特許第5736315号(P5736315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736315
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20150528BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20150528BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20150528BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20150528BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20150528BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20150528BHJP
   C11D 3/22 20060101ALI20150528BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61Q19/10
   A61K8/73
   A61K8/60
   A61K8/365
   A61Q5/02
   C11D1/14
   C11D1/29
   C11D3/37
   C11D3/22
   C11D3/20
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-529890(P2011-529890)
(86)(22)【出願日】2010年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2010064594
(87)【国際公開番号】WO2011027721
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2009-202997(P2009-202997)
(32)【優先日】2009年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】木村 光夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐也
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−214263(JP,A)
【文献】 特開平04−134017(JP,A)
【文献】 特開2008−189583(JP,A)
【文献】 特開2009−173643(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047709(WO,A1)
【文献】 特開2009−184959(JP,A)
【文献】 田村 博明 ,新化粧品ハンドブック,日光ケミカルズ株式会社,2006年10月30日,pp.777-778
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
DB Thomson Innovation
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン性界面活性剤、(B)含窒素カチオン性高分子化合物、(C)酸、および(D)マルトオリゴ糖を含有し、25℃におけるpHが3.0〜6.5であり、(B)含窒素カチオン性高分子化合物/(D)マルトオリゴ糖の配合比が1/20〜1/1である洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分がアルキル硫酸塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
(D)成分がマルトテトラオースおよびマルトペンタオースから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がカチオン化セルロースおよびカチオン化デンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
(C)成分がクエン酸およびグリコール酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時のぬるつきを低減するとともに、使用後のすべすべ感を向上させ、さらに使用後に生じやすい痒みを効果的に抑制でき、かつ経時的な色調変化を生じることのない毛髪用又は皮膚用の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活スタイルの変化に伴って、家庭生活における清潔に対する意識が高まっている。特に毛髪用や皮膚用の洗浄剤においては、様々な機能や効果へのニーズが高まっている。毛髪用や皮膚用の洗浄剤は、塵埃等による外因性の汚れや、皮脂、汗等による内因性の汚れを洗浄除去するという洗浄剤としての基本機能を持っている。毛髪用や皮膚用の洗浄剤に対しては、前記基本機能だけでなく、付加的な機能が求められている。求められている付加的機能とは、洗浄時のぬるつきや洗浄後の肌のつっぱり感やきしみ感といった不快感がなく、さっぱりとしたすべすべで滑らかな仕上がりにする機能;また、髪質の柔らかさ、滑らかさ、ほぐれやすさ、しっとり感などの髪質向上機能などである。
【0003】
かかる要求に応えるために、洗浄剤には、目的に応じて多様な機能性化合物が添加される傾向にある(例えば、特許文献1〜5)。すなわち、従来の洗浄剤には、洗浄剤として洗浄という基本機能を実現する基本成分以外に多種多様な添加剤が用いられる。そのために、洗浄剤の使用により皮膚への刺激や痒みが強くなること、洗浄剤の使用時にぬるつきがあること、洗浄剤の使用後のすべすべ感がないこと、添加成分の経時変化により洗浄剤の色調が変化することなどが懸念される場合もある。
