(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の車両接近報知装置を備えた車両1は、
図1に示すように、車両1の前部に左右一対の報知用スピーカ10を備え、車両1の内部には、報知用スピーカ10と接続する車両接近報知コントローラ20を備えている。本実施形態では、報知用スピーカ10が報知音出力手段に相当し、車両接近報知コントローラ20が音量制御手段に相当する。
【0015】
報知用スピーカ10は、車両1の前端部のヘッドライト2の下方に設けられた左右一対のフォグランプ3の背面付近にそれぞれ設けられている。また、報知用スピーカ10の振動板はコーン型であり、車両1の後方向に向けて設けられている。車両1の接近を車外に報知する場合、通常は報知用スピーカ10から報知音量Vにて報知音が出力される。なお、本実施形態では、車両1には報知用スピーカ10が2個設けられているが、これに限らず、例えば、報知用スピーカ10を1個のみ設けるようにしてもよいし、車両1の後部や側部などにさらに多くの報知用スピーカ10を設けてもよい。
【0016】
図2に示すように、車両接近報知コントローラ20の出力側は、報知用スピーカ10と電気的に接続されている。これにより、車両接近報知コントローラ20から報知用スピーカ10へ、報知音出力信号が出力されるようになっている。
【0017】
また、車両接近報知コントローラ20の入力側は、車両1の前方の左右にある遮蔽物を検出するための遮蔽物センサ31、車両1から遮蔽物までの距離を計測するための距離センサ32、遮蔽物と車両1の側面との間隔を計測するための間隔センサ33、遮蔽物の高さを計測するための高さセンサ34、および、車両1の走行速度を検出するための車速検出器40が、電気的に接続されている。これにより、遮蔽物センサ31からの遮蔽物検出信号、距離センサ32からの距離情報、間隔センサ33からの間隔情報、高さセンサ34からの高さ情報、および車速検出器40からの車速検出信号が車両接近報知コントローラ20に入力されるようになっている。
【0018】
遮蔽物センサ31、距離センサ32、間隔センサ33、および高さセンサ34は、それぞれ入力側に撮像装置35が接続されている。撮像装置35は、車両1の前端部に設けられており、車両1の前方向および前方向の両側(車両1の前方向の道路や路肩等)を撮像し、撮像した画像データを所定時間(例えば4ミリ秒)毎に遮蔽物センサ31、距離センサ32、間隔センサ33、および高さセンサ34に出力する。なお、本実施形態では、撮像装置35は、車両1の前端部に取り付けたれたフロントカメラから構成されるが、これに限らず、例えば、車両1の左右のサイドミラー等に取り付けられた左右一対のサイドカメラから構成してもよい。
【0019】
遮蔽物センサ31は、撮像装置35から入力した画像データを画像解析して遮蔽物を検出する。具体的には、撮像装置35から入力した画像データを解析して車線の存在を認識し、当該車線を基に画像上における車両1の進路を判断する。そして、車両1の進路の側方にある遮蔽物を検出する。これにより、例えば、車両1の進路の路肩にある塀や壁、トンネルなどを検出することができる。なお、遮蔽物センサ31は、車両1の走行方向の右側方と左側方とのそれぞれにおいて、遮蔽物を検出することができる。すなわち、車両1の走行方向の右側方にのみ遮蔽物があることを検出したり、車両1の走行方向の両側に遮蔽物があることを検出したりすることが可能である。遮蔽物センサ31は、車両1の進路上の一側方の遮蔽物を検出した場合は、左側遮蔽物検出信号または右側遮蔽物検出信号を出力し、車両1の進路上の両側に遮蔽物を検出した場合は、両側遮蔽物検出信号を出力する。本実施形態では、遮蔽物センサ31が遮蔽物検出手段に相当する。
【0020】
距離センサ32は、撮像装置35から入力した画像データを画像解析して、車両1から遮蔽物までの距離Dを計測する(
図3(a)参照)。これにより、現在の車両1の位置から、遮蔽物センサ31が検出した遮蔽物までの距離Dを計測することができる。本実施形態では、距離センサ32が距離計測手段に相当する。
【0021】
間隔センサ33は、撮像装置35から入力した画像データを画像解析して、車両1の側面と遮蔽物との間隔Iを計測する(
図3(a)参照)。この間隔とは、車両1が対象の遮蔽物の真横にあると仮定した場合における車両1の側面から遮蔽物までの距離である。すなわち、車両1が遮蔽物のある位置を通過するときの、車両1と遮蔽物との隙間の距離である。例えば、遮蔽物が、1車線である車両専用道路のトンネルである場合、間隔Iが小さいほど、トンネル幅が狭いということになる。本実施形態では、間隔センサ33が間隔計測手段に相当する。
