特許第5736377号(P5736377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57363771−クロロ−4−(β−D−グルコピラノス−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形の調製方法
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  • 特許5736377-1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノス−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形の調製方法 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736377
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】1−クロロ−4−(β−D−グルコピラノス−1−イル)−2−[4−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 407/12 20060101AFI20150528BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 5/48 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C07D407/12CSP
   A61K31/351
   A61P3/00
   A61P3/10
   A61P5/48
   A61P3/06
   A61P9/10 101
   A61P3/04
   A61P9/12
   A61P9/04
   A61P19/06
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-531332(P2012-531332)
(86)(22)【出願日】2010年9月24日
(65)【公表番号】特表2013-505974(P2013-505974A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2010064117
(87)【国際公開番号】WO2011039107
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2012年3月29日
(31)【優先権主張番号】09171847.8
(32)【優先日】2009年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー ダーク
(72)【発明者】
【氏名】レンナー スヴェーニャ
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー トビアス
(72)【発明者】
【氏名】オルリッヒ シモーネ
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540373(JP,A)
【文献】 特開平10−085502(JP,A)
【文献】 新実験化学講座1 基本操作I,丸善株式会社,1975年,第318−327頁
【文献】 医薬品の残留溶媒ガイドラインについて,医薬審第307号,1998年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00−421/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形を調製する方法であって、以下の工程:
(a)化合物を少なくとも2つの溶媒の混合物に溶解して、溶液を形成する工程であって、第1の溶媒がトルエンおよびテトラヒドロフランからなる溶媒の群より選ばれ、第2の溶媒がメタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる溶媒のより選ばれる、前記工程;
(b)溶液を貯蔵して、溶液から化合物の結晶形を沈殿させる工程;
(c)溶液から化合物の結晶形を分離する工程
を含み、
ただし、第1の溶媒がテトラヒドロフランの場合、第2の溶媒はメタノール又は1-プロパノールではない、
前記方法。
【請求項2】
第1の溶媒が、トルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の溶媒が、エタノール、1-プロパノールまたは2-プロパノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの溶媒の混合物が、トルエン/エタノール、トルエン/1-プロパノール、トルエン/2-プロパノールからなる組み合わせの群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つの溶媒の混合物が、トルエン/エタノールからなる組み合わせである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比が1:5〜5:1の範囲にある、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比が1:2〜2:1の範囲にある、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つの溶媒の混合物が、テトラヒドロフラン/エタノール及びテトラヒドロフラン/2-プロパノールからなる組み合わせの群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比が1:10〜2:1の範囲にある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比が1:5〜1:1の範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比が1:4〜1:2の範囲にある、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
結晶形が、18.84、20.36および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とし、前記X線粉末回折パターンがCuKα1放射線を用いて作成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
