(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736266
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】バッテリ保護ICおよびバッテリ装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20150528BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20150528BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20150528BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
H02J7/00 T
H02H7/18
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-162902(P2011-162902)
(22)【出願日】2011年7月26日
(65)【公開番号】特開2013-27273(P2013-27273A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】北島 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
【審査官】
横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−007853(JP,A)
【文献】
特開2009−247100(JP,A)
【文献】
特開2005−130664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
H01M 10/42−10/48
H02H 7/18
H02H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池が接続されるVDD端子及びVSS端子と、
第2の外部端子に接続される過電流検出端子と、
前記2次電池を充電する充電器による充電電流を制御する充電制御FETが接続される充電制御端子と、を備え、前記2次電池の、電圧及び電流を監視し、充放電を制御するバッテリ保護ICであって、
前記過電流検出端子と前記VDD端子の間に第1のスイッチ素子を備え、
前記第1のスイッチ素子は、前記充電器の極性が逆に接続されたときに、前記過電流検出端子と前記VDD端子の間の電流経路を遮断する、ことを特徴とするバッテリ保護IC。
【請求項2】
前記第1のスイッチ素子は、ドレインが前記過電流検出端子に接続され、ゲートが前記VDD端子に接続された、NMOSトランジスタである、ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ保護IC。
【請求項3】
ソースが前記第1のスイッチ素子のソースに接続され、ドレインが前記VDD端子に接続され、ゲートが前記過電流検出端子に接続された、NMOSトランジスタを更に備えた、ことを特徴とする請求項2に記載のバッテリ保護IC。
【請求項4】
前記充電制御端子と前記VDD端子の間に設けられた第2のスイッチ素子を更に備え、
前記第2のスイッチ素子は、前記充電器の極性が逆に接続されたときに、前記充電制御端子と前記VDD端子の間の電流経路を遮断する、ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ保護IC。
【請求項5】
前記第2のスイッチ素子は、ドレインが前記充電制御端子に接続され、ゲートが前記VDD端子に接続された、NMOSトランジスタである、ことを特徴とする請求項4に記載のバッテリ保護IC。
【請求項6】
充電器が接続される第1の外部端子及び第2の外部端子と、
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子の間に直列に接続された、2次電池、放電制御FET及び充電制御FETと、
前記2次電池の電圧と前記第2の外部端子の電圧が入力され、前記2次電池の充放電を制御する請求項1から5に記載のバッテリ保護ICと、を備えたことを特徴とするバッテリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ保護ICおよびバッテリ装置に関し、より詳しくは、バッテリ装置に充電器が逆接続された時のICの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯型電子機器が普及しているが、これらはバッテリ装置で駆動されている。バッテリ装置は、2次電池2と、その充放電を制御する保護回路を搭載したバッテリ保護ICで構成されている。バッテリ保護ICは、2次電池2の充放電を制御するとともに、過充電、過放電、過電流から2次電池2を保護する機能も有している。また、2次電池2を充電する充電器が通常の接続とは正極負極が逆に接続されても、2次電池2やICを保護する機能も有している。
