特許第5736381号(P5736381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5736381-日焼け止め組成物 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736381
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】日焼け止め組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20150528BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20150528BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20150528BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/35
   A61K8/97
   A61K8/73
   A61Q17/04
   A61Q1/04
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-534283(P2012-534283)
(86)(22)【出願日】2010年10月12日
(65)【公表番号】特表2013-507445(P2013-507445A)
(43)【公表日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】US2010052292
(87)【国際公開番号】WO2011046919
(87)【国際公開日】20110421
【審査請求日】2013年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/250,615
(32)【優先日】2009年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309040701
【氏名又は名称】ワイス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100137040
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(72)【発明者】
【氏名】パテル,バルチャンドラ・ソマブハイ
(72)【発明者】
【氏名】ケニー,リチャード・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アギシム,ゲイリー・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ディッカーソン,ジェイ・ロバーツ
【審査官】 橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−065177(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0253812(US,A1)
【文献】 米国特許第07473707(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0319069(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0286217(US,A1)
【文献】 Spider Esters - A New Class of Polar Esters,米国,SurfaTech Corporation,2005年 7月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
味がマスクされた日焼け止め組成物を含むリップトリートメント組成物であって、その味がマスクされた日焼け止め組成物が少なくとも1種類の日焼け止めおよびクモ状エステルを含み、その日焼け止めおよびそのクモ状エステルが密接に会合しており、
前記密接な会合が、前記リップトリートメント組成物の他の構成要素と組み合わせる前に、少なくとも1種類の日焼け止めとクモ状エステルとを、光安定剤の存在下または非存在下に混合して予備混合物を形成することにより達成され、
前記少なくとも1種類の日焼け止めがアボベンゾンであり、
日焼け止めの総量のクモ状エステルに対する比率が重量により0.6〜2であり、
そのクモ状エステルがソルビトールの共通の連結基を有し、短いポリオキシアルケン鎖がその共通の連結基のそれぞれの酸素原子に結合しており、そのポリオキシアルケン鎖が、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位およびそれらの混合物から選択されるオキシアルケン単位を有し、それぞれの鎖中のポリオキシアルケン単位の数が1〜5単位であり、そのポリオキシアルケン鎖に対してエステル化された脂肪酸エステルが7〜21炭素原子のアルキル鎖を有し、
さらにユビキノン、オランダセンニチ花抽出物、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種類の成分を含む、
前記リップトリートメント組成物。
【請求項2】
前記日焼け止め組成物中の日焼け止めが、いずれも有機性日焼け止めである、請求項1に記載のリップトリートメント組成物。
【請求項3】
さらに光安定剤を含む、請求項1または2に記載のリップトリートメント組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載されたリップトリートメント組成物を含み、そのリップトリートメントが、伸ばすことができ、引っ込めることができる、リップバームスティック。
【請求項5】
さらにパラフィンろう、カルナウバろう、カンデリラろうおよびそれらの混合物から選択される構造物質を含む、請求項に記載のリップバームスティック。
【請求項6】
味がマスクされた日焼け止め組成物を含むリップトリートメント組成物であって、その味がマスクされた日焼け止め組成物が:
(a)その日焼け止め組成物の5〜30%wt/wtを構成する少なくとも1種類のクモ状エステル;
(b)その日焼け止め組成物の0.15〜50%wt/wtを構成する少なくとも1種類の皮膚保護剤;
(c)その日焼け止め組成物の3〜30%wt/wtを構成する少なくとも1種類の日焼け止め剤;
(d)その日焼け止め組成物の0.1〜5%wt/wtを構成する少なくとも1種類の光安定剤;
(e)その日焼け止め組成物の0.1〜30%wt/wtを構成する少なくとも1種類の増粘剤;
(f)その日焼け止め組成物の1〜65%wt/wtを構成する少なくとも1種類のスキンコンディショニング剤;および
(g)その日焼け止め組成物の0.1〜3%wt/wtを構成する少なくとも1種類の抗酸化剤;
を含み、
前記少なくとも1種類の日焼け止めがアボベンゾンであり、
日焼け止めの総量のクモ状エステルに対する比率が重量により0.6〜2であり、
そのクモ状エステルがソルビトールの共通の連結基を有し、短いポリオキシアルケン鎖がその共通の連結基のそれぞれの酸素原子に結合しており、そのポリオキシアルケン鎖が、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位およびそれらの混合物から選択されるオキシアルケン単位を有し、それぞれの鎖中のポリオキシアルケン単位の数が1〜5単位であり、そのポリオキシアルケン鎖に対してエステル化された脂肪酸エステルが7〜21炭素原子のアルキル鎖を有し、
前記リップトリートメント組成物の他の構成要素と組み合わせる前に、少なくとも1種類の日焼け止めとクモ状エステルとが、光安定剤の存在下または非存在下で混合されて密接な会合を形成している、
リップトリートメント組成物。
【請求項7】
前記味がマスクされた日焼け止め組成物がさらに香味料を含む、請求項に記載のリップトリートメント組成物。
【請求項8】
前記味がマスクされた日焼け止め組成物がさらに着色剤を含む、請求項またはに記載のリップトリートメント組成物。
【請求項9】
その着色剤が二酸化チタンを含有する、請求項に記載のリップトリートメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の有用な味をマスクしたリップトリートメント組成物およびその組成物を作る方法に関する。本発明のリップトリートメント組成物は有効量のUVAおよびUVB日焼け止めを含み、ここで有機性日焼け止め構成要素は効果的に味がマスクされている。
【背景技術】
【0002】