【0022】
高さセンサ34は、撮像装置35から入力した画像データを画像解析して、遮蔽物の高さTを計測する(
図3(b)参照)。これにより、遮蔽物センサ31が検出した遮蔽物の高さTを計測することができる。また、高さセンサ34は、遮蔽物の高さTを計測するとともに、遮蔽物に天井が設けられていることを検出することができる。これにより、遮蔽物が単なる壁等ではなく、トンネルや立体駐車場などであることを判別することができる。高さ34は、遮蔽物の天井を検出した場合は、高さ情報とともに天井検出信号を出力する。本実施形態では、高さセンサ34が高さ計測手段に相当する。
【0023】
なお、本実施形態では、撮像装置35によって撮像した画像のデータを基に、遮蔽物の有無の検出、距離Dの計測、間隔Iの計測、および高さTの計測を行っているが、これに限らず、例えば、電磁波を使用したレーダーや超音波を使用したソナーによって、遮蔽物の有無の検出、距離Dの計測、間隔Iの計測、および高さTの計測を行ってもよい。また、ナビゲーションシステムの地図情報に予め遮蔽物の設置位置や高さ等を登録し、ナビゲーションシステムを利用して遮蔽物の有無の検出、距離Dの計測、間隔Iの計測、および高さTの計測等を行ってもよい。
【0024】
車速検出器40は、車両1が所定の走行速度(本実施形態では時速30km)以下で走行したことを検出した場合に、車速検出信号を出力する。
【0025】
車両接近報知コントローラ20は、ECU(Electronic Control Unit)であり、入力した各種信号を解析して報知用スピーカ10に報知音出力信号を出力することにより、車両1の接近を外部に報知する処理を実行する。
【0026】
次に、
図4、
図5、および
図6を用いて、車両1の接近を車外に報知するための車両接近報知処理を説明する。なお、
図4に示す処理フローは、所定の周期(例えば4ミリ秒)毎に実行される。また、
図5に示す第1報知音量制限割合決定テーブル、第2報知音量制限割合決定テーブル、第3報知音量制限割合決定テーブル、および
図6に示す報知音量制限実行割合決定テーブルは、車両接近報知コントローラ20に内蔵されたROM(READ ONLY MEMORY)に記憶されている。
【0027】
まず、ステップS11において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の車速が所定車速(時速30km)以下であるか否かを判定する。具体的には、車速検出器40から車速検出信号を入力した場合は、車両1の車速が所定車速以下であると判定し、車速検出器40から車速検出信号を入力しない場合は、車両1の車速が所定車速を超えていると判定する。そして、車両1の車速が所定車速以下であると判定した場合は、ステップS12に処理を移し、車両1の車速が所定車速を超えていると判定した場合は、車両接近報知処理を終了する。
【0028】
ステップS12において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の走行方向の側方(路肩等)に遮蔽物があるか否かを判定する。具体的には、遮蔽物センサ31から遮蔽物検出信号を入力した場合には、車両1の走行方向の側方に遮蔽物があると判定し、遮蔽物センサ31から遮蔽物検出信号を入力しない場合は、車両1の走行方向の側方に遮蔽物はないと判定する。そして、遮蔽物センサ31から遮蔽物検出信号を入力した場合はステップS13に処理を移し、遮蔽物検出信号を入力しない場合はステップS19へと処理を移す。
【0029】
ステップS13において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の接近を車外に報知するための報知音の音量を制限する割合を決定するための第1制限割合決定処理を実行する。すなわち、報知用スピーカ10から出力される報知音の通常の音量は報知音量Vであるが、車両1の走行方向の側方に遮蔽物がある場合は、本ステップにおいて報知音量を制限する割合が決定される。
【0030】
具体的には、車両接近報知コントローラ20は、
図5に示す第1報知音量制限割合決定テーブルを参照して、車両1の走行方向のずれか一方側にのみ遮蔽物があるか、両側に遮蔽物があるかによって、報知音量を制限する割合を決定する。例えば、遮蔽物センサ31から右側遮蔽物検出信号を入力した場合は、走行方向の右側にのみ遮蔽物があるので、報知音量の制限割合を25%に決定する。これにより、車両1の走行方向の片側のみに塀や壁などがある場合の報知音量は報知音量Vの75%となる。また、遮蔽物センサ31から両側遮蔽物検出信号を入力した場合は、走行方向の両側に遮蔽物があるので、報知音量の制限割合を50%に決定する。これにより、両側に塀や壁などがある場合の報知音量は報知音量Vの50%となる。
