特許第5736402号(P5736402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5736402
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】一体成形型ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/02 20150101AFI20150528BHJP
   A63B 53/04 20150101ALI20150528BHJP
   A63B 53/12 20150101ALI20150528BHJP
【FI】
   A63B53/02
   A63B53/04 B
   A63B53/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-38552(P2013-38552)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-220348(P2013-220348A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2013年3月1日
(31)【優先権主張番号】101207180
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】513049778
【氏名又は名称】徐維靖
(73)【特許権者】
【識別番号】513049789
【氏名又は名称】徐竺靖
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】徐維靖
(72)【発明者】
【氏名】徐竺靖
【審査官】 古屋野 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−165761(JP,U)
【文献】 特開2003−024480(JP,A)
【文献】 特開2000−237356(JP,A)
【文献】 米国特許第05273280(US,A)
【文献】 特開平04−022373(JP,A)
【文献】 特開昭61−207513(JP,A)
【文献】 特開昭55−161026(JP,A)
【文献】 特開平08−229167(JP,A)
【文献】 特開2009−261909(JP,A)
【文献】 米国特許第4936582(US,A)
【文献】 米国特許第5277866(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/02
A63B 53/04
A63B 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラブヘッド及びシャフトを備えた一体成形型ゴルフクラブであって、
前記クラブヘッドは、鋳造成形されたクラブヘッド部材を有し、
前記クラブヘッド部材は、鍛造処理されたクラブヘッド表面を有し、
前記シャフトは、鋳造された前記クラブヘッド部材の絞り成形により形成され、
前記シャフトと前記クラブヘッドとが一体成形されることを特徴とする、
一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記クラブヘッドと前記シャフトとの間には、絞り部が形成され、
前記絞り部と前記クラブヘッドとの間と、前記絞り部と前記シャフトとの間とが一体成形されて無接点で接続されることを特徴とする、
請求項1に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項3】
前記絞り部の外壁は、滑らかな表面を有することを特徴とする、
請求項2に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項4】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド部材は、クラブヘッド中空部を有し、
前記シャフトは、シャフト中空部を有することを特徴とする、
請求項1に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項5】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド中空部と前記シャフトの前記シャフト中空部とは、一体成形されて連通されることを特徴とする、
請求項4に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項6】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド部材は、クラブヘッド中空部を有し、
前記シャフトは、シャフト中実部を有することを特徴とする、
請求項1に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項7】
前記シャフトはPG管SB管DB管BB管又はCB管であることを特徴とする、請求項1に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【請求項8】
前記クラブヘッド及び前記シャフトは、二相ステンレス鋼からなることを特徴とする、請求項1に記載の一体成形型ゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関し、特に、一体成形型ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にゴルフ場は風光明媚で自然豊かな環境にあるため、ゴルフ愛好者はあたかも大自然の中でプレーしているような気分になることができる上、ゴルフのプレーには必ずしも多くの運動量は必要なく、プレー中の雰囲気もリラックスしたものであり、プレーヤの人数に制限が無いため、友人達との親交を深めるのに最適なスポーツである。プレーヤは、ボールを打つ際、コースの地形及び打ち方に応じて最適な番手のゴルフクラブを選択することができる。ゴルフクラブは、ドライバ、アイアン及びパターの三種類に分けられる。そのなかでもドライバは、第1打を打つために用いる専用のクラブであり、ドライバはクラブヘッドが大き目で好適な弾性を有するため、プレーヤは打球の距離及び落下地点を予想し易い。アイアンは、打ったボールが放射線を描くように飛ぶため、バンカーから打ち出したりグリーン上にのせるために使用され、パターは、グリーン上でホールを狙って入れるために使用される。