ヒトの唇はUVAおよび/またはUVB放射に晒された際に日焼けによる損傷(sun damage)を負う傾向がある。UVAおよびUVB放射からの有効な保護は、UVAおよびUVB放射の両方からの有効な保護を達成するために、かなりの量の日焼け止めおよびしばしば有機性日焼け止めの混合物の使用を必要とする。290nm〜320nmの波長範囲での放射であるUVBは、それが典型的に皮膚の発赤をもたらす放射であるため、伝統的に日焼け放射(sunburn radiation)として特性付けられてきた。発赤をもたらすことに加え、それは皮膚中の酵素的および非酵素的抗酸化剤を減少させ、皮膚における天然の保護機序を弱め、DNA損傷および皮膚癌になる可能性に寄与し得る。320nm〜400nmの波長範囲での放射であるUVA放射の危険性は、ごく最近認識されてきた。UVA放射への慢性的な曝露は、P53遺伝子のDNAに対する損傷を引き起こし得るものであり、これは癌につながる可能性がある。加えて、より長いUVAの波長は皮膚組織中への比較的深い浸透を可能にし、それは皮膚にその形状を与える弾性線維およびコラーゲンへの損傷を引き起こし、そうしてしわを、最終的には早すぎる皮膚の老化を引き起こす。従って、唇の皮膚を含む皮膚をUBAおよびUVBから保護することは、皮膚の健康および外観の維持にとって重要である。
【0003】
残念ながら、日焼け止め、特に有機性日焼け止めは味が悪い。UVA防御に特に有用であるアボベンゾン(avobenzone)を含む一部の日焼け止めは味が非常に悪い。この悪い味は、体の表面を日焼けによる損傷から保護するために体に適用されるローションに関しては問題ではないが、日焼け止めがリップトリートメント組成物中に組み込まれる場合、重大な問題になる。残念ながら、アボベンゾンと同じくらい有効にUVA防御を与える他の利用可能な日焼け止めが無い。
【0004】
本発明に先行して、SPF30以上の有効性(すなわちかなり大きなUVB防御)を有するであろう日焼け止めのレベルを有するリップバームまたはトリートメントの形成が、非常に不快な味を有する組成物をもたらした。その味は、使用する気を失わせる、および/または結果として限られたコンプライアンスをもたらすのに十分に不快である。SPF30以上の保護が要求される商業的な唇用製品は、味が悪いことが広く認識されている。UVA防御を提供するためのそのような組成物へのアボベンゾンの添加は、その問題を著しく悪化させる。
【0005】
慣例的に、不快な味を覆い隠す、またはマスクするために、甘味料および/または香味料が用いられてきた。このアプローチにおいて、その甘味料および/または香味料はその望ましくない味と競合する。これは一部の適用では成功する可能性があるが、それは有機性日焼け止めの非常に強い、および/または苦い香味の味をマスクするのには満足の行くものではない。加えて、その香味および/または甘味料は、その日焼け止めが唇上に留まっている時間枠全体にわたる味の持続を欠く可能性があり、結果としてある期間の後に嫌な味の感覚が生じる。
【0006】
コーティングおよび封入(encapsulation)の形態は、味をマスクするための他のアプローチである。しかし、コーティングおよび/または封入は、その有効薬剤の反応性または放出を変化させる可能性がある。さらに、唇用製品中の味の悪い物質のコーティングまたは封入は、典型的には摂取される物質の味をマスクすることよりもさらにもっと難しい問題であり、これは摂取される物質とは異なりその製品は数時間の期間の間唇の上に留まることが意図されているためである。唇上でのコーティングの完全性は、数分〜数時間の期間の間維持されなければならない。空気、水分および/または光への曝露の際のコーティングの完全性は、摂取可能な組成物を飲み込むのに必要な期間よりも何倍も長い期間にわたって維持されなければならない。
【0007】
長い使用期間にわたって味をマスクすることを維持する必要性に加えて、リップバーム中の日焼け止めの場合、その味をマスクする機構はその日焼け止めの唇の組織をUVAおよび/またはUVB放射から保護する機能を弱めるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも1種類の日焼け止めおよびクモ状エステル(spider ester)を含み、その日焼け止めおよびクモ状エステルが密接に会合している、味がマスクされた日焼け止め組成物を提供する。1つの典型的な態様において、その日焼け止めは有機性日焼け止めである。アボベンゾンは有機性日焼け止めの典型的なものである。1つの典型的な態様において、そのクモ状エステルは、グリセロール、グリコール、ソルビトール、およびそれらの組み合わせから選択される共通の連結基を有するクモ状エステル類からなるグループから選択される。
【0009】
味がマスクされた日焼け止め組成物の1つの典型的な態様において、日焼け止めの総量のクモ状エステルに対する比率は、重量により約0.6〜約2である。場合により、その味がマスクされた日焼け止め組成物はさらに光安定剤を含んでいてよい。
【0010】
本発明は味がマスクされた日焼け止め組成物を含むリップトリートメントを提供し、ここでその味がマスクされた日焼け止め組成物は少なくとも1種類の日焼け止めおよびクモ状エステルを含み、ここでその日焼け止めおよびクモ状エステルは密接に会合している。1つの典型的な態様において、そのリップトリートメントは、伸ばすことができ引っ込めることができるリップバームスティックである。
【0011】
本発明は、日焼け止め組成物の味をマスクする方法を提供する。その方法は、少なくとも1種類の日焼け止めをクモ状エステルと密接な会合状態で組み合わせることを含む。1態様において、その方法は、日焼け止めをクモ状エステルおよび場合により光安定剤とを、あらゆる追加の成分との組み合わせの前に組み合わせることを含む。
【0012】
1態様において、スティックリップバームを作る方法を提供する。その方法は、密接に会合した少なくとも1種類の日焼け止めおよびクモ状エステルを含む味がマスクされた組成物を、少なくとも1種類の融解した構造物質であるろう剤(structurant wax)と組み合わせることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、コートされた二酸化チタンの存在下で向上したアボベンゾンの安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、有機性日焼け止めについて味がマスクされている、有効量の有機性日焼け止めを有するリップバームを含むリップトリートメント、および日焼け止めに関する味をマスクする方法の両方に向けられている。好ましい態様において、そのリップトリートメントはスティックで提示されるリップバームである。本発明の味がマスクされた日焼け止めは、不快な感覚刺激特性を有する少なくとも1種類の日焼け止めおよび1種類以上のクモ状エステルを含む。
【0015】
用語“不快な感覚刺激特性”は、本明細書で用いられる際、その組成物の妥当な使用者が口および/または唇領域との接触の際に、および/または摂取の際に不快であると感じるであろう組成物と関係する味および/または匂いを意味する。味には、例えば苦味および/または酸味のような本質的な味、および/または、あるいは唇または口領域との接触により不快な感覚刺激的応答を与える匂いおよび/または香味が含まれてよい。
【0016】
日焼け止めの“有効量”という用語は、測定可能なSPF(日焼け防止指数)値および/またはUVA防御値を有することにより決定されるような太陽放射からの測定可能な保護を提供するのに十分な日焼け止めの量である。
【0017】
用語“SPF”(日焼け防止指数)は、日焼け止めで処置された皮膚上に最小紅斑量をもたらすのに必要なUVBエネルギーを、保護されていない皮膚上に最小紅斑量をもたらすのに必要なUVBエネルギーで割ったものを意味する。
【0018】
用語“クモ状エステル”は、例えば本明細書に援用される米国特許第7,473,707号において記述されているような、脂肪酸基が短いポリオキシアルキレン(polyoxalkylene)鎖に対してエステル化されており、それが今度は共通の連結基に結合しているものからなる化合物を意味する。
【0019】
本明細書で提供されるような“クモ状エステルの有効量”という用語は、少なくとも唇または口領域により接触された際に有機性日焼け止めまたは有機性日焼け止めの組み合わせの味をマスクすることを提供するのに十分なクモ状エステルの量として定義される。好ましい態様において、その味をマスクすることは、その有効物質の不快な味を本質的に完全に隠すことを達成するのに十分である。しかし、一部の適用では不快な味の程度の低減が適している可能性があることが認識されている。従って、不快な味を低減する、あるいは味を向上させるのに十分なクモ状エステルの量は、クモ状エステルの“有効量”の範囲内であると考えられるべきである。
