(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態)
(光束制御部材の構成)
以下に、光束制御部材としての照明用レンズ100の構成について、詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る照明用レンズ100の斜視図である。
図3Aは、本発明の実施の形態に係る照明用レンズ100の平面図である。
図3Bは、本発明の実施の形態に係る照明用レンズ100の側面図である。
図3Cは、
図3AのA−A線断面図である。
図3Dは、本発明の実施の形態に係る照明用レンズ100の正面図である。
図3Eは、本発明の実施の形態に係る照明用レンズ100の底面図である。なお、
図3Dには、発光素子200も共に示す。
【0017】
照明用レンズ100は、入射面部101と、出射面部102と、全反射面部103と、鍔部104と、底面部105とを有する。
【0018】
照明用レンズ100は、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、EP(エポキシ樹脂)等の透明樹脂材料や透明なガラスで形成される。また、照明用レンズ100は、中心軸P1が発光ダイオード等の発光素子200の光軸に合致するように、発光素子200が固定された図示しない基板上に取り付けられて発光装置を構成する(
図3D参照)。また、照明用レンズ100は、平面形状が円形形状である。
【0019】
入射面部101は、発光素子200に対向する底面部105を内部に凹ませた凹み111の内面に形成され、中心軸P1の回りに回転対称となるように形成されている。また、入射面部101は、凹み111の内天面である第1の入射面部101aと、第1の入射面部101aから凹み111の開口縁まで延びるテーパ状円筒面である第2の入射面部101bとを有する。ここで、第2の入射面部101bは、第1の入射面部101a側の端縁の内径寸法よりも開口縁側の内径寸法の方が大径となるように、第1の入射面部101a側から開口縁側へ向かうにしたがって内径が漸増している。
【0020】
出射面部102は、平面に投影された形状が円形形状である。また、出射面部102は、平面に投影された円形の中心点から、中心軸P1に沿った方向の所定の高さに位置するとともに、外周部113よりも上方(被照射面側)に突出する頂点112と、頂点112から外周部113に向かって傾斜するとともに上方に凸形状に湾曲する第1の出射面部102aと、平面に投影された円形の直径から、中心軸P1に沿った方向の所定の高さに位置する直線である稜線115と、稜線115から外周部113に向かって傾斜する第2の出射面部102bと、平面に投影された円形の直径と稜線115との間において、第1の出射面部102aと第2の出射面部102bとの段差により形成される第3の出射面部102cとを有する。
【0021】
第1の出射面部102aは、中心軸P1の回りに180°の角度範囲で形成された略半円錐の非球面であり、平面に投影された形状が半円形状である。
【0022】
第2の出射面部102bは、稜線115を形成する端部が頂点と同一高さになるように形成され、且つ、稜線115に直交する方向へ向かうにしたがって高さ(鍔部104の上面から中心軸P1に沿った方向の高さ)を漸減させるように形成された傾斜面であって、中心軸P1の回りに180°の角度範囲で形成されたシリンダ形状(稜線115に直交する方向には曲率を有し、稜線115と平行な方向には曲率を有さない形状)を有する。なお、第2の出射面部102bの形状は、シリンダ形状に限定されず、トロイダル形状(トーラス面)のような、第2の出射面部102bと中心軸P1を含む断面との第1交線、及び第2の出射面部102bと中心軸P1に直交する断面との第2交線がともに曲線となるように形成されてもよい。その際、特に頂点112近傍において中心軸P1に直交する断面では、第1交線の曲率半径よりも第2交線の曲率半径の方が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0023】
