(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736393
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】三塩化窒素を含有する液体塩素の処理方法
(51)【国際特許分類】
C01B 7/075 20060101AFI20150528BHJP
C01B 7/03 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
C01B7/075
C01B7/03 A
【請求項の数】26
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-555501(P2012-555501)
(86)(22)【出願日】2010年3月6日
(65)【公表番号】特表2013-521211(P2013-521211A)
(43)【公表日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】IB2010000468
(87)【国際公開番号】WO2011110880
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2013年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】511097463
【氏名又は名称】ノラム インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NORAM INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブレルトン、クライブ
(72)【発明者】
【氏名】ベレッタ、セルジオ
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−243376(JP,A)
【文献】
特開2002−316804(JP,A)
【文献】
特開2006−143571(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/043203(WO,A1)
【文献】
特開昭63−271083(JP,A)
【文献】
特開2000−146432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/00−7/075
F25J 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を処理する方法であって、前記流送物は塩素製造工程のスクラバー処理で生成される方法において、
(a)前記塩素製造工程の塩素製造の一連の流れから、三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を気化器に導入するステップと、
(b)ステップ(a)の液状流送物を気化して、塩素ガス及び三塩化窒素ガスを含む流送物を生成するステップと、
(c)ステップ(b)の流送物中の三塩化窒素を分解して塩素ガス及び窒素ガスを含む流送物を生成するように処理するステップと、
(d)ステップ(c)によって生成された流送物を、塩素製造の一連の流れに再利用するステップと
を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
塩素製造の一連の流れは、ガス状塩素流送物を生成するステップと、前記ガス状塩素流送物をスクラバー処理するステップとを備える方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
塩素製造の一連の流れは、更に、スクラバー処理されたガス状塩素流送物を圧縮して液化するステップを備える方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の方法において、
ステップ(d)の再利用するステップは、ステップ(c)で生成された流送物を、塩素製造の一連の流れのうちスクラバーに供給されるガス状塩素流送物に再利用するステップからなる方法。
【請求項5】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(a)で導入される液状流送物は、スクラバー処理の下流側にある貯蔵タンクから供給される方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(a)で導入される液状流送物は、三塩化窒素を多く含む方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法において、
前記塩素製造工程は、クロルアルカリ生産工程からなる方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(c)は、ステップ(b)の流送物を、5×104〜1×107Pa(0.5〜100バール)の範囲の圧力で、滞留時間を0.5秒〜5分の範囲として、30〜300℃の範囲の温度に加熱するステップからなる方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
前記温度は35〜250℃の範囲であり、前記滞留時間は1秒〜3分の範囲である方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(c)は、過熱器において行われる方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(c)は、ステップ(b)の流送物を、三塩化窒素を分解する触媒を含有する触媒床に導入するステップからなる方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、
前記触媒床は、−40〜300℃の範囲の温度および5×104〜1×107Pa(0.5〜100バール)の範囲の圧力で、0.1秒〜5分の範囲の滞留時間操作される方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法は、更に、