X線粉末回折パターンが、14.69、19.16および19.50度2Θ(±0.1度2Θ)に更にピークを含み、前記X線粉末回折パターンがCuKα1放射線を用いて作成されている、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形の調製方法に関する。さらに、本発明は、その方法によって得られる結晶形および薬剤を調製するための結晶形の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼン(以下、“化合物A”と呼ぶ)は、国際公開第2005/092877号パンフレットに記載され、下記式Aの化学構造を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
本明細書に記載される化合物は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT、特にSGLT2に対して有効な阻害作用を有する。
国際出願第2006/120208号パンフレットには、SGLT2阻害剤、特に化合物Aのさまざまな合成方法が記載されている。
国際出願第2006/117359号パンフレットには、化合物Aの結晶形およびその調製方法が記載されている。好適な溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、ジエチルエーテル、アセトン、水、これらの混合物が結晶化プロセスのために記載されている。
化合物Aの合成において、例えば、国際出願第2006/120208号パンフレットによれば、ある不純物を最終物質の中に見いだすことができると述べられている。さらに、国際出願第2006/117359号パンフレットに記載される結晶化プロセスが、不純物の含量を減少させると共に化合物の純度を増加させることが見いだされているが、全体として満足すべき方法でない。
医薬分野において、非常に純粋な化合物が望ましいことは、当業者に周知である。純度が非常に高いことにより、長期貯蔵の安定性が改善され得る。一方、不純物は、望まれていない物理化学的性質、例えば、吸湿性、または薬理学的副作用に起因し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形を調製する有利な方法; 特に、結晶形が、ある不純物の含量が少ない、高純度で得ることができ、さらに/または技術上の支出が少なくかつ反応容器の時間あたりの生産量が大きい工業規模で結晶形の製造を可能にする確固たる方法を見いだすことである。
本発明の他の目的は、1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形を、特に高純度で提供することである。
本発明の目的は、さらに、結晶形を含む医薬組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、結晶形の使用を提供することである。
本発明の他の目的は、上記および以下の説明から直接当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形を調製する方法であって、以下の工程:
(a) 化合物を少なくとも2つの溶媒の混合物に溶解して、溶液を形成する工程であって、第1の溶媒がトルエンおよびテトラヒドロフランからなる溶媒の群より選ばれ、第2の溶媒がメタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる溶媒のグループより選ばれるか、または第1の溶媒がエタノールであり、第2の溶媒が酢酸エチル、酢酸n-プロピルおよびメチルエチルケトンからなる溶媒の群より選ばれる、前記工程;
(b) 溶液を貯蔵して、溶液から化合物の結晶形を沈殿させる工程;
(c) 溶液から化合物の結晶形を分離する工程
を含む、前記方法に関する。
本発明の方法については、結晶形を高純度かつ高収量で、特に商業的に実行可能な規模で得ることができることが分かる。本方法は、技術上の支出が少なくかつ反応容器の時間あたりの生産量が大きい。出発材料の純度変化の可能性にもかかわらず、本方法は、結晶形を高純度で生じる。特に、下記式IMP.1およびIMP.2の不純物を高度に減少させることができる:
【0007】
【化2】
【0008】
他の態様において、本発明は、上文や下文に記載されているプロセスによって得られる化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形に関する。
他の態様において、本発明は、18.84、20.36および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むX線粉末回折パターンを有し、前記X線粉末回折パターンがCuKα1放射線を用いて作成されている化合物1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノス-1-イル)-2-[4-((S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ)ベンジル]ベンゼンの結晶形であって、HPLCによって測定される純度が99%より高いことを特徴とする、前記化合物の結晶形に関する。
さらに他の態様において、本発明は、上文や下文に記載される結晶形を含む医薬組成物に関する。
さらに他の態様において、本発明は、代謝障害、特に、1型および2型糖尿病、糖尿病の合併症、代謝性アシドーシスまたはケトーシス、反応性血糖低下、高インスリン血症、グルコース代謝障害、インスリン抵抗、代謝性症候群、異なる由来の異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および関連疾患、肥満、高血圧、慢性心不全、浮腫および高尿酸血症からなる群より選ばれる代謝障害の治療または予防に適している医薬組成物を調製するための上文や下文に記載されている結晶形の使用に関する。
本発明の態様は、さらに、本発明の以下の詳細な説明と実施例から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】化合物Aの結晶形を示すバックグラウンド補正X線粉末回折図形である。
図2】化合物Aの結晶形のDSCによる熱分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
化合物Aのこの結晶形は、特に国際公開第2006/117359号パンフレットに記載される、これらの特徴的X線粉末回折(XRPD)パターンによって同定され得る。
結晶形は、18.84、20.36および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とし、前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を用いて作成されている。
特に、前記X線粉末回折パターンは、14.69、18.84、19.16、19.50、20.36および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含み、前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を用いて作成されている。