【0004】
上述のように、洗浄剤には、各種付加機能を求める傾向がある。その一方で、近年、敏感肌、アトピー性皮膚炎等の患者が増加しており、洗浄後の皮膚の痒みを訴える人が多く、洗浄後に痒みを発生させない洗浄剤が強く求められているという状況がある。
洗浄後に生じる痒みや、使用時のぬるつき感は、多種の添加剤のいずれかに起因する場合もある。しかし、その主要原因の一つとして、洗浄剤の洗浄性能を担う界面活性剤が挙げられている。対策として、界面活性剤の使用量を削減することが考えられるが、洗浄性能を一定以上のレベルに維持するためには、界面活性剤の使用量を削減することができない。そのために、痒みやぬるつきを効果的に抑制することを困難にしている。
【0005】
かかる状況に対して、皮膚刺激性が低く、温和な低刺激性洗浄剤組成物を成分に使用することが考えられる。しかし、かかる組成では、洗浄性能が低減するばかりでなく、目的とする「洗浄後に起きる皮膚の痒みの抑制、使用時のぬるつきの低減」を十分に実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−035563号公報
【特許文献2】特開2005−089671号公報
【特許文献3】特開2006−117606号公報
【特許文献4】特開2008−266239号公報
【特許文献5】特開2008−290987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その課題は、使用時のぬるつきを低減するとともに、使用後のすべすべ感を向上させ、さらに使用後に生じやすい痒みを効果的に抑制でき、かつ経時的な色調変化を生じることのない洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、下記構成を採用した洗浄剤組成物を提供する。なお、本発明にかかる洗浄剤組成物は、主に毛髪用または皮膚用の洗浄剤組成物であるが、それらに限定されない。
【0009】
[1] (A)アニオン性界面活性剤、(B)含窒素カチオン性高分子化合物、(C)酸、および(D)マルトオリゴ糖を含有し、25℃におけるpHが3.0〜6.5である洗浄剤組成物。
[2] (A)成分がアルキル硫酸塩およびポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]に記載の洗浄剤組成物。
[3] (D)成分がマルトテトラオースおよびマルトペンタオースから選ばれる少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の洗浄剤組成物。
[4] (B)成分がカチオン化セルロースおよびカチオン化デンプンから選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれか一つに記載の洗浄剤組成物。
[5] (C)成分がクエン酸およびグリコール酸から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる洗浄剤組成物は、使用時のぬるつきを低減するとともに、使用後のすべすべ感を向上させ、さらに使用後に生じやすい痒みを効果的に抑制でき、かつ経時的な色調変化を生じることのないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述のように、本発明に係る洗浄剤組成物は、(A)アニオン性界面活性剤、(B)含窒素カチオン性高分子化合物、(C)酸、および(D)マルトオリゴ糖を含有し、25℃におけるpHが3.0〜6.5であることを特徴とする。
以下に、かかる構成の洗浄剤組成物の各構成要素について詳細に説明する。
【0012】
[(A)アニオン性界面活性剤]
本発明に用いられる(A)成分であるアニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸型、リン酸型の界面活性剤が挙げられる。
これらアニオン性界面活性剤の中でも、硫酸型の界面活性剤が好ましい。硫酸型界面活性剤としては、具体的には、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩等のスルホン酸型、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等を挙げることができる。これら硫酸型界面活性剤の中でも、特に、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。
【0013】
上記アルキル硫酸エステル塩では、炭素数10〜18のアルキル基のものが好ましく、特に炭素数12〜14が好ましい。
【0014】
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩では、アルキル基の炭素数10〜18のものが好ましく、特に炭素数12〜14が好ましい。そして、アルキレン部分は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンが好ましく、特にポリオキシエチレンが好ましい。また、そのエチレン総平均付加モル数の範囲は2〜4が好ましい。これらの対イオンとしては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0015】
[(A)アニオン性界面活性剤の配合量]
本発明の洗浄剤組成物における(A)アニオン性界面活性剤は、洗浄剤組成物の主基剤となるものであり、洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%配合される。
5質量%未満では、洗浄剤組成物の洗浄力、起泡力が不充分となる場合がある。また、40質量%を超えると、洗浄剤組成物(液体)の粘度が著しく増加して容器からの排出性が悪くなったり、溶液安定性が悪化する場合がある。
【0016】
[(B)含窒素カチオン性高分子化合物]