【0020】
本明細書で用いられる際、“リップトリートメント”は、唇または口領域に保護的および/または保湿特性、および/または有益な薬剤および/または日焼け止めおよび/または医薬的有効物質を提供する、唇への適用のための半固体の組成物である。これらの組成物には、スティックで提示されるリップバーム、および例えば広口瓶、壷、またはチューブ中に分配されるリップバームのような軟らかいリップバームが含まれる。
【0021】
用語“スティックリップバーム”は、それを容器から伸ばすことができ、引っ込めることができ、典型的な商業的な輸送、貯蔵および使用の条件の下でそのスティックの形状を実質的に保持するのに十分に頑強であるスティックへと成形することができるのに十分な構造物質を有するリップバームを意味する。
【0022】
用語“リップスティック”は顔料を含有するろう様のスティック製品を意味し、ここでその顔料はその唇に目に見える色を与えるために唇に移すことができる。リップスティックは、化粧品またはリップトリートメントであってよい。リップスティックは、色を与えることに加えてそれが唇または唇領域に保護的および/または保湿特性、および/または有益な薬剤および/または日焼け止めおよび/または医薬的有効物質を提供するならば、リップトリートメントである。
【0023】
用語“有機性日焼け止め”は、ヒトの皮膚をUVAおよび/またはUVB放射から保護することができ、化学の分野の当業者により有機性化学物質として分類される種類の化合物である化合物または化合物の混合物を意味する。典型的な有機性日焼け止めには、アミノ安息香酸、アボベンゾン、シノテート(cinotate)、ホモサレート(homosalate)、メラジメート(meradimate)、オクトクリレン(octocrylene)、オキシベンゾン(oxybenzone)、オクチノキセート(octinoxate)、オクチサレート(octisalate)、パディメートO(padimate O)、エンスリゾール(ensulizole)、スルイソベンゾン(sulisobenzone)およびトロラミンサリチレート(trolamine salicylate)が含まれるが、それらに限定されない。
【0024】
用語“無機性日焼け止め”は、ヒトの皮膚をUVAおよび/またはUVB放射から保護することができ、化学の分野の当業者により無機性化学物質として分類される種類の化合物である化合物または化合物の混合物を意味する。典型的な無機性日焼け止めには酸化亜鉛および二酸化チタンが含まれるが、それらに限定されない。
【0025】
用語“約”または“おおよそ”は、当業者により決定される、明記された特定のパラメーターに関する許容可能な範囲内を意味し、それは部分的にどのようにその値が測定または決定されるか、すなわち、その測定系の限界に依存するであろう。例えば、“約”は所与の値の10%までの範囲を意味することができる。
【0026】
“パーセント”または“%”は、本明細書で用いられる際、別途明記しない限り、組成物全体の重量による百分率を指す。
用語“wt/wt”は、別途示さない限り、所与の構成要素または構成要素の明記された組み合わせのその組成物の総重量に対する重量を百分率として表したものを意味する。
【0027】
物質が半固体であるという表記は、約20℃〜約40℃の温度範囲におけるその物質の物理的状態を意味するものと受け取られるべきである。
用語“ワセリン”はワセリンゼリーを指し、それはパラフィンのより軟らかいメンバーまたは炭化水素のメタン系列の混合物であり、石油から蒸留における中間産物として得られる。ワセリンは典型的にはヒトの皮膚に適用された際に痛みを緩和するように知覚される。
【0028】
好ましい態様において、本発明のリップトリートメント組成物中の有機性日焼け止め(単数または複数)はクモ状エステルを用いて味を隠されている。味をマスクすることは、その有機性日焼け止め(単数または複数)およびクモ状エステル(単数または複数)および場合により光安定剤の間で密接な会合を形成させた後、その密接に会合した日焼け止めおよびクモ状エステルおよび場合により光安定剤をその組成物の他の構成要素と混合することにより達成される。
【0029】
クモ状エステルは、軟化薬としての化粧的使用に関して、米国特許第7,473,707号および米国公開出願番号2008/0319069、2009/0171057、および2009/0170943において、皮膚に関する保湿および軟化における使用に関して記述され、特許請求されており、それを本明細書に援用する。いわゆる“クモ状エステル”は、短いポリオキシアルキレンを通して共通の連結基につながった脂肪酸基を有する。結果として生じるエステルはクモに似た一般的な形状を有する三次元分子構造を有し、連結基が“クモ”の“体”を形成し、低い数のポリアルケニル基が体と“クモ”の残りの部分を形成する脂肪酸エステル基をつなぐ“クモの脚”の第1部分を形成する。共通の連結基と短いポリオキシアルキレン鎖の組み合わせが、回転が制限された三次元構造を作り出す。しかし、その確信に拘束されることを望むわけではないが、脂肪酸エステルはその構造から突き出ると信じられるため、それは慣習的な意味でのかご(cage)のような閉じた構造を形成しないと信じられる。さらに、クモ状エステルは、たとえそのクモ状エステルの構成ブロックが界面活性剤における一般的な構成ブロックであっても、界面活性剤特性を欠く普通でない特徴を有する。この界面活性剤特性の欠如は、分子構造における立体障害(stearic hindrance)によるものであると信じられる。
【0030】
味をマスクすることに関する特別な有用性を有するクモ状エステルは、グリセロール、グリコールまたはソルビトールから選択される共通の連結基を有し、エチレンオキシド単位の短い鎖、プロピレンオキシド単位の短い鎖、またはそれらの混合物がその連結基のそれぞれの酸素に結合したクモ状エステルである。それぞれの酸素に結合したポリオキシアルケン鎖は、好ましくは1〜5個のポリオキシアルケン単位を有する。そのポリオキシアルケン鎖に対してエステル化された脂肪酸エステルは、典型的には7〜21炭素原子のアルキル鎖を有する。1態様において、ソルビトールの共通の連結基を有するクモ状エステルが好ましい。グリセロール、グリコールおよびソルビトール連結基は商業的に入手可能であり、および/または米国特許第7,473,707号に従って調製することができる。
【0031】
1つの典型的な態様において、ソルビトールを共通の連結基として有するクモ状エステルを用いて有機性日焼け止め(単数または複数)の味をマスクすることは、重量により約1:1+/−10%の日焼け止めの総量およびクモ状エステルを用いて達成された。より一般的には、日焼け止めの量のクモ状エステルの量に対する比率は、重量により約0.6から約2まで;あるいは約0.85から約1.3まで;あるいは約0.85から約1.20までの範囲であってよい。理論により拘束されることを望むわけではないが、これらの比率は味をマスクすることを達成するのに必要な最小の比率であるが、味をマスクすることを妥協することなくより大きい量のクモ状エステルを用いることができ、例えば約10:1、あるいは約20:1、あるいは30:1、あるいは40:1、あるいは50:1のクモ状エステル対日焼け止め比を用いてよいと信じられる。本発明の味がマスクされた日焼け止め(単数または複数)は、少なくとも1種類のクモ状エステルと密接に会合した日焼け止め(単数または複数)の物理的組み合わせの結果として生じると信じられる。
【0032】
場合により、日焼け止め(単数または複数)とクモ状エステルの間のこの密接な会合は、例えばジエチルヘキシル2,6−ナフタレートのような光安定剤の存在下で形成されてよい。その配合物に分解を受けやすいアボベンゾンのような日焼け止め(単数または複数)が含まれる場合、光安定剤の使用が望ましい可能性がある。代表的な光安定剤には、ジエチルヘキシル2,6−ナフタレート、オクトクリレン、エチルヘキシルメトキシクリレン(ethylhexyl methoxycrylene)、4−メチルベンジリデンカンファー、ベモトリジノール(bemotrizinol)、ビソクトリゾール(bisoctrizole)、ブチルオクチルサリチレート、ヘキサデシルベンゾエート、ブチルオクチルベンゾエート、テレフタリリデンジカンファースルホン酸およびジエチルヘキシルシリンギリデンマロネート(diethylhexyl syringylidene malonate)が含まれる。上記のリストは光安定剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の光安定剤の使用を考えてよい。光安定剤は、リップバーム組成物全体の約0.1%〜約5%、あるいは約0.1%〜2%、あるいは約0.1%から約1%までの量で用いられてよい。
