(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736316
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】積層ゴム体の取付構造及び該取付構造を備える構造体
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20150528BHJP
E04B 1/36 20060101ALI20150528BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
E04B1/36 B
F16F15/04 P
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-535359(P2011-535359)
(86)(22)【出願日】2010年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2010067072
(87)【国際公開番号】WO2011043241
(87)【国際公開日】20110414
【審査請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2009-231268(P2009-231268)
(32)【優先日】2009年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591014042
【氏名又は名称】株式会社久米設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】梅野 岳
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】大石 昌
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明雄
(72)【発明者】
【氏名】五味 正
(72)【発明者】
【氏名】河内山 修
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−025830(JP,A)
【文献】
特開2006−274753(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3029895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/36
F16F 15/04
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の上下端面の各々に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記上部構造体及び下部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、
前記上部構造体の下面に固定された上側アンカープレートと、前記下部構造体の上面に固定された下側アンカープレートと、該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部の各々に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記上側アンカープレート又は前記下側アンカープレートと係合する係合部材とを備え、
該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする積層ゴム体の取付構造。
【請求項2】
上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の上端面に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記上部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、
前記上部構造体の下面に固定されたアンカープレートと、
該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記アンカープレートと係合する係合部材とを備え、
該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする積層ゴム体の取付構造。
【請求項3】
上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の下端面に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記下部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、
前記下部構造体の上面に固定されたアンカープレートと、
該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記アンカープレートと係合する係合部材とを備え、
