(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プロピレン単独重合体部およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部からなり、且つ下記要件(1)〜(3)を満足する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)60〜97重量%と、プロピレン単独重合体部およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部からなり、且つ下記要件(4)〜(6)を満足する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)3〜40重量%とからなるポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、エチレン系エラストマー(B)1〜100重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
要件(1):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が30〜400g/10分である。
要件(2):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が5〜34重量%である。
要件(3):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が1〜4dl/gである。
要件(4):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜50g/10分である。
要件(5):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が35〜65重量%である。
要件(6):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が4〜7dl/gである。
前記ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、さらに、プロピレン単独重合体部およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部からなり、且つ下記要件(7)〜(9)を満足する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)1〜100重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
要件(7):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が100〜400g/10分である。
要件(8):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が5〜20重量%である。
要件(9):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が7〜12dl/gである。
前記ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、さらに、無機フィラー(C)1〜100重量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、特定の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と、特定の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)とからなるポリプロピレン系樹脂(A)に、或いは、所望により、ポリプロピレン系樹脂(A)に加えて、さらに、特定の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)に、エラストマー(B)を特定量含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いてなる成形体である。
以下、ポリプロピレン系樹脂組成物の各構成成分、およびその成形体などについて、項目毎に、詳細に説明する。
【0015】
I.ポリプロピレン系樹脂組成物の各構成成分
1.結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、プロピレン単独重合体部と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部からなる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、下記要件(1)〜(3)を満足し、さらに、好ましくは下記の特性(i)〜(ii)を有して、ポリプロピレン系樹脂組成物において、高度の成形性(高流動性)や、衝撃強度を中心とした高い物性バランスを発現する特徴を有する。
要件(1):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が30〜400g/10分である。
要件(2):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が5〜34重量%である。
要件(3):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が1〜4dl/gである。
特性(i):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(ii):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が20〜200g/10分である。
【0016】
(1)製造
本発明で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。重合方法としては、従来公知の方法がいずれも採用できる。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、プロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部の重合(前段)と、この後に続く、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合(後段)の製造工程により得られる。
プロピレン単独重合体部は、水素共存下、1段又は2段以上(各段の反応条件は同一又は異なる)の重合工程で製造され、エチレン・プロピレンランダム共重合体部も、1段又は2段以上(各段の反応条件は同一又は異なる)の重合工程で製造される。そのため、本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の全製造工程は、少なくとも2段の逐次の多段重合工程となる。
【0017】
上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報参照。)が使用できる。チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば、特開昭47−34478号公報、特開昭58−23806号公報、特開昭63−146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−5310号公報、特開昭61−218606号公報参照。)等が含まれる。
また、助触媒として使用される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
【0018】
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部をバルク重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部をバルク重合、続いて気相重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部は、気相重合で行う方法などが挙げられる。
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
【0019】
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合においては、プロピレン単独重合体部の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレンの分圧0.6〜4.2MPa、好ましくは1.0〜3.5MPa、特に好ましくは1.5〜3.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間で行う。プロピレン単独重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は7重量%以下のエチレンが共重合されていても構わない。
本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のプロピレン単独重合体部のMFRは、30〜400g/10分の範囲としており、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素は、水素/プロピレン比で5×10
−3〜0.2で行う。
【0020】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部の存在下、後段重合工程で、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に0〜100℃、好ましくは30〜90℃、特に好ましくは40〜80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.5〜2.0MPa、滞留時間は0.5〜10時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を製造し、最終的な生成物として、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)を得る。エチレン・プロピレンランダム共重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が比較的低いことを特徴とするため、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的高い濃度に調整し、[η]をコントロールする必要がある。具体的には、水素/(プロピレン+エチレン)比で、0.01〜0.8で行う。また、エチレン・プロピレンランダム共重合体部(ゴム成分)中のエチレン含量を特定の範囲内に維持するため、後段のプロピレン濃度に対するエチレン濃度を調整する。