前記X線粉末回折パターンは、14.69、17.95、18.84、19.16、19.50、20.36、22.71、23.44、24.81および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)のピークをさらに特徴とし、前記X線粉末回折パターンはCuKα1放射線を用いて作成されている。
より詳しくは、化合物Aの結晶形は、国際公開第2006/117359号パンフレットの表1に含まれているかまたは本出願の実験Aの表1に含まれているまたは国際公開第2006/117359号パンフレットの図1に示されているかまたは本出願の図1に示されている度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むCuKα1放射線を用いて作成されるX線粉末回折パターンを特徴とする。
さらに、化合物Aの結晶形は、約151℃±5℃の融点(DSCによる定量; 開始温度で評価; 加熱速度10K/分)を特徴とする。
X線粉末回折パターンは、本発明の範囲内で、位置感度が良い検出器(OED)とX線源(CuKα1放射線、λ=1,54056オングストローム、40kV、40mA)としてのCu陽極を取付けた透過方式のSTOE - STADI P-回折計を用いて記録される。
【0011】
実験誤差を可能にするために、上記の2Θ値は、±0.1度2Θ、特に±0.05度2Θまで正確であるとみなされなければならない。即ち、化合物Aの結晶の或る試料が本発明の結晶形であるかを評価するときに、試料が実験的に観測される2Θ値が固有値の±0.1度2Θ、特に±0.05度2Θに包含される場合には、上記固有値と同一であるとみなされなければならない。
融点は、DSC 821(Mettler Toledo)を用いてDSC(示差走査熱量計)によって求められる。
本発明は、化合物Aの結晶形を調製する方法であって、以下の工程:
(a)化合物Aを少なくとも2つの溶媒の混合物に溶解して、溶液を形成する工程であって、第1の溶媒がトルエンおよびテトラヒドロフランからなる溶媒の群より選ばれ、第2の溶媒がメタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる溶媒のグループより選ばれるか、または第1の溶媒がエタノールであり、第2の溶媒が酢酸エチル、酢酸n-プロピルおよびメチルエチルケトンからなる溶媒の群より選ばれる、前記工程;
(b)溶液を貯蔵して、溶液から化合物Aの結晶形を沈殿させる工程;
(c)溶液から化合物Aの結晶形を分離する工程
を含む、前記工程に関する。
第1の溶媒は、好ましくはトルエンおよびテトラヒドロフランからなる溶媒の群より選ばれる。
第2の溶媒は、好ましくはメタノール、エタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる溶媒の群より; より好ましくはエタノール、1-プロパノールおよび2-プロパノールからなる溶媒の群より選ばれる。
【0012】
好適な変形例によれば、第1の溶媒はエタノールであり、第2の溶媒は酢酸n-プロピルまたは酢酸エチルである。
少なくとも2つの溶媒の混合物の例は、トルエン/メタノール、トルエン/エタノール、トルエン/1-プロパノール、トルエン/2-プロパノール、テトラヒドロフラン/メタノール、テトラヒドロフラン/エタノール、テトラヒドロフラン/1-プロパノール、テトラヒドロフラン/2-プロパノール、エタノール/酢酸n-プロピル、エタノール/酢酸エチル、エタノール/メチルエチルケトンである。
少なくとも2つの溶媒の混合物の好適な例は、トルエン/エタノール、トルエン/1-プロパノール、トルエン/2-プロパノール、テトラヒドロフラン/エタノール、テトラヒドロフラン/1-プロパノール、テトラヒドロフラン/2-プロパノール、エタノール/酢酸n-プロピル、エタノール/酢酸エチルである。
第1の溶媒と第2の溶媒との質量比は、好ましくは約1:10〜10:1、より好ましくは約1:5〜5:1、さらにより好ましくは約1:2〜2:1、最も好ましくは約1:1の範囲にある。
好適な例トルエン/エタノール、トルエン/1-プロパノール、トルエン/2-プロパノール、エタノール/酢酸n-プロピル、エタノール/酢酸エチルに関して、第1の溶媒と第2の溶媒との質量比は、好ましくは1:5〜5:1、より好ましくは1:2〜2:1、最も好ましくは約1:1の範囲にある。
好適な例テトラヒドロフラン/エタノール、テトラヒドロフラン/1-プロパノール、テトラヒドロフラン/2-プロパノールに関して、第1の溶媒と第2の溶媒との質量比は、好ましくは約1:10〜2:1、より好ましくは約1:5〜1:1、さらにより好ましくは約1:4〜1:2の範囲にある。
工程(a)において、化合物Aは、例えば化合物Aの合成において得られる、非晶形または結晶形でまたは溶液として使うことができる。
好ましくは、工程(a)において得られる溶液は、所定の温度で飽和したまたはほとんど飽和した溶液である。
【0013】
用語“飽和した”または“ほとんど飽和した”は、工程(a)に用いられる化合物Aの出発物質に関連がある。例えば、化合物Aの出発物質に関して飽和した溶液は、結晶形に関して過飽和であってもよい。
化合物Aと溶媒の混合物との質量比は、好ましくは1:8〜1:2、より好ましくは1:6〜1:3、さらにより好ましくは1:5〜1:4の範囲にある。
工程(a)において、溶液は、溶液の沸騰温度までまたは約60℃〜120℃の範囲、例えば約100℃の温度に加熱され得る。工程(a)において得られる溶液は、例えば木炭上で、ろ過され得る。
工程(b)の始めに、好ましくは、工程(a)において得られた溶液に、必要によりろ過工程の後でもよい溶液に、化合物Aの種結晶を添加する。化合物Aの全量に相対する種結晶の量は、約5質量%まで、より好ましくは約0.001〜1質量%の範囲にあり得る。種結晶は、例えば国際公開第2006/117359号パンフレットに記載されるプロセスによって得ることができる。種結晶は、好ましくは約30℃〜80℃、最も好ましくは約60〜75℃の範囲の温度で添加する。あるいは、結晶化は、当該技術において既知の方法、例えば引掻くかまたは摩擦することによって誘発され得る。
工程(b)において、高収量の化合物Aの沈殿した結晶形を得るために、好ましくは温度を低下させる。温度は、連続してまたは所定の冷却ランプによって低下させることができる。冷却ランプの一例は、60±5℃に約30分以内で、次に50±5℃に約90分以内で、次に40±5℃に約60分以内で、次に25±5℃に約60分以内である。工程(b)の終わりに好適な最終温度は、約-10℃〜40℃、より好ましくは約0℃〜35℃、最も好ましくは約10℃〜30℃の範囲にある。
工程(b)の時間は、約30分〜48時間、好ましくは約3〜6時間の範囲にあり得る。