該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする積層ゴム体の取付構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の積層ゴム体の取付構造を備えることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物及び土木構造物を支持する支承の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物及び土木構造物の支承取付構造、特に、建築構造物における免震構造に用いられる積層ゴム支承体、土木構造物における免震構造及び水平力分散構造に用いられる積層ゴム支承体は、その構造上、圧縮方向には大きな耐力を有し、上部構造物の荷重を支持することができるものの、引張方向の耐力は圧縮方向に比べて劣る。
【0003】
近年、積層ゴム体を用いた免震構造物は、アスペクト比の大きな高層建築物へ適用範囲が広がっている。そのため、このような建築物は、地震時にロッキング等による浮き上りが生じ易いため、該積層ゴム支承体へ鉛直方向の引張力が作用するという問題が生じる。そのため、積層ゴム体にこのような引張力が作用しない免震装置及びその取付構造が求められている。
【0004】
そこで、積層ゴム体への鉛直方向の引張力を低減するため、特許文献1には、皿ばねを介して取付ボルトで連結する構成が開示されている。この構成によれば、大地震時において、上下動による積層ゴム支承体の剥離も生じ得ない荷重が皿ばね等によって軽減される結果、水平動には強固な締結、上下動に対しては緩衝座を介した緩やかな締結という合理的な免震アイソレーターの使用が可能となる。
【0005】
一方、免震装置と上部及び下部構造物との連結部分を、凹部と凸部の嵌合部により構成し、地震時の水平振動に伴う水平力は伝達するが、ロッキング等による上揚力が作用する場合や、水平方向の大変形時に生じる積層ゴム体の回転モーメントによって積層ゴム体に引張力が作用する場合には、前記嵌合部分が離反し、免震装置に鉛直方向の引張力を作用させない技術も知られている。
【0006】
例えば、積層ゴム体と上部及び下部構造物との取付けをダボピン構造で連結すれば、ロッキング等による上揚力が作用する場合、ダボピン構造により上下方向の離反が生じて積層ゴム体への鉛直方向への引張を回避できる。これに加え、大きな水平変形が積層ゴム体に作用し、積層ゴム体の上面と下面の水平方向の相対的なずれが生じ、積層ゴム体に回転モーメントが作用し、該積層ゴム体の取付構造部分へ鉛直方向の引張力が生じても、前記ダボピン構造による接合部の鉛直方向の離反により、このような引張力を回避することができる。そのため、積層ゴム体の損傷や破損を好ましく防止でき、さらに上部構造物の積層ゴム体との取付部分にも過大な入力を作用させないので、上部構造物の損傷も防止できる効果があった。
【0007】
しかし、このような嵌合式の接合方法では、大きな水平変形時には嵌合部分が鉛直方向に離反し、積層ゴム体及び取付構造部分に鉛直方向の引張力が作用しなくなるものの、離反の程度が大きくなると嵌合部分が抜けてしまい、地震時の水平力を伝達できなくなる虞がある。
【0008】
そのため、嵌合部分における離反の程度と水平力の伝達の両面を考慮した場合、嵌合部の抜けを防止し、かつ、水平力を充分伝達するため、例えば、前記ダボピン構造においてはダボピンを長くする必要があり、また、せん断キー(シアキー)を用いた場合においても該せん断キーの厚みを大きくする必要があった。
【0009】
このように、嵌合部分の離反と水平力の伝達の両面を考慮すれば、嵌合部分が配されている積層ゴム体と、上部又は下部構造物との連結部分の各々の厚みは、必然的に大きくなるため、提供する免震装置の高さが高くなり、免震装置を施工する構造物、例えば建築物の基礎部分に免震装置を配する場合、地下ピット部分をその分深くする必要があり、基礎工事の負担となっていた。
【0010】
さらに、積層ゴム体の高さが大きくなると、積層ゴム体の製造に使用される成型用金型そのものが大きくなり、成型用プレス装置も大きな間口を有する装置を使用する必要があるため、製造限界近くの大型の積層ゴム体の設計では、嵌合部分を有して積層ゴム体に鉛直方向の引張力を作用させない構成を備えた装置の提供自体困難な場合がある。
【0011】
上記のように、ダボピン構造やせん断キー構造のように、積層ゴム体側に凹部を形成するような嵌め合い構造を採った場合は勿論、凸部を形成し、相手方に凹部を形成する嵌め合い構造を採った場合においても、水平力の伝達を考慮すれば、積層ゴム体の上下面を厚板にしたり、相手方の鋼板類を厚板にしたりする必要が生じるため、免震装置の高さに関しては、鉛直方向への引張力が作用するものの、フランジ一体として成型した積層ゴム体を取付ボルトで構造物と締結する構成に比較し高くならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本特開平10−110551号公報
【特許文献2】日本特開平4−221142号公報
【特許文献3】日本特開平10−317715号公報
