収材(人工枕木、防振材、自動車用衝撃吸収材など)、紡糸用の糸供給用のロール材、ライニング材(鋼管用、スクリーン網用など)、工業用ロール(OA機器用ロール、キャスター車輪、各種建材用など)等に適用可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特にことわりのない限り、それぞれ重量部および重量%を示す。
【0043】
1.MDIの好適な配合量の検討(実施例1〜5、比較例1〜3)
<原料>
ポリウレタン発泡体の製造に用いた原料は次のとおりである。
(1)ポリイソシアネート:カルボジイミド変性MDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「ミリオネートMTL」)
(2)ポリオール:末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコール(三井化学ウレタン社製、商品名「アクトコールEP−3033」、分子量6,600、末端EO(エチレンオキシド)単位の含量=16%、官能基数4)
(3)鎖延長剤:ジエチレングリコール
(4)発泡剤:水
(5)泡化触媒:エアープロダクツジャパン社製、商品名「DABCO33LV」
(6)樹脂化触媒:旭電化工業社製、「アデカスタブ465E」
(7)製泡剤:シリコーン整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH193」)
【0044】
<製造方法>
上記原料のうち、アクトコールEP−3033、ジエチレングリコール、水、DABCO33LV、アデカスタブ465E及びSH193をそれぞれ表1に示す配合量(単位:g)で配合し、40℃に温度調整した状態で、6,000rpmで5秒間攪拌し、得られた液状組成物をR液とした。
次に、上記で得られ、40℃に温度調整したR液に40℃に温度調整したミリオネートMTLからなるP液を表1に示す配合量(単位:g)で素早く添加し、6,000rpmで5秒間攪拌した後、40℃に温度調整した密閉金型(縦10cm,横10cm、高さ1cm)内に55g注入し、該金型を密閉して10分間放置することで発泡ポリウレタンブロックを作製した。続いて、該ウレタンブロックを脱型し、厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として以下に示す物性の測定を行い、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表1に示す。
【0045】
<各特性の測定方法>
(1)比重の測定
JIS K 7222に記載の方法により測定した。
(2)A型硬度の測定
硬度計(高分子計器社製、商品名「アスカーゴム硬度計A型」)により測定した。
A型硬度が80°A以上の場合、研磨パッドとして優れた硬度を示すものと評価した。
(3)平均気泡径の測定
走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡、商品名「VE−8800」)を使用し、ポリウレタン発泡シートの断面を倍率200倍で観察した写真を画像処理装置で解析することにより、写真中に存在する全ての気泡径を計測し、その平均値を平均気泡径とした。
平均気泡径が100μm以下の場合、研磨パッドに適すると評価した。
(4)180°屈曲性の測定
ポリウレタン発泡シートを二つ折りにし、折り曲げた両端をほぼ面が合うまで人差し指と親指で押さえ込み、折り曲げ部分に割れが生じるか目視観察した。試料のサイズは、厚み1.5mm×長さ60mm×幅10mmとした。
割れが生じない場合、研磨パッドとして好適な弾性を示すものとして評価を「○」とし、割れが生じた場合、研磨パッドとして好適な弾性を示さないものとして評価を「×」とした。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、実施例1〜5のすべてについて、A型硬度が80°A以上を示し、カルボジイミド変性MDI(ミリオネートMTL)の配合量が多くなるほど、A型硬度が大きくなる傾向を示した。一方、比較例1と比較例2では、A型硬度が80°A未満となり、研磨パッドとして好適な硬度を示さないことが分かった。上記の結果から、MDI,ポリオール及び鎖延長剤の各成分の合計重量を100重量部としたときに、MDIが45重量部以上含有されている場合、研磨パッドとして優れた硬度を示すといえる。
次に180°屈曲性についてみると、比較例3のみ、唯一割れが観察された。このことから、MDI,ポリオール及び鎖延長剤の各成分の合計重量を100重量部としたときに、MDIが70重量部を超えて含有されている場合、研磨パッドとして好適な弾性を示さないといえる。
また、平均気泡径についてみると、上記いずれの実施例および比較例についても100μm以下を示し、研磨パッドとして適していることが分かった。
【0048】
2.好適なポリオールの検討(実施例6〜9、19〜25、比較例4〜9)
下記および表2、表3に示す14種類のポリオール(それぞれ、分子量、EO含量、官能基数が異なる)を用いて、各原料を表2および表3に示す配合量(単位:g)で配合したこと以外は、「1.ポリイソシアネートの好適な配合量の検討(実施例1〜5、比較例1〜3)」と同一の製造方法によりポリウレタン発泡シートを作製し、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表2および表3に示す。なお、表2および表3において、ポリオールの表記は実際の商品名(文字+数字)のうち文字部分を簡略化ないし省略して表記した。
【0049】
<末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコール>
(1)商品名「アクトコールEP3033」、三井化学ウレタン社製
(2)商品名「PREMINOL7003」、旭硝子社製
(3)商品名「PREMINOL7001」、旭硝子社製
(4)商品名「アデカポリエーテルAM302」、旭電化社製
(5)商品名「PREMINOL5005」、旭硝子社製
(6)商品名「サンニックスFA−702」、三洋化成工業社製
【0050】