本発明に用いられる(B)成分である含窒素カチオン性高分子化合物とは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有する高分子化合物である。該高分子化合物には、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。
【0017】
上記(B)含窒素カチオン性高分子化合物としては、具体的には、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガム、カチオン化デンプンを挙げることができる。これらの中でも、カチオン化セルロース、カチオン化デンプンがより好ましい。
【0018】
上記カチオン化セルロースは、セルロースにカチオン性官能基を付加したものである。かかるカチオン化セルロースとしては、具体的には、例えば、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースである「ポリクオタニウム−10」を挙げることができる。
【0019】
上記カチオン化セルロースのカチオン化度は、0.1meq/g〜3.0meq/gの範囲が好ましく、0.5meq/g〜1.7meq/gがより好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、毛髪用の洗浄剤組成物の場合では、泡をすすいだ時の毛髪への指通りが悪くなる場合があり、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、カチオン化度が3.0meq/gを超えると、洗浄剤組成物の保存安定性に劣る場合がある。
【0020】
上記カチオン化セルロースの分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、30万〜200万がより好ましい。10万未満だと、毛髪用の洗浄剤組成物の場合では、泡をすすいだ時の毛髪への指通りが悪くなる場合があり、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、300万を超えると、洗浄剤組成物の保存安定性に劣ると共に、洗浄剤組成物中へのカチオン化セルロースの溶解が困難になる場合がある。
【0021】
上記カチオン化セルロースである「ポリクオタニウム−10」の市販品としては、例えば、レオガードLP、レオガードGP、レオガードMGP、レオガードKGP、レオガードXE−511K(以上、商品名、ライオン株式会社製);UCARE LR−30M 、UCARE JR−400、UCARE JR−30M(以上、商品名、ダウケミカル日本株式会社製)、カチナールHC−100(商品名、東邦化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
上記カチオン化デンプンとは、デンプンにカチオン性官能基を付加したものである。かかるカチオン化デンプンとしては、具体的には、例えば、デンプンと塩化グリシジルプロピルトリメチルアンモニウムからなる4級アンモニウム化合物である「塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン」を挙げることができる。
【0023】
上記カチオン化デンプンのカチオン化度は、0.1meq/g〜3.0meq/gの範囲が好ましく、0.5meq/g〜1.7meq/gがより好ましい。カチオン化度が0.1meq/g未満だと、毛髪用の洗浄剤組成物の場合では、泡をすすいだ時の毛髪への指通りが悪くなる場合があり、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、カチオン化度が3.0meq/gを超えると、洗浄剤組成物の保存安定性に劣る場合がある。
【0024】
上記カチオン化デンプンの分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、50万〜250万がより好ましい。10万未満だと、毛髪用の洗浄剤組成物の場合では、泡をすすいだ時の毛髪への指通りが悪くなる場合があり、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、300万を超えると洗浄剤組成物の保存安定性に劣ると共に、洗浄剤組成物中へのカチオン化デンプンの溶解が困難になる場合がある。
【0025】
上記カチオン化デンプンである「塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン」の市販品としては、センサマーCI−50(商品名、ナルコカンパニー社製);アミロマー25L、アミロマー50M(以上、商品名、Graefe Chemie社製);ファーマルMS5940(商品名、Corn Products International社製)等が挙げられる。
【0026】
上記(B)含窒素カチオン性高分子化合物の分子量は、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーで、分子量既知のポリマーと比較する方法によって測定することができる。本発明で示した(B)含窒素カチオン性高分子化合物の分子量は、GPC−MALLS(ゲル浸透クロマトグラフ/多角度レーザー光散乱検出器)を用いて測定した値である。具体的には、ポリマーの純分濃度が約1,000ppmの移動相で希釈した試料溶液を、TSK−GELαカラム(商品名、東ソー株式会社製)を用い、0.5moL/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相として、約633nmの波長を多角度光散乱検出器により測定する。標準品としては分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
【0027】
[(B)含窒素カチオン性高分子化合物の配合量]
