【実施例】
【0041】
以下の実施例1〜12は、開示された組成物としての自立性、耐熱性微多孔質フィルムの実施形態の物性及び特性に関している。この組成物の実施形態のそれぞれでは、UHMWPE及び無機フィラー材を十分な可塑剤と適切な温度で合わせて、均質、粘稠塊体を形成させ、これを二軸配向させ、その後抽出して、自立性、耐熱性微多孔質フィルムを形成している。これらのフィルムを形成するのに用いた無機フィラー及びポリマーマトリックスは、さまざまである。
【0042】
実施例1〜3は、自立性、耐熱性沈降シリカ充填微多孔質フィルムの7つの処方の製造及び分析についての基本情報を提供している。実施例1は、プロセスオイル充填シートの7つの処方の製造を詳述しており;実施例2は、ポリマーシートのロールの二軸延伸、及びその後の、ポリマーシートのロールからのプロセスオイルの除去を説明しており;及び実施例3は、実施例1に開示されている各処方のうちの1つについてのアニールの、厚み、空気浸透性、及び穿孔強度に対して及ぼす影響を示している。
【0043】
(実施例1)
表1に列挙されている7つの処方(文字A〜Gで標識されている)からプロセスオイル充填シートを製造した。それぞれの処方に対しては、水平ミキサーにすべての乾燥成分を入れ、それを低速撹拌でブレンドすることによってそのミキサー中で各成分を合わせて、均質なミックスを形成させた。このブレンドされた乾燥各成分に熱プロセスオイルをスプレーし、そしてこの混合物を、この後約215℃の溶融温度で運転されている96mm異方向回転二軸押出機(ENTEK Manufacturing,Inc.)にフィードした。この押出機の口部のところでさらなるプロセスオイルをインラインで加え、およそ65wt%〜68wt%の最終プロセスオイル含有量を得た。得られた溶融物をシートダイに通してカレンダーにしたが、この方法では、その押出物厚みを150μm〜200μmの範囲内にコントロールするのにギャップを用いた。
【0044】
(表1)
【表1】
【0045】
オイル充填シート(450mm〜500mm幅)をボール紙コアに巻き、このプロセスオイル充填シートロールを後の二軸配向のために取っておいた。
【0046】
(実施例2)
表1に列挙されている7つの処方から製造されたプロセスオイル充填シートを、Parkinson Technologies Inc.(Woonsocket,Rhode Island)から販売されているMachine Direction Orientation and Tenter Frame装置を用いてマシン方向(MD)及び横方向(TD)に、順次、延伸した。プロセスオイル充填シートを高温(115℃〜121℃)で延伸して、約10μm〜40μm厚のプロセスオイル充填フィルムを形成させた。この薄いプロセスオイル充填シートを、この後、運搬式抽出器−乾燥器ユニットで抽出したが、この方法では、プロセスオイルを除去するのにはトリクロロエチレンを用い、その溶媒を留去させるのには熱風を用いて、自立性、寸法安定な微多孔質フィルムを形成させた。
【0047】
この微多孔質フィルムを、厚み、空気浸透性(Gurley Model No.4340)、及び穿孔強度について試験した。
【0048】
Gurley Model No.4340 Automatic Densometerは、標準圧での空気浸透性を秒の単位で測定するものである。具体的には、Gurley値とは、100mlの空気が304Paの圧力差で6.45cm
2の面積を有するフィルムを通過するのに必要とされる時間を秒で測定したものである。
【0049】
微多孔質フィルムの%孔隙率は、以下:
フィルムのバルク体積:フィルムのサンプル固定面積(15.518cm
2)と測定された厚みから計算される;
フィルムの骨格密度:フィルムのシリカ対ポリマー比及びシリカの密度(2.2gm/cm
3)並びにUHMWPEの観測された密度(0.93gm/cm
3)から計算される;
固定面積サンプルの骨格体積:サンプルの骨格密度及びサンプルの測定された質量から計算される;及び
フィルムの孔隙率%=100×(バルク体積−骨格体積)/バルク体積;
から計算される。
【0050】
熱収縮評価では、フィルムを100mm×100mmサンプルに切り出し、これをこの後オーブンに200℃で1時間入れておいた。ポリマーマトリックスの酸化を防止するために、オーブンにはアルゴンガスを逆充填した。200℃曝露後、MD及びTD収縮をこの後室温までサンプルを冷却させた後それぞれのサンプルに対して計算した。
【0051】
表2は、さまざまな延伸比で製造された微多孔質フィルムの各対応データを示している。
【0052】
(表2)
【表2】
【0053】
(実施例3)
処方D及びEの各フィルムを、まず高温でアニール(すなわち、熱処理)し、その後続いて200℃でのMD及びTD収縮について試験した。表3に示すように、このアプローチは、二軸配向及びプロセスオイル工程と溶媒抽出工程からの残留応力を緩和させて、寸法安定性をさらに向上させるために用いられる。オンラインか又はオフラインプロセスによりアニールは行われ得る。
【0054】
(表3)
【表3】
【0055】
以下の実施例4及び実施例5は、それぞれ、UHMWPE単独、及び、XLPEとブレンドされたUHMWPEを含有しているポリマーマトリックスを含有する熱処理された、フュームド酸化アルミニウム充填微多孔質フィルムに対応している。
【0056】