工程(b)は、撹拌の有無にかかわらず行われ得る。工程(b)における時間および温度の差が当業者に知られているので、得られた結晶のサイズ、形状および品質を変えることができる。
【0014】
工程(c)において、例えば遠心またはろ過によって得られた結晶を分離する。好ましくは、得られた結晶を溶媒または溶媒の混合物で洗浄し、溶媒は好ましくはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールまたはtert-ブチルメチルエーテルからなる群より選ばれる。最も好適な溶媒は、エタノールである。好ましくは残存する溶媒(1つ以上)は、有利には、乾燥工程において、好ましくは約0℃〜100℃、例えば、約50℃〜80℃の範囲にある温度で、結晶から除去される。1つ以上の溶媒の含量を所定の値より低く低下させるためにこの乾燥工程の温度、圧力および時間を選択することができる。例えば、結晶形におけるトルエンの含量は、890ppm以下、好ましくは500ppmより少なく、より好ましくは300ppmより少なくするように選ばれ得る。結晶形におけるエタノールの含量は、5000ppm以下、好ましくは2000ppmより少なく、より好ましくは1000ppmより少なくするように選ばれ得る。
詳しくはおよび/または一般的には国際出願第2005/092877号パンフレットに記載または引用されている方法によって化合物Aを合成することができる。さらに、化合物Aの生物学的性質を国際出願第2005/092877号パンフレットに記載されているように調べることができ、この明細書の開示内容は全体で本願明細書に組み込まれている。
本発明の結晶形は、好ましくは、実質的に純粋な形で、即ち、化合物Aの他の結晶形を本質的に含まない薬剤活性物質として使われる。しかし、本発明は、また、1つ以上の他の結晶形を他の結晶形と混合して本明細書に定義される結晶形を包含する。薬剤活性物質が結晶形の混合物であるときは、物質が少なくとも50%の本明細書に記載される結晶形を含むことが好ましい。
本発明の他の態様によれば、18.84、20.36および25.21度2Θ(±0.1度2Θ)にピークを含むX線粉末回折パターンを有し、前記X線粉末回折パターンがCuKα1放射線を用いて作成されている化合物Aの結晶形は、HPLCによって測定される純度が99%より高いことを特徴とする。純度は、好ましくは99.5%より高く、より好ましくは99.7%より高く、最も好ましくは99.8%より高い。
好ましい実施態様において、上文で定義された結晶形は、下記式IMP.1の化合物の含量がHPLCによって測定される1.00%以下を特徴とする。
【0015】
【化3】
【0016】
式IMP.1の化合物の含量は、HPLCによって測定される好ましくは0.15%以下、より好ましくは0.05%以下である。
好ましい他の実施態様において、上文で定義された結晶形は、下記式IMP.2の化合物の含量がHPLCによって測定される0.15%以下を特徴とする。
【0017】
【化4】
【0018】
式IMP.2の化合物の含量は、HPLCによって測定される好ましくは0.05%以下である。
より好ましい実施態様によれば、結晶形は、上で定義された式IMP.1およびIMP.2の化合物の含量を特徴とする。
上文や下文に述べる純度および不純物は、当業者に知られている方法によって定量され得る。好ましくは、純度および不純物は、HPLCによって測定される。純度は、好ましくは、100%マイナス全ての数量化した不純物の合計として求められる。
好ましくは、HPLC装置は、C18カラム、特に逆相HPLCに用いられる微小粒子C18充填カラムを備え、例えば、立体的に保護されたC18固定相(例えばジイソブチルn-オクタデシルシラン)を多孔性シリカマイクロスフェア(例えば孔サイズが80オングストローム)に化学結合することによって調製される。カラムおよびマイクロスフェアの有利な寸法は、4.6mm(内のり寸法)×50mmのカラムおよび1.8μmである。例えば224nmでのUV-検出が好ましい。
このようなHPLCに典型的なパラメータは、以下の通りである:
装置: UV-検出によるHPLC
カラム: C18、1,8μm、50*4.6 mm
カラム温度: S20℃
【0019】
【0020】
流速: 1.5 mL/分
解析時間: 12分
平衡時間: 4分
注入量: 8μl
検出: 224nm
好適な溶離剤は、以下の通りである:
溶離剤A: 水+0.1%トリフルオロ酢酸
溶離剤B: アセトニトリル+ 0.1%トリフルオロ酢酸
試料またはブランク溶液として好適な溶媒は、アセトニトリル/水の50/50(v/v)混合物である。好ましくは、水を含むすべての溶媒は、HPLCグレードである。
SGLT活性を阻止する能力からみて、本発明の結晶形は、SGLT活性、特にSGLT-2活性の阻止によって影響することができる全ての状態または疾患の治療および/または予防的治療用の医薬組成物の調製に適する。それ故、結晶形は、疾患、特に代謝障害、または1型および2型糖尿病、糖尿病の合併症(例えば、網膜症、腎症または神経障害、糖尿病性足病変、潰瘍、動脈硬化性血管合併症)、代謝性アシドーシスまたはケトーシス、反応性血糖低下、高インスリン血症、グルコース代謝障害、インスリン抵抗、代謝性症候群、異なる由来の異常脂質血症、アテローム性動脈硬化症および関連疾患、肥満、高血圧、慢性心不全、浮腫および高尿酸血症のような状態の予防または治療用の医薬組成物の調製に特に適している。結晶形は、また、ベータ細胞変性、例えば、膵臓ベータ細胞のアポトーシスまたは壊死を予防するための医薬組成物の調製に適している。結晶形は、また、膵臓細胞の機能性を改善するかまたは回復させ、また、膵臓ベータ細胞の数とサイズを増大させる医薬組成物の調製に適している。本発明の結晶形は、また、利尿剤または抗高血圧剤として有効でかつ急性腎不全の予防および治療に適している医薬組成物の調製のために用いることができる。
【0021】
本発明の結晶形の投与によって、肝臓における脂肪の異常な蓄積を低下させるかまたは阻止させることができる。それ故、本発明の他の態様によれば、それを必要としている患者において肝臓脂肪の異常な蓄積によるものと考えられる疾患または状態を予防するか、遅らせるか、遅延させるかまたは治療するための方法であって、本発明の医薬組成物が投与されることを特徴とする、前記方法が提供される。肝臓脂肪の異常な蓄積によるものと考えられる疾患または状態は、一般的な脂肪肝、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、特に、栄養過剰による脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコールによる脂肪肝または毒性脂肪肝からなる群より選ばれる。
特に、本発明の結晶形は、糖尿病、特に1型および2型糖尿病、および/または糖尿病の合併症の予防または治療用の医薬組成物の調製に適している。