また、第2の出射面部102bは、平面に投影された形状が第1の出射面部102aと反対側の半円形状である。ここで、第2の出射面部102bが半円錐形状である場合、第2の出射面部102bと中心軸P1に直交する仮想平面116とのなす角β2は、第1の出射面部102aの母線と中心軸P1に直交する仮想平面116とのなす角β1よりも大きくなっている(β2>β1)(
図3B参照)。
【0024】
第3の出射面部102cは、一対形成され、各々が中心軸P1を中心とする線対称の形状を有する。また、第3の出射面部102cは、
図3C及び
図3Dに示すように、正面側の形状が三角形状であり、中心軸P1に沿って立ち上がっている。
【0025】
全反射面部103は、底面部105の外周部から鍔部104の下面まで延びる外表面であり、中心軸P1を取り囲むように形成された回転対称面である。また、全反射面部103は、底面部105から鍔部104に向かうに従って外径が漸増しており、その母線が外側(中心軸P1から離れる側)へ凸の円弧状曲線を有する。
【0026】
鍔部104は、出射面部102の径方向外方側に突出して形成され、略円環状である。
【0027】
底面部105は、凹み111の開口縁の周囲に形成されたリング状の平面である。
【0028】
頂点112は、中心軸P1上に位置するように突出形成され、第1の出射面部102aと、第2の出射面部102bと、第3の出射面部102cとに接している。
【0029】
図4は、照明用レンズ100により配光特性を制御する場合の光の進路S1、S2を示す図である。
図4において、Y軸は、底面部105の延長線上であり、左方向が+方向であり、右方向が−方向である。また、
図4において、Z軸は、発光素子200の光軸であり、上方向が+方向である。また、
図4において、X軸は、Y軸とZ軸との交点を通るとともに、Y軸及びZ軸と直交する直線であり、紙面手前側が−方向であり、紙面奥側が+方向である。また、
図4において、X軸とY軸とZ軸とが交わる交点を原点a(座標(X,Y,Z)=(0.000,0.000,0.000))とする。また、
図4において、測定点e、e’は、X−Y平面に平行で且つX−Y平面からZ軸方向に沿って200mm離れて位置する測定面400上の点である。また、
図4において、進路S1は、光軸Zに対して左側に第1の出射面部102aを配置した場合に、第1の出射面部102aから出射される光の進路を示す。また、
図4において、進路S2は、光軸Zに対して左側に第2の出射面部102bを配置した場合に、第2の出射面部102bから出射される光の進路を示す。
【0030】
上記の構成を有する照明用レンズ100は、
図4に示すように、発光素子200から出射された光のうち、第1の入射面部101aから入射した光が第1の出射面部102a及び第2の出射面部102bに直接到達するとともに、第2の入射面部101bに入射した光が全反射面部103で全反射されて集光された後に第1の出射面部102a及び第2の出射面部102bに到達する。
【0031】
第1の出射面部102aからは、図示しない被照射面を照明する光(
図4において進路S1の光)が出射される。
【0032】
第2の出射面部102bからは、図示しない被照射面に向かう光であって、且つ、第1の出射面部102aから出射した光よりも光軸Zに直交する方向に拡げて被照射面を照明できる光(
図4において進路S2の光)が出射される。第2の出射面部102bより出射される光は、従来の照明用レンズより出射される光、または第1の出射面部102aより出射される光に比べて、光軸Zに対して、光が入射した側と反対側に向けて大きく屈折する。これにより、被照射面を広範囲に照明することができる。
【0033】
第3の出射面部102cからは、中心軸P1と直交する方向、且つ、発光素子200から第3の出射面部102cまでの高さh(
図3D参照)と同程度の高さの被照射面とその近傍を照明する光が出射される(
図4において図示省略)。すなわち、第3の出射面部102cからは、発光素子200から出射された光を狭い配光特性となるように制御する従来の光束制御部材を用いた場合の照明装置において暗くなり易い領域に向けて光が出射される。
【0034】
図5は、従来の照明用レンズを用いた場合の光の進路の
図4の各測定点における位置を示す図である。また、
図6は、本実施の形態の照明用レンズ100を用いた場合において、Y軸の+側(