【特許文献4】日本特開平9−256319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記ダボピン構造を採用した具体例として、特許文献2に開示されている免震支持装置の取付構造は、上下部構造に各々取り付けるための上下取付板を具備し、該上下取付板に複数個のダボピンが一体的に備えられ、積層ゴム体の上端と下端の厚肉鋼板には前記ダボピンと係合する係合孔が設けられている。この構造によれば、地震等の外乱が作用した際に、免震装置は水平力を伝達でき、合わせて、免震装置に鉛直方向に引張力が生じないという作用効果があるが、積層ゴム体の上下端にはダボピンと嵌合のための係合孔用に厚肉鋼板を用いなければならず、免震装置の高さ寸法を低く抑えることは難しかった。
【0014】
また、上記せん断キーを採用した具体例として、特許文献3に開示される免震装置は、せん断キーを使用した取付構造とすることで、鉛直方向に大きな引張力が作用した場合にも免震機能を失うことなく、超高層ビルやアスペクト比の非常に大きな構造物にも適用することができる免震機構を提供している。この技術によれば、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位を許容できるので、免震装置に過大な鉛直方向の引張力を作用させないという好ましい効果が得られる。しかし、この免震装置においても、積層ゴム体の上下端にはせん断キーとの係合のための係合孔を設けるために厚肉鋼板を用いなければならず、やはり、免震装置の高さ寸法を低く抑えることは難しかった。
【0015】
さらに、特許文献4には、ゴム支承の高さを低く抑える場合に好適な取付構造として、ゴム支承体の上側剛性プレートと下側剛性プレートに各々上側固定板、下側固定板に形成された凹部と嵌合するように一体的に凸部が形成されている構成が開示されている。この構成によれば、装置の高さを低くできる上に、地震時に建築物のロッキング等により浮き上りが生じても、また、水平方向の大変形時に生じるゴム支承体の回転モーメントによってゴム支承体に引張力が作用しても、嵌合部の離反により、ゴム支承体の損傷や破損を好ましく防止でき、さらに上部構造物の積層ゴム体との取付部分にも過大な入力を作用させないため、上部構造物の損傷も防止できる効果がある。
【0016】
しかし、特許文献4の構成は、嵌合部を直接上部構造物と下部構造物側に設けることにより、装置の高さを低く抑え、嵌合部の離反によりゴム支承への鉛直方向の引張力を好ましく低減できるが、ゴム支承のゴム部分に老化等の不具合が生じたり、また点検等の必要が生じたりして、施工場所からゴム支承を取り出す場合には、上側の嵌合部分の嵌合深さ分だけジャッキ等により上部構造物を上方へ持ち上げる必要があるだけでなく、下側の嵌合部分の嵌合深さ分だけゴム支承体そのものを上方へ持ち上げる必要があり、ゴム支承の取り出し作業やその後の据付作業が非常に煩雑になるという問題がある。
【0017】
また、特許文献2及び特許文献3に開示された構成の積層ゴム体だけの交換を行う場合には、嵌合部分高さだけ上部構造物を持ち上げる必要があるため、積層ゴム体側の嵌合部と嵌め合い部材で連結されている相手側部材とともに、装置を引き出す作業が行われるのが一般的である。例えば、特許文献2においては、上下取付板とともに装置を取り出す作業となり、特許文献3においても上部プレート、下部プレートと一体で装置を取り出す作業となる。
【0018】
そのため、嵌合部を有する取付構造を採用する場合において、積層ゴム体の交換を少ないジャッキアップ量で可能にするためには、積層ゴム体と嵌合部材で連結される取付板等を必要とするために、嵌合部分の抜け出しを防止する程度の厚みが必要であることに加え、装置全体の高さを低くすることが困難となっていた。
【0019】
そこで、本発明は、上記の各問題に鑑み、積層ゴム体に鉛直方向への引張力を作用させず、積層ゴム体の装置高さを低く抑えることができるとともに、積層ゴム体に経年的な不具合が生じ交換作業が必要になった場合においても、少ないジャッキアップ量で交換作業を行うことのできる積層ゴム体の取付構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明は、上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の上下端面の各々に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記上部構造体及び下部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、前記上部構造体の下面に固定された上側アンカープレートと、前記下部構造体の上面に固定された下側アンカープレートと、該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部の各々に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記上側アンカープレート又は前記下側アンカープレートと係合する係合部材とを備え