さらに、本発明の結晶形は、太りすぎ、肥満(クラスI、クラスIIおよび/またはクラスIIIの肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満の予防または治療に特に適している。
治療または予防に対応する活性を達成するのに必要とされる用量は、通常、患者、病気または状態の種類と重さおよび投与の方法と回数に左右され、患者の医師が決めることである。便宜上、用量は、経口経路によって1〜100mg、各々の場合に、1日に1〜4回投与され得る。このために、本発明の医薬組成物は、好ましくは、結晶形を1つ以上の慣用の不活性担体および/または希釈剤と一緒に含む。このような医薬組成物は、慣用のガレヌス製剤、例えば、素錠またはコーティング錠、カプセル剤、散剤、懸濁液剤または坐薬として配合され得る。
以下の合成例は、化合物Aおよびその結晶形を調製する方法を具体的に説明するものである。その内容に本発明を限定せずに、一例として記載される可能な方法とのみみなされるべきである。
【0022】
HPLCによる純度または不純物の定量:
この方法は、化合物Aの有機不純物の定量のために用いられる。数量化は、外部規準液によって行われる。試薬(アセトニトリル、水、トリフルオロ酢酸(TFA))は、HPLCグレードが用いられる。用語“化合物AXX”は、本発明の方法によって得られる化合物Aの結晶形を意味する。
移動相
溶離剤A: 水+ 0.1% TFA
溶離剤B: アセトニトリル+ 0.1% TFA
溶液
溶媒: アセトニトリル/水(50/50(v/v))
ブランク溶液: 溶媒
溶液1
0.5mg/mlの化合物IMP.2の濃度を有する溶液を調製する; 例えば、25mgの物質を計量し、2mLのメタノールに溶解し、全量の50mLまで溶媒で希釈する。
システム適合性溶液(SST)
約0.5%のIMP.2を含有する、濃度が0.5mg/mlの化合物AXXを有する溶液を調製する; 例えば、25mgの化合物AXXを計量し、2mLのメタノールに溶解し(超音波によって)、250μLの溶液1を添加した後、全量の50mLまで溶媒で希釈する。必要により約0.5%の以下の可能な不純物が添加され得る: IMP.1
報告すべき閾値(0.05%)
0.05%の設定濃度を有する溶液を調製する。それ故、50μlの幹溶液を全量の100mLまで溶媒で希釈する。
試料溶液
分析される物質の溶液を0.8mg/mLの濃度で調製する。それ故、例えば、40mgの物質を計量し、2mLのメタノールに溶解し、全量の50mLまで溶媒で希釈する。この溶液を2回調製する。
幹溶液
化合物AXXの溶液を0.8mg/mLの濃度で調製する。それ故、例えば、40mgの物質を計量し、2mLのメタノールに溶解し、全量の50mLまで溶媒で希釈する。この溶液を2回調製する。
標準溶液(0.5%)
計量した設定試料と比較して濃度が4μg/mlの化合物AXXの溶液を調製する。それ故、例えば、250μlの幹溶液を50mLで希釈する。この溶液を2回調製する(各幹溶液から1回)。
クロマトグラフィーパラメータ:
装置: UV-検出によるHPLC
カラム: Zorbax SB-C18、1,8μm、50*4.6mm(製造業者: Agilent)
カラム温度: 20℃
【0023】
【0024】
流速: 1.5mL/分
解析時間: 12分
平衡時間: 4分
注入量: 8μl
検出: 224nm
【0025】
注入:

【0026】
典型的な保持時間:
SST-溶液のクロマトグラムのピークの溶出の順序は、実施例クロマトグラムに対応しなければならない。ピークの帰属は、実施例クロマトグラムまたは相対保持時間(RRT)によって行われる。
【0027】
【0028】
評価:
不純物の含量の算出は、下記式に従って行われる。
【0029】
【0030】
PFX: ピーク面積
EWX: 計量
VX: 希釈が行われる容積
VF: 希釈係数
作用強度: 化合物AXX標準物質の既知の作用強度%
化合物Aの試料の純度は、100%マイナス全ての数量化不純物の合計として算出される。
【0031】
化合物Aの調製:
用語“室温”または“周囲温度”は、約20℃の温度を意味する。
GC ガスクロマトグラフィー
hrs 時間
i-Pr イソプロピル
Me メチル
min 分
THF テトラヒドロフラン
【0032】
【化5】
【0033】
実施例1: フッ化物VIII.1の合成
塩化オキサリル(176kg; 1386モル; 1,14当量)を2-クロロ-5-ヨード安息香酸(343kg; 1214モル)(化合物IX.1)、フルオロベンゼン(858kg)およびN,N-ジメチルホルムアミド(2kg)の混合物に約25〜30℃の範囲にある温度で3時間以内に添加する(ガス発生)。添加の終了後、反応混合物を約25〜30℃の温度でさらに2時間を撹拌する。溶媒(291kg)を40と45℃の間の温度で留去する(p=200mbar)。次に、反応溶液(911kg)を塩化アルミニウムAlCl3(181kg)とフルオロベンゼン(192kg)に約25と30℃の間の温度で2時間以内に添加する。反応溶液を同じ温度でさらに約1時間撹拌する。次に、反応混合物を570kgの水の量に約20と30℃の間の温度で約2時間以内に添加し、さらに1時間撹拌する。相分離の後、有機相(1200kg)を二等分に分ける(それぞれ600kg)。有機相の第1の半分から溶媒(172kg)を約40〜50℃の温度で留去する(p=200mbar)。次に、2-プロパノール(640kg)を添加する。この溶液を約50℃に加熱し、次に木炭カルトゥーシュでろ過する(透明なろ過)。ろ過の間にカルトゥーシュを交換し、ろ過後にフルオロベンゼン/2-プロパノール混合物(1:4; 40kg)で洗浄することができる。溶媒(721kg)を約40〜50℃の温度およびp=200mbarで留去する。次に、2-プロパノール(240kg)を約40と50℃の間の範囲にある温度で添加する。GCによって定量されるフルオロベンゼンの含量が1%より多い場合には、さらに140kgの溶媒を留去し、2-プロパノール(140kg)を添加する。次に、溶液を約50℃から40℃に1時間以内に冷却し、種結晶(50g)を添加する。この溶液を約40℃から20℃に2時間以内にさらに冷却する。水(450kg)を約20℃で1時間以内に添加し懸濁液を約20℃でさらに1時間撹拌した後、懸濁液をろ過する。ろ過ケークを2-プロパノール/水(1:1; 800kg)で洗浄する。<0.06% w/w の水分レベルが得られるまで生成物を乾燥する。有機相の第2の半分を同様に処理する。白色からオフホワイトの結晶の外見を有する生成物の合計410kg(収率94%)を得る。生成物の同一性は、赤外分光光度法によって求める。
【0034】
実施例2: ケトンVII.1の合成