本発明の洗浄剤組成物における(B)含窒素カチオン性高分子化合物は、本発明の洗浄剤組成物のなめらかさに関与する成分であり、その配合量は、洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%未満ではなめらかさが不充分となる場合がある。5質量%を超えると、組成物の粘度が著しく増加して容器からの排出性が悪くなる場合がある。
【0028】
[(C)酸]
本発明の洗浄剤組成物の25℃でのpHは3.0〜6.5である。pHが3.0未満だと本発明の洗浄剤組成物の安定性が悪くなり、pHが6.5を超えると本発明の洗浄剤組成物の変色が著しくなる。
本発明の洗浄剤組成物の25℃でのpHを3.0〜6.5の範囲に調整するために、(C)成分である酸を配合する。(C)酸としては、有機酸でもよいし、無機酸でもよいし、両者を同時に使用してもよい。本発明の洗浄剤組成物のpHは、(C)酸を配合した後、必要に応じて、アルカリを加えることで調整できる。
【0029】
上記有機酸としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリカルボン酸等が挙げられる。具体的には、例えば、酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α −オキシ酪酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
また、無機酸としては、例えば、リン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いる(C)酸としては、上述のように、有機酸でもよいし、無機酸でもよいし、両者の混合物でもよい。しかし、好ましくは、有機酸である。有機酸の中でもクエン酸とグリコール酸が好ましい。
【0031】
本発明の洗浄剤組成物のpHを微調整するために用いるアルカリとしては、具体的には、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0032】
洗浄剤組成物の25℃でのpHは、例えば、化粧品原料基準(第2版)の一般試験法に定められた方法を用いて測定することができる。具体的には、前記一般試験法に基づき、組成物中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
【0033】
[(C)酸の配合量]
本発明において(C)酸は、本発明の洗浄剤組成物のpHを規定するものである。該(C)酸の配合量は、洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。0.01質量%未満では洗浄剤組成物の起泡力が不充分となる場合がある。5質量%を超えると洗浄剤組成物の粘度が著しく低下して安定性が悪化する場合がある。
【0034】
[(D)マルトオリゴ糖]
本発明者らの検討によれば、マルトオリゴ糖にはNK1阻害作用があり、サブスタンスPによる痒みを抑制する効果が認められる。洗浄剤組成物にマルトオリゴ糖を添加することにより(A)アニオン性界面活性剤によりもたらされる痒みを大きく緩和することができる。この痒み緩和作用は、(B)成分と適宜に組み合わせることにより増強される。
【0035】
本発明に用いる(D)マルトオリゴ糖としては、具体的には、例えば、マルトテトラオース、マルトペンタオースなど2〜8糖のマルトオリゴ糖を挙げることができる。これらの中でも、より好ましくは、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースが用いられる。
【0036】
[(D)マルトオリゴ糖の配合量]
(D)マルトオリゴ糖の配合量は、洗浄剤組成物全量に対して0.001質量%〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.01質量%〜35質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜15質量%である。
配合量が0.001質量%〜50質量%であると、成分(B)との併用による相乗効果を得ることができる。また、配合量が0.001質量%を下回ると、本発明の効果を発揮できない。また、配合量が50質量%を上回っても効果向上は見られず、処方によっては安定性や製造が困難になるものもあることから、50質量%を超えない方がよい。
【0037】
[(B)含窒素カチオン性高分子化合物と(D)マルトオリゴ糖の配合比率]
(B)含窒素カチオン性高分子化合物と(D)マルトオリゴ糖の配合比率は、特に限定されない。しかし、後述の実施例に示すように、(B)含窒素カチオン性高分子化合物と(D)マルトオリゴ糖との配合比[(B)含窒素カチオン性高分子化合物/(D)マルトオリゴ糖]が1/20〜1/1であると、互いに他方の効果を増強、安定化する効果をさらに高めることができる。
(B)含窒素カチオン性高分子化合物と(D)マルトオリゴ糖との組み合わせ系では、(B)含窒素カチオン性高分子化合物と(D)マルトオリゴ糖とは会合して鎖状の連鎖会合体を形成し、会合体となる。会合体の生成により、(D)マルトオリゴ糖が(B)含窒素カチオン高分子化合物の皮膚や毛髪への過度な吸着を抑制して「ぬるつき」を抑えることができる。その一方で、(D)マルトオリゴ糖は(B)含窒素カチオン高分子化合物により皮膚上に長時間滞留せられ、それがために(D)マルトオリゴ糖による痒み抑制効果がさらに向上する。以上が、本発明の洗浄剤組成物の作用として推測される。
【0038】
[その他の任意成分]
本発明の洗浄剤組成物には、必須成分である(A)アニオン性界面活性剤の他に、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合してもよい。これらノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合する場合、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0039】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0040】