図4において、Y軸上の原点aよりも左側の領域)に第1の出射面部102aを配置した際の光の進路の
図4の各測定点における位置を示す図である。また、
図7は、本実施の形態の照明用レンズ100を用いた場合において、Y軸の+側に第2の出射面部102bを配置した際の光の進路の
図4の各測定点における位置を示す図である。
【0035】
第2の出射面部102bから出射される光の測定点e’のX軸及びY軸の位置は(
図7参照)、従来及び第1の出射面部102aから出射される光の測定点eのX軸及びY軸の位置に比べて(
図5及び
図6参照)、X軸の−側(
図4において、X軸上の原点aよりも紙面に対して奥側)及びY軸の−側(
図4において、Y軸上の原点aよりも右側)に大きくなっている。
【0036】
(照明装置の構成)
以下に、照明装置800の構成について、詳細に説明する。
図8は、本発明の実施の形態に係る照明装置800の正面図である。また、
図9は、本発明の実施の形態に係る照明装置800の平面図である。
図8及び
図9において、照明用レンズ100−1〜100−5は、
図2〜
図3Eに示す構成と同一である。なお、
図8において、照明領域r11〜r15は、照明用レンズ100−1〜100−5からの出射光による被照射面801aにおける照明領域を示す。
【0037】
照明用レンズ100−1〜100−5は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸のX軸に沿って配列され、被照射面801はX−Z平面と平行に配置される。Z軸は、照明用レンズ100−3の中心軸P1と一致する。
【0038】
被照射面801aは、X−Z平面に平行であり、且つX−Z平面からY軸の+方向(
図8において、Y軸上のY軸とZ軸との交点よりも紙面手前方向)に、例えば40mm離れた位置に設けられる平面である。また、対向被照射面801bは、X−Z平面に平行であり、且つX−Z平面からY軸の−方向(
図8において、Y軸上のY軸とZ軸との交点よりも紙面奥方向)に、例えば40mm離れた位置に設けられる平面である。なお、Y軸上の被照射面801a及び被照射面801bを設けるX−Y平面からの距離は、上記の距離に限らず、任意の距離にすることができる。このように配置された被照射面801aおよび対向被照射面801bを照射する光の入射角は、中心軸P1(光軸Z)に対して大きな角度で照明用レンズ100−1〜100−5から出射する光ほど小さくなる。
【0039】
照明装置800は、
図2〜
図3Eの構成を有する複数の照明用レンズ100−1〜100−5と、発光素子200−1〜200−5と、矩形状の被照射面部801とを有する。また、照明用レンズ100−1〜100−5と発光素子200−1〜200−5とにより発光装置850−1〜850−5を構成する。また、被照射面部801は、被照射面801aと、被照射面801aと平行且つ被照射面801aに対向して配置される対向被照射面801bとを有する。なお、照明装置800において、配列する照明用レンズ100−1〜100−5の数は5つに限らず、被照射面801a及び対向被照射面801bの面積に応じて、任意の数の照明用レンズ100−1〜100−5を配列する。
【0040】
照明用レンズ100−1〜100−5は、被照射面部801の図示しない仮想底面部と対向する位置において、被照射面部801の長手方向(
図8において左右方向)に沿って、所定の間隔で複数設けられる。また、照明用レンズ100−1〜100−5は、稜線115が照明用レンズ100−1〜100−5の配列方向(
図8において左右方向)と平行になるように配置するとともに、隣り合う照明用レンズ100−1〜100−5において、発光素子200の光軸に対して直交する平面上で180°回転させた状態で配置する。即ち、被照射面801a側に第1の出射面部102aが位置する照明用レンズ100−1、100−3、100−5と、被照射面801a側に第2の出射面部102bが位置する照明用レンズ100−2、100−4とが隣り合うように照明用レンズ100−1〜100−5を配列する。
【0041】
具体的には、被照射面801aを照明用レンズ100−1〜100−5と対向する位置まで延長した仮想平面(以下「第1の仮想平面」と記載する)を設けた場合に、第1の出射面部102aが第1の仮想平面と対向する配置(