フッ化物VIII.1(208kg)、テトラヒドロフラン(407kg)および(S)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン(56kg)の溶液にテトラヒドロフラン(388kg)中のカリウム-tert-ブタノレート溶液(20%)を16〜25℃の温度で3時間以内に添加する。添加の終了後、この混合物を20℃の温度で60分間撹拌する。次に、変換をHPLC分析によって求める。水(355kg)を21℃の温度で20分以内に添加する(水中急冷)。反応混合物を30分間撹拌する(温度: 20℃)。スターラーのスイッチを切り、この混合物を60分間放置する(温度: 20℃)。相を分離し、溶媒を減圧下に19〜45℃の温度で有機相から留去する。残留物に2-プロパノール(703kg)を40〜46℃の温度で添加し、溶媒を減圧下に41〜50℃の温度で留去する。残留物に2-プロパノール(162kg)を47℃の温度で添加し、溶媒を減圧下に40〜47℃の温度で留去する。次に、この混合物を0℃に1時間55分以内に冷却する。生成物を遠心機により集め、2-プロパノール(158kg)の混合物で、引き続きtert-ブチルメチルエーテル(88kg)で洗浄し、減圧下に19〜43℃で乾燥する。227kg(91.8%)の生成物を無色の固形物として得る。生成物の同一性を赤外分光光度法によって求める。
【0035】
実施例3: ヨウ化物V.1の合成
トルエン(366.8kg)中のケトンVII.1(217.4kg)および塩化アルミニウム(AlCl3; 81.5kg)の溶液に1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(TMDS、82.5kg)を1時間30分以内に添加する(温度: 18-26℃)。添加の終了後、この混合物を24℃の温度でさらに1時間撹拌する。次に、変換をHPLC分析によって求める。引き続き、反応混合物をアセトン(15.0kg)で処理し、27℃の温度で1時間5分間撹拌し、残留TMDS含量をGCによって分析する。次に、反応混合物に水(573kg)と濃塩酸(34kg)の混合物を20〜51℃の温度で添加する(水中急冷)。反応混合物を30分間撹拌する(温度: 51℃)。スターラーのスイッチを切り、この混合物を20分間放置する(温度: 52℃)。相を分離し、有機相から溶媒を減圧下に53-73℃の温度で留去する。残留物にトルエン(52,8kg)とエタノール(435,7kg)を61〜70℃の温度で添加する。反応混合物を36℃の温度に冷却し、種結晶(0.25kg)を添加する。この温度で35分間撹拌を続ける。次に、この混合物を0〜5℃に冷却し、さらに30分間撹拌する。この生成物を遠心機により集め、エタノール(157kg)で洗浄し、減圧下に15〜37℃で乾燥する。181kg(82.6%)生成物を無色の固形物として得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。
【0036】
実施例4: ラクトンIV.1の合成
D-(+)-グルコン酸-デルタ-ラクトンIVa.1(42.0kg)、テトラヒドロフラン(277.2kg)、4-メチルモルホリン(NMM; 152.4kg)および4-ジメチルアミノピリジン(DMAP; 1.44kg)の懸濁液をクロロトリメチルシラン(TMSCl; 130.8kg)で13〜19℃において50分以内に処理する。添加の終了後、20〜22℃で1時間30分間撹拌を続け、変換をHPLC分析によって求める。次に、n-ヘプタン(216.4kg)を添加し、この混合物を5℃に冷却する。水(143kg)を3〜5℃で15分以内に添加する。添加の終了後、この混合物を15℃に加熱し、15分間撹拌する。スターラーのスイッチを切り、この混合物を15分間放置する。次に、相を分離し、有機層を水で2回連続して洗浄する(それぞれ143kg)。次に、溶媒を減圧下に38℃で留去し、残留物にn-ヘプタン(130kg)を添加する。得られた溶液をろ過し、フィルターをn-ヘプタン(63kg)ですすぐ(フィルター溶液と生成物溶液を合わせる)。次に、溶媒を減圧下に39〜40℃で留去する。残留物の含水量をカール-フィッシャー分析によって求める(結果: 0.0%)。112.4kgの生成物を油状物として得る(残留n-ヘプタンを含有し、このことにより収率>100%が説明される)。生成物の同一性を赤外分光光度法によって求める。
【0037】
実施例5a: グルコシドII.1の合成
テトラヒドロフラン(429kg)中のヨウ化物V.1(267kg)の溶液にターボグリニャール溶液(イソプロピルマグネシウムクロリド/塩化リチウム溶液、14質量%のiPrMgCl/THF、LiCl:iPrMgClモル比 = 0.9-1.1モル/モル)(472kg)を-21〜-15℃の温度で1時間50分以内に添加する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める。ヨウ化物V.1に対応するピークの領域が双方のピーク、ヨウ化物V.1とヨウ化物V.1の対応するデスヨード化合物の全面積の5.0%より小さいときに、反応が完了したとみなされる。反応が完了しない場合には、基準が満たされるまでさらにターボグリニャール溶液を添加する。この具体的な場合、結果は3.45%である。次に、ラクトンIV.1(320kg)を-25〜-18℃の温度で1時間25分以内に添加する。得られた混合物を-13〜-18℃でさらに1時間30分間撹拌する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める(情報のために)。終了時に、水中のクエン酸の溶液(938L; 濃度: 10質量%)を約2500L容積の反応混合物に13〜19℃で1時間25分以内に添加する。反応混合物(残留量: 1816-1905L)から溶媒を減圧下に20〜30℃で部分的に留去し、2-メチルテトラヒドロフラン(532kg)を添加する。次に、スターラーのスイッチを切り、相を29℃で分離する。相分離の後、有機相のpH値を、pH電極(Mettler Toledo MT HA 405 DPA SC)あるいはpH試験紙(例えばpH-Fix 0-14、Macherey and Nagel)で測定する。測定したpH値は、2〜3である。次に、有機相から溶媒を減圧下に30〜33℃で留去し、メタノール(1202kg)を添加し、続いてメタノール(75kg)中の1.25NHClの溶液を20℃(pH = 0)で添加する。引き続き減圧下に20〜32℃で蒸留し、メタノール(409kg)を添加することによって、アセタールIII.1へ完全な変換が達成される。
【0038】
2つの基準が満たされるときに反応の完了が得られる:
1) 中間体III.1のアルファ形+ベータ形のHPLC-領域の合計と中間体IIIa.1の領域との比が96.0%以上 : 4.0%である。