上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルジメチルカルボキシメチルアンモニウムベタイン、アルキルカルボキシメチルイミダゾリウムベタイン、N−(N'−アシルアミノアルキル)−N−ヒドロキシアルキルアミノカルボン酸塩等が挙げられる。
【0041】
本発明の洗浄剤組成物には、さらに仕上がり性能を向上させるために、シリコーン化合物を配合することもできる。
【0042】
かかるシリコーン化合物としては、その種類が特に制限されるものではなく、通常シャンプー組成物に使用されているものを用いることが可能である。例えば、ジメチルポリシロキサン(高重合ジメチルポリシロキサン、シリコーンゴムを含む)、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリアミノ変性シリコーン、べタイン変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、シリコーングラフトポリマー、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、トリメチルシリル基末端ジメチルポリシロキサン、シラノール基末端ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。これらの中でも、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリアミノ変性シリコーンが特に好適に使用される。
【0043】
また、上記シリコーン化合物としては、例えば、上記シリコーン化合物をアニオン性界面活性剤により乳化し、エマルション化したものも使用することができる。なお、このようなエマルションを得るには、乳化剤や乳化方法に特に制限はない。すなわち、上記シリコーン化合物としては、種々な乳化剤を使用したもの、様々な乳化方法により得られたものを使用することができる。
【0044】
また、本発明の洗浄剤組成物には、上記成分の他、本発明の効果を損わない範囲で、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、可溶化剤として、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類等;パール化剤としてエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジベヘニレート等の長鎖脂肪酸グリコールエステル等;パール化剤の安定化剤として、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等を使用することができる。同様に、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤、EDTA、NTA等のキレート剤、香料、色素、防腐・防黴剤等を、必要に応じて適宜に適量を配合することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明に係る洗浄剤組成物の実施例を説明する。以下に説明する実施例は、毛髪用の洗浄剤組成物の場合の例示である。また、以下に説明する実施例は、本発明を説明するための好適な例示であって、本発明を限定するものではない。
【0046】
(実施例1〜7、10〜13、16および19、並びに参考例8、9、14、15、17および18
下記(表1)〜(表3)に示す組成の毛髪用の洗浄剤組成物(実施例1〜7、10〜13、16および19、並びに参考例8、9、14、15、17および18)を調製した。
すなわち、(A)アニオン性界面活性剤として、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.)、テトラデセンスルホン酸ナトリウムを用いた。また、(B)含窒素カチオン性高分子化合物として、カチオン化セルロース、カチオン化グァーガム、カチオン化デンプンを用いた。また、(C)酸としては、クエン酸、グリコール酸を用いた。さらに、(D)マルトオリゴ糖として、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースを用いた。そして、共通成分とした無水硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム(pH調整剤)および精製水を加えて、実施例1〜7、10〜13、16および19、並びに、参考例8、9、14、15、17および18のそれぞれのサンプルを調製した。
(表1)〜(表4)に示す組成、および後出の(表5)および(表6)に示す製品組成に使用した各原料成分の商品名および原料メーカー名は、後出の(表7)に一括して示した。
【0047】
(比較例1〜4)
下記(表4)に示す組成の洗浄剤組成物を調製した(比較例1〜4)。
【0048】
上記実施例1〜7、10〜13、16及び19、参考例8、9、14、15、17、および18、並びに、比較例1〜4の各サンプルの諸特性を、以下の評価基準に従って、評価した。評価結果は、下記(表1)〜(表4)に併記した。
【0049】
[評価実験1:抑痒効果(ヘアレスマウス自発性掻破行動に対する作用)]
被験動物として8週齢の雌性ヘアレスマウス(HOS:HR−1、日本エスエルシー株式会社)を購入し、被験体とした。
上記被験体を、温度23±1℃、湿度60±10%、明暗サイクルを(7:00〜19:00(明)→19:00〜7:00(暗))としたSPF(Specific Pathogen Free:無菌特殊環境)下に置き、通常の餌(日本農産工業株式会社製、商品名「CE2」)と水を自由摂取させて、1週間の予備飼育を行った。