【0033】
日焼け止めおよびクモ状エステルの間の密接な会合の形成は、味をマスクすることの達成における重要な要因である。そのクモ状エステルは、日焼け止めおよびクモ状エステルを他の構成要素と組み合わせる前に、味を隠される日焼け止め(単数または複数)と混合されるべきである。クモ状エステルおよび味を隠される日焼け止めの混合は、クモ状エステルおよび味を隠される日焼け止め(単数または複数)の間の密接な会合の形成を提供する。用語“密接な会合”は、そのクモ状エステルおよびその日焼け止めが、周囲温度において安定であるが100℃より上の温度まで加熱された場合は分離し得る安定な相互作用または“複合体”を形成する際に用いられる。一部の態様において、その日焼け止めおよびそのクモ状エステルの間の密接な関係の形成を促進するために、そのクモ状エステル日焼け止め混合物を温めることが望ましい。典型的な態様において、そのクモ状エステルおよびその日焼け止めを一緒に混合し、約40℃〜約80℃に約30分間〜約2時間、攪拌しながら加熱する。クモ状エステルおよび日焼け止めの、好ましくは加温の存在下でのこの予備混合は、味をマスクすることを達成するために必要であり、すなわち、クモ状エステルおよび日焼け止めが単に組成物中に存在するだけではその日焼け止めの味をマスクすることが提供されない。場合により、日焼け止めの分解を抑えるために、この予備混合物中に光安定剤が含まれてよい。
【0034】
クモ状エステルは味をマスクする能力を有するが、味をマスクする程度は用いられるクモ状エステルおよび/または味を隠される日焼け止めに依存して異なる可能性がある。例えば、典型的な態様において、2つの同じ有機性日焼け止め混合物を、2種類の異なるクモ状エステルと、重量により約1:1の比率の量で密接に接触した状態に置いた。一方の日焼け止め混合物の試料はグリセロールに基づくクモ状エステルと接触した状態に置き、他方はソルビトールに基づくクモ状エステルと接触した状態に置き、それぞれの混合物を約40℃〜約50℃に約30分間、攪拌しながら加熱した。次いで、このように処理した日焼け止めを、2つの同じリップバーム組成物中に組み込んだ。その典型的な試験組成物において、有機性日焼け止めの嫌な味はソルビトールに基づくクモ状エステルを有する組成物では本質的に完全に隠され、一方でグリセロールに基づくクモ状エステルを有する組成物は日焼け止めと会合したクモ状エステルを欠いた組成物を越えて向上したが、ソルビトールに基づくクモ状エステルを有する組成物に関する向上よりは低かった。味が隠されたことは、当業者が一般的に用いる官能検査法、すなわち試験する組成物をヒトの対象の唇に適用し、ヒトの対象が評価を提供することにより決定された。
【0035】
本発明の実施において有用な代表的な有機性日焼け止め(それぞれの日焼け止めの%wt/wtでの最大適当量をその日焼け止めの後に列挙する)には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:アミノ安息香酸(約15%)、アボベンゾン(約3%)、シノキセート(cinoxate)(約3%)、オクチルメトキシシンナメート(octyl methoxycinnamate)(約10%)、ホモサレート(約15%)、メラジメート(約5%)、オクトクリレン(約10%)、オクチノキセート(約7.5%)、オキシベンゾン(約6%)、ジオキシベンゾン(約3%)、パディメートO(約8%)、エンスリゾール(約4%)、スルイソベンゾン(約10%)、トロラミンサリチレート(約12%)、ベンゾフェノン(約10%)、ベンジリジン(benzylidine)化合物(約6%)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(約5%)、ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(約10%)、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート(約6%)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(約10%)、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(diethylhexyl butamido trazoine)(約10%)、フェニルジベンズイミダゾール四スルホン酸二ナトリウム(disodium phenyl dibenzylmidazole tetrasulfonate)(約10%)、ドロメトリゾールトリシロキサン(drometrizole trisiloxane)(約15%)、エチルヘキシルジメチルパラアミノ安息香酸(約8%)、エチルヘキシルメトキシシンナメート(約10%)、エチルヘキシルサリチレート(約5%)、エチルヘキシルトリアゾン(約5%)、イソアミルp−メトキシシンナメート(約10%)、4−メチルベンジリデンカンファー(約10%)、メチレンビス−ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(約10%)、PEG−25パラアミノ安息香酸(paramainobenzoic acid)(約5%)、フェニルベンズアミド(phenylbenziamido)メチルベンジリデンカンファー(約6%)、ポリシリコン−15 テレフタリリデン(terephthalyidene)ジカンファースルホン酸(約10%)、bet、2−グルコピラノキシプロピルヒドロキシルベンゾフェノン(約5%)、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(約10%)、ジイソプロピルメチルシンナメート(約10%)、ジメトキシフェニル−[1−(3,4)−4,4−ジメチル] 1,3 ペンタンジオン(約7%)、エチルヘキシルジメチルオキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオネート(約3%)、フェルラ酸(ferulic acid)(約10%)、グリセリルエチルヘキサノエートジメトキシシンナメート(約10%)、グリセロールパラ−アミノ安息香酸(約10%)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(約3%)、および前記のいずれかのあらゆる組み合わせ。上記のリストは有機性日焼け止めの余すところのないリストではなく、当業者は他の有機性日焼け止めの使用を考えてよい。上記のリストにおいて列挙されている量はそれぞれ、それぞれの日焼け止めに関するものである。複数の日焼け止めが用いられる一部の態様において、日焼け止めの全部組み合わせた量は、それぞれの構成要素の日焼け止めに関する最大適当量の合計以下であるべきである。
【0036】
リップトリートメント組成物において単一の日焼け止めを用いてよいが、それぞれの日焼け止めはそれが保護を与える特有の波長範囲を有し、典型的にはその範囲は保護が望まれる範囲全体よりも小さいため、典型的には日焼け止めの組み合わせが用いられるであろう。従って、日焼け止めの組み合わせの使用は、より広い波長の範囲にわたる保護を提供する。加えて、保護の有効性は日焼け止めの量にも関係している。用いることができるそれぞれの日焼け止め化合物の量は監督機関により制限されているため、多数の日焼け止めの使用は規制のコンプライアンスを維持しながら保護のレベルを向上させることができる。
【0037】
好ましい有機性日焼け止め、それらの有効な波長範囲および好ましい量は、以下の通りである:アミノ安息香酸、260nm〜313nm、約5%〜約15%;パディメートO、290nm〜315nm、約1.4%〜約8%;ジオキシベンゾン、260nm〜380nm、約1%〜約3%;オキシベンゾン、270nm〜350nm、約2%〜約6%;スルイソベンゾン、260nm〜375nm;約5%〜約10%;シノキセート、270nm〜328nm、1%〜約3%;オクトクリレン、250nm〜360nm、7%〜約10%;アボベンゾン、320nm〜400nm、1%〜約3%;オクチルサリチレート、280nm〜320nm、3%〜約5%;ホモサレート、295nm〜315nm、4%〜約15%;トロラミンサリチレート、260nm〜320nm、5%〜約12%;オクチノキセート、290nm〜320nm、2%〜約7.5%。好ましい態様において、少なくとも2種類の日焼け止めが用いられ、ここで第1の日焼け止めは約260nm〜約300nmを含む有効な波長範囲を有し、第2の日焼け止めは約320nm〜約370nmを含む有効な波長範囲を有する。