ステップ(c)の後に、ステップ(c)の流送物の温度が低い温度へと低下させられるステップを備える方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(a)の流送物は、50ppmより高い三塩化窒素濃度を有する方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において、
ステップ(a)の流送物は、200ppmより高い三塩化窒素濃度を有する方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法において、
いかなる不用流出物も生産されず、またいかなる三塩化窒素処理用化学薬品も添加されない方法。
【請求項17】
三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を処理するための装置であって、前記流送物は塩素製造の一連の流れのうちスクラバーで生成される装置において、
(a)塩素気化器と、
(b)塩素製造工程の塩素製造の一連の流れから、三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を気化器の中に導入するための導入口と、
(c)導入口の下流に設けられる気化器の沸騰区画と、
(d)沸騰区画の下流に設けられて三塩化窒素を分解するための分解手段と、
(e)三塩化窒素を分解するための分解手段からの塩素ガス及び窒素ガスを含む流送物を、塩素製造の一連の流れに再利用するための手段と
を備える装置。
【請求項18】
請求項17記載の装置において、
塩素製造の一連の流れは、ガス状塩素流送物と、前記ガス状塩素流送物をスクラバー処理するスクラバーとを備える装置。
【請求項19】
請求項17又は18記載の装置において、
塩素製造の一連の流れは、更に、スクラバー処理されたガス状塩素流送物を圧縮する圧縮機を備える装置。
【請求項20】
請求項18又は19記載の装置において、
再利用するための手段は、三塩化窒素を分解する分解手段からの塩素ガス及び窒素ガスを含む流送物を、塩素製造の一連の流れのうちスクラバーに供給されるガス状塩素流送物に再利用する手段からなる装置。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれか一項に記載の装置において、
三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を導入するための導入口は、前記スクラバーに対し作動可能に連結されている装置。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれか一項に記載の装置において、
再利用するための手段は、前記分解手段をガス状塩素流送物に作動可能に連結するための管路を備えている装置。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれか一項に記載の装置において、
前記分解手段は、過熱器からなる装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置において、
前記過熱器は、気化器の過熱区画からなる装置。
【請求項25】
請求項17〜22のいずれか一項に記載の装置において、
前記分解手段は、触媒床からなる装置。
【請求項26】
請求項17〜22のいずれか一項に記載の装置において、
前記分解手段は、過熱器及び触媒床の両方からなる装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素製造工程、例えば、クロルアルカリ製造工程からの三塩化窒素を含有する液体塩素の流送物の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素の工業的生産では、少量の副産物である三塩化窒素(NCl
3)が生成される。クロルアルカリ製造工程において、その生成量は、工程に供給された塩の中に存在するアンモニアの量に比例する。窒素は、クロルアルカリのセル室から出る製品塩素に付随する。多くの場合、塩素の圧縮及び液化よりも前に吸収ステップ、例えば、塩素洗浄装置(塩素スクラバー)にて、製品塩素から窒素が除去される。この洗浄ステップにおいて、三塩化窒素は、新しい清浄な製品塩素に吸収され、スクラバーから押し出されてから、四塩化炭素、即ちクロロホルムが入った三塩化窒素分解装置と称される貯蔵タンクへと導入される。分解装置では、溶媒が塩素の沸点より高い温度に維持される。液体塩素が温溶媒に接触すると、液体塩素は塩素スクラバーの中へ瞬時に戻り、一方で三塩化窒素は溶媒により吸収される。分解装置における条件は、三塩化窒素が徐々にかつ安全に分解するように選択される。やがて、タールおよび他の不純物が溶媒中で増大すると、溶媒を定期的に交換する必要があり、また、処分されるべき不用流出物が生じる。
【0003】
規制上の制約および製品品質の両方の理由から(即ち、最終製品の塩素中の有機物含量を低減するために)、塩素製造の一連の流れにおいて四塩化炭素およびクロロホルムのような溶媒の使用を回避することが望ましい。
【0004】
四塩化炭素溶媒またはクロロホルム溶媒を使用せずに三塩化窒素を処分する方法は、ファーガソン(Ferguson)らの特許文献1に記載されている。同文献では、乾燥塔からの塩素ガスを、圧縮ステップおよび液化ステップの上流で塩酸と接触させる。しかしながら、この処理工程では、処分されるかまたは他の場所で使用されなければならない酸性の不用流出物が生成されてしまう。
【0005】
四塩化炭素またはクロロホルムのような有機溶媒を使用せず、かつ不用流出物が生成されずに塩素流送物から取り出された三塩化窒素を処分するための改良された処理工程を提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,568,409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