上記予備飼育を終えた後、被験体の両足をソムノペンチル(共立製薬株式会社)を用いて麻酔し、両足の皮下にマグネット片(直径1mm、長さ3mm、ニューロサイエンス社製)を挿入し、実験に供した。
【0050】
(掻痒行動の測定)
上記予備飼育を終えた後、ソムノペンチル(共立製薬株式会社)麻酔したマウスを37℃ホットプレート上に寝かせ、前記実施例1〜7、10〜13、16及び19、参考例8、9、14、15、17、および18、並びに、比較例1〜4の各洗浄剤組成物サンプル1mLを含浸したコットンをホットプレートとマウスの背部との間に挿入し、5分間の浸漬を行う。その後、1分間40℃の温水で付着したサンプルを洗い流す。以上の作業を4日間連続で1日2回実施した。
【0051】
上記4日間の作業終了の翌日から掻痒行動を観察した。掻痒行動は、MicroAct装置(ニューロサイエンス社)を用いて自動的に1時間の掻痒回数を測定し客観的に評価を行った。
試験は1群12匹で行い、次式(1)により、浸漬による掻破回数により抑制率(Pir(%))を算出した。各掻破回数の有意差検定はt検定を用いて処理した。

ir(%)={(Astandard−Asample)/Astandard}×100 (1)

sample :各サンプル群の掻破回数
standard:各サンプル群に対応するアニオン性界面活性剤である(A)成分と精製水のみからなる組成を使用した場合の掻破回数
【0052】
(抑痒効果の評価基準)
5点:60分間の抑制率(Pir)が、60%以上
4点:60分間の抑制率(Pir)が、50%以上60%未満
3点:60分間の抑制率(Pir)が、40%以上50%未満
2点:60分間の抑制率(Pir)が、30%以上40%未満
1点:60分間の抑制率(Pir)が、10%以上30%未満
0点:60分間の抑制率(Pir)が、10%未満
上記評価基準による点数に基づいて以下のA〜Dにランク分けして各表に抑痒効果の評価結果を示した。
(評価ランク表示)
抑制率4点以上 :A
抑制率3点以上4点未満:B
抑制率2点以上3点未満:C
抑制率2点未満 :D
【0053】
[評価実験2:官能試験による「ぬるつきのなさ」、および「すべすべ感」]
20〜30才の女性10名(髪の長さ:セミロング〜ロング)にて実使用評価を行った。各サンプルを3日間連続使用し、「すすぎ時のぬるつきのなさ」、「乾燥後のすべすべ感」の項目について、官能評価した。結果を下記基準に従って、(表1)〜(表4)に併記した。
【0054】
〈官能試験の評価基準〉
A:10名中8〜10名が良いと回答
B:10名中5〜7名が良いと回答
C:10名中3〜4名が良いと回答
D:10名中0〜2名が良いと回答
【0055】
[評価実験3:サンプル製剤の色調変化]
各サンプルを50mLのバイアルビンに約30g入れて40℃1ヶ月保存し、同様に−5℃に保存したサンプルと比較して、変色の程度を肉眼により評価した。結果を(表1)〜(表4)に併記した。
【0056】
〈変色程度の評価基準〉
A:変色はほとんど認められない。
B:若干の変色が認められる(商品価値上は問題なし)
C:変色が認められる(商品価値上は問題あり)
D:著しい変色が認められる。
【0057】
洗浄剤組成物の25℃でのpHは、化粧品原料基準(第2版)の一般試験法に定められた方法を用いて測定することができる。具体的には、前記一般試験法に基づき、組成物中に直接pHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。
この測定法により各サンプルのpH値を確認することにより組成分量の調整を行った。すなわち、各サンプルにおいて、pH(25℃)が5.5になるようにクエン酸ナトリウムの添加量を調整した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
上記(表1)〜(表4)から明らかなように、(A)アニオン性界面活性剤、(B)含窒素カチオン性高分子化合物、(C)酸、および(D)マルトオリゴ糖を必須成分として含有する実施例1〜7、10〜13、16及び19、並びに、参考例8、9、14、15、17及び18の洗浄剤組成物は、(B)含窒素カチオン性高分子化合物、(C)酸、(D)マルトオリゴ糖のいずれかが欠けた構成((D)マルトオリゴ糖が欠けた構成の1つとしてマルトオリゴ糖の代わりにイソマルトテトラオースを用いた構成を含む)の比較例と比べて、すすぎ時のぬるつきのなさ、乾燥後のすべすべ感、痒みを抑制する効果、そして製剤の色調の経時変化の低さのすべての評価において、優れていることが確認できた。
【0063】
(実施例20)
洗浄剤組成物として下記(表5)に示す組成のシャンプーを調製した。
【0064】
【表5】
上記組成を任意の容器(ボトル、ポンプボトル、袋状容器等)に充填し製品とした。
【0065】
参考例21)
洗浄剤組成物として下記(表6)に示す組成のボディソープを調製した。
【0066】
【表6】
上記組成を任意の容器(ボトル、ポンプボトル、袋状容器等)に充填し製品とした。
【0067】
上記実施例20、参考例21の製品の使用感、抑痒効果および安定性を前記実施例1〜7、10〜13、16および19、並びに、参考例8、9、14、15、17および18と同様にして評価した。その結果、実施例20、参考例21の製品はいずれもすすぎ時のぬるつきのなさ、乾燥後のすべすべ感、痒みを抑制する効果、そして製剤の色調の経時変化の低さのすべての評価において、優れていた。
【0068】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明に係る洗浄剤組成物は、基本性能である洗浄特性を低減させることなく、低刺激性で、すすぎ時のぬるつきがなく、乾燥後のすべすべ感が良好で、痒みを抑制する効果に優れ、かつ製剤が経時的に変色しないという効果を奏する。したがって、本発明に係る洗浄剤組成物は、皮膚刺激および使用感に敏感な使用者の毛髪や皮膚の洗浄に好適に使用することができる。