【0038】
アボベンゾンの使用は、それがほとんどの日焼け止めが限られた保護しか提供しない〜全く保護を提供しない範囲である約320nm〜約400nmの範囲において有効であるため、UVA防御に特に望ましい。しかし、上記で言及したように、アボベンゾンは特に嫌な感覚刺激特性を有する。従って、本発明に先行して、リップトリートメントにおける有効量のアボベンゾンの使用は、非常に嫌な味を有するためほとんどの人がそれを彼らの唇に適用するのに全く気が進まないであろう組成物をもたらした。
【0039】
一部のリップバームの態様において、例えば二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛のような無機性日焼け止めも含まれるのが望ましい可能性がある。そのような化合物は約2%〜約25%wt/wtの量で用いられてよく、より高い量はより高いレベルの保護を提供する。残念ながら、無機酸化物のより高い量はよりよい保護を提供するが、それらは典型的には皮膚の表面に白色物質の厚い層も与え、それは唇上では非常に望ましくない。従って、唇用組成物に関して、無機性日焼け止めは好ましくは無機性日焼け止めの総量が約15%wt/wt未満;あるいは約10%未満、あるいは約5%未満である量で用いられる。望まれる保護のレベルを達成するため、無機性日焼け止めは好ましくは有効な保護を得るために唇用組成物中で有機性日焼け止めとの組み合わせで用いられる。
【0040】
典型的な日焼け止めを含む味がマスクされたリップトリートメント組成物は、さらにろう剤または他の医薬的に許容できるビヒクル、軟化薬、油、および場合により1種類以上の医薬および/または他の有効薬剤および/または1種類以上の有益な薬剤を含む。
【0041】
ろう剤および/または油および/または半固体の炭化水素物質は、典型的にはリップトリートメントおよび/またはリップバームと関係する唇保護剤および/または閉塞特性を提供する。さらに、ろう剤および/または油および/または半固体の炭化水素物質は、スキンコンディショニング剤および皮膚保護剤として機能する。典型的なスキンコンディショニング剤には、水素化ポリ(C6〜14オレフィン)、イソプロピルミリステート、パラフィン、蜜ろう、ペルフルオロノニルジメチコン、補酵素Q10配合物およびオランダセンニチ花抽出物配合物が含まれる。代表的な皮膚保護剤はジメチコンである。ろう剤は典型的にはスティックリップバームのための構造物質としても役立ち、スティックが使用においてスティックの形を維持しながら伸ばされ、引っ込められることを可能にする。スティック組成物に関する適切なろう剤には、動物ろう、植物ろう、鉱物ろう、シリコンろう、合成ろうおよび石油ろうが含まれる。典型的な具体的なろう剤および用いられる量には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:カルナウバろう(約0.1〜約5%);パラフィンろう(約10〜約40%);白ろう(約0.5〜約10%);カンデリラろう(約0.1〜約10%);蜜ろう(約1%〜約50%)、ホホバろう(約0.1〜約10%)、オゾケライト(ozokerite)(約0.1〜約10%)、ポリエチレン(約0.1〜約10%)およびそれらの組み合わせ。上記のリストはろう剤、油、半固体の炭化水素物質、スキンコンディショニング剤および皮膚保護剤の余すところのないリストではなく、当業者は他のろう剤、油、半固体の炭化水素物質、スキンコンディショニング剤および皮膚保護剤の使用を考えてよい。
【0042】
保護剤特性を提供することに加えて、油および半固体の炭化水素物質は様々に、例えば軟化性を提供し、他の構成要素を可溶化し、感覚刺激/感覚的特質、例えば唇の感触に寄与し、光沢のある外観に寄与し、滑りを提供し、そして適用において見返り(payoff)に影響を与える可能性がある。さらに、油および半固体の炭化水素物質はスキンコンディショニング剤および皮膚保護剤として、一部の場合では増粘剤として機能する。本発明において用いることができる典型的な油および半固体の物質には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:ラノリンおよびラノリン誘導体、ワセリン、ポリアルファオレフィン類、例えば水素化ポリデセン、プロピオン酸アラキジル(arachidyl propionate)、セチルアルコール、イソプロピルラノレート、イソプロピルミリステート、鉱油、軽油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ポリブテンエチルマカダミエート(polybutene ethyl macadamiate)、ヒマシ油、ホホバエステル油、アーモンド油、麦芽の油、アボカド油、ペルヒドロスクアレン(perhydrosqualene)、水素化ヒマシ油、水素化植物油、セチルリシノレート(cetyl ricinoleate)、プロピレングリコール、イソプロピルパルミテート、ステアリルアルコール、植物バターならびに揮発性および非揮発性シリコン油;ならびに前記のいずれかのあらゆる組み合わせ。適切なシリコン油には、ポリフェニルメチルシロキサン、ジメチコン類、シクロメチコン類(cyclomethicones)、フルオロシリコン類(fluorosilocones)、および前記のいずれかのあらゆる組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。上記のリストは油および半固体の炭化水素物質、スキンコンディショニング剤、皮膚保護剤および増粘剤の余すところのないリストではなく、当業者は他のろう剤、油、半固体の炭化水素物質、スキンコンディショニング剤および皮膚保護剤の使用を考えてよい。所与の油および/または半固体の炭化水素物質の量は典型的には約0.1〜約40%、あるいは約0.1〜約25%、あるいは約0.1〜約5%であり、そのような物質の総量は典型的にはスティックリップバーム製品に関して約50%未満である。
一部の態様において、油の一部はシリコン油であることが好ましく、これはそれがその組成物の唇上での持続を促進し、保湿、滑らかな感触および拡散の容易さを提供するためである。例えばジメチコンのような一部のシリコン油は、保護剤特性も提供する。典型的な態様において、ジメチコンは約0.15%〜約6%、あるいは約1%〜約3.5%、あるいは約1.5%〜約3.5%の量で用いられてよく;および/またはペルフルオロノニルジメチコンは約0.05%〜約6%、あるいは約0.1%〜約5%、あるいは約0.3%〜約5%の量で用いられてよい。ジメチコンおよび/またはフルオロシリコンが用いられる一部の態様において、それらを可溶化剤、例えば水素化ポリデセンと混合した後、それらを他のろう剤および油と組み合わせるのが望ましい。
【0043】
その組成物はさらに保湿油を含んでいてよい。その組成物中での使用に適した典型的な保湿油には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:ヒマワリ油、ヤシ油、ヒマシ油、植物油、トウモロコシ油、アロエベラ油、キャノーラ油、大豆油、ホホバ油、オリーブ油、ババス油、アボカド油、アプリコット油、メドウフォーム種子油、マカダミア種子油、オート麦カーネル油、パーム種子油、サフラワー油、ビャクダン油、ゴマ油、アーモンド油、麦芽油、クランベリー油およびそれらの組み合わせ。上記のリストは保湿油の余すところのないリストではなく、当業者は他の保湿油の使用を考えてよい。油はその組成物中に約1%〜約65%の量で含まれてよい。
【0044】
場合により、そのリップトリートメント組成物はさらに1種類以上の抗酸化剤を含んでいてよい。抗酸化剤はその組成物を酸化(例えば酸敗すること)から保護する、および/または唇への適用の際に唇の条件調節の利益を提供することができる。トコフェロール類、トコフェリルアセテート、一部の植物バターおよび緑茶抽出物は、その組成物における使用に適した典型的な天然産物の抗酸化剤である。他の適切な抗酸化剤には、没食子酸のプロピルオクチルおよびドデシルエステル類、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレト酸が含まれる。単一の抗酸化剤を用いてよく、または2種類以上の抗酸化剤の組み合わせを用いてよい。上記のリストは抗酸化剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の抗酸化剤の使用を考えてよい。典型的には、抗酸化剤の総量は約4%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満である。