2) 中間体III.1のアルファ形のHPLC-領域とIII.1のベータ形との比が97.0% 以上 : 3.0%である。
この具体的な場合、双方の基準が満たされている。トリエチルアミン(14kg)を添加し(pH = 7,4)、溶媒を減圧下で留去し、アセトニトリル(835kg)を添加し、減圧下でさらに蒸留する。この手順を反復し(アセトニトリルの添加: 694kg)、得られた混合物に塩化メチレン(640kg)を添加して、アセトニトリルと塩化メチレン中のアセタールIII.1の混合物を得る。カールフィッシャー滴定によって混合物の含水量を求める(結果: 0.27%)。
次に、反応混合物を、AlCl3(176kg)、塩化メチレン(474kg)、アセトニトリル(340kg)およびトリエチルシラン(205kg)の予め形成された混合物に10〜19で1時間40分以内に添加する。得られた混合物を18〜20℃で70分間撹拌する。反応の完了後、水(1263L)を20〜30℃で1時間30分以内に添加し、この混合物を大気圧下30〜53℃で部分的に蒸留し、相を分離する。トルエン(698kg)を有機相に添加し、溶媒を減圧下に22〜33℃で留去する。次に、種結晶(0.5kg)を31℃で添加することによって生成物を結晶化し、20℃に冷却した後に水(267kg)を添加する。反応混合物を5℃に55分以内に冷却し、3〜5℃で12時間撹拌する。最後に、生成物を遠心機により無色の結晶固形物として集め、トルエン(348kg)で洗浄し、22〜58℃で乾燥する。211kg(73%)の生成物を得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。
【0039】
実施例5b: グルコシドII.1の合成
テトラヒドロフラン(55mL)中のヨウ化物V.1(30g)の溶液にターボグリニャール溶液(イソプロピルマグネシウムクロリド/塩化リチウム溶液、14質量%のiPrMgCl/THF、LiCl:iPrMgClモル比 = 0.9-1.1モル/モル)(53g)を-14〜-13℃の温度で35分以内に添加する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める。ヨウ化物V.1に対応するピークの領域が双方のピーク、ヨウ化物V.1とヨウ化物V.1の対応するデスヨード化合物の全面積の5.0%より小さいときに、反応が完了したとみなされる。反応が完了しない場合には、基準が満たされるまでさらにターボグリニャール溶液を添加する。この具体的な場合、結果は0.35%である。次に、ラクトンIV.1(36g)を-15〜-6℃の温度で15分以内に添加する。得られた混合物を-6〜-7℃でさらに1時間撹拌する。添加の終了後、変換をHPLC分析によって求める(情報のために)。終了時に、水中のクエン酸の溶液(105mL; 濃度: 10質量%)を反応混合物に15〜10℃で30分以内に添加する。反応混合物(残留量: 200mL)から溶媒を減圧下に20〜30℃で部分的に留去し、2-メチルテトラヒドロフラン(71mL)を添加する。次に、この混合物を30℃で25分間撹拌する。次に、スターラーのスイッチを切り、相を30℃で分離する。相分離の後、有機相のpH値を、pH電極(Mettler Toledo MT HA 405 DPA SC)あるいはpH試験紙(例えばpH-Fix 0-14、Macherey and Nagel)で測定する。測定したpH値は、3である。次に、有機相から溶媒を減圧下に35℃で留去し、メタノール(126mL)を添加し、続いてメタノール(10.1mL)中の1.25NHClの溶液を25℃(pH = 1-2)で添加する。引き続き減圧下に35℃で蒸留し、メタノール(10.1mL)を添加することによって、アセタールIII.1へ完全な変換が達成される。
【0040】
2つの基準が満たされるときに反応の完了が得られる:
1)中間体III.1のアルファ形+ベータ形のHPLC-領域の合計と中間体IIIa.1の領域との比が96.0%以上 : 4.0%である。この具体的な場合、比は、99.6% : 0.43%である。
2)中間体III.1のアルファ形のHPLC-領域とIII.1のベータ形との比が97.0%以上 : 3.0%である。この具体的な場合、比は、98.7% : 1.3%である。
トリエチルアミン(2.1mL)を添加し(pH = 9)、溶媒を減圧下に35℃で留去し、アセトニトリル(120mL)を添加し、減圧下に30〜35℃でさらに蒸留する。この手順を反復し(アセトニトリルの添加: 102mL)、得られた混合物に塩化メチレン(55mL)を添加して、アセトニトリルと塩化メチレン中のアセタールIII.1の混合物を得る。カールフィッシャー滴定によって混合物の含水量を求める(結果: 0.04%)。
次に、反応混合物を、AlCl3(19.8g)、塩化メチレン(49mL)、アセトニトリル(51mL)およびトリエチルシラン(23g)の予め形成された混合物に20℃で1時間5分以内に添加する。得られた混合物を20〜30℃で60分間撹拌する。反応の完了後、水(156mL)を20℃で25分以内に添加し、この混合物を大気圧下55℃で部分的に蒸留し、相を33℃で分離する。この混合物を43℃に加熱し、トルエン(90mL)を有機相に添加し、溶媒を減圧下に41〜43℃で留去する。次に、アセトニトリル(10mL)を41℃で添加し、アセトニトリルのパーセントをGC測定によって求める。この具体的な場合、アセトニトリルパーセントは、27%質量である。次に、種結晶(0.1g)を44℃で添加することによって生成物を結晶化し、この混合物を44℃で15分間さらに撹拌する。次に、この混合物を20℃に60分以内に冷却し、水(142mL)を20℃で30分間添加する。反応混合物を0〜5℃に60分以内に冷却し、3℃で16時間撹拌する。最後に、生成物をフィルターにより無色の結晶固形物として集め、トルエン(80mL)で洗浄し、20〜70℃で乾燥する。20.4kg(62.6%)の生成物を得る。生成物の同一性をHPLC保持時間によって求める。
【0041】
結晶形の調製:
実験A:
トルエン(186.6kg)とエタノール(187.2kg)の混合物中の化合物A(79.0kg)の溶液を完全溶解まで加熱還流し、ろ過する(熱時ろ過)。フィルターをトルエン(19.6kg)で洗浄し、洗液を生成物溶液と合わせる。次に、生成物溶液を66℃に冷却し、種結晶(0.1kg)を添加する。次に、生成物溶液を所定の冷却傾斜を用いて22℃に冷却する: 30分以内に57℃に、次に90分以内に50℃に、次に60分以内に41℃に、次に60分以内22℃に。次に、懸濁液を21℃で1時間さらに撹拌し、遠心機により集め、エタノール(124.8kg)で洗浄し、約70℃で乾燥する。65.5kg(82.9%)の生成物を白色結晶としてHPLC純度99.9%で得る。
上文に記載される示差走査熱量計(DSC)によって、151℃の融点が求められる(図2)。