<ポリプロピレングリコール(末端にエチレンオキシドを付加させていないもの)>
(7)商品名「アデカポリエーテルG3000」、旭電化社製
(8)商品名「アクトコールDiol2000」、三井化学ウレタン社製
(9)商品名「アクトコールDiol1000」、三井化学ウレタン社製
(10)商品名「アデカポリエーテルP−700」、旭電化社製
【0051】
<ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールのランダム共重合体>
(11)商品名「アクトコールED−36」、三井化学ウレタン社製
【0052】
<ポリエステルポリオール>
(12)商品名「クラレポリオールP2010」、クラレ社製
<エーテル系ポリカーボネートポリオール>
(13)商品名「PES−EXP815」、日本ポリウレタン工業社製
<共重合ポリテトラメチレンエーテルグリコール>
(14)商品名「PTXG−1800」、旭化成社製
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表2および表3から、実施例6〜9、19〜25および比較例4〜9の全てについて、A型硬度が80°A以上となった。一方、180°屈曲性については、実施例6〜9、19〜25では割れが観察されなかったが、比較例4〜9では割れが観察された。
比較例4および6〜8はポリオールとして末端にエチレンオキシドを付加させていないポリプロピレングリコールのみを用いたものであり、比較例5は平均官能基数が2の、末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコールを用いたものであり、比較例9は平均官能基数が2の、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールのランダム共重合体を用いたものであり、このようなポリプロピレングリコールを当該ポリオールの主成分とする場合は、本試験例の製造法として採用したワンショット法を適用すると、研磨パッドとして好適な弾性を示さないことが分かった。
また、実施例23および24の結果から、ポリオールとして末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコールを主成分とし、比較例4〜9で用いたポリプロピレングリコールを少量配合した場合には、ワンショット法を適用してもA型硬度および180°屈曲性に悪影響を及ぼさないことが分かった。
上記の結果から、本試験例において研磨パッドとして好適な弾性を発揮させるには、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、または数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させたポリプロピレングリコールをポリオールの主成分とすることが好ましいといえる。
【0056】
3.好適な鎖延長剤の検討(実施例3,10,11,26、比較例10)
表4に示す4種類の鎖延長剤を用いて、各原料を表4に示す配合量(単位:g)で配合したこと以外は、「1.ポリイソシアネートの好適な配合量の検討(実施例1〜5、比較例1〜3)」と同一の製造方法によりポリウレタン発泡シートを作製し、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
表4から、実施例3,10,11,26および比較例10の全てについて、A型硬度が80°A以上で、180°屈曲性も良好な結果が示された。また、平均気泡径については、鎖延長剤としてジエチレングリコール、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールを使用した実施例3,10,11,26では100μm未満だったのに対し、鎖延長剤として1,4−ブタンジオールを使用した比較例10では130μmとなった。上記の結果から、鎖延長剤としてジエチレングリコール、エチレングリコールおよび1,3−プロパンジオールを用いると、平均気泡径が微小化され、研磨パッドとしてより適したものになることが分かった。
【0059】
4.比重の調整の検討(実施例4,12〜16、比較例11)
密閉金型への注入量を表5に示す量にしたこと、及び各供試体について以下に示す摩耗試験を追加して行ったこと以外は、「1.ポリイソシアネートの好適な配合量の検討(実施例1〜5、比較例1〜3)」と同一の製造方法によりポリウレタン発泡シートを作製し、 該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表5に示す。
本実施例において、BH型粘度計(東機産業社製 )を用いて40℃におけるR液及びP液の粘度を測定したところ、R液が860mPa・sで、P液が18mPa・sであった。
なお、比較例11については、特開2000−178374号公報の実施例1に準拠したポリウレタン発泡体を試作し、厚み1.5mmにスライスしたものを供試体とした。
<摩耗試験の方法>
テーバー摩耗試験機(安田精器製作所社製)を用い、JIS K 7204に準拠して行った。具体的には、磨耗輪にH18を用い、荷重1500g、回転速度60rpmで1000回転させたときの磨耗量(表5では「テーバー摩耗」(単位:g)と表記)を測定し評価した。
【0060】
【表5】
【0061】
表5から、配合組成物の注入量と供試体の比重は比例関係にあることが分かった。ここで、実施例4,12〜16(本発明品)の比重は0.21〜0.76であるが、かかる範囲でA型硬度はすべて80°A以上を示した。このことから、本発明品は、低比重にもかかわらず研磨パッドとして好適な硬度を有することが分かった。また、実施例4,12〜16と比較例11のテーバー摩耗の結果から、本発明品は従来品(比較例11)と同等の耐摩耗性を有することが確認された。
【0062】
5.他のMDIを併用して製造されたポリウレタン発泡シートの特性(実施例3,17)