【0045】
場合により、そのリップトリートメント組成物はさらに、例えば少なくとも一時的に細線(fine line)および/またはしわを目立たなくするような、老化の外観を低減する化合物を含んでいてよい。老化の外観を低減する有機化合物には補酵素Q、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩類およびヒアルロン酸の誘導体、ならびにオランダセンニチ花が含まれるが、それらに限定されない。補酵素Qの配合物は商業的に入手可能である。商業的に入手可能な補酵素Q10配合物のある例は、補酵素Q10(ユビキノン)(7.500%)、dl−α−トコフェリルアセテート(ビタミンE)(20.000%)およびアルキル安息香酸エステル(C12〜15アルキルベンゾエート)(72.500%)を含有する。ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の誘導体およびヒアルロネートの配合物は商業的に入手可能である。商業的に入手可能なヒアルロン酸塩配合物のある例は、エチルヘキシルパルミテート(95.300%)、ジメチルシリル化シリカ(silican dimethyl silylate)(2.500%)、ブチレングリコール(1.000%)、カプリリルグリコール(caprylyl glycol)(0.500%)、フェノキシエタノール(0.350%)、ヘキシレングリコール(0.100%)、ヒアルロン酸ナトリウム、低分子量(0.145%)およびヒアルロン酸ナトリウム、高分子量(0.055%)を含有する。オランダセンニチ花の配合物は商業的に入手可能である。商業的に入手可能なオランダセンニチ花配合物のある例は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(97.050%)およびオランダセンニチ花抽出物(2.950%)を含有する。単一の抗酸化剤、または2種類以上の抗酸化剤の組み合わせが用いられてよい。上記のリストは老化の外観を低減する有機化合物の余すところのないリストではなく、当業者は他の老化の外観を低減する有機化合物の使用を考えてよい。典型的には、老化の外観を低減する有機化合物の総量は約4%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満である。
【0046】
老化の外観を低減する無機化合物は、典型的には回折または光の散乱によりそれを行う。典型的な老化の外観を低減する無機化合物にはコロイド状二酸化ケイ素およびヒュームドアルミナ(fumed alumina)が含まれるが、それらに限定されない。典型的には、老化の外観を低減する無機化合物の総量は約3%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満である。
【0047】
場合により、そのリップトリートメント組成物はさらに保存剤を含んでいてよい。適切な保存剤には、パラベン類、パラベン類の混合物、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素およびそれらの混合物が含まれる。上記のリストは保存剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の保存剤の使用を考えてよい。保存剤の総量は好ましくは1%未満、あるいは0.5%未満、あるいは0.2%未満である。
【0048】
場合により、そのリップトリートメント組成物はさらに、本発明の組成物からなるスティックの形成において有用な硬さおよび構造的支持を提供するための増粘剤を含んでいてよい。適切な増粘剤にはカルナウバろう、白ろう、パラフィン、カンデリラろう、微結晶ろう(microcrystalline was)、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オゾケライトおよびそれらの混合物が含まれる。上記のリストは増粘剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の増粘剤の使用を考えてよい。増粘剤の総量はその組成物の約0.1〜約30%wt/wtである。
【0049】
場合により、その組成物はさらに香味料を含んでいてよい。香味料は典型的には約0.1〜5%の量で用いられる。量はその香味料の効力およびその中にその香味料が存在する母材に応じて異なってよい。香味料は天然産物、合成された香味料、またはそれらの組み合わせに由来してよい。香味料は単一の香味または香味の組み合わせであってよい。香味料は商業的に入手可能である。商業的に入手可能な香味料の例はグレープフルーツライムの香味であり、それは天然および人工の香味(99.95%)、中鎖トリグリセリドおよびビタミンE(0.05%)を含有する。
【0050】
場合により、甘味料、例えばスクラロース、サッカリン、アスパルテーム、ステビア(steva)およびそれらの組み合わせが約0.01%〜約0.1%の量で組成物中に含まれてよい。
【0051】
場合により、その組成物はさらに、メントール、カンファー、ユーカリ、サリチル酸、アラントイン、ベンゾカイン、サリチル酸の誘導体、フェノールおよびプラモキシンが含まれるがそれらに限定されない医薬を含んでいてよい。一部の態様において、ワセリンおよび/またはジメチコンも医薬の利益を提供してよい。上記のリストは医薬の余すところのないリストではなく、当業者は他の医薬の使用を考えてよい。典型的には、医薬目的のみで添加される医薬は、約3%未満の量で添加されるであろう。量はその医薬の効力およびその中にその医薬が存在する母材に応じて異なってよい。
【0052】
場合により、その組成物および/または唇に色を与える着色剤がその組成物中に含まれていてよい。リップバームに関して、その着色剤は適用の間に唇に色を与える着色剤の移動を可能にするであろう量、粒径であるべきではなく、および/またはそのような母材中に存在するべきではない。リップスティックに関しては、唇に移り、唇に色を与える着色剤を用いるべきである。着色剤には、例えば天然の着色剤、例えば植物抽出物、天然の鉱質、またはカーミン、合成された、および/または処理された着色剤物質、例えば酸化鉄類、合成染料、有機化合物、レーキ着色剤、およびFDAが唇上での使用に関して認可した着色剤が含まれる。上記のリストは着色剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の着色剤の使用を考えてよい。着色剤の配合物は商業的に入手可能である。商業的に入手可能な着色剤のある例は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(59.5%)、二酸化チタン(39.6%)、ヒマシ油ホスフェート(0.5%)およびトリエトキシカプリリルシラン(0.4%)を含有する。二酸化チタンを含有する着色剤の使用は、アボベンゾンのような一部の日焼け止めの安定性に影響を及ぼす可能性がある。コートされた二酸化チタンを含有する着色剤はアボベンゾンの安定性を高めることができることが観察されている。場合により、一部の態様において、例えば真珠のような光沢のある(pearlescent)物質のような、色増強剤が含まれることが望ましい可能性がある。
【0053】
場合により、感覚剤(sensate)がその組成物中に含まれていてよい。感覚剤は、皮膚および/または唇と接触した際に、例えば加熱または冷却のような感覚認知を開始する組成物である。典型的な感覚剤には薄荷抽出物、桂皮抽出物、およびカプサイシンが含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、感覚剤は天然源に由来する。しかし、合成感覚剤はこの発明の範囲内である。感覚剤は典型的には高い効力を有し、従って低いレベルで著しい影響をもたらすことができる。上記のリストは感覚剤の余すところのないリストではなく、当業者は他の感覚剤の使用を考えてよい。典型的には、約3%未満、あるいは約2%未満、あるいは約1%未満の感覚剤が用いられる。
【0054】