(実施例4)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C,Evonikから入手可能)、267.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4120、Ticonaから入手可能)、4gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、及び750gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、1.86のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この混合粉末を27mm、同方向回転二軸押出機(Entek Manufacturing Inc.)にフィードする一方、さらなるプロセスオイルを注入口から押出機ゾーン#1に導入した(2.04kg/hで)。50mmダイスを有するブローフィルム装置、及び1.9mmギャップを用いて薄膜を押し出した。安定なバブルを4.2のブローアップ比及び1.98m/minのテイクアップ速度で確立して、330mm平置き幅(layflat)のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、67μm厚微多孔質フィルムを得た。このフィルムのGurley値は250秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、9.5%及び8.6%であった。
【0057】
(実施例5)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C、Evonikから入手可能)、180.8gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60gの架橋性ポリエチレン(Isoplas(登録商標)P 471、Micropolから入手可能)、3.7gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、1.5gの酸化防止剤(Irganox(登録商標)B215、Cibaから入手可能)、及び700gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.36のブローアップ比及び2.28m/minのテイクアップ速度で確立して、343mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、38μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は243秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、2.5%及び2.0%であった。
【0058】
以下の実施例6及び実施例7は、それぞれ、実施例6が沈降シリカフィラー材、実施例7が疎水沈降シリカフィラー材、及びUHMWPEとHDPEのブレンドを含有しているポリマーマトリックスを含有する熱処理された微多孔質フィルムに対応している。
【0059】
(実施例6)
以下の各成分:600gの沈降シリカ(Hi−Sil(登録商標)SBG、PPG Industriesから入手可能)、304gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4150、Ticonaから入手可能)、33gの高密度ポリエチレン(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、及び1gの滑剤(Petrac(登録商標)、Ferroから入手可能)で乾燥混合物を調製した。これらの材料を手で混合し、94℃に維持されている5050gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)にゆっくり加えて、スラリーを調製した。この処方は、1.78のフィラー対ポリマー重量比を有していた。このスラリーを27mm、同方向回転二軸押出機(ENTEK Manufacturing Inc.)に3.6kg/hで直接フィードした。50mmダイス及び1.9mmギャップを有するブローフィルム装置を用いて薄膜を押し出した。安定なバブルを3.15のブローアップ比及び2.7m/minのテイクアップ速度で確立して、248mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、45μm厚微多孔質フィルムを得た。このフィルムのGurley値は27秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、21.6%及び13.4%であった。
【0060】
(実施例7)
