【実施例】
【0012】
<1>前提条件
本発明の探査装置、探査方法は
図1に示すように既設のシールドトンネルなどに接近して新たにシールド掘進機で掘進を行う場合に採用する装置、方法である。
図では既設の構造物としてシールドトンネルを例に説明するが、掘進中のシールド掘進機に隣接する駅舎、地下街、その他の地下構造物を対象として利用することができる。
【0013】
<2>音波発信器
シールド掘進機の外郭には、2か所に音波発信器を設置する。
この音波発信器から地中に向けて音波を発信することができる。
音波は土の中では大きな減衰を受けて、特に周波数が高いほど伝わりにくいと考えられている。
しかし実際には地中には地下水に満たされているから、完全な水中ほどではなくとも遠方まで伝播してゆく。
この音波発信器は、シールド掘進機において、想定される隣接地下構造物の存在する側に設置する。
音波発信器としては、土中での音波位置測定では低周波で大出力,かつ高耐圧(水圧)の音波発信器であることが好ましい。
そのためにマグネチック型で、深度100mの土中で探査距離100m以上の地点でも受信波形が明瞭に認識できるようなマグネチック駆動部を強化した製品が開発されているので、そのような機種を利用する。
【0014】
<3>音波受信器
シールド掘進機の外郭にはさらに2か所に音波受信器を設置する。
その位置も音波発信器と同様に想定される隣接地下構造物の側であり、図の実施例では前記の2か所の音波発信器よりも、外郭面で上下に離れた位置に設置してある。
この音波受信器は、前記した2か所の音波発信器から発信した音波を、2か所の音波受信器で受信するための装置である。
この音波受信器としては、例えばセラミック型、あるいがマグネチック型の受信機を採用することができる。
特に市販されているセラミック型のハイドロフォンを防護した構造のものが、あるいはマグネチック型では発振器に準じた材質と構造のものが開発されており、それらの音波受信器では、深度100mでも受信可能である。
【0015】
<4>アンプ
音波発信器の発信アンプ、および受信アンプは発振器,受信器に接続するための専用の発信アンプ、受信アンプを利用する。
発信アンプとしては,本システムで使用する発信器に合わせて,周波数0.5kHz〜16kHz,最大出力振幅電圧±25V,最大出力電流10A,遅延時間40μS 以下、波形歪みの少ない直線増幅器を利用することができる。
【0016】
<5>探査方法
次に上記の装置を使用して行う、隣接地下構造物の探査方法について説明する。
【0017】
<6>音波の発受信(
図3)
上記の探査装置の音波発信器の内で、
図3に示すように、音波発信器1から音波を発信する。
この音波は、隣接地下構造物のどこかに衝突して2か所の音波受信器、すなわち音波受信器1と音波受信器2に到達する。
そうすれば各音波受信器ごとに発信時から受信時までの時間差、すなわち音波発信器1から隣接地下構造物に到達するまでの時間と、隣接地下構造物から音波受信器1、音波受信器2へ到達するまでの合計時間が分かる。
この時間に仮定した土中音速を掛けると、音波の往復の合計距離を出すことができる。
仮定した土中音速とは、まだその地盤での実際の土中音速が分かっていないためである。
【0018】
<7>第1の楕円の作図(
図4)
まず音波発信器1と音波受信器1との関係から、第1の楕円を作図する。
楕円とは、平面上のある2定点である焦点からの距離の和が一定となるような点の集合から作られる曲線である。
そこで音波発信器1と音波受信器1とを焦点とすれば、
図4で1a+1b=1c+1d=「音波の往復の合計距離」であるから、それらの点の集合を作れば第1の楕円を描くことができる。
ただしこの段階では、土中音速が仮定の数値であるから、第1の楕円は既設のトンネルの外面の位置を無視して勝手に描いた楕円である。
【0019】
<8>第2の楕円の作図(
図5)
音波発信器1から発信した音波は、音波受信器2にも到達している。
そこで前記と同様に音波発信器1と音波受信器2を焦点とし、1e+1d=1g+1hの点の集合を作れば第2の楕円を描くことができる。
この第2の楕円もまた土中音速が仮定の数値であるから、第1の楕円は既設のトンネルの外面の位置を無視して勝手に描いた楕円である。
【0020】
<9>第3、4の楕円の作図(
図6)
次に音波発信器2から音波を発信し、音波受信器1、音波受信器2を利用して上記と同様に第3、4の楕円の作図を行う。
これらもすべて既設のトンネルの外面の位置を無視して勝手に描いた楕円である。
【0021】
<10>土中音速の調整(
図7)
隣接地下構造物が円形のシールドトンネルである場合、その外面の曲率は分かっている。
そこで上記の4つの楕円、少なくとも3つの楕円において、仮定した土中音速を変更して楕円の形状を変えてゆく。
するとある土中音速において、少なくとも前記の3つの楕円に外接する円の曲率が、隣接するシールドトンネルの外側面の曲率と一致する値を見つけることができる。
その結果、掘進中のシールド掘進機と隣接するシールドトンネルとの距離を求めることができる。
【0022】
<11>土中音速の別途計測
隣接地下構造物が円形のシールドトンネルではなく、地下の駅舎や地下街の外壁である場合にも本発明の探査方法を利用することができる。
その場合には別に土中音速を計測する。
その土中音速を使用して音波発信器から音波受信器までの音波の往復の距離から楕円を作図する。
すると曲率が無限大の鉛直壁面に外接する4つの楕円を作図することができるから、両者間の距離を求めることができる。