【0003】
図2は、バッテリ保護IC3およびバッテリ装置1を表すブロック図である。
バッテリ装置1は、2次電池2と、バッテリ保護IC3と、スイッチである放電制御FET4及び充電制御FET5と、容量6と、入力抵抗7と、電流制限抵抗8と、充電器13や負荷が接続される外部端子11と12と、を有している。バッテリ保護IC3は、過放電検出回路31と、過充電検出回路32と、過電流検出回路33と、制御回路34と、VDD端子15及びVSS端子16と、充電制御用のCO端子17及び放電制御用のDO端子18と、過電流検出用のVM端子19と、を備えている。
【0004】
2次電池2は、正極を入力抵抗7を介してバッテリ保護IC3のVDD端子15と、負極をバッテリ保護IC3のVSS端子16と接続される。容量6は、バッテリ保護IC3のVDD端子15とVSS端子16に接続される。放電制御FET4と充電制御FET5は、2次電池2の負極とバッテリ装置1の外部端子12の間に直列に接続される。放電制御FET4のゲートは、バッテリ保護IC3の放電制御端子DOに接続される。充電制御FET5のゲートは、バッテリ保護IC3の充電制御端子COと接続される。放電制御FET4と充電制御FET5は、ゲートとソースの間にゲート酸化膜保護ダイオードが設けられている。電流制限抵抗8は、バッテリ保護IC3のVM端子19と外部端子12の間に接続される。
【0005】
過放電検出回路31と過充電検出回路32は、入力端子をVDD端子15とVSS端子16に接続され、出力端子を制御回路34に接続される。過電流検出回路33は、入力端子をVM端子19とVSS端子16に接続され、出力端子を制御回路に接続される(例えば特許文献1参照)。
【0006】
図3は、従来のバッテリ保護IC3の寄生ダイオードを示す回路図である。
バッテリ保護IC3の寄生ダイオードは、一般的に回路内のトランジスタの寄生容量などである。例えば、VM端子とVDD端子15との間に寄生ダイオードD1が存在する。また、CO端子17とVDD端子15との間に寄生ダイオードD2、D3、D4が存在する。また、DO端子18とVDD端子15との間に寄生ダイオードD5、D6が存在する。
【0007】
充電器13は、30V程度の高電圧を出力する。そして、充電器13は、バッテリ装置1の外部端子26側に高電位、バッテリ装置1の外部端子27側に低電位が接続される。
ここで、バッテリ装置1に充電器13が逆接続されると、以下のような電流経路によって、バッテリ装置1に異常電流が生じる。
【0008】
先ず、VM端子19とVDD端子15に間にある寄生ダイオードが順方向となり、充電器13〜電流制限抵抗8〜VM端子19〜寄生ダイオードD1(D3及びD4)〜入力抵抗7〜充電器13の経路にて電流が流れる。
【0009】
次に、充電制御FET5のゲート酸化膜保護ダイオードが充電制御FET5のゲートとソースの電位差をクランプするように動作する。これにより、バッテリ保護IC3のCO端子17に接続される寄生ダイオードが順方向となり、充電器13〜充電制御FET5のゲート酸化膜保護ダイオード〜CO端子17〜寄生ダイオードD4〜入力抵抗7〜充電器13という経路にて電流が流れる。
【0010】
これらの電流が流れることで入力抵抗7の両端に電圧が発生して、バッテリ保護IC3のVDD〜VSS間に定格電圧を越えた電圧が印加されてしまう。
【0011】
このとき、バッテリ保護IC3のVM端子19に接続された電流制限抵抗8は、充電器13の逆接続時に電流を抑制する。また、CO端子17からVDD端子15の経路に設けられた抵抗R1も、充電器13の逆接続時に電流を抑制する。このように、内部の電流経路に電流制限用の抵抗を設けることで、充電器13の逆接続時に電流を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−177937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のようなバッテリ保護IC3およびバッテリ装置1は、電流制限抵抗8を必要とするため、バッテリ保護IC3の外付け部品が増えてしまう、と言う課題がある。