以下の各成分:疎水特性を賦与するために表面処理が施されている沈降シリカである、1200gの疎水沈降シリカ(Sipernat(登録商標)D10、Evonikから入手可能)、608gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)4120、Ticonaから入手可能)、66gの高密度ポリエチレン(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、及び2gの滑剤(Petrac(登録商標)、Ferroから入手可能)で乾燥混合物を調製した。これらの材料を手動で混合し、94℃に維持されている10,100gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)にゆっくり加えて、スラリーを調製した。この処方は、1.78のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料を実施例6で述べたのと同じようにして加工した。安定なバブルを3.6のブローアップ比及び4.6m/minのテイクアップ速度で確立して、285mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、24μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は75秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、30.5%及び25.3%であった。
【0061】
以下の実施例8及び実施例9は、UHMWPEとHDPEのブレンドを含有しているポリマーマトリックスを含有する、それぞれ、31μm厚及び14μm厚、フュームド酸化アルミニウム充填微多孔質フィルムに対応している。実施例8及び9のフュームド酸化アルミニウムフィラー材は、異なる会社によって生産されたものである。
【0062】
(実施例8)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(AEROXIDE(登録商標)Alu C、Evonikから入手可能)、182.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60.8gの高密度ポリマー(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、3.6gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)、及び700gのナフテン系プロセスオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.5のブローアップ比及び2.1m/minのテイクアップ速度で確立して、350mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、31μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は263秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、3.6%及び2.9%であった。
【0063】
(実施例9)
以下の各成分:500gのフュームド酸化アルミニウム(SpectrAl(登録商標)100、Cabotから入手可能)、182.5gの超高分子量ポリエチレン(GUR(登録商標)X−167、Ticonaから入手可能)、60.8gの高密度ポリマー(GUR(登録商標)8020、Ticonaから入手可能)、3.7gのステアリン酸リチウム(MATHE(登録商標)、Norac(登録商標)から入手可能)及び600gのナフテン系ベースオイル(Hydrocal(登録商標)800、Calumet Lubricants Co.から入手可能)で混合物を調製した。この処方は、2.03のフィラー対ポリマー重量比を有していた。これらの材料をまずバケツ中でブレンドし、その後強力ミキサー(W10、Littleford Day,Inc.(Florence,KY)から入手可能)に投入し、均一に混合した。この粉末ミックス及びプロセスオイルを実施例4で述べたのと同じようにして二軸押出機にフィードした。安定なバブルを4.5のブローアップ比及び3.0m/minのテイクアップ速度で確立して、350mm平置き幅のプロセスオイル充填シートを得た。このフィルムを実施例2で略述した手順に従って抽出して、14μm厚微多孔質フィルムを得た。フィルムのGurley値は137秒であり、そして200℃で1時間曝露後のMD及びTD収縮は、それぞれ、2.8%及び3.3%であった。
【0064】
以下の実施例10は、原初のバッテリーセパレーターとフュームドアルミナコートバッテリーセパレーターについての200℃収縮試験の比較に対応している。フュームドアルミナは無機材である。この比較は、非コートバッテリーセパレーターはこの試験に生き残れなかったが、フュームドアルミナコートバッテリーセパレーターは収縮を呈することはほとんどなかったこと、シャットダウンの結果として光学透明になったことを明らかにしている。
【0065】
(実施例10・比較例)
市販バッテリーセパレーターである、Teklon Gold LP(ENTEK Membranes LLC(Oregon))を、バインダーとしてポリビニルアルコールを用いてフュームドアルミナで両面コートした。コート用溶液を以下の各成分:1153gのアルミナ/水懸濁液(CAB−O−SPERSE(登録商標)PG 008、Cabotから入手可能)、21gのポリビニルアルコール(MW=124,000〜186,000g/mol、Aldrichから入手可能)、192gのイソプロピルアルコール、及び664gの脱イオン水で調製した。このTeklon Gold LPセパレーターに対してはディップコート法を用いたが、この方法では、3.3m/minでコート用溶液の中にセパレーターを通し、その後120℃に加熱された乾燥トンネルの中に通した。この乾燥トンネルをセパレーターが出たとき、その乾燥、コートされたセパレーターを75mmIDボール紙コアに巻き取った。コートした後、その平均セパレーター厚みは、約12.1μmから約14.4μmに増え、そしてそのGurley値は、234秒から348秒に増えていた。200℃で1時間曝露後のこのコートされたセパレーターについてのMD及びTD収縮は、それぞれ、2.7%及び3.3%であった。非コート、Teklon GOLD LPセパレーターは、200℃で1時間曝露後では、小さな、透明塊体に縮んでいた。