、該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の上端面に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記上部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、前記上部構造体の下面に固定されたアンカープレートと、該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記アンカープレートと係合する係合部材とを備え
、該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明は、上部構造体と下部構造体との間に介装され、ゴム層と補強板とを交互に積層した積層ゴム部の下端面に、該積層ゴム部の平面形状より大きく、かつ、該積層ゴム部の外縁より外側へ延出する延出部を有するフランジプレートが接合されて形成された積層ゴム体を、前記下部構造体に取り付ける積層ゴム体の取付構造であって、前記下部構造体の上面に固定されたアンカープレートと、該積層ゴム体の前記フランジプレートの延出部に、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位に基づく鉛直方向の力を伝達しないように前記アンカープレートと係合する係合部材とを備え
、該係合部材は、平板状のせん断キーからなり、該平板状せん断キーが、前記フランジプレートの前記アンカープレートと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝と、前記アンカープレートの前記フランジプレートと対面する面側に外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝とを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝に挿入されることを特徴とする。
【0023】
そして、上記各発明によれば、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位を鉛直方向の力を伝達せず許容するように、係合部材によって積層ゴム体が上部構造体又は/及び下部構造体と接合されているので、積層ゴム体に大きな水平変形が生じた際に引き起こされる回転モーメントによる積層ゴム体端部への引張力に対し、積層ゴム体の上側又は/及び下側フランジプレートと、上部構造体又は/及び下部構造体に配されている上側又は/及び下側アンカープレートの当接面が離反できるので、積層ゴム体端部周辺のフランジプレートが上方又は/及び下方に撓むことができ、積層ゴム体、特にゴム層及びゴム層と補強板とを接合している接着層に過大な鉛直方向の引張力が作用しないため、積層ゴム体の損傷、破損の虞を好適に防止することができる。
【0024】
また、上記各発明によれば、水平方向の相対変位に基づく水平力を伝達し、かつ、鉛直方向の相対変位を鉛直方向の力を伝達せず許容するように、係合部材によって積層ゴム体が上部構造体又は/及び下部構造体と接合されているため、上部構造体にロッキングによる浮き上りが生じても、積層ゴム体の上側フランジプレートと上部構造体の下面に配されている上部アンカープレートの当接面、又は/及び下側フランジプレートと下部構造体の上面に配されている下部アンカープレートの当接面が、ロッキングにより生じる鉛直方向の変位を許容するように離反可能となり、合わせて鉛直方向の力を伝達しないために積層ゴム体に過大な鉛直方向の引張力が作用しないので、積層ゴム体の損傷、破損の虞を好適に防止することができる。
【0028】
また、本発明は、構造体であって、上記いずれかの積層ゴム体の取付構造を用いたことを特徴とする。本発明によれば、免震構造物を、施工後に、積層ゴム体の外側から、容易に取り外し可能なせん断キーを具備した積層ゴム体の取付構造を用いた構造体とすることができるので、免震層に配する免震装置の高さを低くすることができる上に、免震構造物のロッキングによる浮き上がりや、積層ゴム体の大きな水平変形で生じる回転モーメントによる積層ゴム体端部の浮き上がりによって生じる積層ゴム体への鉛直方向の引張力を防止でき、さらに、ジャッキアップ量が少ない状態で積層ゴム体の取り外し作業ができるため、積層ゴム体の製造にかかる費用の上昇を押さえられ、積層ゴム体の健全性を高めることができ、さらに、免震構造物の施工費用及び交換作業における手間や費用の低減に大きな効果が得られる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明によれば、積層ゴム体の装置高さを低く抑えながら、積層ゴム体に鉛直方向への引張力が作用することを防止し、積層ゴム体の交換作業を少ないジャッキアップ量で行うこともできる積層ゴム体の取付構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明にかかる積層ゴム体の取付構造の
一実施
の形態を示す
分解斜視図である。
【
図2】
本発明にかかる積層ゴム体の取付構造において係合部の抜け止め部材を設けた場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