さらに、ゲル発生やベタツキを抑えるために、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の反応中あるいは反応前に、エタノールなどのアルコール類を添加することが望ましい。具体的には、アルコール類/有機アルミニウム化合物の比で、0.5〜3.0モル比の条件で行う。また、このアルコール類の添加量で結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合も、コントロールすることができる。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
【0021】
(2)要件(1)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のプロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、30〜400g/10分、好ましくは60〜300g/10分、さらに好ましくは130〜250g/10分である。MFRが30g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)、成形外観(ウェルド外観とフローマーク外観)が低下し、400g/10分を超えると、成形体の衝撃強度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のプロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程において、水素/プロピレン比をコントロールすれば良い。
【0022】
(3)要件(2)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合は、5〜34重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは15〜30重量%である。ブロック共重合体全体に対する割合が5重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下し、34重量%を超えると、成形体の剛性や成形外観(ウェルド外観とフローマーク外観)が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、アルコール類/有機アルミニウム化合物のモル比を、コントロールすれば良い。
【0023】
(4)要件(3)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]は、1〜4dl/gであり、好ましくは2〜4dl/gである。固有粘度[η]が1dl/g未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形外観(フローマーク外観)が低下し、一方、4dl/gを超えると、成形外観(ウェルド外観)が低下し、それぞれ不適である。なお、固有粘度[η]は、ウベローデ型粘度計を用いて測定する値である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程において、水素/(プロピレン+エチレン)比をコントロールすれば良い。
【0024】
(5)その他の特性について
本発明で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)は、下記の特性を有していることが望ましい。
特性(i):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(ii):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が20〜200g/10分である。
【0025】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量は、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。エチレン含量が20重量%未満、或いは、50重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下する傾向があり、それぞれ不適である。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは20〜200g/10分、より好ましくは40〜180g/10分、さらに好ましくは60〜160g/10分である。ブロック共重合体全体のMFRが20g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)、成形外観(ウェルド外観とフローマーク外観)が低下し、一方、200g/10分を超えると、衝撃強度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)全体のMFRは、プロピレン単独重合体部のMFR、エチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度、および結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合によって、決定される。本発明に使用される結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)では、これら3つの条件の内、2つの条件が、要件(1)及び要件(2)として規定されているので、残るエチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度を適宜選択することにより、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)全体のMFRを調整することができる。
なお、MFR、エチレン含量、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の含量は、MFR計、CFC分別装置、フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する値である。測定条件は実施例で後述する。
【0026】
(6)配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と、次に記載する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)との合計、すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)を100重量%とすると、成分(A−1)の配合割合は、60〜97重量%、好ましくは65〜95重量%、特に好ましくは70〜94重量%である。言い換えると、成分(A−2)の配合割合は、3〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは6〜30重量%である。成分(A−1)の配合割合が、60重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)や成形外観(ウェルド外観)が低下し、97重量%を超えると、成形外観(フローマーク外観)が低下し、それぞれ不適である。
なお、成分(A−1)は、前述の要件の範囲内であれば、二種以上併用してもよい。
【0027】
2.結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、プロピレン単独重合体部と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部からなる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、下記要件(4)〜(6)を満足し、さらに、好ましくは下記の特性(iii)〜(iv)を有して、ポリプロピレン系樹脂組成物において、フローマーク外観やウェルド外観を中心とした良好な成形外観や衝撃強度を発現する特徴を有する。
要件(4):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が1〜50g/10分である。
要件(5):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が35〜65重量%である。
要件(6):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が4〜7dl/gである。
特性(iii):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(iv):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜40g/10分である。
【0028】
(1)製造
本発明で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。重合方法としては、従来公知の方法がいずれも採用できる。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、プロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部の重合(前段)と、この後に続く、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合(後段)の製造工程により得られる。
【0029】
上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報参照。)が使用できる。結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、比較的、エチレン・プロピレンランダム共重合体の分子量が高く、高粘度であることを特長とするため、一般的に重合時連鎖移動の少ないチーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478号公報、特開昭58−23806号公報、特開昭63−146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−5310号公報、特開昭61−218606号公報参照。)等が含まれる。