【0066】
(実施例11)
電気抵抗(ER)又はインピーダンスは、エネルギー貯蔵デバイス用途に用いられる微多孔質フィルムの重要な測定物性である。
図6は、Manostat Model 41−905−00グローブボックスの内部に配置されたサンプルセパレーター52に対して電気抵抗測定を行うのに用いられるステンレススチール製付属部品50の線図である(
図6ではグローブボックスの隔壁54のみが示されている)。
図6を参照して、付属部品50には、ステンレススチール製電極56及び58、サンプルセパレーター52中に含有されているリチウムヘキサフルオロホスファート電解質(1M LiPF
6/1:1エチレンカルボナート:エチルメチルカルボナート(EMC))60、及び100KHz〜1KHzの周波数範囲で動作するインピーダンスアナライザー(Gamry PC4 750)(図示されていない)が含有されている。
図7は、処方Fのシリカ充填、微多孔質フィルムサンプルセパレーター52の電気抵抗測定に用いられる100KHz〜1KHzの電気化学インピーダンス分光分析(EIS)プロットである。
図8は、100kHzで測定されるインピーダンスの実成分がセパレーター52の1層、2層、及び3層に対してプロットされているプロットである。測定された抵抗対セパレーター層数の線形近似の勾配は、サンプルセパレーター52の電気抵抗として採用される。
【0067】
4.5未満のMacMullin数によって証明されるように、自立性、無機質充填微多孔質フィルムに対して行われた電気抵抗測定は、極めて低い抵抗(インピーダンス)を示している。このMacMullin数(N
Mac)は、特定の電解質や動作条件(例えば、測定が行われる温度)に関係なく微多孔質フィルム又はセパレーター部材の抵抗を表すのに有用である無次元の比である。MacMullin数は、電解質飽和多孔質媒体の電気抵抗(r)対等体積(及び形状)電解質の抵抗(r
0)の比、すなわち、
N
Mac=r/r
0
としてCaldwell et al.の米国特許第4,464,238号明細書に定義されている。
【0068】
実験データからN
Macを計算する際、Caldwell et al.は、Palico Instrument Laboratories(Circle Pines、Minnesota)から販売されている、Model 9100−2試験装置にコンセプトが似ている装置を図説している彼らの特許にある
図1を言及し、そして以下の計算:
N
Mac=(r
2+r
1)/r
0+1
[ここで、
r
1=セパレーターなしで測定された抵抗、
r
2=セパレーターが配置されて測定された抵抗、
r
0=セパレーターと同じ寸法を有する電解質体積の抵抗、及び
r
0=ρ×t/A(ここで、
ρ=電解質の固有抵抗、
t=セパレーターの厚み、及び
A=イオン伝導が起こっている断面積)]
を採用している。
【0069】
混乱の源は、N
Macの計算で付け足された「+1]である。この「+1]の議論は、Caldwell et al.の
図1にあるデバイスを用いた、セパレーターの抵抗(r)の測定から来ている。特には、セパレーターなしでの測定(r
1)には、r
2中のセパレーターによって占有されている電解質体積の抵抗が包含されている。つまり、セパレーター抵抗の真の値(r)を得るためには、
r=r
2−(r
1−ρ×t/A)
つまり、その占有されている体積の抵抗をr
2から差し引かなければならない。
【0070】
この式をr
0でもう一度除し、そして再整理することにより、以下の結果:
N
Mac=(r
2+r
1)/r
0+1
が得られる。
【0071】
開示された微多孔質フィルムの各実施形態の抵抗の測定は、いくぶんか異なった装置及びアプローチ(
図6)を用いて行われた。このケースでは、微多孔質フィルムの抵抗(r)の測定は、バス抵抗を差し引くことをなんら必要とすることなしに、直接行われる。したがって、以下:
N
Mac=r/r
0=r/(ρ×t/A)
のとおり、その計算はずっと簡単で、付け足される「+1」もない。
【0072】
表4は、実施例2の4つの選択された処方、実施例8及び9で製造された微多孔質フィルム、及び商業市販されている非充填のTeklon(商標)HPIPセパレーターについての厚み、面積抵抗、固有抵抗、及びMacMullin数をまとめたものである。
【0073】
(表4)
【表4】
【0074】
表4に示されている無機フィラー充填微多孔質フィルムの電気抵抗は、ENTEK Membranes LLCによって生産されているあらゆる非充填、リチウムイオンバッテリーセパレーターの中でも最も低いMacMullin数を有しているTeklon HPIPの電気抵抗よりも相当低い。表4に示されている微多孔質フィルムは室温(25℃)で測定される低抵抗値を有しており、そしてより低い動作温度ではそのような低抵抗値は維持されることが期待されるであろう。