図8において第1の出射面部102aを手前側に向けて配置)と、被照射面801aを照明用レンズ100−1〜100−5と対向する位置まで延長した場合の仮想平面(以下「第2の仮想平面」と記載する)を設けた場合に、第2の出射面部102bが第2の仮想平面と対向する配置(
図8において第2の出射面部102bを手前側に向けて配置)とを、交互に繰り返すように配置する。即ち、照明用レンズ100−1、100−3、100−5は、第1の出射面部102aが第1の仮想平面と対向し、且つ第2の出射面部102bが第2の仮想平面と対向するように配置される。また、照明用レンズ100−2、100−4は、第1の出射面部102aが第2の仮想平面と対向し、且つ第2の出射面部102bが第1の仮想平面と対向するように配置される。
【0042】
被照射面801a、対向被照射面801bは、看板の絵または文字等が記載されており、発光素子200から出射された光により、照明用レンズ100−1〜100−5を介して照明される。
【0043】
以上のように構成された照明装置800は、被照射面801aにおいて、照明用レンズ100−1、100−3、100−5の第1の出射面部102a及び第2の出射面部102bにより、第1の出射面部102aのみにより照明される場合に比べて広範囲(エリアr11、エリアr13及びエリアr15)を照明することができる。また、照明装置800は、対向被照射面801bにおいて、照明用レンズ100−2、100−4の第1の出射面部102a及び第2の出射面部102bにより、第1の出射面部102aのみにより照明される場合に比べて広範囲を照明することができる。これにより、従来は十分に照明できなかった
図1のr1の領域を照明することができるようになり、被照射面801a及び対向被照射面801bにおける照度ムラを防ぐことができる。
【0044】
また、照明装置800は、第3の出射面部102cにより被照射面801a及び対向被照射面801bを照明することにより、被照射面801a及び対向被照射面801bにおいて助走距離を小さくすることができる。ここで、助走距離とは、光源から照明用レンズ100を介して出射される光の照度が所定値以上となる位置と光源との距離である。通常、発光素子からの出射光の配光特性を狭めて光軸方向を明るく照らすようなスポット照明では、照射領域を狭くするので、発光素子から離れた位置にある被照射面の照度を上げることはできるものの、発光素子近辺の照度が低下して上記の助走距離が長くなる。しかしながら、本実施の形態では、第1の出射面部102a及び第2の出射面部102bに加えて、第3の出射面部102cから出射された光により被照射面801a及び対向被照射面801bを照明するので、上記の助走距離を短くすることができる。また、助走距離を短くすることにより、被照射面801a及び対向被照射面801bにおける額縁部分を狭くすることができる。
【0045】
(照明装置における出射面部と被照射面との位置関係)
次に、出射面部102について、
図10を用い、被照射面部801と関連づけて説明する。
図10は、被照射面801aと出射面部102とを平面視した図である。なお、
図10におけるX軸、Y軸及びZ軸の座標軸は、
図8におけるX軸、Y軸及びZ軸の座標軸と一致する。
【0046】
第1の出射面部102aは、被照射面801aに直交し、且つ中心軸P1を含む断面D1との交線を母線Gとし、中心軸P1を回転軸として母線Gを回転させることにより形成される。このときの母線Gの回転領域は、被照射面801aに直交し且つ中心軸P1を含む断面D1との角度θが、−θ1≦θ≦θ1(第1角度領域)の範囲であり、本実施の形態では、θ1=90°である。第1の出射面部102aを形成する際の母線Gの回転領域は、被照射面801aもしくはこれに対向配置される対向被照射面801bの大きさ等に応じて変更してもよい。なお、
図10では、中心軸P1からY軸の+方向に延びる母線Gの回転領域である第1角度領域を決定し、第1の出射面部102aが被照射面801a側に位置するように形成する場合について示したが、本実施の形態はこれに限らず、中心軸P1からY軸の−方向に延びる母線Gについて第1角度領域を決定し、第1の出射面部102aが対向被照射面801b側に位置するように形成してもよい。