また、助触媒として使用される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
【0030】
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部をバルク重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部をバルク重合、続いて気相重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部は、気相重合で行う方法などが挙げられる。本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、プロピレン・エチレンランダム共重合体部の割合が高いことを特徴とするため、触媒活性をエチレン・プロピレンランダム共重合体部まで維持し易く、パウダー粒子からエチレン・プロピレンランダム共重合体部が溶出し難い気相重合で行うのが好ましい。
【0031】
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合においては、プロピレン単独重合体部の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度40〜90℃、プロピレンの分圧1.5〜3.0MPa、滞留時間は0.5〜6時間で行う。後段のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の製造に、触媒活性を維持させるため、低活性になるような条件が好ましく、具体的には、温度50〜70℃、プロピレンの分圧1.5〜1.8MPa、滞留時間2〜4時間で行うのが好ましい。プロピレン単独重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は7重量%以下のエチレンが共重合されていても構わない。
本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のプロピレン単独重合体部のMFRは、1〜50g/10分の範囲としており、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素は、水素/プロピレン比で10
−3〜5×10
−24で行う。
【0032】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部の存在下、後段重合工程で、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に、40〜90℃、好ましくは50〜80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.5〜2.0MPa、滞留時間は0.5〜6時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を製造し、最終的な生成物として、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)を得る。エチレン・プロピレンランダム共重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が比較的高いことを特徴とするため、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的低い濃度に調整し、[η]をコントロールする必要がある。具体的には、水素/(プロピレン+エチレン)比で、10
−4〜0.01で行う。また、エチレン・プロピレンランダム共重合体部(ゴム成分)中のエチレン含量を特定の範囲内に維持するため、後段のプロピレン濃度に対するエチレン濃度を調整する。
さらに、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の反応中あるいは反応前に、エタノールなどのアルコール類を添加することが望ましい。結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)においては、プロピレン・エチレンランダム共重合体部の割合が高いことに特徴があるため、パウダー粒子からエチレン・プロピレンランダム共重合体部が溶出し、べたつきの問題や、先述したゲルが発生することが多い。アルコール類を一定量添加することで、このパウダーべたつきや、ゲルを抑制する効果があるため、なるべくアルコール類を多く装入し、パウダー性状、ゲルをコントロールする必要がある。具体的には、アルコール類/有機アルミニウム化合物の比で、0.5〜2.0モル比、好ましくは1.0〜1.5モル比の条件で行う。また、このアルコール類の添加量で結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合も、コントロールすることができる。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
【0033】
(2)要件(4)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のプロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、1〜50g/10分、好ましくは10〜40g/10分、さらに好ましくは20〜30g/10分である。MFRが1g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(流動性)が低下し、50g/10分を超えると、成形体の引張伸度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のプロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程において、水素/プロピレン比をコントロールすれば良い。
【0034】
(3)要件(5)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合は、35〜65重量%、好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜60重量%である。ブロック共重合体全体に対する割合が35重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下し、65重量%を超えると、成形体の剛性や成形性(流動性)が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、アルコール類/有機アルミニウム化合物のモル比をコントロールすれば良い。
【0035】
(4)要件(6)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]は、4〜7dl/gであり、好ましくは4〜6.5dl/gである。固有粘度[η]が4dl/g未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形外観(フローマーク外観)が低下し、一方、7dl/gを超えると、成形外観(ウェルド外観)や成形性(流動性)が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程において、水素/(プロピレン+エチレン)比をコントロールすれば良い。
【0036】
(5)その他の特性について
本発明で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)は、下記の特性を有していることが望ましい。
特性(iii):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(iv):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5〜40g/10分である。
【0037】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量は、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜50重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。エチレン含量が20重量%未満、或いは、50重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下する傾向があり、それぞれ不適である。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜40g/10分、より好ましくは0.5〜30g/10分、さらに好ましくは0.7〜20g/10分である。ブロック共重合体全体のMFRが0.5g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)、成形外観(ウェルド外観とフローマーク外観)が低下し、一方、40g/10分を超えると、引張伸度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)全体のMFRは、プロピレン単独重合体部のMFR、エチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度、および結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合によって、決定される。本発明に使用される結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)では、これら3つの条件の内、2つの条件が、要件(4)及び要件(5)として規定されているので、残るエチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度を適宜選択することにより、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)全体のMFRを調整することができる。
【0038】