四塩化炭素またはクロロホルムのような有機溶媒を使用せずに、かつ不用流出物が生成されずに塩素流送物から取り出された三塩化窒素を処分するための改良された処理工程を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、塩素製造工程の塩素製造の一連の流れからの三塩化窒素汚染物を含有する液体塩素を含む流送物を処理するための方法を提供する。該液体流送物が気化されると、三塩化窒素の分解により塩素ガス及び三塩化窒素ガスが生成されて、それらを含む流送物が生成される。ガス流送物は、溶媒又は液体化学薬品を使用することなく三塩化窒素ガスを
分解することによって処理され、窒素ガスを伴った塩素ガスを含む流送物が生成されて、その流送物が塩素製造の一連の流れに再利用される。
【0009】
本発明は、更に、塩素生産の一連の流れからの三塩化窒素を含有する液体塩素を含む流送物を処理するための装置を提供する。該装置は塩素気化器を備え、塩素気化器は、液体流送物のための導入口と、導入口の下流に設けられた沸騰区画とを有している。該装置は、沸騰区画の下流にある三塩化窒素ガスを
分解するための手段と、窒素
分解手段から生じた塩素ガス及び窒素ガスを含む流送物を塩素製造の一連の流れに再利用するための手段とを有している。
【0010】
本発明の上記およびその他の特徴は、以降の説明および特定の実施形態の図面から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】三塩化窒素が触媒床を使用して
分解される本発明の処理工程の第1の実施形態を示す概略図。
【
図2】三塩化窒素が過熱器を使用して
分解される処理工程の第2の実施形態を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降の説明および図面において、対応する要素および類似の要素は同じ参照数字によって言及される。
図1に示すように、塩素気化器20は、クロルアルカリプラントの塩素製造の一連の流れ24から、三塩化窒素を含有する液体塩素の流送物(流送物22)を受け取る。塩素製造の一連の流れ24は、塩水の電気分解によって塩素ガスが製造されるクロルアルカリのセル室10を有している。塩素スクラバー11は、セル室からガス状塩素流送物12を受け取り、また液体塩素流送物13を受け取る。クロルアルカリのセル室10と塩素スクラバー11との間に通常は存在する他のユニット作業は、図示されていない。スクラバーからのガス状塩素流送物14は、圧縮機15に供給されてから、液化される。塩素スクラバー11の底部からは、三塩化窒素を多く含む液体塩素(流送物16)が貯蔵タンク17に供給され、タンクから流送物22が気化器20へと送られる。別例として、三塩化窒素を多く含む液体塩素を、いかなる貯蔵タンクも使用せずにスクラバー11から気化器20へと直接供給してもよい(流送物16A)。一般に、流送物22は、50ppm以上の三塩化窒素を、または200ppmより多くの三塩化窒素を有している。
【0013】
気化器20は、三塩化窒素ガスを伴って塩素ガスを含む流送物40を生成する。この流送物は、三塩化窒素を
分解するための1つ以上のユニット作業へと送られる。三塩化窒素
分解ステップから出るガス、即ち、塩素ガス及び窒素ガスは、クロルアルカリ生産工程の塩素製造の一連の流れに再利用される。該生産工程は、三塩化窒素を処理するための不用流出物の生成、または他の化学薬品や溶媒の添加を回避することができる。三塩化窒素を
分解するステップは、様々な方法で行なうことができる。
図1の実施形態に示すように、気化器20で生成されたガスは、三塩化窒素が
分解される触媒床54に送られてもよい。触媒床は、例えば、三塩化窒素を
分解するための触媒としてMonel(商標)を含有してもよい。触媒床は、−40〜300℃の範囲の温度、5×10
4〜1×10
7Pa(0.5〜100バール)の範囲の圧力、および0.1秒〜5分の範囲の滞留時間で操作されてもよい。
【0014】
触媒床から出る塩素ガス及び窒素ガスを含むガス流送物52は、塩素製造の一連の流れ24に再利用される。
触媒床の使用に代えて、気化器で蒸発したガス混合物を過熱器に導入してもよい。また、過熱器は、気化器ユニットの一部であってもよく、又は気化器ユニットとは別体であってもよい。
図2の実施形態において、気化器20は、沸騰区画36の下流に過熱器区画30を備えている。過熱器の操作条件は、三塩化窒素のほぼ完全な
分解を達成するように選択される。過熱器の平均操作温度は30°〜300℃の範囲、操作圧は5×10
4〜1×10
7Pa(0.5〜100バール)の範囲、および滞留時間は0.5秒〜5分の範囲であってもよい。別例として、平均操作温度は35°〜250℃の範囲、操作圧は大気圧〜9×10
6Pa(90バール)の範囲、および滞留時間は1秒〜3分の範囲であってもよい。
【0015】
過熱器から出る塩素ガス及び窒素ガスを含むガス流送物52は、クロルアルカリ生産工程の塩素製造の一連の流れ24に再利用される。
任意選択で、該処理工程は、三塩化窒素を
分解するために過熱器および触媒床の両方を使用してもよい。触媒床は、個別のユニットよりはむしろ、気化器の過熱器区画の内部に設けられてもよい。
【0016】
任意選択で、三塩化窒素
分解ステップ(例えば、過熱器30または触媒床54)から出るガスは、
図1及び
図2に示すように、塩素製造の一連の流れに戻って再利用される前に、温度調節ステップ56に送られてもよい(流送物60)。これにより、約80°〜120℃の温度である三塩化窒素
分解ステップから出るガス流送物の温度が、約−35℃の温度である塩素の一連の流れへ導入するためのより低い温度へと低下させられる。
【0017】
本発明について様々な実施形態によって説明してきたが、本発明がこれらの実施形態に限定されることは意図されない。本発明の範囲内の様々な改変形態は当業者には明白であろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。