【0047】
第2の出射面部102bは、出射面部102を平面視した場合の第1角度領域以外の領域(第2角度領域)内に形成される。この際、第2角度領域は、θ1≦θ≦180°及び−180°≦θ≦−θ1で表わされ、本発明の実施の形態では、θ1=90°である。また、第2の出射面部102bは、第1の出射面部102a側の被照射面部801へ向けて出射される光束が、θ1=360°の範囲(出射面部102全面)に第1の出射面部102aが形成された場合よりも多くなるように形成される。
【0048】
図10に示す中心軸P1からY軸の+側に延びる母線Gについて第1角度領域を決定し、第1の出射面部102aが被照射面801a側に位置するように形成した場合、第1の出射面部102aと第2の出射面部102bとの段差によって形成される第3の出射面部102cは、被照射面801aと対向するように立ち上がって形成される。
【0049】
(ホルダーの構成)
以下に、ホルダー900の構成について、詳細に説明する。
図11は、照明用レンズ100を収納した状態のホルダー900の側断面図である。
【0050】
ホルダー900は、透明であり、照明用レンズ100を収納する収納部901と、開口端部902と、貫通孔903とを有する。
【0051】
収納部901は、照明用レンズ100の鍔部104より下側を収納可能な大きさに形成される。
【0052】
開口端部902は、収納部901の内壁の上端部に形成され、収納部901の内径よりも大径に形成される。また、開口端部902は、照明用レンズ100の鍔部104の下端部と当接して照明用レンズ100の下方向への移動を規制する。
【0053】
貫通孔903は、収納部901の底部において上下方向に貫通して形成されるとともに、発光素子200を挿通可能な大きさに形成される。
【0054】
上記の構成を有するホルダー900は、発光素子200及び照明用レンズ100と共に基板950に取り付けられる。この状態において、発光素子200から出射された光は、照明用レンズ100を介して
図11の上方に出射されるとともに、照明用レンズ100及び透明なホルダー900を介して
図11の左右方向にも出射される。透明なホルダー900内に入射する光は、主として照明用レンズ100に入射されず漏れ光となるような、発光素子200の光軸Zに対して大きな角度で発光素子200から出射される低光度の光である。このような低光度の光であっても、被照射面801a及び対向被照射面801b上の入射角の小さな領域(被照射面801aおよび対向被照射面801bの発光素子200に近い領域)にホルダー900を介して照射することで、上記の領域における光量不足を補うことができる。これにより、発光素子200から照明用レンズ100及びホルダー900を介して出射される光が所定値以上となる位置と、発光素子200との助走距離を短くすることができる。なお、本実施の形態における透明なホルダー900とこれを黒色としたホルダーとの比較は後述する。
【0055】
(照明装置における測定結果)
次に、照明装置800における照度の測定結果について、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、照明装置800の被照射面801aにおける照度の各測定点を示す図である。また、
図13は、照明装置800の被照射面801a及び対向被照射面801bにおける照度の各測定点における測定結果を示す図であり、単位はルクス(lx)である。
図8及び
図9に示すX軸、Y軸及びZ軸の座標軸と、
図12に示すX軸、Y軸及びZ軸の座標軸とは一致する。
図12において、X−Y平面上に、被照射面801aの下端部を配置し、発光素子200の光軸をZ軸とする。また、X−Y平面とZ軸との交点を原点Oとし、この原点OにおいてZ軸に直交し、且つ被照射面801aと平行な軸をX軸とする。なお、対向被照射面801bの測定結果は、被照射面801aの測定結果と1ピッチずれるのみで略同一であるので、その説明を省略する。
【0056】