(6)配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)と、前記の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)との合計、すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)を100重量%とすると、成分(A−2)の配合割合は、3〜40重量%、好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは6〜30重量%である。言い換えると、成分(A−1)の配合割合は、60〜97重量%、好ましくは65〜95重量%、特に好ましくは70〜94重量%である。成分(A−2)の配合割合が、3重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形外観(フローマーク外観)が低下し、40重量%を超えると、成形性(高流動性)や成形外観(ウェルド外観)が低下し、それぞれ不適である。
なお、成分(A−2)は、前述の要件の範囲内であれば、二種以上併用してもよい。
【0039】
3.結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、所望により、用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、プロピレン単独重合体部と、エチレン・プロピレンランダム共重合体部からなる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、下記要件(7)〜(9)を満足し、さらに、好ましくは下記の特性(v)〜(vi)を有して、ポリプロピレン系樹脂組成物において、高度の成形性(高流動性)や成形体の剛性、フローマーク外観を中心とした良好な成形外観を発現する特徴を有する。
要件(7):プロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)が100〜400g/10分である。
要件(8):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合が5〜20重量%である。
要件(9):エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が7〜12dl/gである。
特性(v):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(vi):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が40〜200g/10分である。
【0040】
(1)製造
本発明で用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。重合方法としては、従来公知の方法がいずれも採用できる。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、プロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体部の重合(前段)と、この後に続く、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合(後段)の製造工程により得られる。
【0041】
上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報参照。)が使用できる。結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、エチレン・プロピレンランダム共重合体の分子量が高く、高粘度であることを特長とするため、一般的に重合時連鎖移動の少ないチーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。
チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478号公報、特開昭58−23806号公報、特開昭63−146906号公報参照。)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808号公報、特開昭58−83006号公報、特開昭58−5310号公報、特開昭61−218606号公報参照。)等が含まれる。
また、助触媒として使用される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
【0042】
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部をバルク重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部をバルク重合、続いて気相重合で行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部は、気相重合で行う方法などが挙げられる。本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、プロピレン単独重合体部のMFRが高いことを特徴とするため、高水素濃度での運転が可能なスラリー重合、または気相重合で行うのが好ましい。
【0043】
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
気相重合においては、プロピレン単独重合体部の重合工程は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、温度50〜100℃、好ましくは70〜90℃、プロピレンの分圧1.5〜3.0MPa、好ましくは1.5〜2.5MPaの条件で、滞留時間は0.5〜6時間、好ましくは2〜4時間で行う。プロピレン単独重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα−オレフィン、例えばα−オレフィンがエチレンの場合は7重量%以下のエチレンが共重合されていても構わない。
本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、プロピレン単独重合体部のMFRが高いことを特徴とするため、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的高い濃度に調整し、コントロールする必要がある。具体的には、水素/プロピレン比で0.04〜0.2で行う。
【0044】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体部の存在下、後段重合工程で、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に、40〜90℃、好ましくは50〜80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1〜2.0MPa、好ましくは0.1〜1.5MPa、滞留時間は0.5〜6時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、エチレン・プロピレンランダム共重合体部を製造し、最終的な生成物として、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)を得る。エチレン・プロピレンランダム共重合体部には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα−オレフィンが共重合されていても構わない。
また、本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)においては、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]が高いことを特徴とするため、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素をなるべく低い濃度に調整し、[η]をコントロールする必要がある。具体的には、水素/(プロピレン+エチレン)比で、10
−5〜10
−4で行う。また、エチレン・プロピレンランダム共重合体部(ゴム成分)中のエチレン含量を特定の範囲内に維持するため、後段のプロピレン濃度に対するエチレン濃度を調整する。
エチレン・プロピレンランダム共重合体部の反応中あるいは反応前に、エタノールなどのアルコール類を添加することが望ましい。本発明の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)においては、プロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFR格差(粘度格差)が大きいことに特徴があるため、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の分散不良であるゲルが発生することが多い。アルコール類を一定量添加することで、このゲルを抑制する効果があるため、なるべくアルコール類を多く装入し、ゲルをコントロールする必要がある。具体的には、アルコール類/有機アルミニウム化合物の比で、0.5〜2.0モル比、好ましくは1.0〜1.5モル比の条件で行う。また、このアルコール類の添加量で結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)中のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合も、コントロールすることができる。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものを用いることもできる。
【0045】
(2)要件(7)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のプロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、100〜400g/10分、好ましくは120〜350g/10分、さらに好ましくは140〜300g/10分である。MFRが100g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)、成形外観(ウェルド外観とフローマーク外観)が低下し、400g/10分を超えると、成形体の衝撃強度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のプロピレン単独重合体部のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程において、水素/プロピレン比をコントロールすれば良い。