また、内部の電流制限用の抵抗は、バッテリ保護IC3の通常動作に与える影響とトレードオフの関係にあり、むやみに抵抗値を大きくすることは出来ない、と言う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明のバッテリ保護ICは以下の構成とした。
過電流検出端子とVDD端子の間に第1のスイッチ素子を備え、充電器の極性が逆に接続されたときに、過電流検出端子とVDD端子の間の電流経路を遮断する構成とした。
また、充電制御端子とVDD端子の間に第2のスイッチ素子を備え、充電器の極性が逆に接続されたときに、充電制御端子とVDD端子の間の電流経路を遮断する構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバッテリ保護IC3およびバッテリ装置1によれば、バッテリ保護IC3の内部に、充電器13の逆接続時の電流を遮断するスイッチ素子を設けることで、バッテリ装置1の部品点数を減らし、かつ安全性の高いバッテリ保護IC3およびバッテリ装置1を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のバッテリ保護ICおよびバッテリ装置を示すブロック図である。
【
図2】バッテリ保護ICおよびバッテリ装置を示すブロック図である。
【
図3】従来のバッテリ保護IC3の寄生ダイオードを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による最良の形態について図面を用いて詳細に説明を行なう。
図1は、本実施形態のバッテリ保護ICおよびバッテリ装置を示すブロック図である。
【0018】
バッテリ装置1は、2次電池2と、バッテリ保護IC30と、スイッチである放電制御FET4及び充電制御FET5と、容量6と、入力抵抗7と、充電器13や負荷が接続される外部端子11と12と、を有している。バッテリ保護IC30は、VDD端子15及びVSS端子16と、充電制御用のCO端子17及び放電制御用のDO端子18と、過電流検出用のVM端子19と、を備えている。また、バッテリ保護IC30は、図示はしないが
図2と同様に、過放電検出回路31と、過充電検出回路32と、過電流検出回路33と、制御回路34と、を備えている。そして、それらの回路やESD保護素子などがあることによって、例えば、寄生ダイオードD1,D2、D3、D4、D5、D6が存在する。さらに、バッテリ保護IC30は、トランジスタM1、M2、M3を備えている。
【0019】
2次電池2は、正極を入力抵抗7を介してバッテリ保護IC30のVDD端子15と、負極をバッテリ保護IC30のVSS端子16と接続される。容量6は、バッテリ保護IC30のVDD端子15とVSS端子16に接続される。放電制御FET4と充電制御FET5は、2次電池2の負極とバッテリ装置1の外部端子12の間に直列に接続される。放電制御FET4のゲートは、バッテリ保護IC30の放電制御端子DOに接続される。充電制御FET5のゲートは、バッテリ保護IC30の充電制御端子COと接続される。放電制御FET4と充電制御FET5は、ゲートとソースの間にゲート酸化膜保護ダイオードが設けられている。VM端子19は、外部端子12に直接接続される。
【0020】
寄生ダイオードD1は、VM端子19とVDD端子15の間に接続されている。寄生ダイオードD2は、VM端子19とCO端子17の間に接続されている。寄生ダイオードD3及びD4は、VM端子19とVDD端子15の間に接続されている。寄生ダイオードD3と寄生ダイオードD4の接続点は、CO端子17に接続されている。寄生ダイオードD5は、VSS端子16とDO端子18の間に接続されている。寄生ダイオードD6は、VSS端子16とVDD端子15の間に接続されている。
【0021】
スイッチ素子であるトランジスタM1は、ドレインとソースがVM端子19とVDD端子15及びDO端子18の間に接続され、ゲートがVDD端子15に接続されている。トランジスタM2は、ドレインとソースがVDD端子15とトランジスタM1のソースの間に接続され、ゲートがVM端子19に接続されている。スイッチ素子であるトランジスタM3は、ドレインとソースがCO端子17とVDD端子15の間に接続され、ゲートがVDD端子15に接続されている。
【0022】
次に、本実施形態のバッテリ装置1の動作について説明する。2次電池2が1セルすると、その電圧はおよそ5V程度であり、充電器13の出力端子の両端に10V程度の電位差があるとする。
【0023】
最初に、充電器13がバッテリ装置1に正常に接続された場合について説明する。