【0031】
ステップS14において、車両接近報知コントローラ20は、遮蔽物に天井があるか否かを判定する。具体的には、高さセンサ34から天井検出信号を入力した場合は遮蔽物に天井があると判定し、天井検出信号を入力しない場合は遮蔽物に天井がないと判定する。そして、高さセンサ34から天井検出信号を入力した場合はステップS15に処理を移し、天井検出信号を入力しない場合はステップS16に処理を移す。
【0032】
ステップS15において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の接近を車外に報知するための報知音の音量を制限する割合を決定するための第2制限割合決定処理を実行する。すなわち、遮蔽物に天井がある場合は、本ステップにおいて報知音量をさらに制限する割合が決定される。
【0033】
具体的には、車両接近報知コントローラ20は、
図5に示す第2報知音量制限割合決定テーブルを参照して報知音量を制限する割合を決定する。すなわち、遮蔽物に天井がある場合、例えば遮蔽物がトンネルや立体駐車場等の場合は、報知音量の制限割合を25%に決定する。
【0034】
ステップS16において、車両接近報知コントローラ20は、遮蔽物の高さTが所定高さ(本実施形態では2m)以上であるか否かを判定する。具体的には、車両接近報知コントローラ20は、高さセンサ34から入力した高さ情報を解析して遮蔽物高さTを判定する。そして、遮蔽物の高さTが2m以上であると判定した場合はステップS17に処理を移し、遮蔽物の高さTが2m未満であると判定した場合はステップS18に処理を移す。
【0035】
ステップS17において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の接近を車外に報知するための報知音の音量を制限する割合を決定するための第3制限割合決定処理を実行する。すなわち、遮蔽物の高さTが所定高さ以上である場合は、本ステップにおいて報知音量をさらに制限する割合が決定される。
【0036】
具体的には、車両接近報知コントローラ20は、
図5に示す第3報知音量制限割合決定テーブルを参照して報知音量を制限する割合を決定する。すなわち、遮蔽物の高さTが2m以上である場合、報知音量の制限割合を10%に決定する。
【0037】
ここで、本実施形態では、上記ステップS13における第1制限割合決定処理、上記ステップS15における第2制限割合決定処理、および上記ステップS17における第3制限割合決定処理と、最大で3回の報知音量を制限する割合を決定する処理が行われるが、これらの制限割合決定処理において決定された制限割合は合算して適用される。すなわち、例えば、車両1の走行方向の両側に遮蔽物があり、当該遮蔽物に天井があり、さらに当該遮蔽物の高さTが2m以上である場合は、報知音量の制限割合は85%であるので、報知音量は報知音量Vの15%となる。また、高さTが2m未満で天井がない遮蔽物が車両1の走行方向の一方側にのみある場合は、報知音量が25%制限されて報知音量Vの75%となる。なお、例えば、全ての制限割合決定処理で決定された制限割合を加算せず、例えば、最も大きい制限割合を適用するようにしてもよい。
【0038】
ステップS18において、車両接近報知コントローラ20は、上記ステップS13における第1制限割合決定処理、上記ステップS15における第2制限割合決定処理、および上記ステップS17における第3制限割合決定処理において決定された報知音量制限を実行する割合を決定するための制限実行割合決定処理を実行する。具体的には、車両接近報知コントローラ20は、
図6に示す報知音量制限実行割合決定テーブルを参照し、距離センサ32から入力した距離情報と、間隔センサ33から入力した間隔情報に基づいて、報知音量制限を実行する割合を決定する。
【0039】
例えば、入力した距離情報を解析し、車両1から遮蔽物までの距離Dが10m以上の場合は、報知音量制限の実行割合を0%とする。すなわち、遮蔽物が車両1から10m以上離れている場合は、上記の報知音量制限処理で決定された報知音量制限を行わず、報知音量Vで報知音を出力する。また、距離Dが10未満であって0mではない場合は、報知音量制限の実行割合を50%とする。すなわち、車両1が遮蔽物から10m未満に接近しているが、まだ遮蔽物には到達していない場合、報知音量制限を50%のみ実行する。この場合、例えば、上記の報知音量制限処理で合計50%の報知音量制限が決定されているときは、25%の報知音量制限が実行される(報知音量が報知音量Vの75%となる)。さらに、距離Dが0の場合(遮蔽物が車両1の側方にある場合)は、報知音量制限の実行割合を100%とし、上記の報知音量制限処理で決定された割合で報知音量制限が実行される。