図12の各測定点において、発光素子のみで照明した場合(以下「ケース1」と記載する)の被照射面の照度、従来の照明用レンズを介して照明した場合(以下「ケース2」と記載する)の被照射面の照度、本実施の形態の照明用レンズ100を介して照明した場合(以下「ケース3」と記載する)の第1の出射面部102a側の被照射面801aの照度と、ケース3の第2の出射面部102b側の対向被照射面801bの照度とは、
図13に示すようになる。ここで、
図13は、Z軸上に配置された発光素子200の1つのみを点灯した場合の結果を示す。第1の出射面部102a側の被照射面とは、第1の出射面部102aと対向する第1の仮想平面上の被照射面である。
【0057】
図13より、光軸Z上において、ケース1に比べてケース2の方が発光素子から遠い位置の照度が高くなっており、従来の照明用レンズによってZ軸上における照度の均一性は向上していることがわかる。しかしながら、
図1に示される暗部(複数の発光素子200を点灯させた場合の発光素子200のピッチ間の暗部(
図1の領域r1))を解消するには、X軸方向においても照度の均一性を向上させる必要がある。本実施の形態の照明用レンズ100を用いることによって、X軸方向の照度の均一性も向上していることは、光軸Z及び発光素子200の双方から離れた測定点dにおいて、ケース3の方が、ケース1及びケース2に比べて、照度が上がっていることより明らかである。これより、本実施の形態では、X軸方向およびZ軸方向ともに、従来に比べて照度の均一性が向上していると言える。
【0058】
具体的には、測定点aにおいて、ケース3の第1の出射面部102a側の被照射面の照度は、ケース2に比べて、127%の上昇率を示し、ケース3の第2の出射面部102b側の被照射面の照度は、ケース2に比べて、146%の上昇率を示す。また、測定点dにおいて、ケース3の第1の出射面部102a側の被照射面の照度は、ケース2に比べて、137%の上昇率を示し、ケース3の第2の出射面部102b側の被照射面の照度は、ケース2に比べて、141%の上昇率を示す。
【0059】
次に、照明装置800における照度の測定結果について、
図14〜
図16を用いて、さらに詳細に説明する。
図14は、従来の照明用レンズを用いた場合の相対照度を示す図である。また、
図15は、本実施の形態の照明用レンズ100を用いた場合の第1の出射面部102a側の被照射面801aの相対照度を示す図である。また、
図16は、本実施の形態の照明用レンズ100を用いた場合の第2の出射面部102b側の対向被照射面801bの相対照度を示す図である。
図14〜
図16において、相対照度は、
図14の従来の照明用レンズを用いた場合の照度の最大値を100%とした場合の割合を示す。また、
図14〜
図16において、X軸及びZ軸は、
図12と同一であるので、その説明を省略する。
【0060】
図14より、従来は、相対照度が25%以上の領域(
図14において太線部分)はX軸上の座標0〜約65の狭い範囲に集中している。一方、
図15及び
図16より、本実施の形態は、相対照度の最大値は従来に比べて低いものの、相対照度が25%以上の領域(
図15及び
図16において太線部分)はX軸上の座標0〜約75の広範囲になる。また、本実施の形態において、相対照度の最大値が従来に比べて低い点については、従来の過剰な照度を低下し、その分広範囲のエリアを照明するものであって、被照射面及び対向被照射面における照度の著しい低下を招くことはない。
【0061】
(ホルダーにおける測定結果)
次に、
図11に示す透明なホルダー900を用いた場合の照度の測定結果について、
図17〜
図19を用いて説明する。
図17は、被照射面801a(対向被照射面801b)とX軸及びZ軸との関係を示す図である。また、
図18は、第1の出射面部102a側の被照射面801aにおける、従来の黒色ホルダーを使用した場合と比較した、照度上昇率を示す図である。また、
図19は、第2の出射面部102b側の対向被照射面801bにおける、従来の黒色ホルダーを使用した場合と比較した、照度上昇率を示す図である。
図17において、被照射面801aの下端縁を、三次元の互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸のX−Y平面上に配置する。また、