場合により、当業者に既知の他の有益な薬剤が同様にその組成物中に含まれてよい。アロエ抽出物および天然の有機酸は、他の有益な薬剤の典型的なものである。α−ヒドロキシ酸類が含まれる天然の有機酸は、例えば剥離剤(exfoliants)の役目を果たすことができる。乳酸は典型的なα−ヒドロキシ酸である。
【0055】
典型的な製造プロセスにおいて、そのクモ状エステルおよび有機性日焼け止め(単数または複数)および場合により光安定剤を組み合わせ、密接な会合の形成を可能にした後、そのリップトリートメント組成物の他の構成要素と組み合わせる。本発明の組成物は、ろう剤を融解させ、他の構成要素をその融解したろう剤混合物に攪拌しながら添加することにより調製することができる。典型的には、その成分は、あらゆる固体物質を融解させるために十分に加熱しながら、そして完全な混合を達成するために攪拌しながら、段階的に組み合わせられる。その予め形成されたクモ状エステル、有機性日焼け止めおよび場合により光安定剤の密接な会合物を、その融解したろう剤混合物に添加する。
【0056】
全ての成分を組み合わせたら、その組成物を容器に移す。軟らかいリップバームに関して、その組成物を典型的には、例えば広口瓶、または壷、またはチューブのような、貯蔵および軟らかい物質の取り出しを容易にする容器の中に入れる。スティックリップバームに関して、典型的にはその融解した組成物をスティックを形成する容器(単数または複数)の中に入れ、凝固させる。場合により、一度その容器に入れたら、スティックの形成が最適化されるようにそれが凝固するように、形成しているスティックに1回以上の加熱および冷却のサイクルを施してよい。スティックリップバームの場合、そのスティックを形成する容器は典型的には施与チューブ(dispensing tube)である。そのようなプロセスにおいて、その融解した組成物は容器の壁に接触し、一度凝固したらそのスティックリップバームは容器の壁と接触したままになる。
【0057】
あるいは、その融解した組成物を型の中に充填し、その型の中で凝固させてスティックまたは弾丸(bullet)を形成する。一度形成されたら、そのスティック/弾丸を型から取り外し、施与容器中に置く。典型的なリップスティック組成物は、施与装置としての役目も果たすスティック形成容器にその融解したリップスティック組成物を直接移した場合、使用において変形するため、そのスティック/弾丸成型プロセスはリップスティックに関して好まれる。リップスティック組成物は典型的には、顔料を分散させる、および移すために典型的に用いられる高レベルの油のため、その施与チューブの壁に触れた際に、より変形を受けやすい。
【0058】
スティックまたは弾丸に関する典型的な適切な分配容器は、使用者の唇への適用を容易にするためにそのスティックを施与容器から伸ばし、保管のためにそのスティックを引っ込めてその容器の中に戻すことを可能にする昇降器部分を含む。
【実施例】
【0059】
実施例1
味がマスクされた日焼け止め組成物
日焼け止めがソルビトールクモ状エステルと密接に会合している混合物の、典型的な味がマスクされた日焼け止め組成物、およびその密接に会合した組成物を形成するための方法を提供する。この組成物および方法は、この発明の範囲内にある多くの組成物および方法の代表的なものである。その典型的な態様は、説明目的で提供される。
【0060】
理論に拘束されることを望むわけではないが、本発明者らは、構成要素のいくつかの混合の順番は、味をマスクすることを達成する能力に直接関係していると信じる。すなわち、そのクモ状エステルおよび味がマスクされる日焼け止め(単数または複数)および場合により光安定剤を一緒に混合し、密接な会合を形成させた後、リップトリートメント組成物の他の構成要素と組み合わせるべきである。
【0061】
1つの典型的な態様において、クモ状エステル物質ソルベス−2−ヘキサオレエート(sorbeth−2−hexaoleate)を約50〜55℃に温め、味がマスクされる有機性日焼け止めおよび光安定剤と、温度を維持して攪拌しながら組み合わせて密接な関係を形成させた後、他の構成要素と組み合わせた。実施例2の表1、2および3のリップトリートメント組成物において用いられた味がマスクされた日焼け止め組成物に関して、クモ状エステルソルベス−2−ヘキサオレエートをジエチルヘキシル 2,6−ナフタレート(光安定剤)、ならびにホモサレート、オクチルサレート(octylsalate)、オキシベンゾン、オクチノキセートおよびアボベンゾンが含まれる日焼け止めの混合物と組み合わせた後、この混合物を他の構成要素と組み合わせた。より詳細には、1つの典型的な態様において、その日焼け止めおよび光安定剤を加熱したクモ状エステルに連続的に添加し、それぞれの添加の後攪拌を継続し、混合物が均一になるまで温度を維持した。1つの典型的な態様において、添加の順序はオキシベンゾン、サリチル酸オクチル(octyl salicylic)、アボベンゾン、ホモサレート、およびジエチルヘキシル−2−ナフタレートであった。
【0062】
実施例2
味がマスクされた日焼け止め組成物
味がマスクされた日焼け止めおよび増進された機能性を有するスティックリップバーム組成物の典型的な組成を、表1、2、3および3Aに示す。表1、2、3および3Aの組成物を作る、ならびにスティックリップバームを形成するための典型的なプロセスも提供する。これらの組成物および方法は、この発明の範囲内にある多くの組成物および方法の代表的なものである。その典型的な態様は説明目的で提供される。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3-1】
【0066】
【表3-2】
【0067】
典型的な態様において、表1、2、3および3Aの組成物を、白ろう、カルナウバろう、パラフィンろうを含むろう剤およびセチルアルコールを組み合わせ、85〜90℃に温めることにより調製した。一度そのろう剤が融解し始めたら、その混合物をLightninミキサーで攪拌した。メチルパラベンおよびプロピルパラベンをイソプロピルミリステート中で溶解させた。そのパラベンミリステート混合物をその融解したろう剤に攪拌を継続しながら添加し、温度を70〜75℃まで下げた。実施例1で記述したように前もって調製したクモ状エステル−日焼け止め組成物を、その融解したろう剤混合物に、攪拌しながら添加した。甘味料(スクラロース)、ビタミンEアセテートおよび無機性構成要素を除く全ての他の成分を組み合わせ、そのろう剤混合物に、攪拌しながら、および温度を70〜75℃に維持しながら添加した。補酵素Qを含む態様に関しては、固体粒子を溶解させるために補酵素Qを約35〜40℃に加熱するべきである。ビタミンEアセテートおよびスクラロースをそのろう剤混合物に添加し、分散するまで混合してよい。スクラロースの分散が完了したら、全ての無機材料を添加し、そのような無機材料には例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、ヒュームドアルミナおよび/またはコロイド状二酸化ケイ素が含まれていた。
【0068】
このように形成された融解した混合物を、施与チューブの中に直接分配した。あるいは、その融解した混合物をスティックを形成する型の中に分配し、冷却して凝固させ、次いで施与チューブの中に入れてよい。
【0069】
実施例3
味がマスクされた日焼け止め組成物
味をマスクしたスティックリップバーム組成物の典型的な組成およびその組成物を作るための典型的なプロセスを、表4および次の段落で示す。この組成物および方法は、この発明の範囲内にある多くの組成物および方法の代表的なものである。その典型的な態様は説明目的で提供される。
【0070】
【表4】
【0071】
実施例1で示したように、好ましくはそのクモ状エステル物質を約50〜55℃に温め、味を隠される有機性日焼け止めと、温度を維持して攪拌しながら組み合わせて密接な関係を形成させた後、他の構成要素と組み合わせる。すなわち、表4の組成物に関して、そのクモ状エステルをオキシベンゾン、オクチノキセート、およびアボベンゾンと組み合わせ、密接な関係を形成させた後、この混合物を他の構成要素と組み合わせる。
【0072】