図1は、本発明にかかる積層ゴム体の取付構造の一実施の形態を示し、この取付構造61は、積層ゴム体68を、下部構造体63と、上側アンカープレート70Aの上方に位置する上部構造体(不図示)とに取り付けるためのものである。上側アンカープレート70Aは、頭付きスタッド72を介して上部構造体に固定され、下側アンカープレート70Bも、頭付きスタッド(不図示)を介して下部構造体63に固定される。
【0051】
積層ゴム体68は、
ゴム層(不図示)と補強板(不図示)とを交互に積層した積層ゴム部64を備え、上下端面の各々にフランジプレート66(66A、66B)が接合される。フランジプレート66は、平面視円形で積層ゴム部64の平面形状より大きく、かつ、積層ゴム部64の外縁より外側へ延出する延出部66aを有する。
【0052】
この取付構造61は、上側フランジプレート66Aの上側アンカープレート70Aと対面する面側の外縁から中心方向へ伸びて設けられた凹溝71aと、上側アンカープレート70Aの上側フランジプレート66Aと対面する面側の外縁から中心方向に伸びて設けられた凹溝71bとを対峙させるようにして設けたせん断キー挿入溝71を備える。せん断キー挿入溝71は、積層ゴム体68の平面視において、中心位置から放射状に複数個所に配される。このせん断キー挿入溝71の各々に平板状のせん断キー74が挿入される。
【0053】
また、下側フランジプレート66Bと下側アンカープレート70Bとの間にも、凹溝71a、71bからなるせん断キー挿入溝71が形成され、各々のせん断キー挿入溝71にせん断キー74が挿入される。
【0054】
この構成によれば、地震等の外乱がいずれの方向から作用しても、せん断キー挿入溝71によって好ましく水平力を伝達できる上に、上側アンカープレート70A、下側フランジプレート66Bに上下方向に浮き上り等が生じた場合においても、フランジプレート66とアンカープレート70とが離反可能となるため、好ましく積層ゴム体68に作用する引張力を防止することができる。
【0055】
尚、図示を省略するが、平板状のせん断キー74を用いる前記構成を採る場合、せん断キー74の一方の端部をR形状にして挿入側として使用し、他方の端部に抜き出す際の作業性を考慮し、ねじ孔加工を施してもよい。また、せん断キー74の外面に潤滑層を配し、鉛直方向への離反を容易に行うことができるように構成することができ、潤滑層としては、せん断キー12の場合と同様に、二硫化モリブデンを含む防錆潤滑剤焼付皮膜層や、DLC層を用いることができる。また、潤滑層に代えて、せん断キー74の外面にフッ素樹脂等からなる樹脂シートを巻き付けてもよい。また、前記平板状のせん断キーを、複数のくさび状部材を用いてせん断キーの大きさを調整する構成とすることもでき、凹溝との隙間を好ましい値に設定することができる。
【0056】
さらに、上
記実施形態において、せん断キー
74の抜けの程度を考慮し、積層ゴム体
68への引張力が積層ゴム体
68の健全性に影響しない範囲で、抜け止め部材を別途具備した構成とすることもできる。抜け止め部材としては、図
2に示すように、アンカープレート
70A側に雌ねじ部
70A’を設け、フランジプレート
66A側には雌ねじ部
70A’の位置に貫通穴
66A’を設け、一方の端部側の先端から所定の長さだけ雌ねじ部
70A’と螺合する雄ねじ部80aを有し、他方の端部側にはフランジプレートが所定の量だけ浮き上がった際に当接する頭部80bを有する六角ボルト80等を用いることができる。
【0057】
そして、六角ボルト80には、アンカープレート
70Aの浮き上がり時に直接フランジプレート
66Aと六角ボルト80の頭部80bとが当接しないように、ゴム座金81等の弾性部材を配することができ、ゴム座金81によって両者
66A、80bが当接する際の衝撃を好ましく防止することができる。
【0058】
また、上記取付構
造61を適用することで、免震構造物を、施工後に、積層ゴム体
64の外側から、容易に取り外し可能なせん断キー
74を具備した積層ゴム体
64の取付構
造61を用いた構造体とすることができるので、免震層に配する免震装置の高さを低くすることができる上に、免震構造物のロッキングによる浮き上がりや、積層ゴム体
64の大きな水平変形で生じる回転モーメントによる積層ゴム体
64の端部の浮き上がりによって生じる積層ゴム体
64への鉛直方向の引張力を防止でき、さらに、ジャッキアップ量が少ない状態で積層ゴム体
64の取り外し作業ができるため、積層ゴム体
64の製造に関わる費用の上昇を抑えることができ、積層ゴム体
64の健全性を高めることができ、さらに、免震構造物の施工費用及び交換作業における手間や費用の低減に大きな効果が得られる。
【符号の説明】
【0059】
61 取付構造
63 下部構造体
64 積層ゴム部
66(66A、66B) フランジプレート
66a 延出部
66A’ 貫通穴
68 積層ゴム体
70(70A、70B) アンカープレート
70A’ 雌ねじ部
71 せん断キー挿入溝
71a 凹溝
71b 凹溝
72 頭付きスタッド
74 せん断キ
ー
80 六角ボルト
80a 雄ねじ部
80b 頭部
81 ゴム座金