図17において、Z軸は、発光素子200の光軸である。また、X−Y平面とZ軸との交点を原点とし、座標(0,0,0)とする。また、発光素子200の発光中心を座標(0,0,−15)とする。被照射面801a及び対向被照射面801bを、X−Z平面に対して対称に配置する。本実施の形態においては、被照射面801aは、X−Z平面に平行なX−Z平面からY軸の+方向に40mm離れた平面である。また、対向被照射面801bは、X−Z平面に平行なX−Z平面からY軸の−方向に40mm離れた平面である。
【0062】
図17〜
図19より、基板1900に実装される発光素子200の周辺である、Z軸座標が0〜170までの範囲で従来よりも照度が上昇する。
【0063】
黒色ホルダーを使用する従来では、発光素子200の周辺全体が暗く、照明用レンズ100から出射された光が被照射面801a(対向被照射面801b)に当たり始めた付近に輝線(
図17上に破線で示す線)が生じる。この場合、照射光量の少ない領域と照明用レンズ100から出射された光が被照射面801a(対向被照射面801b)に当たり始める領域とのコントラストが強いため、上記の輝線が目立つ。これに対して、本実施の形態のようにホルダー900を透明な材料で形成した場合は、発光素子200周辺の照度を上げることができるので、上記のコントラストが弱まり、輝線も認識し難くなる。従って、輝線が認識し難くなったことにより、この領域も表示領域として使用することができるため、被照射面における額縁部分を狭くすることができる。
【0064】
(本実施の形態の効果)
このように、本実施の形態では、入射した光を被照射面に向けてバランス良く振り分けて出射する複数の光束制御部材を、発光素子と組み合わせて所定の向きで配列することにより、出射面部から出射される光を広範囲に拡げることができ、照度ムラの発生を抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、発光素子から出射されて入射した光の一部を、光軸と平行な壁面である第3の出射面部より出射させることにより、助走距離を短くして、被照射面における額縁部分を狭くすることができるので、被照射面において絵または文字等を記載するスペースの自由度を高めることができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、照明用レンズを収納するホルダーを透明にすることにより、本発明の照明装置に用いられる発光装置から発光装置近傍の被照射面を照明する光を出射させることができるので、照明用レンズをホルダーに収納した場合でも助走距離を短くすることができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、透明なホルダーを介して被照射面を照明することにより、被照射面のコントラストを弱めることができるので、被照射面における額縁部分を狭くすることができ、被照射面において絵または文字等を記載するスペースの自由度を高めることができる。
【0068】
なお、上記の実施の形態において、対向する被照射面と対向被照射面とを発光装置により照明したが、本発明はこれに限らず、1つの被照射面を発光装置により照明してもよい。この場合、全ての照明用レンズを、発光装置により照明する被照射面側に第1の出射面部が位置するように配列する。また、照明される被照射面と対向する対向被照射面には反射板を設けることにより、被照射面の照度を高めることができる。また、上記の実施の形態において、照明用レンズをホルダーに収納して基板に取り付けたが、本発明はこれに限らず、照明用レンズを直接基板に取り付けてもよい。
【0069】
また、被照射面に対する照明用レンズの出射面部の向きが、第1の出射面部と第2の出射面部とが交互に配列される場合について示したが、本発明はこれに限らず、全ての照明用レンズの第1の出射面部を被照射面側に向けて配列してもよい。また、全ての照明用レンズの第1の出射面部を反射板を設けた対向被照射面側に向けて配置し、照明用レンズから直接照射される光と反射板からの反射光とで被照射面を照明することができる。
【0070】
2010年7月14日出願の特願2010−159852の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。