【0003】
ゴルフクラブは、シャフトとクラブヘッドとの組み合わせにより構成されるのが一般的であり、クラブヘッドは、木製、ステンレス製、金属合金鋳造及び射出成形又は一部が複合材料に大きく分けられる。シャフトは、炭素繊維材料、金属合金などからなり、如何なる材料で製作したとしても、従来のシャフトとクラブヘッドとを嵌合した後、接着させて製作することが一般的である。しかし一般の木製成形、炭素繊維熱圧成形又は射出成形されたクラブヘッドは、同じ厚さの金属合金製、ステンレス製のクラブヘッドと比べ、強度、硬度及び靭性が劣って脆かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクラブヘッドは、シャフトとの接合強度を高めるために、柄部の長さを延ばして下から上方へかけて徐々に縮小した適宜な錐面を呈し、柄部中央部の差込孔がクラブヘッド内部まで深く形成されているが、クラブヘッドの柄部の強度、硬度が小さいことを考慮し、従来のクラブヘッドとシャフトとの接合箇所には、合成糸を巻き付けて嵌合部位の接合強度を高めることが一般的である。
【0005】
しかし、一般の接合強度は、接着の結合強度、クラブヘッド材料とシャフト材料との界面結合強度に応じて決定されるため、クラブヘッド、シャフト及び合成糸は、材料の違いに応じてその硬度が異なる。そのため、クラブヘッドと柄部との嵌合箇所が実質上、分離された状態となり、応力が集中し易い。そのためボールを打った際に、嵌合部位に負荷がかかりすぎて嵌合部位が変形したり最悪の場合、折れてしまうことがあった。上述したことから分かるように、ボールを打つ際、クラブヘッドに衝撃が加わると、クラブヘッドからシャフトにねじれ力が伝わる。しかしシャフトと柄部とが接着されているため(一般に合成糸を巻き付けて強度を補強するには限界がある)、瞬間的に加わるねじれ力により、クラブヘッドにねじれ角が瞬間的に発生し、ボールが飛ぶ方向が不安定となり、クラブヘッドのねじれ力がシャフトとの接着力より大きくなると、クラブヘッドとシャフトとが緩んで、ゴルフクラブが損壊してしまうこともある。そのため、本発明の目的は、従来のゴルフクラブの欠点が無い一体成形型ゴルフクラブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、クラブヘッド及びシャフトを備えた一体成形型ゴルフクラブであって、前記クラブヘッドは、鋳造成形されたクラブヘッド部材を有し、前記クラブヘッド部材は、鍛造処理されたクラブヘッド表面を有し、前記シャフトは、鋳造された前記クラブヘッド部材の絞り成形により形成され、前記シャフトと前記クラブヘッドとが一体成形されることを特徴とする一体成形型ゴルフクラブが提供される。
【0007】
前記クラブヘッドと前記シャフトとの間には、絞り部が形成され、前記絞り部と前記クラブヘッドとの間と、前記絞り部と前記シャフトとの間とが一体成形されて無接点で接続されることが好ましい。
【0008】
前記絞り部の外壁は、滑らかな表面を有することが好ましい。
【0009】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド部材は、クラブヘッド中空部を有し、前記シャフトは、シャフト中空部を有することが好ましい。
【0010】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド中空部と前記シャフトの前記シャフト中空部とは、一体成形されて連通されることが好ましい。
【0011】
前記クラブヘッドの前記クラブヘッド部材は、クラブヘッド中空部を有し、前記シャフトは、シャフト中実部を有することが好ましい。
【0012】
前記クラブヘッドの表面は、前記シャフトの表面と粗さが異なることが好ましい。
【0013】
前記シャフトと前記クラブヘッドとを一体成形する際に行う絞りは、PG管絞り、SB管絞り、DB管絞り、BB管絞り又はCB管絞りであることが好ましい。
【0014】
前記クラブヘッド及び前記シャフトは、二相ステンレス鋼からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一体成形型ゴルフクラブは、クラブヘッド及びシャフトが鋳造、鍛造、絞り方式により一体成形されるため、全体の構造が均一かつ高い強度を有し、これにより、本発明のクラブヘッドとシャフトとの接合強度が、2つの物体の界面が接着剤により接着された従来技術の強度より遥かに高い。そのため、一体成形された構造がシャフトとクラブヘッドとの接合箇所に応力が集中したり接合箇所が緩んだりすることを防ぎ、スイングするときのねじれを構造全体で受けることにより、ゴルフクラブの使用寿命を延ばすことができる。
【0016】
本発明の一体成形型ゴルフクラブは、スイングしてボールを打つ際、クラブヘッドに非常に大きな衝撃が加わり、ねじれ力及び瞬間的なねじれ角が発生するため、接点が無い一体成形された構造により高い強度を得て、クラブヘッドとシャフトとが接続された箇所が耐えられる力がクラブヘッドに発生するねじれ力より遥かに大きいため、クラブヘッドが受けるねじれ力が絞り部に集中して当該箇所が緩んだり損壊したりすることを防ぐことができる。そのため、本発明は、打球の安定性が良好で、打った球をより遠くへ安定させながら飛ばし、ボールの飛ぶ方向を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブを示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブのクラブヘッドを示す部分拡大図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブのクラブヘッドを示す部分断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブのクラブヘッドを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1図3を参照する。図1は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブを示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブのクラブヘッドを示す部分拡大図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブのクラブヘッドを示す部分断面図である。