CuKα1放射線を用いる上文に記載されているX線粉末回折によって、結晶形を確認し、図1に示されるパターンを得る。図1に示される強度は、cps(毎秒カウント数)の単位で示され、バックグラウンド補正されている。
さらに、結晶形は以下の格子定数を特徴とする:斜方晶系対称性、空間群P212121、セルパラメータ、a=5.70(1)オングストローム、b=9.25(2)オングストローム、c=39.83(1)オングストローム、およびセル容積=2101(1)オングストローム3、CuKα1放射線を用いて室温で測定されるX線粉末図形の指数付けによって得ることができ、表1に含まれている度2Θ(±0.1程度2Θ)でピークを含む。上の表1において、“2Θ[o]”値は、回折角/度を示し、“d[オングストローム]”値は、格子面間の指定された距離/オングストロームを示す。さらに、h、k、lの指数付けおよび実験d値と計算d値の差/オングストロームを示す。
【0042】
表1: 結晶形Iの指数付け*X線粉末回折パターン(30o/2Θまでのピークのみが示される):

【0043】
* 指数付けについては、単結晶分析からの格子定数を出発値として用いる。
XRPDパターンからの所定のセルパラメータ: 指数付けされた30°Θまでのすべてのピーク(35)
対称性: 斜方晶
空間群: P212121
a = 5.70(1)オングストローム
b = 9.25(2)オングストローム
c = 39.83(1)オングストローム
α = β = γ = 90°
V = 2101(1)オングストローム3
性能指数: 118
【0044】
実験B:
以下の実験において、本発明の方法が上文に記載されている式IMP.1の不純物をどのように減少させることができるかを調べる。
表2の量が得られるように実験Aに従って得られる化合物Aの結晶形に式IMP.1の化合物を添加する。例えば、0.5質量%の混合物を得るために実験Aに従って得られる6.96gの化合物Aの結晶形と0.04gの化合物IMP.1を合わせる。
その後、この化合物の混合物の半分を実験室規模による実験Aの手順に従って再結晶する。化合物Aの結晶形を白色結晶物質として得る。式IMP.1の化合物の含量をHPLCによって分析する。
この化合物の混合物の残り半分を以下の手順に従ってメタノールと水の混合物を用いて再結晶する:
約7gの実験Aに従って得られる化合物Aの結晶形と化合物IMP.1の混合物をメタノール(7.1g)と水(7.3g)の混合物に添加し、完全溶解まで60℃に加熱する。透明な溶液を15分間撹拌する。次に、この溶液に水(11.9g)を添加し、添加の終了後、この溶液を57℃に冷却し、種結晶を添加する。次に、この溶液を57℃で30分間さらに撹拌する。次に、生成物溶液を25℃に2時間20分以内に冷却する。次に、懸濁液を25℃で15分間さらに撹拌し、フィルター上に集め、メタノール(1.66g)と水(9.5g)の混合物で洗浄し、約45℃で乾燥する。6.5g (93.1%) の生成物を白色結晶として得る。
化合物Aを白色結晶物質として得る。式IMP.1の化合物の含量をHPLCによって分析する。
【0045】
表2

【0046】
トルエンとエタノールの混合物による結晶化プロセスを用いて、メタノール/水混合物を用いたプロセスによるより不純物IMP.1のより良好な減少を得ることができることが見られる。
【0047】
実験C:
以下の実験において、本発明の方法が上文に記載されている式IMP.2の不純物をどのように減少させることができるかを調べる。
化合物Aの原料の異なる試料、例えば実施例5aまたは5bの最適化されていない実験室規模の手順から得られたものをHPLCによってIPM.2含量について分析する。
その後、各試料をトルエンとエタノールの混合物を用いて実験室規模で実験Aの手順に従って再結晶して、化合物Aの結晶形を得る。IPM.2の含量および化合物Aの結晶形の全体の純度をHPLCによって分析する。
【0048】
表3

【0049】
実験D:
以下の実験において、本発明の方法が化合物Aの原料をどのように精製することができるかを調べる。
化合物Aの原料の異なる試料、例えば実施例5aまたは5bの最適化されていない実験室規模の手順から得られたものをHPLCによって純度について分析する。
その後、各試料をトルエンとエタノールの混合物を用いて実験室規模で実験Aの手順に従って再結晶して、化合物Aの結晶形を得る。化合物Aの結晶形の全体の純度をHPLCによって分析する。
各試料の残り半分を実験Bに記載された手順に従ってメタノールと水の混合物を用いて再結晶する。
原料と結晶化材料の試料の純度を表4に示す。
【0050】
表4

【0051】
トルエンとエタノールの混合物による結晶化プロセスを用いて、メタノール/水混合物を用いたプロセスより高い純度の化合物Aを得ることができることが見られる。
【0052】
実験E:
以下の実験において、実験Aの再結晶手順の溶媒混合物の影響および純度と収率に対する比率を調べる。
それ故、化合物Aの原料の試料、例えば実施例5aまたは5bに従って得られるものを、その純度についてHPLCによって分析し、結果が95.16%であることわかる。次に、この試料を実験室規模(化合物A: 35g; 第1の溶媒と第2の溶媒の合計: 162g)で実験Aの手順に従って再結晶し、2つの溶媒エタノールとトルエンを表5における所定の溶媒混合物に対して置き換える変更によって、化合物Aの結晶形を得る。化合物Aの結晶形の全体の純度をHPLCによって分析する。
【0053】
表5

【0054】
実験F:
以下の実験において、本発明の方法がエタノールと水の混合物を用いた手順と比較して化合物Aの原料をどのように精製することができるか調べる(例えば、国際公開第2006/117359号パンフレットにおける実験“変形例2”を参照のこと)。
化合物Aの原料の試料、例えば実施例5aまたは5bの最適化されていない実験室規模の手順から得られたものをHPLCによって純度について分析する。
その後、試料をトルエンとエタノールの混合物を用いて実験室規模で実験Aの手順に従って再結晶して、化合物Aの結晶形を得る。化合物Aの結晶形の全体の純度をHPLCによって分析する。
各試料の残り半分を以下の手順に従ってメタノールと水の混合物を用いて再結晶する。
40gの化合物Aを約50℃までの加熱時に200mLの水/エタノール混合物(2:3の容積比)において解する。320mLの水を45〜50℃の温度範囲で添加し、この溶液を約20℃に1〜3時間で冷却する。16時間後、ろ過によって結晶形をベージュ色の結晶として分離する。生成物を高温で約4〜6時間(40〜50℃)乾燥する。
原料の試料および結晶化物質の純度を表6に示す。
【0055】
表6

【0056】
トルエンとエタノールの混合物による結晶化プロセスを用いて、メタノール/水混合物を用いたプロセスより高い純度の化合物Aを得ることができることが見られる。
図1
図2