【0075】
表5は、実施例10で述べた無機、アルミナ層コートバッテリーセパレーターの電気抵抗(インピーダンス)を示している。表4と表5との比較は、自立性、無機材充填微多孔質フィルムが、従来型、非コートポリオレフィンバッテリーセパレーター及び無機又はセラミックフィラー材コートポリオレフィンバッテリーセパレーターに比較して、相当低い抵抗(インピーダンス)を有していることを示している。
【0076】
(表5)
【表5】
【0077】
図9及び以下の実施例12は、無機フィラー粒子16含有自立性微多孔質ポリマーフィルム10と面対面で配置された従来型、非充填微多孔質ポリオレフィンフィルム66の多層セパレーターアセンブリ64を示している。セパレーターアセンブリ64は、自立性微多孔質ポリマーフィルム10の高温寸法安定性と非充填微多孔質ポリオレフィンフィルム66のサーマルシャットダウン特性を組み合わせるものである。
【0078】
(実施例12)
シリカ充填、オイル含有シートを表1の処方Eに従って生産した。このシートを実施例2に略述されている手順を用いてこの後二軸延伸(2.5MD×4.5TD)し、抽出し、そして乾燥させた。得られた自立性、シリカ充填微多孔質フィルムは、約21μmの厚み及び89秒のGurley値を有していた。12μm厚Teklon GOLD LPセパレーター(これはENTEK Membranes LLCから入手可能の微多孔質ポリマーフィルムである)をこのシリカ充填微多孔質フィルム上に配置した(しかし接合はしなかった)。この組み合わせ層構造体からディスクを打ち抜いてセパレーターアセンブリを形成させ、そしてその孔を電解質(1Mリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド/1:1プロピレンカルボナート:トリエチレングリコールジメチルエーテル)で濡れさせた。この電解質は、200℃までは一定のインピーダンスと低蒸気圧を呈するものである。この濡れたセパレーターアセンブリを2枚の非多孔質カーボンディスクの間にサンドイッチし、その後2枚の金属プラテンの間に配置した。次に、そのシャットダウン温度を測定するためにプラテンを25℃から180℃まで50℃/minで加熱しながら3.1MPa圧力を印加し、1KHzインピーダンスをモニターした。インピーダンスは25℃から100℃まではほぼ一定であった。約135℃で、セパレーターアセンブリのインピーダンスは上昇し始めた。1KHzインピーダンスが100℃での1KHzインピーダンスより1000倍高くなる温度と定義される、シャットダウン温度は、152℃であると測定された。個々のフィルムを同じ試験で調べたところ、Teklon GOLD LPは、約152℃のシャットダウン温度を呈したが、このシリカ充填フィルムは25℃から180℃までほとんどインピーダンスの変化を呈さず、シャットダウン温度も検出されなかった。
【0079】
自立性、無機材充填微多孔質フィルム10の好ましい実施は、バッテリーにおけるその使用である。バッテリーは化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。David Linden (Editor in Chief), Handbook of Batteries, 2nd ed., McGraw-Hill, Inc. (1995)に参照されるように、バッテリーのアノード及びカソードを形成させるのにはさまざまな電気化学活物質が用いられ得る。例となる電気化学活物質は、アノード用のカーボン及びカソード用の酸化コバルトリチウムである。
図10と11は、開示された自立性無機材充填微多孔質フィルムが一構成要素となっている非水性リチウムイオン二次(すなわち、再充電可能)バッテリーの2つの例を示している。
【0080】
図10は、自立性、耐熱性無機材充填微多孔質フィルム72が一構成要素となっている円筒形非水性二次バッテリー70の半分部分の内部の部分展開図である。バッテリー70は、負電極(カソード)シート78と正電極(アノード)シート80との間に配置された微多孔質フィルム72の各構成要素がプレス合体された長いスパイラル構造体の形態にあるバッテリーアセンブリ76のための加圧円筒形金属エンクロージャ74を有している。バッテリーアセンブリ76は、上部絶縁体82と下部絶縁体84との間に配置されていて、電解質に沈められている。感圧式ベント86は、過圧力からバッテリー70が爆発する可能性のある点まで過熱した場合に金属エンクロージャ74から過剰圧力を開放する。正温度係数(PTC)スイッチ88は、バッテリー70が過熱するのを防ぐ。カソードエンクロージャカバー90はカソードリード線92に接続されており、そしてアノード端子94はアノードリード線96に接続されている。
【0081】
図11は、微多孔質フィルム72が一構成要素となっている、薄型形状非水性二次バッテリー100の一部分の内部の部分展開図である。バッテリー100は、バッテリーアセンブリ76に対して上述したように、負電極78と正電極80との間に配置されていて、電解質に沈められている微多孔質フィルム72を含有している角形バッテリーアセンブリ104のための大体長方形の断面の薄型エンクロージャ102を包含している。カソードエンクロージャカバー106はカソードリード線92に接続されており、そしてアノード端子108はアノードリード線96に接続されている。