下記および表6に示す2種類のポリイソシアネートを用いて、各原料を表6に示す配合量(単位:g)で配合したこと以外は、「1.ポリイソシアネートの好適な配合量の検討(実施例1〜5、比較例1〜3)」と同一の製造方法によりポリウレタン発泡シートを作製し、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表6に示す。
<MDI>
(1)カルボジイミド変性MDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「ミリオネートMTL」)
(2)ピュアMDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「ミリオネートMT」)
【0063】
【表6】
【0064】
表6より、カルボジイミド変性MDIとピュアMDIを併用した場合(実施例17)でもカルボジイミド変性MDIのみを用いた場合(実施例3)と同等の硬度、弾性及び平均気泡径を示すことが分かった。
【0065】
6.RIM成形機を用いて製造された発泡シートの特性(実施例3,18)
表1の実施例3と同一組成からなる配合組成物について、RIM成形機を使用して発泡ポリウレタンブロックを作製し、該ウレタンブロックを厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、上記と同様の物性を測定し、該シートの特性を評価した(実施例18)。
具体的には、アクトコールEP−3033、ジエチレングリコール、水、DABCO33LV、アデカスタブ465E及びSH193をそれぞれ表6に示す配合量(単位:g)で配合し、40℃に温度調整した状態で、6,000rpmで5秒間攪拌し、得られた液状組成物をR液とした。
次に、上記で得られ、40℃に温度調整したミリオネートMTLからなるP液を調製した。
そして、上記R液の全量と上記P液の55.4gをRIM成形機により、吐出圧14MPaで衝突混合させた後、40℃に温度調整した縦30cm、横30cm、高さ2cmの密閉金型内に吐出量1,000g(吐出速度 250g/sec)で吐出し、10分間放置することで、発泡ポリウレタンブロックを作製した。
続いて、該ウレタンブロックを脱型し、厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として以下に示す物性の測定を行い、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表7に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
表7、図1および図2より、RIM成形機を用いて製造した場合、供試体の平均気泡径が微小化され、研磨パッドとしてより適したものになることが分かった。
【0068】
7.プレポリマー法で製造されたポリウレタン発泡シートの特性1(実施例3,27)
表1の実施例3と同一組成からなる配合組成物について、プレポリマー法を採用して発泡ポリウレタンブロックを作製し、該ウレタンブロックを厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として、上記と同様の物性を測定し、該シートの特性を評価した(実施例27)。
具体的には、アクトコールEP−3033およびミリオネートMTLをそれぞれ表7に示す配合量(単位:g)で窒素充填下、80℃で2時間反応させプレポリマー化し、得られた液状のプレポリマーをX液とした。次に、ジエチレングリコール、水、DABCO33LV、アデカスタブ465E及びSH193をそれぞれ表7に示す配合量(単位:g)で配合し、40℃に温度調整した状態で、6,000rpmで5秒間攪拌し、得られた液状組成物をY液とし、表7に示す配合量(単位:g)でX液に素早く添加し、6,000rpmで5秒間攪拌した後、40℃に温度調整した密閉金型(縦10cm,横10cm、高さ1cm)内に55g注入し、該金型を密閉して10分間放置することで発泡ポリウレタンブロックを作製した。続いて、当該ウレタンブロックをオーブンに入れて、100℃で10時間、保持した後、得られた該ウレタンブロックを脱型し、厚み1.5mmにスライスしたポリウレタン発泡シートを供試体として以下に示す物性の測定を行い、該シートの特性を評価した。各特性の測定結果を表7に示す。
【0069】
表7より、プレポリマー法で製造した場合(実施例27)でもワンショット法で製造した場合(実施例3)と同じ特性が得られることが分かった。
【0070】
8.プレポリマー法で製造されたポリウレタン発泡シートの特性2(参考例28、比較例4,7,12)
表2の比較例4,7と同一組成からなる配合組成物を用いたこと以外は、「7.プレポリマー法で製造されたポリウレタン発泡シートの特性1(実施例3,27)」と同一の製
造法によりポリウレタン発泡シートを作製し、該シートの特性を評価した(参考例28、比較例12)。各特性の測定結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
表8から、比較例12は比較例7と同様に180°屈曲性について良好な結果が得られなかったが、参考例28は180°屈曲性について良好な結果が得られた。
参考例28と比較例12はポリオールとして共に末端にエチレンオキシドを付加させていないポリプロピレングリコールを用いたものであり、数平均分子量と平均官能基数が異なっている。
これらの結果から、数平均分子量が2500以上で、平均官能基数が3以上の、末端にエチレンオキシドを付加させていないポリプロピレングリコールをポリオールの主成分とする場合は、プレポリマー法を採用することにより、研磨パッドとして好適な硬度と弾性を有するポリウレタン発泡シートを製造することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、ポリウレタン発泡体、該発泡体の製造方法および該発泡体からなる研磨パッドとして広く利用することができる。また、上記ポリウレタン発泡体は、研磨パッド以外にも、例えば、衝撃吸収材(人工枕木、防振材、自動車用衝撃吸収材など)、紡糸用の糸供給用のロール材、ライニング材(鋼管用、スクリーン網用など)、工業用ロール(OA機器用ロール、キャスター車輪、各種建材用など)等に適用可能である。
図1
図2