充電器13が正常に接続されている場合は、2次電池2を充電するための充電電流が、外部端子11〜2次電池2〜放電制御FET4〜充電制御FET5〜外部端子12の経路で流れている。この状態では、VSS端子16とVM端子19の電位はほぼ等しくなる。従って、トランジスタM1は、ゲートの電圧がVDDでドレインの電圧がVSSなので、オンする。また、トランジスタM2は、ゲートの電圧がVSSでドレインの電圧がVDDなので、オフする。従って、トランジスタM3は、ゲートの電圧がVDDなので、オンする。
【0024】
トランジスタM1からM3は、このような状態にあるときは、バッテリ保護IC30の通常動作に影響を与えることはない。例えば、過充電検出回路31は、2次電池2の電圧が所定の電圧を超えた時に、制御回路34に過充電検出信号を出力する。そして、制御回路34は充電制御FET5をオフして、充電器13による充電を停止する。
【0025】
次に、充電器13がバッテリ装置1に逆接続された場合について説明する。
充電器13が逆に接続されると、VM端子15の電圧が高くなるので、過電流検出回路33が過電流を検出して、放電制御FET4や充電制御FET5をオフする。放電制御FET4がオフするとバッテリ装置1は電流を流さないので、VM端子−VDD端子間に充電器13の電圧10Vが印加されることになる。
【0026】
このとき、VM端子19とVDD端子15の間に、寄生ダイオードD1や、寄生ダイオードD3〜D4を介する第1の電流経路が存在する。また、充電制御FET5のゲート酸化膜保護ダイオードがブレークダウンすると、CO端子17とVDD端子15の間に、寄生ダイオードD4を介する第2の電流経路が存在する。
ここで、バッテリ保護IC30は、第1の電流経路にトランジスタM1を設け、第2の電流経路にトランジスタM3を設けることで、これらの電流経路を遮断する。
【0027】
トランジスタM1は、ゲートがVDD端子15に接続されていて、VM端子19の電圧がVDD+10Vになるのでオフする。トランジスタM2は、ゲートがVM端子19に接続されているので、オンしてトランジスタM1のソースの電圧をVDDにする。以上の動作によって、バッテリ保護IC30は、第1の電流経路を遮断することが出来る。
【0028】
トランジスタM3は、ゲートがVDD端子15に接続されていて、CO端子17の電圧がVDD+10Vになるのでオフする。従って、バッテリ保護IC30は、第1の電流経路を遮断することが出来る。
【0029】
以上説明したように、バッテリ装置1に充電器13が逆接続されても、トランジスタM1〜M3の働きによって電流経路を遮断することが可能となり、VM端子19に接続されていた電流制限抵抗8や内部の抵抗を必要とせず、かつ高い安全性を確保することが可能となる。
【0030】
ここで、トランジスタM1〜M3の求められる特性について説明する。
トランジスタM1は、通常動作において、過電流を検出する電圧の精度に影響しないように、内部電位をVM端子19の電位と等しくにする必要があるため、オン抵抗が低いことが求められる。また、充電制御FET5がオフしたときには、ゲート及びソースとドレインの間に充電器13の電圧がかかるので、ゲート酸化膜を十分に厚く、ドレインは高耐圧構造であることが求められる。
【0031】
トランジスタM2は、通常動作時には常にオフであるので、例えば閾値電圧を高くするなど、オフリーク電流が発生しないことが求められる。また、充電制御FET5がオフしたときには、ソースとドレインの間に充電器13の電圧がかかるので、ドレインは高耐圧構造であることが求められる。また、充電器13の逆接続時には、ゲートには充電器13の電圧がかかるので、ゲート酸化膜を十分に厚いことが求められる。
【0032】
トランジスタM3は、充電制御FET5がオフしたときに、CO端子17はVM端子19と同電位になり、ゲートには充電器13の電圧がかかるので、ゲート酸化膜を十分に厚くしておく。また、充電器13の逆接続時において、ゲート及びソースとドレインの間に充電器13の電圧がかかるので、ゲート酸化膜を十分に厚く、ドレインは高耐圧構造であることが求められる。
なお、トランジスタM2は、バッテリ保護IC30のVM端子19の静電保護素子を兼ねることも可能である。
【0033】
以上より、本発明のバッテリ保護IC30及びバッテリ装置1によれば、充電器13が逆接続された際にもバッテリ保護IC30を含め、バッテリ装置1内で電流を流すことなく、従来必要であった外付け抵抗を接続することなく、高い安全性を有するバッテリ保護ICおよびバッテリ装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 バッテリ装置
3、30 バッテリ保護IC
4 放電制御FET
5 充電制御FET
13 充電器
31 過放電検出回路
32 過充電検出回路
33 過電流検出回路
34 制御回路