【0040】
また、例えば、入力した間隔情報を解析し、車両1の側面と遮蔽物との間隔Iが3m以上の場合は、報知音量制限の実行割合を0%とする。すなわち、遮蔽物と車両1の側面との間隔が3m以上離れている場合は、上記の報知音量制限処理で決定された報知音量制限を行わず、報知音量Vで報知音を出力する。また、間隔Iが1m以上3m未満の場合は、報知音量制限の実行割合を50%とする。さらに、間隔Iが1m未満の場合は、報知音量制限の実行割合を100%とし、上記の報知音量制限処理で決定された割合で報知音量制限が実行される。
【0041】
ここで、距離Dに基づいた制限実行割合と、間隔Iに基づいた制限実行割合とは、それぞれ適用される。すなわち、距離Dに基づいた制限実行割合が50%であり、間隔Iに基づいた制限実行割合が50%でありの場合は、それぞれ適用されるので、結果的に報知音量の制限は25%が適用される。なお、距離Dが10m以上の場合、または間隔Iが3m以上の場合は、報知音量の制限は行われない。例えば、距離Dが10m以上の場合、間隔Iが1m未満であったとしても、報知音量の制限は行われず、報知音量Vで報知音が出力される。
【0042】
ステップS19において、車両接近報知コントローラ20は、車両1の接近を車外に報知するための報知音を報知用スピーカ10から出力する報知制御処理を行う。具体的には、車両接近報知コントローラ20は、報知用スピーカ10から所定の音量で出力するための報知音出力信号を出力する。このとき、音量制限が実行されない場合、すなわち、遮蔽物がない場合や、遮蔽物があったとしても、距離Dが10m以上である場合、および間隔Iが3m以上である場合は、報知音量Vで報知音が出力される。
【0043】
一方、音量制限が実行される場合は、上記ステップS13における第1制限割合決定処理、上記ステップS15における第2制限割合決定処理、および上記ステップS17における第3制限割合決定処理において決定された音量制限割合と、上記ステップS18において決定された制限実行割合とに基づいた音量で報知音が出力される。例えば、第1制限割合決定処理、第2制限割合決定処理、および第3制限割合決定処理で決定された音量制限割合の合算が50%であり、制限実行割合決定処理で決定された制限実行割合が50%と100%であった場合は、25%の報知音量制限が実行されるので、報知音の音量は報知音量Vの75%である。
【0044】
以上のように、車両1の走行方向の側方に遮蔽物がある場合は、車両1の接近を報知するための報知音の音量が制限されるので、当該遮蔽物によって反響した報知音が騒音となることを防止することができる。
【0045】
ここで、遮蔽物が両側にある場合は、一方側の遮蔽物に反響した音がさらに他方側の遮蔽物に反響するので、一方側にのみ遮蔽物がある場合よりも音が増幅しやすい。また、遮蔽物に天井がある場合は、音が天井にも反響するので天井がない遮蔽物よりも音を反響させやすい。さらに、遮蔽物が高い場合は低い場合よりも音を反響させやすい。これに対し、上記の通り、遮蔽物が両側にある場合は一方側にのみある場合よりも報知音量が制限される。また、遮蔽物に天井ある場合は報知音量が制限され、さらに遮蔽物の高さTが所定以上である場合は報知音量を制限される。一方で、遮蔽物が車両1よりも所定以上離れている場合や、遮蔽物と車両1との間隔が所定以上ある場合は、報知音が当該遮蔽物によって反響されにくいため、報知音の制限は行われない。
【0046】
これにより、遮蔽物が音を反響させやすいほど、車両1の接近を報知するために出力される報知音の音量が大きく制限されるので、より効果的に報知音が騒音となることを防止することができる。また、必要以上に報知音量を制限することによって歩行者等が報知音を聞き取れなくなり、報知効果が減退してしまうことを防止することができる。すなわち、本願発明によれば、遮蔽物の音の反響させやすさに応じて報知音量を制限するので、車外への報知効果を維持しつつ、報知音による騒音を防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、車両1の車速が所定車速以下であることを条件に、車両1の接近を報知しているが、これに限らず、その他の条件の成立を契機に車両1の接近を報知するようにしてもよい。