【0082】
図12は、
図10のバッテリー70及び
図11のバッテリー100の作製と大体同じようにして作製された直列接続非水性二次電池122(10個図示されている)を含んでなるバッテリーパック120のブロック線図である。各電池122は、好ましくは電気モーター車両用途用に設計された大型仕様リチウムイオン電池である。この微多孔質フィルム72の高温機械及び寸法安定性は、巨視的及び顕微的尺度で、電極78及び80を物理的に離間させた状態に保持するものであって、これによって、HEV及びPHEV用途に用いられる大型仕様リチウムイオン電池の安全性が確実なものになる。バッテリーパック120の各電池122は相互接続リード線124によって電気的に接続されていて、スタック126に配置されており、そこでは2つの末端電池122はカソード出力リード線128及びアノード出力リード線130を具備している。
【0083】
電池スタック126にはバッテリーマネージメントシステム(BMS)が出力リード線128と130、及び、相互接続リード線124への電圧用及び温度検出用各接続線134によって接続されている。BMS132は、先の背景技術の項で論述したように、HEV又はPHEV用途用に設計された大型仕様リチウムイオン電池と共に用いられるタイプのものである。
【0084】
電池スタック122は、電池冷却ユニット(BCU)138の制御下にある各電池122及び電池122のための流体(空気又は液体)冷却系に物理的防護を賦与する適切な材質及び外形のエンクロージャ136に収容されている。
【0085】
図13A、13B、13C、及び13Dは、原動力を伝達してモーター車両の車輪148を回転させるための
図12のバッテリーパック120で少なくとも一部が実施されているモーター伝動機構のさまざまな配置のブロック線図である。
【0086】
図13Aは、並列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター/発電機154を包含しているハイブリッド電気車両モーター伝動機構150のブロック線図である。
図13Aを参照して、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター/発電機154に供給し、この電気モーター/発電機がこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、トランスミッション160を介して減速ギア158に接続されている。内燃機関152から伝達される動力は、モーター/発電機154及びインバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのにも用いられ得る。
【0087】
図13Bは、直列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター172を包含しているハイブリッド電気車両伝動機構170のブロック線図である。
図13Bを参照して、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター172に供給し、この電気モーターがこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、発電機174に接続されている。機関駆動発電機174からの電力は、電気モーター172を駆動するのに又はインバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのに用いられ得る。
【0088】
図13Cは、直列−並列で動作するように配置された内燃機関152及び電気モーター172を包含しているハイブリッド電気車両伝動機構180のブロック線図である。
図13Cへの参照では、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力を電気モーター172に供給し、この電気モーターがこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。一方、内燃機関152は、発電機174と動力スプリットデバイス182とに接続されており、この動力スプリットデバイスは、内燃機関152から伝達される動力を、車輪148を駆動する減速ギア158と発電機174とに分割するものである。機関駆動発電機174からの電力は、インバーター156を介してバッテリーパック120を再充電するのに用いられ得る。
【0089】
図13Dは、電気モーター/発電機154を包含している電気モーター車両伝動機構190のブロック線図である。
図13Dへの参照では、バッテリーパック120が直流電力をインバーター156に供給し、このインバーターが交流電力をモーター/発電機154に供給し、このモーター/発電機がこの後減速ギア158を介して車輪148を回転させる。バッテリーパック120は、車両にあるプラグインコネクター194を介して外部電力源192から再充電される。
【0090】
上述した実施形態の詳細には、本発明の根底にある原理から逸脱することなく多くの改変がなされ得ることは当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、したがって、以下の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。