【0046】
(3)要件(8)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合は、5〜20重量%、好ましくは6〜20重量%、さらに好ましくは7〜15重量%である。ブロック共重合体全体に対する割合が5重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下し、20重量%を超えると、成形体の剛性や成形外観(ウェルド外観)が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体全体に対する割合を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、プロピレン単独重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、及びエチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程における圧力、温度、滞留時間、アルコール類/有機アルミニウム化合物のモル比をコントロールすれば良い。
【0047】
(4)要件(9)について
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]は、7〜12dl/gであり、好ましくは7〜10dl/gである。固有粘度[η]が7dl/g未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形外観(フローマーク外観)が低下し、一方、12dl/gを超えると、成形体の成形外観(ウェルド外観)が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]を上述規定の範囲にするためには、前記の通り、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の重合工程において、水素/(プロピレン+エチレン)比をコントロールすれば良い。
【0048】
(5)その他の特性について
本発明で、所望により、用いられる結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)は、下記の特性を有していることが望ましい。
特性(v):エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量が20〜50重量%である。
特性(vi):結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が40〜200g/10分である。
【0049】
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量は、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜50重量%、さらに好ましくは30〜50重量%である。エチレン含量が20重量%未満、或いは、50重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下する傾向があり、それぞれ不適である。
また、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは40〜200g/10分、より好ましくは60〜200g/10分、さらに好ましくは80〜190g/10分である。ブロック共重合体全体のMFRが40g/10分未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)、成形外観(フローマーク外観)が低下し、一方、200g/10分を超えると、衝撃強度が低下し、それぞれ不適である。
結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)全体のMFRは、プロピレン単独重合体部のMFR、エチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度、および結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)のエチレン・プロピレンランダム共重合体部の割合によって、決定される。本発明に使用される結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)では、これら3つの条件の内、2つの条件が、要件(7)及び要件(8)として規定されているので、残るエチレン・プロピレンランダム共重合体部のMFRや固有粘度を適宜選択することにより、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)全体のMFRを調整することができる。
【0050】
(6)配合量比
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−3)の配合割合は、前記の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)の合計、すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜95重量部、特に好ましくは15〜90重量部である。成分(A−3)の配合割合が、1重量部未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の成形性(高流動性)が低下し、一方、100重量部を超えると、成形外観(ウェルド外観)が低下し、それぞれ不適である。
なお、成分(A−3)は、前述の要件の範囲内であれば、二種以上併用してもよい。
【0051】
4.エラストマー(B)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、エラストマー(B)として、特に制限されないが、特にエチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーが好ましく用いられる。
エチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合エラストマー(EPR)、エチレン・ブテン共重合エラストマー(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合エラストマー(EHR)、エチレン・オクテン共重合エラストマー(EOR)等のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー;エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・イソプレン共重合体エラストマー等のエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー(EPDM);スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体(SBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)等のスチレン系エラストマー等が挙げられる。
なお、上記したスチレン・ブタジエン・スチレントリブロック体の水素添加物は、ポリマー主鎖をモノマー単位で見ると、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンとなるので、通常、SEBSと略称されるものである。
また、これらのエチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーは、2種類以上を混合して使用することができる。
【0052】
上記エチレン・α―オレフィン共重合体エラストマーは、各モノマーを触媒の存在下重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウムーマグネシウム錯体、のような有機アルミニウムーマグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO−91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒を使用することができる。
重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセスを適用して重合することができる。市販品を例示すれば、ジェイエスアール社製EDシリーズ、三井化学社製タフマーPシリーズ及びタフマーAシリーズ、デュポンダウ社製エンゲージEGシリーズ、旭化成社製タフテックHシリーズなどを挙げることができ、これらは、いずれも本発明において使用することができる。
【0053】
ここで、上記スチレン系エラストマーにおけるトリブロック共重合体の水素添加物(SEBS、SEPS)の製造法の概要を述べる。これらのトリブロック共重合体は、一般的なアニオンリビング重合法で製造することができ、逐次的にスチレン、ブタジエン、スチレンを重合しトリブロック体を製造した後に、水添する方法(SEBSの製造法)と、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体をはじめに製造した後、カップリング剤を用いてトリブロック体に、水添する方法がある。また、ブタジエンの代わりにイソプレンを用いることによってスチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)も同様に製造することができる。
【0054】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いるエチレン系エラストマー又はスチレン系エラストマーのMFR(230℃、2.16kg荷重で測定)は、0.5〜150g/10分が好ましく、より好ましくは0.7〜150g/10分、特に好ましくは0.7〜80g/10分である。
【0055】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、エラストマー(B)の配合割合は、前記の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)の合計、すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは10〜60重量部である。エラストマー(B)の配合割合が、1重量部未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の衝撃強度が低下し、一方、100重量部を超えると、成形性(流動性)が低下し、それぞれ不適である。