【0020】
図1図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブ100は、少なくともクラブヘッド1及びシャフト2から構成される。クラブヘッド1は、鋳造成形されたクラブヘッド部材11を有する。このクラブヘッド部材11は、鍛造処理されたクラブヘッド表面111を有する。第1実施形態では、鋳造成形されたクラブヘッド部材11を鍛造処理し、クラブヘッド表面111を形成する。シャフト2には、鋳造成形されたクラブヘッド部材11が絞り成形されている。またシャフト2は、クラブヘッド1と一体成形されたシャフト部材21を含み、シャフト部材21の後端末端部には、グリップ211が設けられている。
【0021】
クラブヘッド1とシャフト2との間には、絞り部(drawn portion)3が設けられ、この絞り部3の外壁には滑らかな表面が形成されている。この滑らかな表面とは、無接点で接続された滑らかな表面のことである。即ち、絞り部3とクラブヘッド1とは無接点で接続され、絞り部3とシャフト2とも無接点で接続されている。このクラブヘッド表面111は、打球の接触面として用いる。第1実施形態において、クラブヘッド1のクラブヘッド部材11は、クラブヘッド中空部12を有し、シャフト2のシャフト部材21は、シャフト中空部22を有する。クラブヘッド1のクラブヘッド中空部12とシャフト2のシャフト中空部22とは、一体成形されて連通する。
【0022】
第1実施形態の絞り方式について以下述べる。シャフト2の絞り成形に用いるブランク(blank)を、鋳造及び鍛造処理が施されたクラブヘッド1に接続し、シャフト2のブランクを型により絞り成形し(drawing mold)、型の中心部に設けられたマンドレル(mandrel)により、シャフト中空部22を有するシャフト2を形成する。
【0023】
第1実施形態において、クラブヘッド中空部12の中には、製造過程において、おもり部材(weight member)13が取り付けられる。おもり部材13は、クラブヘッド部材11中に堅固に係合される。
【0024】
(第2実施形態)
図4を参照する。図4は、本発明の第2実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブを示す部分断面図である。図4に示すように、本発明の第2実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブは、規格及び必要に応じて製作された一体成形型ゴルフクラブ100aである。一体成形型ゴルフクラブ100aの製造方式は、第1実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブ100の製造方式に類似するが、シャフト2aのシャフト部材21aがシャフト中実部22aを有する点が異なる。具体的には、シャフト2aは、絞り成形過程において、ブランクが絞り成形されたシャフト中実部22aを有する。
【0025】
上述のゴルフクラブ100、100aの一体成形の製造において、クラブヘッド部材及びシャフト部材は、まず、鋳造してから鍛造処理し、その後、絞り方式により成形する。絞り成形作業は、シャフトの形状、寸法に応じてPG(Plangage Butted)管成形作業、SB(Single Butted)管成形作業、DB(Double Butted)管成形作業、BB(Buldge Butted)管成形作業又はCB(Contracted Butted)管成形作業などに分けられる。
【0026】
一体成形されるゴルフクラブ100、100aは、寸法、規格及び外観形状の相違に応じて、絞り成形の過程が異なり、例えば、ゴルフクラブのシャフトが1つだけの外径及び厚さを有する場合、絞りの成形過程において1ステップだけで完成させることができるため、PG管作業に適用する。ゴルフクラブのシャフトは、完成品の絞り成形過程において、1ステップだけで完成させることができるが、厚さが2個以上のシャフトであるため(原則上、外径が同じであるが、厚さが漸増する)、SB管成形作業に適用する。ゴルフクラブのシャフトの完成品の絞りには、"厚さ形成"及び"外径形成"の2つの過程を経なければ完成させることができないため(まず、管部材の厚さを処理してから管部材の外径を完成させる)、DB管成形作業に適用する。ゴルフクラブのシャフトの軸製作過程において、マンドレルの前後の形状が一致していないため(前部が大きく後部が小さい)、排材作業を行うときにシャフトの管径が広がり、BB管成形作業に適用する。ゴルフクラブのシャフトの管部材の外径が一部縮小し、厚さを依然として維持する場合、CB管成形作業に適用する。
【0027】
本発明の一実施形態に係る一体成形型ゴルフクラブ100、100aのクラブヘッド部材及びシャフト部材は、二相ステンレス鋼(Duplex Stainless Steel:DSS)からなる。この二相ステンレス鋼のステンレスは、標準的な鋼種2205であり(即ち、クロム22%及びニッケル5%である)、高強度、高耐食性などの長所を有するため、本発明の一体成形型ゴルフクラブ100、100aの製造に適合する。勿論、例えば、ステンレス、クロムモリブデン鋼、炭素鋼クロムめっきなど、その他の金属を用いてもよいが、ここでは最適な実施形態のみ示している。
【0028】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0029】
1 クラブヘッド
1a クラブヘッド
2 シャフト
2a シャフト
3 絞り部
11 クラブヘッド部材
11a クラブヘッド部材
12 クラブヘッド中空部
12a クラブヘッド中空部
13 おもり部材
21 シャフト部材
21a シャフト部材
22 シャフト中空部
22a シャフト中実部
100 ゴルフクラブ
100a ゴルフクラブ
111 クラブヘッド表面
211 グリップ
図1
図2
図3
図4