典型的な態様において、表4の組成物は、白ろう、カルナウバろう、パラフィンろうを含むろう剤およびセチルアルコールを組み合わせ、85〜90℃に温めることにより調製することができる。一度そのろう剤が融解し始めたら、その混合物を例えばLightninミキサーで攪拌するべきである。メチルパラベンおよびプロピルパラベンをイソプロピルミリステート中で溶解させてよい。そのパラベンミリステート混合物をその融解したろう剤に攪拌を継続しながら添加し、好ましくは温度を70〜75℃まで下げる。前もって調製したクモ状エステル日焼け止め組成物を、その融解したろう剤混合物に、攪拌しながら添加する。次いで、サッカリン、香味料および無機材料(例えば二酸化チタン)を除く構成要素の残りの部分を、攪拌しながら、および温度を70〜75℃に維持しながら添加してよい。そのろう剤混合物の完全な混合が完了したら、サッカリン、香味料および無機材料を添加してよい。
【0073】
このように形成された融解した混合物を、施与チューブの中に直接分配してよく、あるいはスティックを形成する型の中に分配し、冷却して凝固させ、次いで施与チューブの中に入れてよい。
【0074】
実施例4
味がマスクされた日焼け止め組成物
味をマスクした軟らかいリップバーム組成物の典型的な組成を表5に示す。表5の組成物を作る、および軟らかいリップバームを形成するための典型的なプロセスも提供する。この組成物および方法は、この発明の範囲内にある多くの組成物および方法の代表的なものである。その典型的な態様は説明目的で提供される。
【0075】
【表5】
【0076】
実施例1で示したように、好ましくはそのクモ状エステル物質を約50〜55℃に温め、味を隠される有機性日焼け止めと、温度を維持して攪拌しながら組み合わせて密接な関係を形成させた後、他の構成要素と組み合わせる。すなわち、表5の組成物に関して、そのクモ状エステルをオキシベンゾン、オクトクリレン、オクチルメトキシシンナメートと組み合わせ、密接を形成させた後、この混合物を他の構成要素と組み合わせる。
【0077】
表5の組成物の典型的な態様は、そのワセリンを十分に温めて融解させることにより調製することができる。一度その味がマスクされた日焼け止め組成物が融解したら、攪拌しながらアスコルビン酸を添加してよい。ワセリン、味がマスクされた組成物およびアスコルビン酸の完全な混合が完了したら、攪拌しながら残りの成分を添加してよい。この組成物は構造物質であるろう剤を欠く軟らかいリップトリートメント組成物であるため、好ましくはそれが融解している間に壷、広口瓶、またはチューブのような容器に移す。
【0078】
実施例5
味がマスクされた日焼け止め組成物
コートされた二酸化チタンを含有する日焼け止め組成物
味がマスクされた日焼け止めおよび増進された機能性を有するスティックリップバーム組成物の典型的な組成を表6に示す。表6の組成物を作る、およびスティックリップバームを形成するための典型的なプロセスは、実施例2において与えられている。その組成物および方法は、この発明の範囲内にある多くの組成物および方法の代表的なものである。その典型的な態様は説明目的で提供される。
【0079】
【表6】
【0080】
実施例6
日焼け止めの評価
クモ状エステルおよび日焼け止めの間の密接な会合においてUVAおよびUVB防御が維持されていることを確かめるため、インビトロでの試験を用いて表2のスティックリップバームを試験した。
【0081】
UVA防御は、UVA日光防御に関する星評価の連邦公報提案規則において述べられている通りのインビトロ透過率データ法のUVA/UV比を用いて決定した。この試験手順は、連邦公報21CFR第347部および第352部、処方箋なしでのヒトへの使用のための日焼け止め薬物製品;最終的なモノグラフの修正案;提案規則連邦公報、Vol.72,No.165,2007年8月27日において概説されている方法に基づく。
【0082】
その試験は、制御された線量のUV放射への曝露の後の、粗くした支持体の上に広げた製品試料の薄いフィルムを通したUV透過率の評価に基づく。日焼け止めを含む製品試料を、20mJ/cmのSPF値の2/3倍に相当する放射線量に曝露する。20mJ/cmのUV放射線量は、1最小紅斑量(MED)に等しい。次いで計算されたUVA−I/UV比を用いて試験試料により与えられるUVA防御を分類する。
【0083】
SPF値(すなわちUVB防御値)を、25回の走査、5枚のスライド、スライドあたり5回の走査から得られた試験物質の平均透過百分率から決定する。試験物質に関するそれぞれの波長における平均吸光度を表に記録し、チャートを生成する。
【0084】
これらの試験の結果は、表2の組成物が62のSPF値および可能性のある最大値4の内の2の星評価を有することを示した。一般に用いられる官能パネル試験法を用いたヒトの対象による官能試験は、例えアボベンゾンの存在下であっても十分に味が隠されることを確証した。
【0085】
実施例7
味の評価
有機性日焼け止めは不快な味を与えることがよく知られている。結果として30のSPFをもたらす量および組み合わせで有機性日焼け止めを含有し、認められるほどのUVA遮蔽を有しない唇用製品は、味が悪いことが広く認識されている。
【0086】
唯一の有効なUVA有機性日焼け止めであるアボベンゾンは、非常に悪い味を有する。UVAの3%の有効レベルでの組み込みは、結果として商業用製品に関して信頼できる消費者のコンプライアンスが達成できないであろう程まで極めて味の悪い唇用製品をもたらす。この観察結果は、日焼け止めの味をマスクするための組成物および方法を探すための動機付けであった。
【0087】
表1にリストした実施例に相当する、クモ状エステルESOを含有する組成物の味を、5人の集団により、同じ日焼け止め組成物を含有するがクモ状エステルESOを含まない唇用組成物に対して評価した。両方の製品が50+のSPF値および有効なUVA日焼け止め活性を特徴とした。クモ状エステルESOを含有する製品は、優秀な味の特徴を示した。クモ状エステルESOを含まない製品は極めて悪い味を示し、それはUVA日焼け止めを含まないSPF30の商業用製品よりもさらにもっと悪かった。クモ状エステルESOを含む、および含まないSPF50+の(3%アボベンゾンを含む)組成物の間の味の違いは非常に劇的であり、明確であった。クモ状エステルESOを含まないSPF50+の(3%アボベンゾンを含む)組成物は、非常に悪い味のため商業的に実用可能ではないと考えられ、これも非常に悪い味のため、この組成物は追加の味のパネル試験のための適切な候補、または比較可能な製品ではないであろう。
【0088】
組成物および製造の方法に関して表Iでリストした実施例に相当する唇用製品組成物を、20人に与えた。この組成物は50+のSPFの有効なUVA日焼け止め(3%アボベンゾン)に相当し、クモ状エステルESOを含有していた。その20人には有効なUVA日焼け止めを含まない商業的なSPF30の唇用製品も与えた。20人全員が、表Iの組成物が優秀な味を示したと判定した。20人全員が、商業的なSPF30の製品は味が悪かったと判定した。この結果は、より有効性の低い日焼け止め製品(SPF30、UVA無し)に対する、クモ状エステルを含むより有効な日焼け止め唇用製品(SPF50+、有効なUVAを有する)に関する満場一致での選好を表している。
【0089】
実施例8
アボベンゾンの安定性の試験
追加のUVAの有効性に関して、アボベンゾンおよび二酸化チタンは提案された最終的な日焼け止めのモノグラフによる認可された組み合わせである。残念ながら、チタンのような遷移金属はアボベンゾンの不安定性を促進し得る。表3および表6の味がマスクされた日焼け止め組成物中でのアボベンゾンの安定性の比較試験を40℃および75%相対湿度において実施して、コートされていない二酸化チタンを含有する表3の組成物に対するコートされた二酸化チタンを含有する表6の組成物中のアボベンゾンの安定性を監視した。表3Aの日焼け止め組成物は二酸化チタンを含有せず、その試験における対照の役目を果たす。図1は、コートされた二酸化チタンの存在下で向上したアボベンゾンの安定性を示す。3ヶ月の時点において、トリエトキシルカプリリルシラン(triethoxylccaprylylsilane)でコートされた二酸化チタンの存在下で、最初のアボベンゾンの96.00%が測定された;一方で、同じ時点において、コートされていない二酸化チタンの存在下で、最初のアボベンゾンの94.37%だけが測定された。図1のデータは、コートされた二酸化チタンの使用はコートされていない二酸化チタンで観察されたアボベンゾンの分解を遅らせることを示している。
【0090】
前記の発明は、理解を明確にする目的で説明および例としていくらか詳細に記述されたが、添付された特許請求の範囲内でいくらかの変更および修正を実施してよいことは明らかであろう。当業者には明らかである本発明を実施する上記の方式の修正は、以下の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
図1