【0056】
5.無機フィラー(C)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物において、必要に応じて、配合される無機フィラー(C)は、タルク、ワラストナイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、カーボンファイバー、クレイ、有機化クレイ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などが例として挙げられ、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の剛性を中心とした物性バランスの向上や寸法安定性の向上などの目的で用いられる。これらの成分(C)は、表面処理されたものでもよく、また、二種以上併用してもよい。
【0057】
なかでもタルクが好ましく、タルクは、剛性の向上、成形体の寸法安定性およびその調整等に有効である。そのタルクは、平均粒径が1.5μm〜15μmのものが好ましく、2〜8μmのものが特に好ましい。タルクの平均粒径が1.5μm未満であると凝集して成形体外観が低下し、15μmを超えると衝撃強度が低下するので好ましくない。
該タルクは、例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、更にジェットミルなどで粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する等の方法で製造する。
【0058】
タルクは、各種金属石鹸や界面活性剤などで化学的または物理的に表面処理したものでも良く、さらに、見かけ比容を2.50ml/g以下にしたいわゆる圧縮タルクを用いても良い。上記タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計を用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所LA−920型が測定精度において優れているので好ましい。
タルクは、平均アスペクト比が4以上、特に5以上のものがより好ましい。該タルクのアスペクト比の測定は、顕微鏡等により測定された値より求められる。
【0059】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で必要に応じて配合される無機フィラー(C)の配合割合は、前記の結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−1)と結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体(A−2)の合計、すなわち、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは7〜60重量部である。無機フィラー(C)の配合割合が、1重量部未満であると、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の剛性が低下し、一方、100重量部を超えると、成形性(流動性)が低下し、それぞれ不適である。
【0060】
6.付加成分
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、さらに必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、或いは更に性能の向上を図るために、上記成分(A)〜(C)以外に、以下に示す任意の添加剤や配合材成分を配合することができる。
具体的には、帯電防止剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、発泡剤、着色顔料、酸化防止剤、核剤、中和剤、金属不活性剤、抗菌剤、防黴剤、蛍光増白剤、難燃剤、分散剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、可塑剤、上記成分(A)〜(C)以外のポリエチレン等の各種樹脂、各種有機フィラー等の配合材を挙げることができる。
【0061】
帯電防止剤、例えば、非イオン系、カチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の帯電防止性の付与・向上に有効である。具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアマイド、アルキルジエタノールアミンエステル、テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0062】
滑剤、例えば、脂肪酸アミド系、炭化水素系などの滑剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体のスリップ性、耐傷付性の付与・向上に有効である。具体例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0063】
光安定剤や紫外線吸収剤、例えばヒンダードアミン化合物、ベンゾエート化合物系、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の耐候性の付与・向上に有効である。
具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの縮合物;テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケート等が挙げられ、ベンゾエート系化合物系としては2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート;n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられ、ベンゾフェノン系としては2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0064】
発泡剤は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の軽量化や、剛性、寸法特性の向上等に有効である。具体的には、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボン酸バリウム、ヒドラゾジカルボンアミド、炭酸ガス、窒素ガス、ブタン等が挙げられる。
【0065】
II.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造、成形
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)と付加成分を、上記配合割合で配合して、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダ−プラストグラフ、ニーダー等通常の混練機を用いて混練・造粒することによって製造する。
【0066】
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが望ましく、通常は、二軸押出機を用いて混練・造粒する。この混練・造粒の際には、上記成分(A)〜(C)と付加成分の配合物を同時に混練しても良く、また、性能向上を図るべく各成分を分割、例えば、先ず成分(A)と成分(B)の一部または全部を混練し、その後に残りの成分を混練・造粒することもできる。
【0067】
ポリプロピレン系樹脂組成物の成形は、射出成形法(ガス射出成形も含む)または射出圧縮成形法(プレスインジェクション、ホットフロースタンピング成形、ガス射出圧縮成形も含む)にて、成形することによって、それらの成形体を得ることができる。
中でも、射出成形に用いて成形体とするのに適しているが、射出成形、射出圧縮成形技術と、いわゆる発泡成形技術や膨張成形技術との組合せで、所望の成形体を得ることもできる。
また、必要に応じて、中空成形、押出成形、圧縮(プレス)成形、発泡(膨張)成形、シート成形、熱成形、スタンピング成形、粉末成形など種々の成形方法にて、各成形体を得ることもできる。
【0068】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体の用途としては、自動車部品、テレビ等の家電機器製品の部品等を含む工業部品分野に於ける各種成形体、好ましくは自動車部品、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、ピラー、バンパー、ドアプロテクター、サイドプロテクター、サイドモール等が挙げられ、とりわけバンパーなどの自動車外装部品成形体が好ましい用途である。
【実施例】
【0069】
本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた物性測定法及び用いた樹脂等は、以下の通りである。
【0070】
1.物性測定、評価方法、分析方法
(1)MFR(メルトフローレート):
JIS K7210の条件M(試験温度:230℃、荷重:2.16kg)に準拠して測定した。
(2)比重:
JIS K7112に準拠して測定した。
(3)曲げ試験:
JIS K7171に準拠し、測定温度23℃で曲げ弾性率と強度を測定した。
(4)引張り試験:
JIS K7161,2に準拠し、測定温度23℃で降伏点応力、破断点応力と伸びを測定した。
(5)シャルピー衝撃強度(ノッチ付):
JIS K7111に準拠し、測定温度23、−20、−30℃で測定した。
(6)デユロメータ硬度:
JIS K7215に準拠して測定温度23℃で測定した(Dスケール)。
(7)光沢度:
成形品表面の60°鏡面光沢度をJIS Z8741に規定された方法に基づき測定した。
(8)荷重たわみ温度(HDT、単位:℃):
JIS K7191に準拠して、0.45MPaの荷重で測定した。
【0071】
(9)フローマーク外観:
型締め圧170トンの射出成形機で、短辺に幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて、350mm×100mm×2mmtなる成形シートを成形温度220℃で射出成形する。フローマークの発生を目視で観察し、ゲートからフローマークが発生した部分までの距離を測定する。この場合、比較的大型の自動車部品なかでも外装部品分野で高い外観実用性に富むと判断できるレベルは260mm以上である。350mmを超える場合は、さらなる大型の同部品分野に適用できると、判断される(フローマーク発生距離が長いほど、フローマーク外観は良好。)。
・判断基準(フローマーク発生距離)
◎:フローマーク発生距離が350mm以上、非常に良好。
○:フローマーク発生距離が260mm以上350mm未満、良好。
×:フローマーク発生距離が260mm未満、不良。
【0072】
(10)ウェルド外観:
型締め圧170トンの射出成形機で、短辺の中央部(50mm)に樹脂の流動を妨げる堰を設けた幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて、350mm×100mm×2mmtなる成形シートを成形温度220℃で射出成形する。ウェルド長さは、上記金型用いて成形した時、堰以降に発生するウェルドを目視によりウェルドが判別できなくなるまでの長さを測定し、以下に示す基準で評価した(ウェルド消失距離が短いほど、ウェルド外観は良好。)。
・判断基準(ウェルド消失距離)
◎:ウェルド消失距離が100mm未満、非常に良好。
○:ウェルド消失距離が100mm以上150mm未満、良好。
×:ウェルド消失距離が150mm以上、不良
【0073】
(11)エチレン・プロピレンランダム共重合体部量(比率)、エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:
(a)使用する分析装置
(a−1)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(以下、CFCと略す)
(a−2)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(a−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
【0074】
(b)CFCの測定条件
(b−1)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(b−2)サンプル濃度:4mg/mL
(b−3)注入量:0.4mL
(b−4)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(b−5)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W
40、W
100、W
140と定義する。W
40+W
100+W
140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(b−6)溶出時溶媒流速:1mL/分
【0075】
(c)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(c−1)検出器:MCT
(c−2)分解能:8cm
−1
(c−3)測定間隔:0.2分(12秒)
(c−4)一測定当たりの積算回数:15回
【0076】
(d)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm
−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(d−1)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(d−2)プロピレン−エチレンブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm
−1の吸光度と2927cm
−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや
13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
【0077】
(e)エチレン・プロピレンランダム共重合体部の比率(Wc)
本発明における結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体中、エチレン・プロピレンランダム共重合体部(以下、エチレン・プロピレン共重合体部と記載することもある。)の比率(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W
40×A
40/B
40+W
100×A
100/B
100 …(I)
式(I)中、W
40、W
100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A
40、A
100は、W
40、W
100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B
40、B
100は、各フラクションに含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量(単位:重量%)である。
A
40、A
100、B
40、B
100の求め方は後述する。
【0078】
(I)式の意味は、以下の通りである。すなわち、(I)式右辺の第一項はフラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部の量を算出する項である。フラクション1がエチレン・プロピレンランダム共重合体部のみを含み、プロピレン単独重合体部を含まない場合には、W
40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のエチレン・プロピレンランダム共重合体部含有量に寄与するが、フラクション1にはエチレン・プロピレンランダム共重合体部由来の成分のほかに少量のプロピレン単独重合体部由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW
40にA
40/B
40を乗ずることにより、フラクション1のうち、エチレン・プロピレンランダム共重合体部由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A
40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量(B
40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はエチレン・プロピレンランダム共重合体部由来、1/4はプロピレン単独重合体部由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W
40)からエチレン・プロピレンランダム共重合体部の寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の寄与を算出して加え合わせたものがエチレン・プロピレンランダム共重合体部含有量となる。
【0079】
(e−1)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA
40、A
100とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
【0080】
(e−2)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB
40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB
100=100と定義する。B
40、B
100は各フラクションに含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するプロピレン単独重合体部とエチレン・プロピレンランダム共重合体部を完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B
40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B
100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部の量がフラクション1に含まれるエチレン・プロピレンランダム共重合体部の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB
100=100として解析を行うこととしている。
【0081】
(e−3)上記の理由からエチレン・プロピレンランダム共重合体部の比率(Wc)を以下の式に従い、求める。
Wc(重量%)=W
40×A
40/B
40+W
100×A
100/100 …(II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW
40×A
40/B
40は、結晶性を持たないエチレン・プロピレンランダム共重合体部の含有量(重量%)を示し、第二項であるW
100×A
100/100は、結晶性を持つエチレン・プロピレンランダム共重合体部の含有量(重量%)を示す。
ここで、B
40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A
40、A
100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB
40となる。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション1の平均エチレン含有量A
40となる。フラクション2の平均エチレン含有量A
100も同様に求める。
【0082】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体部の大部分、もしくはプロピレン単独重合体部の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体部中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いプロピレン単独重合体部)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、プロピレン単独重合体部中、特に結晶性の高い成分、およびエチレン・プロピレンランダム共重合体部中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W
140にはエチレン・プロピレン共重合体は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることからエチレン・プロピレンランダム共重合体部の比率やエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量の計算からは排除する。
【0083】
(f)エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量
本発明における結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体のエチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量は、上述で説明した値を用い、次式から求められる。
エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含有量(重量%)=(W
40×A
40+W
100×A
100)/Wc
但し、Wcは先に求めたエチレン・プロピレンランダム共重合体部の比率(重量%)である。
【0084】
(12)エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:
本発明におけるエチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copolyは、次の様に求められる。
まず、プロピレン単独重合体部の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリングし、該プロピレン単独重合体部の固有粘度[η]
homoを測定する。次に、プロピレン単独重合体部を重合した後、結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を重合して得られた最終重合物(F)の固有粘度[η]
Fを測定する。この測定は、ウベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度135℃で行う。[η]
copolyは、以下の関係から求める。
[η]
F=(100−Wc)/100×[η]
homo+Wc/100×[η]
copoly
【0085】
2.材料
(1)成分(A−1)
・成分(A−1a):
日本ポリプロ社製、「ノバテック」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):75g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):260g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:40wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−1a)全体に対する割合:20wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:3.2dl/g
・成分(A−1b):
日本ポリプロ社製、「ノバテック」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):100g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):320g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:40wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−1b)全体に対する割合:20wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:2.6dl/g
【0086】
(2)成分(A−2)
・成分(A−2a):
日本ポリプロ社製、「ニューコン」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):0.8g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):20g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:40wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−2a)全体に対する割合:54wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:5.0dl/g
【0087】
(3)成分(A−3)
・成分(A−3a):
日本ポリプロ社製、「ノバテック」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):115g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):250g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:30wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−1a)全体に対する割合:10wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:7.0dl/g
・成分(A−3b):
日本ポリプロ社製、「ノバテック」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):160g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):350g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:30wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−3b)全体に対する割合:10wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:10dl/g
・成分(A−3c):
日本ポリプロ社製、「ノバテック」から、次の特性を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用した。
・全体のMFR(230℃、2.16kg荷重):65g/10分
・プロピレン単独重合体部のMFR(230℃、2.16kg荷重):150g/10分
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のエチレン含量:40wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部のブロック共重合体(A−3c)全体に対する割合:10wt%
・エチレン・プロピレンランダム共重合体部の固有粘度[η]
copoly:9.0dl/g
【0088】
(4)成分(B):エラストマー
・成分(B−1):DOW社製EBR ENR7467、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.0g/10分
・成分(B−2):三井化学社製EBR A0550S、MFR(230℃、2.16kg荷重):1.0g/10分
【0089】
(5)成分(C):無機フィラー
(C−1):日本タルク社製タルクP−6、平均粒径:4.0μm
【0090】
[実施例1〜4]
各成分(A)〜(C)を表1に示す割合で配合し、下記の条件で造粒し、成形したものについて性能評価を行った。尚、成分(A−3a)、(A−3b)、(A−3c)、(B−1)、(B−2)及び(C−1)の使用量は、成分(A−1a)、(A−1b)及び(A−2a)の合計100重量部に対する重量部である。それらの評価結果を表1に示す。
【0091】
(1)添加剤配合
(a)酸化防止剤:テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部
【0092】
(2)造粒
(a)押出機:神戸製鋼所社製KCM50型二軸混練押出機
(b)混練温度:200℃
【0093】
(3)成形
原料ペレットを、以下の様に射出成形し、評価した。
(a)物性:
成形機:東芝機械社製、射出成形機IS80G、
成形条件:成形温度=200℃、金型温度=40℃、射出圧力=60MPa
(b)成形外観:
成形機:東芝機械社製、射出成形機IS170
成形条件:成形温度=220℃、金型温度=40℃、射出圧力=80MPa
【0094】
[比較例1〜3]
各成分(A)〜(C)を表1に示す割合で配合し、実施例1〜4と同様に、造粒、成形および評価を行なった。それらの評価結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、本発明の必須構成要件における各規定を満たす、実施例1〜4に示す組成を持ったポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体は、何れも良好な成形性(高流動性)を有する上、さらに、成形外観(フローマーク外観、ウェルド外観)、および物性バランスを有し、工業部品部材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム、ピラー、バンパー、ドアプロテクター、サイドプロテクター、サイドモール等の自動車部品、とりわけバンパーなどの自動車外装部品等に適する性能を有していることが、明白になっている。
【0097】
一方、比較例1〜3に示す組成を持ったポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体は、これらの性能バランスが不良で見劣りしている。
例えば、比較例1、2において、樹脂組成物の成形性(MFR:高流動性)は、実施例1とほゞ同じであるにもかかわらず、成形外観(フローマーク外観)に著しい差異が生じた。これは、成分(A−2a)によるフローマーク外観向上が著しく、該成分が不可欠であることを示している。
また、比較例3において、成分(A−2a)が実施例3よりも配合量が多いが、成形外観(ウェルド外観)が実施例3よりも不良の結果が得られた。これは、成分(A−2a)の過剰添加は、成形外観(ウェルド外観)を悪化させることを示している。
【0098】
以上における、各実施例と各比較例の結果からして、本発明の構成と各要件の合理性と有意性が実証され、さらに本発明の従来技術に対する優位性も明らかにされている。